説明

高耐腐食性薄片状金属顔料、その製造方法、およびそれをベースとする金属光沢干渉発色顔料

【課題】 強アルカリ性の雰囲気でも高耐腐食性を有し、かつ分散性が良好で薄片状金属基質固有の金属光沢色を失わない高耐腐食性薄片状金属顔料を提供する。
【解決手段】 光輝感を有するアルミニウムフレーク、チタンフレーク、ステンレスフレーク、ブロンズフレーク等の薄片状金属基質表面を、燐酸化合物および/またはホウ酸化合物によって処理し、さらに、硅素、アルミニウム、ジルコニウムチタン、および錫水和酸化物等を含む層で被覆した高耐腐食性薄片状金属顔料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な高耐腐食性薄片状金属顔料、その製造方法、およびそれをベースとする金属光沢干渉発色顔料、及びその使用等に関する。
【背景技術】
【0002】
干渉作用によって発色の帯びた真珠光沢顔料としては、薄片状基質として雲母を用い、干渉による発色を狙って酸化チタンなどの高屈折率金属酸化物(以下「干渉色発色層」という。)を被覆したものが市場において広く知られている。しかし、この雲母は半透明であるために、反射率が低く、従って干渉作用による干渉色の発現が充分に発揮できていない。そこで、不透明でかつ光反射率の高い金属を薄片状基質として用いて、その表面に干渉色発色層(例えば酸化チタン等)を被覆した干渉色発色顔料がある(例えば特許文献1)。これらの干渉色発色顔料は、薄片状金属基質が水と反応し易い、また酸化を受け易いと言う欠点を有するために、水系処理を避けて、いわゆるゾルゲル法によって、直接、干渉色発色層を被覆したものである。
また、薄片状の金属基質表面に低屈折率の例の一つとして珪素水和酸化物をいわゆるゾルゲル法や気相法によって第一次被覆層を形成し、その後気相反応によって他の高屈折率の金属酸化物を被覆し、これを繰り返すことにより視野角変化による色相変化(遊色効果)を生じるゴニオクロマティック顔料(多変色性干渉顔料)が知られている(例えば特許文献2)。
更には、耐腐食性処理層を得るため(不動態化)に、燐酸塩等で処理したもの(例えば特許文献3)、有機燐酸エステルで処理したもの(例えば特許文献4)、単にシリカで処理したもの(特許文献5)、気相法による揮発性燐化合物と揮発性窒素含有有機珪素化合物の処理(特許文献6)等が知られている。
【0003】
しかし、従来のこれらの方法では、高価な原料を使用しなければならないとか、その薄片状金属基質の元来有する表面の平滑性をそのまま維持できずに損なわれていたり、またその粒子の分散性が十分でなかったりして、結果的に光の乱反射につながり、薄片状金属表面の反射光を充分に活用できていないという欠点を有していた。従って、その上層に更に干渉色発色層を被覆しても干渉色の発現を充分に確保することができなかった。
【0004】
一方、設備上安価で操作が容易な水系処理を可能にする金属顔料としては、酸性水溶液に対する耐腐食性が改善された薄片状金属顔料が報告されている(特許文献7)。即ち、かかる金属顔料によれば、水系において水溶性金属塩とアルカリを用いた中和加水分解や、水溶性金属塩の熱加水分解によって得られる金属水和酸化物を被覆し、瀘別・乾燥、所望により焼成して得る方法(本明細書において、請求項の記載を含めて全体に渡って「湿式法」と定義する。)を採用することが可能であるが、当該金属顔料の塩基性領域における耐腐食性については、未だ充分と言えないのが現状であった。
【0005】
【特許文献1】特開平1−110568
【特許文献2】特開平7−258579
【特許文献3】DE 19836810.0
【特許文献4】特開平3−74472
【特許文献5】特開平8−209025
【特許文献6】特開平7−292279
【特許文献7】特開平2003−41150
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、強アルカリ性の雰囲気でも高耐腐食性を有し、かつ分散性が良好で薄片状金属基質固有の金属光沢色を失わない高耐腐食性薄片状金属顔料を提供することにある。さらに、本発明の課題は、高耐腐食性薄片状金属顔料の表面に第二の金属水和酸化物を被覆する際に、いわゆる湿式法(しかもそれが塩基性水溶液下でも)を採用することができ、かつ干渉色発色性の高い、そして遊色効果を有し得る金属光沢干渉発色顔料等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、薄片状金属基質表面を、燐酸化合物および/またはホウ酸化合物で処理した後、さらに錫水和酸化物を含む層で被覆した高耐腐食性薄片状金属顔料が、上記課題を解決することを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、薄片状金属基質表面に燐酸化合物および/またはホウ酸化合物によって処理した層、および最外層に錫水和酸化物を含む層を有する高耐腐食性薄片状金属顔料に関する。
さらに、本発明は、薄片状金属基質表面を燐酸化合物および/またはホウ酸化合物によって処理した層、珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、および錫からなる群から選択される1種または2種以上の金属からなる金属水和酸化物層、および錫水和酸化物を含む層を順次形成せしめた、前記高耐腐食性薄片状金属顔料に関する。
また、本発明は、薄片状金属基質が、光輝感を有するメタリック顔料であることを特徴とする、前記高耐腐食性薄片状金属顔料に関する。
さらに、本発明は、光輝感を有するメタリック顔料が、アルミニウムフレーク、チタンフレーク、金フレーク、銀フレーク、銅−亜鉛合金フレーク、ニッケル合金フレーク、ステンレスフレーク、ブロンズフレークのいずれかであることを特徴とする、前記高耐腐食性薄片状金属顔料に関する。
また、本発明は、金属水和酸化物が珪素水和酸化物である、前記高耐腐食性薄片状金属顔料に関する。
さらに、本発明は、燐酸化合物および/またはホウ酸化合物の使用量が、薄片状金属基質の単位表面積(m)当たり、Pおよび/またはB換算で0.0001g〜0.1gに相当する量であり、金属水和酸化物被覆層形成における金属化合物の使用量が、薄片状金属基質の単位表面積(m)当たり、金属酸化物換算で0.01g〜1.0gに相当する量であり、錫水和酸化物被覆層形成における錫化合物の使用量が、薄片状金属基質の単位表面積(m)当たり、錫酸化物(SnO)換算で0.0008g〜1.0gに相当する量であることを特徴とする、前記高耐腐食性薄片状金属顔料に関する。
【0008】
また、本発明は、金属水和酸化物層で被覆された薄片状金属基質を水に分散(懸濁)させ、その分散(懸濁)液に錫塩水溶液と塩基性水溶液とをpHを一定に保ちながら同時に添加して前記薄片状金属基質表面に錫水和酸化物層を形成することを含む、高耐腐食性薄片状金属顔料の製造方法に関する。
【0009】
さらに、本発明は、前記高耐腐食性薄片状金属顔料の表面に、さらに1層または2層以上からなる第二の金属水和酸化物層を被覆してなることを特徴とする、金属光沢干渉発色顔料に関する。
また、本発明は、第二の金属水和酸化物層が湿式法、化学蒸着法または物理蒸着法によって得られたものであることを特徴とする、前記金属光沢干渉発色顔料に関する。
さらに、本発明は、第二の金属水和酸化物層が、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、錫、亜鉛、鉄、クロム、コバルト、珪素、ホウ素からなる群から選択される1種または2種以上の金属の金属水和酸化物を1種または2種以上含有する被覆層であることを特徴とする、前記金属光沢干渉発色顔料に関する。
また、本発明は、第二の金属水和酸化物層が、相互に異種の金属水和酸化物層を多層積層したものであることを特徴とする、前記金属光沢干渉発色顔料に関する。
さらに、本発明は、第二の金属水和酸化物層が、高屈折率金属水和酸化物層と低屈折率金属水和酸化物層とを交互に多層積層してなることを特徴とする、前記金属光沢干渉発色顔料に関する。
また、本発明は、前記高耐腐食性薄片状金属顔料、および/または前記金属光沢干渉発色顔料の塗料、粉体塗装および塗膜、インク、偽造防止印刷および印刷物、プラスチック、ペレットおよびプラスチック成形物、化粧料への使用に関する。
