説明

高速応答のフォトクロミックナノ構造コンタクトレンズ

水、モノマー、およびそのモノマーと共重合可能な界面活性剤の両連続マイクロエマルションが重合されることにより、高分子材料が形成され、その高分子材料は、相互接続された細孔を規定するポリマーマトリックスを含む。その高分子材料は、少なくとも1つのフォトクロミック剤をさらに含み得る。そのフォトクロミック剤は、そのポリマーマトリックスまたは相互接続された細孔の一方または両方に分散され得る。その高分子材料は、コンタクトレンズなどの眼科用物品を含むフォトクロミック物品を形成するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、フォトクロミック高分子材料を含む方法、組成物および物品、特に、これらの材料をコンタクトレンズにおいて使用するための方法、組成物および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
フォトクロミック化合物は、照射されると色調変化を起こし、その光化学反応の生成物は、熱によっておよび/またはそれに続く適当な波長の光の照射によって、初期状態に戻り得る。この興味深い作用は、そのフォトクロミック化合物の応答時間および他の特性に応じて、眼科用レンズ、非直線デバイスの構成要素、光導波路および光シャッター、光変調器、光学式記憶媒体および遅延発生器、ならびに他の光学デバイスなどの用途において利用することができる。
【0003】
種々の色のついた物品を作製するためにフォトクロミック化合物を使用することが知られている。例えば、フォトクロミック眼鏡では、明光(例えば、昼光)に曝露されたときだけ、可視光線吸収レンズ(サングラス)の利便性を着用者に提供するいくつかの成功例が見出されている。そのレンズは一般に、低光量条件下では実質的に無色であり、最適な暗所視および屋内視を提供する。フォトクロミック眼鏡では、サングラスと通常眼鏡とを切り替える必要が無い。
【0004】
しかしながら、コンタクトレンズなどの極薄のフォトクロミック物品を作製するための既存のフォトクロミック化合物および方法の成功例は限られている。一部の例では、それらの物品は、着用者に対して顕著な違いをもたらすのに十分な暗さを提供せず、そして/または既存のフォトクロミック化合物および製造方法は、眼科用デバイスのために使用される材料および/またはプロセスと適合していない。さらに、フォトクロミック化合物が熱によって有色型から無色型に褪色するタイムスケールは、通常、数分から数時間であり、これは、ある特定の用途にとっては遅すぎる。
【0005】
したがって、改善された組成物、方法および物品が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明は、概して、フォトクロミック高分子材料、ならびに関係する方法および物品に関する。本発明の対象は、いくつかの実施形態において、相互関係のある生成物、特定の問題に対する代替溶液、ならびに/または1つ以上の組成物および/もしくは方法の複数の異なる使用を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明は、高分子材料を形成する方法を提供し、その方法は、水、モノマー、および前記モノマーと共重合可能な界面活性剤を含む両連続マイクロエマルションを重合させることにより、少なくとも部分的に水で満たされた相互接続された細孔を規定するポリマーマトリックスを含む多孔性高分子材料を形成する工程を包含し、ここで、前記マイクロエマルションは、フォトクロミック剤をさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明は、眼科用デバイスにおいて使用するためのフォトクロミック高分子材料を提供し、その材料は、相互接続された細孔を規定するポリマーマトリックスを含み、前記相互接続された細孔は、水を含み、前記ポリマーマトリックスは、実質的に疎水性であり、その高分子材料は、フォトクロミック剤をさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明は、光学デバイスを提供し、その光学デバイスは、そのデバイスを第1の相対的に透明の状態から第2の少なくとも部分的に不透明の状態に切り替え可能にするフォトクロミック剤を含み、それにより、適切な電磁放射線への曝露および/または熱的緩和の際に、そのデバイスが第1の状態から第2の状態におよび第2の状態から第1の状態に切り替わるとき(各々、30秒以内)、その光路を通過する可視光線の透過が少なくとも50%変化し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の他の局面、実施形態および特徴は、添付の図面と併せて検討されるとき、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。添付の図面は、模式的なものであって、縮尺どおりに描かれることを目的としていない。明確を期すために、すべての構成要素がすべての図において標識されているわけでもないし、当業者に本発明を理解させるために説明が必要ない場合は、本発明の各実施形態のすべての構成要素が示されるわけではない。本明細書中で参考として援用されるすべての特許出願および特許は、それらの全体が参考として援用される。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配することができる。
【図1】図1は、非限定的な実施形態に記載のコンタクトレンズの模式図を示している。
【図2】図2は、両連続マイクロエマルションの非限定的な構造を図示している。
【図3】図3〜6は、両連続マイクロエマルションからコンタクトレンズを形成するための非限定的な方法を図示している模式図を示している。
【図4】図3〜6は、両連続マイクロエマルションからコンタクトレンズを形成するための非限定的な方法を図示している模式図を示している。
【図5】図3〜6は、両連続マイクロエマルションからコンタクトレンズを形成するための非限定的な方法を図示している模式図を示している。
【図6】図3〜6は、両連続マイクロエマルションからコンタクトレンズを形成するための非限定的な方法を図示している模式図を示している。
【図7】図7は、ピンホールレンズの非限定的な例を示している。
【図8】図8は、非限定的なフォトクロミック剤である6’−(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル)−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−プロピル−スピロ[2H−インドール−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン(SPO)の構造および対応する開環型の構造を示している。
【図9A】図9A〜9Cは、本発明の高分子材料の非限定的な例の電界放射型走査型電子顕微鏡の写真を示している。
【図9B】図9A〜9Cは、本発明の高分子材料の非限定的な例の電界放射型走査型電子顕微鏡の写真を示している。
【図9C】図9A〜9Cは、本発明の高分子材料の非限定的な例の電界放射型走査型電子顕微鏡の写真を示している。
【図10】図10は、非限定的な実施形態に記載の、様々な時間にわたってUV照射されたときの、SPOを含む本発明の高分子材料の吸光度スペクトルの変化を示している。
【図11】図11は、非限定的な実施形態に記載の、SPOを含む本発明の高分子材料の着色および脱色の時間に応じた吸光度のグラフを示している。
【図12】図12は、非限定的な実施形態に記載の、SPOを含む本発明の高分子材料の時間依存的な光着色(photocoloration)および退色を示している。
【図13】図13は、いくつかの実施形態に記載の材料の引張り強さおよび引張り係数(tensile modulus)のグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明は、概して、フォトクロミック高分子材料、ならびに関係する方法および物品に関する。いくつかの実施形態において、物品は、眼科用レンズ、より詳細には、コンタクトレンズである。高分子材料は、複数の相互接続された細孔を規定するポリマーマトリックスを含み得る。フォトクロミック剤は、実質的にそのポリマーマトリックス中に含まれ得る。一部の例では、眼科用レンズは、強光(例えば、UV光)から眼を保護するために使用され得る。
【0012】
フォトクロミック材料は、光(例えば、UV光)に曝露されたときに色調を変化させる材料である。フォトクロミック材料は、光に曝露されると、第1の色の状態(例えば、無色)から第2の色の状態(例えば、暗色)に変化し、これは、ダイレクトクロミズム(direct chromism)と呼ばれる。その逆の遷移は、逆フォトクロミズムと呼ばれる。一部の例では、逆クロミズムは、加熱によって加速され得る。さらに、逆フォトクロミズムは、フォトクロミック剤とポリマーマトリックスまたは他の構成要素もしくは材料との相互作用が安定化されることに起因して、阻害され得る。好都合なことに、本明細書中に記載されるフォトクロミック高分子材料は、現在公知の材料と比べて、迅速な逆フォトクロミズムを示し得る。理論に拘束するつもりはないが、このことは、フォトクロミック剤を囲むナノ環境またはマイクロ環境を制御する能力に少なくとも部分的に起因し得る。そのマイクロ環境は、本明細書中に記載されるような両連続マイクロエマルション中に提供される構成要素を変更することによって制御され得る。一部の例では、そのナノ環境またはマイクロ環境は、捕捉されたフォトクロミック剤が起こす高速および超高速の事象に対して影響を及ぼし得る。一般に、フォトクロミック剤の閉じ込めの程度は、その構造、フォトクロミック剤の向き、複合体の剛性、およびナノキャビティまたはマイクロキャビティの極性を含む様々な因子によって影響され得る。分子ポケットの相対的に親水性の内部および相対的に疎水性の外部は、フォトクロミック剤に対して適当かつ促進性の(facilitating)ホストを提供するのを助け得、さらに、サイズが制御されたナノ環境およびマイクロ環境の作用(例えば、フォトクロミック剤の低自由度)を研究するための独特の機会をもたらし得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明のフォトクロミック高分子物品は、高分子材料およびフォトクロミック剤を含み、ここで、その高分子材料は、複数の相互に接続している細孔を規定するポリマーマトリックスを含む。用語「高分子材料」は、本明細書中で使用されるとき、ポリマーマトリックスおよび複数の相互に接続している細孔を含む材料のことを指す。例えば、本発明のコンタクトレンズの非限定的な例が図1に描かれている。コンタクトレンズ10は、多孔性高分子材料12から形成されており、フォトクロミック剤14を含む。細孔は、それら細孔のうちの少なくとも一部が互いとつながっているかまたは連結されていることにより1つ以上の連続的なネットワークを形成するとき、それらの細孔は、互いに接続され得る。その細孔は、流体(例えば、水、空気または別の流体)で満たされ得る。その流体は、その高分子材料から放出可能であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、高分子材料は、両連続マイクロエマルションから形成され得る。両連続マイクロエマルションは、水、モノマー、およびそのモノマーと共重合可能な界面活性剤、ならびに必要に応じてフォトクロミック剤を含み得る。その両連続マイクロエマルションは、重合されることにより、相互接続された細孔を規定するポリマーマトリックスを形成し得る。例えば、ポリマーマトリックスは、1つ以上の共重合可能なモノマー、そのモノマーの少なくとも1つと共重合可能な1つ以上の界面活性剤、および水の両連続マイクロエマルションを重合させることによって調製され得、得られる高分子材料は、水で満たされた相互接続された細孔を有する。その両連続マイクロエマルションは、重合開始剤もしくは架橋剤またはその両方も含み得る。
