説明

高解像度フレキソ印刷版の製造方法及びこの方法で得られたフレキソ印刷版

【課題】 従来の製版方法では、製版時に版表面に存在する酸素を除去する構造又は製版工程を有していないことから、露光時の版表面に存在する酸素により感光性樹脂層の効果反応が阻害され、高解像度のレリーフが形成されたフレキソ印刷版を得ることができない。
【解決手段】赤外レーザー融除層にマスクを形成後、十分な酸素遮断を行うことにより、解像度に優れたレリーフが形成された高解像度フレキソ印刷版を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷版製造の露光時において酸素を遮断することにより得られる高解像度フレキソ印刷版の製造方法及びこの方法で得られたフレキソ印刷版に関する。
この明細書において、高解像度フレキソ印刷版とは、レリーフのドット部分が平坦に形成されることにより、少なくともイメージの再現率が70%以上であり、さらに酸素遮断層を設けずに製版された従来のフレキソ印刷版と比較してイメージの再現率が10%以上改善したものをいう。ここでイメージの再現率とは、マスク形成層に描画されたイメージサイズに対する、製版されたフレキソ樹脂版から実際に得られるレリーフサイズの比を百分率で表したものをいう。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷版は、段ボール、袋物、合成樹脂フィルムなどの軟質な印刷物への凸版印刷によく用いられている。この製版方法としては、ネガフィルムを用いて製版する方法及びデジタルデータから直接製版する方法(CTP法)が存在する。デジタルデータから直接製版する方法は、デジタルデータ化された画像データをコンピューター上で修正することができる。従って、直接製版する方法は、これまでのネガフィルを用いる製版方法とは異なり再度ネガフィルムを作る必要がないという利点を有し、広く用いられている。
【0003】
この直接製版法としては、フレキソ樹脂版の支持体層上の感光性層の上にマスク形成層を設け、製版する方法が存在する。しかしこの方法は、製版時に版表面に存在する酸素を除去する構造を有していないことから、露光時の版表面に存在する酸素により感光性層の硬化反応が阻害される。従って、感光性層の硬化が不十分となりフレキソ印刷版の解像度が低下する欠点を有していた。
この問題を解決するために、フレキソ樹脂版として支持体層、感光性層、酸素から感光性層を保護するバリア層及び非赤外線に対し実質的に不透明である赤外レーザ融除層を順次積層したフレキソ樹脂版が提案されている。このフレキソ樹脂版は、先ず赤外線レーザにより赤外レーザ融除層を融除することによりマスクを形成し、次いでバリア層を介して感光性層を露光し、更にバリア層で酸素の硬化阻害を排しながら感光し、印版を製造する(特許文献1)。しかしながら、前述のフレキソ樹脂版を用いたフレキソ印刷版の製造方法では、露光時、酸素遮断を完全にするためにバリア層を厚くすると、露光時にバリア層内で露光光線のハレーションが発生し、感光性層の硬化パターンに悪影響を与え、解像度が低下することが多々存在した。従って、既開示技術は、バリア層の厚みが制限されることにより酸素遮断が十分になされず、結果、感光性層の酸素による硬化反応阻害が発生し、フレキソ印刷版としては解像度が十分に上がらないという問題点が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第94/03838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のフレキソ印刷版及びその製造方法の欠点を克服するために、感光性層上にマスクを形成後、十分な酸素遮断を行う高解像度フレキソ印刷版の製造方法及びこの方法で得られたフレキソ印刷版を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、少なくとも支持体層、感光性層、マスク形成層を有するフレキソ樹脂版を用いて、感光性層上にマスクを形成する工程と、前記マスクと前記感光性層上に酸素遮断層を形成する工程と、非赤外線により前記フレキソ樹脂版を全面露光する工程と、前記酸素遮断層、マスク、マスクにより保護された未硬化の感光性層を除去して得られたフレキソ印刷版のドットの先端部分が平坦に形成されることを特徴とする高解像度フレキソ印刷版の製造方法に関する。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記マスクと前記感光性層上に酸素遮断層を形成する工程が、非赤外線を透過し、現像の際に除去可能な酸素遮断層の組成物を、前記マスクと前記感光性層上に直接塗布する工程であることを特徴とする請求項1に記載の高解像度フレキソ印刷版の製造方法に関する。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記マスクと前記感光性層上に酸素遮断層を形成する工程が、非赤外線を透過し、現像の際に除去可能な酸素遮断フィルムを、前記マスクと前記感光性層上に被覆する工程であることを特徴とする請求項1に記載の高解像度フレキソ印刷版の製造方法に関する。
