説明

高負荷される軸受を潤滑しかつ冷却する方法及び装置

本発明は、高負荷される軸受(2)を潤滑しかつ冷却する方法、及びこの方法を実施するための装置に関する。本発明によれば、低い温度に冷却される超臨界ガスに潤滑材を溶解し、このガス−潤滑材混合物を軸受(2)に供給することが意図されている。軸受範囲でガス−潤滑材混合物が再び膨張せしめられ、潤滑材が分離され、その潤滑目的が果たされる。低い温度に冷却されて今や未臨界のガスは、冷却に用いられ、外部へ周囲に導出される。ガスとして炭酸ガスが考慮され、潤滑材として炭化水素に基く潤滑材が考慮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高負荷される軸受特に高速回転しかつ/又は熱負荷される軸受を潤滑しかつ冷却する方法であって、潤滑材とガスが混合されるもの、及びこの方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した種類の高負荷される軸受は、例えば工作機械の電動機軸、ガスタービンの圧縮機軸及びタービン軸、高速回転する変速機の変速機軸の支持のために用いられる。上昇する軸受温度は、一般に軸受の幾何学的構造従って軸受精度に不利な影響を及ぼし、更に潤滑剤の品質従って潤滑作用に不利な影響を及ぼす。これらの欠点を回避するため、例えば冷却通路を通って軸受の周囲に導かれる冷媒により、又は潤滑のために必要な最小潤滑材量を超える潤滑材量の増大により、高負荷される軸受を冷却する種々の手段が既に公知である。前者の手段は構造的に費用がかかって高価であり、一般に軸受に大きい温度差を生じ、軸受が損傷を受けるという危険を伴う。後者の手段は事情によっては軸受に高い流体圧損失を生じるので、それに応じて駆動動力を高めねばならず、それにより効率が悪化する。
【0003】
特開第2000−319140号公報により既に公知の軸受装置では、ラジアル軸受及びアキシアル軸受を通った後混合室内で、潤滑材に、ガスこの特別な場合空気が混合されて、潤滑材を冷却する。潤滑材−ガス混合物は、続いていわゆる閉塞装置に供給され、潤滑材の熱の一部を吸収したガスがそこで潤滑材から再び分離され、周囲へ導出され、冷却される潤滑材が閉塞装置から取出され、軸受に再び供給される。
【0004】
しかしこの装置は次の欠点を持っている。即ち潤滑材がなお軸受範囲においてその最終温度まで加熱されるので、潤滑材が軸受装置に供給される範囲と、潤滑材が軸受装置から出る範囲との間に、比較的大きい温度差があり、従って軸受が依然として不利な影響を受ける。更に必要な潤滑材の量が非常に大きいので、軸受に高い流体圧損失が生じ、その効率が低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎になっている課題は、潤滑材の供給を介して高負荷される軸受を潤滑しかつ冷却する方法、及びこの方法を実施するための装置を提供し、それにより軸受における付加的な流体圧損失なしに軸受の効果的かつ均一な冷却が行われるようにすることである。
【0006】
超臨界ガスの典型的な性質を利用して、例えば潤滑材のような他の媒質を溶解できるようにすることが、軸受からガスへ直接に又は潤滑材からガスへの熱伝達を、既に軸受の範囲において、軸受の後において初めてではなく行って、付加的な潤滑剤の量なしに軸受全体の効杲的かつ均一な冷却を保証するために可能でなければならないという認識が、本発明の基礎になっている。
【0007】
本発明は、請求項1及び請求項9の特徴によれば、軸受を冷却するため潤滑材とガスが混合される、高負荷とガスが混合される、高負荷される軸受特に高速回転しかつ/又は熱負荷される軸受を潤滑しかつ冷却する方法及び装置から出発している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による方法は次の方法段階を意図している。
a)ガスが超臨界状態にされ、
b)潤滑材が超臨界ガスに溶解され、
c)ガス−潤滑材混合物が軸受に供給され、この軸受において潤滑材をガスから分離し ながら膨張せしめられ、
d)ガス及び潤滑材が軸受から導出される。
【0009】
従って軸受範囲には、軸受を潤滑するための潤滑材及び軸受を冷却するための過冷却されるガスが有利に存在する。
【0010】
潤滑材用冷却兼輸送媒体がガスなので、付加的な軸受損失は生じない。ガスの適当な選択によって、ガスが膨張の際短時間“固体雪”として存在して、冷媒として作用するだけでなく、直接付加的に潤滑材として作用することができる。軸受及び潤滑材からガスへの熱伝達は、軸受の範囲において行われ、軸受の後で初めて行われるのではないので、軸受の均一かつ効果的な冷却が行われる。ガス冷却によって、特に支持されて回転する機械部分も、損失動力なしに冷却可能なので、軸受の内レースと外レースとの間の温度差も、低い限界に保たれる。
【0011】
本発明の構成によれば、ガスがガス容器から取出され、軸受を通った後周囲へ放出され、その際更に後述するように、環境に合ったガスが当然使用される。
【0012】