【0015】
両連続マイクロエマルション30の例示的な構造は、図2に図示されており、ここで、油性ドメイン32(モノマーを含む)および水性ドメイン34(水を含む)は、ランダムに分布しており、それぞれ互いに接続されて3次元すべてに広がっている。油性ドメイン32が重合されると、水性ドメイン34の存在により、水性ドメイン34中に存在した水で満たされた相互接続された細孔が生じる。
【0016】
一部の例では、高分子材料を形成する方法は、水を含む第1の連続相、ならびにモノマーおよび前記モノマーと共重合可能な(copolymerization)界面活性剤を含む第2の連続相を含む両連続マイクロエマルションの重合により、多孔性高分子材料を形成する工程を包含する。その高分子材料は、第2の相から形成されるポリマーマトリックス部分、および第1の相から形成される水部分(例えば、水性ドメイン)を含み得、その水相は、ポリマーマトリックスにおいて規定される相互接続された細孔を形成する。その高分子材料は、少なくとも1つのフォトクロミック剤を含み得る。そのフォトクロミック剤は、重合前に第1および/または第2の連続相中に分散され得る。あるいは、そのフォトクロミック剤は、重合後に高分子材料に提供され得る。
【0017】
フォトクロミック剤は、高分子材料に組み込まれ得る。フォトクロミック剤は、実質的に、高分子材料のポリマーマトリックス内および/または互いに接続している細孔内に含められ得る。フォトクロミック剤は、疎水性/親水性の相互作用に起因して、および/またはフォトクロミック剤とポリマーマトリックスとの間の少なくとも1つの結合の形成に起因して、実質的にポリマーマトリックス(または相互に接続している細孔)内に含められ得る。例えば、相互に接続している細孔(例えば、水を含むもの)と比べてポリマーマトリックスが実質的に疎水性である実施形態では、疎水性フォトクロミック剤が、疎水性/親水性の相互作用に起因して、ポリマーマトリックス内に実質的に含められ得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、フォトクロミック剤は、高分子材料の相互に接続している細孔内に実質的に含められ得ることが理解されるべきである。そのような実施形態において、フォトクロミック剤が相互に接続している細孔または表面の開口部の内部断面の内部に実質的に捕捉されて使用中に保持され得るほどこれらのいくつかの内部断面が狭い限り、そのフォトクロミック剤は、ポリマーマトリックスから浸出しないかもしれない。本明細書中で参考として援用される“Trapping Glucose Probe in Pores of Polymer”と題された2009年7月9日に出願され、2010年1月14日にWO/2010/005398として公開された国際特許出願番号PCT/SG2009/000245には、選択された細孔サイズを有する高分子材料を形成するための適当な方法および組成物が記載されている。
【0018】
一部の例では、フォトクロミック剤は、少なくとも1つの結合(例えば、共有結合)の形成によってポリマーマトリックスと会合されていることがある。他の例では、フォトクロミック剤の少なくとも(a least)一部が、ポリマーマトリックスと架橋されていることがある。本明細書中で使用されるとき、ある構成要素が、ポリマーの2つ以上の隣接鎖に対して少なくとも1つの結合(例えば、共有結合)を含むとき、その構成要素は、ポリマーマトリックスと「架橋される」。当業者は、フォトクロミック剤をポリマーマトリックスと共有結合するための方法を認識しているだろう。例えば、少なくとも1つの重合可能な基(例えば、重合され得る基)によってフォトクロミック基は官能基化され得る。その重合可能な基の構造は、ポリマーマトリックスが形成する構造に左右される。重合可能な基の非限定的な例としては、p−ビニルベンゼン、またはアクリレート部分(例えば、(メチル)アクリレート)を含む化合物などが挙げられる。一部の例では、フォトクロミック基によってモノマーは官能基化され、ポリマー中のフォトクロミック基の比は、官能基化されていないモノマーと官能基化されたモノマーとの比を変更することによって制御され得る。そのような実施形態において、官能基化されていないモノマーと官能基化されたモノマーとの比は、約5:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約40:1、約50:1、約100:1もしくはそれより大きくあり得るか、または約10:1〜約100:1もしくは約20:1〜約70:1もしくは約20:1〜約40:1などであり得る。
【0019】
フォトクロミック剤は、当業者に公知の任意のフォトクロミック化合物であり得る。用語「フォトクロミック剤」は、当該分野における通常の意味を与えられ、光に曝露されたときに可逆的な色調変化を示す任意の化合物のことを指す。一部の例では、その光は、紫外線である。フォトクロミック剤は、以下のクラスの材料を含み得る:クロメン類(例えば、ナフトピラン類、ベンゾピラン類、インデノナフトピラン類、フェナントロピラン類)、スピロピラン類(例えば、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトピラン類、スピロ(インドリン)ベンゾピラン類、スピロ(インドリン)ナフトピラン類、スピロ(インドリン)キノピラン類、スピロ(インドリン)ピラン類)、オキサジン類(例えば、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン類、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン類、スピロ(ベンゾインドリン)ピリドベンゾオキサジン類、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトオキサジン類、スピロ(インドリン)ベンゾオキサジン類)、水銀ジチゾネート類、フルギド類、フルギミド類などまたはそれらの組み合わせ。特定の実施形態において、フォトクロミック剤は、スピロ−ナフトオキサジンである6’−(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル)−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−プロピル−スピロ[2H−インドール−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジンである。
【0020】
本明細書中で使用されるとき、「フォトクロミック量」とは、活性化されたときに肉眼で識別可能なフォトクロミック作用をもたらすのに少なくとも十分なフォトクロミック剤の量のことを意味する。重合可能な混合物中のフォトクロミック剤の濃度は、いくつかの考慮すべき点(例えば、フォトクロミック化合物のフォトクロミック効率、フォトクロミック化合物の溶解性(例えば、重合可能な材料中、高分子材料の細孔内に含まれる流体中などにおける溶解性)、材料または物品(例えば、レンズ)の厚さ、および光に曝露されたときの材料または物品(例えば、レンズ)の所望の暗度)に基づいて選択され得る。代表的には、物品に組み込まれるフォトクロミック剤の量が多くなるほど、色の強さは、ある特定の限界まで強くなる。一般に、それ以上フォトクロミック剤を添加しても顕著な作用がもたらされない点が存在し得る。上記重合可能な混合物または物品は、2つ以上のフォトクロミック剤を含み得る。
【0021】
さらに、上記物品または材料中のフォトクロミック剤の濃度は、本明細書中に記載されるように、その物品の異なる位置において変更され得る。物品(例えば、レンズ)の所与の位置におけるフォトクロミック剤の濃度を高めることによって、その位置において遮蔽される光のパーセンテージは、通常、その濃度が高められていない位置と比べて高いことが認識されるだろう。用語「フォトクロミック領域」とは、1つ以上のフォトクロミック剤を含む物品または材料のレンズの部分のことを指す。
【0022】
本発明の実施形態とともに使用するためのフォトクロミック材料は、通常、可視スペクトル(およそ400nm〜700nm)の少なくとも一部の光を少なくとも部分的に遮蔽する。しかしながら、材料が、そのスペクトルの紫外部分または赤外部分の少なくともいくらかの光を遮蔽する場合は、健康上の恩恵をもたらし得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、フォトクロミック材料は、紫外線を放射する任意の適当な光源に曝露されると色調の変化を示す。1つの実施形態において、その光源は、太陽光である。別の実施形態において、その光源は、水銀ランプまたはキセノンランプであり得る。可視の色調変化を示すのに必要な曝露時間は、様々な因子(光の波長および/または強度が挙げられるがこれらに限定されない)に応じて変動し得る。
【0024】
当業者は、フォトクロミック材料に対するダイレクトフォトクロミズム応答時間と逆フォトクロミズム応答時間を決定するための方法および手法を認識しているだろう。一部の例では、その応答時間は、寿命Tとして表されることがあり、ここで、Tは、以下の方程式に従って算出され得る。
【0025】
T=1/k
式中、kは速度定数である。一部の例では、本発明の材料の逆フォトクロミズムおよび/またはダイレクトフォトクロミズムに対する速度定数は、少なくとも約0.01s−1、約0.02s−1、約0.03s−1、約0.05s−1、約0.07s−1、約0.10s−1、約0.12s−1、約0.15s−1、約0.20s−1、約0.3s−1またはそれより大きい。一部の例では、その速度定数は、約0.01s−1〜約0.4s−1、約0.02s−1〜約0.25s−1、約0.05s−1〜約0.15s−1、約0.08s−1〜約0.12s−1などであり得る。
【0026】
当業者は、マイクロエマルションを調製するための方法および手法を認識しているだろう。用語「マイクロエマルション」は、当該分野における通常の意味が与えられ、別の液相への1つの液相の熱力学的に安定な分散系のことを指す。そのマイクロエマルションは、界面活性剤の界面膜によって安定化され得る。一般に、2つの液相のうちの一方が親水性または疎油性(例えば、水)であり、他方が、疎水性または親油性(例えば、油)である。代表的には、マイクロエマルション中の液滴またはドメインの直径は、約100ナノメートル以下であり、ゆえに、そのマイクロエマルションは、透明である(例えば、マイクロエマルション内に含まれるフォトクロミック剤の色の変化の前)。マイクロエマルションは、連続的または両連続であり得る。