【0009】
請求項4に係る発明は、マスクを介して全面露光され、さらに現像されることによりレリーフ画像が形成されるフレキソ印刷版であって、全面露光される前に、マスク周囲の酸素を遮断することにより、フレキソ印刷版のドットの先端部分が平坦に形成されることを特徴とする高解像度フレキソ印刷版に関する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、酸素を遮断する方法としてマスク周囲に存在する酸素を除去する段階を備えることにより、得られたフレキソ印刷版のドットの先端部分が平坦に形成されることを特徴とする高解像度フレキソ印刷版を製造する方法を構築することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、酸素を遮断する方法として非赤外線に対して透明であり現像の際に除去可能な酸素遮断層を、直接塗布により設ける段階を備えることから、酸素による硬化阻害の影響を最大限抑えることができ、高解像度のフレキソ印刷版を製造する方法を構築することができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、酸素を遮断する方法として非赤外線に対して透明であり現像段階で除去可能な酸素遮断フィルムにより被覆し、容易に酸素を遮断することにより、酸素による硬化阻害の影響を最大限抑えることができ、高解像度のフレキソ印刷版を製造する方法を構築することができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、フレキソ樹脂版が全面露光される前に、マスク周囲の酸素が遮断されることから、本発明に係るフレキソ印刷版は、酸素により感光性樹脂層の硬化反応が阻害されることがないため、フレキソ印刷版のドットの先端部分が平坦に形成される高解像度フレキソ印刷版となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】フレキソ印刷版の製造工程を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る酸素遮断層付きフレキソ印刷版のハーフトーンドット写真である。
【図3】本発明の比較例に係る酸素遮断層無しフレキソ印刷版のハーフトーンドット写真である。
【図4】本発明の実施例に係る酸素遮断層無しフレキソ印刷版のハーフトーンドット3D画像である。
【図5】本発明の比較例に係る酸素遮断層付きフレキソ印刷版のハーフトーンドット3D画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るフレキソ印刷版及びその製造方法について詳述する。
【0016】
図1は、本発明に係るフレキソ印刷版の製造工程を示す。
図においてAは、本発明に係る高解像度フレキソ印刷版の製造に使用するフレキソ樹脂版である。フレキソ樹脂版Aは、支持体層1、非赤外線により硬化する感光性層2と、化学線に不透明であり赤外レーザ光に露光した際に融除しうるマスク形成層3を有する。
この発明において、支持体層1は、印刷条件に必要とされる機械的強度を満たす通常のフレキソ印刷版に用いられるものであればよい。感光性層2は、非赤外線に感応する開始剤を含有するフレキソ印刷に適する感光性樹脂組成物であり、非赤外線で硬化するものであればよい。また、マスク形成層3は、赤外レーザ光で露光することにより融除可能である。
この発明で使用するフレキソ樹脂版Aは、支持体層1、感光性層2およびマスク形成層3により構成されているが、上記構成に限定されるものではなく、フレキソ印刷に適するものであればよい。
【0017】
本発明に係る製造方法の第1の段階は、先ずフレキソ樹脂版Aのマスク形成層3を赤外線レーザで融除することによりマスクを形成する。このマスクは、非赤外線には不透明であることから、非赤外線により全面露光する際に、マスクにより感光性層2を非赤外線による感光から保護する役割を担う。この際に用いられる赤外レーザは、様々な種類の赤外レーザを使用することができる。
【0018】
