説明

高精度投薬装置、システム及び方法

【課題】システムの故障の際に惰性回転を除去してオーバーランを防止する、低コスト且つ高信頼性の標準モータ用液投与制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】液を移送するための蠕動ポンプ104と、移送される液を制御するように構成され、モータを動作するコントローラ134を含む心拍信号140を発生する手段とを含む。コントローラは、規則的な拍を発生する心拍信号を生成し、心拍信号をモニタし、心拍信号の拍を検出し、検出された拍が所定の時間範囲に無いならばポンピングモータをディスエーブルするウオッチドッグ回路136をさらに含み、電力スイッチ122および接地スイッチ124が共に導電状態にある時に電力がポンピングモータに供給され、電力スイッチおよび接地スイッチを制御するために個別の信号が使用されて、ウオッチドッグ回路はイネーブル信号を接地スイッチに供給しそしてコントローラは電力スイッチに停止信号を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンピング制御システムに関するものである。詳細には、本発明は薬物の投与制御、特に投与の高精度制御を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療では、様々な状況において患者に液を投与する必要がある。この種の液には、簡単な静脈内投与溶液、眼の手術において眼に圧力を与えるための生理用食塩水、撮像能力を増強するために投与される造影剤、輸血中に与えられる血液、栄養液、薬物、化学療法溶液等の、経静脈法又は経腸法により投与される液が含まれる。以上のほとんど全てのアプリケーションにおいて、確実に、かつ高精度で液の投与を行うことが患者の治療を成功させる上で重要である。アプリケーションによっては、オーバーランのような不適切な液投与により患者の生命が脅かされる危険性がある。
【0003】
信頼でき、精度のよいシステムは設計、製造、試験のコストが高くなりやすい。事実、治療の相対コストは、少なからず、医療技術の増大するコストが原因で増加し続けている。したがって、有効かつ高信頼の低複雑度技術が医療産業界において強く要望されている。
【0004】
医療応用においてオーバーランは極めて危険であり、過剰投与を検出できたとしても元に戻せないことが多い。たとえば、オーバーランは電子スイッチが一定の状態から抜け出せなくなる等のハードウェアの故障により引き起こされる。また、プロセッサは温度やスタティク等の環境因子に対する感度が著しく高いので、コントローラの故障も問題になる。コントローラのファームウェアには論理エラーやメモリセルの不良が含まれることがあり、それによって「クラッシュ」する暴走プログラムになるおそれがある。暴走又はクラッシュプログラムは、たとえば、液を高速で投与するポンピング状態のような一定の状態から抜け出せなくなった制御回路をそのままに放置する。
【0005】
液投与システムには、構成要素の故障による過剰投与やその他の誤動作を防止して信頼性を高めるだけでなく、精度を上げることが求められる。薬用量を患者の治療に最適な速度及びレベルに調整することが高精度投与機能により容易になる。また、高精度投与により時間に対する整合性や、様々な装置、システム間の整合性を容易にとることができるので、投薬システムにおいて極めて望ましい機能になる。
【0006】
精度が要求されるアプリケーションで多用されるモータはステッピングモータである。残念ながら、ステッピングモータを進めるのに適切な位相をもつ複雑な制御信号が必要である。また、ステッピングモータは高価で試験が容易でない。
【0007】
誘導モータのような標準的なモータは代表的に低コストであるが、電力を遮断した後でも惰性回転するため精度に欠ける問題がある。惰性回転により液の過剰投与の問題が生じ、また、惰性回転の時間や速度は温度やモータ速度などの環境因子、使用因子に左右されるため、過剰投与量に変動が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、求められていることは、システムの故障の際に惰性回転を除去してオーバーランを防止する、低コスト且つ高信頼性の標準モータ用液投与制御システムである。
本発明の装置は、技術の現状に鑑み、特に、未だ現在の液投与システムでは満足に解決されていない問題及びニーズに鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の全体的目的は上述した従来技術の欠点の多く又は全部を克服した液投与の改良方法、装置及びシステムを提供することである。
【0009】
