説明

高減衰組成物

【課題】良好な加工性を維持しつつ、現状よりも減衰性能が向上した高減衰部材を製造できる高減衰組成物を提供する。
【解決手段】ベースポリマー100質量部に、シリカを100質量部以上、180質量部以下、軟化点が120℃以上、180℃以下のロジン誘導体を5質量部以上、50質量部以下の範囲で配合した高減衰組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動エネルギーの伝達を緩和したり吸収したりする部材のもとになる高減衰組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばビルや橋梁等の建築物、産業機械、航空機、自動車、鉄道車両、コンピュータやその周辺機器類、家庭用電気機器類、さらには自動車用タイヤ等の幅広い分野において振動エネルギーの伝達を緩和したり吸収したりする、すなわち免震、制振、防振等をするために、ゴム等のエラストマからなる高減衰部材が用いられる。
前記高減衰部材は、振動が加えられた際のヒステリシスロスを大きくして前記振動のエネルギーを効率よく速やかに減衰する減衰性能を高めるため、前記エラストマにカーボンブラック、シリカ等の充填剤やロジン、石油樹脂等の粘着性付与剤を配合した高減衰組成物によって形成されるのが一般的である(例えば特許文献1〜4等参照)。しかし、例えば前記特許文献1〜4等に記載された程度の充填剤や粘着性付与剤の配合量では、高減衰部材の減衰性能を十分に高めることはできない。
【0003】
現状よりもさらに減衰性能を高めるために、例えばカーボンブラック等の充填剤の配合量を増加させることが考えられるが、その場合には高減衰組成物の加工性が低下して、高減衰部材を製造するために前記高減衰組成物を混練したり任意の形状に成形加工したりするのが容易でなくなるという問題がある。特に工場レベルで高減衰部材を大量生産する場合、前記加工性の低さは高減衰部材の生産性を低下させ、消費エネルギーを増大させ、さらには生産コストを上昇させる原因となるため望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3593437号公報
【特許文献2】特開2003−3014号公報
【特許文献3】特開2007−63425号公報
【特許文献4】特開平7−41603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、良好な加工性を維持しつつ、現状よりも減衰性能が向上した高減衰部材を製造できる高減衰組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ベースポリマー100質量部に、シリカを100質量部以上、180質量部以下、軟化点が120℃以上、180℃以下のロジン誘導体を5質量部以上、50質量部以下の範囲で配合してなることを特徴とする高減衰組成物である。
本発明によれば、粘着性付与剤として軟化点が120℃以上のロジン誘導体を配合することにより、充填剤として加工性低下の主原因であるカーボンブラックを配合することなく、またロジン誘導体や充填剤としてのシリカの配合量を従来と同等程度に維持して、高減衰組成物の加工性を良好に維持しながら、前記高減衰組成物を用いて形成される高減衰部材の減衰性能を現状よりも向上できる。
【0007】
そのため本発明の高減衰組成物を用いて、例えば高減衰部材としての、ビル等の免震用のダンパを形成する場合には、個々のダンパの減衰性能を現状よりも高めることにより、1つのビルに要するダンパの個数を減らすことができる。
また本発明の高減衰組成物によれば、粘着性付与剤として配合するロジン誘導体として、軟化点が前記範囲内でも異なるものを選択して使用することにより、前記ロジン誘導体やシリカの配合量を前記範囲内で調整することと相まって、高減衰部材の減衰性能設計の自由度を向上でき、減衰性能を高減衰部材の設計に織り込む際に有利である。
【0008】
ベースポリマーとしては、シリカおよびロジン誘導体の配合により高い減衰性能を発揮しうる種々のベースポリマーがいずれも使用可能である。ただし、特に減衰性能の温度依存性を小さくして、広い温度範囲で安定した減衰性能を示す高減衰部材を提供することを考慮すると、前記ベースポリマーとしては天然ゴム、イソプレンゴム、およびブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴムが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な加工性を維持しつつ、現状よりも減衰性能が向上した高減衰部材を製造できる高減衰組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例、比較例の高減衰組成物からなる高減衰部材の減衰性能を評価するために作製する高減衰部材のモデルとしての試験体を分解して示す分解斜視図である。