さらに、本発明は、前記高耐腐食性薄片状金属顔料、および/または前記金属光沢干渉発色顔料と、有機顔料、無機顔料、光学効果顔料、フィラー、機能性顔料からなる群から選択される1種または2種以上を含む組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、強アルカリ性領域においても耐腐食性を有する薄片状金属顔料が、広範な水系塗料等の環境保全型塗料に応用することができるという全く新しい発想のもとに完成されたものである。
本発明の高耐腐食性薄片状金属顔料は、薄片状金属基質表面の平滑性を損なうことなく、良好な耐腐食性を有するものであり、水系で、更に塩基性水溶液中でも、水素ガスの発生がほとんどないことから、環境保全型の水系塗料にも広範囲なpH領域で幅広く用いることができる。さらに干渉色発色のための湿式法による第二の金属水和酸化物層の被覆をも可能とするものである。
本発明の高耐腐食性薄片状金属顔料において、燐酸化合物および/またはホウ酸化合物処理、および錫水和酸化物を含有する被覆層との組み合わせによりもたらされる物性の変化に関するメカニズムは必ずしも明確ではないが、得られた高耐腐食性薄片状金属顔料は、前記組み合わせにより、不動態化によるアルカリ性領域での耐腐食性の付与ばかりでなく、従来の耐腐食性処理では得られなかった程の表面の緻密性、平滑性をもたらし、さらに得られた顔料の良好な分散性を達成することができる。従って、本発明の高耐腐食性薄片状金属顔料を干渉性顔料用の基質として用いた場合、表面の緻密性故に被覆する第二の金属水和酸化物層との親和性もよく、緻密で均一な層とすることができ、また、分散性の良好な金属光沢干渉発色顔料が得られる。その結果得られた顔料は、薄片状金属基質表面からの高反射率による金属固有の発色と、金属水和酸化物被覆層の干渉による良好な干渉発色とを兼ね備え、視野角変化に伴う色相の変化(遊色効果)をもたらすことができ、その発色性(彩度)が驚く程に改善された新規な金属光沢干渉発色顔料となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を製造方法と共に詳細に説明する。
本発明で用いられる薄片状金属基質としては、薄片状の金属および金属合金が含まれ、いわゆるメタリック顔料と称するものをいう。
本発明で用いられる薄片状金属基質の形状としては、平均粒径が2〜100μ、平均厚みが0.05〜5μのものが好ましく、さらに好ましくは、平均粒径が5〜50μ、平均厚みが0.1〜2μ、さらに特に好ましくは、平均粒径が5〜30μ、平均厚みが0.1〜2μのものが用いられる。
【0012】
具体的にはアルミニウムフレーク、チタンフレーク、金フレーク、銀フレーク、銅−亜鉛合金フレーク、鉄フレーク、ブロンズフレーク、ステンレスフレーク、アルミニウム青銅フレーク、各種アルミニウム合金フレーク、各種チタン合金フレーク、およびニッケル合金フレーク(例えば、特開2004−292758号等に記載)等が挙げられる。好ましくは、アルミニウムフレーク、チタンフレーク、金フレーク、銀フレーク、銅−亜鉛合金フレーク、ステンレスフレーク、ブロンズフレーク等が挙げられ、より好ましくは安定的に市場において光輝感を有するメタリック顔料として供給され、拡販されているアルミニウムフレーク(例えば、シルバーライン社、昭和アルミニウム社、東洋アルミニウム社、旭化成メタルズ社、エカート社等から市販されている。)、チタンフレーク、ステンレスフレーク等が挙げられ、最も好ましいのは、アルミニウムフレークである。
【0013】
これらのなかで、市場で入手できる薄片状金属基質の状態としては、空気中の湿気による酸化腐食防止のために既に有機溶剤に懸濁してある状態のもの(例えばミネラルスピリットなどでペースト状態のもの)、または分散性やリーフィング付与のための各種表面処理剤を施して有機溶剤に懸濁してあるもの、更には表面に前もって酸化保護膜の処理(不動態膜即ち表面酸化薄膜層)を施してあるもの、何れのものも用いることができる。本発明の目的とする点においては、特に腐食性の高い薄片状金属、すなわち、表面ができる限り酸化されていない状態の物について、その効果が発揮され、好適に採用される。
例えば、アルミニウムフレークのように腐食性が高いが故に既に有機溶剤に懸濁された状態で取り引きされているもの、およびそれらに各種表面処理剤を施して有機溶剤に懸濁してあるものが特に本発明での使用に推奨される。
前もって耐腐食性(不動態化)処理してある薄片状金属基質や薄片状合金基質を用いる場合には、単に耐腐食性付与を目的として本発明に基づく処理を施す必要はないが、本発明による耐腐食性層は、耐腐食防止の耐久性を向上できることの他、後の第二の金属水和酸化物の平滑な均一・緻密な被覆層を形成するのに役立つ点で前述の耐腐食性処理を目的としないまでも有効である。
【0014】
次に、これらの薄片状金属基質を極性有機溶剤に分散させて、極性有機溶剤懸濁液を調製する。ここで、本発明において極性有機溶剤懸濁液とは、
(1)有機溶剤に懸濁してある薄片状金属基質をそのまま用いて所定の濃度となるように極性有機溶剤に懸濁したもの、
(2)前もって有機溶剤をろ過又は遠心分離して薄片状金属基質固形分(空気や水分と直接接触するのを防ぐために完全な乾燥としない、付着溶剤が残る程度のもの)を回収して、それを所定の濃度となるように極性有機溶剤に懸濁したもの、
(3)薄片状金属基質が既に何らかの表面処理剤を施してある場合には、極性有機溶剤でその表面処理剤を洗浄して除去し、瀘別し、それを所定の濃度となるように再度極性有機溶剤に懸濁したもの、また、
(4)不動態化処理が施された薄片状金属基質の状態で粉体として入手できる場合は、そのまま用いて所定の濃度となるように極性有機溶剤に懸濁したもの、
を言う。
【0015】
本発明で用いられる極性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン類、炭素数1から10のアルキル基を有するアルコール類、テトラヒドロキシフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホオキサイド(DMSO)、ジオキサン類、グリコール類およびポリオール類、ならびにそれらのエーテル類、セロソルブ類等が挙げられる。これらの中でアルコール類としては常温で液体のものが選ばれ、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、ノナノール、デカノール、それらの各種の異性体を挙げることができる。好ましいアルコール類としては、常温においての取り扱い易さ、価格の面からエタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノールが挙げられる。特に、揮発性の少ない点や安価な点でイソプロピルアルコール、エタノール等が用いられる。グリコール類およびそれらのエーテル類の具体例としては、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、ジエチレングリコール(DEG)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。また、これらの溶液を適宜混合して使用することもできる。
【0016】
更に、本発明で用いる極性有機溶剤中のアルコール類としては、金属アルコキシドを用いて金属水和酸化物被覆層を形成する場合には、金属アルコキシドとの相溶性の高いものが選ばれる。当然に使用する燐酸化合物およびホウ酸化合物との相溶性をも考慮して適宜選択する。経済的効率を考慮して燐酸化合物および/またはホウ酸化合物による処理(本明細書において「第一段階処理」と定義する。)時と錫水和酸化物被覆段階反応時に使用する極性有機溶剤は同一にすることが望ましいが、それぞれの反応段階での反応物質との相溶性、反応効率を考慮して、それぞれの処理および被覆層形成段階で別々の物とすることもできる。また、上述(3)における表面処理剤の洗浄除去のために用いる極性有機溶剤は、その表面処理剤との相溶性を考慮して適宜選択し、使用される。
この薄片状金属基質を懸濁させた極性溶剤懸濁液の濃度は、用いる薄片状金属基質の密度、攪拌機の能力、溶剤の粘性によって適宜変えることができる。
【0017】
得られた高耐腐食性薄片状金属顔料は、本発明の一つ(請求項1〜6項に記載)であって、強アルカリ性の雰囲気でも耐腐食性が高く、光輝感に優れかつ粒子同志の凝集の少ない分散性の良好なものである。
本発明においては、第一段階処理、または錫水和酸化物被覆層形成それぞれ単独では、本発明の目的である強アルカリ性領域での耐腐食性付与、およびそれ以後の湿式法による均一・緻密な金属水和酸化物の被覆は達成できない。
