説明

高誘電率および高破壊強度を有するカーボンブラック充填ポリウレタン

本発明は、高誘電率および高破断強度に優れ、DMC触媒作用によって製造されたポリアルキレンオキシドから形成される、カーボンブラックで充填されたポリウレタンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高誘電率および高破断強度を特徴とし、ポリアルキレンオキシドから合成された、好適には軟質のカーボンブラック充填ポリウレタンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンデンサ中の誘電材料として有用である、高誘電率および高絶縁破壊強度を有するポリウレタン化合物を提供するという課題が存在した。高モジュラスを有する、カーボンブラックで充填された導電性ポリウレタンは、Novakによって、European Polymer Journal、2004年、40 (7)、第1417〜1422頁に記載されている。しかしながら、該導電性化合物は、誘電材料としての使用のために除外される。
【0003】
カーボンブラックおよびポリウレタン水性分散体から製造される化合物は、種々の引用文献に記載されている:Material Letters、2004年、58(27−28)、第3606〜3609頁;Chinese Chemical Letters、2004年、15(8)、第1001〜1004頁;Sensors and Actuators, B:Chemical、2005年、B105(2)、第187〜193頁。
【0004】
既知のポリウレタン混合物は0.7%の低カーボンブラック含量によりパーコレーション効果を既に示し、伝導性は、10%までおよびより多くのカーボンブラックの広い範囲にわたって増加し、気体および溶媒蒸気の作用によって著しく影響を受ける。該挙動は、ガスセンサーとしての使用に適しているが、誘電材料としてほとんど適していない。
【0005】
ポリオール成分としてヒマシ油を含有する、カーボンブラックで充填されたポリウレタンが、AltafimによってMaterials Research、2003年、6 (2)、第187〜191頁に記載されている。しかしながら、このような化合物は、ヒマシ油のOH当量が350g/当量であるので、非常に高いモジュラスを有する。
【0006】
US2006096694−Aには、含有ポリエステルポリオールに起因する、高モジュラスであるが高誘電率を有する非導電性結合剤が記載されている。しかしながら、低モジュラスを有する化合物は、いくつかの特定の用途に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/096694号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Novak、European Polymer Journal、2004年、40(7)、第1417〜1422頁
【非特許文献2】Material Letters、2004年、58(27−28)、第3606〜3609頁
【非特許文献3】Chinese Chemical Letters、2004年、15(8)、第1001〜1004頁
【非特許文献4】Sensors and Actuators,B:Chemical、2005年、B105(2)、第187〜193頁
【非特許文献5】Altafim、Materials Research、2003年、6 (2)、第187〜191頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
DMC(複金属シアン化物) 触媒作用によって製造されたポリエーテルを構造単位として含有する、カーボンブラックで充填されたポリウレタンは、高誘電率および絶縁破壊強度を特徴とすることを見出した。所定の誘電率のための新規な化合物の破断強度は、ポリウレタンがアルカリ金属水酸化物による触媒作用によって製造されたポリアルキレンオキシドを含有しているか、またはポリTHFを含有する比較可能な化合物から得られない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、少なくとも、
A)a)50〜100重量%の、DMC触媒作用によって製造されたポリアルキレンオキシド、特にポリプロピレンオキシド、および
b)0〜50重量%の、触媒残留物を含有しないポリオール、特に、蒸留によってまたは再結晶化によって精製された、または酸素含有複素環化合物の開環重合によって製造されたものでないポリオール