【図2】同図(a)(b)は、前記試験体を変位させて変位量と荷重との関係を求めるための試験機の概略を説明する図である。
【図3】前記試験機を用いて試験体を変位させて求められる、変位量と荷重との関係を示すヒステリシスループの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の高減衰組成物は、ベースポリマー100質量部に、シリカを100質量部以上、180質量部以下、軟化点が120℃以上、180℃以下のロジン誘導体を5質量部以上、50質量部以下の範囲で配合してなることを特徴とする。
ベースポリマーとしては、シリカおよびロジン誘導体の配合により、またゴムの場合はさらに加硫することにより高い減衰性能を発揮しうる種々のベースポリマーがいずれも使用可能であり、中でもゴムが好ましい。
【0012】
前記ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ノルボルネンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0013】
特に、減衰性能の温度依存性を小さくして広い温度範囲で安定した減衰性能を示す高減衰部材を提供することを考慮すると、前記の中でも天然ゴム、イソプレンゴム、およびブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴムが好ましい。
シリカとしては、その製法によって分類される湿式法シリカ、乾式法シリカのいずれを用いてもよい。またシリカとしては、充填剤として機能して高減衰部材の減衰性能を向上する効果を向上することを考慮すると、BET比表面積が100〜400m2/g、特に200〜250m2/gであるものが好ましい。BET比表面積は、例えば柴田化学器械工業(株)製の迅速表面積測定装置SA−1000等を使用して、吸着気体として窒素ガスを用いる気相吸着法で測定した値でもって表すこととする。
【0014】
シリカの配合量は、ベースポリマー100質量部あたり100質量部以上、180質量部以下である必要がある。配合量が100質量部未満では、シリカを配合することによる、高減衰部材の減衰性能を向上する効果が得られず、180質量部を超える場合には高減衰組成物の加工性が低下して、高減衰部材を製造するために前記高減衰組成物を混練したり任意の形状に成形加工したりするのが容易でなくなってしまう。
【0015】
なおシリカの配合量は、高減衰組成物の良好な加工性を維持しつつ、より一層減衰性能が向上した高減衰部材を製造することを考慮すると、前記範囲内でも135質量部以上、180質量部以下であるのが好ましい。
ロジン誘導体としては、例えばロジンと多価アルコール(グリセリン等)とのエステルやロジン変性マレイン酸樹脂等の、構成成分としてロジンを含む樹脂であって、粘着性付与剤として機能して高減衰部材の減衰性能を向上する効果を有する種々の誘導体の中から、軟化点が120℃以上、180℃以下であるものが選択して用いられる。またロジン誘導体の配合量は、ベースポリマー100質量部あたり5質量部以上、50質量部以下である必要がある。
【0016】
軟化点が120℃未満であるロジン誘導体は、ベースポリマー100質量部あたり5質量部以上、50質量部以下の範囲の配合では、高減衰部材の減衰性能を向上する効果が得られない。また高減衰組成物の加工性が低下して、高減衰部材を製造するために前記高減衰組成物を混練したり任意の形状に成形加工したりするのが容易でなくなってしまう。
一方、軟化点が180℃を超えるロジン誘導体を、ベースポリマー100質量部あたり5質量部以上、50質量部以下の範囲で配合した場合には高減衰組成物の加工性が低下して、高減衰部材を製造するために前記高減衰組成物を混練したり任意の形状に成形加工したりするのが容易でなくなってしまう。
【0017】
前記ロジン誘導体の軟化点は、高減衰組成物の良好な加工性を維持しつつ、より一層減衰性能が向上した高減衰部材を製造することを考慮すると、前記範囲内でも120℃以上、160℃以下であるのが好ましい。
また軟化点が前記120℃以上、180℃以下の範囲内であるロジン誘導体の配合量が5質量部未満では、高減衰部材の減衰性能を向上する効果が得られない。また高減衰組成物の加工性が低下して、高減衰部材を製造するために前記高減衰組成物を混練したり任意の形状に成形加工したりするのが容易でなくなってしまう。
【0018】
一方、前記配合量が50質量部を超える場合には高減衰組成物の加工性が低下して、高減衰部材を製造するために前記高減衰組成物を混練したり任意の形状に成形加工したりするのが容易でなくなってしまう。
なおロジン誘導体の配合量は、高減衰組成物の良好な加工性を維持しつつ、より一層減衰性能が向上した高減衰部材を製造することを考慮すると、前記範囲内でも10質量部以上、50質量部以下であるのが好ましい。
