説明

高結晶性ナノスケールのリン光体粒子及びその粒子を含む複合材料

リン光体粒子の収集物は、結晶化度のような向上した物質特性に基づいて向上した性能を達成する。これらのような向上したサブミクロンリン光体粒子でディスプレイ装置が形成できる。向上した処理方法は、向上したリン光体粒子に寄与し、高結晶性及び高い粒子サイズ均一性を有することができる。サブミクロン粒子収集物の粉末から分散物及び複合材が効果的に形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「高結晶性ナノスケールのリン光体粒子及びその粒子を含む複合材料(Highly Crystalline Nanoscale Phosphor Particles And Composite Materials Incorporating The Particles)」と題する、2006年3月16日付で出願されたChiruvoluらの同時係属の仮出願である米国特許出願60/782,828号の恩恵を、本出願に開示されている開示事項に関してのみ請求する。本出願は、本出願に開示されていない開示事項に関しては、前記米国仮出願の恩恵を請求しない。
【0002】
本発明は、励起後、光を放出するリン光体ナノ粒子に関する。より具体的に、本発明は、高い結晶化度を有するナノスケールのリン光体粒子に関する。このリン光体粒子は、複合材に含まれ得、この複合材は、多様な用途において非常に望ましい。
【背景技術】
【0003】
電子ディスプレイは、リン光体物質をしばしば用いるが、このリン光体物質は、電子の相互作用、場及び/又は可視光線又は紫外線のような光に応じて可視光線を放射する。リン光体物質は、陰極線管、フラットパネルディスプレイ、電界放出装置などを製造するための基材に適用できる。ディスプレイ装置の改善に伴って、例えば、電子速度又は励起エネルギの減少、それによるより少ない電力消費によって、及びディスプレイ解像度の増加によって、イメージのより高い鮮明度、色のより高い彩度、及び/又はより長い寿命の色の安定性及び輝度に対するリン光体物質の要求が厳しくなっている。電力の需要を減らすために、電子速度が低下される。特に、フラットパネルディスプレイは、一般に低い速度の電子又は低い電圧に応じるリン光体を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、カラーディスプレイに関する要望は、選択的に励起できるディスプレイ内の位置で、異なる波長の光を放出する物質又は物質の組み合わせを利用することを必要とする。種々の物質がリン光体として用いられてきた。所望の波長の光を放出する物質を得るために、活性剤がリン光体物質にドープされている。又は、所望の発光を得るために、多重のリン光体を混合することができる。更に、リン光体物質は、十分な発光を示さなければならない。
【0005】
そして、技術の進歩に伴って、加工パラメータに対する厳しい公差を有する、改善された物質加工に対する要求が増加した。小型化の更なる進行に伴って、物質パラメータは、更に厳しい公差内に収まらなければならない。現在の集積回路技術は、既に、加工寸法に対してナノメートルスケールの公差を必要としている。
【0006】
種々の金属組成物は、励起時に所望の発光特性を示す。特に、希土類金属酸化物を含む種々の金属酸化物は、蛍光/リン光を示す。そして、リン光体粒子の波長及び発光性を調整するために、非希土類金属酸化物又は他の母材への希土類金属のドープが利用できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様において、本発明は、結晶性リン光体組成物を含む粒子の収集物に関し、前記粒子の収集物は、約100nm以下の数平均1次粒子サイズ、約250nm以下の重量平均2次粒子サイズ、及び少なくとも約90%の結晶化度を有する。
【0008】
更なる態様において、本発明は、流れ反応器で粒子を製造する方法に関する。この方法は、加熱されたエアロゾルを含む反応物流れを反応させて、流れ内で生成物粒子を生成することを含む。加熱されたエアロゾルは、周囲温度より少なくとも約10℃高い温度まで加熱される。いくつかの実施形態において、反応は、反応物流れと交差する光ビームにより促進され、反応物流れは、光ビームから光を吸収する組成物を含む。いくつかの実施形態において、生成物粒子は、約500nm以下の平均粒子サイズを有し、粒子は、高い生産速度で形成されつつ、高い粒子サイズの均一性を有し得る。
【0009】
また、本発明は、約250nm以下の平均粒子サイズを有する無機リン光体粒子の収集物を処理する方法に関する。前記方法は、酸化性雰囲気で5分〜約5時間、約250℃〜約600℃の第1温度で粒子収集物を加熱することと、還元性雰囲気で第1温度より高い第2温度で約5分〜約48時間、粒子収集物を加熱することとを含む。第2温度は、粒子の結晶構造をアニールするのに十分であり、少なくとも所望の相の変態開始温度より高く、粒子の溶融温度より少なくとも100℃低い温度である。いくつかの実施形態において、前記方法は、x線散乱によって決定される粒子の結晶化度を増加させると共に、粒子の著しい焼結を引き起こさずに、第2温度より低く、第1温度より高い第3温度で、5時間〜24時間、還元性雰囲気で、粒子収集物を加熱することを更に含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
高結晶性かつ均一なサブミクロンかつナノスケールのリン光体粒子は、非常に望ましい光学特性を示す。そして、小さいサイズの粒子は、構造内の構成要素の境界で、対応するより高い解像度を有するより小さい及び/又はより薄い構造の形成を提供する。また、小さいリン光体粒子は、粒子の電子励起に基づく実施形態の場合、サブミクロンのリン光体粒子を励起させるためにより低いエネルギ励起しか必要としないため、節電機能を提供する。サブミクロン/ナノスケールのリン光体粒子は、一般に、所望の特性を導入するために、追加処理を有するレーザー熱分解で製造できる。小さいサイズのリン光体粒子により、粒子は、より大きいリン光体粒子に比べ、可視光線に更に透明であり得る。光学構造体又は他の機能性構造体の形成のために、サブミクロンのリン光体粒子は、ポリマー無機粒子複合材に含まれ得、この複合材は、所望の構造に成形したり、又は他の方式で処理することができる。ポリマーは、複合材内でバインダとして機能することができる。リン光体粒子は、ポリマー複合材への取り込み、又は様々な装置構造への加工を容易にするために、表面改質剤と効果的に結合できる。様々なディスプレイ、及び他の光学又は電子光学装置は、ここで説明するリン光体粒子及び/又は複合材で形成することができる。
【0011】
関心の対象である粒子は、場、電子、又はエネルギを有する光で励起された後、蛍光又はリン光によって発光を示す。関心の対象である多くの組成物は、適切なドーパントを有する金属化合物である。結晶化度、粒子サイズ、ドーパントレベル、ドーパント酸化状態、及び格子構造の適切な制御が、高い発光性を得るのに重要である。これと共に、一部の実施形態において、約100nm以下の小さい平均粒子サイズは、可視光線の散乱を著しく減少させて、高い発光性という利点を補完する。更に、粒子サイズ、結晶化度、及びドープに対する粒子の高い均一性は、不均質な動作の減少によって光学特性を向上させる。
【0012】
無機粒子は、一般に、金属及び/又はメタロイド元素を元素形態又は化合物状態で含む。具体的に、無機粒子は、例えば、元素金属又は元素メタロイド、すなわち非イオン化元素、その合金、金属/メタロイド酸化物、金属/メタロイド窒化物、金属/メタロイド炭化物、金属/メタロイド硫化物、金属/メタロイドケイ酸塩、金属/メタロイドリン酸塩、又はこれらの組み合わせを含むことができる。リン光体粒子は、ドープ又は非ドープの金属/メタロイド組成物であり得る。メタロイドは、金属と非金属の中間の化学的特性、又は金属と非金属の特性を含む化学的特性を示す元素である。メタロイド元素は、ケイ素、ホウ素、砒素、アンチモン、及びテルルを含む。金属又はメタロイドという用語を特に制限せずに用いる場合、これらの用語は、任意の酸化状態及び元素形態又は組成物状態の金属又はメタロイド元素を示す。金属又はメタロイド組成物は、電気的中性を提供するために、対応元素を有する酸化された、すなわち元素ではない形態の、1種以上の金属メタロイド元素を有する任意の組成物を示す。
【0013】
無機粒子の分散性を向上させるために、表面改質剤を使用することができる。分散性の向上は、一般に様々な装置への加工性向上、表面欠陥の減少又は除去だけでなく、更に均一な複合材の形成に効果的であり得る。適切な表面改質剤は、無機粒子表面と共有結合しても又は共有結合していなくてもよい。結合が行われない場合、表面改質剤は、表面活性剤などであり得る。
【0014】
複合材に関して、よく分散された無機粒子は、高いロードレベルでポリマー無機粒子複合材に取り込める。良好な分散の場合、複合材内の凝集が減少したり除去されて、複合材の光学特性が向上する。一般に、複合材内への無機粒子のロードは、特定用途の場合、より低い粒子ロードが望ましいが、よく分散された粒子で50重量%又はそれより高くなることができる。一般に、無機粒子は、特定応用に適したロードの範囲で、選択された複合材内に取り込むことができる。無機粒子は、ポリマーに結合しても又は結合していなくてもよい。リンカー化合物がポリマーとの無機粒子の結合に関与することができる。そして、化学的に結合された複合材に係る実施形態において、無機粒子に結合されたリンカー化合物の量は、ポリマーで得られる架橋の程度を変化させるように調整できる。
【0015】
多様な化学量及び結晶構造を有するサブミクロンの金属組成物粒子は、熱分解、特に、レーザー熱分解単独で又は追加処理と共に生成できる。特に、他の複合金属/メタロイド組成物粒子だけでなく、多重の金属/メタロイド酸化物複合材粒子の合成のための方法が開発された。複数の金属/メタロイド元素が反応物ストリーム内に導入される。反応物ストリーム内の組成と処理条件を適宜選択することにより、任意に選択されたドーパントを有して、所望の金属/メタロイド組成化学量論をなすサブミクロン粒子が形成できる。
【0016】
例えば、金属/メタロイド酸化物のような金属/メタロイド組成物の望ましい収集物である粒子は、1ミクロン以下の平均直径及び粒径の狭い分布を有する高い均一性を有することができる。所望のサブミクロン金属/メタロイド組成物粒子を生成するために、レーザー熱分解を単独又は追加処理(熱処理など)と組み合わせて用いることができる。具体的には、レーザー熱分解は、サブミクロン(約1ミクロン平均直径未満)及びナノスケール(約100nm平均直径未満)の金属/メタロイド酸化物粒子、及び平均粒径の狭い分布を有する他の金属/メタロイド組成物粒子を効果的に生成するための優れた工程になり得ることが判明された。そして、レーザー熱分解によって生成されたサブミクロンの無機粒子は、粒子の結晶特性、酸化状態及び/又は化学量を変更するために、適切な環境で温和な条件下で加熱することができる。したがって、これらの方法を用いると、非常に多様な異種の無機粒子を生成することができる。
【0017】
無機粒子の製造のためのレーザー熱分解の成功した適用の基本的な特徴は、1以上の適切な金属/メタロイド前駆体を含む反応物ストリームの生成である。また、陰イオン元素源が提供されなければならない。例えば、金属/メタロイド酸化物に関して、酸素元素が金属/メタロイド前駆体内に結合でき、及び/又は分子酸素などの個別の酸素源によって供給できる。これと同様に、金属前駆体及び/又は酸素源が適切な放射線吸収剤でなければ、付加の放射線吸収剤が反応物ストリームに加えられる。
【0018】
レーザー熱分解において、反応物ストリームは、レーザービームのような強い光ビームによって熱分解される。レーザービームは便利なエネルギ源であるが、他の強い光源をレーザー熱分解に使用することもできる。レーザー熱分解は、熱力学的平衡条件下で形成するのが難しい物質の相を形成させる。反応物ストリームが光ビームから離れると、金属/メタロイド酸化物粒子はただちにクエンチされる。
【0019】
関心の対象である生成物は、非晶質物質、結晶性物質、及びこれらの組み合わせを含む。非晶質物質は、結晶性物質で発見されるものと非常に類似する短距離秩序を有する。結晶性物質において、短距離秩序は、結晶性物質と非晶質物質とを区別する長距離秩序の構成要素を含む。すなわち、非晶質物質で発見される短距離秩序の構成要素の並進対称性は、結晶性格子を規定する長距離秩序を生成する。例えば、シリカガラスは、不規則な結合角で共に結合された(SiO44-4面体から構成される非晶質物質である。4面体の規則性は、短距離秩序を提供するが、結合角の不規則性は、長距離秩序を防止する。逆に、石英は、同じ(SiO44-4面体から構成される結晶性シリカ物質であり、ここでの4面体は、規則的な結合角で共に結合されて長距離秩序を形成し、その結果、結晶性格子をなす。一般に、結晶性形態は、類似の非晶質形態より低いエネルギ状態である。これは、長距離秩序の形成のための駆動力を提供する。すなわち、十分な原子移動度と時間を与えると、長距離秩序が形成できる。
【0020】
レーザー熱分解において、広い範囲の無機物質が反応工程で形成できる。動力学原理に基づくと、クエンチ速度が速いほど非晶質粒子の形成に有利で、クエンチ速度が遅いほど長距離秩序の発現時間が存在するので、結晶性粒子の形成に有利である。反応領域を介する反応物ストリームの速度が速いほど、クエンチがより速く行われる。そして、一部の前駆体が非晶質粒子の生成に有利であり、他の前駆体が類似又は同等の化学量論の結晶性粒子の生成に有利であり得る。また、低いレーザーパワーが非晶質粒子の形成に有利であり得る。非晶質酸化物の形成が、本明細書に参照により組み込まれる、「バナジウム酸化物ナノ粒子(Vanadium Oxide Nanoparticles)」と題するKambeらによる米国特許6,106,798に記載されている。しかし、結晶性物質がリン光体応用として特に関心を集めており、ここで具体的に説明するリン光体粒子は高結晶性である。
【0021】
従来より、リン光体は、高温で原料間の固体状態反応によって合成される。一般に、リン光体は、活性剤を有する母結晶を伴う。活性剤は、発光性を増加させるために、及びリン光体の発光色を変更するために使われる。活性剤は、一般に、低いモル分率で母結晶内に導入されるドーパントの形態を有する。固体状態反応を促すために、及びよく結晶化された粒子を形成するために、フラックスと呼ばれる他の物質を添加することができる。使用されたフラックスは、例えば、KFのようなアルカリハロゲン化物、MgF2のようなアルカリ土類ハロゲン化物、及びAlF3のような他の遷移金属ハロゲン化物を含む。任意の次の熱処理によるレーザー熱分解法は、フラックスを必要としない。
【0022】
リン光体は、一般に母結晶又はマトリックス、及びドーパントとして少量の活性剤を含む。一般に、重金属イオン又は希土類イオンが活性剤として用いられる。一部のリン光体で、電荷補償のために、共活性剤が更に加えられる。例えば、硫化亜鉛の母結晶の場合、IIIa族イオン(例えば、Al+3)又はVIIb族イオン(例えば、Mn)が共活性剤として用いられる。発光スペクトルは、共活性剤の組成にほとんど関係なく、共活性剤イオンは、発光中心の形成を補助する。放出効率を向上させるために、商用リン光体でエネルギ伝達処理がしばしば用いられる。この理は、発光の増感と呼ばれ、エネルギドナーは、増感剤と呼ばれる。例えば、Mn+2活性化硫化物リン光体の放出強度は、Pb+2、Sb+3、及びCe+3によって増感される。
【0023】
レーザー熱分解による粒子の製造後、一般にその粒子を熱処理するのが望ましい。初期合成された粒子を熱処理することで、無機粒子の性質を変えることができる。例えば、熱処理によって粒子の結晶化度及び/又は相純度を変えることができる。酸化性雰囲気、還元性雰囲気、又は不活性雰囲気で熱処理を行って、所望の粒子を製造することができる。安定的に温和な加熱条件下で、粒子は不適切な程度まで焼結されたり又は溶解されたりしない。
【0024】
レーザー熱分解装置から収集された粒子は、リン光特性を向上させるために更に処理することができる。特に、合成された粒子の結晶化度を更に増加させるために、熱処理を用いることができる。また、ドーパントが機能的酸化状態にあるよう、ドーパントの酸化状態を移動させるために、熱処理段階を用いることができる。得られるリン光体粒子の高い発光性を得るためには、結晶化度及びドーパントが重要である。特に、レーザー熱分解によって合成された粒子は、非常に高い結晶化度を得るために熱処理することができる。
【0025】
ドーパントレベルは、粒子の発光特性に直接関連し得る。一般に、ドーパントを加えると、ドーパントが粒子内に吸収−放出中心を形成するため、発光がより大きくなる。一般に、発光状態への移行により多くの電子が利用できるので、発光は、ドーパントレベルと共に増加する。しかし、発光性は、一般に因子の均衡によりドーパント濃度の関数として頂点に達する。特に、発光特性は、粒子の結晶化度、結晶格子内のドーパントの位置決め及び濃度に依存する。ドーパントレベルが増加するにつれ、クエンチ装置は、発光を減少し始め、結晶欠陥が増加するようになる。したがって、十分に高いドーパント濃度では、クエンチが、より高い吸収から増加を支配し始めるので、発光性は、ドーパントレベルの増加と共に減少する。しかし、クエンチは、結晶格子内にドーパントを取り込む機能であり、これは粒子を形成するための過程の機能である。レーザー熱分解及び次の熱処理によって、非常に高いレベルの結晶化度を達成することができる。反応チャンバ内へ搬送する前に、エアロゾルの加熱のようなレーザー熱分解過程を改善することは、クエンチを増加させずに、より多くの量のドーパントを取り込ませることができる。
【0026】
共ドープは、様々な効果を提供することができる。上述したように、共ドーパントは、共活性剤又は増感剤として機能することができる。しかし、共ドーパントは、例えば、活性剤周囲の局部的な結晶対称性を変化させることで、結晶内の活性剤の特性を変化させるよう機能することができ、その結果、結晶内の活性剤の潜在エネルギレベルを変化させる。したがって、共ドーパントは、環境によっては上昇効果を有することができる。以下で、セリウムドープされたYAG結晶内の共ドーパントの効果について更に説明する。
【0027】
例えば、レーザー熱分解によって合成された、及び任意に付加の熱処理を受けた高結晶性の無機リン光体粒子の場合、得られたリン光体粒子は、高い発光性を有することができる。粒子の平均サイズ、ドーパント濃度及びドーパント組成は、吸収スペクトルと放出スペクトルに影響を及ぼし得る。
【0028】
分散物を形成するために、高結晶性粒子をミリングして、粒子の分離を促すことができる。これと同様、事前ミリングを経た粒子、又は事前ミリングを経ていない粒子が激しく混合されて分散物を形成することができる。表面改質剤の搬送が流体内の粒子の分離をより促進させることができる。
【0029】