従って、本発明の高耐腐食性薄片状金属顔料は、薄片状金属基質表面に第一段階処理層、および最外層に錫水和酸化物を含む層で被覆した層を有するものであればよく、第一段階処理層と錫水和酸化物被覆層との間に他の層を含む構成であってもよい。
本発明の高耐腐食性薄片状金属顔料の1つの態様は、薄片状金属基質表面を燐酸化合物および/またはホウ酸化合物で処理し(第一段階処理)、次に錫水和酸化物層で被覆するものである。
また、本発明の別の態様として、第一段階処理した表面上に、金属水和酸化物被覆層(第2層)を形成し、さらに錫水和酸化物層(第3層)で被覆することもできる。
【0018】
以下、第一段階処理について述べる。
燐酸化合物および/またはホウ酸化合物による処理は、燐酸化合物および/またはホウ酸化合物を薄片状金属基質を懸濁させた極性溶剤懸濁液に添加して行う。
燐酸化合物および/またはホウ酸化合物の使用量は、良好な耐腐食性、分散性および経済性等を考慮すると、薄片状金属基質の単位表面積(m)当たり、PおよびB換算で、0.0001g〜0.1gに相当する量が好ましく、特に好ましくは、0.0002g〜0.08gであり、さらに特に好ましくは、0.0005g〜0.05gである。従って、当該処理のための使用量は、当然に薄片状金属基質の単位表面積を考慮して、その粒子径が大きい場合は少ない量で、反対に粒子径が小さい場合は多い量を必要とする。
【0019】
この際、燐酸化合物およびホウ酸化合物の使用において水の量は、その水溶液にして使用する場合、原料の薄片状金属基質表面を粗さないために、後の工程で使用(消費)される量を考慮しつつ極力過剰にならないようにすることが好ましい。また、この燐酸化合物およびホウ酸化合物の溶剤としては前記の水と共に、他の溶剤として、後に薄片状金属基質懸濁の調製のために使用する極性有機溶剤と同一溶剤で希釈して用いることもできる。いずれにしてもここで使用する極性有機溶剤は薄片状金属基質と燐酸化合物およびホウ酸化合物との親和性・相溶性を考慮して適宜選択される。
本発明に用いられる燐酸化合物としては、燐酸、オルト燐酸、メタ燐酸、トリポリ燐酸、次亜燐酸、亜燐酸、それらの各種ポリ燐酸類、少なくとも一つのOH基を有するそれらの各種燐酸塩類、有機酸性燐酸エステル(例えばメチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、モノブチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビスー2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルアシッドホスフェートなど)、有機酸性亜燐酸エステル(ジブチルハイドロジエンホスファイト等)、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ヒドロキシエタンジホスホン酸{CHC(OH)(PO}、燐酸ビス[2−(N-プロピルパーフルオロオクチルスルホニルアミノ)エチル]エステル、パーフルオロアルキルエチル燐酸エステル(例えば、(RfCHCHO)P(O)(OH)、(RfCHCHO)P(O)(OH)、ここでRfはCF(CF6−17のパーフロロアルキル基を示す。)などが挙げられる。ここで、上記各種燐酸化合物において「酸性」および「アシッド」とは、少なくとも一つのOH基を有する燐酸化合物であることを示す。また、燐酸化合物に結合するエステル性有機基を適度に選択することにより、後の反応で用いる極性有機溶剤との親和性の向上を図ることができる。
【0020】
本発明に用いられるホウ酸化合物としてはホウ酸、ホウ酸アンモニウム、メタホウ酸、メタホウ酸リチウム、メタホウ酸アンモニウム、次ホウ酸、次ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
本発明の高耐腐食性薄片状金属顔料の処理としては、本発明の目的を達成するのであれば、燐酸化合物による処理、ホウ酸化合物による処理、燐酸化合物およびホウ酸化合物両方による処理等のいずれを選択することもできる。
処理終了後、第一段階処理で得られた薄片状金属基質表面に錫水和酸化物層を形成する場合には、その懸濁液をそのまま、または固形分を瀘別回収して、錫水和酸化物層形成反応に移行する。
【0021】
以下に、第一段階処理で得られた薄片状金属基質表面に錫水和酸化物層を形成する場合の、該錫水和酸化物被覆層形成反応について述べる。
錫水和酸化物の被覆は、第一段階処理で得られた薄片状金属基質は充分な耐腐食性を有していないことから、極性有機溶剤中でゾル・ゲル法により行うことが好ましく、なかでも加水分解する錫化合物として錫アルコキシドを用いるのが好ましい。
本発明に用いられる錫アルコキシド類としては、具体的には、例えば錫テトラエトキシド、錫テトラ−iso−プロポキシド等が挙げられる。
第一段階処理によって得られた懸濁液をそのまま、または瀘別回収した固形分を新たに第一段階処理反応時と同じ又は異なる極性有機溶剤に分散し、懸濁液とする。錫水和酸化物被覆層を形成するに当たっては、触媒の存在を必須とし、金属化合物と、所定量の加水分解に要する水を添加して行う。当該加水分解には触媒として酸性触媒も使用できるが、均一・緻密な処理被覆層を形成するには、アンモニウム系化合物および/又はアミン系化合物塩基性触媒が好ましい。塩基性触媒の使用が本発明の特徴である。
【0022】
本発明で使用される錫アルコキシド等の金属化合物の使用量は、薄片状金属基質の単位表面積(m)当たり、金属酸化物換算で、耐腐食性、経済性等を考慮すると、0.01g〜1.0gに相当する量が好ましく、特に好ましくは、0.02g〜0.8gであり、さらに特に好ましくは、0.05g〜0.5gである。
錫水和酸化物被覆層形成反応での極性有機溶剤としては、錫アルコキシドを構成するアルコールを使用することが好ましい。
【0023】
錫水和酸化物被覆層形成反応に用いられる塩基性触媒であるアンモニウム系化合物および/またはアミン系化合物は、錫アルコキシドをゾル・ゲル法によって加水分解するための触媒的な役割だけでなく、その錫水和酸化物の被覆層形成を均一・緻密なものとする点で有用なものである。
本発明に用いられるアンモニウム系化合物および/またはアミン系化合物としては、例えばアンモニウム系化合物ではアンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、燐酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、尿素類等が挙げられ、アミン系化合物ではγ−アミノプロピルトリエトキシシリケート、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、それらの塩類が挙げられる。この中でγ−アミノプロピルトリエトキシシリケート等は、上記珪素アルコキシドと、アミンの成分を同一分子内に両機能を兼ね備えたもので、同時に所望の特性を得る目的で、適宜選択使用される。
【0024】
この塩基性触媒であるアンモニウム系および/またはアミン系化合物の使用量としては錫アルコキシド化合物1モル当たり、反応速度、耐腐食性および金属水和酸化物の被覆量等の点から、0.01〜100モルが好ましく、特に好ましくは、0.1〜30モルに相当する量が挙げられる。
【0025】
当該ゾルゲル法においては、水の添加方法としては、
(1)第一段階処理によって得られた懸濁液に前もって加水分解に必要な量を加えておき、錫アルコキシドの溶液を添加する方法、
(2)第一段階処理によって得られた懸濁液に水と錫アルコキシドの溶液を別個に同時に添加する方法、または
(3)第一段階処理によって得られた懸濁液に錫アルコキシドを前もって添加しておき、そこに水を添加する方法
の何れの方法も採用することができる。
【0026】
詳しくは、第一段階処理がされた後の懸濁液に、以下の方法を採用することができる。
a.所定量の水および触媒を添加しておき、別に調製した極性有機溶剤に溶解させた錫アルコキシド溶液を添加する、
または
b.別に調製した触媒と所定量の水とからなる水溶液と、更に別に調製した極性有機溶剤に溶解させた錫アルコキシド溶液とをそれぞれ同時に別々に添加する、
または、
c.所定量の錫アルコキシドを添加しておき、別に用意した触媒と所定量の水とを添加する。
【0027】
この中で、当該加水分解反応が速い時には、水と錫アルコキシドの溶液を別個に同時添加する方法が、加水分解反応における反応途上での水の過剰な状態を避けることができる点で、好ましい。