本発明に係る製造方法の第2段階は、このマスク周囲の酸素による感光性層2の硬化阻害を防止するために、マスク形成後、マスクと感光性層2上に酸素遮断層4を形成させる。この酸素遮断層4は、マスク及び感光性層2上の酸素を遮断し、露光時の酸素による影響を最低限に抑え、酸素阻害のない感光性層2の硬化反応を導く。
【0019】
本発明に用いられる酸素遮断層4は、酸素透過性が低く、非赤外線等の露光光線を透過するものであれば、特に限定されない。酸素遮断層4を設ける方法としては、フレキソ樹脂版Aのマスク形成層3上に溶液キャスティングにより直接ポリマー層を塗布する方法、フレキソ樹脂版Aのマスク形成層3上にポリマー層を有するフィルムをラミネートにより被覆する方法及びフレキソ樹脂版Aのマスク形成層3上に高粘度で低揮発性である液体樹脂を塗布する方法が挙げられるが、これら方法に限定されるものではなく、フレキソ樹脂版Aのマスク形成層3上に酸素遮断層4を設けられる方法であればよい。しかし、好適な方法としては、ハンドリング等を考慮した場合、直接ポリマー層を塗布する方法及びポリマー層を有するフィルムをラミネートする方法により酸素遮断層4を設ける方法が挙げられる。
【0020】
この発明においては、マスク形成層3上に酸素遮断層4を塗布する方法として直接塗布法が望ましい。
直接塗布法としては、酸素遮断層4組成物をスピンコート、バーコート、ロールコート及びスプレーコート等により塗布する方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
直接塗布法以外の方法としては、酸素遮断層4組成物を塗設したフィルムを作製し、ラミネーション等の方法により、マスク形成後、マスク及び感光性層2上に酸素遮断層4を転写する方法が挙げられる。この方法に使用される酸素遮断層4組成物は、非赤外線に透明であり現像の際に除去可能であることを必要とする。
マスク形成後、転写によりマスク及び感光性層2上に酸素遮断層4を設ける場合は、酸素遮断層4の汚染の防止を考えると、保護膜を設けてもよい。これにより、酸素遮断層4を設ける時に保護膜を剥がし、ラミネータによりマスク及び感光性層2上に容易に酸素遮断層4を設けることができる。また、保護層を設けることにより使用時まで保管することができる。
【0021】
本発明に係る酸素遮断層4の材料としては、非赤外線に対して透明であり、ガスバリア性があり、さらに感光性層2組成物と化学的に結合しないものが望ましい。また、酸素遮断層4は、非赤外線の透過性があれば使用できるが、特に感光性層2が感光する波長光を、90%以上透過させる材料が望ましい。好適な酸素遮断層4の材料としては、ポリアミド系ポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ヒドロキシアルキルセルロース、エチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレン、ポリアクリル樹脂 、ポリカーボネート、ポリブタジエン等が挙げられるが、これら材料に限定されるものではない。さらにこれらのポリマーのうち2種以上を混合して使用することもできる。特に好ましくは、ポリアミド系ポリマー、ポリビニルブチラール(PVB)、ヒドロキシアルキルセルロース、エチルセルロースの単独又は混合して使用するのがよい。ポリアミド系ポリマー及びポリビニルブチラールの重合度は、酸素遮断層4の塗布方法に応じて適時選択すればよいが、好ましくは重合度3000〜500であり、さらに好ましくは、重合度2000〜1000である。
【0022】
酸素遮断層4は、露光時にのみ必要であるが、酸素による感光性層2の硬化阻害を防止することを考えると、酸素遮断層4の厚さは厚く形成するほどよい。しかしながら酸素遮断層4の厚みが厚くなると、非赤外線の透過性が悪くなり、露光時間を長くする必要ができること、及び酸素遮断層4内での露光光線のハレーションが発生し、感光性層2の硬化パターンの解像度を低下させることが問題となる。
この発明において、酸素遮断層4の厚みは、ある一定の厚さに抑える必要がある。本発明に係る酸素遮断層4の厚みとしては、1.0〜10.0μmが好ましく、さらに好ましくは、2.0〜5.0μmである。一般的なバリア層と比較すると本発明に係る酸素遮断層4は、倍以上の厚みを有することができる。これにより酸素遮断層4中での露光光線のハレーションを防止しながら酸素による感光性層2の硬化阻害を完全に抑えることができる。この酸素遮断層4は、露光後には除去される。従って、本発明の酸素遮断層4は、マスク及び感光性層2上に設けられていればいかなる方法によって設けてもよい。
【0023】