一般に、ポリマー複合材を形成する前に、リン光体粒子を分散させるのが望ましい。例えば、よく分散された粒子は、一般に特定の励起に対してより高い出力を示す。分散されたリン光体粒子は、他の実施形態において無機粒子の存在下でポリマーが重合できるにもかかわらず、ポリマー溶液又はポリマー融液と混合できる。複合材は、例えば、従来のポリマー処理技術を用いて処理することができる。
【0030】
様々なディスプレイ応用に、サブミクロン粒子のリン光体粒子を効果的に取り込むことができる。サブミクロン粒子を有する複合材は、ディスプレイ内により小さい構造を形成するために使用することができる。光発光応用の場合、粒子は、粒子が特定の光源から受光してより高い波長で放出する構造で形成される。陰極線発光及び電界発光の場合、電磁場又は電子でそれぞれ励起が行われる。ここで説明する無機リン光体粒子のより高い発光特性は、一般に任意の発光原理に基づく装置のより効率な作業を提供する。
【0031】
小さい粒子サイズ及び比較的高い発光性は、装置形成を向上させ及び作業をより効率的にするための能力を提供する。高い発光は、物質におけるコスト低減のためのより少ない量のリン光体使用を提供する。物質の散乱は、粒子のより良好な分散、及び小さい平均粒子サイズを有する、より優れた粒子均一性によって減少できる。物質が低い散乱を有すると、これらの向上した特性を有しない物質で形成された装置に比べ、装置の光出力がより高く、リン光体粒子の総量がより少ないので、前記粒子は、より少ないロードで前記物質に代替できる。言い換えれば、リン光体粒子のより少ないロードを有する物質がより容易に処理でき、したがって、特定量の処理能力に対して、より少ない散乱を有することができる。
反応物流れ内での粒子合成
レーザー熱分解は、単独又は付加の処理と共に、広い範囲の粒子組成及び構造を有するリン光体粒子などのサブミクロン/ナノスケール粒子の製造のための重要な道具となり得ることが立証されている。以下で詳しく説明する反応物搬送方法は、流れ反応物システムで選択された組成を有する粒子を生成するために適合化できる。レーザー熱分解が、高い生成/蒸着速度で非常に均一な生成物粒子を生成することができるので、レーザー熱分解は、ドープされる粒子及び/又は複合粒子組成物を生成するためのいくつかの応用で特に適切な方法である。
【0032】
製造方法は、流動する反応物が反応し、生成物粒子が流れ内に形成される流れ反応システムに基づくことができる。特に、レーザー熱分解は、流動する反応物ストリームの反応が流れ反応物ストリームと交差する強い光ビームにより促進される流れ反応システムである。流れ反応物システムは、一般に、反応チャンバを介して流れを誘導する反応物搬送装置を含む。反応物流れの反応は、反応チャンバ内で行われる。反応を促進するために、例えば、光、ビームなどの放射線を使うと、局部的な反応領域が生成されて、粒子の高い不均一性が発生する。反応領域を超えて、流れは、生成物粒子、反応しない反応物、反応副産物、及び不活性ガスを含む。流れは、収集器まで続くことができ、収集器で生成物粒子の少なくとも一部が流れから取得される。流れへの反応物の連続的な供給及び反応過程の間の流れからの生成物粒子の除去が流れ反応物システム内の反応過程の特徴である。したがって、流れは、ある地点から他の地点までストリームとしての物質の純移動の一般的な意味である。
【0033】
レーザー熱分解は、放射線で規定される狭い反応領域から離れた後、生成物のクエンチと共に、例えば、光などの強い放射線によって促進される流れ化学反応に関する標準技術となった。しかし、その名称は、非レーザー源から放出される放射線、例えば、強いインコヒーレント光又は他の放射ビームがレーザーを代替できるという意味で、誤称である。また、反応は、熱的熱分解の観点からみて熱分解ではない。レーザー熱分解反応は、反応物の発熱燃焼により、単に熱的には促進されない。実際、いくつかの実施形態において、レーザー熱分解反応は、熱分解炎光と完全に対照的で、反応からいかなる可視光線放出も観察されない条件下で行われる。したがって、ここで使われるレーザー熱分解は、一般に放射線で促進される流れ反応を示す。
【0034】
反応条件は、レーザー熱分解によって生成される粒子の質を決定することができる。レーザー熱分解の反応条件は、所望の特性を有する粒子を生成するように、相対的に正確に制御できる。例えば、反応チャンバ圧力、流速、反応物の組成と濃度、放射強度、放射エネルギ/波長、反応ストリーム内の不活性希釈ガスの種類と濃度、反応物流れの温度が、例えば、反応領域内の反応物/生成物の飛行時間及びクエンチ速度を変更することで、生成物粒子の組成と他の特性に影響を及ぼし得る。したがって、特定の実施形態において、1以上の特定の反応条件が制御できる。特定種類の粒子を生成するための適切な反応条件は、一般に特定装置の設計に依存する。特定装置で選択された粒子を生成するために使われる特定条件を以下の実施例で説明する。更に、反応条件と得られる粒子との関係に関するいくつかの一般的な観察がなされ得る。
【0035】
光電力を増加させると、クエンチ速度が速くなるだけでなく、反応領域内の反応温度が増加するようになる。速いクエンチ速度は、熱的平衡に近接した過程では得られない、より高いエネルギ相の生成に有利である傾向がある。これと同様、チャンバの圧力を増加させると、より高いエネルギ相の生成に有利である傾向がある。また、反応物ストリームで酸素源又は他の2次反応物源として作用する反応物の濃度を増加させることは、増加した量の酸素又は他の2次反応物を有する粒子の生成に有利である。
【0036】
反応物ガスストリームの反応物速度は、粒子サイズに反比例するので、反応物速度を増加させると、粒子サイズが小さくなる傾向がある。粒子サイズの決定に重要な因子は、生成物粒子への凝縮性生成組成物の濃度である。凝縮性生成組成物の濃度を減少させると、一般に粒子サイズは減少する。凝縮性生成物の濃度は、非凝縮性、例えば、不活性組成物で希釈することで、又は一般に濃度の減少による圧力減少及び対応する粒子サイズの減少及びその逆となり、非凝縮性組成物に対する凝縮性生成物の固定比で圧力を変化させることで、又はこれらを組み合わせることで、又は任意の他の適切な措置で制御できる。
【0037】
また、光電力が粒子サイズに影響を及ぼし、光電力の増加は、低い溶融温度材料の場合、より多くの粒子形成に有利であり、高い溶融温度材料の場合、より小さい粒子形成に有利である。また、粒子の成長動力学は、得られる粒子サイズに大きい影響を及ぼす。すなわち、異なる形態の生成組成物は、比較的類似の条件下で他の相から異なるサイズの粒子を形成する傾向がある。これと同様、異なる組成の粒子の密度(population)が形成される条件下で、粒子の各密度は、一般に自身の特徴的な粒子サイズ分布を有することができる。
【0038】
反応過程で所望の組成を形成するために、1以上の前駆体が所望の組成を形成する1以上の金属/メタロイド元素を供給する。反応物ストリームは、一般に母材を形成するために、所望の金属、及び付加的又は代替的にメタロイド元素を含み、任意に、所望の組成を有する生成物粒子を生成するために、ドーパント/添加剤を適切な比率で含む。反応物ストリームの組成は、組成及び構造体に対して所望の生成物粒子を生成するために、反応条件によって調整することができる。特定の反応物及び反応条件によって、元素が粒子への異なる取り込み効率、すなわち、非反応物質に関する異なる収率を有することができるので、生成物粒子は、反応物ストリームの場合と同じ割合の金属/メタロイド元素を有さなくてもよい。ここで説明する放射線促進反応のための反応物ノズルの設計は、高い反応物流れを有する高い収率のために設計されている。また、付加の適切な前駆体は、任意の所望のドーパント/添加剤元素を供給することができる。
【0039】
レーザー熱分解は、ガス/蒸気相反応物で行われてきた。金属/メタロイド前駆体組成物のような多くの前駆体組成物は、ガス/蒸気として反応チャンバ内へ搬送できる。ガス搬送のための適切な前駆体組成物は、一般に、適当な蒸気圧、すなわち所望量の前駆体ガス/蒸気を反応物ストリーム内へ送るのに十分な蒸気圧を有する組成物を含む。液体又は固体の前駆体組成物を保持する容器は、必要に応じて、前駆体の蒸気圧を増加(減少)させるために加熱(冷却)できる。固体前駆体は、一般に十分な蒸気圧を生成するように加熱される。搬送ガスは、所望量の前駆体蒸気の搬送を促すために、液体前駆体によってバブリングできる。これと同様、搬送ガスは、前駆体蒸気の搬送を促すために、固体前駆体に伝達できる。代替的又は追加的に、液体前駆体は、選択された蒸気圧で組成物を供給するために、フラッシュ蒸発器へ誘導させることができる。
【0040】
排他的にガス相反応物を使うことは、便利に使用可能な各種の前駆体組成物に対して魅力的である。したがって、金属/メタロイド前駆体のような前駆体含有エアロゾルをレーザー熱分解チャンバ内に導入する技術が開発されてきた。流れ反応システムのための改善されたエアロゾル搬送装置が、本明細書に参照により組み込まれる、発明の名称「反応物搬送装置(Reactant Delivery Apparatus)」であるGardnerらの米国特許第6,193,936号に記載されている。
【0041】
エアロゾル搬送装置を用いると、固体前駆体組成物は、溶媒に組成物を溶解させることで搬送できる。又は、粉末前駆体組成物は、エアロゾル搬送のために、液体/溶媒に分散できる。液体前駆体組成物は、純粋液体、多重液体分散物又は液体溶液からエアロゾルとして搬送できる。エアロゾル反応物は、多くの反応物スループットを得るために使うことができる。溶媒/分散剤は、得られる溶液/分散物の所望の特性を達成するように選択することができる。適切な溶媒/分散剤は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、他の無機溶媒、及びこれらの混合物を含む。得られる粒子が所望の純度レベルを有するように、溶媒は所望のレベルの純度を有しなければならない。イソプロピルアルコールのようないくつかの溶媒は、CO2レーザーから放射される赤外線光の重要な吸収剤であるため、CO2レーザーが光源として使われると、いかなる付加の光吸収組成物も反応物ストリーム内に必要としない。
【0042】
前駆体が溶媒と共にエアロゾルとして搬送されると、溶媒は、一般に反応チャンバ内で放射(例えば、光)ビームによって速やかに蒸発して、ガス相反応が生じ得る。得られる粒子は、溶媒が速やかに除去できないエアロゾルに基づく他の方法に比べて、一般に高度の多孔性ではない。したがって、レーザー熱分解反応の基本的な特徴は、エアロゾルの存在によって変化されないままにできる。しかし、反応条件は、エアロゾルの存在によって影響を受ける。以下、実施例において、レーザー熱分解反応チャンバでエアロゾル前駆体を用いてサブミクロン/ナノスケール粒子を生成するための条件を説明する。したがって、エアロゾル反応物搬送に係るパラメータを以下の説明に基づいて更に考察することができる。
【0043】
エアロゾル搬送のための前駆体組成物は、一般に約0.1モルより大きい範囲の濃度で溶液に溶解される。一般に、溶液内の前駆体の濃度が増加すると、反応チャンバを介する反応物のスループットが増加する。しかし、濃度の増加に伴って、溶液の粘性が増加できるので、エアロゾルは、所望よりも大きいサイズの液滴を有してもよい。したがって、溶液濃度の選択は、適切な溶液濃度の選択における因子の均衡と関連する。
【0044】
いくつかの実施形態において、エアロゾル液滴がより高い温度で反応領域内へ導入されるように、エアロゾルの形成のための液体をエアロゾル形成前又はエアロゾル形成中に加熱するのが有利であることを発見した。特に、驚くべきことに、このような加熱が粒子化学量の形成、特に前駆体が室温で導入される場合に形成が困難又は不可能なドーパントレベルの形成を容易にすることを発見した。一般に、液体は、反応チャンバ内の圧力で液体の沸点直下の温度まで加熱することができる。更に、液体を加熱すれば、得られた粒子の均一性を改善できることも発見した。具体的には、液体を加熱すると純粋蒸気相反応下で観察される粒子特性に非常に近接した粒子特性が得られる。
【0045】
複数の金属/メタロイド元素に係る実施形態の場合、金属/メタロイド元素は、全て蒸気として、全てエアロゾルとして、又はこれらの任意の組み合わせとして搬送できる。複数の金属/メタロイド元素がエアロゾルとして搬送されると、前駆体は、単一エアロゾルとして反応物流れ内へ搬送するために、単一溶媒/分散剤に溶解/分散できる。又は、複数の金属/メタロイド元素は、エアロゾルに個別的に形成される複数の溶液/分散物内に搬送できる。便利な前駆体が共通溶媒/分散剤によく溶解/分散できない場合、複数のエアロゾルの生成が有用となり得る。複数のエアロゾルは、共通ノズルを介する反応チャンバ内への搬送のために共通ガス流れに導入できる。又は、反応物が反応領域に入る前に反応チャンバ内で混合されるよう、反応チャンバ内へのエアロゾル及び/又は蒸気反応物の個別搬送のために、複数の反応物入口が使用できる。以下で、例示的な反応物搬送装置を説明する。
【0046】
そして、非常に純粋な物質の生成のために、蒸気及びエアロゾル反応物の組み合わせを使うのが望ましい。蒸気/ガス反応物は、一般にエアロゾル搬送組成物の場合、合理的なコストで利用可能なものより高い純度で供給できる。これは、ドープされた光学ガラスの形成に特に便利である。例えば、非常に純粋なシリコンは、四塩化ケイ素のような容易に蒸発可能な形態で搬送できる。これと共に、元素によっては、特に希土類ドーパント/添加剤は、蒸気形態で便利に搬送できない。したがって、いくつかの実施形態において、生成組成物の大部分の材料は、蒸気/ガス形態で搬送できる一方、他の元素は、エアロゾル形態で搬送される。蒸気及びエアロゾルは、単一反応物入口又は複数の入口を介して搬送した後、他の方式で反応のために組み合わせることができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、粒子は、1以上が非(金属/メタロイド)元素を含む。例えば、関心の対象であるいくつかの組成物は酸化物である。したがって、酸素源が反応物ストリーム内に存在しなければならない。酸素源は、1以上の酸素原子を含むと、金属/メタロイド前駆体自体であり得、又は2次反応物が酸素を供給することができる。反応器内の条件は、酸化物物質を生成するように十分に酸化性でなければならない。
【0048】
特に、2次反応物は、いくつかの実施形態で反応チャンバ内の酸化性/還元性条件を変更するために、及び/又は非金属/メタロイド元素又はその一部を反応生成物に寄与するために使用できる。酸素源として作用する適切な2次反応物は、例えば、O2、CO、H2O、CO2-、O3など、及びこれらの混合物を含む。分子酸素を空気として供給することができる。いくつかの実施形態において、金属/メタロイド前駆体組成物は、酸素を含み、生成物粒子内の酸素の全て又は一部が金属/メタロイド前駆体によって寄与される。これと同様、エアロゾル搬送のための溶媒/分散剤として使われる液体が2次反応物、例えば、酸素を反応物に寄与することができる。すなわち、1以上の金属/メタロイド前駆体が酸素を含むと、及び/又は溶媒/分散剤が酸素を含むと、反応粒子に酸素を供給するために、個別2次反応物、例えば、蒸気反応物を必要としないこともあり得る。以下で、関心の対象である他の2次反応物を説明する。
【0049】
一実施形態において、2次反応物組成物は、放射反応領域に入る前に、金属/メタロイド前駆体と著しく反応してはならないが、これは、より大きい粒子を形成し、及び/又は入口ノズルに損傷を与える可能性があるためである。これと同様、複数の金属/メタロイド前駆体が使われると、これら前駆体は、放射反応領域に入る前に著しく反応してはならない。反応物が自発的な反応性であれば、金属/メタロイド前駆体及び2次反応物及び/又は異なる金属/メタロイド前駆体は、反応チャンバ内へ個別反応物入口を介して搬送されて、光ビームに達する直前に組み合わされる。
【0050】
レーザー熱分解は、レーザー又は他の強い光源を用いて、様々な光周波数で放射により行うことができる。便利な光源は、スペクトルの可視光線及び紫外線領域のように、他の波長を使用できるにもかかわらず、電磁スペクトルの赤外線部分で作動する。紫外線源としてエキシマレーザーが使用できる。CO2レーザーが特に有利な赤外線光源である。反応物ストリームに含まれる赤外線吸収剤は、例えば、C24イソプロピルアルコール、NH3、SF6、SiH4、及びO3を含む。O3が赤外線吸収剤及び酸素源として作用する。赤外線吸収剤のような放射線吸収剤が放射ビームからエネルギを吸収して、熱分解を促進するために他の反応物にそのエネルギを分配することができる。
【0051】
一般に、放射ビーム、例えば、光ビームから吸収されたエネルギは、一般に制御された条件下での発熱反応によって生成される熱による速度の数倍に達する速い速度で温度を増加させる。過程は、一般に非平衡条件を含むが、吸収領域におけるエネルギに基づいて温度を概略的に記述することができる。レーザー熱分解過程は、エネルギ源が反応を開始させるが、発熱反応によって与えられるエネルギによって反応が促進する燃焼反応器内の過程と質的に異なる。したがって、光駆動過程がレーザー熱分解とも呼ばれるが、反応が、反応によって与えられるエネルギによって促進されず、放射ビームから吸収されたエネルギによって促進されるので、伝統的な熱分解ではない。特に、反応物ストリームと放射ビームとの交差点からノズルに向かって反応物流れが少しでも引き下がると、反応物の自発的な反応は、一般に著しく進行されない。必要であれば、反応領域が所望の通り限定されたまま保持されるように、流れを変更することができる。
【0052】
反応物チャンバ成分に接触する反応物と生成物分子の量を減らすために、不活性遮蔽ガスを使用することができる。不活性ガスは、搬送ガス及び/又は反応調節因子として反応物ストリーム内に導入できる。適切な不活性ガスは、一般にAr、He及びN2を含む。
【0053】
以下で説明する反応物搬送構成に基づく粒子生産速度は、少なくとも約50g/h、他の実施形態では少なくとも約100g/h、また他の実施形態では少なくとも約250g/h、追加の実施形態では少なくとも約1kg/hであり得、一般に少なくとも約10kg/h以下である。一般に、生成物粒子内に取り込まれる流れ内の金属/メタロイド核の部分によって評価されるとき、比較的高い反応収率を得ると共に、これらのような高い生産速度が達成できる。一般に、収率は、限定的な反応物に基づいて、少なくとも約30%、他の実施形態では少なくとも約50%、また他の実施形態では少なくとも約65%、他の実施形態では少なくとも約80%であり得、追加の実施形態では反応物流れ内の金属/メタロイド核に基づいて、少なくとも約95%である。当業者は、これらのような特定値の範囲に属する粒子生産速度と収率の追加値を考えることができ、その値が本開示の範囲内であることを認識するはずである。
【0054】