から構成されるポリオール成分が組み込まれた、ポリエーテルウレタン99.9〜70重量%、および
B)カーボンブラック0.1〜30重量%
からなる、カーボンブラック充填ポリウレタン組成物を提供する。
【0011】
新規なポリウレタンに用いるポリオール成分a)の例は、WO97/29146、EP−A700949およびEP−A−761708に記載されたポリオールである。これらは、85〜100%、好適には100%のプロピレンオキシドを用い、残りがブチレンオキシド、ヘキセンオキシド、ビニルオキシラン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、エチルヘキシルグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、エチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテルまたはクレシルグリシジルエーテルからなっていてもよい、エポキシドの開環重合によって得ることができるポリアルキレンオキシドである。複金属シアン化物(DMC)錯体、例えばヘキサシアノコバルト酸亜鉛を触媒として用いる。ポリウレタン中におけるこのようなポリアルキレンオキシドの有利な使用は、US6825376およびUS2004067315に既に記載されているが、所望の用途のためのイソシアネートとの反応においてこのようなポリオールの高い選択性は重要であった。
【0012】
本発明により用いるポリウレタン混合物中に組み込まれるポリオール成分a)の分子量(数平均分子量Mn)は、好適には1000〜14000g/モル、特に好適には1500〜8500g/モルである。官能価は好適には2〜6、特に好適には2である。
【0013】
ポリオール成分b)として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、TMP、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリトール、シクロヘキサンジメタノール、ブチレングリコール、ヒマシ油、水素化ヒマシ油、ダイマージオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ヒドロキシ官能性オリゴブタジエン、水素化ヒドロキシ官能性オリゴブタジエン、グリセロールまたはTMPモノアリルエーテルを好適に用いる。
【0014】
ポリウレタンA)は、ポリオール成分a)および必要に応じてb)と、1.0〜1.1当量のポリイソシアネートとを、15℃〜120℃、好適には18℃〜80℃の温度で、NCO−OH反応のための触媒、例えば錫化合物またはアミンなどを存在させてまたは存在させずに反応させることによって好適に製造される。成分a)、必要に応じてb)、ポリイソシアネートおよびB)の混合は、特に、高剪断エネルギーを与えることができる適当な混合装置中において、例えばSpeedmixer中において、必要に応じて超音波のさらなる作用によって実施する。
【0015】
ポリイソシアネートとして、以下のリストに由来するものを好適に用いる:HDI、トリメチル−HDI、IPDI、ドデカヒドロ−MDI、ノルボルナンジイソシアネート、ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、ビスイソシアナトメチルベンゼン、TMXDI、2,4−TDIもしくは2,6−TDIまたはこれらの混合物、2,2−MDI、2,4−MDIもしくは4,4−MDIまたはこれらの混合物、3個の核を含有するまたはオリゴMDIを含有するMDI型(脂肪族イソシアネートが好適である)、4環もしくは6環のヘテロ環式化合物を含有する上記のジイソシアネートのカルボジイミドまたはダイマーもしくはトリマー、低分子量ポリオール、例えばTMP、ジエチレングリコールまたはジプロピレングリコールなどを有するその付加物、および上記の成分a)に相当するポリオールの、そのウレタンプレポリマーまたはアロファネートプレポリマー。特に好適には、好適な実施態様において、上記の成分a)に相当するポリアルキレンオキシドをポリオールとして用いる、US2005222365に記載のアロファネートプレポリマーである。特に、アロファネート反応が好適にはオクタン酸亜鉛により触媒される、Mn=2000の範囲の分子量のDMC触媒作用によって製造されたポリプロピレンオキシドおよびHDIのアロファネートプロポリマーは、好適に用いることができ、理想的な式I:
【化1】

