説明

高炉炉底下部の冷却構造

【課題】良好な冷却性能が得られる高炉の炉底部の冷却構造を提供すること。
【解決手段】
高炉1の本体下面に配置された底板7と前記高炉1の基礎10との間に構築され、内部に冷却用の水冷パイプ8を備える高炉炉底下部の冷却構造であって、前記冷却構造の鉛直方向の所定位置に境界線を有し、前記境界線から上方には、前記底板7までの部分に、アルミナ質原料が10〜60質量%、黒鉛が0を超え5質量%以下、炭化珪素質原料が35質量%以上からなり、かつ熱伝導率が6〜20W/m・Kである圧送材21が充填され、前記境界線から下方には、前記高炉1の基礎10までの部分に、前記圧送材21よりも熱伝導率が低い不定形材料25が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高炉炉底下部の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉は、鉄皮の内側にカーボン質からなる耐火物を施工しており、このカーボン質耐火物が直接溶銑と接触し、損耗が進行し、ある一定厚さ以下になると溶銑の漏れの危険性から高炉は寿命に達する。
高炉の寿命を延ばすため、耐火物に対する冷却構造が設置される。例えば、図10に示す高炉の側面部には、鉄皮5の内側に水冷構造を有したステーブクーラー6が設置され、外周部からカーボン質耐火物の冷却をっている。また、底部には、底板の下側に水冷パイプ8を配し、下面からもカーボン質耐火物の冷却を行っている。
このようにカーボン質耐火物は、周囲から冷却することで溶銑との接触部に保護層が形成され、損耗が低減し、寿命延長が図れており、冷却能の向上は重要な要素である。
かかる背景技術の中、従来の高炉炉底部の構造として特許文献1,2がある。
【0003】
前記特許文献1の内容は、高炉本体底板下の圧入材として、従来の非水系黒鉛質圧入材にかわり、水系圧入材を使用し、前記従来の圧入材と同等の熱伝導率を有し、施工が容易で充填不良を発生させないことを目的としている。
その構成は、図11において、冷却管8と基礎10上の2次コンクリート層15との間隙に高熱伝導率充填材16を形成後、その上に高熱伝導率充填材17を形成し、硬化した後、高炉本体の底板7を溶接などによって設置する。
この時、高熱伝導率充填材17と高炉本体底板7との間は、0.5〜5mmの隙間を確保しておく。そして、複数箇所に設置された圧入口19より圧入材20を圧入する。
この圧入材20として、水を添加する前の化学成分が、SiC:20質量%以上、黒鉛:10〜30質量%、Al:20質量%以下、SiO:15質量%以下で、且つSiC、黒鉛、Al及びSiOの含有量の合計が95質量%以上であり、常温における熱伝導率が4.5W/m・K以上のものである。
【0004】
また、前記特許文献2には、高炉本体底板下に設けられている水冷パイプを境界として、上層にスタンプ材、下層にモルタルを施工する2層構造の高炉炉底下部の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-156133号公報
【特許文献2】特開2009-120945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の技術では、高炉炉底下部の構築において、高炉炉底板下の0.5〜5.0mmの狭い空間部に前記圧入材20を充填するため、前記狭い空間に前記圧入材を隙間なく充填するには、該圧入材の水分量を多くしなければならず、その結果、黒鉛を10〜30%と多く入れているにもかかわらず熱伝導率は低下し、実施例に記載の5.2W/m・K程度が上限であると判断される。
すなわち、前述のような狭い空間に圧入材を充填しようとしているため、極めて高い流動性を必要とし、そのために多くの水分が必要となって熱伝導率を高くすることができない。
また、熱伝導率を上げようとして水分量を低下させると、流動性が悪化し、底板のところどころにエアーギャップが生じるため、反って水冷パイプからの伝熱が阻害される。