適切なレーザー熱分解装置は、一般に周囲環境から隔離された反応チャンバを含む。反応物搬送装置に連結された反応物入口が反応チャンバを介する流れとして反応物ストリームを生成する。放射ビーム経路、例えば、光ビーム経路が反応領域で反応物ストリームを横切る。反応物/生成物ストリームは、反応領域の後、出口へ引き続き進み、出口で反応物/生成物ストリームは、反応チャンバから出て収集装置へ入っていく。いくつかの実施形態において、レーザーのような放射源が反応チャンバの外部に位置し、光ビームが適切なウィンドウ及び/又はレンズを介して反応チャンバに入っていく。反応物入口の寸法は、以上及び以下で説明するように、反応物入口の寸法と流れ速度が他の反応パラメータと関連しなければならないが、所望の生産速度を得、また所望の粒子特性を得るように選択できる。
【0055】
図1に示すように、レーザー熱分解システムの特定の実施形態100は、反応物搬送装置102、反応チャンバ104、遮蔽ガス搬送装置106、収集装置108、及び放射(例えば、光)源110を含む。以下で説明する第1反応搬送装置は、1以上の排他的ガス/蒸気反応物を搬送するために使用できる。エアロゾルである1以上の反応物を搬送するために、代替的な反応物搬送装置を記載する。これと同様、反応物搬送装置は、エアロゾルである1以上の反応物及び蒸気/ガスである1以上の反応物を搬送することができる。
【0056】
図2に示すように、反応物搬送装置102の第1実施形態112は、前駆体組成物の源120を含む。液体又は固体反応物の場合、反応物の搬送を容易にするために、1以上の搬送ガス源122からの搬送ガスを前駆体源120に導入することができる。前駆体源120は、液体保持容器、固体前駆体搬送装置又は他の適切な容器を含むことができる。搬送ガス源122から出てくる搬送ガスは、赤外線吸収剤及び/又は不活性ガスを含むことができる。いくつかの実施形態において、前駆体源は、一般に搬送ガスなしに選択された蒸気圧で前駆体蒸気を供給するフラッシュ蒸発器を含む。フラッシュ蒸発器は、液体前駆体を供給するために、液体貯蔵容器に連結できる。適切なフラッシュ蒸発器は、例えば、ニューメキシコ州のアルバカーキ所在のMKS Instruments,Inc.から入手でき、又は容易に利用可能な部品で製造できる。
【0057】
前駆体源120からのガス/蒸気は、チュービング130の単一部におけるガスの組み合わせによって赤外線吸収剤源124、不活性ガス源126、及び/又は2次反応物源128から出てくるガスと混合できる。チュービング130は、チューブ内の前駆体の凝縮を防止するために加熱できる。ガス/蒸気が反応チャンバ104に入る前によく混合されるように、ガス/蒸気は、反応チャンバ104から十分に離れて組み合わされる。チュービング130内で組み合わされたガス/蒸気は、ダクト132を介してチャネル134内へ伝達され、チャネルは、反応物入口256(図1)と流体連通している。
【0058】
第2前駆体/反応物は、第2前駆体源138から供給でき、この源は、液体反応物搬送装置、固体反応物搬送装置、ガスシリンダ、フラッシュ蒸発器又は他の適切な容器であり得る。図2に示すように、第2前駆体源138は、チューブ130を介して第2反応物をダクト132へ搬送する。そして、質量流量コントローラ146は、図2の反応物搬送システム内のガスの流れを調整するために使用できる。代替的な実施形態において、反応物が反応チャンバ内に到達するまで混合されないように、第2前駆体は、第2チャネルを介して反応物チャンバ内へ搬送されるように、第2ダクトを介して搬送できる。複数の反応物搬送ノズルを有するレーザー熱分解装置が、本明細書に参照により組み込まれる、Reitzらの米国特許出願第09/970,279号(発明の名称「流れ反応器のための多重反応物ノズル(Multiple Reactant Nozzles For A Flowing Reactor)」)に記載されている。1以上の付加の前駆体、例えば、第3前駆体、第4前駆体などは、2つの前駆体に関する説明の一般化に基づいて同様に搬送できる。
【0059】
上述したように、反応物ストリームは、1以上のエアロゾルを含むことができる。エアロゾルは、反応チャンバ104内で又は反応チャンバ104に注入される前に反応チャンバ104の外部で形成できる。エアロゾルが反応チャンバ104に注入される前に生成されると、エアロゾルは、図1の反応物入口256のようなガス反応物のために使用されるものに対応する反応物入口を介して導入できる。
【0060】
図3Aに示すように、エアロゾルを反応チャンバ104に供給するために、反応物供給システム102の実施形態210が使用できる。反応物供給システム210は、外部ノズル212及び内部ノズル214を含む。外部ノズル212は、図3Aのインサートに示すように、外部ノズル212の頂上で矩形出口218につながる上部チャネル216を有する。矩形出口218は、反応チャンバ内で所望の膨脹の反応物ストリームを生成するように選択された寸法を有する。外部ノズル212は、底板222にドレインチューブ220を含む。ドレインチューブ220は、外部ノズル212から凝縮されたエアロゾルを除去するために使われる。内部ノズル214は、フィッティング224で外部ノズル212に固定される。
【0061】
内部ノズル214の頂上は、ツインオリフィス内部混合噴霧器226を含む。チューブ228を介して液体が噴霧器に供給され、反応チャンバ内への導入のためのガスがチューブ230を介して噴霧器に供給される。ガスと液体の相互作用が液滴形成を補助する。
【0062】
反応チャンバ内に又は反応チャンバにつながる1以上の入口にエアロゾルを生成するために、複数のエアロゾル生成器が使用できる。エアロゾル生成器は、互いに同じ又は異なるエアロゾル組成を生成するために使用できる。エアロゾル生成器が異なる組成のエアロゾルを生成する実施形態の場合、エアロゾルは、同じ溶媒/分散剤に容易に又は便利に溶解/分散されない反応物/前駆体を導入するために使用できる。したがって、反応チャンバ内でエアロゾルを直接形成するために、複数のエアロゾル生成器が使われると、エアロゾル生成器は、反応領域に沿って反応物を混合するように、又は個別ストリーム(重複ストリームの可能性もある)を搬送するように配向できる。単一入口ノズル内に2以上のエアロゾルが生成されると、エアロゾルは、共通ガス流れに混合され、流動できる。2つのエアロゾル生成器を有する入口ノズルを図3Bに示す。入口ノズル240は、エアロゾル生成器242,244を含み、このエアロゾル生成器は、出口246に向かうエアロゾルを生成する。
【0063】
又は、エアロゾル生成器は、個別入口内でエアロゾルを生成し、そのエアロゾルは、反応チャンバ内で組み合わせることができる。単一入口ノズル又は複数の入口ノズル内で複数のエアロゾル生成器の使用は、単一溶液/分散物内に所望の組成物を導入し難い実施形態で有用であり得る。異なる入口内でエアロゾルを生成する多重エアロゾル生成器が、本明細書に参照により組み込まれる、Mossoらの米国特許出願整理番号第11/122,284号(発明の名称「粒子生成装置(Particle Production Apparatus)」)に記載されている。
【0064】
これらのような任意のエアロゾルの実施形態にも、1以上の蒸気/ガス反応物/前駆体がまた導入できる。例えば、蒸気/ガス前駆体は、エアロゾルの形成を補助するために、エアロゾル生成器自体に導入できる。代替的な実施形態において、蒸気は、個別入口を介して搬送チャネルに搬送でき、蒸気とエアロゾルが混合されて、同じ反応物入口を介して反応チャンバ内へ搬送されるようにエアロゾルが生成される。他の実施形態において、蒸気前駆体は、個別反応物入口を介して反応チャンバに搬送され、エアロゾルを含む流れと組み合わされる。そして、これらのような方法は、単一蒸気前駆体、異なる搬送チャネルを介する異なる蒸気前駆体又はこれらの組み合わせの搬送のために組み合わせることができる。
【0065】
反応チャンバ内へ共に搬送されるためのエアロゾルと共にチャネル内へ蒸気前駆体を搬送するように構成されている入口ノズルの実施形態を図4に示す。図4に示すように、エアロゾル反応器360は、エアロゾルをチャネル362内へ搬送する。チャネル362は、一般に反応チャンバ内につながる反応物入口364につながる。反応物入口364は、必要に応じて、反応チャンバ内で放射経路から適切に離れて応物物ストリーム/流れを搬送するように位置決めできる。蒸気チャネル366は、反応物入口364を介する搬送のために、蒸気前駆体がエアロゾル生成器360から出てきたエアロゾルと混合できるようにチャネル362につながる。バブラー又は固体蒸気源のような他の蒸気源が使用できるが、蒸気チャネル366がフラッシュ蒸発器368に連結される。フラッシュ蒸発器は、蒸気チャネル366に選択された蒸気圧を伝達する温度まで液体前駆体を加熱する。蒸気チャネル366及び/又はチャネル362は、蒸気反応物の凝縮を減らし又は除去するために加熱できる。フラッシュ蒸発器368は、液体源370に連結される。
【0066】
図1に示すように、反応チャンバ104は、主チャンバ250を含む。反応物供給システム102は、注入ノズル252で主チャンバ250に連結される。反応チャンバ104は、装置の圧力で反応物と不活性成分との混合物の露点より高い表面温度まで加熱できる。
【0067】
注入ノズル252は、不活性遮蔽ガスの通過のための環状開口254、及び反応チャンバで反応物ストリームを形成するために、反応物の通過のための反応物入口256(左下側インサート)を有する。反応物入口256は、図1の下側インサートに示すようにスリットであり得る。環状開口254を介する遮蔽ガスの流れは、反応物ガス及び生成物粒子が反応チャンバ104全体に広がるのを防止することを補助する。いくつかの実施形態において、遮蔽ガス入口は、反応物入口スリットに沿って整列されたスリット形状を有する。
【0068】
管状部260,262は、注入ノズル252の各側に位置される。管状部260,262は、例えば、ZnSeウィンドウ/レンズ264,266をそれぞれ含むことができる。ウィンドウ264,266の直径は、例えば、約1インチであり得る。ウィンドウ264,266は、ノズル開口の中心の真下地点に光ビームの焦点を合せるために、焦点距離がチャンバ中心からレンズ表面までの距離と同じで円筒形レンズを含むことができる。ウィンドウ264,266は、反射防止コーティングを更に含むことができる。適切なZnSeレンズがカリフォルニア州のサンディエゴ所在のLaser Power Optics社から入手できる。管状部260,262は、主チャンバ250から離れたウィンドウ264,266の配置を提供するので、ウィンドウ264,266は、反応物及び/又は生成物によってそれほど汚染され難い。ウィンドウ264,266は、例えば、主チャンバ250のエッジから約3cm離れて配置される。レンズ代わりに、反射性光学部品が使用できる。
【0069】
周囲空気が反応チャンバ104内へ流動するのを防止するために、ウィンドウ264,266は、ゴムOリングで管状部260,262にシールできる。管状入口268,270は、ウィンドウ264,266の汚染を減らすために、遮蔽ガスが管状部260,262内へ流動するのを提供する。管状入口268,270は、遮蔽ガス搬送装置106に連結される。
【0070】
図1に示すように、遮蔽ガス搬送システム106が不活性ガスダクト282に連結された不活性ガス源280を含むことができる。不活性ガスダクト282は、環状開口254につながる環状チャネル284内で流動する。質量流量コントローラ286は、不活性ガスダクト282内への不活性ガスの流れを調整することができる。図2の反応物搬送システム112が使われる場合、必要に応じて、不活性ガス源126がダクト282用の不活性ガス源として機能することができる。図1に示すように、不活性ガス源280又は個別不活性ガス源がチューブ268,270に不活性ガスを供給するために使用できる。チューブ268,270への流れは、質量流量コントローラ288によって制御できる。
【0071】
ウィンドウ264へ入って、ウィンドウ266から出る電磁放射、例えば、光ビーム300を生成するように放射源110が整列される。ウィンドウ/レンズ264,266は、反応領域302で反応物の流れと交差する主チャンバ250を介する光経路を規定する。ウィンドウ266から出てきた後、電磁放射ビーム300は、電力計304に衝突し、電力計は、ビームダンプとしても作用する。適切な電力計は、カリフォルニア州のオーバーン所在のCoherent Inc.から入手できる。放射源110は、レーザー又はアーク灯のような強い従来光源であり得る。一実施形態において、放射源110は、赤外線レーザー、特に、ニュージャージー州のランディング所在のPRC Corp.から入手できる1800ワット最大動力出力レーザーのようなCW CO2レーザーである。
【0072】
注入ノズル252にある反応物入口256を通過する反応物が反応物ストリームとなる。反応物ストリームは、反応領域302を通過し、この反応領域で金属/メタロイド前駆体組成物及びドーパント/添加剤前駆体組成物と関連した反応が行われる。反応領域302でガスの加熱は非常に速く、特定条件によっては約105℃/sec程度である。反応は、反応領域302から離れると、速やかに消滅し、反応物/生成物ストリーム内で粒子306が形成される。過程の非平衡性によって、非常に均一なサイズ分布と構造均質性を有するサブミクロン/ナノ粒子を製造することができる。
【0073】
反応物ストリームの経路は、収集ノズル310へ続く。収集ノズル310は、図1の上側インサートに示すように、円形開口312を有することができる。円形開口312は、収集システム108内につながる。
【0074】
チャンバ圧力は、主チャンバに取り付けられた圧力ゲージ320でモニタされる。所望の酸化物の生成のための適切なチャンバ圧力は、一般に約80Torr〜約750Torrである。
【0075】
収集システム108は、収集ノズル310からつながる曲線形チャネル330を含むことができる。粒子のサイズが小さいため、生成物粒子は、曲線の周囲でガスの流れに従う。収集システム108は、生成物粒子を収集するために、ガス流れ内にフィルタ332を含むことができる。曲線部330によって、フィルタは、チャンバ上で直接支持されない。Teflon(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、ステンレス鋼、ガラスファイバなどのような多様な物質が、実質的に不活性であり、また粒子を捕獲するのに十分に微細なメッシュを有する物質であれば、フィルタのために使用できる。フィルタとして適切な物質は、例えば、ニュージャージー州のバインランド所在のACE Glass社製のガラスファイバフィルタ、カリフォルニア州のサニーベール所在のAF Equipment Co.社製の円筒形Nomex(登録商標)フィルタ、及びデラウェア州のシーフォード所在のAll Con World Systems社製のステンレス鋼フィルタを含む。フィルタは、静電収集器に代替できる。
【0076】
収集システム108を選択された圧力で保持するために、ポンプ334を使用することができる。大気に排気する前に、残存する反応性化学物質を除去するために、ポンプの排出ガスをスクラバ336を介して流動させるのが望ましい。
【0077】
ポンピング速度は、ポンプ334とフィルタ332との間に挿入された手動ニードルバルブ又は自動スロットルバルブ338の何れかによって制御できる。フィルタ332に粒子が蓄積されることでチャンバ圧力が増加するため、手動バルブ又はスロットルバルブがポンピング速度及び対応チャンバ圧力を保持するように調整できる。
【0078】
装置は、コンピュータ350又は対応制御システムによって制御できる。一般に、コンピュータは、放射(例えば、光)源を制御し、反応チャンバ内の圧力をモニタする。反応物及び/又は遮蔽ガスの流れを制御するために、コンピュータが使用できる。
【0079】
反応は、フィルタ332に十分な粒子が収集されるまで続くことができ、ポンプ334は、フィルタ332を介する抵抗に対して、反応チャンバ104の所望の圧力をそれ以上保持できない。反応チャンバ104内の圧力が所望の値でそれ以上保持できないときに、反応は停止でき、フィルタ332が除去できる。このような実施形態において、チャンバ圧力がそれ以上保持できなくなる前に、単一作動で約1〜300gの粒子が収集できる。単一作動は、一般に反応物搬送システム、生成される粒子の種類及び使われるフィルタの種類によって約10時間まで持続できる。以下で、高い生産速度を有するシステムだけでなく、連続粉末生成及び収集システムについて記述する。
【0080】
レーザー熱分解装置の代替的な実施形態を図5に示す。レーザー熱分解装置400は、反応チャンバ402を含む。反応チャンバ402は、直方体の形状を含む。反応チャンバ402の最も長い寸法がレーザービームに沿って延長される。作業の間に反応領域を観察できるように、反応チャンバ402の側面には、観察用ウィンドウ404を有することができる。
【0081】
反応チャンバ402は、反応チャンバを介して光学経路を規定する管状延長部408,410を更に含む。管状延長部408は、円筒形レンズ412にシールで連結できる。チューブ414は、レーザー416又は他の光学放射源をレンズ412で連結する。これと同様、管状延長部410は、チューブ418にシールで連結でき、このチューブは、更に、ビームダンプ/光度計420につながる。したがって、光学放射源416からビームダンプ420までの全体の光経路が取り囲まれ得る。
【0082】
この実施形態において、入口ノズル426が下側表面428で反応チャンバ402と連結される。入口ノズル426は、入口ノズル426を固定するために、下側表面428にボルト締結されるプレート430を含む。図6及び図7の断面図に示すように、入口ノズル426は、内部ノズル432及び外部ノズル434を含む。内部ノズル432は、ノズルの頂上でツインオリフィス内部混合噴霧器436を有することができる。適切なガス噴霧器は、イリノイ州のホイートン所在のSpraying Systemsから入手できる。ツインオリフィス内部混合噴霧器436は、エアロゾルとガス前駆体の薄いシートを生成するために、扇形を有する。液体がチューブ438を介して噴霧器に供給され、反応チャンバに導入されるためのガスがチューブ440を介して噴霧器に供給される。ガスと液体の相互作用は、液滴形成を補助する。
【0083】
外部ノズル434は、チャンバ部450、ファンネル部452、及び搬送部454を含む。チャンバ部450は、内部ノズル432の噴霧器を保持する。ファンネル部452は、エアロゾルとガス前駆体を搬送部454内へ送る。搬送部454は、図6のインサートに示す約3インチ×0.5インチの矩形出口456につながる。外部ノズル434は、出口ノズルで収集された任意の液体を除去するためにドレイン458を含む。外部ノズル434は、出口456を取り囲む遮蔽ガス開口462を形成する外部壁460で覆われている。不活性ガスは、入口464を介して導入される。図6及び図7のノズルは、図3及び図4と関連して上記で検討したように、エアロゾルと蒸気前駆体を搬送するように適合化できる。
【0084】
図5に示すように、出口ノズル470は、反応チャンバ402の上面で装置400に連結される。出口ノズル470は、フィルタチャンバ472につながる。フィルタチャンバ472は、ポンプにつながるパイプ474と連結される。円筒形フィルタがパイプ474への開口に設置される。適切な円筒形フィルタは、上述の通りである。
