説明

高誘電率低漏洩キャパシタおよびエネルギー蓄積デバイス、ならびにそれらを作製するための方法

キャパシタに使用するための高誘電率誘電体材料を作製するための方法を提供する。向上した性質を有する有機非伝導性媒体内のいくつかの高誘電率材料、およびそれを作製するための方法を開示する。いくつかの特定の誘電体材料の薄膜を形成するための一般的な方法を開示し、有機ポリマー、シェラック、シリコーンオイル、および/またはゼイン製剤の使用は、低伝導率誘電体被覆を生成するために利用される。加えて、弱い還元剤を利用して、塩または酸化物マトリクスとしての特定の遷移金属塩の形成のための方法が低温で行われる。さらに、そのようなデバイスの製造収率およびユーティリティ性能を向上させるために、長期蓄積キャパシタからの漏洩電流を回収および再生するための動作の回路構造および関連方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮出願第60/978,067号(2007年10月5日出願)に基づく優先権およびその利益を主張する。その内容の全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、概して、キャパシタおよび蓄積デバイスに関する。より具体的に、本開示は、高誘電率低漏洩キャパシタおよびエネルギー蓄積デバイス、ならびにそれらを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に記載される実施形態では、本高容量エネルギー蓄積キャパシタを説明するために使用される用語の次の理解を理解および考慮すべきである。より古い文献では、材料の「誘電定数」という用語は、電界に配置されたときの材料の分極能力または「誘電率」を表すために使用される。「絶縁破壊」という用語は、絶縁体材料が「破壊」し、電流を伝導する電圧を表すために使用された。また、この絶縁破壊電圧は、絶縁強度としても既知である。これらの用語の両方の省略版が「誘電(dielectric)」であり、材料自体が誘電体(dielectric)と称されるため、文献において何が論議されているかに関して、ある混乱が存在した。したがって、今では、電荷を分極し、その空間容量の「誘電定数」を真空の値からより高い値に変化させる材料の能力を表すために、「誘電率」という用語が(大部分では)使用される。絶縁破壊電圧は、材料の絶縁強度を示すために使用される場合がある。
【0004】
材料の相対誘電率は、単に、真空の誘電定数で除算した、その静的誘電定数の測定値である。
=e/θ
式中、e=相対誘電率
=測定された誘電率
=真空の電気誘電率(8.8542E−12F/m)
したがって、良好な誘電性(dielectric)という用語が使用されるときは、高破壊電圧および低伝導率等の、良好な電気絶縁特性を示す材料を意味するように(通常は)意図される。キャパシタに対して良好な「誘電定数」を有する材料とは、良好な「誘電率」(高値)を有し、電極間に配置されたときに、「良好な」(高い)量だけ所与の寸法のキャパシタの電気容量を増加させることを意味する。
【0005】
キャパシタは、2つの伝導プレートが誘電体と称される非伝導媒体によって分離されるときに形成される。電気容量の値は、プレートの寸法、プレート間の距離、および誘電体の特性に依存する。関係は、
C=e*e*A/d
であり、式中、
=真空の電気誘電率(8.8542E−12F/m)
=材料の相対電気誘電率
A=1つのプレート表面(両方とも同一の寸法)
d=2つのプレート間の距離
である。
【0006】
真空の電気誘電率が物理定数である一方、相対電気誘電率は、材料に依存する。
【0007】
【化1】

水の電気誘電率と有機被覆の電気誘電率との間の大きな差が注目される。
【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
大きな双極子モーメントおよび高誘電率を有する材料は、多くの場合、伝導性塩または非常に極性の無機酸あるいは塩基であるということは注目に値する。これらの場合では、それらの液体形態は、使用が困難であり、および/または毒性もしくは腐食性である。これにより、これらの利用が困難かつ危険なものとなる。多くの場合、極性塩は、わずかに不純であるか、および/または湿気のある大気条件に暴露されるときに、望ましくない伝導性を示す。
【0011】