特に、本発明の1つの目的は低コスト、信頼性のある、惰性回転を無くし又は減らし、システムの故障の際にオーバーランを実質的に防止する液投与制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記及びその他の目的を達成するため、液投与システム用制御システムは、電子ブレーキによりモータの惰性回転を停止し、電力スイッチ及び接地スイッチによりモータを信頼性良く制御し、ウオッチドッグ回路によりコントローラをモニタしてシステムの故障の際にモータをディスエーブルにする。
【0011】
本発明の第1の側面に基づいて、電子ブレーキは停止信号に応じてモータの電力端子を接地する。電力端子を接地すると、機械的慣性による運動エネルギーはモータ巻線内で電磁エネルギーに変換されるので制動効果が発生する。すなわち、ブレーキは電磁エネルギーを吸収し、これにより惰性回転は減り、又は無くなる。本質的に、モータは一時的に発電機として動作し、投薬システム内に残る運動エネルギーをブレーキで速やかに吸収して停止する。
【0012】
本発明の第2の側面に基づいて、冗長スイッチ、すなわち一方は電源に接続され、他方はグラウンドに接続される2個のスイッチにより、1つのスイッチが故障してもモータが運転状態から確実に抜け出せるようにする。
【0013】
本発明の第3の側面に基づいて、ウオッチドッグ回路はコントローラの心拍信号をモニタリングし、コントローラが間違いなく許容速度で有効な鼓動を発生しているか確認する。そうであれば、ウオッチドッグ回路はイネーブル信号を有効にアサートし、これによりモータへの電力を制御するスイッチの一方をアクティブにする。この要求される条件が満たされなければ、ウオッチドッグ回路はイネーブル信号をアサート解除してスイッチを非導通状態にし、これによりモータをディスエーブルしてオーバーランの可能性を取り除く。
【0014】
本発明の第4の側面に基づいて、コントローラは各投与サイクルを起動又は終了させ、各投与サイクルのなかで行われる診断において液投与システムが正常に運転可能かを決定する。正常でなければ、コントローラはたとえばモータをディスエーブルにするとともにエラー動作表示として警報音を鳴らし、警報メッセージを表示することにより、停止動作を行ってよい。
【0015】
上記目的を達成するともに好ましい実施形態において具体化し、詳しく説明する本発明に基づいて、高信頼性、高精度かつ低コストの液投与装置、方法及びシステムを説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の利点及び目的がどのようにして達成されるかについて分かりやすくするために、上で概要を述べた本発明を図面に示す特定の実施形態について詳しく説明する。図面は本発明の代表的な実施形態を示すのみであり、したがって本発明の範囲を制限するものでないことを踏まえた上で、添付図面を参照して付加的な特徴及び詳細とともに本発明を説明する。
【0017】
以下、本発明の様々な要素について番号が付された図面を参照して本発明を当業者が実施できるように説明する。ただし、以下の説明は本発明の諸原理の例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。また、本発明の特徴に基づいてなされた全ての実施形態が本発明の全ての目的を達成するとは限らない。
【0018】
図1に本発明の投薬システム100を示す。図示の実施形態において、投薬システム100はモータ102、ポンプ104、及びブレーキ106を備える。モータ102はカプラ108を介してポンプ104に機械的に結合される。一実施形態において、カプラ108はポンプ104の偏心歯車に対して接線方向のねじ型駆動軸である。好ましい具体例において、モータ102は直流モータであり、ポンプ104は蠕動ポンプであり、カプラ108は精度を上げるために非常に低い歯車比を与える。蠕動ポンプは低コストで液の高精度投与が容易にできる点で好ましい。
【0019】
モータ102に駆動されてポンプ104は貯槽110から投与装置112に液を移送する。液109は供給チューブ114を通ってポンプ104に入り、さらに投与チューブ116を通って投与装置112に入る。実施形態にもよるが、たとえば蠕動ポンプの場合、供給チューブ114と投与チューブ116は同一のチューブであってよい。
【0020】
図示の実施形態において、モータ102は電力端子118と接地端子120に電気接続される。電力端子118と接地端子120は電力スイッチ122と接地スイッチ124により制御されてモータ102に電力を供給する。電力スイッチ122と接地スイッチ124がともに導通状態のときに、直流電力が電力バス126とグラウンドバス128からモータ102に供給される。これによりモータ102はポンプ104を駆動する。いずれかのスイッチが非導通状態になると、モータ102に電力は供給されない。両スイッチが導通状態であることを供給条件にしているので、1つのスイッチが故障した際にポンプ運転が止まらなく可能性は取り除かれる。
【0021】