【0027】
マイクロエマルションは、例えば、標準的な手法(例えば、超音波処理、ボルテックス、または混合物中に異なる相の微小液滴を作り出すための他のかき混ぜ方法)を用いて構成要素(例えば、モノマー、界面活性剤、水)の混合物を分散させることによって、調製され得る。あるいは、その混合物は、微細な液滴を作り出すためにナノメートルスケールの細孔を有するフィルターに通されてもよい。様々な構成要素の割合および界面活性剤の親水性−親油性の値に応じて、液滴は、油で膨潤し水中に分散され得るか(通常のマイクロエマルションまたはO/Wマイクロエマルションと呼ばれる)、もしくは水で膨潤するが油中に分散され得るか(逆マイクロエマルションまたはW/Oマイクロエマルションと呼ばれる)、またはマイクロエマルションは、両連続であり得る。
【0028】
当業者が理解するように、ナノ多孔性および一部の例では透明なポリマーマトリックスは、マイクロエマルションの構成要素が適切な比で存在し、かつ液滴またはドメインが適切なサイズを有するとき、得られる場合がある。当業者に公知であるように、両連続マイクロエマルションを形成するのに適した構成要素の適切な割合を決定するために、モノマー、水および界面活性剤についての三元状態図が作成され得る。その図において単相マイクロエマルションに対応する領域が特定され得、特定された領域内にそれらの構成要素が入るように、それらの割合が選択され得る。当業者は、得られる高分子材料においてある特定の望ましい特性を達成するために、その図に従って割合を調整することができる。さらに、両連続マイクロエマルションの形成は、当業者に公知の手法を用いて確認され得る。例えば、その混合物の伝導性は、マイクロエマルションが両連続であるとき、実質的に上昇し得る。その混合物の伝導性は、0.1M塩化ナトリウム溶液をその混合物に滴定した後に導電率計を用いて測定され得る。マイクロエマルション中の水は、純水または水ベースの液体であり得る。その水は、本明細書中に記載されるように様々な添加物を必要に応じて含み得る。
【0029】
当業者は、種々の比で種々のモノマーおよび界面活性剤を組み合わせることにより、得られる高分子材料の様々な特性に対して所望の作用を達成する方法、例えば、得られる高分子材料の機械的強度または親水性を改善する方法を理解しているだろう。一般に、特定の構成要素(例えば、モノマーおよび界面活性剤)の選択および重量比は、得られる高分子材料の用途に左右される。その比は、得られる高分子材料が、適当であるように、ならびにその高分子材料が使用される予定の環境および所望の特性を有する環境と適合するように、選択され得る。一部の例では、両連続エマルションにおける含水率は、約10%〜約50%、約15%〜約45%、約15%〜約40%、約20%〜約35%または約20%〜約30%である。界面活性剤は、約10%〜約50%、約15%〜約45%、約20%〜約40%、約30%〜約50%、約10%〜約30%、約20%〜約30%または約15%〜約25%の量で存在し得る。1つ以上のモノマーは、約20%〜約70%、約30%〜約70%、約40%〜約70%、約40%〜約60%などの量で存在し得る。架橋剤は、約0.1%〜約10%、約1%〜約10%、約5%〜約10%、約5%〜約15%、約3%〜約8%、約0.1%〜約5%、約0.1%〜約3%、約0.5%〜約2%、約0.5%〜約1.5%、または約1.0%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%もしくはそれより多くの量で存在し得る。フォトクロミック剤は、約0.01%〜約5%、約0.1%〜約5%、約0.01%〜約3%、約0.01%〜約2%、約0.01%〜約1%、約0.01%〜約0.5%、約0.01%〜約0.2%または約0.1%の量で存在し得る。エマルションは、さらに1つ以上の添加物(例えば、本明細書中に記載されるような重合開始剤を含む)を0.01%〜約5%、約0.1%〜約5%、約0.01%〜約3%、約0.01%〜約2%、約0.01%〜約1%、約0.01%〜約0.5%、約0.01%〜約0.2%、または約0.1%、約0.5%、約1.0%、約2.0%、約2.5%、約3.0%、約4.0%、約0.5%もしくはそれより多くの量で含み得る。特定の実施形態において、両連続マイクロエマルションは、約15〜約50%の水、約5%〜約40%のモノマーおよび約10%〜約50%の界面活性剤を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、高分子材料の含水率は、平衡含水率として決定され得る。当業者は、平衡含水率を決定するための方法を認識しているだろう。高分子材料の平衡含水率(Q)は、以下のとおり算出され得る:
Q=(W−W)×100/W,(1)
式中、Wは、飽和重量であり、Wは、乾燥重量である。飽和重量は、さらに浸漬しても総重量が有意に増加しない時間にわたって高分子材料を水に浸漬した後に測定され得る。
【0031】
様々な他の測定可能な因子が、決定され得、そして/または構成要素の比を変更することによって高分子材料に合うように調整される。一部の例では、高分子材料は、約80%より高い、約85%より高い、約88%より高い、約90%より高い、約92%より高い、約95%より高い、もしくはそれより高いか、または約80%〜約100%、約80%〜約95%、約85%〜約95%もしくは約88%〜約93%の光透過率を有し得る。高分子材料の屈折率は、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5もしくはそれより大きい、または約0.5〜約1.5、約0.7〜約1.4もしくは約0.9〜約1.3であり得る。高分子材料は、少なくとも約1×10−6cm−2/s、約2×10−6cm−2/s、約3×10−6cm−2/s、約4×10−6cm−2/s、約5×10−6cm−2/sもしくはそれより大きい、または約2.1×10−6cm−2/s〜約3.2×10−6cm−2/s、約1×10−6cm−2/s〜約5×10−6cm−2/s、約2×10−6cm−2/s〜約4×10−6cm−2/s、約1×10−6cm−2/s〜約7×10−6cm−2/sもしくは約0.1×10−6cm−2/s〜約10×10−6cm−2/sというグルコース拡散透過係数を有し得る。高分子材料は、少なくとも約1.0×10−7cm−2/s、約1.2×10−7cm−2/s、約1.4×10−7cm−2/s、約1.6×10−7cm−2/s、約1.8×10−7cm−2/s、約2.0×10−7cm−2/sもしくはそれより大きい、または約1.4×10−7cm−2/s〜約1.8×10−7cm−2/s、約1.0×10−7cm−2/s〜約2.0×10−7cm−2/s、約1.2×10−7cm−2/s〜約2.0×10−7cm−2/s、約1.4×10−7cm−2/s〜約2.0×10−7cm−2/s、約1.4×10−7cm−2/s〜約1.6×10−7cm−2/sというアルブミン拡散透過係数を有し得る。高分子材料は、少なくとも約1MPa、約1.5MPa、約2MPa、約2.5MPa、約3MPa、約4MPaもしくはそれより大きい、または約1MPa〜約10MPa、約1MPa〜約5MPa、約2MPa〜約5MPa、約1MPa〜約3MPaもしくは約2MPa〜約4MPaという引張り強さを有し得る。高分子材料は、少なくとも約60MPa、約80MPa、約90MPa、約100MPa、約110MPaもしくはそれより大きい、または約50MPa〜約150MPa、約60MPa〜約140MPa、約80MPa〜約120MPaもしくは約60MPa〜約110MPaというヤング率を有し得る。当業者は、高分子材料について上記パラメータを測定するための方法およびデバイスを認識しているだろう。例えば、酸素透過性は、Dr.Irving Fattにちなんで命名されたFATT法としても知られるポーラログラフ法を用いて測定され得る。この方法は、RehderTMから入手可能なModel 201T Oxygen Permeometer,M201Tを用いて行われ得る。
【0032】
医学的用途の場合、高分子材料は、安全かつヒト細胞と生体適合性であるべきである。コンタクトレンズとして使用する場合、高分子材料は、流体(例えば、気体(例えば、OおよびCO)、様々な塩、栄養分、水および涙液の多種多様な他の構成要素)に対して透過性であることが望ましい。高分子材料全体にわたって相互に接続している細孔が分布しているおかげで、眼および周囲の環境までの気体、分子、栄養分および/またはミネラルの輸送が容易になり得る。
【0033】
本高分子材料の相互に接続している細孔は、約10nm〜約100nm、約20nm〜約90nmまたは約30〜約80nmという細孔径を有し得る。それらの細孔は、円形または他の横断面の形状を有し得、種々のサイズを有し得る。本明細書中で使用されるとき、細孔径とは、細孔の横断面の平均直径または有効径のことを指す。円形でない横断面の有効径は、その非円形の横断面の断面積と同じ断面積を有する円形の横断面の直径と等しい。いくつかの実施形態において(例えば、細孔が水で満たされているときに高分子材料が膨潤性であるとき)、その細孔のサイズは、その高分子材料中の含水率に応じて変化し得る。その高分子材料が乾燥しているとき、それらの細孔の一部または全部は、空気などの気体で満たされ得るかまたは部分的に満たされ得る。したがって、その高分子材料は、スポンジのように挙動し得る。代替の実施形態において、本高分子材料が乾燥条件(高分子材料の含水率が最小または最小に近い)にあるとき、細孔径は、約10nm〜100nmの範囲であり得る。
【0034】
細孔は、ランダムに分布され得る。細孔のいくつかは、閉じた細孔であり得、これは、それらの細孔が他の細孔と接続されていないかもしくは結合していないか、または高分子材料の表面に向かって開いていないことを意味する。すべての細孔が互いに接続されている必要はない。当業者が理解するように、本高分子材料は、使用法に応じて、相互接続された細孔をある程度有するように調製され得る。
【0035】
一部の例では、高分子材料は、実質的に透明である(例えば、フォトクロミック材料における色調の変化の前)。本明細書中で使用されるとき、用語「透明」は、コンタクトレンズまたは同様のデバイスにとって許容され得る透明の程度、例えば、コンタクトレンズまたは他の眼科用デバイスを製造する際に使用される他の材料を通過する可視光線の透過の程度と等価な、本高分子材料を通過する可視光線の透過の程度のことを広く記載する。
【0036】
両連続マイクロエマルションは、当業者に公知の標準的な手法によって重合され得る。例えば、両連続マイクロエマルションは、熱によって、触媒を加えることによって、マイクロエマルションに照射することによって、またはマイクロエマルションにフリーラジカルを導入することによって、重合され得る。選択される重合の方法は、マイクロエマルションの構成要素の性質に依存し得る。
【0037】
