説明

高速充填タンデム型マスタシリンダ

【課題】高速充填制動システムを提供すること。
【解決手段】高速充填制動システムが、マスタシリンダと、第2の室部部分の前方に配置された第1の室部部分を有し、第1の室部部分は第2の室部部分の直径よりも大きな直径を有する、一次圧力室部と、一次圧力室部内に配置された第1のピストン部分、及び一次圧力室部から延出する第2のピストン部分を含み、第1のピストン部分は、(i)第2のピストン部分の直径よりも大きく、(ii)第2の室部部分の直径に対して補完的な直径を有する、一次ピストンとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は制動システム、具体的には、高速充填マスタシリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]制動システムは、典型的には、下流の制動回路に流体的に連結されるマスタシリンダを含む。作動の初期時間の間、マスタシリンダは、例えば、ロータ又はドラムのような補完的な表面に対して、例えば、ブレーキパッドのような制動システムの摩擦部材を押圧するために、下流の制動回路内に流体圧力を生じさせ、流体を変位する。ある状況において、ブレーキパッドは、ロータから離れるように変位される恐れがあり、それによって、ブレーキパッドとロータとの間に隙間が生じる。完全に作動する場合、ブレーキパッドは、ロータと接触し、その後、ブレーキパッドは、所望される制動機能を実行する。しかし、作動が最初に開始されるとき、ブレーキパッドは、ロータと物理的に接触しない。この物理的接触の不足は、制動不足をもたらす下流の制動回路内の最小の圧力上昇をもたらす。制動不足に加えて、一旦、ブレーキパッドがロータと接触したときに、車両の運転者が受けるペダルのフィードバックと比較して、作動が最初に開始されたとき、運転者はペダルの異なるフィードバックを受ける場合がある。このペダルのフィードバックの差異は運転者にとって不安定である恐れがある。
【0003】
[0003]作動が最初に開始されるとき、制動不足を短くし、ペダルのフィードバックの不安定な差異を減少させる1つのやり方は、上記の隙間を迅速に取り除くために、制動システム内の多量の流体を変位させることである。この方法は、一般に「高速充填」制動システムと呼ばれる。多量の流体を移送するために、制動システムは、所望される高速充填機能を提供するように設計されていない制動システムの作動ピストンと比較して、より大きい直径を伴うマスタシリンダ内の作動ピストンを含む場合がある。より大きい直径のピストンはより大容量の流体を移動させ、それによって下流の制動回路を迅速に充填する。
【0004】
[0004]しかし、大きいピストンは、移動させるためにより大きい力を必要とする。大きいピストンを移動させるために必要とされる力は、作動の初期時間の間、比較的小さい一方で、作動の初期時間の後、一般的な大きさのピストンを伴うシステムで必要とされる力より、より大きい力がピストンを移動させるために必要とされる。この追加の力は、本技術分野で知られるより大きい与圧システムを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]したがって、下流の制動回路内の圧力を急速に増大することによって、作動が最初に開始されるとき、制動不足を最小化でき、より大きい与圧システムを使用する必要のない、ペダルのフィードバックの不安定な差異を減少できるマスタシリンダ構成を提供することが強く望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]本開示の一実施形態によると、高速充填制動システムが提供される。高速充填制動システムは、マスタシリンダと、第2の室部部分の前方に配置される第1の室部部分を有し、第1の室部部分は第2の室部部分の直径よりも大きい直径を有する、一次圧力室部と、一次圧力室部内に配置された第1のピストン部分、及び一次圧力室部から延出する第2のピストン部分を含み、第1のピストン部分は、(i)第2のピストン部分の直径よりも大きく、(ii)第2の室部部分の直径に対して補完的である直径を有する、一次ピストンとを含む。
【0007】
