説明

高濃度天然炭酸鉱泉の連続昇温法

【課題】高濃度天然炭酸鉱泉を昇温して、温浴として温熱効果も期待できる体温もしくは体温以上の高濃度炭酸泉にすべく、遊離炭酸ガスの気化によるガス抜けを最小限にする連続的な昇温方法を提供する。
【解決手段】炭酸ガスの気化によるガス抜けを最小限にするため、高濃度炭酸鉱泉の加温に熱交換器を使うが、その際、炭酸鉱泉と湯などの加温流体とを向流式で流して緩やかな温度勾配を作ることで、高濃度炭酸鉱泉を連続昇温する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【発明分野】
【0001】
本発明は、高濃度天然炭酸鉱泉を昇温して、温浴として温熱効果も期待できる体温もしくは体温以上の高濃度炭酸泉にすべく、遊離炭酸ガスの気化によるガス抜けを最小限にする連続的な昇温方法である。これにより、従来浴用としては適さないとされてきた高濃度天然炭酸鉱泉を、温泉として資源化する。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガスは一般にガスとして水に溶けやすい性質があるが、溶解濃度は水温の上昇、特に40℃以上では急速に低下する(図1)。浴用に使われる体温近くで高濃度、即ち泉温40℃付近での飽和点である1,000ppm以上の天然炭酸泉は、世界的にも稀有な存在である。30℃より低く温浴用に適さない高濃度天然炭酸鉱泉は、日本各地に散在する。これらの冷鉱泉の昇温には、古くは五右衛門風呂等の釜による直炊きであった。この場合、火力がさほど強くなく穏やかに加温されたため、溶存する遊離炭酸ガスの気化が比較的少ない。しかし、近年ボイラー加温が一般的になると、加熱釜に接する部分で一時的に70℃を超える高温になるため、遊離炭酸ガスが一気に気化して濃度が下がり、その結果高濃度炭酸泉としての強力な血管拡張作用などの医学的効能が失われてしまった。そのため、一般的には冷炭酸鉱泉は加温に適さず、浴用としての利用が諦められてきた。また、遊離炭酸ガス濃度が極めて高い場合には、鉱泉の一部もしくは水を高温に加温し、炭酸鉱泉の源泉と混ぜ合わせることで昇温することもなされてきた。しかし、この場合も、遊離ガス濃度は減少し、高濃度を維持できない。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、高濃度天然冷炭酸鉱泉を溶存する遊離炭酸ガスの気化によるガス抜けを最小限に留め、体温もしくは体温よりやや高温に昇温し、温浴に供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
熱交換器を使って昇温する際の温度管理は決定的である。その第一は、遊離炭酸ガス抜けの原因の一つである急激な温度上昇を避けるため、湯などの加温流体の温度は70℃を超えない。
【0005】
第二は、加温流体との温度差をおよそ20℃以内にすることが重要である。図2は、試験的な高濃度炭酸鉱泉500mlの湯煎による昇温例である。源泉が23℃で1,640ppmの場合、温度差を20℃以内で43℃に昇温した時には1,400ppmもの遊離炭酸ガス濃度を保持していた。次に実際に、毎分1.5リットルを連続昇温する小規模熱交換器を試作し、20℃で1,800ppmの源泉を42℃に昇温した場合、1,450ppmの遊離炭酸ガスを保持していた。なお、遊離炭酸ガス濃度の測定には、株式会社ガステックの気体検知管MRCO2(特許文献1)を使用した。
【発明の効果】
【0007】
この発明による高濃度炭酸鉱泉の昇温の結果、泉温が温浴に適した温度での遊離炭酸ガス濃度は過飽和状態を保持する。昇温した炭酸泉の掛け流しによって、湯船での遊離炭酸ガス濃度が1,000ppmを超える。この昇温法によって、日本各地に散在する高濃度天然炭酸鉱泉を温浴用として資源化できる。
【0008】
【特許文献1】 特開2007−263970広報
【図面の簡単な説明】
【図1】代表的な高濃度天然炭酸泉と人工炭酸泉の水温と遊離炭酸ガス濃度及び飽和点を示す図
【図2】湯煎による天然炭酸鉱泉(500ml)の加温実験結果を示す図(実線は炭酸鉱泉の泉温、破線は周りの水温、細破線は炭酸泉に溶存する遊離炭酸ガス濃度)
【図3】向流式熱交換器
【符号の説明】
(イ)二重管式熱交換器の断面図
(ロ)重槽式熱交換器の断面図
1高濃度炭酸鉱泉(もしくは加温流体)の入口
2高濃度炭酸鉱泉(もしくは加温流体)の出口
3加温流体(もしくは高濃度炭酸鉱泉)の入口
4加温流体(もしくは高濃度炭酸鉱泉)の出口
5高濃度炭酸鉱泉の入口
6高濃度炭酸鉱泉の出口
7加温流体の出口
8加温流体の入口

【特許請求の範囲】
高濃度炭酸鉱泉の連続的な加温方法であって、熱交換器を使うが、炭酸鉱泉と加温流体とは向流式で流し、穏やかに加温することにより、遊離炭酸ガスの気化によるガス抜けを最小限にする昇温方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−110608(P2010−110608A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312686(P2008−312686)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(508360796)
【Fターム(参考)】