【0019】
なお軟化点は、日本工業規格JIS K2207−1996「石油アスファルト」所載の軟化点試験方法(環球法)によって測定した値でもって表すこととする。
軟化点が120℃以上、180℃以下の範囲内にあるロジン誘導体としては、例えば、いずれもハリマ化成(株)製の商品名ハリエスターシリーズのうちMSR−4(軟化点:127℃)、DS−130(軟化点:135℃)、AD−130(軟化点:135℃)、DS−816(軟化点:148℃)、DS−822(軟化点:172℃)、ハリマ化成(株)製の商品名ハリマックシリーズのうち145P(軟化点:138℃)、135GN(軟化点:139℃)、AS−5(軟化点:165℃)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0020】
本発明の高減衰組成物には、前記各成分に加えて、さらに石油樹脂、クマロン樹脂等の、ロジン誘導体以外の他の粘着性付与剤を配合してもよい。前記他の粘着性付与剤の配合量は、高減衰部材の減衰特性に応じて適宜設定すればよい。
またベースポリマーがゴムである場合、高減衰組成物には加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤等の添加剤を適宜の割合で配合してもよい。
【0021】
本発明の高減衰組成物は、前記各成分を任意の混練機を用いて混練して得られ、所定の形状に成形後、ベースポリマーがゴムである場合には加硫することで、所定の減衰特性を有する高減衰部材を形成できる。
本発明の高減衰組成物を用いて形成できる高減衰部材としては、例えばビル等の建造物の基礎に組み込まれる免震用のダンパ、吊橋や斜張橋等のケーブルの制振部材、産業機械や航空機、自動車、鉄道車両等の防振部材、コンピュータやその周辺機器類、あるいは家庭用電気機器類等の防振部材、さらには自動車用タイヤのトレッド等が挙げられる。本発明によれば、ベースポリマーに配合するシリカの配合量、およびロジン誘導体の軟化点、前記ロジン誘導体の配合量を前記範囲内で調整したり、ベースポリマーやシリカの種類を選択したりすることにより、前記それぞれの用途に適した優れた減衰性能を有する高減衰部材を得ることができる。
【実施例】
【0022】
〈実施例1〉
ベースポリマーとしての天然ゴム〔SMR(Standard Malaysian Rubber)−CV60〕100質量部に、充填剤としてのシリカ〔東ソー・シリカ(株)製のNipsil(ニップシール)KQ〕100質量部、ロジン誘導体〔ロジン変性マレイン酸樹脂、軟化点139℃、ハリマ化成(株)製のハリマック135GN〕20質量部と、下記の各成分とを配合し、密閉式混練機を用いて混練して高減衰組成物を調製した。
【0023】
樹脂:ジシクロペンタジエン系石油樹脂〔軟化点105℃、丸善石油化学(株)製のマルカレッツ(登録商標)M−890A〕25質量部
樹脂:クマロン樹脂〔軟化点90℃、日塗化学(株)製のエスクロン(登録商標)G−90〕10質量部
老化防止剤:ベンズイミダゾール系老化防止剤〔2-メルカプトベンズイミダゾール、大内新興化学(株)製のノクラック(登録商標)MB〕2質量部
老化防止剤:キノン系老化防止剤〔丸石化学品(株)製のアンチゲンFR〕2質量部
加硫剤:5%オイル処理粉末硫黄〔鶴見化学工業(株)製〕1.58質量部
加硫促進剤:スルフェンアミド系加硫促進剤〔N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学(株)製のノクセラー(登録商標)NS〕1質量部
加硫促進剤:チウラム系加硫促進剤〔大内新興化学(株)製のノクセラーTBT-N〕0.7質量部
加硫促進助剤:酸化亜鉛2種〔三井金属鉱業(株)製〕4質量部
加硫促進助剤:ステアリン酸〔日油(株)製の「つばき」〕1質量部
〈実施例2〜4、比較例1〜4〉
天然ゴム100質量部に対するシリカの配合量を20質量部(比較例1)、40質量部(比較例2)、80質量部(比較例3)、135質量部(実施例2)、150質量部(実施例3)、180質量部(実施例4)、および225質量部(比較例4)としたこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
【0024】
前記各実施例、比較例について下記の各試験を行ない、その特性を評価した。
〈減衰特性評価〉
(試験体の作製)
実施例、比較例で調製した高減衰組成物をシート状に押出成形したのち打抜いて、図1に示すように厚み5mm×直径25mmの円板1を作製し、前記円板1の表裏両面に、それぞれ加硫接着剤を介して厚み6mm×縦44mm×横44mmの矩形平板状の鋼板2を重ねて積層方向に加圧しながら150℃に加熱して円板1を構成する高減衰組成物を加硫させると共に、前記円板1を2枚の鋼板2と加硫接着させて、高減衰部材のモデルとしての減衰特性評価用の試験体3を作製した。