[0007]本開示の一実施形態によると、高速充填制動システムが提供される。高速充填制動システムは、ブレーキシリンダと、一次圧力室部とを含む。一次圧力室部は、シリンダ内に固定的に画定され、第1の直径を有する第1の室部部分と、第2の直径を有する第2の実質的円筒形室部とを含む。第2の直径は第1の直径よりも小さい。高速充填制動システムは、一次圧力室部内に配置された第1の大径部分と、第2の小径部分とを含む一次ピストンを更に含む。第2の小径部分は、第1の大径部分の後方に延在し、第1の大径部分の直径よりも小さい直径を有する。高速充填制動システムは、(i)第1の大径部分が第2の実質的円筒形室部内にあり、一次ピストンが前方方向へ移動するとき、第2の実質的円筒形室部を密封係合するように構成され、(ii)第1の大径部分が第1の室部部分内にあり、一次ピストンが前方方向へ移動するとき、第1の室部部分を密封係合しないように構成される、第1の大径部分上に取り付けられる第1の冠状封止部を更に含む。
【0008】
また、本発明は、ブレーキシリンダと、第1の直径を有する第1の室部部分、及び第2の直径を有し、前記第2の直径は前記第1の直径よりも小さな、第2の実質的円筒形室部を含む、前記シリンダ内に固定的に画定される一次圧力室部と、前記一次圧力室部内に配置された第1の大径部分、及び前記第1の大径部分の後方に延在し、前記第1の大径部分の直径よりも小さな直径を有する、第2の小径部分を含む一次ピストンと、(i)前記第1の大径部分が前記第2の実質的円筒形室部内にあり、前記一次ピストンが前方方向へ移動するときに、前記第2の実質的円筒形室部を密封係合するように構成され、(ii)前記第1の大径部分が前記第1の室部部分内にあり、前記一次ピストンが前記前方方向へ移動するときに、前記第1の室部部分を密封係合しないように構成された、前記第1の大径部分上に取り付けられる第1の冠状封止部とを備えていてもよい。
【0009】
さらに、本発明は、第3の直径を有する第3の室部部分、及び第4の直径を有し、前記第4の直径は前記第3の直径よりも小さな、第4の実質的円筒形室部を含む、前記シリンダ内に固定的に画定される二次圧力室部と、前記二次圧力室部内に位置付けられる第3の大径部分、及び前記第3の大径部分の後方に延在し、前記第4の大径部分の直径よりも小さな直径を有する、第4の小径部分を含む二次ピストンと、(i)前記第3の大径部分が前記第4の実質的円筒形室部内にあり、前記二次ピストンが前記前方方向へ移動するとき、前記第4の実質的円筒形室部を密封係合するように構成され、(ii)前記第3の大径部分が前記第3の室部部分内にあり、前記二次ピストンが前記前方方向へ移動するときに、前記第3の室部部分を密封係合しないように構成された、前記第3の大径部分上に取り付けられる第2の冠状封止部とを更に備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】[0008]第1の位置にある状態で示されるマスタシリンダ組立体と、一次ピストン組立体と、二次ピストン組立体と、ポペット弁組立体と、スリーブ組立体とを含む制動システムの部分的断面図である。
【図2】[0009]図1に表される一次ピストン組立体の断面図である。
【図3】[0010]図1に表される二次ピストン組立体の断面図である。
【図4】[0011]図1に表される1つのポペット弁組立体の断面図である。
【図5】[0012]初期稼働位置にある図1に表される制動システムの部分的断面図である。
【図6】[0013]第1の後続稼働位置にある図1に表される制動システムの部分的断面図である。
【図7】[0014]第2の後続稼働位置にある図1に表される制動システムの部分的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0015]本発明の原理の理解を促進する目的のために、ここで、図面で例示され、以下に記載される詳細に説明される実施形態を参照することとする。それによって、本発明の範囲への制限を意図するものでないことは理解されよう。本発明は、この発明が関連する技術分野の一般的な一当業者に通常に考えつくような、本発明の例示的実施形態のあらゆる代替及び改良を含み、その原理の更なる応用を含むことは理解されよう。
【0012】
[0016]図1を参照すると、制動システム100の部分的断面図が表される。制動システム100は、マスタシリンダ組立体102と、一次ピストン組立体104と、第1のポペット弁組立体106と、二次ピストン組立体108と、第2のポペット弁組立体110とを含む。リザーバ(図示せず)が、流体路114、116及び118を介してマスタシリンダ組立体102に流体的に連結される。マスタシリンダ組立体は、流体路121及び122を介して下流の制動回路(図示せず)と流体連通である。マスタシリンダ組立体102は孔103を含む。