本発明に係る製造方法の第3段階では、酸素遮断層4を設けたフレキソ樹脂版Aを非赤外線により全面露光する。感光性層2は、非赤外線に対して感受性でありその露光により硬化する。従って、マスクにより保護されていない部分の感光性層2は硬化することができる。しかしながらマスクより保護を受ける部分は、非赤外線を通さないため、硬化することはない。
【0024】
本発明に係る製造方法の第4段階では、全面露光後のフレキソ樹脂版Aの洗浄段階である。洗浄段階では、酸素遮断層4及びマスクだけでなくマスクにより保護された未硬化の感光性層2も除去されることになる。従って、図1に示すようなレリーフが支持体層1上に形成され、本発明に係る高解像度のフレキソ印刷版が製造される。
【0025】
本発明に係るフレキソ印刷版は、ドットの先端部分が平坦に形成されるとともにイメージの再現率が従来のものと比べて10%以上改善した高解像度のフレキソ印刷版となる。
【実施例】
【0026】
以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。以下に酸素遮断層の作製条件の1例を示す。
【0027】
実施例1
ポリアミド樹脂TXS−223(富士化成工業株式会社製)15gを溶剤85g(キシレン:n−ブタノール=1:1)に溶解させ、15%溶液を調整した。次に、赤外アブレーションを用いてDupont社製フレキソ樹脂版Cyrel45DPI(CTP用、1.14mm)の感光性層上にマスクを形成した。さらに、オートフィルムコータ−(テスター産業株式会社製)により、マスク及び感光性層上に、上記調整した15%ポリアミド溶液を塗布して酸素遮断層を形成した。ポリアミド溶液を塗布したフレキソ樹脂版を100℃の恒温槽に5分間入れ、溶剤を除去し、得られた酸素遮断層付きCTP用フレキソ樹脂版の温度が常温に下がるまで放置した。
上記得られた酸素遮断層付きCTP用フレキソ樹脂版を以下の条件で製版し、本発明に係る実施例のフレキソ印刷版を作製した。また比較例として、酸素遮断層無しCTP用フレキソ樹脂版を以下の条件で製版し、フレキソ印刷版を作製した。
【0028】
(製版条件)
使用露光機 :日本電子精機株式会社製A2サイズ露光機
光源ランプ :PHILIPS−10R40W
バック露光 :10秒
メイン露光 :10分
洗浄液 :ルナソルブII(25.2℃)
洗浄機 :ロータリー洗浄機(洗浄時間:3分)
乾燥時間 :1時間(60℃熱風乾燥機)
表面処理時間 :10分
後露光時間 :10分
【0029】
製版後の酸素遮断層付きフレキソ印刷版と酸素遮断層無しフレキソ印刷版それぞれの100Line2%ハーフトーンドット部分を、マイクロスコープ(キーエンス社製)を用いて観察した写真を図2及び図3に示す。また、マイクロスコープの機能を用いて、観察したハーフトーンドット部分の3D合成画像を図4及び図5に示す。
図2及び図3を比較すると、図3に示す比較例の酸素遮断層無しフレキソ印刷版のドット部分の先端は先細りしているが、図2に示す本発明に係る酸素遮断層付フレキソ印刷版のドット部分の先端は明らかに平坦になっていることが分かる。図3の酸素遮断層無しフレキソ印刷版のドット部分の先端が、先細りしている原因は、露光時に酸素による感光性層の硬化阻害が発生しているためと考えられる。
更に図4及び図5を比較すると、明らかに図5に示す比較例の酸素遮断層無しフレキソ印刷版のドット部分の先端が、丸くなっているだけでなく、ドット部分全体が丸くなっていることが見てとれる。これに対し図4に示す本発明に係る酸素遮断層付フレキソ印刷版のドット部分の先端は、平らに形成され、さらにドット部分全体もシャープに立ち上がっていることが示されている。
また、酸素遮断層無しフレキソ印刷版のドット部分の先端直径は、0.03mm〜0.04mmであり、酸素遮断層付フレキソ印刷版のドット部分の先端直径は0.07〜0.08mmとなっている。
【0030】
従って、先に赤外アブレーションを用いてカーボン層(マスク形成層)にイメージを描画したCTP用フレキソ樹脂版のカーボン層上に酸素遮断効果のあるポリマー層を設けることで、従来のCTP用フレキソ樹脂版に見られる露光時の感光性層の硬化阻害によるドット先端部の先細りを防止し、高解像度フレキソ印刷版を製造できることが示された。
【0031】
実施例2
ポリアミド樹脂TXS−223(富士化成工業株式会社製)15gを溶剤85g(キシレン:n−ブタノール=1:1)に溶解させ、15%溶液を調整した。次に、赤外アブレーションを用いてマスク形成層にイメージを描画したフレキソ樹脂版FAH114D(Fint社製、CTP用、1.14mm)のマスク形成層上に、オートフィルムコータ−(テスター産業株式会社製)を用いて、上記調整した15%ポリアミド溶液を塗布して酸素遮断層を形成した。ポリアミド溶液を塗布したフレキソ樹脂版を80℃の恒温槽に5分間入れ、溶剤を除去し、得られた酸素遮断層付きCTP用フレキソ樹脂版の温度が常温に下がるまで放置した。