両連続マイクロエマルションを形成するためのモノマーは、当業者に公知の任意の適当なモノマーであり得、それは、別のモノマー(例えば、界面活性剤)と共重合することにより高分子材料を形成することができる。そのモノマーは、界面活性剤などの別のモノマーと共重合可能であるが、そのモノマーは、それ自体と重合可能であってもよい。適当な両連続マイクロエマルションを調製するために使用され得るモノマーのタイプおよび量は、当業者に公知である。例示的なモノマーは、メチルメタクリレート(MMA)、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、モノカルボン酸(例えば、アクリル酸(AA)およびメタクリル酸(MA))、グリシジルメタクリレート(GMA)およびシリコーンタイプのモノマーなどを含むエチレン性不飽和(ethylenically unsaturated)モノマーである。これらのモノマーの適当な組み合わせも使用することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、1種より多いモノマーが提供され得る。一部の例では、モノマーの組み合わせは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)よりも親水性である第1のモノマー、およびHEMAと同程度の親水性であるかまたはHEMAより親水性でない第2のモノマーを含む。両連続マイクロエマルション中のモノマーは、重合されることにより、多孔性高分子材料を形成し得る。本発明の例示的な実施形態において、第1のモノマーと第2のモノマーとの組み合わせおよびそれらの濃度は、得られる高分子材料が特定の用途にとって所望の特性を有するように都合よく選択され得る。
【0039】
一部の例では、第1のモノマーは、N−ビニルピロリドン(NVP)またはメタクリル酸(MAA)を含み得、第2のモノマーは、HEMAまたはメチルメタクリレート(MMA)2−ヒドロキシルエチルアクリレート、モノカルボン酸、グリシジルメタクリレート(GMA)およびシリコーンベースのモノマーを含み得る。他の実施形態において、NVPまたはMAAは、1つ以上の他の高度に親水性のモノマーと置き換えられてもよい。モノマーは、HEMAよりも親水性であるとき、本明細書中で「高度に」親水性であると考えられる。代表的には、モノマーが有する親水性の末端基が多いほど、そのモノマーの親水性は高い。したがって、高度に親水性のモノマーは、その基礎構造に、HEMAが有するよりも多い親水性の末端基を有し得る。あるいは、高度に親水性のモノマーにおける親水性基は個別に、HEMAの親水性基よりも親水性であり得る。材料の親水性は、その平衡含水率によって測定され得る。認識され得るように、NVPおよびMAAは、高度に親水性である。高度に親水性である他の材料(例えば、シリコーンベースのモノマー)も存在し得る。したがって、NVPおよびMAは、そのような他の材料によって置き換えられ得る。高度に親水性の材料は、両親媒性であり得る。本明細書中で参考として援用される“Forming Copolymer from Bicontinuous Microemulsion Comprising Monomers of Different Hydrophilicity”と題された2009年3月19日に出願され、2010年9月23日にWO/2010/107390として公開された国際特許出願番号PCT/SG2009/000097には、モノマーの適当な組み合わせおよび高分子材料を形成するための方法が記載されている。
【0040】
当業者が理解するように、重合可能な界面活性剤は、それ自体とおよび/または他のモノマー化合物と重合することにより、高分子材料を形成することができる可能性がある。その混合物用の界面活性剤は、マイクロエマルション中のモノマーのうちの少なくとも1つと共重合し得る任意の適当な界面活性剤であり得る。認識され得るように、界面活性剤が高分子材料に共重合されるとき、重合後にその界面活性剤を高分子材料から分離する必要はない。これは、高分子材料形成プロセスが単純になるので、有利であり得る。その界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性または双性イオン性であり得る。特定の実施形態において、その界面活性剤は、非イオン性である。例示的な界面活性剤としては、ポリ(エチレンオキシド)−マクロモノマー(PEO−マクロモノマー)(例えば、本明細書中でC−PEO−C11−MA−40と表示されるω−メトキシポリ(エチレンオキシド)40ウンデシルα−メタクリレートマクロモノマー)が挙げられる。マクロモノマーの鎖長は、変動し得る。例えば、マクロモノマーは、RO(CHCHO)−(CHVの形態をとることがあり、ここで、Rは、水素またはアルキル基(例えば、C〜Cアルキル)のいずれかであり、nは、約5〜約200または約10〜約110の整数であり、Vは、重合可能な基である。その重合可能な基の構造は、形成されるポリマーマトリックスのタイプに依存し得る。一部の例では、その重合可能な基は、p−ビニルベンゼン、またはアクリレート部分(例えば、(メチル)アクリレート)を含む化合物などである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、双性イオン界面活性剤(例えば、{SO}{(CH}NCHCHCHN(CHV(ここで、mは、1〜20の範囲の整数であり、nは、6〜20の範囲の整数であり、pは、10〜110の範囲の整数であり、Vは、共重合可能な基である))であり得る。
【0041】
マイクロエマルションの重合は、触媒の使用を含むことがある。その触媒は、モノマーおよび界面活性剤の重合を促進する任意の触媒または重合開始剤であり得る。選択される特定の触媒は、特定のモノマーおよび使用される重合可能な界面活性剤または重合の方法に依存し得る。例えば、重合は、触媒として光開始剤が使用される場合、マイクロエマルションを紫外線(UV)照射に供することによって達成され得る。例示的な光開始剤としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMPA)およびジベンジルケトンが挙げられる。レドックス開始剤もまた使用され得る。例示的なレドックス開始剤としては、過硫酸アンモニウムおよびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が挙げられる。光開始剤とレドックス開始剤との組み合わせも使用され得る。この点について、混合物中に開始剤を含めることが好都合である場合がある。重合開始剤は、マイクロエマルションの約0.1%〜約5%、約1%〜約5%、約0.1%〜約4%、約0.1%〜約3%、約0.1%〜約1%、約2%〜約4%、約0.1%〜約.5%または約0.1wt%〜約0.4wt%の量で存在し得る。
【0042】
得られる高分子材料におけるポリマー分子間の架橋を促進するために、架橋剤を混合物に加えてもよい。適当な架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。理解され得るように、架橋されるポリマー分子が多いほど、添加物(例えば、薬物)またはフォトクロミック剤がその高分子材料を通って拡散しにくいかまたは移動しにくく、それにより、その添加物またはフォトクロミック剤の放出が遅くなる。ゆえに、架橋剤の含有量を選択することにより、放出速度が調整され得る。架橋剤の全体の濃度を高めることによって、得られる高分子材料の機械的強度も改善され得る。
【0043】
マイクロエマルションは、重合前に、所望の端部形状およびサイズに形成され得る。例えば、シート材料は、重合の前に、混合物を所望の厚さの層に流すかもしくは広げることによって、または混合物をガラスプレートの間に入れることによって、形成され得る。混合物は、重合させる前に、例えば、混合物を型または鋳型に注ぎ込むことによって、棒などの所望の形状にも形成され得る。しかしながら、一部の例では、重合後に、高分子材料は、切断する手法を用いて(例えば、レーザーを用いて)所望の端部形状に形成され得る。一部の例では、マイクロエマルションは、所望の端部形状の物品を形成する前および/または重合の前に、ある時間にわたって(例えば、低温で)保存され得る。例えば、マイクロエマルションは、所望の端部形状の物品を形成する前に、その端部形状の物品を形成した本質的にすぐ後の時点における材料から形成された物品と比べてその端部形状の物品の端部の特性が本質的に大きく変化することなく、少なくとも約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約1週間、約1ヶ月にわたって、適当な温度(例えば、約0℃、約2℃、約4℃、約6℃、約8℃など)で保存され得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、マイクロエマルションは、重合前に所望の端部形状およびサイズに形成され得る。1つの実施形態において、コンタクトレンズ10が、図3〜6に図示されるプロセスに従って、マイクロエマルションから形成され得る。図3に示されるように、雄部材26および雌部材28を備える型24が提供される。雄部材および雌部材26および28は、着脱可能に組み合わされ得る。雄部材26の内面30は、凸形であり、それに対応して雌部材28の内面32は、凹形であり、その結果、その雄部材と雌部材とが組み合わされるとき、内面30および32は、コンタクトレンズに対して所望のプロファイルを規定する。図4に示されるように、まず、調製された適当量のマイクロエマルション34が雌部材28中に堆積される。次いで、雄部材26が雌部材28と組み合わされることにより、図5に示されるように、マイクロエマルション34が、内面30および32によって規定される所望の形状36に圧縮される。あるいは、まず、雄部材26および雌部材28が組み合わされて、次いで、マイクロエマルションがその型の空洞に注入されてもよい。この目的の場合、注入口(図示せず)が提供され得る。次いで、型24内のマイクロエマルション36が、重合反応に供される。重合は、紫外線(UV)照射などの照射によって行われ得る。次いで、モノマーが重合されることにより、上に記載されたような高分子材料が形成される。図6に示されるように、得られる高分子材料は、所望の形状を有するコンタクトレンズ38を形成する。コンタクトレンズ38は、重合後に型24から取り出され得る。
【0045】
高分子材料は、一部の例では、ピンホールレンズの作製のためにも使用され得る。ピンホールレンズは、当業者に公知である。これらのレンズは、幾何収差、例えば、非点収差、球面収差およびコマ収差を減少させる方法として、光学において通常理解されているピンホールイメージングの理論を利用する。人間の視覚を小さい「ピンホール」アパーチャに限定することにより、視覚的な欠陥が大きく減少するかまたは効果的に取り除かれさえする。ピンホールレンズの非限定的なタイプを図7に示す。当業者は、ピンホールレンズを形成するための手法を認識しているだろう。例えば、一部の例では、型の一部が、フォトクロミック剤を含む両連続エマルションを含み得、その型の別の部分は、フォトクロミック剤を含まない両連続エマルションを含み得る。次いで、その両連続エマルションが、重合され得、ゆえに、フォトクロミック剤を含む少なくとも1つの領域およびフォトクロミック剤を含まない少なくとも1つの他の領域を備える物品が形成される。ピンホールレンズを形成するための別の方法は、フォトクロミック剤を含む第1のレンズおよびフォトクロミック剤を含まない第2のレンズを形成する工程を包含する。その2枚のレンズは、積み重ねられてもよいし、別途互いに結び付けられてもよく、また、フォトクロミックレンズの一部が除去されることにより、ピンホールレンズが形成されてもよい。一部の例では、レーザーを用いることにより、フォトクロミックレンズの1つ以上の部分が切断され得るおよび/または除去され得る。なおも別の例では、フォトクロミック材料を含まない材料の少なくとも一部が、フォトクロミック高分子材料に漬けられ得るおよび/またはフォトクロミック高分子材料でコーティングされ得る。
