説明

高温液状物質の熱伝導度測定用センサー

【課題】 本発明は、金属融液などの高温液状物質の熱伝導度を精度良く測定することが可能であり、かつ耐久性を有するセンサーを提供することを課題とする。
【解決手段】 金属箔からなるセンサー部と該センサー部の両面を覆うように配置した絶縁性薄板とを有し、金属箔と絶縁性薄板との間に発生する隙間に無機微粉末が充填された構造を備えていることを特徴とする高温液状物質の熱伝導度測定用センサー。金属箔と絶縁性薄板を絶縁性厚板で保持した構造からなり、該絶縁性厚板は金属箔からなるセンサー部が前記絶縁性薄板を介して高温液状物質と接触するための開口部を備え、該開口部はセンサー部より大きく、熱伝導度測定を妨げない構造を備えていることを特徴とする請求項1記載の高温液状物質の熱伝導度測定用センサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温液状物質の熱伝導度を測定するセンサーに関するものであり、さらに詳しくはホットディスク法によって高温液状物質の熱伝導度を測定するセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
石油や金属の精錬、半導体単結晶の製造、ボイラーでの熱交換など、液状物質からの熱移動を伴う過程は工業的に広く利用されている。
これらの熱移動を伴う過程を把握することは、製造工程やエネルギーの効率化を行う上で重要である。また、近年のスーパーコンピューターを用いたコンピュータシミュレーションによる熱や物質の流れなどの物理現象の解析は、半導体材料の結晶成長や金属凝固のプロセスを理解し改善していく上で、極めて有効な手段となってきている。しかし、コンピューターで計算をするためには、計算の境界条件をより現実のものにすると同時に、正確な熱物性値を必要としている。
【0003】
熱伝導度は重要な熱物性値の一つである。物質の熱伝導度を測定する方法としては、定常法と非定常法に大別され、代表的な測定法として、定常法では平行平板法、非定常法では細線加熱法が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
平行平板法は、一定面積を通過する熱量から熱伝導度を測定する方法であり、しばしば絶縁体の熱伝導度測定に使用されるが、測定時間が長く、必要とされる試料サイズも大きい。また、試料が液状物質の場合は、熱対流による大きな誤差が生じやすい。
【0004】
細線加熱法は、試料中に張られた金属細線をステップ状に通電加熱し、その時の細線の温度応答を測定することによって熱伝導度を測定する方法であり、短時間で測定が可能、電気的な発熱のため試料に供給した熱量が正確などの特徴があるが、基本的には絶縁体しか測定できない。
また、金属細線をセラミックスでコーティングしたものをセンサーとして用いることにより電気伝導性のある固体及び液状物質に対応した方法も考え出されているが(例えば、特許文献1参照)、ピンホールやクラックのないコーティング層を金属細線表面に形成することは極めて困難である。
【0005】
ホットディスク法は、細線加熱法を発展させた熱伝導度測定法としてS.E.Gustafsson氏によって開発された熱伝導度測定法である(例えば、非特許文献2参照)。2重螺旋状に加工した金属箔を絶縁薄膜で被覆したディスク状(ホットディスク)センサーを用いることを特徴としており、絶縁体から導体までの熱伝導度の測定を可能とし、より精密な理論計算に基づく測定精度の向上が図られている。
【0006】
ホットディスク法の測定原理は以下のように説明されている。ある一定の電流をホットディスクセンサーに加えると、発熱に伴ってホットディスクセンサーの電気抵抗が変化する。通電開始からある時間tが経過した時のホットディスクセンサーの電気抵抗をR(t)とすると、
R(t)=R[1+αΔT(τ)] (1)
と表現できる。
ここで、Rは測定前のホットディスクセンサーの電気抵抗、αは電気抵抗の温度係数、ΔT(τ)はある時間τにおけるホットディスクセンサーの温度上昇を表している。
【0007】
この式では、温度上昇はただ1つの変数τの関数として表現されており、τは以下のように定義されている。
τ=(t/θ)1/2、θ=d/κ
(2)
ここで、dはホットディスクセンサーの半径、κは試料の熱拡散率であり、θはCharacteristic timeと呼ばれている。
ホットディスクセンサーでは、ΔT(τ)は以下の式によって与えられる。