【0085】
レーザー熱分解装置の他の代替的な設計が、本明細書に参照により組み込まれる、Biらの米国特許第5,958,348号(発明の名称「化学反応による粒子の効率的な生成(Efficient Production of Particles by Chemical Reaction)」)に記載されている。この代替的な設計は、レーザー熱分解によって粒子を商業的な量に生産することを容易にするためのものである。商業的規模のレーザー熱分解装置に対する付加の実施形態及び他の適切な特徴が、本明細書に参照により組み込まれる、Mossoらの米国特許出願整理番号第11/122,284号(発明の名称「粒子生成装置(Particle Production Apparatus)」)に記載されている。
【0086】
商業的規模のレーザー熱分解装置の一実施形態において、反応チャンバ及び反応物入口は、反応物及び生成物のスループットを増加させるために、光ビームに沿って非常に細長い。エアロゾル反応物の搬送のための前記実施形態を細長い反応チャンバ設計のために適合化することができる。1以上のエアロゾル生成器で細長い反応チャンバ内にエアロゾルを導入するための付加の実施形態が、本明細書に参照により組み込まれる、Gardnerらの米国特許第6,193,936号(発明の名称「反応物搬送装置(Reactant Delivery Apparatuses)」)に記載されている。図3及び図4について上記検討した方法を一般化することで、蒸気及びエアロゾル前駆体の組み合わせがこの反応チャンバ内へ搬送できる。
【0087】
一般に、細長い反応チャンバと反応物入口を有するレーザー熱分解装置は、チャンバ壁の汚染を減少させ、生産能力を増加させ、及び/又はリソースを効率的に用いるように設計される。これらの目的を達成するために、細長い反応チャンバは、チャンバの死容積の対応増加なしに、反応物と生成物の増加したスループットを提供する。チャンバの死容積は、非反応組成物及び/又は反応生成物で汚染され得る。更に、遮蔽ガスの適切な流れは、反応物及び生成物を反応チャンバを介する流れストリーム内に制限する。反応物の高いスループットは、レーザーエネルギを効率的に使用する。
【0088】
向上した反応チャンバ472の設計を概略的に図8に示す。反応物入口474が主チャンバ476につながる。反応物入口474は、一般に主チャンバ476の形状に順応する。主チャンバ476は、粒子生成物、任意の非反応ガスと不活性ガスを除去するために、反応物/生成物ストリームに沿った出口478を含む。構成は、必要に応じて、上部から供給される反応物及び下部から収集される生成物というように逆にできる。遮蔽ガス入口480が反応物入口474の両側に位置される。チャンバ壁と反応物又は生成物との間の接触を禁止するために、遮蔽ガス入口は、反応物ストリームの側面に不活性ガスのブランケットを形成するように使われる。細長い主チャンバ476及び反応物入口474の寸法は、高効率の粒子生成のために設計できる。
【0089】
1800ワットCO2レーザーを使用する場合、セラミックサブミクロン/ナノスケール粒子の製造のための反応物入口474の適当な長さは、約5mm〜約1mである。より具体的に、反応物入口に対して、入口は、一般に少なくとも約0.5インチ(1.28cm)、他の実施形態で少なくとも約1.5インチ(3.85cm)、他の実施形態で少なくとも約2インチ(5.13cm)、他の実施形態で少なくとも約3インチ(7.69cm)、他の実施形態で少なくとも約5インチ(12.82cm)、及び追加の実施形態で約8インチ(20.51cm)から約200インチ(5.13m)の長い寸法を有する。当業者は、これらのような特定範囲に属する入口長さの付加の範囲を考えることができ、その範囲が本開示の範囲内であることを認識するはずである。
【0090】
そして、入口は、長さを幅で割った比であるアスペクト比を特徴とすることができる。もし、入口が矩形でなければ、最も長い寸法を長さとして、及びその長さに沿う線分に垂直する最も広い寸法を幅として使用してアスペクト比を評価することができる。いくつかの実施形態において、アスペクト比は、少なくとも約5、他の実施形態で少なくとも約10、そして他の実施形態で約50〜約400である。当業者は、アスペクト比のこれらのような明示的な範囲に属するアスペクト比の付加の範囲を考えることができ、その範囲が本開示の範囲内であることを認識するはずである。レーザー熱分解による粒子生成のためのノズルパラメータが、本明細書に参照により組み込まれる、Gardnerらの米国特許第6,919,054号(発明の名称「流れ反応器内の反応物ノズル(Reactant Nozzles Within Flowing Reactors)」)に開示されている。
【0091】
高い生産速度で高い収率を得るために、放射ビームは、大部分又は全体反応物流れと交差するように配向できる。矩形反応物入口の場合、反応物流れの最も広い幅を放射ビームの最も狭い幅より少なくすることができる。ビームの焦点が円筒形レンズで合わされると、ビームが流れの幅より狭くないように、流れに直交するビームの焦点を合せるようにレンズが配向できる。したがって、リソースを効率的に使用しつつ、高い生産速度を達成することができる。一般に、放射ビームと反応物流れは、事実上、反応物流れが放射ビームの経路から除外されないように構成できる。いくつかの実施形態において、放射ビームは、少なくとも約80体積%の反応物流れと交差し、他の実施形態で少なくとも約90体積%の反応物流れと交差し、他の実施形態で少なくとも約95体積%、及び付加の実施形態で少なくとも約99体積%の反応物流れと交差し、これは事実上、反応物流れが放射ビームの経路から全く除外されないものとみなされる。
【0092】
管状部482,484は、主チャンバ476から延長できる。また、管状部482,484は、反応チャンバ472を介する光ビーム経路490を規定するために、ウィンドウ/レンズ486,488を保持することができる。管状部482,484は、不活性ガスを管状部482,484内へ導入するために、不活性ガス入口492,494を含むことができる。
【0093】
反応システムは、反応物ストリームからサブミクロン/ナノスケール粒子を除去するために収集装置を含む。収集システムは、生産終了前に多量の粒子が収集されるバッチモードで粒子を収集するように設計できる。バッチモードで粒子を収集するために、フィルタなどを使用することができる。又は、収集システムは、収集装置内の異なる粒子収集器の中で転換されることで、又は収集システムを周囲空気に露出させずに粒子を除去することで、連続生産モードで作動されるように設計できる。連続粒子生産及び収集のための収集装置の適切な実施形態が、本明細書に参照により組み込まれる、Gardnerらの米国特許第6,270,732号(発明の名称「粒子収集装置及びそれに関する方法(Particle Collection Apparatus And Associated Methods)」)に記載されている。
【0094】
図9から図11に示すように、レーザー熱分解反応システム500の特定の実施形態は、反応チャンバ502、粒子収集システム504、レーザー506、及び反応物搬送システム508を含む。反応チャンバ502は、反応チャンバ502の底部に反応物入口514を含み、そこで反応物搬送システム508は、反応チャンバ502と連結される。この実施形態において、反応物は、反応チャンバの底部から搬送され、生成物は、反応チャンバの上部から収集される。
【0095】
遮蔽ガス導管516が反応物入口514の前方と後方に位置される。不活性ガスは、ポート518を介して遮蔽ガス導管516に搬送される。壁で反応物ガス又は生成物の結合を抑制するために、遮蔽ガス導管は、遮蔽ガスを反応チャンバ502の壁に沿って向かわせる。
【0096】
反応チャンバ502は、図9で「w」で表示される1次元に沿って細長い。例えば、光又はレーザーのような放射ビーム経路520は、主チャンバ526から、チューブ524に沿って配置されたウィンドウ522を介して反応チャンバへ入り、反応チャンバ502の長手方向を横切る。放射ビームは、チューブ528を通過してウィンドウ530から出る。一特定実施形態において、チューブ524,528が主チャンバから約11インチ離れてウィンドウ522,530を位置させる。放射ビームは、ビームダンプ532で終了する。作動時、放射ビームは、反応物入口514を介して生成される反応物ストリームと交差する。
【0097】
主チャンバ526の上部は、粒子収集システム504内へ開放される。粒子収集システム504は、主チャンバ526から流れを収容するために、主チャンバ526の上部に連結された出口ダクト534を含む。出口ダクト534は、生成物粒子を反応物ストリームの面から出して、円筒形フィルタ536へ搬送する。フィルタ536は、一端部にキャップ538を有する。フィルタ536の他端部は、ディスク540に固定される。フィルタ536の中心に接近させるために、ベント542がディスク540の中心に固定される。ベント542は、ダクトを介してポンプに取り付ける。したがって、生成物粒子は、反応チャンバ502からポンプへの流れによってフィルタ536に捕獲される。適切なポンプは、上述の通りである。適切なフィルタは、例えば、Saab 9000自動車用空気浄化器フィルタ(Pur−o−lator社製部品A44−67)を含み、これは、プラスチゾル又はポリウレタン端部キャップと共にワックス含浸紙を含む。
【0098】
特定の実施形態において、反応物搬送システム508は、図12に示すように、反応物ノズル550を含む。反応物ノズル550は、取り付けプレート552を含むことができる。反応物ノズル550は、主チャンバ526の底部にボルト締結する取り付けプレート552で反応物入口514に取り付ける。一実施形態において、ノズル550は、4つのスリット554,556,558,560で終了する4つのチャネルを有する。スリット558,560は、前駆体及び反応物ストリームの他の所望の成分の搬送のために使用できる。スリット554,556は、不活性遮蔽ガスの搬送のために使用できる。2次反応物は、バナジウム前駆体と自発的に反応性であれば、2次反応物もまたスリット554,556を介して搬送できる。酸化物粒子を生産するために使われた一装置は、スリット554,556,558,560に、3インチ×0.04インチの寸法を有した。
熱処理
サブミクロン/ナノスケール粒子の重要な特性は、熱処理によって修正できる。熱処理のための適切な出発物質は、レーザー熱分解によって生成された粒子を含む。そして、熱処理過程のための出発物質として使われる粒子は、異なる条件下で1以上の前加熱段階を経ることができる。レーザー熱分解又は他の方法によって形成された粒子の熱処理の場合、付加の熱処理は、例えば、付加の酸素又は他の元素の取り込み、又は、酸素又は他の元素の除去によって、金属/メタロイド元素の酸化状態を変えることで、結晶化度を向上/変更させ、元素炭素のような汚染物質を除去し、及び/又は化学量を変えることができる。また、熱処理過程は、例えば、他の金属/メタロイド元素を粒子に導入する(これは、酸素のような他の元素の変化を伴うことができる)ことで、粒子の組成を変えるために使用できる。
【0099】
関心の対象となるいくつかの実施形態において、レーザー熱分解によって形成される金属/メタロイド酸化物のような混合された金属/メタロイド組成物が熱処理段階を経ることができる。所望の形態に形成されなかったら、このような熱処理は、粒子を所望の高品質の結晶性形態に転換させることができる。熱処理は、レーザー熱分解から粒子のサブミクロン/ナノスケールのサイズ及びサイズ均一性を実質的に保持するように制御できる。すなわち、粒子サイズは、熱処理によってそれほど損傷されない。
【0100】
一般に均一な加熱を提供するために、粒子は、オーブンなどで加熱できる。処理条件は、一般に温和なので、多くの量の粒子が焼結されない。したがって、加熱温度は、出発物質及び生成物物質の溶融点に比べて低くすることができる。
【0101】
粒子周囲の雰囲気は、静的であり得、又はガスがシステムによって流動することができる。加熱過程の雰囲気は、酸化性雰囲気、還元性雰囲気又は不活性雰囲気であり得る。特に、非晶質粒子の結晶性粒子への転換又は本質的に同じ化学量の、ある結晶構造から他の結晶構造への転換の場合、雰囲気は、一般に不活性であり得る。
【0102】
適切な酸化性ガスは、例えば、O2、O3、及びこれらの組み合わせを含む。O2は、空気として供給できる。還元性ガスは、例えば、H2及びNH3を含む。酸化性ガス又は還元性ガスは、任意にAr、He、及びN2のような不活性ガスと混合できる。不活性ガスが酸化性/還元性ガスと混合される場合、ガス混合物は、約1%酸化性/還元性ガス〜約99%酸化性/還元性ガスを含むことができ、他の実施形態で約5%酸化性/還元性ガス〜約99%酸化性/還元性ガスを含むことができる。又は、必要に応じて、本質的に純粋な酸化性ガス、本質的に純粋な還元性ガス又は本質的に純粋な不活性ガスが使用できる。高濃縮の還元性ガスを使用する場合、爆発防止について注意を払わなければならない。
【0103】
ガス流れの酸化性/還元性本質は、粒子内の金属/メタロイド元素の所望の酸化状態を得るように調整できる。これと同様、ドープされる無機粒子に対して、熱処理及び関連したガスがドーパントの所望の酸化状態を説明することができる。例えば、ユーロピウムが+2状態でリン光体活性剤として作用するが、一般に+3状態で供給されるので、ユーロピウムでドープされたBaMgAl1423の熱処理のために、還元性雰囲気が使用できる。レーザー熱分解を用いたユーロピウムでドープされたBaMgAl1423及びユーロピウムでドープされたYO3のレーザー熱分解合成が、本明細書に参照により組み込まれる、Kumarの米国特許第6,692,660号(発明の名称「高発光のリン光体粒子及びそれに関する粒子組成物(High Luminescence Phosphor Particles And Related Particle Composition)」)で検討された。
【0104】
生成される金属/メタロイド酸化物粒子の種類を変化させるために、正確な条件が変更できる。例えば、温度、加熱時間、加熱及び冷却速度、周囲ガス、及びガスに対する露出条件が所望の生成物粒子を生成するように、全て選択できる。一般に、長い加熱時間で酸化性雰囲気で加熱する間、平衡に達する前に、より多くの酸素が物質に取り込まれる。一旦オーブン内で平衡条件に達すれば、全体条件が粉末の結晶相を決定する。
【0105】
加熱を行うために、多様なオーブンなどを使用することができる。このような処理を行うための装置600の一例を図13に示す。装置600は、内部に粒子が位置できるジャー(jar)602を含み、このジャーは、ガラス又は他の不活性物質で製造できる。適切なガラス反応器ジャーは、ニュージャージー州のバインランド所在のACE Glassから入手できる。より高い温度の場合、ガラスジャーに代わって、合金ジャーを使用することができる。ガラスジャー602の上部は、ジャー602とキャップ604との間のTeflon(登録商標)ガスケット606でガラスキャップ604にシールできる。キャップ604は、1以上のクランプでその位置に保持できる。キャップ604は、一般に複数のポート608を有し、それぞれのポートは、Teflon(登録商標)ブッシングを有する。加熱過程の間、粉末を混合するために、多翼ステンレス鋼攪拌機610がキャップ604の中心ポート608を介して挿入できる。攪拌機610は、適切なモータに連結される。
【0106】
ジャー602の内部へガスを搬送するために、1以上のチューブ612がポート608を介して挿入できる。チューブ612は、ステンレス鋼又は他の不活性物質で製造できる。ジャー602内にガスを分配するために、ディフューザ614がチューブ612のチップに含まれ得る。一般にジャー602の周囲にヒーター/炉616が位置される。適切な抵抗ヒーターは、インディアナ州のテレホート所在のGlascolから入手できる。1つのポートがT連結部618を含むのが望ましい。ジャー602内部の温度は、T連結部618を介して挿入された熱電対618で測定できる。また、T連結部618は、ベント620に連結できる。ベント620は、ジャー602を介して循環するガスの排気を提供する。ベント620は、ヒュームフード(fume hood)又は他の喚起装置で排気できる。ジャー内の温度をモニタするために、熱電対又は温度計622が使用できる。
【0107】
適切な実施形態において、所望のガスがジャー602を介して流動する。チューブ612は、一般に酸化性ガス源、還元性ガス源及び/又は不活性ガス源に連結される。所望の雰囲気を生成するための酸化性ガス、還元性ガス、不活性ガス又はこれらの組み合わせが適切なガス源からジャー602内に位置される。多様な流量が使用できる。いくつかの実施形態において、流量は、約1立方センチメートル毎分〜約1000sccmであり得、他の実施形態において、約10sccm〜約500sccmであり得る。必要に応じて、ガスの流量及び組成は、処理する間に、時間経過に対して体系的に変化し得るが、流量は、一般に処理段階の間に一定となる。又は、静的ガス雰囲気が使用できる。
【0108】
適当な量のサブミクロン粒子の熱処理のための代替的な装置630を図14に示す。粒子は、チューブ634内にあるボート632などの内部に位置される。チューブ634は、例えば、石英、アルミナ又はジルコニアで製造できる。いくつかの実施形態において、所望のガスがチューブ634を介して流動する。ガスは、例えば、不活性ガス源636又は酸化性ガス源638から供給できる。
【0109】
チューブ634は、オーブン又は炉640内に位置される。オーブン640は、ノースカロライナ州のアシュビル所在のLindberg/Blue M社製のMini−Mite(商標)1100℃ Tube Furnaceのような商用の炉から適合化できる。必要に応じて、処理段階の間、温度を体系的に変化させることができるが、オーブン640は、チューブの関連部分を比較的一定温度に保持する。熱電対642で温度をモニタすることができる。
【0110】
望ましい温度範囲は、出発物質及び目的生成物の無機粒子に依存する。サブミクロンリン光体の処理の場合、適切な温度は、一般に約400℃〜約1400℃であり得る。特定の温度は、処理される特定物質に依存するはずである。加熱は、一般に約5分超過続き、典型的に約10分〜約120時間、大部分の場合、約10分〜約5時間続く。また、適切な加熱時間は、特定の出発物質及び目的物質に依存するはずである。いくつかの実験的調整は、所望の物質を得るのに適切な条件の形成を補助する。一般に、サブミクロン及びナノスケール粉末は、依然として所望の結果を達成しつつ、より低い温度で処理できる。温和な条件を使用すれば、より大きい粒子サイズを発生させる重要な中間粒子の焼結を回避することができる。粒子成長を防止するために、短時間で高温又は長時間でより低温で粒子を加熱することができる。わずかに大きい平均粒径を生成するために、粒子の一部制御された焼結がわずかに高い温度で行われる。