非伝導挙動および超高誘電率を示す無機塩は、遷移金属の無機塩、およびそれらの結晶格子構造により高誘電率を示す他の無機塩である。それらの結晶性質のため、これらの材料の使用は困難である。薄い被覆の使用、ならびに高温融解および焼結する方法によって、これらの種類の材料をより製造可能にするために、多くの努力が費やされてきた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の1つ以上の特徴によれば、キャパシタに使用するための高誘電率誘電体材料を作製するための方法が提供される。向上した性質を有する有機非伝導性媒体内のいくつかの高誘電率材料、およびそれを作製するための方法を開示する。
【0013】
本開示の1つ以上の特徴によれば、ある特定の誘電体材料の薄膜を形成するための一般的な方法が開示され、低伝導率誘電体被覆を生成するために、有機ポリマー、シェラック、シリコーンオイル、および/またはゼイン製剤の使用が利用される。加えて、本開示の1つ以上の特徴によれば、弱い還元剤を利用して、塩または酸化物マトリクスとしての特定の遷移金属塩の形成のための方法が低温で行われる。
【0014】
加えて、本開示の1つ以上の特徴によれば、そのようなデバイスの製造収率およびユーティリティ性能を向上するために、長期蓄積キャパシタからの漏洩電流を回収および再生するための動作の回路構造および関連方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の上述の特徴および目的は、類似の参照番号が類似の要素を意味する添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって、より明らかとなるであろう。
【図1】図1は、本開示の一実施形態による、高誘電率誘電体材料を作製するための方法を図示する、例示的工程図である。
【図2】図2は、本開示の1つ以上の実施形態による、エネルギー蓄積キャパシタからの漏洩電流を回収するための多段電気回路図を図示する。
【図3】図3は、本開示の一実施形態による、図2の多段電気回路を使用して、キャパシタからの漏洩電流を回収および再生するための方法を図示する、例示的工程図である。
【図4】図4は、本開示の一実施形態による、高誘電率低漏洩キャパシタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、高誘電率低漏洩キャパシタおよびエネルギー蓄積デバイスを形成する方法を目的とする。
【0017】
1つ以上の実施形態では、本開示に記載される方法、材料、およびデバイスは、高誘電率材料の製造に関連する困難を低減し、これらの材料をデバイスに組み込むことの困難を減少させ、材料の性能を高め、外部電子コンポーネントの使用によって材料性能が向上され、デバイスの信頼性および寿命を増加させ得る方法を示す。改善の結果、そのようなデバイスが製造されるときの不良品発生率が減少され、また、デバイスが実用されるときの長期信頼性が改善される。また、本開示に説明される方法の使用は、また、材料およびデバイスの製造費用も低減し、そのような用途に役立たない廃棄副産物の低減に資する。
【0018】
キャパシタおよびエネルギーに対するそれらの関係を考えると、キャパシタを充電するために行われなければならない仕事(すなわち、ポテンシャルエネルギー=E)を決定するために、実施される仕事は、キャパシタに蓄積されるポテンシャルエネルギーに等しい。所与の電荷量を所与の電気容量に移転するために実施される仕事は、次の式:
W=q/(C*2)
で与えられ、式中、電気容量と電荷との間の関係は、
q=C*V
であり、式中、q=電荷(クーロン)
C=電気容量(ファラド)
V=電位(ボルト)
である。
【0019】
したがって、上記の仕事方程式中のqの置換によって、
E=W=C*V/2
が提供される。
【0020】
式中、Eは、キャパシタ内に蓄積されるエネルギーであり、キャパシタ上に電荷を蓄積するために実施された仕事に等しい。したがって、キャパシタ内に蓄積されるエネルギーは、キャパシタに印加される電圧の2乗に関係していることに留意されたい。
【0021】
したがって、1つ以上の実施形態では、デバイスの主要な使途がエネルギー蓄積であるとき、キャパシタの定格電圧が可能な限り高いことが重要である。1つ以上の実施形態では、高破壊電圧を有することに加えて、また、キャパシタは、低漏洩電流も保持する。言い換えると、キャパシタが所与の電圧に充電されているとき、1つの電極からもう一方の電極への電荷伝導速度は、比較的小さい値であるべきである。エネルギー蓄積のために、キャパシタがある所与の期間にわたって充電されるとき、漏洩速度は、許容可能に十分に低い値であり、これは、蓄積デバイスの使途(どれだけ長く蓄積されるか)、および、このように蓄積されるエネルギーの「価値」(再充電がどれだけ容易であるか、および充電費用)によって変化する。漏洩の許容可能な値は、典型的に、用途間で大きく異なるであろう。全ての実施形態では、漏洩は、一般的に回避および最小化されるものである。