【0007】
特許文献2の技術では、上層のスタンプ材充填の後に、底板を施工するため、該底板の下面とスタンプ材の充填上面との間に間隙が生じ、水冷パイプからの伝熱が阻害される。
以上のとおり、前記従来の特許文献1,2の技術では、水冷パイプからの伝熱が阻害されるため、炉底部に配置しているカーボン煉瓦の冷却能が低下し、それにより高炉の寿命が短くなる。
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術の課題を解決することをその目的とするものであり、良好な冷却性能が得られる高炉の炉底部の冷却構造を提供し、高炉の寿命を長期化するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高炉炉底下部の冷却構造の特徴とするところは、高炉の本体下面に配置された底板と前記高炉の基礎との間に構築され、内部に冷却用の水冷パイプを備える高炉炉底下部の冷却構造であって、前記冷却構造の鉛直方向の所定位置に境界線を有し、前記境界線から上方には、前記底板までの部分に、アルミナ質原料が10〜60質量%、黒鉛が0を超え5質量%以下、炭化珪素質原料が35質量%以上からなり、かつ熱伝導率が6〜20W/m・Kである圧送材が充填され、前記境界線から下方には、前記高炉の基礎までの部分に、前記圧送材よりも熱伝導率が低い不定形材料が充填されていることにある。
【0010】
本発明では、水に濡れにくい黒鉛を5質量%以下に抑えたことで、圧送材に所望の流動性を付与するのに必要な水の量の増大を防止でき、かつ炭化珪素質原料を35質量%以上含有したことで、良好な熱伝導率を達成できる。尚、黒鉛原料は、前述のように流動性を低下される要因になるので、添加量は少ない方がよく、炭化珪素質原料中に含まれる未反応の炭素原料以外には、添加しない方が望ましい。
みかけ比重が小さい原料である炭化珪素質原料を35質量%以上含むが、みかけ比重が大きいアルミナ質原料を10〜60質量%含むことで、圧送材に自重による流動性(セルフフロー性)を確保することができる。これにより、炭化珪素質原料を多く含むにも関らず、圧送材を隙間なくすみずみまで充填できる。アルミナ質原料が10質量%未満だと流動性が不充分となる。
アルミナ質原料が60質量%を超えると、その分、炭化珪素質原料が制限されるため、熱伝導率が低下する。なお、アルミナ質原料としては、例えば、電融アルミナ、焼結アルミナ、仮焼アルミナ、アルミナセメント等が挙げられる。また、黒鉛としては、鱗状黒鉛や土状黒鉛が挙げられる。炭化珪素質原料の上限は自ずと90質量%未満となる。
また、圧入材中には、アルミナ質原料、黒鉛、炭化珪素質原料以外に、左記のそれぞれの原料製造工程や圧入材の製造工程から侵入する不可避的不純物、並びに、良好な熱伝導率(6〜20W/m・k)及び自重による流動性に悪影響を与えない程度の他の成分が含まれていても構わない。
【0011】
冷却構造の鉛直方向の所定位置に境界線を設け、前記境界線と底板間に、前記高熱伝導率耐火材、境界線と基礎コンクリート間には前記高熱伝導率耐火材より熱伝導率の低い不定形材料を用いている。そのため、炉底部からの熱が境界線より下部に位置する基礎コンクリート側へ熱が伝わり難く、パイプの下面側からの抜熱を抑制できるものである。
以上のとおり、前記本発明の高炉炉底下部の冷却構造は高い熱伝導率の機能を具備すると共に、充填時の流動性を付与させ、充填施工時、高炉底板の下部空間においてエアーギャップを生ずることの無き冷却構造である。
【0012】
また、前記境界線が、前記水冷パイプの下端から中心までの間に設けられていることが好ましい。水冷パイプの下端から中心までの間とは延長方向の距離である。これにより、炉底部からの熱がさらに基礎コンクリート側へ伝わり難く、パイプの下面側からの抜熱もさらに抑制できるものである。
また、本発明の高炉炉底下部の構造は、前記炭化珪素質原料が球状化処理された粒子を含むと好ましいものである。
