説明

高粘度流体塗布装置

【課題】高粘度流体塗布装置において、糸引き物により周囲を汚染したり装置の動作不良を招いたりすることなく、糸引き物の除去を高速に行なうこと。
【解決手段】高粘度流体塗布装置1は、塗布対象ワーク2を支持するワーク支持装置3と、支持された塗布対象ワークの上方に移動しかつ開放により前記塗布対象ワークに向けて高粘度流体を吐出し閉止により吐出を終えるノズル4を有するノズル移動装置5と、塗布対象ワーク2に塗布された高粘度流体とノズル4との間を継ぐ糸引き物を除去する除去具6を有する糸引き物除去装置7と備える。そして、除去具6は、ノズル4と塗布対象ワーク2との間に位置して糸引き物に接触した状態で、ノズル4の軸心と交差する回転軸心を有して回転するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度流体塗布装置に係り、特に高粘度流体の糸引き物を除去する除去具を備えた高粘度流体塗布装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来における巻芯への接着剤塗布装置として、特開2000−218208号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この接着剤塗布装置は、巻芯を固定する巻芯固定手段と、この固定された巻芯の軸方向に移動しかつ開放により該巻芯に向けて接着剤を吐出し閉止により吐出を終えるノズルを有する移動台と、巻芯に付着しない前記接着剤からなり前記ノズルと巻芯の間を継ぐ接着剤の糸引き物を切断する切断具とを備えて構成されている。この切断具は、巻芯に付着しない接着剤からなりノズルと巻芯との間を継ぐ接着剤の糸引き物を切断するものであって、移動装置にブラケットを介して取付けされた回転駆動具と、この回転駆動具の出力軸にソケット部を介して取付けられ、ノズルと巻芯との間でしかも巻芯の接線面と平行な平面方向に移動して糸引き物を切断するカッタとを備えて構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−218208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の接着剤塗布装置は、カッタを巻芯の接線面と平行な平面方向に長い距離にわたって移動して糸引き物を移動方向に伸ばして切断するものであるため、切断時間が長くかかり、生産性が低いものとなってしまうと共に、切断後に伸びた糸引き物により周囲を汚染したり、装置の動作不良を招いたりすることが懸念される。
【0005】
本発明の目的は、糸引き物により周囲を汚染したり装置の動作不良を招いたりすることなく、糸引き物の除去を高速に行なうことができ、高粘度流体塗布の生産性を格段に向上することができる高粘度流体塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するために、本発明は、塗布対象ワークを支持するワーク支持装置と、支持された塗布対象ワークの上方に移動しかつ開放により前記塗布対象ワークに向けて高粘度流体を吐出し閉止により吐出を終えるノズルを有するノズル移動装置と、前記塗布対象ワークに塗布された高粘度流体と前記ノズルとの間を継ぐ糸引き物を除去する除去具を有する糸引き物除去装置と、備えた高粘度流体塗布装置において、前記除去具は、前記ノズルと前記塗布対象ワークとの間に位置して前記糸引き物に接触した状態で、前記ノズルの軸心と交差する回転軸心を有して回転するように設けられている構成にしたことにある。
【0007】
係る本発明のより好ましい具体的な構成例は次の通りである。
(1)前記ワーク支持装置は、複数の塗布対象ワークを順次所定位置に移動するテーブルを有し、前記糸引き物除去装置は、前記除去具を回転駆動する電動機と、前記除去具の先端側を前記ノズルと前記塗布対象ワークとの間に移動する駆動機とを有し、前記ワーク支持装置による塗布対象ワークの移動と前記ノズル移動装置によるノズルの移動と前記糸引き物除去装置による除去具の移動とをこの順に連続的に動作させる制御装置を備えたこと。
(2)前記除去具を前記電動機に着脱可能に取付けたこと。
(3)前記制御装置は、塗布後にノズルを少上昇と少下降とを行なってから上昇させ、この状態で前記除去具による前記糸引き物を回転する前記除去具にて除去するように制御すること。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、糸引き物により周囲を汚染したり装置の動作不良を招いたりすることなく、糸引き物の除去を高速に行なうことができ、高粘度流体塗布の生産性を格段に向上することができる高粘度流体塗布装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の高粘度流体塗布装置の一実施例について図1〜図3を用いて説明する。