ΔT(τ)=P(π3/2dλ)ー1D(τ) (3)
ここで、Pは全体の供給した熱量、λは試料の熱伝導度、D(τ)は時間に依存した温度上昇の理論的な表現である。
(3)式を(1)式に代入すると、
R(t)=R[1+αP(π3/2dλ)ー1D(τ)]
(4)
が得られる。
【0008】
θが適切な値を取る時、R(t)とD(τ)は直線関係を示す。実際の計算では、θを任意に変化させ、最小自乗法によって最も直線に近い関係を見つけ、その時の、θの値と直線の傾きから熱拡散率と熱伝導度が求められる。
この計算によって熱拡散率と熱伝導度が同時に求められるのは、測定に要した時間がθの0.5〜1倍の場合であり、測定範囲が上記の範囲を逸脱した場合には、以下に示す単位体積あたりの比熱を既知として代入することによって求めることができる。
熱拡散率と熱伝導度の間には、以下に示す関係がある。
λ=Cκ (5)
ここで、Cは試料の単位体積あたりの比熱である。ホットディスク法では、上記で求めた熱拡散率と熱伝導度から(5)式によって比熱を求めることができる。
【0009】
通常、ホットディスク法では、2重螺旋状に加工したニッケル金属箔(厚さ10μm)をカプトン(ポリイミド系プラスチック)絶縁性薄膜(厚さ25μm)で被覆したディスク状(ホットディスク)センサーを用いる。
このセンサーの耐熱温度は約200°Cであり、ほとんどの金属の融点より低いため、金属融液などの高温液状物質の熱伝導度測定には使用することができない。また、絶縁性薄膜に雲母(厚さ100μm)を用いたセンサーでは約700°Cまでの高温環境で固体試料の熱伝導度測定が可能であるが、雲母同士の貼り合わせや強度に問題があり、高温液状物質の測定には使用できない。
【0010】
また、本発明者等により、2重螺旋状に加工したモリブデン金属箔を窒化アルミニウム絶縁薄膜で被覆し、それらを酸化アルミニウム無機接着剤で貼り合わせたホットディスクセンサーが溶融シリコンの熱伝導度測定用に開発した(例えば、非特許文献3参照)。
しかし、これは窒化アルミニウム絶縁性薄板とモリブデン金属箔の隙間に多量に存在する無機接着剤のため感度が悪く、溶融シリコンが無機接着剤自身と反応してセンサー内に徐々に浸入するなどの耐久性が悪い問題がある。
【特許文献1】特開平1−105151号公報
【非特許文献1】「拡散と移動現象」培風館発行、初版(平成8年)、第68頁
【非特許文献2】S.E.Gustafsson著、「Transient plane source techniques for thermal conductivity and thermal diffusivity measurements of solid materials」 Rev.Sci.Instrum.62(3)、797(1991)]
【非特許文献3】永井秀明、外6名著「Thermal Conductivity Measurement of Molten Silicon by a Hot−Disk Method in Short−Duration Microgravity Environments」、Jpn.J.Appl.Phys. 39(3A)、1405(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決することを目的とし、金属融液などの高温液状物質の熱伝導度を精度良く測定することが可能であり、かつ耐久性を有するセンサーを提供することを課題とする。
を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題に鑑み、
1)金属箔からなるセンサー部と該センサー部の両面を覆うように配置した絶縁性薄板とを有し、金属箔と絶縁性薄板との間に発生する隙間に無機微粉末が充填された構造を備えていることを特徴とする高温液状物質の熱伝導度測定用センサー
2)金属箔と絶縁性薄板を絶縁性厚板で保持した構造からなり、該絶縁性厚板は金属箔からなるセンサー部が前記絶縁性薄板を介して高温液状物質と接触するための開口部を備え、該開口部はセンサー部より大きく、熱伝導度測定を妨げない構造を備えていることを特徴とする上記1)記載の高温液状物質の熱伝導度測定用センサー
3)絶縁性厚板の開口部は円形若しくは楕円形又は矩形であり、その面積はセンサー部よりも大きいことを特徴とする上記2)記載の高温液状物質の熱伝導度測定用センサー