球状化処理された粒子は粒子間の摩擦を低減する効果をもつため、圧送材に所望の流動性を付与するのに必要な水の量を一層減らせる。このため、熱伝導率を一層向上できる。
【0013】
また、本発明の高炉炉底下部の構造は、前記不定形材料の熱伝導率が、2W/m・K以下であり、かつ耐火質キャスタブル、断熱質キャスタブル、耐火コンクリート、生コンクリートの内の1種もしくは2種以上から構成されることが望ましい。冷却パイプの境界線より基礎間に設ける不定形材料の熱伝導率が2W/m・K以下とし、該不定形材料は耐火質キャスタブル、耐火コンクリート、生コンクリートの内の1種もしくは2種以上から構成される。
これにより、冷却パイプの境界線から基礎間つまり境界線より下部に位置する基礎コンクリートには炉底部からの熱が伝わり難く、冷却パイプの下面からの抜熱を抑制でき、冷却パイプから効率的に炉底部の熱を抜熱することが可能である。
【0014】
また、本発明の高炉炉底下部の構造は、前記水冷パイプが、水平方向に複数段配列されて、前記境界線が、前記複数段の水冷パイプのうち、鉛直方向に最下段のパイプにおける水冷パイプの下端から中心までの間に設けられていることが好ましい。
つまり、実施形態で詳述する図1、図5、図6に示すとおり、高炉底板の下部空間に、水冷パイプを鉛直方向に複数段配列させる場合には、前記の境界を最下段のパイプに設けることが好ましい。前記熱伝導率が6〜20W/m・Kである圧送材の施工範囲は、底板側の冷却を目的とするため、図5に示すとおり冷却パイプの中心より上側が好ましいが、図1、図4に示すとおり冷却パイプの配列及びサイズも多種多様であるため、冷却パイプの中心から下端の範囲に境界を設置するものである。尚、境界位置を中心より若干上方としても構わないが、上方にいく分だけ抜熱面積が減少するため余り好ましくない。また、境界位置を下端より若干下方としても構わないが、下方にいく分だけ下方からの抜熱が増加するため余り好ましくない。
尚、実際の施工においては、冷却パイプの据付けレベル(高さ、傾き)もばらつき、かつ境界線と基礎間に設ける不定形材料の施工レベルもばらつくことから、境界線レベルは、梁で仕切られた隣のゾーンとの間で段差があったり、ある部分では前述の境界線の範囲から外れたりすることもある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の高炉炉底下部の冷却構造は高い熱伝導率の機能を具備すると共に、充填時の流動性を付与させ、充填施工時、高炉底板の下部空間においてエアーギャップを生ずることの無き冷却構造である。
また、本発明の高炉炉底下部の構造は、前記炭化珪素質原料が球状化処理された粒子を含むことが好ましく、その場合、球状化処理された粒子は粒子間の摩擦を低減する効果をもつため、圧送材に所望の流動性を付与するのに必要な水の量を一層減らせる。このため、熱伝導率を一層向上できる。
また、本発明の高炉炉底下部の構造は、前記境界線から下方に使用する不定形材料として熱伝導率2W/m・K以下の材料を使用することが好ましく、この場合、冷却パイプから余分な抜熱を防止できる。さらには、冷却パイプを多段に配置した場合には、冷却パイプからの奪熱量は増加し、カーボンブロックの損耗を抑制し、高炉の寿命延長が図れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す高炉炉底部の冷却構造断面
【図2】前記図1のB−B断面
【図3】前記図1のA−A断面
【図4】前記図1のC−C断面
【図5】本発明の第二の実施形態を示す高炉炉底部の冷却構造断面
【図6】本発明の第三の実施形態を示す高炉炉底下部の冷却構造断面
【図7】本発明の第四の実施形態を示す高炉炉底下部の冷却構造断面
【図8】本発明の高炉炉底部のテストに実施した気密容器の概要図
【図9】本発明の境界線上部に使用する圧送材の熱伝導率と冷却パイプからの奪熱量との関係を示したグラフ