〔式中、nは30〜38の数である〕
で示される。
【0016】
成分B)のカーボンブラックは、例えばDegussa AGから市販されているような、特に微細に分割されたカーボンブラックの形態である。大きくとも1μm、好適には大きくとも100nm、特に好適には大きくとも50nmの平均粒度を有するカーボンブラックの形態を通常用いる。カーボンブラックは、好適には同時に、大きなBET表面を有すべきであり、該BET表面は特に250m/gより大きく、好適には500m/gより大きく、特に好適には900m/gより大きい。
【0017】
本発明によるカーボンブラック充填ポリウレタンは、機械エネルギーを電気エネルギーに、および電気エネルギーを機械エネルギーに変換するための装置において誘電性材料として用いることができる。このようなエネルギー変換器は、例えばUS−A−6343129に記載されている。
【実施例】
【0018】
比較例1(比較例)全ての液体燃料を3段法によりアルゴン下で慎重に脱気し、カーボンブラックを125μmスクリーンによりふるいにかけた。10gのterathane 650(INVISTA GmbH、D−65795 Hatterheim、分子量Mn=650のポリTHF)を60mlディスポーサブル混合容器(APM−Technika AG、Order No.1033152)中で0.596gのカーボンブラック(Ketjenblack EC 300 J、Akzo Nobel AGによる製造)と一緒に計量し、Speedmixer(APM−Technika AG製、CH−9435 Heerbrugg;sales/marketing D:登録番号票;DAC 150 FVZ型)中において3分間3000rpmで混合して均質のペーストを形成した。次いで、0.005gのジブチル錫ジラウレート(Metacure(登録商標) T−12、Air Products and Chemicals, Inc.)および6.06gのイソシアネートN3300(BayermaterialScience AG製の生成物)を該ペースト中に計量投入し、1分間3000rpmでSpeedmixer中において混合する。該反応ペーストをガラス板上に注ぎ、ドクターナイフで500μmの湿潤層に延ばして、固形分2%を有する均質なフィルムを形成する。次いで該フィルムを16時間80℃で加熱する。
熱処理フィルムの特性を以下の表1に示す。
【0019】
実施例2(本発明による)全ての液体燃料を3段法によりアルゴン下で慎重に脱気し、カーボンブラックを125μmスクリーンによりふるいにかけた。10gのArcol PPG 2000(BMS AG製の生成物、平均分子量Mn=2000のDMC触媒によるポリプロピレンオキシド)を60mlディスポーサブル混合容器中で0.636gのカーボンブラック(Ketjenblack EC 300 J、Akzo Nobel AGによる製造)と一緒に計量し、Speedmixer中において3分間3000rpmで混合した。次いで、0.005gのジブチル錫ジラウレートおよび7.13gのイソシアネート Desmodur XP 2599(BayermaterialScience AG製の生成物、式Iのアロファネートプレポリマー)を該ペースト中に計量投入し、1分間3000rpmでSpeedmixer中において混合する。該反応ペーストをガラス板上に注ぎ、ドクターナイフで500μmの湿潤層に延ばして、固形分2%を有する均質なフィルムを形成する。次いで該フィルムを16時間80℃で加熱する。
熱処理フィルムの特性を以下の表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
本発明によるポリウレタン組成物の優位性は、著しく高い破断強度と合わせて、著しく高い誘電率および著しく低い体積伝導性により示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
A)a)50〜100重量%の、DMC触媒作用によって製造されたポリアルキレンオキシド、特にポリプロピレンオキシド、および
b)0〜50重量%の、触媒残留物を含有しないポリオール、特に、蒸留によってまたは再結晶化によって精製された、または酸素含有複素環化合物の開環重合によって製造されたものでないポリオール
から構成されるポリオール成分が組み込まれた、ポリエーテルウレタン99.1〜70重量%、および
B)カーボンブラック0.1〜30重量%
からなる、カーボンブラックで充填されたポリウレタン組成物。
【請求項2】
ポリオール成分a)は100重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項3】
アロファネートプレポリマーは、イソシアネートとして用いられることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリウレタン。
【請求項4】
DMC触媒作用により製造されたポリアルキレンオキシドをポリオール成分として含有するアロファネートプレポリマーをイソシアネートとして用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン。
【請求項5】
イソシアネートとして、式(I):
【化1】

〔式中、n=30〜38〕
で示されるアロファネートプレポリマーを用い、および/またはベースとするポリプロピレンオキシドがDMC触媒作用によって製造されたプレポリマーをベースとすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン。
【請求項6】
機械エネルギーを電気エネルギーに、および電気エネルギーを機械エネルギーに変換するためのエネルギー変換器における誘電材料としての、請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンの使用。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタン組成物を含有する、フィルムまたは被覆物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン組成物を誘電材料として含有する、エネルギー変換器。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン組成物を誘電材料として含有する、電気コンデンサ。

【公表番号】特表2010−518200(P2010−518200A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548602(P2009−548602)
【出願日】平成20年1月26日(2008.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000623
【国際公開番号】WO2008/095621
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】