4)金属箔として、モリブデン、タンタル、タングステン、ニオブ、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、レニウム、ジルコニウム等の高融点金属及びこれらを基とする合金から選択した1又はそれ以上の金属箔又は合金箔からなることを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載の高温液状物質の熱伝導度測定用センサー
を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱伝導度測定用センサーを使用することにより、金属融液などの高温液状物質の熱伝導度をホットディスク法によって精度良く測定することが可能となり、かつ耐久性を有するセンサーを提供することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の特徴を具体的に説明する。なお、以下の説明は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、以下の説明に制限されるものではない。すなわち、本願発明の技術思想に基づく変形、実施態様、他の例は、本願発明に全て含まれるものである。
【0015】
本発明で用いる高温液状物質の熱伝導度測定のためのセンサーは、ホットディスク法による高温液状物質の熱伝導度を測定するためのものである。
本発明で用いるホットディスクセンサーの金属箔は、モリブデン、タンタル、タングステン、ニオブ、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム等の高融点金属箔又はこれらを基とする合金(例えば白金−ロジウム、タングステンーレニウム等)の箔を使用することができる。
【0016】
一般に、高融点金属箔は、その微粒子の焼結及び圧延・ 鍛造などによって製造されるため、バルク材と比較して加工ひずみが大きく、表面積が広い。
そのため、融点以下の温度でも表面積を小さくする方向や加工ひずみを解放する方向に収縮や変形を起こす。例えば、白金(融点1772°C)の金属箔(厚さ20μm)をアルゴン中、1450°Cに加熱したところ、粒状化し、金属箔としての形状を維持することができなかった。
この様な現象は一般に拡散現象によって達成されるため、融点の2/3程度の温度から起こると言われている(例えば、「金属学ハンドブック」、初版(昭和33年)、472頁(朝倉書店))。
したがって、センサーに用いる金属箔の材質は、センサーの使用温度の3/2倍程度以上の融点を持つものを選択するのが望ましい。金属箔のセンサー部は、2重螺旋状や直線上の帯を折りたたんだ四角形状など、通電時にセンサー部が面状に加熱される形状であれば特に制約はない。
【0017】
本発明で用いる絶縁体からなる薄板及び厚板は、ホットディスクセンサーの使用温度において電気的絶縁性が確保されており、高温液状物質と化学的な反応が無いあるいは乏しい材質であれば特に限定されない。
このための好適な材料としては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化硼素、石英ガラスなどのセラミックス材料が挙げることができる。
【0018】
これらの材料は一般に緻密で、融液の浸入の原因となるピンホールやクラックのないものが容易に入手可能である。通常入手可能なものは500μm以上の厚みを持った厚板であるが、機械的研磨やイオンエッチングなどによって薄板化が可能である。
ホットディスクセンサーとして用いる絶縁体からなる薄板(絶縁性薄板)の厚みは、ホットディスクセンサーの、センサー部の直径の約100倍以下が望ましく、通常は5〜500μm厚の範囲であり、好ましくは、10〜200μm厚である。
本発明で用いる絶縁体からなる厚板(絶縁性厚板)には、金属箔からなるセンサー部が前記絶縁性薄板を介して高温液状物質と接触するための開口部が設けられており、該開口部はセンサー部より大きく、熱伝導度測定を妨げない構造となっている。その絶縁性厚板の開口部の例としては、円形若しくは楕円形又は矩形とすることができ、その面積はセンサー部よりも大きくする。
【0019】
金属箔又は合金箔センサー部を間にして両側に絶縁性薄膜を配置するが、これは物理的に積層される構造となるため、センサー部と絶縁性薄膜の間に隙間を生ずる問題がある。従来は両者の密着性を高めるために無機質性の接着剤を用いたが、無機接着剤のために感度が悪くなり、また溶融シリコンが無機接着剤自身と反応してセンサー内に徐々に浸入するなどの問題を生じた。
本発明は、この接着剤に替えて無機微粉末を用いることによって、このような問題を一挙に解決することが可能となった。