様々な要因で、モータ102への電力供給を遮断しても直ちにポンプ104は停止せず、結果的に液109が過剰に投与される。たとえば、モータ102は巻線内に誘導エネルギーを蓄積する。モータ102、ポンプ104、及びカプラ108には機械的な慣性がある。また、過剰量は、一定ではなく、システム毎に異なる様々な、電気、機械、環境の諸因子に依存し、かつ使用形態に大きく依存するものである。
【0022】
過剰投与と一定しない過剰の問題を解決するために、本発明のブレーキ106は速やかにモータ102を停止して投与量の精度を確保する。図示の実施形態において、ブレーキ106により電力端子118は接地される。電力端子118を接地することによりモータ102の巻線内にある電磁エネルギーは取り除かれる。すなわち、電力端子118を接地すると、慣性による機械的運動エネルギーはモータ102の巻線内で電磁エネルギーに変換され、これがブレーキ106で吸収されることにより、制動効果が発生する。本質的に、モータ102は一時的に発電機として動作し、投薬システム100内の運動エネルギーは速やかに吸収されて停止する。
【0023】
図示の実施形態において、ブレーキ106には停止信号130及びイネーブル信号132が入力される。図面において、停止信号130に相当する”STOP!”の記号は感嘆符付きであり、この符号は高電圧ではなく低電圧で停止信号がアサートされることを示す。停止信号130はブレーキ106だけでなく電力スイッチ122にも入力され、イネーブル信号132の方は接地スイッチ124にも入力される。別個の信号により電力スイッチ122と接地スイッチ124を制御することで本発明の信頼性が高められる。図示の実施形態において、停止信号130はコントローラ134から供給され、イネーブル信号132の方はウオッチドッグ回路136から与えられる。
【0024】
図1に示すように、コントローラ134は心拍信号140をウオッチドッグ回路136に供給する。心拍信号140はコントローラ134が正常な動作状態にあることを示すものである。ウオッチドッグ回路136は心拍信号140をモニタリングしてコントローラ134が許容速度で有効な拍信号を間違いなく発生しているかを確認する。そうであれば、ウオッチドッグ回路136はイネーブル信号132をアサートする。この条件が成立しなければ、ウオッチドッグ回路136はイネーブル信号132をアサート解除して接地スイッチ124を非導通状態にし、これによりモータ102及びポンプ104をディスエーブルにする。
【0025】
コントローラ134は、停止信号130と心拍信号140を供給する一方で、複数のセンサ142から検出信号を受け取る。センサ142は例えば、圧力センサ、温度センサ、モータセンサ等を含む。センサ142は投薬システム100が確実かつ正確に動作していることを確認するのに有効かつ必要な情報をコントローラ134に伝える。好ましい実施形態において、センサ142の中にモータ102又はポンプ104の回転動作に関する情報を検出する薬薬用量センサが含まれる。薬薬用量センサは例えば回転面上に形成した明暗の交番コード領域に対して垂直に配置されるエミッタ検出器対であっても良い。
【0026】
コントローラ134はたとえばLCD表示装置のような可視表示器143や、たとえばスピーカのような可聴表示器144を制御するための信号も出力してよい。可視表示器143及び可聴表示器144によりバッテリレベル、液体レベル、流量、エラー状態、警報等の情報管理が容易になる。
【0027】
図2aから図2dはモータ102の制御回路について幾つかの回路図を示したものである。図2aに示すように、ブレーキ106は基本的に接地をするスイッチであり、停止信号130及びイネーブル信号132の制御の下に起動される。また、停止信号130及びイネーブル信号132は電力スイッチ122及び接地スイッチ124も制御する。好ましい実施形態において、ブレーキ106が起動されるのはイネーブル信号132のアサート(これにより、モータ102は潜在的にオン可能な状態になる)後に停止信号130がアサートされた場合に限られる。この場合、停止信号をアサートすることで電力スイッチ122は非導通状態になり、それによりモータ102への電力供給が遮断される。また、ブレーキ106が導通状態になるので、上述したように機械部品の運動エネルギーがブレーキ106により吸収される。
【0028】
図2b、図2c、及び図2dにイネーブル信号132と停止信号130の双方がアサートされたときに導通状態になるブレーキ106の各実施形態を示す。図2bにおいて、2つの分離抵抗202aと202bによりイネーブル信号132及び停止信号130をブレーキ106の内部回路から分離する。分離抵抗202aを介して与えられる有効なイネーブル信号132により、電流が停止信号130の状態に応じてANDトランジスタ204あるいはダーリントン対206に供給される。停止信号130がアサートされていないときは、ANDトランジスタ204が有効なイネーブル信号132により与えられる電流を吸収するため、ダーリントン対206はオフになり、ブレーキ106は非導通状態に置かれる。