【0111】
サブミクロンリン光体粒子の熱処理の場合、多段階の熱処理過程を使用するのが望ましい。特に、少なくとも2段階又は3段階処理が望ましい。第1熱処理段階は、任意の好ましくないドーパントの酸化を減らしたり又は除去しつつ、粒子から炭素のような不純物を除去するために、空気のような比較的酸化性の条件下で、比較的短時間で、比較的低い温度で行われる。第2加熱段階は、物質の相状態度によって決定される温度で粒子を所望の結晶相に転換させるために、不活性ガス又はH2のような不活性又は還元性条件下で、より高い温度で行われる。より低い温度でより長時間の第3加熱段階が、粒子の結晶化度をより向上させ、結晶構造を緩和させ、また結晶格子内の欠陥を減らすために、不活性又は還元性雰囲気下で使用できる。第1加熱段階は、約5分〜約5時間、一部の実施形態で約5分〜約2時間、そして他の実施形態で約5分〜約1時間、約250℃〜約600℃で行われる。一般に、この第1加熱段階は、広い範囲の無機材料に対して適合し、YAG:Ceに対して適するものであることが明らかになった。
【0112】
第2加熱段階は、比較的より低い温度で一般に使われる長いアニール時間で、15分〜約48時間、第2温度で行われる。第2温度は、一般に第1温度より高く、一般に所望の結晶相の変態開始温度より少なくともより高く、粒子の溶融点より100℃未満である。YAG:Ceの場合、適切な第2温度は、約950℃〜約1250℃である。第3加熱段階は、第2温度より低く、第1温度より高い第3温度で約30分〜約24時間又はそれ以上の時間で行われ、第3温度は、重要な焼結を引き起こさず、x線回折で決定される結晶化度を改善するように選択される。YAG:Ceの場合、適切な第3温度は、約450℃〜約700℃である。これらのように異なる加熱段階を使用すれば、相対的に安定的で正しいドーパント酸化状態、少ない焼結、高い結晶化度、狭い粒子サイズ分布、より純粋な構造及びより少ない欠陥が得られる。もちろん、付加の加熱段階を使用することができ、同様に前記加熱段階が細分化できる。また、加熱及び冷却速度は、この見解に基づいて合理的に選択できる。
【0113】
上述したように、サブミクロン/ナノスケール粒子の多様な望ましい変態を行うために、熱処理を使用することができる。例えば、結晶性VO2を斜方晶系V25及び2−D結晶性V25に、そして非晶質V25を斜方晶系V25及び2−D結晶性V25に転換させるための条件が、本明細書に参照により組み込まれる、Biらの米国特許第5,989,514号(発明の名称「バナジウム酸化物粒子の熱処理(Processing of Vanadium Oxide Particles With Heat)」)に記載されている。金属酸化物サブミクロン/ナノスケール粒子から炭素コーティングを除去するための条件が、本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第6,387,531号(発明の名称「金属(ケイ素)酸化物/炭素複合材粒子(Metal(Silicon) Oxide/Carbon Composite Particles)」)に記載されている。熱処理過程でリチウム塩から金属酸化物サブミクロン/ナノスケール粒子へのリチウムの取り込みが、本明細書に参照により組み込まれる、Horneらの米国特許第6,136,287号(発明の名称「リチウムマンガン酸化物及び電池(Lithium Manganese Oxides And Batteries)」)及びKumarらの米国特許出願整理番号09/334,203(発明の名称「3元粒子を製造するための反応方法(Reaction Methods for Producing Ternary Particles)」)に記載されている。熱処理によるバナジウム酸化物粒子への銀金属の取り込みが、本明細書に参照により組み込まれる、Horneらの米国特許第6,225,007号(発明の名称「金属バナジウム酸化物(Metal Vanadium Oxide)」)に記載されている。バナジウム酸化物への金属取り込みの場合、温度は、一般に約200℃〜約500℃であり、他の実施形態で約250℃〜約375℃である。
粒子特性
関心の対象である無機粒子の収集物は、一般に1次粒子の場合、約1000nm未満、大部分の実施形態で約500nm未満、他の実施形態で約2nm〜約100nm、他の実施形態で約3nm〜約75nm、及びまた他の実施形態で約5nm〜約50nmの平均直径を有する。選択された組成を有する一部の実施形態において、平均粒子サイズは、約15nm〜約100nm、又は約15nm〜約50nmである。当業者は、これらの特定範囲に属する平均直径を考えることができ、その平均直径は、本開示の範囲内であることを認識するはずである。粒径は、一般に透過型電子顕微鏡によって評価される。非対称粒子の直径測定は、粒子の主軸に沿う長さ測定値の平均に基づく。分散後の2次粒子サイズについては次の章で説明する。
【0114】
多くの無機組成物の場合、1次粒子は、おおよそ球状の全体外観を有することができる。また、結晶性1次粒子は、レーザー熱分解で3つの物理的寸法でおおよそ同じく成長し、全体球状外観を有する傾向がある。一部の組成物の場合、熱処理の後、無機粒子は、それほど球状ではないことがある。更に詳しく調べれば、結晶性粒子は、一般に基礎となる結晶格子に対応するファセットを有する。非晶質粒子は、一般により一層球状の外観を有する。一部の実施形態において、1次粒子の95%、及び他の実施形態において、99%において、短軸に沿う寸法に対する長軸に沿う寸法の比が2より小さい。
【0115】
粒子のサイズが小さいため、1次粒子は、付近粒子との間の力によって緩い凝集物を形成する傾向がある。これらの凝集物は、必要に応じて、著しい程度まで分散できる。粒子が緩い凝集物を形成しても、ナノメートルスケールの1次粒子は、粒子の透過型電子顕微鏡で明確に観察可能である。粒子は、一般に顕微鏡で観察するとき、ナノメートルスケールで粒子に対応する表面積を有する。更に、粒子は、粒子の小さいサイズ及び物質重量当たり広い表面積によって独特の特性を示すことができる。例えば、バナジウム酸化物ナノ粒子が、本明細書に参照により組み込まれる、Biらの米国特許第5,952、125号(発明の名称「電気活性ナノ粒子を有する電池(Batteries With Electroactive Nanoparticles)」)に記載されているように、リチウム電池で非常に高いエネルギ密度を示すことができる。
【0116】
1次粒子は、サイズにおいて高い均一性を有することができる。上述したように、レーザー熱分解は、一般に非常に狭い範囲の粒径を有する粒子を形成する。更に、適切に温和な条件下での熱処理は、非常に狭い範囲の粒径を変更させない。レーザー熱分解のための反応物のエアロゾル搬送の場合、粒径の分布は、反応条件に特に敏感である。それにもかかわらず、反応条件を適切に制御すれば、エアロゾル搬送システムで粒径の非常に狭い分布を得ることができる。透過型電子顕微鏡の試験で決定される場合、1次粒子は、一般に1次粒子の少なくとも約95%、他の実施形態では99%が平均直径の約40%より大きく、平均直径の約225%より小さい直径を有するサイズ分布を有する。一部の実施形態において、1次粒子は、1次粒子の少なくとも約95%、他の実施形態では99%が平均直径の約45%より大きく、平均直径の約200%より小さい直径を有する直径分布を有する。
【0117】
また、一部の実施形態において、実質的に1次粒子が平均直径の約5倍、一部の実施形態では平均直径の4倍、及び他の実施形態では平均直径の3倍より大きい平均直径を有しない。すなわち、粒子サイズ分布が実質的に著しく大きいサイズの粒子の小さい個数を示すテールを有しない。これは、反応領域での反応物の短い滞留時間及び反応領域によるエネルギの均一性の結果である。サイズ分布のテールの有効な遮断は、平均直径を超える特定の遮断値より大きい直径を有する粒子が106のうち1つ未満に存在することを示す。ノズルサイズ分布及び分布でのテールの部材は、多様な応用に活用できる。
【0118】
そして、ナノ粒子は、一般に非常に高い純度レベルを有する。上記方法によって生成されたナノ粒子は、レーザー熱分解反応及び適用可能であれば、結晶形成過程が粒子から汚染物を排除する傾向があるので、反応物より高い純度を有すると予想される。更に、レーザー熱分解によって生成された結晶性サブミクロン粒子は、比較的高い程度の結晶化度を有することができる。これと同様、熱処理によって生成される結晶性ナノ粒子は、高い結晶化度を有する。高い結晶純度だけでなく全体的な高い純度を達成するために、粒子の表面にある特定の不純物は、粒子を加熱することで除去できる。
【0119】
一般に、リン光体粒子は、しばしば所望の電子特性を導入するために、ドーパントを有する選択された金属/メタロイド組成物であり得る。無機粒子は、複数の異なる元素を含み、変動相対比率で存在する組成を含み、粒子の適用関数として元素の個数と相対比率が選択できることを特徴とすることができる。異なる元素の適切な個数は、例えば、約2個から約15個の元素を含み、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、及び15個を考えることができる。一部の実施形態において、元素の一部又は全部が金属/メタロイド元素であり得る。相対比率の一般な数は、例えば、約1〜約1,000,000の値を含み、約1、10、100、1000、10000、100000、1000000、及びこれらの適切な和を考えることができる。
【0120】
代替的又は付加的に、そのようなサブミクロン/ナノスケール粒子は下記式:
abcdefghijklmno
を有することを特徴とすることができ、ここで、
各A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、及びOは、独立して存在したり又は存在せず、A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、及びOの少なくとも1つは存在し、また元素の周期律表で1A族元素、2A族元素、3B族元素(ランタニド族元素及びアクチニド族元素を含む)、4B族元素、5B族元素、6B族元素、7B族元素、8B族元素、1B族元素、2B族元素、3A族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素、及び7A族元素を含む元素からなる群より独立して選択され、各a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、l、m、n、及びoは、独立して選択され、また約1〜約1,000,000の値で化学量論的に実現可能であり、数は、約1、10、100、1000、10000、100000、1000000、及びこれらの適切な和を考えることができる。特に関心を集めるリン光体は結晶性であるが、物質は、結晶性、非晶質、又はこれらの組み合わせであり得る。すなわち、元素は、希釈ガス以外の周期律表で任意の元素であり得る。一般に、単独又は共同での特定の組成物、組成物の群、属、亜属などを除く全ての無機化合物又はこれらの組み合わせのように、明らかに独創的な配合(grouping)として無機化合物の全ての部分集合だけでなく、リン光体として行うことができる全ての無機組成物を考えることができる。
【0121】
特定の化学量/組成物について一部の組成物を記載したが、化学量は、単に一般に概略的な量である。特に、物質は、汚染物質、欠陥などを有することができる。更に、対応化合物の元素が複数の酸化状態を有する非晶質及び結晶質物質の場合、物質は、複数の酸化状態を含むことができる。したがって、ここで化学量が記載される場合、実際の物質は、SiO2が若干のSiOなどを含んでいるように、少量の他の化学量の同一元素を含むことができる。
【0122】
特に関心を集める実施形態において、リン光体粒子は、選択されたドーパントを有する結晶性の無機組成物である。例えば、選択されたドーパントを有する特定の金属/メタロイド酸化物又は金属/メタロイド硫化物がリン光体として成功裏に使用できる。一部の実施形態において、希土類金属元素が非希土類金属/メタロイド及び/又は他の希土類金属に代わるドーパントである。ドーパントは、光出力及び物質の色を変えることができる。適切な赤色リン光体は、例えば、YVO4:Eu、ZnS:Mn、YBO3:Eu、GdBO3:Eu、Y23:Eu、及びY3Al512:Euを含む。適切な緑色リン光体は、例えば、ZnS:Tb、Zn2SiO4:Mn、Y3Al512:Tm、BaAl1219:Mn、及びBaMgAl1423:Mnを含む。適切な青色リン光体は、例えば、ZnS:Ag、SrS:Ce、BaMgAl1423:Eu、BaMgAl1017:Eu、及びY3Al512:Tbを含む。前記表示で、コロンの右側に示すドープ元素は、結晶格子で酸化物の1以上の他の金属に代わる。希土類金属は、一般に電荷が+2〜+4のイオン形態である。
【0123】
ドーパントは、一般に組成に約15モル%未満の金属を含み、他の実施形態で約10モル%未満、一部の実施形態で約5モル%未満、他の実施形態で約0.05〜約1モル%の金属/メタロイドを組成に含む。当業者は、本開示が同様にこれらの特定範囲に属する範囲をカバーすることを認識するはずである。
【0124】
新しい組成に基づく他の向上したリン光体を開発しようとする試みがなされているが、YAG:Ceは、リン光体変換の白色発光ダイオード(WLED)で現在最も多く使われている黄色リン光体である。しかし、ナノスケールYAGリン光体の使用は、従来YAGの性能を向上させる代替的な道を提供する。後熱処理を有するレーザー熱分解に基づいて、以下でナノTAG:Ceの生成例を記載する。
【0125】
特に関心を集める高性能のリン光体粒子に関して、結晶化度、構造及び組成純度、ドーパントレベル、粒子内のドーパント分布、構造内のドーパント位置、及びドーパント酸化状態が所望の発光レベルを得るのに重要な特性であり得る。粒子の吸収は、一般にドーパント濃度の関数である。発光は、吸収の関数であるので、発光は、ドーパント濃度に依存する。しかし、過剰なドーパントは、濃度クエンチを発生させることができるので、ドーパントレベルは、任意の大きい値まで増加できない。十分に高いドーパント濃度で、クエンチが優位を占め、総内部発光がまた下がる。したがって、内部発光は、ドーパント濃度の関数として頂点を有する。しかし、発光動作は、また他のパラメータを有する。ドーパントが正しい酸化状態を有して格子内の適切な地点を占めると、濃度曲線のピークの位置は、より高い濃度に移動することができる。粒子結晶化度及び格子内のドーパント位置が処理依存的であり得るので、ピークの位置は、処理条件に依存することができる。
【0126】
ここで説明したように処理された粒子が一般に高結晶性であり得るが、結晶化度の微妙な増加及び望ましいドーパント位置決定が、所望の性能特性に関して重要であり得る。特に、サブミクロン粒子の場合、所望の性能特性を得るための結晶化度を得るのが困難であり得る。したがって、出発物質が、高い固有の結晶化度を有するレーザー熱分解生成された粒子である場合、粒子の熱処理及び次処理がこれらの特性を改善するように制御できる。
【0127】
結晶化度は、x線回折度から評価できる。特定の結晶性構造の場合、回折度ピークの位置がバルク、すなわちミクロン平均粒子サイズより大きい粉末から決定できる。公知のピーク位置に基づいて、公知のピークの下にあるサンプルの回折度の面積を測定することができる。そして、総回折度面積で割った、測定されたピーク面積の比に100を掛けて、パーセント結晶化度を得る。これは、当分野の標準プロセスである。ナノスケール粒子の場合、x線回折度は、有限粒子サイズ及びx線干渉と関連した公知の現象に基づいて拡張したピークを有する。高い結晶化度及びナノスケールを有する物質の場合、ピーク面積を正確に測定し難いので、結晶化度の正確な測定が困難であり得る。しかし、90%結晶化度まで正確な測定が行われ、90%超過結晶化度の測定は、一般に少なくとも1%の正確度で取得できる。一部の実施形態において、結晶化度は、少なくとも約90%、他の実施形態で少なくとも約93%、他の実施形態で少なくとも約95%、及び他の実施形態で少なくとも約97%である。当業者は、開示範囲内に属する結晶化度の付加の範囲を考えることができ、その範囲が本開示の範囲内であることを認識するはずである。
【0128】
また、レーザー熱分解を行う前にエアロゾル前駆体を加熱することで、濃度クエンチがより高い濃度に移動して、より高い固有発光が得られつつ、より高いドーパント濃度がイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粒子内にロードできることが明らかになった。クエンチを増加させない状態で、付加のドーパントを結晶性母材に位置させることができる能力によって、物質の総発光が増加できる。総発光性は、関連製品の生産において重要なパラメータである。発光性が増加すると、それに対応するように、リン光体の総量が減少し得る。それによって、より薄い構造及び/又はより少ないロードが使用できる。より薄い構造及び/又はより少ないロードの使用は、吸収損失及び散乱損失を更に減少させて、得られる装置の効率を更に増加させる。
【0129】
更に、YAGリン光体粒子の場合、La及びGdの共ドープは、YAG:Ceリン光体の放出特性を変更させる。共ドープされる元素の量が増加することで、放出の最大値は、赤色光側に移動する。それで、YAG:Ceリン光体は、1原子%Ceで少なくドープされた場合、534nmで最大値を有して、広帯域に亘って放出する。10原子%Laで共ドープされると、最大値は558nmに移動する。15原子%Gdで共ドープされると、最大値は548nmに移動する。
分散及び表面改質
リン光体粉末を実際の装置に取り込ませるために、一般に粒子、すなわち粉末は、装置内の構造と一致する形態で位置される必要がある。一般に、そのような処理は、粒子の分散を含み、一部の実施形態の場合、ポリマーのような複合材内への粒子の取り込みを含む。一部の実施形態において、コーティングを形成するために、分散されたリン光体粒子が利用できる。表面改質剤の使用は、複合材への取り込みのための物質の形成又は装置の他の処理方法のために、粒子の分散を大きく向上させることができる。ここで記載されたリン光体粉末の場合、得られる物質で光の散乱及び吸収を減らすように粒子が非常によく分散されて、得られる構造の高効率の発光を生成することができる。したがって、物質の減少した総量を有するより小さい構造がより安価でかつより良好な製品を生産するのに効果的に使用できる。
【0130】
粒子分散物の形成は、粒子の分離を提供して、粒子がよく分散できる。溶媒、pH、イオン強度、及び添加剤を粒子分散の向上のために選択できる。良好な分散は、ポリマーとのブレンドの形成だけでなく、構造内へのリン光体粒子の搬送を補助できる。分散物を使用すると、ブレンドにほぼ均一に分布した粒子との一層均一なブレンドが得られる。粒子のより大きい分散と分散物の安定性は、得られるブレンドで粒子の凝集減少を補助する。
【0131】