【0022】
1つ以上の実施形態では、所与のレベルの漏洩に対し可能な相対誘電率の最高値および最高定格電圧は、大部分のエネルギー蓄積用途で評価されるときに、最良のキャパシタを提供する。また、キャパシタの妥当な速度で電荷を「吸収する」能力も、また、重要な因子であることにも留意されたい。大部分の電子部品用途において、キャパシタの理想的なキャパシタとしての機能を果たす能力は、特にMHz以上の周波数で稼動するときに重要なパラメータである。また、キャパシタは、その電極に配置された電荷を完全に放電する能力も有するべきである。全ての容量性デバイスには、「不可逆的な誘電吸収」という問題があるが、エネルギー分野では、その用途によって決定される特定のレベルにキャパシタを放電することが、この効果のどれだけが許容可能であるかを制限する。
【0023】
1つ以上の実施形態では、定格電圧、漏洩電流、およびエネルギー蓄積キャパシタの誘電体の大幅な改善を提供する。改善の範囲は、概して、それらがエネルギー蓄積の分野に関するとして本明細書に記載されるが、本明細書に記載される方法およびデバイスは、さらに、本明細書に記載される材料およびデバイスのより良好な周波数応答ならびに低減した誘電吸収を含む、向上した特性を示すデバイスを作製するために、そのような改善を利用することができる、一般的な用途に適用することができる。
【0024】
1つ以上の実施形態では、以下の改善された特性:
1)高定格電圧(高破壊電圧)、
2)高相対誘電率、
3)最大電圧電荷での低漏洩電流、
4)小型かつ軽量、
5)毒性および他の危険性が低いことによる安全な使用、
6)容易かつより良好な製造手順、
7)環境にやさしい製造、
8)高速な放電および充電、ならびに
9)完全に放電する能力
を有する、高誘電率低漏洩キャパシタおよびエネルギー蓄積デバイスを記載する。
【0025】
以前から既知の高誘電率材料は、老化および脆弱化を受けており、それによって、そのような材料のそれらの種々の使途に要求される形状への形成における多くの問題をもたらしていることに留意されたい。さらに、これらの以前から既知の高誘電率材料のいくつかは毒性であるため、従来の機械加工および形成ステップは、通常の仕事環境に望ましくないと見なされる。それらの機械的不安定性のため、また、以前から既知の高誘電率材料は、繰り返し電気的活性化を受けたときに、電気的疲労および機械的疲労を起こしやすい。また、以前から既知の高誘電率材料は、材料内の微小破壊、続いて電気的不具合を起こすことがある、湿度変化等の環境変化から保護する必要があった。また、以前から既知の高誘電率材料は、高温で形成する必要があった。それらの多少複雑な結晶構造、および高温で形成する必要性のため、従来的に、高誘電率材料を薄膜に作製することは困難であった。多くの場合、結晶構造は、十分に形成されず、薄膜は、それらのバルク性質に比べ、薄膜として低い誘電率を示した。
【0026】
これらの機械的および電気的問題を緩和するために、1つ以上の実施形態では、低温処理(すなわち、約500℃を下回る温度処理)のために、機械的に粉砕され、有機ポリマーの中に分散される誘電率材料を提供する。本明細書に記載される異なる実施形態では、所望の向上した特性を保持する、種々のポリマーの中に混合され、懸濁される種々の材料を記載する。1つ以上の実施形態では、シェラックおよびゼインが、本用途のための向上した性質を提供することが見出される。これらの両方の材料の場合では、ポリマー前躯体の水およびアルコール溶解性が、望ましい特性を提供する。
【0027】
機械的に粉砕された誘電体を使用する、1つ以上の実施形態では、有機結合剤中の誘電体の懸濁液の誘電率が、シェラックおよびゼインでは、それらの乾燥粒子形態より約25%向上した。
【0028】
また、1つ以上の実施形態では、独特な特性を保持する独特な誘電体を生成するために、誘電体のその場形成も実施された。これらの実施形態では、混合物の機能性を生成し、向上させるために、ゼインのアルコール溶液へのNaBHの添加が使用された。結果として生じる混合物は、濃水酸化アンモニウムを用いて処理され、次いで、加熱されたときに、大きく向上した誘電体材料を生成し、誘電率は、それらの誘電率の変化に基づき、それらを単に有機結合剤と混合したものから、約250%増加する。さらなる実験によって、さらに大きな最適化が達成され得る一方、そのような混合物の結果として生じる特性によって、手順の実行可能性およびその実質的な実用性が示された。