【0029】
イネーブル信号132がアサートされていない(すなわち低電圧)ときは、分離抵抗202aを通る電流によりトランジスタ206aの入力はグラウンドに下がるので電力端子118からの電流はほとんどあるいは全く流れない。同様に、停止信号130がアサートされていない(すなわち高電圧)ときは、ANDトランジスタ204がオンになるため、同じくトランジスタ206aの入力はグラウンドに下がる。ANDトランジスタ204と分離用抵抗202aの組合せにより”AND”ゲートが形成される。すなわち、イネーブル信号132と停止信号130の双方が同時にアサートされることによって初めて、ブレーキ106は図2aに示すように電力端子118からの電流(洩れ電流でない電流)を吸収する。
【0030】
ダーリントン対206を構成するトランジスタ206aと206bは電力端子118からの大きな電流を引き込む能力がある。大電流の引き込み能力によりブレーキ106は電力端子118からの、したがってモータ102からの相当なエネルギーを吸収できる。なお、洩れ抵抗208はトランジスタ206aからの洩れ電流を吸収する。
【0031】
図2cと図2dはブレーキ106の代替実施形態であり、ダーリントン対206及び洩れ抵抗208を一個のトランジスタ210あるいはFET212で置換したものである。これ以外について、図2cと図2dの実施形態は図2bに示す実施形態と同一である。単一のトランジスタ210を使用する構成は電力端子118、モータ102から吸収すべき電流が少なくてよい場合に適している。FET212は、非導通状態下で高い分離機能(すなわち洩れ電流を極めて少なくする機能)がブレーキ106に要求されるアプリケーションに適している。図3aから図3cに電力スイッチ122と接地スイッチ124に焦点を合わせた回路ブロック図を示す。図3aにおいて、電力スイッチ122の一実施形態は分離用抵抗302、反転トランジスタ304、プルアップ抵抗306、及びFET308により構成される。電力スイッチ122の各要素は相俟って動作し、停止信号130がアサートされているか否かにより電力スイッチ122は導通又は非導通状態になる。
【0032】
停止信号130がアサートされている(すなわち低電圧の)とき、分離用抵抗302はグラウンドに引き込まれるので反転トランジスタ304はオフになる。この状態で、プルアップ抵抗306はFET308のゲート電圧を引き上げる。好ましい実施形態において、FET308はpチャンネルMOSFETであり、高電圧によりFET308は非導通状態になり、これにより電力端子118への電力供給が遮断され、モータ102は無効(disabled)になる。
【0033】
停止信号130がアサートされていない(すなわち高電圧)場合、分離用抵抗302は反転トランジスタ304のゲートを反転トランジスタ304はオンにする電力に引き上げる。この条件において、反転トランジスタ304はFETトランジスタ308のゲート電圧をグラウンドに引き下げる。好ましい実施形態において、FET308はpチャンネルMOSFETであり、低電圧によりFET308は導通状態になり、電力バス126から電力端子118に、従ってモータ102に電力が供給される。
【0034】
図3bにおいて、接地スイッチ124の第1の実施形態はnチャンネルMOSFETであるのが好ましいFET310のみで構成される。イネーブル信号132がアサートされている(すなわち高電圧)とき、FET310は導通状態になる。導通状態において、接地端子120とグラウンドバス128は電気的に接続されるので、モータ102電流の戻り経路、すなわちグラウンド経路が形成される。一方、イネーブル信号がアサートされていない(すなわち低電圧)とき、FET310は非導通状態になり、接地端子120とグラウンドバス128は電気的に分離されるため、モータ102電流の戻り経路、すなわちグラウンド経路はなんら形成されない。図1に示す投薬システム100で使用される通り、イネーブル信号をアサートしないことで、モータ102は確実にディスエーブルになる。
【0035】
図3cにおいて、接地スイッチ124の第2の実施形態は図3bに似ていて、トランジスタ312と分離抵抗313から成る。イネーブル信号132がアサートされている(すなわち高電圧の)とき、トランジスタ312はオンになり、電流が接地端子120からグラウンドバス128に流れる。イネーブル信号132がアサートされていない(すなわち低電圧)ときは、トランジスタ312はオフになるので接地端子120とグラウンドバス128は電気的に切り離される。
【0036】