【0010】
高粘度流体塗布装置1は、塗布対象ワーク2を支持するワーク支持装置3と、この支持された塗布対象ワーク2の上方に移動しかつ開放により塗布対象ワーク2に向けて高粘度流体を吐出し閉止により吐出を終えるノズル4を有するノズル移動装置5と、塗布対象ワーク2に塗布された高粘度流体9とノズル4との間を継ぐ糸引き物9a(図3参照)を除去する除去具6を有する糸引き物除去装置7と、これらの装置類を制御する制御装置10とを備えて構成されている。
【0011】
ワーク支持装置3は、回転可能なテーブル3aと、このテーブル3aの周縁部に取付けられた支持部材3bとを備えて構成されている。テーブル3aは複数の塗布対象ワーク2を順次所定位置に移動するように構成されている。支持部材3bは、テーブル3bに取付けられて水平に延びる平板部3b1と、この平板部3b1から垂直に延びて塗布対象ワーク2を保持する保持部3b2とを有している。テーブル3aは、塗布対象ワーク2を支持した状態で回転され、塗布対象ワーク2を所定位置に移動して位置決めして停止される。図示していないが、テーブル3aの周縁部には支持部材3bが等間隔に多数支持されている。従って、テーブル3aを所定角度だけ回転することにより、順次、塗布対象ワーク2が所定位置に配置することができる。なお、高粘度流体として、接着剤、グリス、シール材などが適用可能である。
【0012】
ノズル移動装置5は、上下に延びる第1フレーム5aと、この第1フレーム5aに前後方向に移動可能に支持され、左右に延びる第2フレーム5bと、第2フレーム5bに支持され上下に延びる第3フレーム5cと、この第3フレーム5cに上下方向に移動可能に支持されたノズル保持部5dと、ノズル保持部5dに取付けられたノズル6とを有して構成されている。ノズル移動装置5は、ノズル4を上下左右に移動することができるノズル位置制御ロボットとしての機能を有している。ノズル移動装置5は、塗布後にノズルを少上昇と少下降とを行なってから所定高さに上昇させるように構成されている。
【0013】
ノズル4は、糸引き物を除去する際に、その先端が塗布対象ワーク2の表面から小さな隙間、例えば20mm程度の間隔を隔てて配置される。ノズル4には、高粘度流体供給口8が設けられており、加熱溶融された高粘度流体がここからノズル4へと圧送供給される。ノズル4とこの高粘度流体供給口8との間にはバルブが設けられており、このバルブを開くことでノズル4が開放されて塗布対象ワーク2に向けて高粘度流体を吐出し、またバルブを閉とすることでノズル4を閉止して高粘度流体の吐出を終えるように構成されている。
【0014】
糸引き物除去装置7は、アルミの円筒パイプなどで形成された除去具6と、この除去具6を回転駆動する電動機7aと、除去具6を図2の実線に示す状態からは2点鎖線で示すようにノズル4と塗布対象ワーク2との間に移動する駆動機7bとを有して構成されている。この除去具6は電動機7aに着脱可能に取付けられている。
【0015】
除去具6は、塗布対象ワーク2に塗布した高粘度流体9とノズル4との間を継ぐ糸引き物9aを除去するものである。この除去具6は、図3に示すように、ノズル4と塗布対象ワーク2との間に位置して糸引き物9aに接触した状態で、ノズル4の軸心と交差する回転軸心を有して回転するように設けられている。
【0016】
制御装置10は、ワーク支持装置3による塗布対象ワーク2の移動と、ノズル移動装置5によるノズル4の移動と、糸引き物除去装置7による除去具6の移動とを、この順に連続的に動作させるように構成されている。
【0017】
かかる高粘度流体塗布装置1の動作について説明する。先ず、ワーク支持装置3に塗布対象ワーク2を載置し、テーブル3aを回転させて高粘度流体を塗布する位置に塗布対象ワーク2を移動させる。次いで、ノズル移動装置5を作動させて、ノズル4を塗布対象ワーク2の上方に移動させた後、ノズル4を降下させて塗布対象ワーク2内に位置させる。この状態で、ノズル4と高粘度流体供給口8との間に設けられたバルブを開放して塗布対象ワーク2に高粘度流体を吐出する。所定量の高粘度流体を吐出した後、バルブを閉とすることでノズル4を閉止して高粘度流体の吐出を終える。このようにして、図3に示すように塗布対象ワーク2に所定量の高粘度流体9を塗布する。
【0018】
次いで、ノズル4を上昇させる。この際に、塗布対象ワーク2に塗布された高粘度流体とノズル4との間を継ぐ糸引き物が生ずる。そこで、本実施例では、ノズル4を、少上昇を行なってから少下降を行ない、その後に所定位置(塗布された高粘度流体9から20mm程度の高さ)まで上昇させる。これによって、糸引き物9aを細くすることができる。
【0019】