反応温度は、加水分解速度を上げる意味で高い方が好ましいが、使用する極性有機溶剤の沸点などを考慮して、適宜決定する。沸点近くの温度で処理する場合は、コンデンサーなどを用いて溶剤を冷却還流させながら行うことができる。
また、第一段階処理層と錫水和酸化物被覆層との間に、他の層、例えば金属水和酸化物被覆層(第2層)を形成する場合には、該錫水和酸化物被覆層(第3層)の形成は、湿式法により被覆せしめることができ、好ましい。
【0028】
燐酸化合物および/またはホウ酸化合物によって処理された層と、錫水和酸化物を含む層との間に、金属水和酸化物層(第2層)を被覆せしめる場合には、珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、錫からなる群から選択される1種または2種以上の金属からなる金属水和酸化物を被覆することができる。
【0029】
それらの金属水和酸化物としては、1種の金属からなる金属水和酸化物および2種以上の金属を含む複合水和酸化物であってもよいが、特に透明性が高く、低屈折率かつ原料安価な点から、珪素水和酸化物が好ましい。
また、これらの金属水和酸化物を1種または2種以上含有する金属水和酸化物被覆層を複数層形成してもよい。当段階で使用する金属の原料としては、それらの金属アルコキシド、有機酸塩が挙げられる。
【0030】
本発明に用いられる珪素アルコキシド類としては、具体的には、例えばテトラメトキシシリケート、テトラエトキシシリケート、テトラプロポキシシリケート、テトライソプロポキシシリケート、テトラブトキシシリケート、テトラペントキシシリケート、テトラヘキソキシシリケート、いわゆるシランカップリング剤(例えばアルキル基を有するアルコキシシリケート、アミノアルキル基を有するアルコキシシリケート、グリシジルアルキル基を有するアルコキシシリケート等)が挙げられる。それらを単独または併用して使用する。シランカップリング剤を使用する場合は、所望の表面改質を図ることができる。
アルミニウムアルコキシド類としては、具体的には、例えばアルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−iso−プロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムエチルアセテートジ−iso−プロポキシド等が挙げられる。
ジルコニウムアルコキシド類としては、具体的には、例えばジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−iso−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド等が挙げられる。
チタンアルコキシド類としては、具体的には、例えばチタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−iso−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド等が挙げられる。
錫アルコキシド類としては、具体的には、例えば錫テトラエトキシド、錫テトラ−iso−プロポキシド等が挙げられる。
該金属水和酸化物の被覆については、上記した錫水和酸化物の被覆方法、即ち極性有機溶剤中でのゾル・ゲル法により形成せしめることができる。これらの金属水和酸化物被覆層(第2層)形成のための金属化合物の量は、薄片状金属基質の単位表面積(m)当たり、金属酸化物換算で0.01〜1.0gに相当する量が好ましく、特に好ましくは、0.02g〜0.8gであり、さらに好ましくは、0.05g〜0.5gである。
【0031】
第一段階処理、および金属水和酸化物被覆層(第2層)を形成する金属水和酸化物の種類の組み合わせは、得られる高耐腐食性薄片状金属顔料の透明性、下地の薄片状金属基質への到達光量、それに伴う反射光量、発色性等を考慮して決定されるが、なかでも第1段階処理された薄片状金属表面上に、珪素アルコキシドから加水分解生成される珪素水和酸化物被覆層(第2層)を形成させたものが、好ましい。
【0032】
次に、薄片状金属基質表面を、第一段階処理した後、ゾル・ゲル法により金属水和酸化物層(第2層)を被覆し、さらにその外層を錫水和酸化物を含む層(第3層)で被覆した場合の、該錫水和酸化物被覆層(第3層)について述べる。
本発明においては、錫水和酸化物被覆(第3層)には、気相法やゾルゲル法等により形成することも出来るが、気相法やゾルゲル法等と比べて原料や製造設備の面で制限されることなく、均一な被覆層が得られ易く、プロセスが単純で操作が容易である汎用性の高い湿式法を採用するのが好ましい。
温度は、均一な被覆層とし制御のし易さから60℃〜90℃とし、その分散液に錫塩水溶液と塩基性水溶液とをpHを一定に保ちながら同時に添加し、錫水和酸化物層(第3層)を被覆する。pHとしては、3.0以下が好ましい。さらに好ましくは1.0〜2.5が採用される。
【0033】
錫水和酸化物の被覆量は、第一段階処理の後、又は第一段階処理して第2層被覆した後、当該表面に対して、下地(非水系処理による層)が露出しない量に相当する量が必要である。即ち単分子層膜(monolayer)を形成するのに必要な量以上であることが必須である。この場合、薄片状金属基質の単位表面積(m)当たり錫水和酸化物がSnO換算で0.0008g以上が適当である。
具体的には、用いる薄片状金属基質の種類、粒度、粒度分布により適宜制御されるが、錫水和酸化物の使用量は、当然に高耐腐食性金属基質の単位表面積を考慮して、その粒子径が大きい場合は少ない量で、反対に粒子径が小さい場合は多い量を必要とする。
【0034】
錫水和酸化物の量は、強アルカリ領域での十分な耐腐食性、以下に述べる第二の金属水和酸化物層の十分な付着性・緻密性改善効果、および干渉色色相の制御を考慮して、薄片状金属基質の単位面積(m)あたり、錫酸化物(SnO)換算で0.0008g〜1.0gとなるように調製するのが好ましく、特に好ましくは0.0009g〜0.9gであり、さらに特に好ましくは0.001g〜0.8gである。例えば、金属アルミニウムを薄片状金属とした高耐腐食性基質(比表面積が3.01m/g(公開2003−41150号公報、表3記載)を用いた場合、薄片状金属基質の単位面積(m)あたり0.001g〜0.8gが適当である。
用いられる錫塩水溶液は水溶性錫(II)塩、錫(IV)塩である。例えば、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、硫酸錫(II)、酢酸錫(II)、しゅう酸錫(II)などが好ましい。
【0035】
ここで本明細書における「錫水和酸化物」とは、酸化錫、酸化錫の水和物、水酸基結合酸化錫などの結合状態が混在一体として存在する化合物を指す。また、同様にして、本明細書において請求項の記載を含めて、「金属水和酸化物」とは、金属アルコキシド等の金属化合物および金属塩の加水分解後、乾燥、場合によって焼成して得られるもので、酸化金属、酸化金属の水和物、水酸基結合酸化金属などの結合状態が混在一体として存在する化合物を指す。
本発明による高耐腐食性薄片状金属顔料は耐腐食性が良好なものであり、強アルカリ条件であるpH11のNaOH水溶液中においても水素ガスを殆ど発生しないものであった。
【0036】
本発明の高耐腐食性薄片状金属顔料は、金属光沢、主に光輝性顔料として塗料、インク、プラスチックなどに使用することができる。特に水系や粉体での使用が可能であるため、アルカリ性領域も含めて水系の塗料・インク、粉体塗装などにも用いることができ、作業環境改善、自然環境に対し好ましい。この高耐腐食性薄片状金属顔料は、使用目的に応じて、例えば、自動車塗料用途などで要求される耐光性、耐水性、耐候性の処理(例えば特開昭63−130673、特開平1−292067等の方法)や、例えば塗料分野、印刷分野で要求される高配向性(リーフィング効果)処理(例えば特開2001−106937、特願平11−347084等の方法)、水系塗料または水系印刷インク用の水系処理(例えば特開平8−283604等の方法)、化粧品用途でのシリコーン処理による分散性改良やハイドロジェンポリシロキサン処理による撥水撥油性改良や、また樹脂へ使用する場合のウエルドライン防止表面処理(例えば特開平3−100068)、また、分散性向上等の各種処理を施して使用できる。
【0037】