【0046】
重合後に、本高分子材料は、水ですすがれ、そして/または水と平衡にされることにより、未反応のモノマー、および/または高分子材料に組み込まれなかった他の構成要素が除去され得る。一部の例では、高分子材料に組み込まれたわずかな添加物が、すすぎの間に失われることがあるが、失われる量は、すすぎの時間を制御することによって限定され得る。医学的な用途または臨床上の用途において使用するための調製では、すすがれた高分子材料は、必要に応じて乾燥され得、滅菌され得る。乾燥と滅菌の両方が、当業者に公知である任意の適当な様式で達成され得る。いくつかの実施形態において、乾燥と滅菌の両方が、添加物またはフォトクロミック剤に悪影響を及ぼさないように、例えば、エチレンオキシドガスまたはUV照射を用いて、低温で実行され(affected)得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、高分子材料は、1つ以上の添加物を含み得る。一部の例では、添加物は、ポリマーマトリックス内、相互接続された細孔内の水、またはその両方に十分に含まれ得る。そのような添加物は、得られる高分子材料において1つ以上の所望の特性を達成するために選択され得、それらとしては、薬物、タンパク質、酵素、充填剤、色素、無機電解質、pH調整物質などのうちの1つ以上が挙げられ得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、眼科用薬物などの薬物が、マイクロエマルションに組み込まれ得る。その薬物は、マイクロエマルションの水性ドメイン中もしくは油性ドメイン中、または2つのドメインの界面を含む両方のドメイン中に分散され得る。その薬物が初めに油性ドメイン中に分散されるとき、その薬物は、おそらく重合後にポリマーマトリックス中に分散される。その薬物が初めに水性ドメイン中に分散されるとき、その薬物は、おそらく重合後に細孔内の水中に分散される。高分子材料に組み込まれ得る薬物は、様々であり得、親水性または疎水性のいずれか、水溶性または水不溶性のいずれかであり得る。当業者は、どのようにして種々の薬物が親水性または親油性などのそれらの特性に応じてマイクロエマルション中に分散されるかを理解しているだろう。本明細書中で参考として援用される“Polymer having Interconnected Pores for Drug Delivery and Method”と題された2004年8月3日に出願され、2006年2月9日にWO2006/014138として公開された国際特許出願番号PCT/SG2004/000237には、適当な薬物、およびポリマーマトリックスに薬物を組み込むための方法が記載されている。
【0049】
眼科用薬物の非限定的な例としては、抗緑内障剤(例えば、ベータアドレナリンレセプターアンタゴニスト、例えば、マレイン酸チモロール)および他の治療薬(例えば、抗生物質、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、抗アレルギー剤、ポリペプチドおよびタンパク質の群、滑沢剤、上記のものの任意の組み合わせまたは混合物など)が挙げられる。
【0050】
含められる薬物の量は、様々な因子に基づいて決定され得る。通常、その薬物は、当該分野で公知であるような所望の治療用投薬量を提供するのに適した濃度を有するべきである。眼科用薬物の送達の場合、得られる高分子材料の透明度および清澄性が、その因子の1つであり、それは、高分子材料中の薬物の濃度に依存し得る。
【0051】
一部の例では、高分子材料は、グルコースプローブを含み得る。グルコースプローブは、グルコースの存在下において検出可能なスペクトルのシグナル(例えば、蛍光応答の変化)を発生する任意の化合物であり得る。例えば、グルコースプローブは、接触するとグルコースと反応し得、ゆえに元のプローブ分子の蛍光スペクトルとは異なる蛍光スペクトルを有する新規化合物構造を形成し得る。グルコースプローブは、ポリマー材料の相互に接続している細孔内、および/またはプローブとポリマーとの結合に捕捉され得る。ポリマー内の内部の細孔が互いにおよび表面の細孔に接続されているとき、グルコースは、その接続された細孔を通って移動することにより、使用中に細孔内のプローブと相互作用し得る。プローブの浸出を防ぐために、所定の大きさの開口部を通過させて細孔を接続することによりその開口部を通るプローブの通過を制限することができる。適当なグルコースプローブは、ボロン酸ベースのフルオロフォアなどのボロン酸プローブであり得る。例えば、ボロン酸が使用され得る。そのボロン酸は、R−B(OH)という式を有し得、式中、Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニルまたはアリールアリールアルキル(aryl arylakyl)である。適当なボロン酸としては、1,3−ジフェニルプロパ−2−エン−1−オン、または代わりに3−[4’(ジメチルアミノ)フェニル]−1−(4’’−ボロノフェニル(boronophneyl))−プロパ−2−エン−1−オンと表されるもの;および5−[4’’−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−(4’−ボロノフェニル)−ペンタ−2,4−ジエン−1−オンと代わりに表される1,5−ジフェニルペンタ−2,4−ジエン−1−オンが挙げられる。本明細書中で参考として援用される“Trapping Glucose Probe in Pores of Polymer”と題された2009年7月9日に出願され、2010年1月14日にWO/2010/005398として公開された国際特許出願番号PCT/SG2009/000245には、適当なグルコースプローブ、および高分子材料にグルコースプローブを含めるための方法が記載されている。
【0052】
いくつかの実施形態において、高分子材料は、湿潤剤を含み得る。湿潤剤は、任意の所与の特定の用途における制約を免れない任意の適当な湿潤剤であり得る。例えば、コンタクトレンズの用途の場合、湿潤剤は、ヒトの眼と適合性であるべきである。コンタクトレンズの用途において、適当な湿潤剤としては、ヒアルロン酸(HA)、アクリル化HA(AHA)、メタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、または眼科用の用途に適した他の湿潤剤が挙げられ得る。一部の用途では、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、グリセリン、キトサン、ポリビニルアルコールなどのような湿潤剤が適当であり得る。
【0053】
ヒアルロン酸は、ヒアルロネートまたはヒアルロナンとも呼ばれることがある。ヒアルロン酸は、交互のβ−1,4グリコシド結合とβ−1,3グリコシド結合とを介して連結されたD−グルクロン酸およびD−N−アセチルグルコサミンから構成される二糖類のポリマーであるムコ多糖とも呼ばれるグリコサミノグリカンである。例示的なヒアルロン酸Aは、ヒアルロン酸ナトリウムである。一部の例では、湿潤剤は、ポリマーマトリックスと架橋され得る。本明細書中で参考として援用される“Porous Polymeric Material with Cross−Linkable Wetting Agent”と題された2007年11月17日に出願され、2008年5月22日にWO2008/060249として公開された国際特許出願番号PCT/SG2007/000398には、ポリマーマトリックスと架橋するための湿潤剤を含む適当な湿潤剤、およびポリマーマトリックスに湿潤剤を組み込むための方法が記載されている。
【0054】
好都合なことに、本発明の様々な実施形態に記載の高分子材料は、ヒト皮膚線維芽細胞と適合性であるように、および機械的に強く作製することができ、そして眼の上に配置するためのコンタクトレンズを製造するために都合よく使用することができる。
【0055】
上に記載された高分子材料は、コンタクトレンズの用途にとって有用であるだけでなく、他の用途においても有用である。例えば、本明細書中に記載される例示的な材料およびプロセスまたは同様の材料もしくはプロセスは、度付レンズ、3−D(次元)組織工学用足場、人工角膜などのような用途において使用するための親水性のナノ多孔性材料を調製するために利用され得る。一部の例では、フォトクロミック材料を組み込んでいる高分子材料を調製するためにたった1回の重合工程で済むので、そのプロセスは、単純かつ安価であり得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、本発明は、光学デバイスを提供し、その光学デバイスは、そのデバイスを第1の相対的に透明の状態から第2の少なくとも部分的に不透明の状態に切り替え可能にするフォトクロミック剤を含み、それにより、適切な電磁放射線への曝露および/または熱的緩和の際に、そのデバイスが第1の状態から第2の状態におよび第2の状態から第1の状態に切り替わるとき(各々、約1秒間、約5秒間、約10秒間、約15秒間、約20秒間、約25秒間、約30秒間、約35秒間、約40秒間、約50秒間、約60秒間、約90秒間、約120秒間などの時間以内)、その光路を通過する可視光線の透過が、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%またはそれより多く変化し得る。上記光学デバイスは、約0.5mm、約1mm、約1.5mm、約2mm、約2.5mm、約3mm、約4mm、約5mm未満などの最大長を有するデバイスを通過する光路を有し得る。その光学デバイスは、コンタクトレンズであり得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、組成物は、約15%〜約25%のω−メトキシポリ(エチレンオキシド)40ウンデシルα−メタクリレートマクロモノマー(PEO−R−MA−40)、約15%〜約20%のグリシジルメタクリレート(GMA)、約30%〜約50%の2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、約15%〜約25%の水、約0.1%〜約10%のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、約0.1%〜約5%の2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩(AIPH)および約0.05%〜約5%の6’−(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル)−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−プロピル−スピロ[2H−インドール−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン(SPO)を含む。特定の実施形態において、組成物は、約20%のPEO−R−MA−40、約17%のGMA、約43%のHEMA、約20%の水、約1.0%のEGDMA、約0.3%のAIPHおよび約0.1%のSPOを含む。別の特定の実施形態において、組成物は、約18.2%のPEO−R−MA−40、約14.1%のGMA、約37.9%のHEMA、約18.2%の水、約8.8%のEGDMA、約2.7%のAIPHおよび約0.1%のSPOを含む。