【0013】
[0017]ポペット弁組立体106は、バネ112によって二次ピストン組立体108から離れるように付勢される。二次ピストン組立体108は、バネ113によってポペット弁組立体110から離れるように付勢される。第1及び第2のバネ112及び113は等しいか、又は、異なるバネ定数を有することができる。加えて、これらのバネ112及び113は、均一なバネ剛性(すなわち、バネの圧縮範囲に亘って不変のバネ定数)、又は、不均一なバネ剛性(すなわち、バネの圧縮範囲に亘って可変のバネ定数)を提供するように構成できる。
【0014】
[0018]スリーブ組立体120は、封止部152、164、166、168及び170を介して孔103に密封に連結される。スリーブ組立体120は、封止部150、152、154、156、158、160、162、164、166、168及び170のためのシールハウジングを含む。封止部150、154及び156は、スリーブ組立体120に対して一次ピストン組立体104を封着する。また、封止部158、160及び162は二次ピストン組立体108に対してスリーブ組立体を封着する。
【0015】
[0019]マスタシリンダ組立体102、一次ピストン組立体104及びスリーブ組立体120は一次圧力室部124を画定する。一次圧力室部124は、図1の破線によって表されるように2つの室部部分128/130に分割される。第1の室部部分128は、スリーブ組立体120のより大きい直径によって画定される。第2の室部部分130は、スリーブ組立体120のより小さい直径によって画定される。図1に表されるように、第1の室部部分128は第2の室部部分130の前方に配置される。
【0016】
[0020]同様に、マスタシリンダ組立体102、二次ピストン組立体108及びスリーブ組立体120は、二次圧力室部126を画定する。二次圧力室部126は、図1の破線によって表されるように2つの室部部分132/134に分割される。第1の室部部分132(第3の室部部分としても言及される)はスリーブ組立体120のより大きい直径によって画定される。第2の室部部分134(第4の室部部分としても言及される)はスリーブ組立体120のより小さい直径によって画定される。図1に表されるように、第3の室部132は第4の室部134の前方に配置される。
【0017】
[0021]一次及び二次圧力室部124及び126は下流の制動回路(図示せず)と持続的流体連通であり、リザーバ(図示せず)と選択的流体連通である。以下に更に説明されるように、一次ピストン組立体104の左方向の移動に対応して、これらの室部124及び126は、(図1に表されるように)その中の流体を加圧するように構成され、それによって、下流の制動回路(図示せず)内の流体を加圧する。
【0018】
[0022]一次ピストン組立体104は空洞107を画定する。空洞107は第1のポペット弁組立体106を受容するように構成される。第1のポペット弁組立体106は、以下に更に説明されるように、一次ピストン組立体104に対して封着することによって一次圧力室部124をリザーバ(図示せず)から分離する。また、二次ピストン組立体108は空洞111を画定する。第2のポペット弁組立体110は第2の空洞111と位置合わせされる。同様に、第2のポペット弁組立体110は、端部壁部172上に封着することによって二次圧力室部126をリザーバ(図示せず)から分離する。
【0019】
[0023]スリーブ組立体120は直径変位点174及び176を含む。スリーブ組立体120の直径はこれらの直径変位点で変化する。例えば、直径は、より小さい直径178からより大きい直径180へ直径変位点174を超えて右から左へ増大する。同様に、直径は、より小さい直径182からより大きい直径184へ直径変位点176を超えて右から左へ増大する。第1及び第2の室部部分128及び130、又は、第3及び第4の室部部分132及び134はまた、それぞれ直径変位点174及び176を囲んで画定される。スリーブ組立体120は直径変位点174及び176を囲んで均一な態様に構成でき(すなわち、均一に2つの直径を伴う円形の構造)、又は、図1に表されるように、不均一な態様に構成できる(すなわち、スリーブ組立体120の内側の冠状部分のみがより大きい直径を伴って形成される)。
【0020】
[0024]図2を参照すると、一次ピストン組立体104の断面図が表される。一次ピストン組立体104は、後部部分252と、中央部分254と、前方部分256とを含む。後部部分252は中央部分254に連結され、2つの部分の間に隙間258を提供する。中央部分254は孔260を含み、それによって、流体路262を提供する。