【図10】従来の高炉炉底下部の冷却構造断面
【図11】従来の高炉炉底部の概要図
【発明を実施するための形態】
【0017】
下に本発明の実施の形態を図1〜図7、及び表1を用いて説明する。
図1は、本願発明の第一の実施形態である高炉炉底下部の冷却構造断面を示すものである。図2は図1のB−B断面、図3は図1のA−A断面、図4は図1のC−C断面を各々示す。
【0018】
本第一の実施形態は、各図において、水冷パイプ8の下端を境界線としたものであり、該境界線と基礎コンクリート10との間には耐火質キャスタブル、断熱質キャスタブル、耐火コンクリート、生コンクリートの内の1種もしくは2種以上から構成される不定形材料25が、前記境界線と底板7との間には熱伝導率が6〜20W/m・Kである圧送材21が圧入口11から充填される。
【0019】
従来、図1から図4に示されるように、底板7と基礎コンクリート10間に水冷パイプ8を設置するために梁組み構造となっている。水冷パイプ8よりも下部は主梁22と交差梁23によりボックス状として構造体を形成し、水冷パイプ8を配列する部位は、一方向の主梁22及び補助梁24としている。
すなわち、水冷パイプ8を設置している部位は、その途中に交差梁23がないため、図4に示すように圧入孔11より圧送材21を圧入すると、圧送材21は確認孔12を経て排出孔3より排出されると共に、この空間内に隙間なく充填が可能である。
【0020】
図5は、本発明の第二の実施形態を示す高炉炉底下部の冷却構造断面であり、大、小の水冷パイプ8が配置される各々の下レベルが相違するものである。この場合、前記圧送材21と不定形材料25との境界線を大の冷却パイプ8の下レベルに設定したものである。
【0021】
図6は、本発明の第三の実施形態を示す高炉炉底下部の冷却構造断面であり、同一サイズの水冷パイプ8が鉛直方向に異なる高さに三段に配置されたものである。この場合、前記圧送材21と不定形材料25との境界線を最下段の冷却パイプ8の下レベルに設定したものである。
【0022】
図7は、本発明の第四の実施形態を示す高炉炉底下部の冷却構造断面であり、冷却パイプ8の中心レベルを前記圧送材21と不定形材料25との境界線を冷却パイプ8の中心レベルに設定したものである。
【実施例】
【0023】
続いて、図8に示す気密容器31を用いて各種の原料を使用したテスト結果について説明する。
表1および表2に、に記載の炭化珪素質原料、黒鉛、アルミナ質原料の配合%を種々変えまた、炭化珪素質原料を球状化処理した各ケースにおいて、各々熱伝導率、流動性を評価した結果を示す。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
熱伝導率は、JIS−R2618の規定に従って測定した値である。各例の圧送材を、JIS−R2618に規定する寸法の型枠に鋳込み、養生後に脱枠し、110℃で24時間乾燥させて得た試験片を測定対象とした。
【0027】
流動性は、次の要領で評価した。
透明なアクリル板によって図8に示す幅30cm高さ20cm長さ10mの気密容器31を形成し、該気密容器31の長さ方向一端部に注入口32を設け、他端部に排出口33を設ける。圧送材を注入口32から注入する。気密容器31の内部が圧送材で満され、排出口33から圧送材が排出した後、圧送状況を目視観察した。圧送材の流動性が悪いと、エアーギャップ34がみられる。以下の基準で4段階評価した。
尚、前記気密容器31のサイズは、例えば前記図5に示す敷ビーム13と隣接する敷ビーム13との間で奥行きのある空間部のものを想定し、即ち、実機サイズのものと同一
規模のサイズを設定した。
【0028】
評価は次の基準で行った。
◎…エアーギャップがみられない。
○…体積が1mm×1mm×1mm程度以下の微小なエアーギャップがみられる。
△…体積が10mm×10mm×10mmを以下のエアーギャップがみられる。
×…体積が10mm×10mm×10mmを超える大きなエアーギャップがみられる。