【0058】
本明細書中で使用される「ポリマー」は、当該分野において使用されている通常の意味、すなわち、共有結合によって接続された1つ以上の繰り返し単位(モノマー)を含む分子構造が与えられる。その繰り返し単位は、すべてが同一であってもよいし、一部の例では、ポリマー内に1つより多い繰り返し単位のタイプが存在してもよい。
【0059】
用語「疎水性」および「親水性」は、当該分野における通常の意味が与えられ、当業者が理解するように、本明細書中の多くの場合において、これらは相対的な用語である。「疎水性材料」(例えば、ポリマーマトリックス)を意味する際の特定のパラメータまたは限界は、所与の不適切な種々の相対的な疎水性であり得るが、一般に、疎水性ポリマーマトリックスは、接触角の測定に適した材料に形成されたとき、約50°より大きい水接触角をもたらすものである。
【0060】
本明細書中で使用されるとき、ポリマーマトリックス(または互いに接続している細孔(cores))内に含まれている構成要素(例えば、フォトクロミック剤)に関連している「実質的に」は、その構成要素の少なくとも約25%、少なくとも約35%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約75%、少なくとも約85%もしくは少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれより多くが、その高分子材料内に封じ込められていることおよび/またはその高分子材料とともに配合されていることを意味する。
【0061】
本明細書中で使用されるとき、「被験体」または「患者」とは、任意の哺乳動物(例えば、ヒト)のことを指す。例としては、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはげっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスターまたはモルモット)が挙げられる。通常、当然のことながら(or course)、本発明は、ヒトによる使用を対象とする。被験体は、補正レンズを必要とする被験体であり得る。
【0062】
これらの高分子材料は、様々な望ましい物理的特性、化学的特性および生化学的特性を有し得る。例証のために、サンプル高分子材料の調製および特性が以下に記載される。以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を例証することを目的としており、本発明の全範囲を例示するものではない。
【実施例】
【0063】
実施例1
以下は、本発明の非限定的なフォトクロミック高分子材料の調製および特徴づけを記載している。
【0064】
この実施例において使用されるフォトクロミック剤は、スピロ−ナフトオキサジンである6’−(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル)−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−プロピル−スピロ[2H−インドール−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン(SPO)である。SPOの構造およびその開環型の構造は、図8に示されている(注意:いくつかの有色型のうちの1つだけがこのスキームに描かれている)。無色のSPOは、紫外(UV)光を照射されると、オキサジン環におけるスピロC−O結合のヘテロリティック開裂を起こして、有色型のフォトメロシアニン(PMC)を生じ、次いでそれは熱によってまたは可視光線を照射されるとSPOに戻る。その開環構造は、PMC色素の場合のキノン型において最もよく報告されている。本明細書中に記載されるように、SPOを、種々の水分量を含む両連続マイクロエマルションによって作製された使い捨てレンズ系に組み込んだ;そのような高分子材料は、変色(discoloration)特性を改善し得、変色時間を短縮し得る。そのフォトクロミック色素は、主にナノ構造の疎水性ドメイン内に組み込まれ、非常に速い応答時間のダイレクトフォトクロミズムを示した。減衰時間に対する当てはめが、その色素に対して単一指数関数的であったことから、色素の環境が均一であることが示唆された。さらに、閉じ込められた色素は、数ヶ月後であってもダイレクトフォトクロミズムを示した。そのSPOをドープしたレンズは、完全に乾燥されたときにわずかに速い反応をさらに示した。これらの知見は、フォトクロミックマイクロエマルションから得られるレンズの眼科用の用途にとって重要であった。
【0065】
上記ナノ構造レンズは、代表的には、ω−メトキシポリ(エチレンオキシド)40ウンデシルα−メタクリレートマクロモノマー(C−PEO−C11−MA−40またはPEO−マクロモノマー)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリシジルメタクリレート(GMA)および水からなる両親媒性テンプレートの自己組織化を介して得られる両連続マイクロエマルション前駆体を重合させることによって調製された。得られた両連続相のおかげで、そのナノ構造に対して特に優れた制御が提供され、フォトクロミック色素の組み込みに非常に適した構造が得られた。選択されたマイクロエマルションの組成を表1に列挙する。得られたレンズは、型成形(mold−casting)技術を用いて成型された。それらのレンズは、実質的に透明であり、含水率が増加するにつれて改善された親水性および酸素透過性(D)(13〜21)を示した。ヤング率は、含水率が減少するにつれて0.44MPaから0.63MPaに変動した。これらの材料の含水率がさらに50〜60wt%まで増加しても、引張り強さは有意に失われなかった。そのヤング率および引張り強さ(0.20〜0.26MPa)から、これらの材料がコンタクトレンズの用途にとって十分に耐久性があると示唆された(表1を参照のこと)。
【0066】
【表1】

【0067】
過渡吸収スペクトルのピーク波長におけるシグナルをたどることによって、時間依存的反応曲線を得た。溶液(図示せず)および合成されたままのレンズのスペクトルを、Agilent5453UV−可視光分光光度計によって得た。そのレンズの調製に用いた溶液は、無色であった。そのレンズは、可視の範囲では完全に透明であった(約97%の透過)ことから、その色素が閉環型で存在したことが示唆される。SEM顕微鏡写真(図9)は、両連続マイクロエマルションの連続性を示した。具体的には、図9は、ナノ構造レンズの割断された横断面のFESEM顕微鏡写真を示している:(a)PEO−20、(b)PEO−25および(c)PEO−30。黒色および白色の縞は、それぞれ水チャネルおよびポリマーマトリックスドメインに相当する。SEM顕微鏡写真の曲がった黒っぽい細長い部分は、水性チャネルに相当し、白色のドメインは、ポリマーマトリックスに相当した。その水性ドメインとポリマーマトリックスドメインの両方が、重合されたマイクロエマルションにランダムに分布していた。含水率が30wt%まで増加すると、よりもつれ合った広範囲の水性チャネルが形成された。有機ドメインと水性ドメインとのナノメートルスケールでの分離は、そのナノ構造の二相性の性質に相当した。ゆえに、その色素種の化学環境は、両連続マイクロエマルションの組成によって調整され得る。
【0068】
色素をドープしたレンズの透過は、数週間後に低下しなかった。そのレンズのUV曝露中の代表的なスペクトルを図10に示す。そのSPOをドープしたレンズは、可視領域においてただ1つの広範な吸収を示し(最大約620nm(PEO−20))、マイクロエマルションの含水率が20wt%から30wt%に増加するにつれて変動した(図示せず)。SPOをドープしたレンズのUV照射による着色/脱色動態の目視検査から、それらの色素が、SPOをドープした液体前駆体と同様の脱色動態を示すことが示された。SPOをドープしたナノ構造レンズは、急速な熱的褪色を起こして、UV光を除去した後の数秒以内に無色に戻った。620nmにおける光強度は、図10に示されるように、所与の光波長範囲におけるUV照射時間が長くなるにつれて指数関数的に増加した。図10は、2、4、6、8および10分間にわたって365nmのUVを照射されたときの、0.1wt%のSPOをドープされたナノ構造のPEO−20レンズの吸光度スペクトルの変化を示している。620nmにおける吸収帯によって例証されるように、吸光度スペクトルの変化は、オキサジン環が光照射によって開いたことを示唆した。種々の波長範囲におけるフォトクロミズムと関連するSPOの開環構造および閉環構造を、図8に模式的に図示した。SPOの通常のフォトクロミズムおよび逆フォトクロミズム、すなわち、照射の際の無色型から有色型への変換およびその逆が観察された。光照射中に620nmにおける吸光度が指数関数的に増加することから、開環型のSPOの割合が指数関数的に増加すると示唆された。
【0069】
前に述べたように、SPOフォトクロミックは、その着色が濃いこと、開環型における高い吸光係数、固有の疲労抵抗、および中程度に良好な切り替え性能という理由から、眼科用レンズにおいて重要な用途を有する。切り替え性能の試験において、種々の含水率で調製されたレンズの着色は、照射の5分後において、コントロール(PMMA)よりもおよそ2倍高いことが見出された(図11)。具体的には、図11は、SPOをドープしたナノ構造のPEOレンズおよびコントロール(剛性のポリマーホストマトリックスPMMAにおけるSPO)の着色および脱色に対する時間に応じた吸光度を示している。SPO濃度=0.1wt%。有色型のSPOのimax(620nm)において吸光度をモニターした。PEO−20に対する数回の着色/脱色サイクルについての時間依存的スペクトルデータの代表的なセットを図12に示す。具体的には、図12は、SPOをドープしたナノ構造のPEO−20レンズに対する時間依存的な光着色および退色を示している。光分解は、複数回の曝露サイクルにわたって観察されなかった。その退色曲線から、3週間経過したサンプルの場合、速度定数k=0.10s−1と特定された。退色動態の順序は、以下のとおりであった:PEO−20(k=0.10s−1)>PEO−25(k=0.083s−1)>PEO−30(k=0.05s−1)。SPOをドープしたナノ構造のPEOレンズのこれらの速度定数は、SPOをドープしたPMMA(MMA重合により調製)の速度定数(k=0.04s−1)に十分に匹敵した。固体状態のマトリックスについて今まで報告されていた最も速い応答を示したSPOドープPMMAは、SPOをドープしたナノ構造のPEOレンズについて達成された応答時間よりも1桁遅い応答時間を示した。