【0029】
1つ以上の実施形態では、適切に粉砕されたときの誘電体化合物が、代わりに、シリコーンオイルおよび少量のホウ砂または水素化ホウ素ナトリウムと混合され得る。150℃に加熱されたときに、有機ポリマー懸濁液が使用されたときと同様に、結果として、最大250%の増加がもたらされる。
【0030】
両方の上述の実施形態では、混合物がキャパシタ構成における2つの電極の間に配置されたとき、シェラック、ゼイン、またはシリコーンオイルポリマーのいずれかの使用は、電極間の電圧が300Vに上昇したときに、漏洩電流は検出不可能であった。それとは反対に、チタン酸バリウム等の誘電体材料が粉砕され、電極間に押し込まれたとき、これは、試験されたときに許容できない漏洩電流を示した。
【0031】
以下の代表的実施形態は、本開示にしたがって高誘電率材料を作製する方法の具体的な実施例を説明する。本開示は、開示される実施形態に制限される必要はなく、種々の実施例のステップおよびコンポーネントの組み合わせを含む、その種々の修正をカバーすることが意図される。
【0032】
(手順:)
(I.キャパシタまたはエネルギー蓄積デバイスに使用するための低減された漏洩電流誘電体を作製するための手順)
1つ以上の実施形態では、1.5gのゼインが、15mLのエタノールに添加される。少量の水が添加されるか、または所望により溶液は、いかなる不溶解粒子状物質も除去するために、濾過されるかもしくは遠心分離される。結果として生じる澄明な溶液は、次いで、0.5g〜15gの、ナノ粉末または他の微細分散材料になるようにあらかじめ処理されたチタン酸バリウム粉末等の高誘電率無機塩を用いて処理される。次いで、結果として生じるスラリーは、完全に混合され、標的電極上にスクリーニングされるか、ないしは別の方法で塗布される。少量のDMSO(ジメチルスルホキシド)またはDMF(ジメチルホルムアミド)の添加は、スクリーニングおよび乾燥プロセスを促進する。次いで、「グリーンシート」材料が、低温で乾燥されるか、または代替として、他のプレート電極と接触して締め付けられるか、または別の方法で加圧され得る。次いで、全ての溶媒が除去されるまで、約60℃以下の上昇した乾燥温度(過度の温度は、薄膜の気泡形成およびキャビテーションをもたらす可能性があるため)が維持される。150℃でのさらなる加熱が実施され得る。
【0033】
(II.低温方法を利用して、高誘電率誘電体を作製するための手順)
1つ以上の実施形態では、0.75gの炭酸ストロンチウムIIが、1.5gの炭酸ガドリニウムIIIが15mLのDI水中にかき混ぜられた溶液に添加される。2つの化合物の溶解が行われた後、200mgの水素化ホウ素ナトリウムを有する、2mLの水中にゼイン(または他の有機ポリマー)が200mgの溶液が、よくかき混ぜながら、金属溶液に液滴で添加される。誘電体材料が結合剤なく形成または単離される場合、有機ポリマー材料は、任意である。還元を促進するために、少量の酢酸が添加され得る。5分後、5mLの濃水酸化アンモニウムが添加される。さらに5分後、溶液は、濾過され、次いで、所望の電極材料上にスクリーニング、塗布、またはスピンコーティングされ、蒸発され、手順Iに記載されるように処理され得る。または溶液は、誘電体材料が固体として単離されるように蒸発させることができる。
【0034】
(III.少量の伝導性を有する誘電体内の漏洩電流を低減するための方法)
1つ以上の実施形態では、1.5gのゼインが、15mLのエタノールに溶解される。次いで、所望の誘電体材料の5〜50mLのスラリーは、よく撹拌しながら、ゼイン溶液を用いて処理される。次いで、スラリーは、デバイスを生成するために、電極上に塗布、スクリーニング、またはスピンコーティングされ、手順Iに記載されるように処理され得る。
【0035】
(IV.シェラックおよび高誘電率材料を利用して、漏洩電流を低減するための手順)
1つ以上の実施形態では、誘電体が固体粉末として、または液体形態で単離される、本明細書の手順によって生成される高誘電率材料の1.5gの試料が、粒子状物質を除去するために濾過または遠心分離された、1.5gの商用等級のシェラック溶液に添加される。材料をワーカブルなスラリーまたは溶液にするために、必要に応じて、追加のエタノールを添加することができる。次いで、結果として生じる液化した材料は、手順Iに言及されるように、電極材料上に塗布、スクリーニング、またはスピンコーティングすることができる。
【0036】
(V.シリコーンオイルおよび誘電体材料を、キャパシタとして使用するための手順)