【0029】
本発明の球状化処理の方法及びその定義は、以下のとおりである。
球状化処理、具体的には、摩耗処理によって表面の角部を平滑化する処理を施すことで、流動性が向上する。磨耗処理は、粒径調整のために粉砕した炭化珪素粒をサンドミル、ボールミル、フレットミル、チューブミル等の窯業原料粉砕機をもって行うことができる。
球状化処理された粒子とは、インゴット粉砕後に粒子形状を球に近づける磨耗処理が施された粒子、又は球形度が0.7以上の粒子をいう。
【0030】
球形度は、実体顕微鏡(例えば、ニコン社製SMZ−10)や走査型電子顕微鏡(例えば、日本電子社製JXA−8600M)で撮影した試料粒子の像を、画像解析装置(例えば、日本アビオニクス社製)に取り込み、次の要領で求める。試料粒子の像から試料粒子の投影面積Sと、周囲長Lとを測定する。円周Lの真円の面積をSとすると、試料粒子の球形度はS/Sと定義される。対象粉体中の任意の100個の粒子につき球形度を測定し、その平均値を対象粉体の球形度とする。
【0031】
〔実施例2〜実施例5〕
表中の実施例2〜実施例5は本発明に基づくものである。
実施例2〜実施例5では、炭化珪素質原料、黒鉛、アルミナ質原料の配合%を本発明の請求項1記載の範囲内とし、添加水分量をいずれも外掛%で9質量%添加したものである。炭化珪素質原料には球状化されていないものを用いた。表から明らかなように、熱伝導率、流動性共に良好な結果を示している。
【0032】
〔比較例1,比較例6〕
比較例1および比較例6は、本発明に基づく実施例2〜実施例5に対する従来技術を示すものである。
比較例1では、アルミナ質原料の配合%を本発明の請求項1記載の上限値60質量%を上回る65質量%配合している。それにより炭化珪素質原料の配合が制限される。よって、流動性は良好であるが熱伝導率が低下し好ましくない。
比較例6では、アルミナ質原料の配合%を本発明の請求項1記載の下限値10質量%を下回る5質量%、配合している。アルミナ質原料が10質量%未満だと流動性が低い炭化珪素質原料の配合が多くなる。よって、熱伝導率は良好であるが流動性が不充分となる。
【0033】
〔実施例7〜実施例8〕
表中の実施例7〜実施例8は本発明に基づくものである。
実施例7〜実施例8では、本発明の実施例3をベースに黒鉛を増加させたもので、炭化珪素質原料、黒鉛、アルミナ質原料の配合%を本発明の請求項1記載の範囲内とし添加水分量をいずれも外掛%で9質量%添加したものである。表から明らかなように、熱伝導率、流動性も良好結果を示している。
【0034】
〔比較例9,比較例10〕
表中の比較例9および比較例10は、本発明に基づく実施例7〜実施例8に対する従来技術を示すものである。
比較例9,比較例10では、黒鉛の配合%を本発明の請求項1記載の上限値5質量%を上回る7、10質量%配合している。水に濡れにくい黒鉛が5質量%を超えて配合されているため、熱伝導率は良好であるがいずれも流動性が低下しており好ましくない。
【0035】
〔実施例11,実施例12〕
表中の実施例11および実施例12は本発明に基づくものであり、炭化珪素質原料の球状化処理による効果の確認のための実施例である。
実施例11は、前記本願発明の実施例3において、炭化珪素質原料59質量%のうち、その粒径が75μ〜3mmの範囲の40質量%を前記球状化処理したものを示す。共に本発明の実施例である前記実施例3と前記実施例11を比較すると、実施例11の方が添加水分を1%低減でき、熱伝導率は約10%高くなり、流動性も向上している。このように前記炭化珪素質原料の球状化処理による効果が明らかとなっている。
実施例12は、前記本発明の実施例5において、炭化珪素質原料89質量%のうち、その粒径が75μ〜3mmの範囲の70質量%を前記球状化処理したものを示す。実施例12の方が添加水分を1%低減でき、熱伝導率は約10%高くなり、流動性も向上している。このように前記炭化珪素質原料の球状化処理による効果が明らかとなっている。