一部の実施形態において、粒子分散物の形成は、過程のうち個別段階であり得る。例えば、粒子、例えば、ナノ粒子の収集物がポリマーブレンドへの均一な導入のためによく分散できる。液相の粒子分散物は、望ましい構造形成に使用できる小さい2次粒子源を提供することができる。無機粒子の液体分散物の望ましい品質は、一般に粒子の濃度、分散物の組成、及び分散物の形成に依存する。具体的に、分散程度は、本質的に粒子内の相互作用、液体と粒子との相互作用、粒子表面の化学的性質に依存する。適切な分散物は、例えば、水、アルコールと炭化水素のような有機溶媒、及びこれらの組み合わせを含む。適切な分散剤/溶媒の選択は、一般に粒子の特性に依存する。分散及び分散物の安定化程度は、著しく凝集された粒子からそれほど影響を受けずに、均一な複合材を製造するのに重要な特徴となり得る。
【0132】
一般に、液体分散物は、約80重量%以下の粒子濃度を有する分散物を示す。粒子分散物の形成のために、特定の粒子濃度は、選択された適用に依存する。約50重量%より高い濃度で、より希釈した粒子分散物の特徴をなすパラメータに比べ、得られる粘性ブレンドの形成及び特質に関して他の因子が重要であり得る。粒子の濃度は、粘性に影響を及ぼし、分散物処理の効能に影響を及ぼし得る。特に、高い粒子濃度は、粘性を増加させることができ、剪断の適用が粒子分散を補助できても、小さい2次粒子サイズを得るように粒子を分散させることを難しくし得る。
【0133】
多くのポリマーが有機溶媒に可溶性であるので、一部の実施形態は、非水性分散物の形成を含む。そして、水系分散物は、バッファ及び塩のような付加の組成物を含むことができる。特定粒子の場合、分散物の特性は、pH及び/又はイオン強度を変化させることで調整できる。イオン強度は、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのような不活性塩の添加によって変化できる。リンカーの存在は、分散物の特性及び安定性に影響を及ぼし得る。pHは、一般に、分散された粒子の表面電荷に影響を及ぼす。液体は、溶媒和型相互作用の形態で粒子に物理的/化学的力を加えることができ、これは、粒子の分散を補助することができる。溶媒和型相互作用は、本質的に活発及び/又はエントロピー的になり得る。
【0134】
分散物を形成する前に、粉末をミリング処理するのが有用であり得る。しかし、過剰なミリングは、粉末の結晶化度を減少させ得るので、ミリングし過ぎてはならない。ミリングは、ビーズミルなどで行うことができる。適切なミルは、市販されている。一部の実施形態において、ミリングは、液体の存在下で行うことができる。一部の実施形態において、粒子発光性の著しい減少を発生させることができる粒子結晶構造の損傷を回避するために、低い剪断及び低いエネルギで粒子をミリング処理するのが望ましい。
【0135】
分散物の品質は、一般に分散物の形成過程に依存する。分散物で、分散物内の分散剤及び他の化合物によって加えられる化学的/物理的な力を除き、隣接粒子の間のファンデルワールス力及び短距離電磁力によって共に保持されている1次粒子を分離するために、機械的な力が利用できる。特に、分散物に加えられる機械的な力の強度と持続時間は、分散物の特性に大きく影響を及ぼす。又は、粉末同士、粉末と液体又は液体同士の組み合わせ後、引き続く混合、攪伴、ジェットストリーム衝突及び/又は超音波分解の際、剪断応力のような機械的な力を加えることができる。一部の実施形態において、より小さい2次粒子サイズが得られるが、1次粒子の間に凝集力が更に分裂すると、過剰なミリングは、粒子を損傷させて、リン光体として粒子の性能が低下され得る。したがって、適切なミリングパラメータの選択において相殺される特性が存在できる。
【0136】
例えば、1次粒子サイズに近い小さい2次粒子サイズの存在は、均一な特性を有するブレンド形成のための分散物の適用に大きく有利であり得る。例えば、より小さい2次粒子サイズ及び一般に小さい1次粒子サイズは、ブレンドを用いてより円滑及び/又はより小さい、そしてより均一な構造の形成を補助することができる。コーティング形成において、より小さい2次粒子を有する無機粒子分散物で形成されるブレンドで、より薄くかつより円滑なコーティングが形成できる。しかし、分散された、より均一な粒子が一般に放出光のより少ない散乱及びより少ない再吸収を有するので、得られる物質の光学特性は、より良好な分散により大きく向上できる。
【0137】
上述したように、任意の粒子凝集物は、1次粒子に基づいて分散剤に著しい程度で分散でき、一部の実施形態では、本質的に完全に分散され、分散された1次粒子を形成する。分散された粒子のサイズは、2次粒子サイズと呼ぶことができる。もちろん、1次粒子サイズが粒子の特定の収集物の場合、2次粒子サイズの下限であるので、平均2次粒子サイズは、おおよそ平均1次粒子サイズになることができる。2次又は凝集された粒子サイズは、初期形成後の粒子の後処理及び粒子の組成と構造に依存することができる。一部の実施形態において、平均2次粒子サイズは、平均1次粒子サイズの約5倍以下、他の実施形態で3倍以下であり、付加の実施形態で平均1次粒子サイズの約1.2倍〜2.5倍である。一部の実施形態において、2次粒子は、約1000nm以下、付加の実施形態で約500nm以下、他の実施形態で約2nm〜約100nm、又は約2nm〜約5nmの平均直径を有する。当業者は、これらのような特定範囲に属する相対粒子サイズと平均粒子サイズの他の範囲を考えることができ、これは本開示の範囲内であることを認識するはずである。液体分散物内の2次粒子サイズは、動的な光散乱法のような確立された方法によって測定できる。適切な粒子サイズ分析器は、例えば、動的な光散乱法に基づくHoneywell社製のMicrotrac UPA装置、日本のHoriba社製のHoriba Particle Size Analyzer、及び光子相関分光法に基づくMalvern社製のZeta Sizerシリーズ装置を含む。液体内の粒子サイズ測定のための動的な光散乱の原理はよく確立されている。
【0138】
一旦分散物が形成されてから、引き続く機械的攪伴がなければ、容器の底に粒子が収集されて、結局、分散物は分離できる。安定した分散物は、分散物で分離されない粒子を有する。分散物ごとに安定性の程度が異なる。分散物の安定性は、粒子の特性、分散物内の他の組成物、分散物を形成するのに使われた処理、及び安定化剤の存在に依存する。適切な安定化剤は、例えば、表面改質剤を含む。また、更に安定した分散物の場合、一般に後処理に効果的に使用できる更に濃縮した分散物を形成することができる。一部の実施形態において、分散物は非常に安定的なので、粒子分散物の分離を防止するための継続混合などを含んでブレンドを形成するための適切な処理が使用できるにもかかわらず、構造及び/又はポリマー混合物を形成する後処理段階の間、分散物は著しい分離なしに使用できる。
【0139】
表面改質剤は、一般に組成物が粒子表面で広がるようにしたり、表面と相互作用するようにする表面張力又は結合特性を有する非重合性の分子である。これらの分子は、表面改質剤によって提供される予測可能な処理属性で、安定した被覆粒子の形成によって後処理を容易にすることができる。表面改質剤は、粒子表面と結合しても、又は結合しなくてもよい。表面改質剤の分類は、例えば、表面及び表面活性剤に結合する化合物を含む。適切な表面活性剤は、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、及び非イオン界面活性剤を含む。
【0140】
粒子表面に結合する適切な表面改質剤は、おそらく、表面の化学的性質だけでなく、粒子の化学的組成に依存する。一般に、金属/メタロイド酸化物粒子に結合するのに適した化合物は、例えば、カルボン酸及びアルコキシ有機シランを含む。カルボン酸分子は、粒子表面とエステル化型反応を行う反面、アルコキシ有機シランは、反応してアルコキシ基の変位で粒子表面と架橋酸素原子を形成する。一般に、チオール基は、金属硫化物粒子及び金、銀、カドミウム、亜鉛のような特定の金属粒子に結合するために使用できる。カルボキシル基は、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、ランタン、アクチニウムのような他の金属粒子に結合できる。これと同様、アミンと水酸化物基は、鉄、コバルト、パラジウム、白金のような遷移金属原子だけでなく、金属酸化物粒子及び金属窒化物粒子と結合すると予想される。
【0141】
表面改質剤が無機粒子に結合しない官能基を有すると、表面改質剤は、表面改質剤と共に及び/又は表面改質剤上に加えられる他のコーティング組成物に結合するように使用できる。例えば、表面改質剤は、表面に加えられるポリマー又はモノマーユニットに結合して、ポリマーネットワーク又は架橋ポリマーを形成することができる。結合された無機粒子−ポリマー複合材をバルク複合材として形成する過程が、本明細書に参照により組み込まれる、Kambeらの米国特許第6,599,631号(発明の名称「ポリマー無機粒子複合材(Polymer Inorganic Particles Composites)」)に記載されている。
【0142】
リン光体粒子の分散物は、溶媒を除去するために乾燥した後、コーティングを形成するように、基材に直接コーティングできる。基材は、特定の適用に基づいて選択できる。コーティングは、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングなどのように特定の適用に適切な任意のコーティング方法で行うことができる。溶媒は、加熱及び/又は真空を伴ったり、伴わない蒸発によって除去できる。
【0143】
そして、表面改質剤を有する粒子は、乾燥されて表面改質剤を有する粉末を形成することができる。表面改質剤は、表面を鎮めて、粒子を分離したまま保持することができる。一部の実施形態において、表面改質された粉末がコーティングとして選択された基材に直接加えられ、この場合、必要に応じて、粉末を加える間に粉末を流動化するために、ガスを使用することができる。スプレーコーティングなどが使用できる。表面にあるコーティングを安定化させるために、後処理が使用できる。
ポリマーリン光体粒子ブレンド
リン光体粒子−ポリマーブレンドは、種々の製品で効果的に使用できる。ブレンドは、ここで説明するリン光体粒子で高いロードレベルで形成できるので、これらのブレンドは、製品への向上した処理を提供することができる。これらと同様、高度に分散できる高発光性の粒子を用いれば、製品性能を低下させずに、より少ない物質でより薄いリン光体構造を形成することができる。粒子は、ポリマーと結合しても、又は結合しなくてもよく、これと同様、ポリマーは、粒子と関連した表面改質剤組成物と結合しても、又は結合しなくてもよい。ポリマーは、ブレンドの所望の特性を得るように選択できる。更に、一部の実施形態において、ポリマー無機粒子複合材は、複数の異なるポリマー及び/又は複数の異なる無機粒子を含むことができる。
【0144】
複合材の形成の場合、適した有機ポリマーは、例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ヘテロサイクリックポリマー、ポリエステル、改質されたポリオレフィンとこれらの共重合体及び混合物を含む。ナイロンポリマー、すなわちポリアミドと無機粒子で形成された複合材をナノナイロン(商標)と呼ぶことができる。適切なポリマーは、ポリアセチレンのようなポリマー骨格内の共役ポリマー、及びポリ(p−フェニレン)、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリピロールとこれらの共重合体及び誘導体のようなポリマー骨格内の共役ポリマーを含む。
【0145】
適切なシリコン系ポリマーは、例えば、無機ポリマーとの共重合体及び混合物だけでなく、ポリシラン、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)のようなポリシロキサン(シリコン)ポリマー、及びこれらの共重合体及び混合物を含む。無機粒子及び/又は表面改質組成物に共有結合された構造を形成するために、ポリシロキサンは、アミノ及び/又はカルボン酸基で改質される。ポリシロキサンは、可視光線及び紫外線に対する透明性、高い熱安定性、酸化劣化に対する抵抗性及び疎水性による望ましいポリマーである。他の無機ポリマーは、例えば、ホスファゼンポリマー(ホスホニトリル(phosphonitrile)ポリマー)を含む。
【0146】
一部の実施形態において、複合材は、自己集合されて、局部的な構造に形成される。複合材の組成及び/又は構造は、複合材自体の自己組織化を助長するように選択できる。例えば、ブロック共重合体は、ポリマーの異なるブロックが分離されるように使用でき、このような分離は、多くのブロック共重合体の標準特性である。適切なブロック共重合体は、例えば、ポリスチレン−ブロック−ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン−ブロック−ポリアクリルアミド、ポリシロキサン−ブロック−ポリアクリレート、及びこれらの混合物を含む。一部の実施形態において、これらブロック共重合体は、無機粒子と直接又は間接に結合するために、適切な官能基を含むように改質できる。例えば、ポリアクリレートは、カルボン酸基を形成するように、加水分解するか又は部分的に加水分解することができ、又は酸性基が重合を妨害しなければ、アクリル酸の部分は、ポリマー形成の間にアクリレートの全部又は一部に置換できる。又は、無機粒子との直接又は間接結合のために、官能基のうち1つが残るように、アクリレートのエステル基は、ジオールへのエステル結合又はジアミンとのアミド結合に置換できる。他の個数のブロックと他の種類のポリマー組成物を有するブロック共重合体が使用できる。
【0147】
無機粒子が分離ブロック共重合体内でポリマー組成物と共に分離されるように、無機粒子は、ブロック内のポリマー組成物のうち、ただ1つと結合できる。例えば、ABジブロック共重合体は、ブロックA内にのみ無機粒子を含むことができる。無機粒子の分離は、無機粒子の特性を用いるという点で機能的な利点を有することができる。同様に、もし、無機粒子と対応するポリマーが異なる溶媒化特性を有すると、連結無機粒子は、ブロック共重合体の異なるブロックと類似することで、ポリマーに対して分離できる。そしてナノ粒子自体がポリマーに対して分離され、自己組織化された構造を形成することができる。
【0148】
他の規則共重合体は、例えば、グラフト共重合体、櫛状共重合体、星状ブロック共重合体、デンドリマー、これらの混合物などを含む。全ての種類の規則共重合体は、ポリマー成分が互いに化学的に結合されているポリマーブレンドとしてみなされる。物理的なポリマーブレンドが利用でき、自己組織化を示すことができる。ポリマーブレンドは、化学的に別個のポリマーの混合物を含む。無機粒子は、ブロック共重合体について上述したように、単にポリマー類の部分集合に相互作用及び/又は結合することができる。物理的なポリマーブレンドは、ブロック共重合体と類似の自己組織化を示すことができる。無機粒子の存在は、ポリマーと無機粒子の相互作用が本来ポリマー単独の場合と異なって、他のポリマー類と物理的に相互作用して、複合材の特性を十分に改質することができる。特に、ポリマー無機粒子ブレンド内のナノ粒子が存在すれば、小さい粒子サイズによって弱い場に高感度なブレンドを得ることができる。このような感受性は、装置形成に有利に利用できる。小さい粒子を用いる過程を一般にソフト方式方法と呼ぶことができる。
【0149】
適切な複合材は、特定の適用によって低い粒子ロード又は高い粒子ロードを含むことができる。同様に、ポリマー成分及び無機粒子成分の組成は、得られる複合材の所望の特性を達成するように選択できる。複合材は、関連特性に関して組み合わされた成分のシナジー効果を出すことができる。
【0150】
無機粒子は、ある範囲のロードで複合材に取り込むことができる。低い粒子ロードを有する複合材が高い均一性で生成できる。1%又は2%以下のような低いロードが一部適用に望ましい。そして、高い無機粒子ロードがよく分散された粒子で達成できる。そして、約80重量%以上までの高い無機粒子ロードがよく分散された粒子で達成できる。一般に、無機粒子ロードは、約0.1重量%〜約90重量%、他の実施形態で約1重量%〜約85重量%、他の実施形態で約3重量%〜約80重量%、付加の実施形態で約5重量%〜約65重量%、及び一部の実施形態で約10〜約50重量%である。当業者は、これらの開示する範囲内に属する他の範囲を考えることができ、その範囲が本開示の範囲内であることを認識するはずである。
【0151】
一部の実施形態において、ポリマー無機粒子複合材は、無機粒子とポリマーとの間に化学的な結合を含み、結合された複合材を形成する。他の実施形態において、複合材は、無機粒子とポリマーの混合物又はブレンドを含む。複合材成分の組成と成分の相対量が光学特性のような所望の特性を得るように選択できる。同様に、表面改質剤組成物がポリマーと結合でき、表面改質剤組成物が無機粒子に結合しても又は結合しなくてもよい。表面改質剤が無機粒子とポリマーの両方に結合されると、表面改質剤をリンカーと呼ぶ。対応実施形態において、無機粒子に結合されたリンカー化合物の量がポリマーで得られる架橋の程度を変化させるために調整できる。
【0152】
化学結合されたポリマー/無機粒子複合材を形成する基本的なアイデアに基づいて、多様な構造が形成できる。得られる構造は、一般に合成過程自体だけでなく、ポリマー/モノマー、リンカー及び無機粒子の相対量に依存する。リンカーは、カップリング剤又は架橋剤として特定される。ポリ無機粒子複合材が複数の異なるポリマー及び/又は複数の異なる無機粒子を含むと、ポリマー及び/又は無機粒子の全てが複合材内で化学結合されたり、又はポリマー及び無機粒子の一部のみ複合材内で化学結合できる。ポリマー及び/又は無機粒子の一部のみ化学結合されると、結合された部分は、総ポリマー及び/又は無機粒子の無作為部分又は特定部分であり得る。
【0153】
リンカー化合物は、2以上の官能基を有する。リンカーの1つの官能基は、無機粒子に化学結合するのに適している。化学結合は、極性結合を有するか又は有しない一部の共有特性の結合を幅広くカバーすると考えられ、多様な程度のイオン結合と共にリガンド金属結合の特性を有することができる。官能基は、無機粒子の組成に基づいて選択できる。リンカーの他の官能基は、ポリマーとの共有結合に適している。共有結合は、シグマ結合、パイ結合、他の非局在化共有結合、及び/又は他の共有結合タイプを有する共有結合を幅広く示し、イオン結合成分などを有するか又は有しない極性結合であり得る。共有リンカーは、例えば、機能性有機分子を含む。
【0154】