図4において、ウオッチドッグ回路136は2個のタイマ402a及び402bを有する。タイマ402a、402bは心拍信号が許容速度で有効な「拍」信号を確実に発生しているかを否か検出する。図示のように、タイマ402a、402bは基本的にRSフリップフロップであり、スレッシュホールド入力の電圧がスレッシュホールド電圧403aを超えるとリセットされ、トリガー入力電圧がトリガー電圧403bより下がるとセットされる。一実施形態において、タイマ402a、402bは555タイマであり、スレッシュホールド電圧403aは電源電圧の2/3、トリガー電圧403bは電源電圧の1/3である。タイマ402aが心拍信号140から有効な拍を検出するのに対し、タイマ402bは検出した拍が許容速度で発生しているかを確認する。タイミングはタイマ402a、402bの外付けRC回路により制御される。
【0037】
心拍信号140の立ち上がりエッジはハイパスコンデンサ404と放電用抵抗406から成るハイパスフィルタを通る。立ち上がりエッジにより入力408にはタイマ402aの出力をリセットするのに十分な電圧が発生し、これから拍検出信号410(拍検出信号410のアサート状態は低電圧である)が得られる。放電用抵抗406により入力408は放電されていくので、そのうち拍検出信号410はアサート解除状態になる。なお、ダイオード412はタイマ402aの入力保護用である。
【0038】
拍検出信号410はタイマ402bのトリガー入力に与えられる。拍検出信号410のアサートによりタイマ402bの出力はセットされ、これによりイネーブル信号132がアサートされる。イネーブル信号132をアサートするとともに、タイマ402bはタイミング用コンデンサ416の充電を不継続にする。そして、充電用抵抗414からの電流によりタイミング信号418が充電されて一定のスレッシュホールド値、たとえば一実施形態では電源電圧の2/3を超えるまで、イネーブル信号132はセットを保つ。
【0039】
図4の説明を続けると、タイミング用コンデンサ416と充電用抵抗414により心拍ウインドウ420の長さが決まる。心拍検出信号410がこの心拍ウインドウ420内に収まっている限り、イネーブル信号132はアサートされ続ける。イネーブル信号132は図1に示す投薬システム100においてモータ102の機能を接地スイッチ124により作動又は不作動にするのに使用される。図1に示すようにイネーブル信号132はブレーキ106を動作する。
【0040】
図5aに、投薬システム100とともに実施される本発明の液投与方法500を示す。液投与方法500は502から開始して、直ちに診断504に進む。一実施形態において、診断504では投薬システム100の機能が正常であるか否かを確認する。正常でなければ方法は停止506に進む。
【0041】
停止506を実行する際に、液投与方法500はモータ102をディスエーブルにする等の遮断処理を行うとともに可聴警報器144により警報音を鳴らしたり可視表示器143により警報メッセージを表示する等のエラー表示処理を行う。システムが正常に機能していることが確認されれば液投与方法500は起動508に進む。
【0042】
起動508では液投与を起動する。一実施形態において、液投与の起動には停止信号130のアサート解除、心拍信号140の有効な拍の発生、及びモータ102がアクティブであることの検知が含まれる。起動508の次に待機510に進む。待機510では適正な量の液投与が完了するまで停止512の実行を遅らせる。待機510は様々な方法で実施でき、制限する意味でないが、タイマ割込みのスケジューリング、タイマのポーリング、投与メータのポーリング、あるいはハードウェア信号の待機等で行われる。好ましい実施形態において、待機510には液投与量の情報を提供する薬薬用量センサをモニタリングする処理が含まれる。一実施形態において、待機510にはさらに規則的な間隔で心拍信号140の拍を発生する処理が含まれる。
【0043】
停止512では起動508において開始した全ての活動、動作を停止する。すなわち、停止512により液109の投与を中断する。一実施形態では、停止512において停止信号130のアサート及び心拍信号140の拍の中断を行う。好ましい実施形態において、停止信号130をアサートすることでブレーキ106により電力端子118が接地され、ポンプ104が電磁的に制動される。停止512の後、液投与方法500はスリープ514に進む。
【0044】
スリープ514では次に液投与が必要になるまで液投与方法500の処理を遅らせる。一実施形態において、スリープ514にはコントローラ134を低電力待機モードにする処理、タイマ割込みのスケジューリング、及びタイマ割込みに対する通常プロセスへの回復処理が含まれる。スリープ514が完了した後、液投与方法500は診断504に戻る。診断504が上述したように肯定的な結果を出すとすれば、液投与方法500はループを限りなく繰り返す。
【0045】
図5bにおいて、診断方法520は投薬システム100及び液投与方法500に基づいて実行される。一実施形態において、診断方法520は液投与方法500の診断504として実行される。診断方法520は投薬システム100の重要な構成要素のテストを実施する。好ましい実施形態において、診断方法520はモータ102を制御する回路をテストする。