【0020】
この無機微粉末の材料としては、ホットディスクセンサーの使用温度において電気的絶縁性が確保されており、高温液状物質と化学的な反応が無いあるいは乏しい材質であれば特に限定されない。このための材料としては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化硼素、石英ガラスなどのセラミックス材料の微粉末を使用することができる。
これらの微粉末を水や有機溶媒などに分散・縣濁させたものを金属箔又は合金箔からなるセンサー部と絶縁性薄板の隙間に充填・乾燥することによって、金属箔又は合金箔からなるセンサー部と絶縁性薄板を直接接触させた状態で物理的に生じた隙間を埋めることができる。
これによって、隙間への高温液状物質の浸入を阻止するのに寄与し、金属箔からなるセンサー部と絶縁性薄板との密着性を良くすることが可能となった。
【0021】
本発明では、金属箔、絶縁性薄板及び厚板を固定するために、ネジやボルト、ナットなどによる機械的な締め付け、あるいは金属箔からなるセンサー部に接触しない範囲での無機接着剤などの耐熱接着剤を用いる。
固定用のネジ、ボルト、ナットは、センサーの使用温度より高い融点を持ち、高温液状物質と化学的な反応が無いあるいは乏しい材質であれば良く、特に限定されない。
この様な材料としては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化硼素、石英ガラスなどのセラミックス材料が挙げられる。また、耐熱接着剤は、高温液状物質と化学的な反応が無いあるいは乏しい材質であれば良く、特に限定されない。
【0022】
本明細書で使用している「高温液状物質」の用語は、通常500°C以上、特に好適には700°C以上の液体状態の金属や半導体、セラミックス、ガラスが意図されている。しかし、本願発明はこれらの材料に制限される必要はなく、上記以外の材料の熱伝導度測定用センサーとして使用できることは知るべきである。
【実施例】
【0023】
次に、本発明を実施例によりさらに詳述する。なお、以下の説明は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、以下の実施例に制限されるものではない。すなわち、本願発明の技術思想に基づく変形、実施態様、他の例は、本願発明に全て含まれるものである。
【0024】
(A)熱伝導度測定装置
本実施例においては、図1に示す熱伝導度測定装置に基づいて説明する。本装置は、(1)ホットディスクセンサー1、(2)ホットディスクセンサー1への電流供給およびセンサーの抵抗測定を行うソースメーター2、(3)ソースメーターの制御およびデータ取得、データ解析を行うコンピューター3、(4)測定試料を高温加熱するための電気抵抗加熱炉を持つ雰囲気制御の可能なチャンバー4の4点からなっている。
本装置では、ホットディスクセンサー1は、ヒーター5と温度計測プローブの両方の役割を果たしており、測定試料を所定の温度に加熱・保持した後に、センサー1に一定の電流を流して発熱させ、発熱によるセンサー1の温度上昇の経時変化をセンサー1の抵抗変化から測定することによって測定試料(高温液状試料)6の熱伝導度を求める。
【0025】
ホットディスクセンサー1は、図2に示すように、(1)センサー部を2重螺旋状に加工した、例えばモリブデン金属箔7(厚さ20μm、センサー部直径:6.1mm)、(2)機械的に研磨した窒化アルミニウム薄板8(17mm×17mm、厚さ50μm)、(3)窒化硼素微粉体(オキツモ株式会社製、ボロンコート使用)、(4)窒化アルミニウム厚板9(17mm×50mm、厚さ0.6mm)を用いて作製したものであり、これらを酸化アルミニウム製ボルトとナットによって固定した。符号10は厚板に設けた開口部である。
【0026】
(B)高温液状物質の熱伝導度測定
組立てたホットディスクセンサー1のセンサー部が全部浸積するように、ビスマス47g及びスズ33gの粒状物を酸化アルミニウム製試料容器(直径:17mm、高さ:50mm)にホットディスクセンサー1とともに入れ、一旦アルゴン中で溶融した後、窒化硼素製の板(厚さ1mm)で測定試料上部の自由界面を覆った状態で熱伝導度測定を行った。
今回行った測定では、測定時間がθより大きいため、試料の単位体積あたりの比熱を既知として熱伝導度を計算した。
【0027】
(C)溶融ビスマスの熱伝導度