一部の実施形態において、リンカーは、少なくとも粒子表面に単層の多くの部分を形成するように加えられる。特に、例えば、単層の少なくとも約20%が粒子に加えられ、他の実施形態で単層の少なくとも約40%が加えられる。粒子の測定されたBET表面積に基づいて、リンカーの量はリンカーの単層に対して粒子表面の約1/2、1、及び2のカバレージまで対応するように使用できる。当業者は、これらの特定範囲に属する他の範囲を考えることができ、その範囲が本開示の範囲内であることを認識するはずである。単層は、粒子の測定された表面積及び原子半径の許容された値に基づくリンカーの分子半径の推定値に基づいて計算される。一部の実施形態において、リンカーが全て結合せずにリンカー試薬の一部自己重合が生じ得るため、過剰なリンカー試薬を加えることができる。カバレージを計算するために、リンカーは、表面に垂直する粒子に結合されると仮定することができる。この計算は、カバレージの予想値を提供する。これらの計算から推定されるものよりも、粒子表面上により高いカバレージが位置できることが実験的に判明された。これらのような高いリンカーカバレージの場合、リンカーは、ポリマーと高度に架橋された構造を形成するはずである。それぞれの無機粒子で、多重分岐の架橋構造が形成される。
【0155】
無機粒子は、ポリマー構造内にリンカー化合物によって結合されたり、又はポリマー側基にグラフトできる。結合された無機粒子は、大部分の実施形態でポリマーを架橋することができる。特に、大部分の実施形態は、単一無機粒子が複数のポリマー基と星状架橋されたものを含む。複合材の構造は、一般に粒子のロードだけでなく、リンカーの密度、リンカーの長さ、カップリング反応の化学反応度、ポリマーにある反応性基の密度、及びポリマーの分子量範囲(すなわち、モノマー/ポリマーユニット)によって制御できる。代替的な実施形態において、ポリマーは、末端部又は側基で無機粒子と直接結合する官能基を有する。これらの代替的な実施形態において、ポリマーは、無機粒子への結合に適切なリンカー官能基に匹敵する官能基を含む。
【0156】
リンカーを有するポリマー複合材の形成のために、粒子分散の形成中又は形成後、分散物は、リンカー分子及び/又はポリマーと相互作用する。所望の複合材を形成するために、無機粒子は、1以上のリンカー分子への化学結合によって表面で改質できる。一般に、リンカーを含む実施形態の場合、リンカーは、無機粒子分散物及び/又はポリマー分散物を形成するために使われる液体に可溶性であるので、リンカーは、結合時に溶液に実質的に均質に溶解される。組み合わされた粒子分散物とポリマー分散物/溶液の条件がリンカー、無機粒子及びポリマー間の結合の形成に適合できる。無機粒子及びポリマーにリンカーを添加する順序は、所望の処理効率を得るように選択できる。一旦複合材の成分の間に結合が完了するのに十分な時間が経過すれば、複合材は、所望の製品に更に処理できる。
【0157】
無機粒子に対するリンカー組成物の比は、無機粒子当たり少なくとも1つのリンカー分子であるのが望ましい。リンカー分子表面は、無機粒子を改質し、すなわち無機粒子を機能化する。リンカー分子が無機粒子に結合する間、ポリマーに結合する前に無機粒子に結合する必要はない。リンカー分子は、まずポリマーに結合した後、粒子にのみ結合することができる。又は、リンカーと二種との間の結合がほぼ同時に起きるように、成分が混合できる。
【0158】
リンカー化合物及びポリマー/モノマー成分が粒子分散物を有する液体に同時又は順次に追加できる。多様な成分の組み合わせ順序は、所望の結果が得られるように選択できる。液体内の条件は、リンカーとの結合形成、及びおそらく、ポリマー/モノマー成分を含む他の結合形成に適している。一旦複合材が形成されてからは、複合材から形成される構造が残るように、液体が除去又は凝固できる。
【0159】
ポリマー/モノマー組成物は、無機粒子分散物に添加される前に溶液/分散物で形成でき、ポリマー/モノマーが固体として粒子分散物に加えることができる。一部の実施形態において、ポリマー/モノマー組成物は、粒子分散物を形成するために使われる液体に可溶性である。ポリマー/モノマーは、粒子分散物に可溶性/分散性でなければ、ポリマー/モノマー溶液又は粒子分散物が、反応が生じるように混合されつつ、他方にゆっくり加えられる。ポリマー/モノマーが無機粒子分散物と別途に、先に可溶化されているか否かはポリマー/モノマー可溶化の動力学及び多様な溶液/分散物の所望の濃度に依存することができる。同様に、結合動力学が混合物過程の順序と細部事項に影響を及ぼし得る。
【0160】
一部の実施形態において、反応条件及び/又は触媒などの存在が、無機粒子及び/又はポリマー/モノマーとリンカーの反応を開始するために必要である。これらのような実施形態において、反応条件の調整又は触媒付加の前に成分が混合できる。したがって、更に均一な複合材の形成のための反応条件の調整又は触媒付加の前に、よく混合された溶液/分散物が形成できる。
【0161】
結合された複合材を形成するために、そのポリマーがリンカーに結合できる末端基及び/又は好ましくは側基を有する限り、多くの異種のポリマーは適している。ポリマーによっては、官能側基でリンカーに結合することができる。ポリマーは、所望の官能基を本質的に含むことができ、所望の官能基を導入するために、化学的に改質され、又は所望の官能基の一部を導入するために、モノマーユニットと共重合できる。同様に、一部の複合材は、単に複合材内に結合された単一ポリマー/モノマー組成物を含む。架橋構造内において、ポリマーは、繰り返し側基を有し、又は鎖内に少なくとも約50個の炭素−炭素結合を有しなければ、ポリマーとしてみなされない炭化水素鎖を除く鎖に沿って3以上の繰り返しユニットとして識別できる。
【0162】
ポリマーとの結合のための適切な官能基は、ポリマーの作用性に依存する。一般に、重合の官能基及びリンカーは、公知の結合特性に基づいて適切に選択できる。例えば、カルボン酸基は、チオール、アミン(1次アミンと2次アミン)、及びアルコール基に共有結合する。特定の例として、ナイロンは、リンカーと共有結合するのに適した非反応カルボン酸基、アミン基、又はこれらの誘導体を含むことができる。そして、アクリルポリマーへの結合のために、ポリマーの一部は、アクリル酸又はその誘導体で形成され、アクリル酸のカルボン酸がリンカーのアミン(1次アミンと2次アミン)、アルコール又はチオールと結合することができる。リンカーの官能基は、単に特定の組成を有する粒子及び/又は特定の官能基を有するポリマーとの選択的な連鎖を提供することができる。リンカーのための他の適切な官能基は、例えば、ハロゲン、シリル基(−SiR3-xx)、イソシアネート、シアネート、チオシアネート、エポキシ、ビニルシリル、シリルヒドリド、シリルハロゲン、モノ−、ジ−、及びトリハロオルガノシラン、ホスホネート、有機金属カルボン酸、ビニル基、アリル基、及び一般に任意の不飽和炭素基(−R’−C=C−R”)を含み、ここで、R’とR”は、この構造内で結合する任意の基である。選択的な連鎖は、自己組織化を示す複合材構造の形成に有用であり得る。
【0163】
リンカー官能基とポリマー官能基の反応時、初期官能基のアイデンティティは、結合された構造で結果物(resultant)又は生成官能基に併合される。ポリマーから延長する連鎖が形成される。ポリマーから延長する連鎖は、例えば、有機部分、シロキシ部分、硫化物部分、スルホン酸塩部分、ホスホネート部分、アミン部分、カルボニル部分、ヒドロキシル部分、又はこれらの組み合わせを含むことができる。本来官能基のアイデンティティは、得られる官能基によって明確又は不明確であり得る。得られる官能基は、一般に例えば、エステル基、アミド基、無水酸基、エーテル基、硫化物基、二硫化物基、アルコキシ基、ヒドロカルビル基、ウレタン基、アミン基、有機シラン基、ヒドリドシラン基、シラン基、オキシシラン基、ホスホネート基、スルホン酸塩基、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0164】
リンカー化合物が使われると、得られる第1官能基は、一般にポリマーがリンカーに結合される部分で形成され、得られる第2官能基は、リンカーが無機粒子に結合される部分で形成される。無機粒子において、官能基の確認は、特定の原子が粒子又は官能基と結合されたか否かに依存することができる。これは、単に命名の問題であって、当業者は、官能基に対する原子の特定の割り当てに関係なく、得られる構造を特定することができる。例えば、カルボン酸が無機粒子と結合すると、粒子の非金属/メタロイド原子との結合を含む基を発生させることができ、しかし、オキソ基は、粒子の組成に関係なく、得られる官能基内に一般に存在する。結局、結合は、金属/メタロイド原子まで延長する。
【0165】
無機粒子に結合するための適切な官能基は、無機粒子の特性に依存する。本明細書に参照により組み込まれる、Kinkelらの米国特許第5,494,949号(発明の名称「表面改質された酸化物粒子、及びポリマー材料の充填剤及び改質剤としてのその粒子の用途(SURFACE−MODIFIED OXIDE PARTICLES AND THEIR USE AS FILLERS AND MODIFING AGENTS IN POLYMER MATERIALS)」)には、金属/メタロイド酸化物粒子に結合のためのシリレーティング剤の用途が記載されている。粒子は、粒子に結合するためのアルコキシ改質されたシランを有する。例えば、金属/メタロイド酸化物粒子に結合するための望ましいリンカーは、R123−Si−R4を含み、ここでR1、R2、R3は、粒子を加水分解することができ、その粒子と結合できるアルコキシ基であり、R4は、ポリマーに結合するための適切な基である。トリクロロシリケート(−SiCl3)官能基は、凝縮反応によって金属酸化物粒子の表面でヒドロキシル基と反応することができる。
【0166】
一般に、金属硫化物粒子、及び金、銀、カドミウムと亜鉛のような特定の金属粒子に結合するために、チオール基が使用できる。カルボキシル基は、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、ランタン、及びアクチニウムのような他の金属粒子に結合できる。これと同様、アミンと水酸化物基は、鉄、コバルト、パラジウム、及び白金のような遷移金属原子だけでなく、金属酸化物粒子及び金属窒化物粒子と結合すると予想される。
【0167】
無機粒子と結合するリンカー官能基のアイデンティティは、また、無機粒子との結合特性によって改質してもよい。無機粒子の1以上の原子がリンカーと無機粒子との間の結合形成に関与する。得られる連鎖内の原子がリンカー化合物から由来するか、又は無機粒子から由来するかは不明瞭であり得る。何れの場合でも、得られる又は生成官能基は、リンカー分子と無機粒子を結合させて形成される。得られる官能基は、例えば、リンカーとポリマーの結合から得られる前記官能基のうち1つであり得る。無機粒子にある官能基は、結局、1以上の金属/メタロイド原子と結合する。
【0168】
一部の実施形態において、ポリマーは、無機粒子をポリマーネットワークに取り込ませる。これは、リンカー化合物の官能基をポリマー分子の末端基と反応させることで行うことができる。又は、機能化された無機粒子が、ポリマー構造の形成時に、ポリマー構造に直接取り込まれるように、無機粒子が重合過程の間に存在することができる。他の実施形態において、無機粒子は、リンカー官能基をポリマー側基にある官能基と反応させることで、ポリマーにドラフトされる。これらのような任意の実施形態において、表面改質された/機能化された無機粒子は、十分な架橋分子が存在すれば、すなわちエネルギバリアを克服して、ポリマーに少なくとも2以上の結合されたリンクを形成するのに十分であれば、ポリマーを架橋することができる。一般に、無機粒子は、粒子と関連した多くのリンカーを有することができる。したがって、実際に、架橋は、ポリマー粒子配列、分子動力学と化学的動力学によって結合されている2つの架橋基の統計的な相互作用に依存する。
リン光体応用
多様な望ましいリン光体粒子及びその準備をここで詳しく記載する。リン光体は、励起後に可視光線のような光を放出する。いくつかの有用なリン光体は、光スペクトルの赤外線部分で光を放出する。リン光体を励起させるために、多様な方式が使用でき、特定のリン光体は、1以上の励起方法に応じ得る。特定種類の発光は、例えば、電子、光、及び電界による励起をそれぞれ含む陰極線発光、光発光、及び電子発光を含む。陰極線発光のリン光体として適した多くの物質が電子発光リン光体としても適している。
【0169】
特に、リン光体粒子は、1キロボルト(KV)未満、より好ましくは100V未満の電位で加速される電子を使用する低速電子励起に適合し得る。小さいサイズを有する粒子が低速電子励起に適している。粒子サイズの低下によって、電子のより低い透過距離がそれほど制限されないため、低いエネルギ電子励起が利用できる。
【0170】
更に、ナノスケール粒子は、例えば、低い電子速度励起で高い発光をもたらすことができる。粒子サイズが、発光性のわずかな減少をもたらす可能性のある非常に小さい粒子サイズを超えても、電圧の減少によって、小さいサイズの粒子から高発光性を予想することができる。粒子サイズの減少がリン光体に及ぼす効果が理論的には、本明細書に参照により組み込まれる、「粒子サイズ及び表面再結合速度が、低いエネルギのリン光体輝度に及ぼす効果(The Effects of Particle Size And Surface Recombination Rate on the Brightness of Low−Energy Phosphor )」(J.S.Yooら、J.App.Phys.81(6)、2810〜2813、1997年3月15日)に記載されている。
【0171】
改善されたリン光体粒子は、様々な視角化応用に効果的に使用できる。例えば、リン光体粒子は、ディスプレイ、車両用照明、公共照明、信号系、及び他の一般照明に使用できる。同様に、リン光体は、x線閃光のために使用できる。
【0172】
リン光体粒子は、多様なディスプレイ装置の製造に使用できる。いくつかのディスプレイにおいて、リン光体は、例えば、電子発光又は陰極線発光の結果として自己放出する。いくつかのディスプレイにおいて、リン光体は、例えば、液晶逆光又は発光ダイオード逆光で励起され、逆光照明の結果として所望の視角化を効果的に生成する。これらのようなディスプレイは、ホームエレクトロニクス又は車両用ディスプレイに使用できる。より一般的な照明応用は、例えば、交通信号灯、街灯、信号系、及び家庭用照明を含む。
【0173】
代表的な一実施形態において、図15に示すように、ディスプレイ装置700は、一側面にリン光体層704を有する陽極702を含む。リン光体層は、適切な形状の陰極706に向いており、陰極は、リン光体の励起に使われる電子源である。陰極706から陽極702への電子の流れを制御するために、陽極702と陰極706との間にグリッド陰極708が位置できる。
【0174】
イメージを生成するために陰極線管(CRT)を長い間使用し、CRTは、一般に比較的高い電子速度を用いる。上述したリン光体粒子は、異なる色の粒子を供給し、リン光体の層厚を減少させ、また所与の発光性のためにリン光体の量を減少させる便利な方式で有利に使用できる。陽極と陰極が相対的により離れた距離で分離されており、陰極から陽極へ電子を導くために、一般にグリッド電極ではなく、ステアリング電極が使われるという点を除いては、CRTは、図15に示す一般な構造を有する。CRTでのリン光体の使用が、例えば、本明細書に参照により組み込まれる、Tongらの米国特許第5,523,114号(発明の名称「ビデオディスプレイ用の強化された色対比を有する表面コーティング(Surface Coating With Enhanced Color Contrast for Video Display)」)に更に記載されている。
【0175】
他の適切な応用は、例えば、フラットパネルディスプレイの製造を含む。フラットパネルディスプレイは、例えば、液晶又は電界放出装置に基づくことができる。液晶ディスプレイは、多様な光源に基づくことができる。リン光体は、液晶ディスプレイ用の照明製造に有用であり得る。図16に示すように、液晶要素730は、液晶層736を取り囲んでいる少なくとも部分的に光透過性である基材732,734を含む。照明は、陽極740にあるリン光体層738によって提供される。陰極742は、リン光体層738を励起させるための電子源を提供する。代替的な実施形態が、例えば、本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第5,504,599号(発明の名称「非ディスプレイ領域又はディスプレイ画素以外の領域にEL光源を有する液晶ディスプレイ装置(Liquid Crystal Display Device Having An EL Light Source In A Non−Display Region or A Region Besides A Display Picture Element)」)に記載されている。
【0176】
液晶ディスプレイは、電子発光ディスプレイからの逆光照明で照明できる。図17に示すように、電子発光ディスプレイ750は、第1電極として機能する導電性基材752を有する。導電性基材752は、例えば、アルミニウム、グラファイトなどからなり得る。第2電極754は透明であり、例えば、インジウム錫酸化物からなり得る。誘電体層756が電極752,754間で第1電極752に隣接するように位置できる。誘電体層756は、シアノエチルセルロース又はシアノエチル澱粉のような誘電体バインダ758を含む。誘電体層756は、チタン酸バリウムのような強誘電性物質760を含むことができる。dc駆動(ac駆動の逆)の電子発光装置の場合、誘電体層756を必要としないことができる。透明な電極754と誘電体層756との間にリン光体層762が位置する。リン光体層762は、誘電体バインダ766内に電子発光性粒子764を含む。逆光LCDディスプレイが、例えば、本明細書に参照により組み込まれる、Setlurらの米国特許出願第2004/0056990号(発明の名称「リン光体ブレンド及び液晶ディスプレイ用逆光源(Phosphor Blends and Blacklight Sources For Liquid Crystal Displays)」)に記載されている。
【0177】
また、電子発光ディスプレイ750は、自動車計器盤及び制御スイッチ照明のような他のディスプレイ応用に利用できる。そして、組み合わされた液晶/電子発光ディスプレイが設計されている(本明細書に参照により組み込まれる、FuhらのJapan J.Applied Phys.33:L870−L872(1994)参照)。
【0178】
図18に示すように、電界放出装置に基づくディスプレイ780は、相対的に互いに若干離れている陽極782と陰極784を含む。各電極対は、個別的にアドレス可能なピクセルを形成する。リン光体層786は、それぞれの陽極782と陰極784との間に位置する。リン光体層786は、上述したリン光性ナノ粒子を含む。選択された放出周波数を有するリン光性粒子は、特定のアドレス可能な位置に位置できる。リン光体層786は、陰極784から陽極782へ低速に移動する電子によって励起される。電子ビームを加速し焦点を合せるために、そしてリン光体層786に向かう電子のオン・オフスイッチとして作動するために、グリッド電極788が使用できる。陽極782とグリッド電極788との間に電気絶縁層が位置する。要素は、一般にフォトリソグラフィ、及び/又は集積回路の製造のためのスパッタリングと化学的蒸着のような他の適切な技法によって生成される。図18に示すように、陽極は、リン光体786によって放出される光が透過できるように、少なくとも部分的に透明でなければならない。