【0021】
[0025]後部部分252は入力シャフト(図示せず)を受容するための結合部268を伴う空洞266を画定する。入力シャフト(図示せず)及び空洞266は、例えば、プレス嵌め法のような固定した態様で結合する。したがって、入力シャフト(図示せず)の移動は、それに対応して一次ピストン組立体104の移動を生じさせる。
【0022】
[0026]前方部分256は封止部156のためのシールハウジングを含む。中央部分254と前方部分256との間の結合部は、流体路262と流体連通である空洞107を画定する。密封表面264は中央部分254の前方範囲に備えられる(図1も参照のこと)。中央部分254はまた、前方部分256の外径272よりも小さい外径270を画定する。
【0023】
[0027]図3を参照すると、二次ピストン組立体108が表される。二次ピストン組立体108は、本体部分300と、前方部分302と、後方部材304と、正面部材306とを含む。後方部材304、本体部分300及び正面部材306は3つの別々の部材として表されるが、読者は、これらの部材が単一の構成要素として一体に形成できることを理解すべきである。
【0024】
[0028]後方及び正面部材304及び306は、バネ112及び113(破線で示す)の端部をそれぞれ受容するための肩部305及び307を含む。したがって、バネ112によって生じる付勢力が、本体部分300及び正面部材306へ付勢力を伝送するように構成される後方部材304の肩部305上に及ぼされうる。同様に、バネ113によって生じる付勢力は、本体部分300及び後方部材304へ付勢力を伝送するように構成される正面部材306の肩部307上に及ぼされうる。
【0025】
[0029]図4を参照に更に詳細に以下に説明されるように、後方及び正面部材304及び306は、ポペット弁組立体106及び110のシャフト360の頭部部分362をそれぞれ受容するための空洞308及び310を含む。後方部材304は開口314を画定するワッシャ312で終わる。開口314の内径はシャフト360の外径よりも大きく、ポペット弁組立体106/110の頭部部分362の直径よりも小さい。同様に、正面部材306は開口318を画定するワッシャ316で終わる。開口318の内径はシャフト360の外径よりも大きく、ポペット弁組立体106/110の頭部部分362の直径よりも小さい。
【0026】
[0030]本体部分300は、前方部分302の外径322よりも小さい外径320を画定する。これらの外径の間の差は空洞111を画定する(図1参照)。前方部分302は封止部162のためのシールハウジングを画定する。
【0027】
[0031]図4を参照すると、ポペット弁組立体106/110の断面図が表される。ポペット弁組立体106/110は、弁本体350と、弁ブラケット352と、弁バネ354とを含む。弁本体350は外向き肩部368を含む。弁ブラケット352は外向き肩部356及び内向き肩部370を画定する。ポペット弁組立体106及び110の外向き肩部356は、それぞれバネ112及び113の1つの端部を受容するように構成される。外向き肩部368及び内向き肩部370は弁バネ354の端部を受容するように構成される。したがって、バネ354は、弁本体350の外向き肩部368から離れるように弁ブラケット352の内向き肩部370を付勢する。
【0028】
[0032]バネ112は、ポペット弁組立体106の外向き肩部356を、外向き肩部356が中央部分254の前方範囲の密封表面264上にしっかりと着座するまで、弁本体350から離れるように付勢する(図2も参照のこと)。同様に、バネ113は、ポペット弁組立体110の外向き肩部356を、外向き肩部356が端部壁部172上にしっかりと着座するまで、弁本体350から離れるように付勢する(図1も参照のこと)。
【0029】
[0033]ポペット弁組立体106のポペットバネ354はバネ112よりも小さいバネ定数を有する。同様に、ポペット弁組立体110のポペットバネ354はバネ113よりも小さいバネ定数を有する。
【0030】
[0034]弁本体350は、弁本体350の軸方向長さに部分的に延在する孔358を画定する。孔358は、プレス嵌め法、又は、例えば、止めねじを使用することによって弁本体350に固定的にシャフト360が連結される任意の他の態様でシャフト360の一部分を受容するように構成される。