1つ以上の実施形態では、1.0gのシリコーンオイルが、重量が0〜5gの微細に粉砕された高誘電率誘電体に添加される。混合物は、十分にかき混ぜられ、少量の水素化ホウ素ナトリウムまたはホウ砂塩(0〜500mg)が、スラリーまたは溶液に添加される。溶液または混合物がワーカブルである場合、これは、電極上に塗布、スクリーニング、またはスピンコーティングすることができる。次いで、シートは、シリコーンオイルの粘度の増加を促進するために、数分間、約150℃〜300℃に加熱され得る。次いで、最上電極が、シリコーン形成電極に押圧されるか、または別の方法で圧力を用いて固定され、次いで、誘電体材料が完全に安定化するのに十分な期間、熱処理され得る。例えば、より少ない時間および異なる温度が許容可能であり得るが、150〜200℃で約3時間が十分である。
【0037】
図1は、本開示の一実施形態による、高誘電率誘電体材料を作製するための方法を図示する、例示的工程図である。方法は、スラリー溶液を形成するように有機ポリマーを溶媒に溶解するステップで開始する(105)。溶媒は、シェラック、シリコーンオイル、および/またはゼインであり得る。一実施形態では、不溶解有機ポリマーが、例えば、フィルタまたは遠心分離機を使用して、スラリー溶液から除去される(110)。次いで、無機塩が、スラリー溶液に添加され得る(115)。無機塩は、Gd、Sr、Sn、および/またはFe塩等の遷移金属塩であり得る。一実施形態では、破壊電圧アジュバントが、スラリー溶液に添加され得る(120)。破壊電圧アジュバントは、Y、Ni、Sm、Sc、Tb、Yb、La、Te、Ti、Zr、Ge、Mg、Pb、Hf、Cu、Ta、Nb、および/またはBiのうちの1つ以上を含み得る。スクリーニングおよび乾燥を促進するために、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドが、スラリー溶液に添加され得る(125)。次いで、スラリー溶液は、溶媒を蒸発させるために、約150℃〜約300℃の温度に加熱され得る(130)。
【0038】
次に図2を参照すると、1つ以上の実施形態による、エネルギー蓄積キャパシタからの漏洩電流を回収するための電子デバイスを作製するための多段電気回路図が図示される。図2は、キャパシタまたはキャパシタアレイC1からの漏洩電流を再生および再利用するために開発された、新規回路の4つの状態を図示する。
【0039】
図2では、以下のコンポーネントを記載する。C1は、特定の電荷量を蓄積することができる、キャパシタまたはキャパシタアレイである。これは、所与の電圧(V+)を受けるときに、電流の漏洩を示す。C2は、はるかに低い漏洩電流(または、同一の漏洩電流であるが、電気容量面積がはるかに小さい)を示す、良好な特性のキャパシタ(例えば、C1よりはるかに小さい)である。D1は、C1からの電圧がVssに戻るのを「阻止」することができるという特性を有する、ダイオードである。T1の2次巻線からの電圧出力が、C1に存在する電圧、およびD1の順電圧降下を超えるときに、電流がC1キャパシタに伝導する。
【0040】
S1は、C1の高電圧側を充電電圧、V+に電気的に接続することができるスイッチである。1つの位置では、これは、V+に接続され、もう1つの位置では、開放接続であるか、または負荷に接続される。S2およびS3は、2つの異なる出力間で切り替わる能力を有する、電気的に制御されるスイッチである。これらのスイッチは、必ずしもV+に耐えることができる高電圧スイッチである必要はない。T1は、V+と同等またはそれより大きな2次巻線上の電圧に耐える能力を有する、「フライバック」型の変圧器または同等のインダクタである。V+は、充電サイクル中に主要なエネルギー蓄積キャパシタC1に接続される、充電電圧である。Vssは、C1の反対の電極上に存在する、V+より低い電圧であり、これは、2つの間に電位差を生成する。
【0041】
図3は、本開示の一実施形態による、図2の多段電気回路を使用して、キャパシタC1からの漏洩電流を回収および再生するための方法を図示する、例示的工程図である。図2の回路図の状態Aを参照すると、V+源からS1を通ってC1の陽極プレートに流れる電流が示される(305)。本状況では、S2は、2つの間の電位差までC1上に電荷を集積することができるように、Vssに接続される(310)。本状態では、S3の状態は関係なく、回路のより低い部分に電流は流れない。
【0042】
図2の回路図の状態Bでは、V+は、C1の陽極プレートから切断されており、C1のもう1つのプレートは、S2を通してグランドに接続される。これは、C1キャップの蓄積された負荷が、負荷を電力供給するために、S1スイッチを通して使用されている、典型的な状況を図示する。