上記得られた酸素遮断層付きCTP用フレキソ樹脂版を以下の条件で製版し、本発明に係る実施例のフレキソ印刷版を作製した。また比較例として、酸素遮断層無しCTP用フレキソ樹脂版を以下の条件で製版し、フレキソ印刷版を作製した。
【0032】
(製版条件)
使用露光機 :日本電子精機株式会社製A2サイズ露光機
光源ランプ :PHILIPS−10R40W
バック露光 :10秒
メイン露光 :10分
洗浄液 :ルナソルブII(28.6℃)
洗浄機 :ロータリー洗浄機(洗浄時間:3分)
乾燥時間 :1時間(60℃熱風乾燥機)
表面処理時間 :10分
後露光時間 :10分
【0033】
製版後の酸素遮断層付きフレキソ印刷版と酸素遮断層無しフレキソ印刷版それぞれのレリーフをマイクロスコープを用いて観察測定し、マスク形成層上に描画されたイメージサイズと実際に得られたレリーフサイズを比較した。
赤外レーザアブレーションによりCTP用フレキソ樹脂版のマスク形成層に描画されたイメージサイズと、酸素遮断層付フレキソ樹脂版FAH114Dを生産して実際に得られた各種レリーフのサイズを比較した。測定結果を表1.に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
赤外レーザアブレーションによりCTP用フレキソ樹脂版のマスク形成層に描画されたイメージサイズと、酸素遮断層無しのフレキソ樹脂版FAH114Dを生産して実際に得られた各種レリーフのサイズを比較した。測定結果を表2.に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
以上の結果から、マスク形成層に描画された紫外線透過部分のイメージサイズと実際の製版で得られたレリーフのサイズの差は、酸素遮断層を設けたフレキソ印刷版の方が明らかに小さく、酸素遮断層を設けたフレキソ印刷版の方が明らかにイメージサイズの再現率が高いことが示されている。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、高解像度のフレキソ印刷版及びその製造方法に関するものであり、本発明に係るフレキソ印刷板及びその製造方法は、印刷業界において広く利用され得るものである。
【符号の説明】
【0039】
1・・・支持体層
2・・・感光性層
3・・・マスク形成層
4・・・酸素遮断層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体層、感光性層、マスク形成層を有するフレキソ樹脂版を用いて、感光性層上にマスクを形成する工程と、
前記マスクと前記感光性層上に酸素遮断層を形成する工程と、
非赤外線により前記フレキソ樹脂版を全面露光する工程と、
前記酸素遮断層、マスク、マスクにより保護された未硬化の感光性層を除去して得られたフレキソ印刷版のドットの先端部分が平坦に形成されることを特徴とする高解像度フレキソ印刷版の製造方法。
【請求項2】
前記マスクと前記感光性層上に酸素遮断層を形成する工程が、非赤外線を透過し、現像の際に除去可能な酸素遮断層の組成物を、前記マスクと前記感光性層上に直接塗布する工程であることを特徴とする請求項1に記載の高解像度フレキソ印刷版の製造方法。
【請求項3】
前記マスクと前記感光性層上に酸素遮断層を形成する工程が、非赤外線を透過し、現像の際に除去可能な酸素遮断フィルムを、前記マスクと前記感光性層上に被覆する工程であることを特徴とする請求項1に記載の高解像度フレキソ印刷版の製造方法。
【請求項4】
マスクを介して全面露光され、さらに現像されることによりレリーフ画像が形成されるフレキソ印刷版であって、
全面露光される前に、マスク周囲の酸素を遮断することにより、
フレキソ印刷版のドットの先端部分が平坦に形成されることを特徴とする高解像度フレキソ印刷版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−107654(P2011−107654A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265601(P2009−265601)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(593008427)日本電子精機株式会社 (12)
【Fターム(参考)】