【0031】
[0035]弁本体350はまた、封止部366のためのハウジング364を含む。ポペット弁組立体106の封止部366は、中央部分254の密封表面264に対して接触し、それによって、それに対して封着するように構成される。(図1及び2も参照のこと)。同様に、ポペット弁組立体110の封止部366は、流体路114によって画定される開口の2つの側部上にマスタシリンダ組立体102の端部壁部172によって形成される密封表面に対して接触し、それによって、それに対して封着するように構成される。
【0032】
[0036]最初に図1を参照にして、ここに、制動システム100の作動が説明される。作動において、入力シャフト(図示せず)は与圧システム(図示せず)に連結される。入力シャフト(図示せず)は、与圧システム(図示せず)の補助を伴って、ブレーキペダル(図示せず)の移動を一次ピストン組立体104の後部部分252に連結される入力シャフト(図示せず)の線形移動へ伝達するように構成される。ブレーキペダル(図示せず)が解放された位置(すなわち、印加されない位置)にある状態で、制動システムは図1に示すようになっており、以下に「停止」位置と言及される。図1において、バネ112は、二次ピストン組立体108をポペット弁組立体106の外向き肩部356から離れるように付勢し(図4参照)、それによって、外向き肩部356を第1のピストン組立体104の中央部分254の密封表面264上にしっかりと着座される(図2参照)。同様に、バネ113が二次ピストン組立体108をポペット弁組立体110の外向き肩部356から離れるように付勢し、それによって、外向き肩部356をマスタシリンダ組立体102の端部壁部172上にしっかりと着座される。
【0033】
[0037]同時に、ポペット弁組立体106/110の弁バネ354は、弁本体350の外向き肩部368を弁ブラケット352の内向き肩部370から離れるように付勢する。図1を参照すると(図4も参照のこと)、これらの付勢力は、弁本体350、弁本体350に固定的に連結されるシャフト360、及び、一体に形成される頭部部分362を右方向(ポペット弁組立体106)、及び、左方向(ポペット弁組立体110)に移動させるように働く。
【0034】
[0038]開口314/318を画定するワッシャ312/316は、頭部部分362の外径よりも小さい内径を有するので、頭部部分362の移動はワッシャ312/316によって制限される。結果的に、封止部366は上記のそれらの補完的な密封表面に対して封着できない。したがって、リザーバ(図示せず)と持続的流体連通である流体路262は、一次圧力室部124と流体連通である。同様に、二次圧力室部126は流体路114を介してリザーバ(図示せず)と流体連通している。
【0035】
[0039]一次圧力室部124が一次下流の制動回路(図示せず)と持続的流体連通であるので、その中の圧力はリザーバ(図示せず)の圧力と等しい。同様に、二次圧力室部126が二次下流の制動回路(図示せず)と持続的流体連通であるので、その中の圧力はリザーバ(図示せず)の圧力と等しい。したがって、制動システム100が停止位置にある状態で、下流の制動回路(図示せず)に制動が生じない。
【0036】
[0040]図5を参照すると、制動が最初に開始されるとき(すなわち、車両の運転者がブレーキペダル(図示せず)に力を印加するとき)、一次ピストン組立体104の後部部分252に連結された入力シャフト(図示せず)は、左方向に移動し、一次ピストン組立体104を左方向に移動させる。一次ピストン組立体104の左方向への移動はバネ112及び113を圧縮し、それによって、これらのバネ112及び113によって生じる付勢力を増大させる。バネ112/113の圧縮は、(i)封止部366が、上記のそれらのそれぞれの着座表面に対してしっかりと着座し、(ii)シャフト360の頭部部分362が、それらのそれぞれの空洞308及び310内で移動するためのポテンシャルを生じる。最初に、第1の動作(すなわち、それぞれの着座表面上への封止部366の着座)が生じる。シールがしっかりと着座された後、バネ112/113の持続圧縮が第2の動作をもたらす。
【0037】
[0041]一次及び二次ピストン組立体104/108の移動はバネ112及び113のバネ定数に依存する。例えば、バネ112及び113のバネ定数が等しい場合、よって、一次ピストン組立体104のあらゆる一定量の左方向への移動について、一次及び二次ピストン組立体104/108の間の距離は、その一定量の半分(1/2)に減少する。また、バネ112/113のバネ定数が等しいと、ポペット弁組立体106及び110は、一次及び二次ピストン組立体104及び108に対して等しく移動する。