【0070】
ここで検討されたナノ構造の材料において、その応答が、以前に報告された非ナノ構造高分子材料(すなわちPMMA)において観察された応答よりも非常に速かったという結論に基づいて、SPOは、有機ドメイン内に位置した。第2に、純粋PMMAは、乾燥されると、有色となり得、逆フォトクロミズムを示し始め得る。合成後に様々な時間にわたって周囲条件で保存されたサンプルを解析したところ、逆フォトクロミズムは示唆されなかった。別の興味深い特徴は、SPOをドープした材料に対する退色曲線の当てはめから明らかであった。約40時間保存された新鮮サンプル(PEO−20)は、3週間経過したサンプル(k=0.10s−1)と比べてわずかに遅い応答を示した(k=0.06s−1)。このことは、純粋PMMA系と対照的であり、これにより、マトリックス環境が、エイジングによってより制限され、その分子の開環型が、細孔壁との接触によって安定化された。本発明者らの場合、含水率が増加するにつれて光退色の速度が上がったことから、ナノ多孔性環境が、開環型のSPOが安定化するのに利用可能なポリマーマトリックスドメイン内の部位の数を減少させることにより、より速い退色動態がもたらされることが示唆された。これは、ナノメートルスケールでの均一な色素環境も反映し、それらのフォトクロミック種が、主に二相性ナノ複合物の有機ドメイン内に位置することが確証された。
【0071】
要約すると、ナノ構造の両連続マイクロエマルションは、フォトクロミック色素にとって優れたホストであることが示された。検討されたSPO色素は、UV照射されると有色となるダイレクトフォトクロミズムを示し、UV照射の非存在下では熱によって無色の閉環型に退色した。SPOをドープしたレンズ材料の応答時間は、固体状態の複合物について今までに報告された最良の値の中でも非常に速かった。それらの材料は、ダイレクトフォトクロミズムと逆フォトクロミズムとの間に経時的な明らかな競合なしに、長期間の安定性も示した。両連続マイクロエマルションから得られたこれらのナノ構造フォトクロミック材料は、任意の所望の形状に容易に加工され得るので、それらは、眼科用レンズおよび光学デバイスとしての用途にとって興味深いものであり得る。
【0072】
実施例2
以下は、実施例1とともに用いられる方法を記載している。
【0073】
電界放射型走査型電子顕微鏡(FESEM)(JEOL6700)を用いて、ポリマー膜の形態を研究した。その膜を液体窒素中で凍結割断することにより、その横断面を露出させた。調べる前に、それらを室温にて24時間真空乾燥し、次いで、金の薄層でコーティングした(JEOLイオンスパッターJFC−1100)。そのポリマーサンプル(各々、約10mg)の熱挙動を、Perkin Elmer TGA7熱重量分析装置を用いて乾燥窒素流下で30〜600℃(勾配=10℃/分)にわたって評価した。そのポリマー膜の含水率を測定するために、事前に計量された乾燥サンプルを様々な温度の脱イオン水に浸漬した。過剰な表面の水を濾紙片で除去した後、完全に膨潤した各サンプルの重量を記録した。水のwt%を、以下の方程式を用いて決定した:
EWC(%)=(W−W)/W×100
式中、Wは、膨潤前の乾燥サンプルの重量を指し、Wは、少なくとも24時間水に浸漬した後の湿潤サンプルの重量を指す。ポリマー膜のひずみ、ヤング率および引張り強さをInstron4502微小力テスター(microforce tester)によって測定した。標準サイズのサンプルをASTM638に従って使用した。ポリマー膜の光透過をAgilent5453UV−可視光分光光度計によって調べた。リン酸緩衝食塩水(PBS)で完全に水和された材料の屈折率を、屈折計を用いて測定した。その材料の酸素透過性をRehder 201T permeometerによって測定した。
【0074】
Agilent5453UV−可視光分光光度計を用いて、UV−可視光の吸収スペクトルを得た。照射のUV源は、最大波長365nmを有する20W Hgランプ(Philips)であった。まず、そのHgランプを用いてポリマーフィルムに照射し、最大吸光度が、照射されていないフィルムの吸光度に低下するまで、吸光度スペクトルを記録した;最大吸光度の変動を時間に対してプロットした。次に、ポリマーフィルムのフォトクロミック特性の変化が記録されなくなるまで、ポリマーフィルムに複数回照射した。UV光の励起を5〜10分間行った;時間に対する最大吸光度のプロットを得た。開環型から閉環型のSPOに変換する、熱によって活性化される反応に対する速度定数を、開環型の620nmにおける吸収の経時変化をモニターすることによって決定した。
【0075】
実施例3
以下は、本発明の非限定的なフォトクロミック高分子材料の調製および特徴づけを記載している。この実施例において使用された2つの材料は、表2に提供されるような調合を有する。
【0076】
【表2】

【0077】
この実施例では、材料Aを、200mgのPEO−R−MA−40、170mgのGMA、430mgのHEMA、200μL(マイクロリットル)の水、10mgのEGDMA、3mgのAIPHおよび1mgのSPOを用いて形成し、材料Bを、200mgのPEO−R−MA−40、156μLのGMA、418μLのHEMA、200μLの水、97μLのEGDMA、30mgのAIPHおよび1mgのSPOを用いて形成した。
【0078】
上記の材料を以下のとおり調製した。PEO−R−MA−40、GMAおよびHEMAをボルテックスすることにより、第1の混合物を形成した。次いで、第1の混合物に水、EGDMAおよびAIPHを加え、第2の混合物が形成されるまで、さらなるボルテックスを行った。第2の混合物にSPOを加え、得られた材料を氷上で超音波処理することにより、第3の混合物を形成した。第3の混合物からの任意の固体材料を第3の混合物から分離した(例えば、5refにて30秒間、例えば、遠心分離することによって)。第3の混合物の液体部分を単離し、型に注ぎ込んだ。第3の混合物の液体部分を放置して60℃にて一晩重合させた。重合されていない材料(例えば、第3の混合物の液体部分)を、機能が失われることなくまたは実質的に失われることなく、4℃にて保存してもよい。材料Bは、材料Aの約10倍の引張り強さおよび100倍の引張り係数を示した(図13を参照のこと)。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態が、本明細書中に記載され、例証されてきたが、当業者は、本明細書中に記載される機能を実行するため、ならびに/または本明細書中に記載される結果および/もしくは利点の1つ以上を得るための、他の種々の手段および/または構造を容易に想像するだろうし、そのような変形および/または改変の各々は、本発明の範囲内であると見なされる。より一般には、当業者は、本明細書中に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料および配置が例示であることを意味すること、ならびに実際のパラメータ、寸法、材料および/または配置が、本発明の教示を用いる特定の用途に依存し得ることを容易に認識するだろう。当業者は、単なる通例の実験法を用いて、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態との多くの等価物を認識するかまたは確かめることができるだろう。ゆえに、前述の実施形態が単なる例として与えられること、ならびに添付の請求項およびそれに対する等価物の範囲内で、本発明が、具体的に記載されたものおよび特許請求されるものと別で実施され得ることが理解されるだろう。本発明は、本明細書中に記載される個別の特徴、系、物品、材料、キットおよび/または方法を対象とする。さらに、そのような特徴、系、物品、材料、キットおよび/または方法が相互に相反しない限り、2つ以上のそのような特徴、系、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせが、本発明の範囲内に含まれる。
【0080】
本明細書および請求項において使用される不定冠詞「a」および「an」は、明らかに反対のことが示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0081】
本明細書および請求項において使用される句「および/または」は、そのように等位結合される要素、すなわち、一部の例では接続的に存在する要素および他の場合では離接的に存在する要素の「いずれかまたは両方」のことを意味すると理解されるべきである。明らかに反対のことが示されていない限り、具体的に特定されている要素と関係があろうとなかろうと、「および/または」節によって具体的に特定されている要素以外の他の要素が必要に応じて存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」という言及は、「〜を含む」などのオープンエンド形式の(open−ended)言語とともに使用されるとき、1つの実施形態では、BなしのA(B以外の要素を必要に応じて含む);別の実施形態では、AなしのB(A以外の要素を必要に応じて含む);なおも別の実施形態では、AとBの両方(他の要素を必要に応じて含む);などを指し得る。
【0082】
本明細書および請求項において使用されるとき、「または」は、上で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、「または」または「および/または」は、リスト内の項目を切り離すとき、包括であると解釈される、すなわち、いくつかの要素または要素のリストのうちの少なくとも1つを含むだけでなく2つ以上も含み、必要に応じて、列挙されていない追加の項目も含むと解釈されるものとする。明らかに反対のことを示している用語だけ(例えば、「〜のうちのただ1つ」または「〜のうちのまさに1つ」)または請求項において使用されているときの「〜からなる」だけが、いくつかの要素または要素のリストのうちのまさに1つの要素を含むことを指す。通常、本明細書中で使用される用語「または」は、排他的な用語(例えば、「いずれか」、「〜のうちの1つ」、「〜のうちのただ1つ」または「〜のうちのまさに1つ」)が先行するとき、排他的な選択肢のこと(すなわち、「一方または他方であって両方ではない」)を示すとだけ解釈されるものとする。「〜から本質的になる」は、請求項において使用されるとき、特許法の分野において使用される通常の意味を有するものとする。
【0083】