本発明における高耐腐食性薄片状金属顔料は、以下に述べる本発明の新規な金属光沢干渉発色顔料の製造においてベースとなる必須なものでもあり、燐酸化合物および/またはホウ酸化合物による処理、および錫水和酸化物被覆処理は単なる薄片状金属基質表面の高耐腐食性のためだけでなく、後にその上層に形成する第二の金属水和酸化物被覆層の緻密化および均一化を図るための重要なものでもある。即ち、これらの上記処理法によって得られる高耐腐食性層を形成させることによって初めて、以後の湿式法による第二の金属水和酸化物被覆工程に繋げることができ、耐腐食性層の上層に容易に第二の金属水和酸化物を被覆できる。
【0038】
以下に本発明の高耐腐食性薄片状金属顔料をベースとし、さらに1層または2層以上からなる第二の金属水和酸化物層を被覆して得られる本発明の金属光沢干渉発色顔料(請求項8〜12に記載)について述べる。本発明における耐腐食性薄片状金属表面上への第二の金属水和酸化物層の被覆には、気相法(化学的蒸着法(CVD法)や物理的蒸着法(PVD法))やゾル・ゲル法等により金属水和酸化物被覆層を形成することもできるが、気相法やゾル・ゲル法等と比べて原料や製造設備の面で制限されることなく、プロセスが単純であり、操作が容易であり、従って汎用性の高い湿式法を採用することができ、好ましい。
【0039】
耐腐食性が良好であることから、この段階でいわゆる湿式法が採用できることが本発明の大きな特徴である。
干渉色を発生させるための第二の金属水和酸化物層を構成する金属としては、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、錫、亜鉛、鉄、クロム、コバルトのほか、珪素、ホウ素も含まれる。チタン、ジルコニウム、錫、亜鉛、珪素、ホウ素などによる金属水和酸化物は、透明性を有し、鉄、クロム、コバルトなどによる金属水和酸化物は、有色透明性を有するため、適宜選択して用いる。なかでも、金属水和酸化物の高屈折率を考慮した場合、チタンを用いることが好ましく、有色の干渉性をもたせることを考慮した場合は、鉄を用いることが好ましい。
湿式法に用いる水溶性金属塩は、例えば、単独で用いたり、あるいは混合して(この場合、複合金属水和酸化物となる。)用いたり、層毎に異なって複数層を積層(例えばチタン水和酸化物層−鉄水和酸化物層の順に積層)したり、更には高屈折率金属水和酸化物層(例えば、代表的にはチタン水和酸化物、ジルコニウム水和酸化物など)と低屈折率金属水和酸化物層(例えばアルミニウム水和酸化物、珪素水和酸化物、ホウ素水和酸化物等)とを交互に順次複数層積層等することで、本発明の金属光沢干渉発色顔料を得ることができる。
【0040】
本発明において湿式法とは前述しているが、より詳細に説明すると、水系において、
(1)中和加水分解による場合、所望の水溶性金属塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩など)を選んで、所定量のその水溶液を調製し、他にアルカリ性水溶液を調製しておき、先に得られたベースの高耐腐食性薄片状金属顔料の懸濁液に、所定のpHを保ちながら滴下し、加水分解生成物層を形成させ、その後、洗浄・瀘別、乾燥し、場合によって焼成する方法、
(2)熱加水分解の場合は、所望・所定量の水溶性金属塩を、先に得られたベースの高耐腐食性薄片状金属顔料の懸濁液に添加しておき加熱することによって加水分解生成物層を形成させ、その後、洗浄・瀘別、乾燥し、場合によって焼成する方法、
である。また、(1)の中和加水分解による場合の変法としては、アルカリ性水溶液の替わりに、加熱によってアルカリ性を生じる尿素や、アセトアミドを用いる方法(いわゆる「均一沈殿法」)も挙げられる。このようにして、任意に水溶性金属塩を選択し、それらを単独または組み合わせて用いて、更には懸濁液への導入時を変えることによって、本発明の目的とする金属光沢干渉発色顔料を得ることができる。
【0041】
より具体的には、本発明の金属光沢干渉発色顔料は、単一金属水和酸化物被覆層の場合はチタン、ジルコニウム、錫、亜鉛、鉄、クロム、コバルトなどの水溶性金属塩からそれぞれ単独に選んで、アルカリとの中和加水分解や、または熱加水分解により金属水和酸化物を被覆し、また複合金属による被覆層の場合は、それらの金属塩を複数混合して用いて中和または熱加水分解により複合金属水和酸化物を被覆し、また多層被覆の場合は、それらの金属塩を順次添加して金属水和酸化物層を積層し、その後洗浄・瀘別、乾燥、場合によっては焼成工程を経て製造することができる。本発明で採用される交互多層被覆層を形成する場合は、同様にしてベースの耐腐食性薄片状金属顔料懸濁液に、相対する高屈折率層(前述)と低屈折率層(前述)となる金属塩水溶液を組み合わせて交互に滴下して、その加水分解生成物を順次積層する。交互多層被覆層の形成によって得られる金属光沢干渉発色顔料は、それらの光学的厚みを相互に制御し、交互に複数層積層被覆することにより、各層の界面で反射・透過を繰り返し、その干渉の重なりによりその色相での彩度の向上を図るものである(詳しくはWO 98/53011参照)。交互多層被覆層の形成によって得られる金属光沢干渉発色顔料は単一金属の高屈折率金属水和酸化物被覆層では得ることのできない、更に高彩度のものとなる。
本発明において、干渉色発色層の構成要素にチタン水和酸化物が含まれている場合、そのチタン水和酸化物の結晶をより高い屈折率とするために錫化合物などのルチル化剤を用いて、ルチル型とすることができる。ルチル型とすることにより、より発色性が向上する。
【0042】
本発明で得られる金属光沢干渉発色顔料は、耐腐食処理層が均一・緻密であり、更にその表面に被覆される高屈折率水和金属酸化物の均一・緻密性が高いために、金属固有色(マストーン)と干渉色との合わさった、いわゆる遊色効果(視野角度によって、観察される色相が変化する効果)が発現する。
【0043】
これらの干渉色発色層には公知の、既存の有色または黒色系の超微粒子有機・無機顔料を含有させて、それらの固有色相(マスストーン)を有しつつ、しかも干渉色を発生させる金属光沢干渉発色顔料とすることもできる。これは操作容易な湿式法を採用して始めてできるものであり、種々の色相範囲に拡大でき、顔料としての汎用性を広げることができる。
【0044】
さらに、特開昭62−101662、特開昭62−101664、及び特開平5-214257等の方法を用いて粒子からなる微粒子化された顔料(無機、有機)及び/または染料粒子が本発明によって得られる高耐腐食性薄片状金属顔料及び金属光沢干渉発色顔料の表面に適用し、均質かつ、強固に被覆せしめられている顔料を提供することができる。使用する有機顔料としては、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体系顔料等が挙げられ、また無機顔料としては、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック、紺青、群青などが挙げられる。
【0045】
また、本発明によって得られる高耐腐食性薄片状金属顔料及び金属光沢干渉発色顔料表面に、既知の湿式化学的方法により、無機又は有機金属化合物の還元により金属層を被覆することができる。更には、CVD(化学蒸着)法、例えば、金属カルボニルの気相分解により、またはPVD(物理蒸着)法、例えば、金属のスパッタリングまたは蒸着により金属層を析出させることもできる。 金属層について、好適な金属は、特に強い反射性能を有するものである。好ましいのは、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銀、亜鉛、モリブデン、タンタル、タングステン、パラジウム、銅、金、白金およびこれらを含む合金、例えばハステロイである。特に好ましいのは、アルミニウム及び銀である。金属層の厚さは、半透明とする範囲で、2〜100nmとし、好ましくは、5〜50nmに設定される。
【0046】
本発明によって得られた金属光沢干渉発色顔料は、各種付加的な表面処理を施すことによりそれらの用途に応じた要求品質に合った顔料とすることができる。例えば、自動車塗料用途などで要求される耐光性、耐水性、耐候性の処理(例えば特開昭63−130673、特開平1−292067等の方法)や、例えば塗料分野、印刷分野で要求される高配向性(リーフィング効果)処理(例えば特開2001−106937、特願平11−347084等の方法)、水系塗料または水系印刷インク用の水系処理(例えば特開平8−283604等の方法)、化粧品用途でのシリコーンによる分散性改良やハイドロジェンポリシロキサンによる撥水撥油処理などや、また樹脂へ使用する場合のウエルドライン防止表面処理(例えば特開平3−100068)、また、分散性向上などの各種処理等を施すことができる。