【0179】
又は、本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第5,651,712号(発明の名称「ディスプレイが連結された多重クロム側面型電界放出装置及び製造方法(Multi−Chromic Lateral Field Emission Devices With Associated Displays And Methods Of Fabrication)」)には、光伝播の所望の方向に沿って(面ではない)エッジに配向されたリン光体層を有するディスプレイ付き電界放出装置が開示されている。この特許に示す構成は、所望の色を放出するために、所望の周波数で放出するリン光体を使用する代わりカラーフィルタを含む。上述した粒子に基づくと、選択されたリン光体粒子が異なる色の光を生成するために使用でき、これによってカラーフィルタが必要なくなる。
【0180】
また、リン光体は、高解像度テレビとプロジェクションテレビのためのプラズマディスプレイパネルに使われる。これらのような適用は、高い発光を要求する。しかし、標準リン光体の場合、一般に低い転換効率が得られる。したがって、消散される熱が多く、多くのエネルギが消費される。サブミクロン又はナノスケール粒子を使用すれば、発光を増加させることができ、また転換効率を向上させることができる。高い表面積を有するリン光体に基づくサブミクロン/ナノスケール粒子は、紫外線を効果的に吸収し、そのエネルギを所望の色の光出力に転換させることができる。
【0181】
プラズマディスプレイパネルの様々な要素800の実施形態を図19に断面図で示されている。プラズマディスプレイパネルは、独立的にアドレス可能な2次元配列のプラズマディスプレイ要素800を含む。要素800は、200ミクロン程度の距離だけ離れている2つのガラス板802,804の間に位置する。少なくともガラス板802は透明である。バリア壁806がガラス板802,804を分離する。バリア壁806は、導電性部分808及び電気絶縁部分810を含む。
【0182】
各プラズマディスプレイ要素800は、陰極812、及び金属メッシュ又はインジウム錫酸化物で形成された透明な陽極814を含む。リン光体コーティング816が陰極表面上に位置する。ネオン、アルゴン、キセノン、又はこれらの混合物のような希釈ガスが各要素内で電極の間に位置する。電圧が十分に高い場合、プラズマが形成されて赤外線を放出する。リン光体粒子を含むプラズマディスプレイパネルが、本明細書に参照により組み込まれる、Aokiらの米国特許第6,833,672号(発明の名称「プラズマディスプレイパネル及びプラズマディスプレイパネルの製造方法(Plasma Display Panel and a Method for Producing a Plasma Display Panel)」)に記載されている。
【0183】
ここで記載したリン光体を有する複合材が発光ダイオード用エンキャプシュレーションとして使用できる。ここで使われる発光ダイオード(LED)は、インコヒーレント光放出ダイオードだけでなく、ダイオードレーザーを含む。リン光体を有する複合材は、放出光の波長を移動させることができる。LEDエンキャプシュレーションの代表的な構成が、本明細書に参照により組み込まれる、Le Boeufらの米国特許第6,921,929号(発明の名称「非晶質蛍光ポリマーエンキャプシュレーションとレンズを有する発光ダイオード(LED)(Light−Emitting Diode (LED) With Amorphous Fluoropolymer Encapsulant and Lens)」)に示されている。発光ダイオード(LED)装置用の白光放出リン光体ブレンドが、更に、例えば、本明細書に参照により組み込まれる、Srivastavaらの米国特許第6,621,211号(発明の名称「LED装置用の白光放出リン光体ブレンド(White Light Emitting Phosphor Blends for LED Devices)」)に記載されている。そして、表面電子ディスプレイ(SED)に使われるリン光体が、更に、例えば、本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第6,015,324号(発明の名称「電子シンクを有する表面電子ディスプレイ装置の製造方法(Fabrication Process for Surface Electron Display Device With Electron Sink)」)に記載されている。
【0184】
同様に、リン光体は、蛍光照明に取り込むことができる。例えば、これらのような照明は、交通信号灯、街灯、家庭用照明などに使用できる。また、適する組成を有する改善されたリン光体が、本明細書に参照により組み込まれる、Okadaらの米国特許第6,974,955号(発明の名称「放射検出装置及びシステム、並びにこれに提供される閃光体パネル(Radiation Detection Device and System, and Scintillator Panel Provided to the Same)」)に更に記載されているように、x線閃光計数器に使用できる。
【0185】
リン光体粒子は、具体的に説明した代表的な実施形態を超えて多様な他の装置での使用のために適合化できる。ここで説明した高結晶性サブミクロン/ナノスケール粒子は、前記構造を形成するために、基材に直接加えることができる。又は、一部の実施形態において、リン光体粒子は、基材に適用するために、硬化性ポリマーのようなポリマーバインダと混合できる。硬化性バインダとリン光体粒子を含む組成物がフォトリソグラフィ、スクリーン印刷、又は集積回路基板の形成に使われる基材のパターニングのための他の適切な技法によって基材に加えられる。一旦組成物が適切な位置で基材に蒸着すれば、物質がポリマーを硬化するのに適切な条件に露出できる。ポリマーは、電子ビーム放射、UV放射又は他の適切な技法によって硬化できる。
【実施例】
【0186】
実施例1−ドープされたイットリウムアルミニウム酸化物のレーザー熱分解合成
本実施例は、エアロゾルを使用するレーザー熱分解によるペロブスカイト結晶構造を有する、ドープされたイットリウムアルミニウム酸化物の合成を立証する。図3A、図4及び図5と関連して上述した反応チャンバを用いて本質的にレーザー熱分解を行った。粒子を冷却させるために、チャンバは、粒子形成後、流れに付加の不活性ガスを追加するように設計される。エアロゾル噴霧器でのガス圧は一般に17psiであり、反応チャンバ内の合成圧力は200Torrであった。
【0187】
硝酸イットリウム(III)六水化物(純度99.9%)、硝酸アルミニウム九水化物(純度98%又は99.97%)、及び硝酸セリウム(III)六水化物(純度99%又は99.99%)前駆体を脱イオン水に溶解した。前駆体は、マサチューセッツ州のワードヒル所在のAlfar Aesar社から得られた。磁石攪拌機を用いてホットプレート上で溶液を攪拌した。水性金属前駆体溶液をエアロゾルとして反応チャンバ内へ搬送した。レーザー吸収ガスとしてC24ガスを使用し、不活性希釈ガスとして窒素を使用した。反応チャンバへの注入のために、金属前駆体、N2、O2及びC24を含む反応物混合物を反応ノズル内へ導入した。実施例1の粒子と関連したレーザー熱分解合成の付加のパラメータを表1に記載した。以後の実施例で報告する結果について、付加のサンプルは、表1のカラム1の条件で行い、但し、セリウムドーパント量が異なる。
【0188】
【表1】

【0189】
原子配列を評価するために、Rigaku Miniflex x線回折系でのCr(Ka)放射線を使用するx線回折を用いてサンプルを調査した。それぞれのサンプルで、公知の回折度と対照することで、イットリウムアルミニウムペロブスカイト(YAP)及びイットリウムアルミニウムモノクリニック(YAM)に対応する結晶相を確認した。代表的なx線回折度を図20に示す。
【0190】
これらサンプルの走査型電子顕微鏡写真を撮った。これらの顕微鏡写真は、粒子サイズの二峰性分布を示すが、粒子の大部分が10nm〜100nmの直径を有する小さいナノ粒子であり、一部が200nm〜1000nmのサイズを有するより大きい粒子である。代表的な走査型電子顕微鏡写真を図21に示す。エアロゾル製造の最適化は、分でより大きい粒子を有する部分の除去に成功したものと予想される。
実施例2−イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)を形成するための熱処理
本実施例は、イットリウムアルミニウム酸化物粒子のガーネット相、すなわちイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)への転換を立証する。
【0191】
表1のカラム1に記載された条件に従って、レーザー熱分解によって生成されたセリウムドープのイットリウムアルミニウム酸化物ナノ粒子のサンプルを1、2、又は3の加熱段階でオーブン内で加熱した。これら段階のうち少なくとも一部を還元性条件下で行った。オーブンは、本質的に図14と関連して上述したものである。約100〜約700mgの
ナノ粒子を、オーブンによって、突出しているアルミナチューブ内で開放型1ccアルミナ
ボート内に置いた。ガスは、直径3.0インチの石英チューブを介して約100sccmの流量でオーブンによって流動した。
【0192】
1段階、2段階、及び3段階の加熱過程の加熱条件を表2、表3、及び表4にそれぞれ要約した。
【0193】
【表2】

【0194】
【表3】

【0195】
【表4】

【0196】
表3及び表4に示すように、低温加熱段階は、リン光体粒子と結合した任意の炭素を酸化させるために存在する空気で行うことができる。550℃の低い温度によって、セリウムは、これらのような条件下では著しく酸化されない。表3及び表4で、より高い温度加熱段階は、若干還元性の雰囲気を作るために、98原子%アルゴンと2モル%H2の混合物で行われる。焼結を著しく低下させるために、表4の3段階加熱処理の場合、第2加熱段階で長い滞留時間の間、比較的より低い温度が可能である。例えば、第2加熱段階は、1200℃で2時間ではなく、1000℃で6時間行うことができる。
【0197】
熱処理される粒子の結晶構造は、x線回折によって決定された。x線回折度は、互いに類似して、セリウムドープされたYAGの高結晶性純粋相サンプルに対応する。3段階加熱処理の後、サンプルに対する代表的なx線回折度を図22に示す。
【0198】
粒子サイズと熱処理されたサンプルの構造を評価するために、走査型電子顕微鏡(SEM)を利用した。3段階加熱処理を経たサンプルに関する代表的なSEM顕微鏡写真を図23に示す。
【0199】
x線光電子分光器(XPS)を用いて熱処理されたサンプルについて、Ce+4に対するCe+3の比を決定した。2つのセリウムイオンは、x線スペクトルで異なる結合エネルギを有する。代表的な1つのサンプルの場合、熱処理は、Ce+4対Ce+3の比を2.3から1.96に変化させた。したがって、加熱条件が上記したように制御されると、存在するCe+3の量が大きく向上する。また、YAG−KO社製の商用サンプルを調査した。このサンプルは、Ce+4対Ce+3の比が2.22であり、これはレーザー熱分解で合成された場合の値に非常に類似する。
【0200】
以上の実施形態は、説明のためのものであって、制限するためのものでない。付加の実施形態も特許請求の範囲に属する。そして、本発明を特定の実施形態と関連して説明したが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに形態と細部内容を変形できることを認識するはずである。本明細書で開示する内容に反する内容は、組み込まれていないように、上述の参照として組み込まれた文献が制限される。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】レーザー熱分解装置の一実施形態の概略的な断面図であって、ここでの断面は、放射経路の中間を通して取ったものである。上側インサートは、収集ノズルの底面図であり、下側インサートは、注入ノズルの上面図である。
【図2】図1のレーザー熱分解装置に蒸気反応物を搬送するための反応物搬送装置の一実施形態の概略的な側面図である。
【図3A】図1のレーザー熱分解装置にエアロゾル反応物を搬送するための反応物搬送装置の他の実施形態の概略的な断面図であって、ここでの断面は、前記装置の中心を通して取ったものである。
【図3B】単一反応物入口ノズル内に2つのエアロゾル生成器を有する反応物搬送装置の概略的な断面図である。
【図4】蒸気及びエアロゾル反応物の搬送のための反応物搬送システムの入口ノズルの概略的な断面図であって、ノズル内で蒸気及びエアロゾル反応物が組み合わされる。
【図5】レーザー熱分解装置の他の実施形態の斜視図である。
【図6】図4の他のレーザー熱分解装置の入口ノズルの断面図であって、ここでの断面は、ノズル中心を通してノズル長に沿って取ったものである。
【図7】図4の他のレーザー熱分解装置の入口ノズルに関する断面図であって、ここでの断面は、ノズル中心を通してノズル幅に沿って取ったものである。
【図8】レーザー熱分解を行うための拡大した反応チャンバの一実施形態の斜視図である。
【図9】レーザー熱分解を行うための拡大した反応チャンバの一実施形態の斜視図である。
【図10】図9の反応チャンバの切断側面図である。
【図11】図9の線11−11に沿って取った図10の反応チャンバの部分切断側面図である。
【図12】図9のチャンバと共に使うための反応物ノズルの一実施形態の部分斜視図である。
【図13】ナノ粒子を熱処理するための装置の概略的な断面図であって、ここでの断面は、装置の中心を通して取ったものである。
【図14】ナノ粒子を加熱するためのオーブンの概略的な断面図であって、ここでの断面は、チューブの中心を通して取ったものである。
【図15】リン光体層を含むディスプレイ装置の一実施形態の断面図である。
【図16】発光のためにリン光体を含む液晶ディスプレイの一実施形態の断面図である。
【図17】電子発光ディスプレイの断面図である。
【図18】電界放出ディスプレイ装置を含むフラットパネルディスプレイの一実施形態の断面図である。
【図19】プラズマディスプレイパネルの要素の断面図である。
【図20】レーザー熱分解からYAlO3ペロブスカイト(perovskite)相を有する合成されたままの代表的なサンプルのx線回折図である。
【図21】レーザー熱分解からYAlO3ペロブスカイト相を有する合成されたままのサンプルの走査型電子顕微鏡写真である。
【図22】3段階の熱処理後、Y3Al512:Ceガーネット(YAG)の代表的なサンプルのx線回折図である。
【図23】3段階の熱処理後、Y3Al512:Ceガーネット(YAG)の代表的なサンプルのx線回折図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性リン光体組成物を含む粒子の収集物であって、
約100nm以下の数平均1次粒子サイズ、約250nm以下の重量平均2次粒子サイズ、及び少なくとも約90%の結晶化度を有する、粒子の収集物。
【請求項2】
前記数平均1次粒子サイズは、約50nm以下である、請求項1に記載の粒子の収集物。
【請求項3】
前記重量平均2次粒子サイズは、約50nm〜約150nmである、請求項1に記載の粒子の収集物。
【請求項4】
実質的に、いかなる1次粒子も、平均1次粒径の約5倍より大きい直径を有しない、請求項1に記載の粒子の収集物。
【請求項5】
1次粒子は、1次粒子の少なくとも約95%が、平均直径の約40%より大きく、平均直径の約225%より小さい直径を有する直径分布を有する、請求項1に記載の粒子の収集物。
【請求項6】
結晶性リン光体組成物は、ホスト格子及び約0.1モル%から約20モル%のドーパントを含む、請求項1に記載の粒子の収集物。
【請求項7】
前記ドーパントは、希土類金属を含む、請求項6に記載の粒子の収集物。
【請求項8】
前記ホスト格子は、金属酸化物又はメタロイド酸化物を含む、請求項6に記載の粒子の収集物。
【請求項9】
前記ホスト格子は、イットリウムアルミニウムガーネットを含む、請求項6に記載の粒子の収集物。
【請求項10】
粒子の表面に、化学的に結合された表面改質剤を更に含む、請求項1に記載の粒子の収集物。
【請求項11】
請求項1に記載の粒子の収集物を含む、液体分散物。
【請求項12】
モノマー又はポリマー、及び請求項1に記載の粒子の収集物を含む、組成物。
【請求項13】
流れ反応器内で粒子を製造する方法であって、
加熱されたエアロゾルを含む反応物流れを反応させて、流れ内で生成物粒子を生成することを含み、
前記加熱されたエアロゾルは、周囲温度より少なくとも約10℃高い温度まで加熱される、流れ反応器内で粒子を製造する方法。
【請求項14】
前記反応は、反応物流れと交差する光ビームによって促進され、
反応物流れは、光ビームから光を吸収する組成物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生成物粒子は、約500nm以下の平均粒子サイズを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
約250nm以下の平均粒子サイズを有する無機リン光体粒子の収集物を処理する方法であって、
酸化性雰囲気で、5分〜約5時間、約250℃〜約600℃の第1温度で粒子収集物を加熱することと、
少なくとも所望の相の変態開始温度より高く、粒子の溶融温度より少なくとも100℃低い状態で、第1温度より高く、粒子の結晶構造をアニールするのに十分な第2温度で、約5分〜約48時間、還元性雰囲気で、粒子収集物を加熱することとを含む、方法。
【請求項17】
x線散乱によって決定される粒子の結晶化度を増加させると共に、粒子の著しい焼結を引き起こさず、第2温度より低く、第1温度より高い第3温度で、5時間〜24時間、還元性雰囲気で、粒子収集物を加熱することを更に含む、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2009−530443(P2009−530443A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500472(P2009−500472)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/006497
【国際公開番号】WO2007/109084
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(503157216)ナノグラム・コーポレイション (15)
【氏名又は名称原語表記】NanoGram Corporation
【Fターム(参考)】