【0046】
診断方法520は開始522から始まり、電力スイッチのイネーブル524に進む。好ましい実施形態において電力スイッチのイネーブル524は心拍信号140の有効な拍を中断し、停止信号130をアサート解除にすることで行われる。停止信号130をアサート解除にすると電力スイッチ122が導通状態になり、これによりモータ102に電力が供給されるはずである。しかしながら、心拍信号140の有効な拍を中断することによりイネーブル信号132はアサート解除になり、その結果、接地スイッチ124が非導通状態になり、モータ124は不作動にされる。
【0047】
診断方法520は電力スイッチのイネーブル524後、第1のモータテスト526に進み、ここでモータ102が実際には運転されているかを確認する。事実であれば、モータ102の制御回路に問題があるので診断方法520はエラー528に進んで終了する。一実施形態において、エラー528では音警報器144により警報音を鳴らしたり可視表示器143により警報メッセージを表示する等の誤動作(エラー)表示処理を行う。
【0048】
図5bに示すように、診断方法520は第1のモータテスト526の後、接地スイッチのイネーブル530に進む。好ましい実施形態において、接地スイッチのイネーブル530は停止信号130をアサートし、心拍信号140に有効な拍を発生させることにより行われる。心拍信号140に有効な拍を発生させると接地スイッチ124が導通状態になり、それによりモータ102への供給電力の戻り経路が出来るはずである。しかしながら、停止信号130をアサートしているので電力スイッチ122が非導通状態になってモータ102は運転されないはずである。
【0049】
接地スイッチのイネーブル530の次に行われる第2のモータテスト532は一実施形態において第1のモータテスト526と同一であり、モータ102が運転されているかを確認する。事実であれば、モータ102の制御回路に問題があるので診断方法520はエラー528に進んで終了する。そうでなければ、診断方法520は終了534に進んで終了する。
【0050】
図5cは投薬システム100及び液投与方法500に基づいた停止方法540の一実施形態を示したものである。一実施形態において、停止方法540は液投与方法500の停止512ステップとして実施される。好ましい実施形態において、停止方法540はモータ102の停止を速やかに行うために、運動エネルギーをモータ102の電磁エネルギーに変換し、この電磁エネルギーをブレーキ106で吸収する。
【0051】
停止方法540は開始542から始まり、モータの制動544とモータのディスエーブル546の両方に進む。モータの制動544とモータのディスエーブル546は同時に行われる必要はない。好ましい実施形態において、モータの制動544とモータのディスエーブル546はモータ102が停止するとき最小変動になるように調整される。
【0052】
好ましい実施形態において、モータの制動544ではブレーキ106を掛けてモータ102巻線の電磁エネルギーを吸収させる。一実施形態において、ブレーキ106を掛けるのに電力端子118を接地する。同じ一実施形態において、モータの無効化546では電力スイッチ122を非導通状態にして電力バス126を電力端子118から切り離すことによりモータ102への電力供給を遮断する。モータの制動544及びモータのディスエーブル546が完了すると停止方法540は終了548に進み、終了する。
【0053】
停止方法540、液投与方法500及び投薬システム100に関して、電力を遮断し、モータ102巻線の電磁エネルギーを吸収することの利点について触れる価値がある。電力を遮断してモータ102巻線の電磁エネルギーを吸収することにより、投薬システム100の運動エネルギーは消費され、モータ102は効率よく停止する。ブレーキ106による制動動作とモータ102のディスエーブルの相対的なタイミングを調整することで液109の過剰投与を容易に減らすことができる。さらに、これらの方法で達成される高速停止機能によりシステムや使用法に依存する過剰投与の変動を最小化できる。その結果、投薬システム100の精度が上がる。
【0054】
本発明はその趣旨、あるいは基本的な特徴から逸脱することなくその他の形態で具体化することができる。記載した実施形態はいかなる意味においても例示にすぎず、限定するものではない。したがって、本発明の範囲は上記記載ではなく特許請求の範囲により定められる。特許請求の範囲と均等な意味及び範囲内に入る全ての変更は本発明の範囲に含まれると解される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に基づいた投薬システムのブロック図である。
【図2a】本発明に基づいて、モータに関連する制御回路を強調したブロック図である。