【0047】
以下に本発明によって得られる高耐腐食性薄片状金属顔料およびそれをベースとする金属光沢干渉発色顔料の用途を述べる。本発明によって得られる高耐腐食性薄片状金属顔料および、金属光沢干渉発色顔料は、塗料、印刷インキ、筆記具用インキ、樹脂組成物、レーザーマーキング、人工大理石、化粧料等、様々な用途に使用される。以下にその具体例について述べる。但し、特に記載はしていないが、下記例において本発明による高耐腐食性薄片状金属顔料、および金属光沢干渉発色顔料とは、上述の各種顔料及びそれらを各種処理を施したものも含む意である。
【0048】
−塗料への使用
塗料としては、有機溶剤型塗料及び、NAD系、水性塗料、エマルション塗料、コロイダル塗料、粉体塗料が例示できる。本発明の顔料は、塗料樹脂固形分100重量部に対して1−100重量部配合することができる。1−70重量部が好ましい。特に、1−20重量部が好ましい。なお、本発明における顔料は、分散性向上のため、顔料表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤にて処理することができる。本発明における塗料の樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらは1種、または2種以上の組合せて用いることもできる。
また水性塗料においてはアクリル−メラミン樹脂等による架橋性樹脂を含有するエマルション性樹脂等が挙げられる。
【0049】
配合するもとのとしては、併用顔料、有機顔料、無機顔料、タレ防止剤、粘度調整剤、沈降防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤、フィラー等を含有することができる。併用顔料としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、酸化クロム、亜鉛華、硫化亜鉛、亜鉛粉末、金属粉顔料(たとえば、アルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレーク、ステンレスフレーク、チタンフレーク等)、鉄黒、黄色酸化鉄、べんがら、黄鉛、カーボンブラック、モリブデートオレンジ、紺青、群青、カドミウム系顔料、蛍光顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合型アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、複合酸化物系顔料、グラファイト、雲母(たとえば、白雲母、金雲母、合成雲母、弗素四珪素雲母等)、金属酸化物被覆雲母(たとえば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等)、金属酸化物被覆グラファイト(たとえば、二酸化チタン被覆グラファイト等)、薄片状アルミナ、金属酸化物被覆薄片状アルミナ(たとえば、二酸化チタン被覆薄片状アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、三酸化二鉄被覆薄片状アルミナ、四酸化三鉄被覆薄片状アルミナ、干渉色金属酸化物被覆薄片状アルミナ等)、MIO、金属酸化物被覆MIO、光学効果顔料と称される金属酸化物被覆シリカフレーク、金属酸化物被覆アルミナ、金属酸化物被覆ガラスフレーク、機能性顔料と称されるフォトクロミック顔料、サーモクロミック顔料、ホログラフィック顔料等が挙げられる。これらの顔料等を相互に組合せることにより、新たな色調や発色性が改善される。この塗料は、木材、プラスチック、金属鋼板、ガラス、セラミック、紙、フィルム、シート、LCディスプレイ用反射板の半透明膜等に塗装することができる。塗料の用途としては、自動車用、建築用、船舶用、家電製品用、缶用、産業機器用、路面表示用、プラスチック用、家庭用等が例示される。
【0050】
塗膜構造は、たとえば下地層、中塗り層、本発明の顔料含有層及びクリア層の順、又は、下地層、本発明顔料含有中塗り層及びクリア層の順序等が例示されるが限定されない。
塗膜形成方法としては1コート1ベーク、2コート1べーク、2コート2ベーク、3コート1ベーク、3コート2べーク、3コート3ベーク等が挙げられる。塗装方法は、静電塗装、エアスプレー塗装、エアレス塗装、ロールコータ塗装、浸漬塗装等が挙げられる。
【0051】
−印刷インキへの使用
印刷インキとしては、凸版インキ、平板インキ、凹版インキ、金属板用インキ、放射線硬化型インキ、UVインキ、EBインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、オフセットインキ、グラビアインキ等、およびそれらの水性インキ等が挙げられる。本発明の顔料は、インク中の樹脂固形分100重量部に対して1−100重量部配合することができる。1−70重量部が好ましい。特に、1−20重量部が好ましい。なお、本発明の顔料は、顔料表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤等で処理することが可能である。樹脂成分としては、例えば、ロジンマレイン樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、メラミン、エポキシ樹脂、塩化ビニル、塩化ビニリデン、セルロース樹脂、ビニル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる。これらは1種、または2種以上を組合せて用いることもできる。
【0052】
配合するもとのとしては、併用顔料、有機顔料、無機顔料、助剤として、ワニス、レジューザー、コンパウンド、号外ワニス、ゲル化剤、乾燥促進剤、酸化防止剤、裏移り防止剤、滑剤、活性剤等が挙げられる。更に、タレ防止剤、粘度調整剤、沈降防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤、フィラー等が挙げられる。
【0053】
例えば、併用顔料としては、体質顔料、沈降性硫酸バリウム、沈降性炭酸カルシウム、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボン、白色顔料として酸化チタン、亜鉛華等、黒色顔料としてカーボンブラック、黄色顔料として黄色鉛、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、赤色顔料として、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッドF5R、ローダミンレーキ等、青色顔料としてフタロシアニンブルー、ビクトリアブルーレーキ、紺青等、橙色顔料としは、クロムバーミリオン、ジスアゾオレンジ、緑色顔料として、フタロシアニングリーン等、紫顔料としては、メチルバイオレッドレーキ、ジオキサジンバイオレッド等、その他、顔料として、イソインドリノン系、ベンズイミダゾリン系、縮合アゾ系、キナクドリン系等、複合酸化物系顔料、グラファイト、雲母(たとえば、白雲母、金雲母、合成雲母、弗素四珪素雲母等)、金属酸化物被覆雲母(たとえば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等)、金属酸化物被覆グラファイト(たとえば、二酸化チタン被覆グラファイト等)、薄片状アルミナ、金属酸化物被覆薄片状アルミナ(たとえば、二酸化チタン被覆薄片状アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、三酸化二鉄被覆薄片状アルミナ、四酸化三鉄被覆薄片状アルミナ、干渉色性金属酸化物被覆薄片状アルミナ等)、MIO、金属酸化物被覆MIO、光学効果顔料と称される金属酸化物被覆シリカフレーク、金属酸化物被覆ガラスフレーク、機能性顔料と称されるフォトクロミック顔料、サーモクロミック顔料、ホログラフィック顔料等が挙げられる。これらのインキは、木材、プラスチック、金属鋼板、ガラス、セラミック、紙、ダンボール、フィルム、シート、缶、LCディスプレイ用反射板の半透明膜等に印刷することができる。本発明による顔料はこれらの顔料等と組合せることによりその効果として、新たな色調や機能が見出される。特に、本発明による顔料は遊色効果(視野角による色相の変化)を有するため、有価証券、チケット、旅行券、乗車券等への偽造防止インキとして好適に利用される。