【0038】
[0042]ポペット弁組立体106/110がそれらのそれぞれの密封表面に対して封着されると、リザーバ(図示せず)と一次圧力室部124との間の流体連通は遮断される。具体的には、流体路118を通過する(すなわち、一次ピストン組立体104の中央部分254の孔260を通過する)ポペット弁組立体106の周囲の流体連通が遮断される。加えて、リザーバ(図示せず)と二次圧力室部126との間の流体連通が遮断される。具体的には、流体路114を通過するポペット弁組立体110の周囲の流体連通が遮断される。
【0039】
[0043]一旦、一次及び二次圧力室部124及び126がリザーバ(図示せず)から分離されると、一次及び二次ピストン組立体104及び108の左方向への更なる移動は、流体路121及び122を介して一次及び二次圧力室部124/126から下流の制動回路(図示せず)へ流体を移送する。
【0040】
[0044]図6を参照すると、運転者によるブレーキペダル(図示せず)への追加の力の印加に対応して、制動システム100の第1の後続稼働位置が表される。一次及び二次ピストン組立体104/108の追加の左方向への移動は、図5に表される組立体の位置と比較して、直径変位点174/176の隣接に封止部156及び162を移動させている。そのようにすることで、2つの空洞400/402が一次ピストン組立体104と二次ピストン組立体108との間に形成される。封止部156/162はより小さい直径178/180に対して封着するように配置されるが、空洞400/402は、流体路118及び116を介してリザーバ(図示せず)と流体連通である。したがって、これらの空洞400/402内の圧力は、リザーバ(図示せず)内の圧力とほぼ等しい。
【0041】
[0045]封止部156/162が直径変位点174/176の右に位置する状態で、一次及び二次ピストン組立体104/108の左方向への移動に対応して、多量の流体移送が、流体路121及び122を介してマスタシリンダ組立体102と下流の制動回路との間に生じる。以下に更に説明されるように、より小さい直径270/320を基にした制動システムと比較して、より大きい直径180/184のために、より多い流体量が下流の制動回路(図示せず)へ移送される。より多い流体量は制動システム100の所望される高速充填機能を提供する。高速充填機能は、制動システムの摩擦部材がそれらの補完的な制動表面と接触するまで、制動システム内の圧力上昇が著しく減少される場合、初期稼働時間の間のブレーキペダル(図示せず)の感覚の差異を減少させる。
【0042】
[0046]しかし、より大きい直径180/184を基にした流体移送は、入力シャフト(図示せず)に追加の印加される力を必要とする場合がある。上記のように、入力シャフト(図示せず)は、一次ピストン組立体104の移動を補助するために、与圧システム(図示せず)に連結される。一次及び二次ピストン組立体104/108を移動させるために必要なより大きい力には、より小さい直径270/320を基にしただけの制動システムと比較して、与圧システム(図示せず)が補助を提供できるような大きさにされることを必要とする場合がある。
【0043】
[0047]しかし、読者は最初の稼働時間の間、圧力上昇が著しく減少されるため、一次及び二次ピストン組立体104/108を移動させるために必要とされる力はより小さいことに留意すべきである。したがって、制動システム100は、封止部156/162が直径変位点174/176に達すると直ちに所望される高速充填が完了するような大きさにできる。結果的に、与圧システム(図示せず)は、上記のより大きい力を提供できる大きさにされる必要がない。
【0044】
[0048]運転者によるブレーキペダル(図示せず)への力の更なる印加は、図6に表される状態から一次ピストン組立体104の左方向への更なる移動をもたらす。図7を参照すると、制動システム100の第2の後続稼働位置が表される。一次及び二次圧力室部124及び126は、リザーバ(図示せず)から分離された状態を維持するので、一次ピストン組立体104及び二次ピストン組立体108の追加の左方向への移動は、これらの室部124及び126内の流体の追加の加圧をもたらす。
【0045】