【0043】
図2の回路図の状態CおよびDでは、C1蓄積キャパシタが充電または放電されていない、2つの状態が示される。しかしながら、1つのプレートから別のプレートへの漏洩電流により、S2スイッチを通って、非理想的なC1コンポーネントを通ってC2に流れる電流が存在する(315)。この電流は、C1およびC2の相対電気容量、ならびに漏洩速度に基づく速度で、ある電圧までC2を充電する(320)。スイッチS2は、グランドから切断され、C2の入力に接続される(315)。状態Cの間、C2キャパシタは、ある所定の電圧(V1)まで充電される。所定の電圧で、次いで、コンパレータは、S2を使用して、C1の開放「Vss」プレートからC2を切断し、次いで、状態Dに示されるように、続いてS3を使用して、C2の陽極プレートをT1変圧器の入力に接続する(325)。このT1を通る放電電流は、T1の2次巻線上に電圧を誘導し、これは、ダイオードD1を通って電荷の一部がC1に戻るのに十分な電圧値まで上昇する(325)。いったんC2の陽極プレート上の電圧のコンパレータの決定によって決定されるようにC2の放電が完了すると、コンパレータは、C1を充電または放電するという要求が行われない限り、全てのスイッチを状態Cに戻す。
【0044】
上述の動作では、比較的「漏洩しやすい」キャパシタは、C1が充電または放電期間のいずれか中に使用されていないときに、C1の漏洩による電荷損失の一部を戻すことができる。回路の効率(>90%の効率に作製することができる)により、C1デバイスからの漏洩は、10Xの因数で効率的に低減される。キャパシタの大きなアレイの製造では、これは、収率の大幅な改善となる可能性がある。多くの場合、漏洩電流を増加させる、望ましくない不純物が材料内に存在し、これらは、多くの場合、アセンブリが完成するまで検出されない。大きなアレイのキャパシタでは、これは、相当数の良品デバイスがアレイ内の比較的小さな数の不具合のために、不合格となることを意味する。
【0045】
1つ以上の実施形態では、エネルギー充電またはエネルギー放電の要求間で、比較的長い期間が経過する可能性が高いようなエネルギー蓄積が、この回路の目的とされる用途である。これらの状態(A&B)中、記載されるように、再充電回路は使用できない。
【0046】
前述の説明から分かるように、本方法は、高誘電体材料を懸濁および被覆するために有機基材を使用することによって、従来の高誘電率材料に関連する高温方法を回避する。また、本発明によって、高い処理温度も回避される。加えて、高誘電率材料を作製するための新しい方法を開示し、高破壊電圧材料(ゼイン等)とともに使用されるときに、高破壊電圧特性を有する高誘電性キャパシタを作製するためのプロセスが可能となる。
【0047】
プロセスの性質のため、手順は、漏洩電流の制御という点で厳しい。被覆材料は、汚染材料を含む、任意の材料を被覆すると思われる一般的な材料であり、したがって、これは、それによってデバイスの製造をより容易かつより良い収率にする。最も良好な高誘電率誘電体を、低伝導率を示す(およびしたがって高漏洩電流を生成する)のに十分に純粋にすることは難しいことから、伝導性汚染物または伝導性を有し得る不完全な結晶の接触が、有機基材の被覆によって防止されるため、高誘電率材料のマトリクス内に有機結合剤を使用することが望ましい。
【0048】
図4は、本開示の一実施形態による、高誘電率低漏洩キャパシタの断面図である。図示されるように、キャパシタ電極10およびその反対の極性電極11は、ほぼ同等に離間される。介在空間内は、不均一な誘電体材料12および13である。一実施形態では、誘電体材料は、高誘電体材料12間の介在空間を充填するために、ゼイン、シェラック、架橋シリコーン、もしくは他のそのような材料等の絶縁材料13を有する、チタン酸バリウム等の既存の材料、または他のそのような既知の高誘電体から形成され得る。本発明の改善により、絶縁誘電体13を使用する低温プロセスは、比較的低い温度、および溶解材料を組み込むことができる。
【0049】
本明細書に記載される方法は、ほぼ全ての有機化合物が耐えられない標準的な高温製造方法を用いることなく、高誘電率キャパシタを作製するための独自の手法を提供する。この新しい手法は、これらのキャパシタを作製することができる材料を大いに拡大し、多くの有機ポリマーが示すことができる低減した漏洩電流により、キャパシタの性能を向上する。
【0050】