次いで、図3に示すように、除去具6を移動してノズル4と塗布対象ワーク2との間に位置させて糸引き物9aに接触した状態とし、除去具6を回転する。これにより、除去具6に接触した部分の糸引き物9a1は除去具6との密着力により除去具6と共に回転され、これに伴って、糸引き物9a1とノズル4との間の糸引き物9a2は伸ばされながら除去具6に接触して巻き取られると共に、糸引き物9a1と塗布された高粘度流体9との間の糸引き物9a3は伸ばされながら除去具6に接触して巻き取られる。除去具6を数回転することにより、糸引き物9a2及び糸引き物9a3は更に伸ばされて細くなり、ついには切断されて殆ど部分が除去具6に巻き取られて除去される。これによって、糸引き物により周囲を汚染したり装置の動作不良を招いたりすることを防止できる。また、除去具6を回転する動作は、水平方向に移動して糸引き物を切断する動作に比較して高速で行なうことができ、これによって高粘度流体塗布の生産性を格段に向上することができる。
【0020】
次いで、除去具6の表面に多量に糸引き物9aが巻き取られて所定量に達した状態で(例えば半日単位程度で)、巻き取られた糸引き物9aを除去具6から引出して取外す。除去具6はアルミで形成されているので、除去具6の表面に巻き取られた糸引き物9aを容易に引出すことができる。さらには、除去具6を電動機7aに着脱可能に取付けているので、糸引き物9aが巻き取られた除去具6と新たな除去具6とを交換し、新たな除去具6を用いて高粘度流体の塗布作業及び除去作業を行ないながら、取外した除去具6から巻き取られた糸引き物9aを取外す作業を行なうことができ、この点からも生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の高粘度流体塗布装置の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の高粘度流体塗布装置の糸引き物の除去原理を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0022】
1…高粘度流体塗布装置、
2…塗布対象ワーク、
3…ワーク支持装置、
4…ノズル、
5…ノズル移動装置、
6…除去具、
7…糸引き物除去装置、
8…高粘度流体供給口、
9…塗布された高粘度流体、
9a…糸巻き物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象ワークを支持するワーク支持装置と、
支持された塗布対象ワークの上方に移動しかつ開放により前記塗布対象ワークに向けて高粘度流体を吐出し閉止により吐出を終えるノズルを有するノズル移動装置と、
前記塗布対象ワークに塗布された高粘度流体と前記ノズルとの間を継ぐ糸引き物を除去する除去具を有する糸引き物除去装置と、備えた高粘度流体塗布装置において、
前記除去具は、前記ノズルと前記塗布対象ワークとの間に位置して前記糸引き物に接触した状態で、前記ノズルの軸心と交差する回転軸心を有して回転するように設けられていることを特徴とする高粘度流体塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高粘度流体塗布装置において、前記ワーク支持装置は、複数の塗布対象ワークを順次所定位置に移動するテーブルを有し、前記糸引き物除去装置は、前記除去具を回転駆動する電動機と、前記除去具の先端側を前記ノズルと前記塗布対象ワークとの間に移動する駆動機とを有し、前記ワーク支持装置による塗布対象ワークの移動と前記ノズル移動装置によるノズルの移動と前記糸引き物除去装置による除去具の移動とをこの順に連続的に動作させる制御装置を備えたことを特徴とする高粘度流体塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の高粘度流体塗布装置において、前記除去具を前記電動機に着脱可能に取付けたことを特徴とする高粘度流体塗布装置。
【請求項4】
請求項2に記載の高粘度流体塗布装置において、前記制御装置は、塗布後にノズルを少上昇と少下降とを行なってから上昇させ、この状態で前記除去具による前記糸引き物を回転する前記除去具にて除去するように制御することを特徴とする高粘度流体塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−281141(P2006−281141A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107028(P2005−107028)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000233295)日立ハイブリッドネットワーク株式会社 (195)
【Fターム(参考)】