ガスを適当に選択すると、本発明の別の構成によれば、ガスがガス容器に自然の周囲条件で貯蔵され、超臨界状態へ移行するためまず断熱圧縮され、それから等圧で冷却され、それから潤滑材が供給され、超臨界ガスに溶解される。
【0013】
ガスは、軸受範囲で潤滑材を放出しながら強く過冷却された状態で断熱膨張せしめられ、それから軸受の熱を吸収しながら等圧で即ち不変な周囲圧力で加熱され、周囲へ放出される。潤滑材は潤滑材容器、潤滑剤だめ等から取出され、軸受を通った後再び潤滑材容器へ戻される。本発明による方法に適したガス又は適当な潤滑材として、炭酸ガス(CO)及び炭化水素に基く潤滑材が使用される。
【0014】
上述した方法を実施するための本発明による装置は、
潤滑材とガスとを混合する装置を持ち、特に自然の周囲条件でガスを貯蔵するガス容器と、
ガス容器の後に設けられてガスを圧縮する圧縮機(ポンプ)と、
圧縮機の後に設けられてガスを冷却する冷却装置として役立つ熱交換器と、
熱交換器の後に設けられて潤滑材をガスに供給する装置と、
この装置の後に設けられてガス−潤滑材混合物を軸受に供給する装置と、
軸受に付属してガス−潤滑材混合物を膨張させる絞り装置と、
軸受の後に設けられてガス及び潤滑材を導出しかつ潤滑材を集める装置とを
特徴としている。
【0015】
更に前述したように、ガスはなるべく周囲へ導出されるので、ガス回路は開いた回路である。
【0016】
本発明による装置の別の構成によれば、潤滑材のために潤滑材容器が設けられ、この潤滑材容器から、ガスへ供給するため潤滑材が取出され、軸受範囲を通った後潤滑材容器へ再び戻される。従って潤滑材容器は閉じた回路である。
【0017】
本発明の好ましい実施例が、添付図面を参照しながら以下に詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明による方法を説明し、潤滑しかつ冷却すべき軸受2この場合ラジアル軸受の範囲においてこの方法を実施するための装置を示している。まず図3により説明するようにまず超臨界状態にされて潤滑材が溶解されているガス−潤滑剤混合物4が、軸受の構造部分として構成されてない絞り装置6において、例えば軸受2に存在する周囲圧力まで膨張せしめられる。これによりガスに溶解している潤滑材が再び分離されるので、軸受2の潤滑に使用することができる。膨張により強く過冷却されるガスは、周囲従って軸受2及び潤滑材から熱を吸収するので、軸受2が冷却される。加熱される潤滑材から分離されるガス8は導出され、軸受2から取去られる熱を運び去る。
【0019】
図2は、時間tについて軸受の温度Tを、有効な冷却なし(曲線a)及び本発明による有効な冷却付き(曲線b)で示している。図2からわかるように、軸受の温度Tは、その作動時間の経過につれて、有効な冷却なし(曲線a)では連続的に限界値の方に上昇し、この限界値は、最初に説明したように、高負荷される軸受では、軸受にとって耐えられる大きさより上にある。比熱量即ち単位時間における熱量の絶え間ない導出により、温度曲線が移動されて(曲線b)、最後に達する限界値が軸受にとって耐えられる限界より下にあるようになる。
【0020】
図3は、使用されるガスに関して、本発明による方法の経過図を示す。ガスは、例えば通常の周囲条件に保たれるガス容器10から取出される。ガスは圧縮機12へ供給される(区間▲1▼)、この中で断熱圧縮され、その際その温度T及びその圧力pが上昇する。続いて超臨界ガスは冷却装置14へ供給され(区間▲2▼)、そこで等圧で冷却され、その際超臨界のままである。導出される比熱量はQで示されている。
【0021】
冷却されるガスに、潤滑材容器21から取出される潤滑材が、矢印16で示すように添加される。潤滑材は、冷却されている超臨界ガスに溶解される。ガス−潤滑材混合物は、続いて構造的に軸受に付属する絞り装置18に供給され、この絞り装置において、軸受に存在する周囲圧力まで断熱膨張せしめられ、湿り蒸気相に移行せしめられる。その際溶解している潤滑材が分離されるので(矢印19)、軸受を潤滑するその本来の役割を果たすことができる。
【0022】
ガス自体は膨張の際短時間“固体雪”として存在するので、同様に直接潤滑材として役立つことができる。軸受を通る際(区間▲4▼)、ガスは軸受(及び潤滑材)から熱を吸収するので、これらは冷却される。軸受範囲は図3に象徴的に熱交換器20として示されている。カスにより吸収される比熱量はQで示されている。
【0023】
軸受範囲(熱交換器20)において等圧で加熱されるガスは周囲へ導出され(区間▲5▼)、一方潤滑材は潤滑材容器21へ再び戻される。
【0024】
図3に示す経過原理が次に更に短くまとめられている。
▲1▼ 理想的に絞られないCO
(p1,T1)
▲2▼ 断熱圧縮されるCO
(超臨界)
(p2>p1,T2>T1)
▲3▼ 等温で冷却されるCO
(超臨界)
(p3=p2,T3<T2)
(潤滑材の添加)
▲4▼ 断熱膨張せしめられるCO
(湿り蒸気)
(P4=Pn,T4<Tu)
▲5▼ 等圧で加熱されるCO(ガス)
(p5=pu,T5=Tu)
【0025】
図4は、上述したプロセス経過を、ガスに関して、pv線図で示している。記号▲1▼,▲2▼等で示すガス状態は、同じ記号で示す図3のガス状態に相当している。