【0025】
(変位試験)
図2(a)に示すように前記試験体3を2個用意し、前記2個の試験体3を、一方の鋼板2を介して1枚の中央固定治具4にボルトで固定すると共に、それぞれの試験体3の他方の鋼板2に、1枚ずつの左右固定治具5をボルトで固定した。そして中央固定治具4を、図示しない試験機の上側の固定アーム6に、ジョイント7を介してボルトで固定し、かつ2枚の左右固定治具5を、前記試験機の下側の可動盤8に、ジョイント9を介してボルトで固定した。
【0026】
次にこの状態で、可動盤8を図中に白抜きの矢印で示すように固定アーム6の方向に押し上げるように変位させて、図(b)に示すように試験体3のうち円板1を、試験体3の積層方向と直交方向に歪み変形させた状態とし、次いでこの状態から、可動盤8を図中に白抜きの矢印で示すように固定アーム6の方向と反対方向に引き下げるように変位させて図(a)に示す状態に戻す操作を1サイクルとして、前記試験体3の円板1を繰り返し歪み変形、すなわち振動させた際の、前記変位量(mm)と荷重(N)との関係を示すヒステリシスループH(図3参照)を求めた。
【0027】
測定は、前記操作を3サイクル行って3回目の値を求めた。また最大変位量は、円板1を挟む2枚の鋼板2の、積層方向と直交方向のずれ量が、前記円板1の厚みの1%となるように設定した。
次いで、前記測定により求めた図3に示すヒステリシスループHのうち最大変位点と最小変位点とを結ぶ、図中に太線の実線で示す直線L1の傾きKeq(N/mm)を求め、前記傾きKeq(N/mm)と、円板1の厚みT(mm)と、円板1の断面積A(mm2)とから、式(1):
【0028】
【数1】

により等価せん断弾性率Geq(N/mm2)を求めた。
また図3中に斜線で示した、ヒステリシスループHの全表面積で表される吸収エネルギー量ΔWと、同図中に網線で示した、前記直線L1と、グラフの横軸と、直線L1とヒステリシスループHとの交点から前記横軸におろした垂線L2とで囲まれた領域の表面積で表される弾性歪みエネルギーWとから、式(2):
【0029】
【数2】

により等価減衰定数Heqを求めた。等価減衰定数Heqが大きいほど、試験体3は減衰性能に優れていると判定できる。実施例、比較例の場合は等価減衰定数Heqが0.35以上であるものを減衰性能良好、0.35未満であるものを減衰性能不足として評価した。
【0030】
〈加工性評価〉
所定の成分を混練して前記実施例、比較例の高減衰組成物を調整する際、ならびに前記高減衰組成物を押出成形して、試験体3の円板1のもとになるシートを作製する際に、作業が困難であったかどうかを判定し、作業が困難でなかった場合を加工性良好(○)、困難であった場合を加工性不良(×)として評価した。
【0031】
以上の結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

表1の比較例1〜4の結果より、ベースポリマーとしての天然ゴム100質量部に対するシリカの配合量が100質量部未満では、高減衰部材の減衰性能が不十分であり、180質量部を超える場合には加工性が低下することが判った。
【0033】
これに対し、実施例1〜4の結果より、ベースポリマーとしての天然ゴム100質量部に対するシリカの配合量を100質量部以上、180質量部以下の範囲内とすれば、良好な加工性を維持しつつ、現状よりも減衰性能を向上できることが確認された。
〈実施例5〜7、比較例5、6〉
天然ゴム100質量部に対するハリマック135GNの配合量を4質量部(比較例5)、10質量部(実施例5)、30質量部(実施例6)、50質量部(実施例7)、および55質量部(比較例6)としたこと以外は実施例2と同様にして高減衰組成物を調製した。
【0034】
〈比較例7、8〉
ロジン誘導体に代えて、同量のキシレン樹脂(比較例7)、アスファルト(比較例8)を配合したこと以外は実施例2と同様にして高減衰組成物を調製した。
前記各実施例、比較例について先の各試験を行ない、その特性を評価した。結果を、実施例2の結果と併せて表2に示す。
【0035】
【表2】

表2の比較例5、6の結果より、ベースポリマーとしての天然ゴム100質量部に対するロジン誘導体の配合量が5質量部未満では、高減衰部材の減衰性能が不十分で、しかも加工性が低下し、50質量部を超える場合には加工性が低下することが判った。
【0036】
また比較例7、8の結果より、ロジン誘導体に代えてキシレン樹脂を配合した場合には加工性が低下し、アスファルトを配合した場合には高減衰部材の減衰性能が不十分で、しかも加工性が低下することが判った。
これに対し、実施例2、5〜7の結果より、キシレン樹脂やアスファルトに代えてロジン誘導体を配合すると共に、ベースポリマーとしての天然ゴム100質量部に対する前記ロジン誘導体の配合量を5質量部以上、50質量部以下の範囲内とすれば、良好な加工性を維持しつつ、現状よりも減衰性能を向上できることが確認された。