1つ以上の実施形態では、Gd、Sr、Sn、およびFeが、高誘電率誘電体として利用され得る。1つ以上の実施形態では、シェラック、ゼイン、およびシリコーンオイルが、高電圧破壊アジュバントとして使用され得る。他の実施形態では、Y、Ni、Sm、Sc、Tb、Yb、La、Te、Ti、Zr、Ge、Mg、Pb、Hf、Cu、Ta、Nb、Bi等であるが、これらに限定されない、他の誘電体およびいくつかの破壊電圧エンハンサ(アジュバント)が利用され得る。
【0051】
加えて、使用されておらず、蓄積された状態であるときに、デバイスの漏洩電流を1次エネルギー蓄積ユニットの電圧電荷に返すことができる電子回路が示される。これは、キャパシタ内の電荷の寿命を延ばし、また、製造プロセスからの収率を向上する。
【0052】
現在具体的実施形態と見なされているものに関して、システムおよび方法を説明したが、本開示は、開示された実施形態に限定される必要はない。特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる、種々の修正および同様の構成を網羅することが意図され、その範囲には、全てのそのような修正および同様の構造を包含するように、最も広義の解釈が与えられるべきである。本開示は、以下の特許請求の範囲のいかなる、および全ての実施形態も含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の平行電極と、
該一対の電極間に配置される高誘電率材料であって、高誘電率誘電体材料および絶縁誘電体材料の混合物を含む、高誘電率材料と
を備える、高誘電率キャパシタ。
【請求項2】
前記高誘電率誘電体材料および絶縁誘電体材料の混合物は、不均一である、請求項1に記載の高誘電率キャパシタ。
【請求項3】
前記高誘電率誘電体材料は、無機塩を含む、請求項1に記載の高誘電率キャパシタ。
【請求項4】
前記絶縁誘電体材料は、有機ポリマーを含む、請求項1に記載の高誘電率キャパシタ。
【請求項5】
前記無機塩は、Gd、Sr、Sn、およびFeから成る群より選択される遷移金属を含む、請求項3に記載の高誘電率キャパシタ。
【請求項6】
前記高誘電率材料は、約500℃未満の低温で形成される、請求項1に記載の高誘電率キャパシタ。
【請求項7】
前記有機ポリマーは、シェラック、シリコーンオイル、およびゼインから成る群より選択される、請求項4に記載の高誘電率キャパシタ。
【請求項8】
前記ゼインは、約100g/Lのアルコールの組成物を有する、請求項7に記載の高誘電率キャパシタ。
【請求項9】
前記高誘電率材料は、Y、Ni、Sm、Sc、Tb、Yb、La、Te、Ti、Zr、Ge、Mg、Pb、Hf、Cu、Ta、Nb、およびBiから成る群より選択される破壊電圧アジュバントをさらに含む、請求項1に記載の高誘電率キャパシタ。
【請求項10】
前記高誘電率材料は、溶媒に溶解された無機塩および有機ポリマーの混合物を含む、請求項1に記載の高誘電率キャパシタ。
【請求項11】
前記有機ポリマーは、高電圧破壊アジュバントである、請求項4に記載の高誘電率キャパシタ。
【請求項12】
漏洩電流を有する第1のキャパシタと、
該第1のキャパシタからの該漏洩電流を収集するために、該第1のキャパシタに連結される、第2のキャパシタと、
効率を増加させ、該第1のキャパシタの性能を向上させるように、該第1のキャパシタから該第2のキャパシタへ流れ、かつ該第1のキャパシタに戻る該漏洩電流の流量を制御するために、該第1のキャパシタおよび該第2のキャパシタに連結される、制御手段と
を備える、蓄積デバイス。
【請求項13】
前記第1のキャパシタは、高誘電率誘電体材料および絶縁誘電体材料の混合物を含む、高誘電率誘電体材料を有する、請求項12に記載の蓄積デバイス。
【請求項14】
前記高誘電率誘電体材料および絶縁誘電体材料の混合物は、不均一である、請求項13に記載の蓄積デバイス。
【請求項15】
前記高誘電率誘電体材料は、無機塩を含み、前記絶縁誘電体材料は、有機ポリマーを含む、請求項13に記載の蓄積デバイス。
【請求項16】
前記第2のキャパシタは、無機塩および有機ポリマーの混合物を含む、高誘電率誘電体材料を有する、請求項12に記載の蓄積デバイス。
【請求項17】
前記無機塩は、Gd、Sr、Sn、およびFeから成る群より選択される遷移金属を含む、請求項15または16に記載の蓄積デバイス。
【請求項18】
前記有機ポリマーは、シェラック、シリコーンオイル、およびゼインから成る群より選択される、請求項15または16に記載の蓄積デバイス。
【請求項19】
前記高誘電率材料は、Y、Ni、Sm、Sc、Tb、Yb、La、Te、Ti、Zr、Ge、Mg、Pb、Hf、Cu、Ta、Nb、およびBiから成る群より選択される破壊電圧アジュバントをさらに含む、請求項15または16に記載の蓄積デバイス。