【0026】
ガス容器から取出されるガス(▲1▼)は、曲線22に沿って断熱圧縮され、曲線24に沿って等圧で冷却され、曲線26に沿って断熱膨張せしめられ、曲線28に沿って等圧で加熱される。図4からわかるように、また前述したように、図示したプロセスはサイクルプロセスではなく、“開いた”プロセスであり、即ちガスは消費される。
【0027】
図5は、ガスに関して同じプロセス経過を再びTs線図で示し、使用される記号▲1▼,▲2▼等は図3及び4で使用される記号に一致している。一般に周知であるように、等圧線の下の面積はそれぞれ1つのエンタルピー差即ち供給又は導出される比熱量に等しいので、等圧曲線24′の下で、ガスから取出される比熱量Qを読取ることができ、等圧曲線28′の下で、カスにより吸収される比熱量はQを読取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 ラジアル軸受の潤滑及び冷却の際における方法経過を概略的にかつ具象的に示す。
【図2】 方法過程中におけるガスの温度一時間線図を示す。
【図3】 種々の方法段階を持つ方法の流れ図を示す。
【図4】 ガスの方法経過をpv線図で示す。
【図5】 カスの方法経過をTs線図で示す。
【符号の説明】
【0029】
2 軸受
4 ガス−潤滑材混合物
6 絞り装置
8 ガス
10 ガス容器
12 圧縮機
14 冷却装置
16 矢印
18 絞り装置
19 矢印
20 熱交換器、軸受
21 潤滑材容器
22 曲線
24 曲線
24′ 曲線
26 曲線
28 曲線
28′ 曲線
a 曲線
b 曲線
p 圧力
Q 比熱量
導出される熱量
供給される熱量
T 温度
t 時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高負荷される軸受特に高速回転しかつ/又は熱負荷される軸受を潤滑しかつ冷却する方法であって、潤滑材とガスが混合されるものにおいて、次の方法段階、
a)ガスが超臨界状態にされ、
b)潤滑材が超臨界ガスに溶解され、
c)ガス−潤滑材混合物が軸受に供給され、この軸受において潤滑材をガスから分離しな がら膨張せしめられ、
d)ガス及び潤滑材が軸受から導出される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ガスがガス容器から取出され、軸受を通った後周囲へ放出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ガスがガス容器に自然の周囲条件で貯蔵され、超臨界状態へ移行するため断熱圧縮されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ガスが、圧縮後潤滑材の添加前に等圧で冷却されることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の方法。
【請求項5】
ガスが、軸受範囲で潤滑材を放出しながら断熱膨張せしめられ、かつ軸受の熱を吸収しながら等圧で加熱され、周囲へ放出されることを特徴とする、請求項2〜4の1つに記載の方法。
【請求項6】
潤滑材が潤滑材容器等から取出され、軸受を通った後潤滑材容器へ戻されることを特徴とする、請求項1〜6の1つに記載の方法。
【請求項7】
ガスとして炭酸ガス(CO)が使用されることを特徴とする、請求項1〜6の1つに記載の方法。
【請求項8】
潤滑材として炭化水素に基く潤滑材を使用されることを特徴とする、請求項1〜7の1つに記載の方法。
【請求項9】
潤滑材とガスとを混合する装置が設けられているものにおいて、
ガスを貯蔵するガス容器(10)と、
ガス容器(10)の後に設けられてガスを圧縮する圧縮機(ポンプ)(12)と、
圧縮機(12)の後に設けられてガスを冷却する冷却装置(14)と、
冷却装置(14)の後に設けられて潤滑材(矢印16)をガスに供給する装置と、
この装置の後に設けられてガス−潤滑材混合物を軸受に供給する装置と、
軸受(2)に付属してガス−潤滑材混合物を膨張させる絞り装置(18)と、
軸受(2)の後に設けられてガス及び潤滑材を導出する装置とを
有することを特徴とする、請求項1〜8の1つに記載の方法を実施するための装置。
【請求項10】
潤滑材容器(21)から、ガスへ供給するため潤滑材が取出され、軸受範囲を通った後潤滑材容器へ戻されることを特徴とする、請求項9に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−524541(P2008−524541A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549789(P2007−549789)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/DE2005/002246
【国際公開番号】WO2006/063571
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】