初期温度500°Cの溶融ビスマスにおいて、センサー出力:2.0W、測定時間:1.25秒、溶融ビスマスの単位体積あたりの比熱:1.35×10J/m・Kで求めた熱伝導度は14.5W/m・Kであった。
文献で報告されている溶融ビスマスの熱伝導度の値は、500°Cにおいて13.4〜16W/m・Kであり(「THERMOPHYSICAL PRPPERTIES OF MATTER」、1巻(1970)、25頁(IFI/PLENUM)参照)、本実験の結果は、文献値と良い一致を示していた。
【0028】
(D)溶融スズの熱伝導度
初期温度500°Cの溶融スズにおいて、センサー出力:2.0W、測定時間:0.63秒、溶融ビスマスの単位体積あたりの比熱:1.64×10J/m・Kで求めた熱伝導度は34.4W/m・Kであった。
文献で報告されている溶融スズの熱伝導度の値は、500°Cにおいて29.4〜35.8W/m・Kであり(「THERMOPHYSICAL PRPPERTIES OF MATTER」、1巻(1970)、389頁(IFI/PLENUM)参照)、本実験の結果は、文献値と良い一致を示していた。
【0029】
また、初期温度700°Cの溶融スズにおいて、センサー出力:2.0W、測定時間:0.63秒、溶融ビスマスの単位体積あたりの比熱:1.68×10J/m・Kで求めた熱伝導度は36.5W/m・Kであった。
文献で報告されている溶融スズの熱伝導度の値は、700°Cにおいて29.5〜39.9W/m・Kであり、本実験の結果は、文献値と良い一致を示していた。
【0030】
測定終了後、凝固した試料とホットディスクセンサー1の断面を走査型電子顕微鏡で観察したが、ホットディスクセンサー内部に溶融物が浸入した形跡は見つけられなかった。また、金属箔と絶縁性薄板との密着性は良かった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、金属融液などの高温液状物質の熱伝導度をホットディスク法によって精度良く測定することが可能となり、かつ耐久性を有するセンサーを提供することができるという優れた効果を有するので、熱伝導度測定用センサーとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ホットディスク法の装置構成の説明図である。
【図2】本発明のホットディスクセンサー基本構造の概略説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1:ホットディスクセンサー
2:ソースメーター
3:コンピューター
4:チャンバー
5:ヒーター
6:高温液状試料
7:金属箔
8:絶縁性薄板
9:絶縁性厚板
10:開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔からなるセンサー部と該センサー部の両面を覆うように配置した絶縁性薄板とを有し、金属箔と絶縁性薄板との間に発生する隙間に無機微粉末が充填された構造を備えていることを特徴とする高温液状物質の熱伝導度測定用センサー。
【請求項2】
金属箔と絶縁性薄板を絶縁性厚板で保持した構造からなり、該絶縁性厚板は金属箔からなるセンサー部が前記絶縁性薄板を介して高温液状物質と接触するための開口部を備え、該開口部はセンサー部より大きく、熱伝導度測定を妨げない構造を備えていることを特徴とする請求項1記載の高温液状物質の熱伝導度測定用センサー。
【請求項3】
絶縁性厚板の開口部は円形若しくは楕円形又は矩形であり、その面積はセンサー部よりも大きいことを特徴とする請求項2記載の高温液状物質の熱伝導度測定用センサー。
【請求項4】
金属箔として、モリブデン、タンタル、タングステン、ニオブ、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、レニウム、ジルコニウム等の高融点金属及びこれらを基とする合金から選択した1又はそれ以上の金属箔又は合金箔からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高温液状物質の熱伝導度測定用センサー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−242734(P2006−242734A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58414(P2005−58414)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】