【図2b】本発明に基づいて、ブレーキの第1の実施形態を示す回路図である。
【図2c】本発明に基づいて、ブレーキの第2の実施形態を示す回路図である。
【図2d】本発明に基づいて、ブレーキの第3の実施形態を示す回路図である。
【図3a】本発明に基づいて、電力スイッチの一実施形態を示す回路図である。
【図3b】本発明に基づいて、接地スイッチの第1の実施形態を示す回路図である。
【図3c】本発明に基づいて、接地スイッチの第2の実施形態を示す回路図である。
【図4】本発明に基づいて、ウオッチドッグ回路の一実施形態を示す回路図及びタイミング図である。
【図5a】本発明の投薬システムに基づいた液投与方法のフローチャートである。
【図5b】本発明の投薬システムに基づいた診断方法のフローチャートである。
【図5c】本発明の投薬システムに基づいた停止方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンピングモータを含み、液を移送するための蠕動ポンプと、
オン位置とオフ位置の間にモータを切り換えて前記ポンプにより移送される液を制御するように構成された、モータを動作するためのコントローラとを含む、液の投薬装置において、
前記コントローラは、規則的な拍を発生する心拍信号を生成して前記ポンピングモータを制御し
前記心拍信号をモニタし、前記心拍信号の拍を検出し、該検出された拍が所定の時間範囲に無いならば前記ポンピングモータをディスエーブルするウオッチドッグ回路をさらに含み、
前記ポンピングモータは電力スイッチおよび接地スイッチにより制御され、該電力スイッチおよび接地スイッチが共に導電状態にある時に電力が前記ポンピングモータに供給され、
前記電力スイッチおよび接地スイッチを制御するために個別の信号が使用されて、前記ウオッチドッグ回路はイネーブル信号を前記接地スイッチに供給しそして前記コントローラは前記電力スイッチに停止信号を与える、
液の投薬装置。
【請求項2】
前記ウオッチドッグ回路は前記接地スイッチを開くことにより、前記ポンピングモータをディスエーブルする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記停止信号は前記コントローラにより与えられそして前記電力スイッチにより受信され、低電圧停止信号をアサートすることは前記電力スイッチを非導通状態にして前記ポンピングモータへの電力を除去し、高電圧停止信号をアサートすることは前記ポンピングモータへ電力を供給する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ウオッチドッグ回路は、前記接地スイッチにより受信されるイネーブル信号を与え、前記イネーブル信号が高い電圧である時には前記接地スイッチは導電状態にあり、前記イネーブル信号が低い電圧である時には前記接地スイッチは非導電状態にある、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記心拍信号の有効な拍を断続することは、前記イネーブル信号をアサート解除し、前記接地スイッチを非導通状態にし、そして前記ポンピングモータをディスエーブルする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラは心拍信号を前記ウオッチドッグ回路に与え、前記ウオッチドッグ回路は前記心拍信号をモニタして前記コントローラが許容可能速度で有効な拍を供給していることを確認する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ウオッチドッグ回路は、前記心拍信号が許容速度であるか否かを検出するために一対のタイマを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記タイマのひとつは前記心拍信号からの有効な拍を検出し、別のタイマは前記検出された拍が許容可能速度であることを確認する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記コントローラに接続された可聴警報をさらに含む、請求項8に記載の装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公開番号】特開2008−135059(P2008−135059A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23832(P2008−23832)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【分割の表示】特願2003−533057(P2003−533057)の分割
【原出願日】平成14年7月8日(2002.7.8)
【出願人】(502300657)ゼヴェクス・インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】