【0054】
また本発明において、印刷用インクに用いる場合は、特に本発明で得られた金属光沢を有する干渉顔料に高配向性処理を施したもの(上述済)が好ましい。このように表面処理された顔料を各種印刷用インクに混合し、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、UV硬化印刷、凸凹版印刷に用いることができる。高配向性処理を施した顔料をインクに用いることは、特に印刷表面の干渉色の発色向上並びにそれに伴って観察角度変化による遊色効果が現れ、偽造防止印刷に好ましい。
【0055】
−プラスチックへの利用
本発明において、プラスチックに組み込む場合は、直接樹脂と、または予めペレットとしてから、それを樹脂と混合し、押し出し成形や、カレンダーリング、ブロウイング等により各種成形体とすることができる。樹脂成分としてはポリオレフィン系の熱可塑性樹脂、エポキシ系、ポリエステル系やポリアミド(ナイロン)系の熱硬化性樹脂の何れも用いることができる。本発明の金属光沢を有する干渉顔料を有効に発色させるためには、例えばプラスチックボトルにおいて多層成形する場合は、外層の樹脂に組み込むことによりボトル外観を有効に効率よく発現することができ、少ない使用量で十分に発色効果を発揮することができる。特に本発明によって得られるものを更に配向処理されたものが、発色性を高める点で好ましい。当然に、本発明に係る金属光沢干渉発色顔料のウエルドライン防止表面処理(例えば、カプセル化処理など)を施したものを用いることができる。本発明によって得られる高耐腐食性薄片状金属顔料、および金属光沢干渉発色顔料は、他の顔料と併用して用いることもできる。その併用する他の顔料としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、酸化クロム、亜鉛華、硫化亜鉛、亜鉛粉末、金属粉顔料、鉄黒、黄色酸化鉄、べんがら、黄鉛、カーボンブラック、モリブデートオレンジ、紺青、群青、カドミウム系顔料、蛍光顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合型アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、複合酸化物系顔料、グラファイト、雲母(たとえば、白雲母、金雲母、合成雲母、弗素四珪素雲母等)、金属酸化物被覆雲母(たとえば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等)、金属酸化物被覆グラファイト(たとえば、二酸化チタン被覆グラファイト等)、薄片状アルミナ、金属酸化物被覆薄片状アルミナ(たとえば、二酸化チタン被覆薄片状アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、三酸化二鉄被覆薄片状アルミナ、四酸化三鉄被覆薄片状アルミナ、干渉色性金属酸化物被覆薄片状アルミナ等)、MIO、金属酸化物被覆MIO、光学効果顔料と称される金属酸化物被覆シリカフレーク、金属酸化物被覆ガラスフレーク、機能性顔料と称されるフォトクロミック顔料、サーモクロミック顔料、ホログラフィック顔料等が挙げられる。
【0056】
−化粧料への使用
化粧料としては、メーキャップ化粧料、毛髪用化粧料、パック化粧料等が挙げられる。例えば、ジェル、口紅、ファンデーション(乳化タイプ、リキッドタイプ、油性タイプ等)、ほお紅、マスカラ、ネイルエナメル、まゆずみ、アイシャドー、アイライナー、毛髪剤等に用いることができる。
配合量としては、1−90重量%が挙げられる。例えば、ファンデーションでは1−50重量%、シャドウでは1−80重量%、口紅では1−40重量%、ネイルエナメルでは、0.1−20重量%等が例示される。
【0057】
配合成分としては、以下が例示される。併用顔料等としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、酸化クロム、亜鉛華、硫化亜鉛、亜鉛粉末、金属粉顔料、鉄黒、黄色酸化鉄、べんがら、黄鉛、カーボンブラック、モリブデートオレンジ、紺青、群青、カドミウム系顔料、蛍光顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合型アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、複合酸化物系顔料、グラファイト、雲母(たとえば、白雲母、金雲母、合成雲母、弗素四珪素雲母等)、金属酸化物被覆雲母(たとえば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等)、金属酸化物被覆グラファイト(たとえば、二酸化チタン被覆グラファイト等)、薄片状アルミナ、金属酸化物被覆薄片状アルミナ(たとえば、二酸化チタン被覆薄片状アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、三酸化二鉄被覆薄片状アルミナ、四酸化三鉄被覆薄片状アルミナ、干渉色性金属酸化物被覆薄片状アルミナ等)、MIO、金属酸化物被覆MIO、光学効果顔料と称される金属酸化物被覆シリカフレーク、金属酸化物被覆ガラスフレーク、機能性顔料と称されるフォトクロミック顔料、サーモクロミック顔料、ホログラフィック顔料、セリサイト、炭酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、酸化クロム、チタン酸コバルト、ガラスビーズ、ナイロンビーズ、シリコーンビーズ、等が例示される。
【0058】
有機顔料としては、赤色2、3、102、104、105、106、201、202、203、204、205、206、207、208、213、214、215、218、219、220、221、223、225、226、227、228、230の(1)、230の(2)、231、232、405の各号、黄色4、5、201、202の1、202の2、203、204、205、401、402、403、404、405、406、407、緑色3、201、202、204、205、401、402の各号、青色1、2、201、202、203、204、205、403、404の各号、橙201、203、204、205、206、、207、401、402、403の各号、褐色201号、紫色201、401の各号、黒色401号等が例示される。
【0059】
天然色素としては、サロールイエロー、カーミン、β−カロチン、ハイビスカス色素、カプサインチン、カルミン酸、ラッカイ酸、グルクミン、リボフラビン、シコニン等が例示される。
また、他の成分として油脂、ろう類、界面活性剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、ビタミン、ホルモン、スクワラン、流動パラフィン、パルミチン酸、ステアリン酸、ミツロウ、ミリスチン酸ミリスチル等炭化水素、アセトン、トルエン、酢酸ブチル、酢酸エステル等有機溶剤、酸化防止剤、防腐剤、多価アルコール、香料等が挙げられる。これらの顔料等と組合せることによりその効果として、新たな色調や機能が見出される。
【0060】
本発明において化粧料に使用する場合は、例えばコンパクトケーキ、クリーム、リップスティックなど何れにも用いることができるが、特にカラーポイントとなるメイクアップ用化粧に用いるのが有効である。当然に本発明に係る金属光沢干渉発色顔料を、前もって表面処理(前述参照)等して用いることができる。
【0061】
−その他の使用
本発明の顔料は、複写機用カラートナー等に配合して使用することができる。例えば、複写機用カラートナーに用いると、遊色効果を発揮して、偽造防止効果を発揮できる。
【実施例】
【0062】
以下に、より詳細に実施態様を挙げるが、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。
実施例1
高耐腐食性薄片状金属顔料(SnO/[SiO/Al(P)])の調製
耐腐食性処理された薄片状金属基質(公開2003−41150号公報〔0061〕記載の実施例4−b)によって得られた[SiO/Al(P)]、比表面積3.01m/g)100gを、2リッターの水に分散させ、懸濁液を得た。攪拌下、75℃まで昇温した。この懸濁液に372mlのSnCl・5HO(濃度50g/l)の水溶液を、32wt%の苛性ソーダの水溶液を用いてpHを1.8に保ちながら滴下した。その後、母液から濾過した生成物を洗浄、および乾燥し、高耐腐食性薄片状金属顔料(SnO/[SiO/Al(P)])を得た。錫水和酸化物の被覆量は、薄片状金属基質(Al)の単位表面積(m)当たり、錫酸化物(SnO)換算で0.036gに相当する量である。