【0037】
〈比較例9〉
ハリマック135GNに代えて、軟化点71℃のロジン誘導体〔ロジン変性グリセリンエステル、軟化点71℃、ハリマ化成(株)製のハリエスターS〕を同量配合したこと以外は実施例2と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈比較例10〉
ハリマック135GNに代えて、軟化点90℃のロジン誘導体〔ロジンエステル樹脂、軟化点90℃、ハリマ化成(株)製のハリエスターK−90〕を同量配合したこと以外は実施例2と同様にして高減衰組成物を調製した。
【0038】
〈比較例11〉
ハリマック135GNに代えて、軟化点101℃のロジン誘導体〔ロジン変性マレイン酸樹脂、軟化点101℃、ハリマ化成(株)製のハリマックR−100〕を同量配合したこと以外は実施例2と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈比較例12〉
ハリマック135GNに代えて、軟化点102℃のロジン誘導体〔ロジンエステル、軟化点102℃、ハリマ化成(株)製のハリエスターSP−100〕を同量配合したこと以外は実施例2と同様にして高減衰組成物を調製した。
【0039】
〈実施例8〉
ハリマック135GNに代えて、軟化点127℃のロジン誘導体〔ロジン変性特殊合成樹脂、軟化点127℃、ハリマ化成(株)製のハリエスターMSR−4〕を同量配合したこと以外は実施例2と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈実施例9〉
ハリマック135GNに代えて、軟化点135℃のロジン誘導体〔ロジン変性特殊合成樹脂、軟化点135℃、ハリマ化成(株)製のハリエスターDS−130〕を同量配合したこと以外は実施例2と同様にして高減衰組成物を調製した。
【0040】
〈実施例10〉
ハリマック135GNに代えて、軟化点148℃のロジン誘導体〔ロジンエステル、軟化点148℃、ハリマ化成(株)製のハリエスターDS−816〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈実施例14〉
ハリマック135GNに代えて、軟化点172℃のロジン誘導体〔ロジンエステル、軟化点172℃、ハリマ化成(株)製のハリエスターDS−822〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
【0041】
〈比較例13〉
ハリマック135GNに代えて、軟化点183℃のロジン誘導体〔ロジン変性特殊合成樹脂、軟化点183℃、ハリマ化成(株)製のハリエスターKT−2〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
前記各実施例、比較例について先の各試験を行ない、その特性を評価した。結果を、実施例2の結果と併せて表3、表4に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

表3の比較例9〜12の結果より、ロジン誘導体として軟化点が120℃未満であるものを用いた場合には、高減衰部材の減衰性能が不十分になったり、加工性が低下したりすることが判った。
【0044】
また比較例13の結果より、ロジン誘導体として軟化点が180℃を超えるものを用いた場合には加工性が低下することが判った。
これに対し、実施例2、9〜11の結果より、ロジン誘導体として軟化点が120℃以上、180℃以下であるものを用いれば、良好な加工性を維持しつつ、現状よりも減衰性能を向上できることが確認された。
【符号の説明】
【0045】
1 円板
2 鋼板
3 試験体
4 中央固定治具
5 左右固定治具
6 固定アーム
7 ジョイント
8 可動盤
9 ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリマー100質量部に、シリカを100質量部以上、180質量部以下、軟化点が120℃以上、180℃以下のロジン誘導体を5質量部以上、50質量部以下の範囲で配合してなることを特徴とする高減衰組成物。
【請求項2】
ベースポリマーが天然ゴム、イソプレンゴム、およびブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴムである請求項1記載の高減衰組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−189604(P2010−189604A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38012(P2009−38012)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】