[0049]図7に表されるように、封止部156及び162は、それぞれ直径変位点174及び176を越えている。したがって、これらの封止部156/162は更なる密封機能(すなわち、スリーブ組立体120に対して一次及び二次ピストン組立体104/108を封着する)を提供しない。一旦、封止部156/162が直径変位点174/176を越えると、封止部154/160だけが、封止部156/162によって先に提供された密封機能を提供する。しかし、封止部154/160は、一次及び二次ピストン組立体104/108の直径270/320に対して封着する。
【0046】
[0050]したがって、封止部156/162が直径変位点174/176を越えた後のマスタシリンダ組立体102から下流の制動回路(図示せず)への流体移送は、より小さい一次及び二次ピストン直径270/320を基にする。より小さい直径270/320、及び、それによるより少量の流体移送のため、一次及び二次ピストン組立体104/108を移動させるために必要とされ、与圧システムによって(図示せず)提供される力はより小さい。
【0047】
[0051]封止部156/162が直径変位点174/176を越えると直ちに、リザーバ(図示せず)の圧力か又はそれより僅かに低い圧力であった先に形成された空洞400/402は、より大きい一次及び二次圧力室部124/126と一体化される。したがって、空洞400/402内に集積された流体容量は、下流の制動回路(図示せず)に更に追加され、加えて、所望される高速充填機能を提供する。
【0048】
[0052]読者は、シャフト360の頭部部分362が、図6及び7に表されるように空洞308及び310内に配置されることに留意すべきである。頭部部分362は、一次及び二次ピストン組立体104/108が更に左方向に移動するにつれて、空洞308/310へ滑入する。
【0049】
[0053]車両の運転者がブレーキペダル(図示せず)を部分的に解放するとき、入力シャフト(図示せず)は右方向に移動し、それと共に一次ピストン組立体104の後部部分252を移動させる。下流の制動回路(図示せず)内の流体は、封止部156/162が直径変位点174/176を越えるまで、一次及び二次ピストン直径270/320を基にした流体路121/122を介してマスタシリンダ組立体102へ戻る。この点で、流体は、下流の制動回路(図示せず)とより大きい直径180/184を基にしたマスタシリンダ組立体102との間で移送される。また、空洞400/402内の流体は、流体路118及び116を介してリザーバ(図示せず)へ戻される。
【0050】
[0054]ブレーキペダル(図示せず)の更なる解放は、一次及び二次ピストン組立体104/108の更なる右方向への移動のために、上記のように、封止部366をそれらのそれぞれの密封表面から離座させる。封止部366の破断は、一次及び二次圧力室部124及び126を流体路114/118を介してリザーバ(図示せず)と流体連通にする。
【0051】
[0055]本発明が図面及び先の説明において詳細に例示され、説明されたが、それらは、例示的であり、何ら制限を課すものではないとみなされるべきである。好ましい実施形態が示されたに過ぎず、本発明の精神に含まれる全ての変更、改良及び応用は、保護の対象とされることが所望されることを理解されたい。
【符号の説明】
【0052】
100 制動システム
102 マスタシリンダ組立体
104 一次ピストン組立体
106 第1のポペット弁組立体
107 空洞
108 二次ピストン組立体
110 第2のポペット弁組立体
120 スリーブ組立体
124 一次圧力室部
126 二次圧力室部
128 一次圧力室部の第1の室部部分
130 一次圧力室部の第2の室部部分
132 二次圧力室部の第1の室部部分
134 二次圧力室部の第2の室部部分
154 封止部
156 封止部
160 封止部
162 封止部
252 一次ピストン組立体の後部部分
254 一次ピストン組立体の中央部分
256 一次ピストン組立体の前方部分
300 二次ピストン組立体の本体部分
302 二次ピストン組立体の前方部分
304 二次ピストン組立体の後方部材
306 二次ピストン組立体の正面部材
308 空洞
310 空洞
350 ポペット弁組立体の弁本体
352 ポペット弁組立体の弁ブラケット
360 ポペット弁組立体のシャフト
362 ポペット弁組立体のシャフトの頭部部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速充填制動システムにおいて、
マスタシリンダと、