【0063】
比較例1
薄片状金属顔料[SiO/Al(P)]の調製
実施例1において、SnCl・5HOによる錫水和酸化物層の形成を省略した以外は、実施例1と同様にして薄片状金属顔料[SiO/Al(P)]を得た。
【0064】
−アルカリ耐性テスト(発生する水素ガス量の測定)−
それぞれのサンプルの1gを、水酸化ナトリウム(NaOH)でpH11および12に調整された100gの温水中に分散させ、該分散液の温度を75℃に一定に保った。分散液により発生する水素ガス(H)の量は、一定時間後に測定された。測定は60分間行われた。結果を図1に示す。
図1は、(SnO/[SiO/Al(P)])を用いたときの、発生する水素ガスを示す。本発明の高耐腐食性薄片状金属顔料(SnO/[SiO/Al(P)])は、pH11の溶液で水素ガスをほとんど発生しなかった。SnO層の省略された[SiO/Al(P)]に対しては、pH11の溶液で、より多量の水素ガスが発生した。
しかしながら、pH12の溶液では、実施例および比較例の双方で、短い時間に多量の水素ガスが発生したが、(SnO/[SiO/Al(P)])の方が、[SiO/Al(P)]よりも低い水素ガス発生量を示した。(SnO/[SiO/Al(P)])(実施例1)の方が、SnO層の省略された[SiO/Al(P)]よりも高いアルカリ耐性を示すことが実証された。
【0065】
実施例2 赤色系着色を有する金属光沢干渉発色顔料の調製 (Fe/SnO/[SiO/Al(P)])
実施例1によって得られた高耐腐食性薄片状金属顔料(SnO/[SiO/Al(P)])50gを1リッターの水に分散させ、懸濁液を得た。攪拌下、75℃まで昇温した。その後、塩酸/苛性ソーダ水溶液を用いてpHを3.0に調整した。さらに、1816gのFeCl (III)(濃度30g/リッター)の水溶液を、同時に苛性ソーダ水溶液を用いて、pHを3.0に保ちながら所望の色相に達するまで滴下した。さらに、洗浄/ろ別、乾燥、350℃で30分焼成し、赤色系着色を有する金属光沢干渉発色顔料を得た。
【0066】
実施例3 金属光沢干渉発色顔料の調製 (TiO/SnO/[SiO/Al(P)])
実施例1によって得られた高耐腐食性薄片状金属顔料(SnO/[SiO/Al(P)])50gを1リッターの水に分散させ、懸濁液を得た。攪拌下、75℃まで昇温した。その後、塩酸/苛性ソーダ水溶液を用いてpHを1.8に調整した。次いで、得られた懸濁液に、四塩化チタン溶液(TiCl4、濃度448g/リッター)を、32重量%の苛性ソーダ水溶液を用いて、pHを1.8に保ちながら所望の色相に達するまで滴下して、色相緑色で反応を終了させた。得られた懸濁液から固形分を濾過し、水で洗い、そして乾燥、焼成(350℃で30分)させ、緑色系の金属光沢干渉発色顔料(TiO/SnO/[SiO/Al(P)])を得た。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の高耐腐食性金属顔料は、環境保全型の広範囲のpH領域に渡り水系塗料に幅広く用いることができる。さらに従来金属基質には適さないものとされた湿式法による金属水和酸化物層の被覆をも可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】SnOで被覆された耐腐食性アルミニウムフレークのアルカリ−耐性テストの結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状金属基質表面に燐酸化合物および/またはホウ酸化合物によって処理した層、および最外層に錫水和酸化物を含む層を有する高耐腐食性薄片状金属顔料。
【請求項2】
薄片状金属基質表面を燐酸化合物および/またはホウ酸化合物によって処理した層、珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、および錫からなる群から選択される1種または2種以上の金属からなる金属水和酸化物層、および錫水和酸化物を含む層を順次形成せしめた、請求項1に記載の高耐腐食性薄片状金属顔料。
【請求項3】
薄片状金属基質が、光輝感を有するメタリック顔料であることを特徴とする、請求項1または2に記載の高耐腐食性薄片状金属顔料。
【請求項4】
光輝感を有するメタリック顔料が、アルミニウムフレーク、チタンフレーク、金フレーク、銀フレーク、銅−亜鉛合金フレーク、ニッケル系合金フレーク、ステンレスフレーク、ブロンズフレークのいずれかであることを特徴とする、請求項3に記載の高耐腐食性薄片状金属顔料。
【請求項5】
金属水和酸化物が珪素水和酸化物である、請求項2に記載の高耐腐食性薄片状金属顔料。
【請求項6】
燐酸化合物および/またはホウ酸化合物の使用量が、薄片状金属基質の単位表面積(m)当たり、Pおよび/またはB換算で0.0001g〜0.1gに相当する量であり、金属水和酸化物被覆層形成における金属化合物の使用量が、薄片状金属基質の単位表面積(m)当たり、金属酸化物換算で0.01g〜1.0gに相当する量であり、錫水和酸化物被覆層形成における錫化合物の使用量が、薄片状金属基質の単位表面積(m)当たり、錫酸化物(SnO)換算で0.0008g〜1.0gに相当する量であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の高耐腐食性薄片状金属顔料。
【請求項7】
金属水和酸化物層で被覆された薄片状金属基質を水に分散(懸濁)させ、その分散(懸濁)液に錫塩水溶液と塩基性水溶液とをpHを一定に保ちながら同時に添加して前記薄片状金属基質表面に錫水和酸化物層を形成することを含む、高耐腐食性薄片状金属顔料の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の高耐腐食性薄片状金属顔料の表面に、さらに1層または2層以上からなる第二の金属水和酸化物層を被覆してなることを特徴とする、金属光沢干渉発色顔料。
【請求項9】
第二の金属水和酸化物層が湿式法、化学蒸着法または物理蒸着法によって得られたものであることを特徴とする、請求項8に記載の金属光沢干渉発色顔料。
【請求項10】
第二の金属水和酸化物層が、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、錫、亜鉛、鉄、クロム、コバルト、珪素、ホウ素からなる群から選択される1種または2種以上の金属の金属水和酸化物を1種または2種以上含有する被覆層であることを特徴とする、請求項8または9のいずれかに記載の金属光沢干渉発色顔料。
【請求項11】
第二の金属水和酸化物層が、相互に異種の金属水和酸化物層を多層積層したものであることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の金属光沢干渉発色顔料。
【請求項12】
第二の金属水和酸化物層が、高屈折率金属水和酸化物層と低屈折率金属水和酸化物層とを交互に多層積層してなることを特徴とする、請求項11に記載の金属光沢干渉発色顔料。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれかに記載の高耐腐食性薄片状金属顔料、および/または請求項8〜12のいずれかに記載の金属光沢干渉発色顔料の塗料、粉体塗装および塗膜、インク、偽造防止印刷および印刷物、プラスチック、ペレットおよびプラスチック成形物、化粧料への使用。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれかに記載の高耐腐食性薄片状金属顔料、および/または請求項8〜12のいずれかに記載の金属光沢干渉発色顔料と、有機顔料、無機顔料、光学効果顔料、フィラー、機能性顔料からなる群から選択される1種または2種以上を含む組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−199920(P2006−199920A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199266(P2005−199266)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000114536)メルク株式会社 (4)
【Fターム(参考)】