本明細書および請求項において使用されるとき、1つ以上の要素のリストに関する句「少なくとも1つ」は、要素のリスト内の要素のうちの任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素のことを意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙されている各要素およびすべての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含むわけではなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除するわけではないと理解されるべきである。この定義は、具体的に特定されている要素と関係があろうとなかろうと、句「少なくとも1つ」が指す、要素のリストに具体的に特定されている要素以外の要素が必要に応じて存在してもよいことも許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(言い換えると「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、言い換えると「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態において、少なくとも1つのA(必要に応じて1つより多いAを含む)が存在しかつBが存在しないこと(および必要に応じてB以外の要素を含むこと);別の実施形態において、少なくとも1つのB(必要に応じて1つより多いBを含む)が存在しかつAが存在しないこと(および必要に応じてA以外の要素を含むこと);なおも別の実施形態において、少なくとも1つのA(必要に応じて1つより多いAを含む)および少なくとも1つのB(必要に応じて1つより多いBを含む)(および必要に応じて他の要素を含むこと);などのことを指し得る。
【0084】
請求項ならびに上記の明細書において、すべての移行句(例えば、「〜を含む(comprising)」、「〜を含む(including)」、「〜を有する(carrying)」、「〜を有する(having)」、「〜を含む(containing)」、「〜を含む(involving)」、「〜を有する(holding)」など)は、オープンエンド形式であること、すなわち、〜を含むがそれらに限定されないことを意味すると理解されるべきである。米国特許庁特許審査手続便覧セクション2111.03に示されているように、移行句「〜からなる」および「〜から本質的になる」だけは、それぞれクローズド(closed)移行句またはセミクローズド(semi−closed)移行句であるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料を形成する方法であって、前記方法は:
水、モノマー、および前記モノマーと共重合可能な界面活性剤を含む両連続マイクロエマルションを重合させることにより、少なくとも部分的に水で満たされた相互接続された細孔を規定するポリマーマトリックスを含む多孔性高分子材料を形成する工程
を包含し、ここで、前記マイクロエマルションは、フォトクロミック剤をさらに含む、
方法。
【請求項2】
眼科用デバイスにおいて使用するためのフォトクロミック高分子材料であって、前記材料は:
相互接続された細孔を規定するポリマーマトリックスを含み、前記相互接続された細孔は、水を含み、前記ポリマーマトリックスは、実質的に疎水性であり;そして
ここで、前記高分子材料は、フォトクロミック剤をさらに含む、材料。
【請求項3】
光学デバイスであって、前記光学デバイスは、前記デバイスを第1の相対的に透明の状態から第2の少なくとも部分的に不透明の状態に切り替え可能にするフォトクロミック剤を含み、それにより、適切な電磁放射線への曝露および/または熱的緩和の際に、前記デバイスが前記第1の状態から前記第2の状態におよび前記第2の状態から前記第1の状態に各々30秒以内に切り替わるとき、光路を通過する可視光線の透過が、少なくとも50パーセント変化し得る、光学デバイス。
【請求項4】
前記高分子材料が、モノマー、前記モノマーと共重合可能な界面活性剤および水を含む両連続マイクロエマルションから形成される、請求項2に記載の材料。
【請求項5】
前記細孔が、約10〜約100nmの細孔径を有する、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項6】
前記水の割合が、約15重量%〜約50重量%であり、前記モノマーの割合が、約5重量%〜約40重量%であり、そして前記界面活性剤の割合が、約10重量%〜約50重量%である、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項7】
前記マイクロエマルションが、架橋剤をさらに含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項8】
前記架橋剤が、EGDMAである、請求項7に記載の方法または材料。
【請求項9】
前記マイクロエマルションが、重合開始剤をさらに含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項10】
前記重合開始剤が、光開始剤である、請求項9に記載の方法または材料。
【請求項11】
前記光開始剤が、DMPAである、請求項10に記載の方法または材料。
【請求項12】
前記重合させる工程が、前記マイクロエマルションを紫外線照射に供する工程を包含する、請求項11に記載の方法または材料。
【請求項13】
前記モノマーが、エチレン性不飽和である、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項14】
前記モノマーが、メチルメタクリレート(MMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、またはMMAとHEMAとの組み合わせである、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項15】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項16】
前記界面活性剤が、ポリ(エチレンオキシド)−マクロモノマーである、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項17】
前記界面活性剤が、ω−メトキシポリ(エチレンオキシド)40ウンデシルα−メタクリレートマクロモノマーである、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項18】
前述の請求項のいずれかに記載の方法に従って形成される、高分子物品。
【請求項19】
前記マイクロエマルションが、少なくとも1つの薬物をさらに含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項20】
前記薬物が、眼科用薬物である、請求項19に記載の方法または材料。
【請求項21】
前記高分子材料を用いて眼科用デバイスを形成する工程をさらに包含する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記眼科用デバイスが、コンタクトレンズまたは人工角膜である、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項23】
前記マイクロエマルションが、湿潤剤をさらに含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項24】
前記湿潤剤が、架橋可能な湿潤剤である、請求項23に記載の方法または材料。
【請求項25】
前記架橋可能な湿潤剤が、アクリル化ヒアルロン酸またはメタクリル化ヒアルロン酸である、請求項24に記載の方法または材料。
【請求項26】
前記湿潤剤が、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンまたはデキストランを含む、請求項23に記載の方法または材料。
【請求項27】
前記界面活性剤が、双性イオン界面活性剤である、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項28】
前記双性イオン界面活性剤が、3−((11−アクリロイルオキシウンデシル)−イミダゾリル)プロピルスルホネートである、請求項27に記載の方法または材料。
【請求項29】
前記フォトクロミック剤が、クロメン類、スピロピラン類、オキサジン類、水銀ジチゾネート類、フルギド類、フルギミド類またはそれらの組み合わせからなる剤のクラスから選択される、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項30】
前記フォトクロミック剤が、6’−(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル)−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−プロピル−スピロ[2H−インドール−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジンである、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項31】
前記フォトクロミック剤が、約0.01%〜約1.0%の重量パーセンテージで存在する、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項32】
前記フォトクロミック剤が、約0.01%〜約0.5%の重量パーセンテージで存在する、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項33】
前記フォトクロミック剤が、約0.05%〜約0.15%の重量パーセンテージで存在する、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項34】
前記フォトクロミック剤が、約0.1%の重量パーセンテージで存在する、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項35】
前記水が、約10%〜約50%の重量パーセンテージで存在する、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項36】
前記水が、約15%〜約40%の重量パーセンテージで存在する、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項37】
前記水が、約20%〜約30%の重量パーセンテージで存在する、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。
【請求項38】
前記フォトクロミック剤が、実質的に前記ポリマーマトリックス中に含まれる、前述の請求項のいずれかに記載の方法または材料。

【図1】
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【図2】
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【図3−6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−508535(P2013−508535A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536990(P2012−536990)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/054244
【国際公開番号】WO2011/053633
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(508201466)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (13)
【Fターム(参考)】