第2の室部部分の前方に配置された第1の室部部分を有し、前記第1の室部部分は前記第2の室部部分の直径よりも大きな直径を有する、一次圧力室部と、
前記一次圧力室部内に配置された第1のピストン部分、及び前記一次圧力室部から延出する第2のピストン部分を含み、前記第1のピストン部分は、(i)前記第2のピストン部分の直径よりも大きく、(ii)前記第2の室部部分の前記直径に対して補完的な直径を有する、一次ピストンとを備えた高速充填制動システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記第1のピストン部分の周囲に延在する第1の冠状封止部であって、(i)前記第1のピストン部分が前記第2の室部部分内にあり、前記一次ピストンが前方方向へ移動するときに、前記第2の室部部分を密封係合するように構成され、(ii)前記第1のピストン部分が前記第1の室部部分内にあり、前記一次ピストンが前記前方方向へ移動するときに、前記第1の室部部分を密封係合しないように構成された、第1の冠状封止部と、
前記一次圧力室部の外側に配置された第2の冠状封止部であって、前記第2のピストン部分が前記前方方向へ移動するときに、前記第2のピストン部分を密封係合するように構成された、第2の冠状封止部とを更に備えた、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、
第4の室部部分の前方に配置された第3の室部部分を有し、前記第3の室部部分は前記第4の室部部分の直径よりも大きな直径を有する、二次圧力室部と、
前記二次圧力室部内に配置された第3のピストン部分、及び前記二次圧力室部から延出する第4のピストン部分を含み、前記第3のピストン部分は(i)前記第4のピストン部分の直径よりも大きく、(ii)前記第4の室部部分の前記直径に対して補完的な直径を有する、二次ピストンとを更に備えた、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、
前記第1のピストン部分の周囲に延在する第1の冠状封止部であって、(i)前記第1のピストン部分が前記第2の室部部分内にあり、前記一次ピストンが前方方向へ移動するときに、前記第2の室部部分を密封係合するように構成され、(ii)前記第1のピストン部分が前記第1の室部部分内にあり、前記一次ピストンが前記前方方向へ移動するときに、前記第1の室部部分を密封係合しないように構成された、第1の冠状封止部と、
前記一次圧力室部の外側に配置された第2の冠状封止部であって、前記第2のピストン部分が前記前方方向へ移動するときに、前記第2のピストン部分を密封係合するように構成された、第2の冠状封止部とを更に備えた、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、
前記マスタシリンダ内に配置され、前記一次圧力室部及び前記二次圧力室部を画定するスリーブを更に備えた、システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムにおいて、
前記第1のピストン部分内の第1の空洞内に配置された第1のポペット弁を更に備えた、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、
前記二次圧力室部内に配置された第2のポペット弁であって、前記二次ピストンが前方位置にあるときに、前記第2のポペット弁の少なくとも一部分が第2の空洞内に受容されるように、前記第3のピストン部分内の前記第2の空洞と位置合わせされた、第2のポペット弁
を更に備える、システム。
【請求項8】
請求項5に記載のシステムにおいて、
前記スリーブは、
前記第1の室部部分を画定する第1の概円筒形部分と、
前記第1の概円筒形部分に沿って軸方向に延在する少なくとも1つの溝と、
前記第2の室部部分を画定する第2の円筒形部分とを更に備えた、システム。
【請求項9】
請求項5に記載のシステムにおいて、
前記第2の冠状封止部は、前記スリーブ内の冠状溝内に配置された、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−17096(P2012−17096A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−150928(P2011−150928)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】