【0036】
図1及び図5から図7において、基礎10には、生コンクリート、境界線と前記基礎間には、熱伝導率が2W/m・K以下の不定形材料25を使用した。
不定形材料25としては、耐火質キャスタブル、断熱質キャスタブル、耐火コンクリート、生コンクリートの中から選定した。熱伝導率が2W/m・K以下であるため、炉底からの熱が境界線から下方に伝わりにくく、水冷パイプの下方からの抜熱を抑制することができる。
【0037】
図9は、本発明の冷却パイプ8部分の境界の上部に使用する耐火材の熱伝導率λと冷却パイプ8からの奪熱量Qの関係を示したグラフである。
図9のようにλが大きい程、奪熱量Qも大きくなることが判る。尚、冷却パイプ8からの奪熱量Qは、パイプの大きさ、位置、敷きビーム部の厚さ、冷却水の水温、量等により異なることから大小で標記した。
図9において、○印は図8の気密容器31において実施例3のλ=12W/m・Kの耐火材を使用した時の奪熱量を示したものである。また、図5記載の多段パイプ構造とした本発明(☆印)は、○印に対し奪熱量が約7%増加した。
【符号の説明】
【0038】
1:高炉
5:鉄皮
6:ステーブクーラー
7:底板
8:水冷パイプ
9:カーボン質耐火物
10:基礎コンクリート
11:圧入口
12:確認口
13:敷ビーム
15:2次コンクリート層
16:高熱伝導率充填材
17:高熱伝導率充填材
19:圧入口
20:圧入材
21:本発明の圧送材
22:敷きビームの主梁
23:敷きビームの交差梁
24:敷きビームの補助梁
25:不定形材料
31:気密容器
32:注入口
33:排出口
34:エアーギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の本体下面に配置された底板と前記高炉の基礎との間に構築され、内部に冷却用の水冷パイプを備える高炉炉底下部の冷却構造であって、
前記冷却構造の鉛直方向の所定位置に境界線を有し、
前記境界線から上方には、前記底板までの部分に、アルミナ質原料が10〜60質量%、黒鉛が0を超え5質量%以下、炭化珪素質原料が35質量%以上からなり、かつ熱伝導率が6〜20W/m・Kである圧送材が充填され、
前記境界線から下方には、前記高炉の基礎までの部分に、前記圧送材よりも熱伝導率が低い不定形材料が充填されていることを特徴とする高炉炉底下部の冷却構造。
【請求項2】
前記境界線が、前記水冷パイプの下端から中心までの間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高炉炉底下部の冷却構造。
【請求項3】
前記炭化珪素質原料が、球状化処理された粒子を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高炉炉底下部の冷却構造。
【請求項4】
前記不定形材料の熱伝導率が、2W/m・K以下であり、かつ耐火質キャスタブル、断熱質キャスタブル、耐火コンクリート、生コンクリートの内の1種もしくは2種以上から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高炉炉底下部の冷却構造。
【請求項5】
前記水冷パイプが、水平方向に複数段配列されて、前記境界線が、前記複数段の水冷パイプのうち、鉛直方向に最下段のパイプにおける水冷パイプの下端から中心までの間に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高炉炉底下部の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−214020(P2011−214020A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80433(P2010−80433)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】