【請求項20】
前記制御手段は、複数のスイッチを備える、請求項12に記載の蓄積デバイス。
【請求項21】
前記制御手段は、ダイオードを備える、請求項12に記載の蓄積デバイス。
【請求項22】
前記制御手段は、前記第2のキャパシタから前記漏洩電流を受け取り、該漏洩電流の特定の一部を前記第1のキャパシタに返送するために、該第1のキャパシタと該第2のキャパシタとの間に連結される、変圧器を備える、請求項12に記載の蓄積デバイス。
【請求項23】
前記制御手段は、複数のスイッチを備える、請求項12に記載の蓄積デバイス。
【請求項24】
高誘電率誘電体材料を作製するための方法であって、
スラリー溶液を形成するように有機ポリマーを溶媒に溶解することと、
該スラリー溶液に無機塩を添加することと
を含む、方法。
【請求項25】
前記無機塩を添加するステップの前に、前記スラリー溶液から不溶解有機ポリマーを除去することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記無機塩は、Gd、Sr、Sn、およびFeから成る群より選択される遷移金属を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記有機ポリマーは、シェラック、シリコーンオイル、およびゼインから成る群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記スラリー溶液に、Y、Ni、Sm、Sc、Tb、Yb、La、Te、Ti、Zr、Ge、Mg、Pb、Hf、Cu、Ta、Nb、およびBiから成る群より選択される破壊電圧アジュバントを添加することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記スラリー溶液にジメチルスルホキシドを添加することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記スラリー溶液にジメチルホルムアミドを添加することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記スラリー溶液を約150℃〜約300℃の温度に加熱することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
高誘電率キャパシタを作製するための方法であって、無機塩と、有機ポリマーと、溶媒とを含む、誘電体溶液でキャパシタプレートを被覆することを含む、方法。
【請求項33】
前記無機塩は、Gd、Sr、Sn、およびFeから成る群より選択される遷移金属を含み、前記有機ポリマーは、シェラック、シリコーンオイル、およびゼインから成る群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記誘電体溶液は、Y、Ni、Sm、Sc、Tb、Yb、La、Te、Ti、Zr、Ge、Mg、Pb、Hf、Cu、Ta、Nb、およびBiから成る群より選択される破壊電圧アジュバントをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
キャパシタからの漏洩電流を回収および再生するための方法であって、
第1のキャパシタに電圧を印加することと、
該第1のキャパシタに、該印加電圧に対応する電荷を蓄積することと、
漏洩電流が該第1のキャパシタから第2のキャパシタに流れることを可能にするように、第1のスイッチを制御することと、
該第2のキャパシタに、該第1のキャパシタの該漏洩電流に対応する電荷を蓄積することと、
該漏洩電流に対応する該第2のキャパシタからの電荷が該第1のキャパシタに戻って流れることを可能にして、該第1のキャパシタの効率を増加させ、性能を向上させるように、第2のスイッチを制御することと
を含む、方法。
【請求項36】
前記第2のキャパシタは、前記第1のキャパシタの前記漏洩電流より実質的に低い漏洩電流を有する、請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−541291(P2010−541291A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528177(P2010−528177)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/078808
【国際公開番号】WO2009/046341
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510093598)
【Fターム(参考)】