説明

高金属性ケイ質組成物及び同一物を生成する方法

コロイド状シリカ又はアルミノケイ酸塩粒子のような、高金属性ケイ質物質を生成するための変更したゾルゲル方法が開示されている。最初に、選択した金属塩がケイ酸溶液又はアルミニウム塩を含むケイ酸溶液に添加される。アルミニウムはシリカ基質内でAl−O−Si結合を形成するように、金属―担体間の相互作用を変えるために添加される。アルミニウムに加えて、M−O−Si(M=Ti、B等)結合を形成し、還元剤で処理される際に還元されない他の金属を添加できる。一度、金属、ケイ酸 及び/又はアルミニウム塩が生成された場合、塩基性ヒールへの添加によってコロイドの成長を受ける。コロイド合成後すぐに、コロイド粒子を含む金属塩はコロイド安定性を最大化できるように残され、ヒドラジンで還元されて、0価の金属含有性のコロイド粒子を生成する。使用前に粒子をコロイド状に保つことは、簡単に噴霧乾燥し、又は、押し出された触媒粒子のために他の物質と混合される場合に、触媒物質を形成する有効な方法になりうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に金属粒子を取り込んだケイ質物質及びこのような物質を生成するプロセスに関する。特に、本発明は高金属性ケイ質物質を生成するケイ酸溶液に金属塩を添加するプロセスに関する。本発明は特に、取り込まれた金属粒子を還元したコロイド状シリカを調製することに関する。
【背景技術】
【0002】
コロイド状シリカのようなコロイド状物質の調製及び使用が一般的に知られている。例えば、金属コーティング面を有するコロイド状シリカが一般的に知られ、使用されている。一般的には、シリカコロイドが最初に合成される。コロイドは酸化金属でコーディングされる。このコーティング手順は、金属性の開始物質及び用いられるコーティング方法の特性に依存して、負と正の双方に荷電した面を生成する。金属含有性のシリカコロイドは、エレクトロニクス産業における化学機械的研磨剤、コーティングアプリケーション、及び触媒プロセスにおける保持体のような様々な分野に有用である。この汎用性にもかかわらず、従来型のシリカコロイドはいくつかの不利な点を有している。
【0003】
液体懸濁した金属ナノ粒子は、ナノ粒子触媒を再利用するのに困難性を含む触媒作用において、いくつかの欠点を有している。固体担体上への触媒の固定化は、簡単な濾過を介して触媒を再利用を可能にしている。しかしながら、固定化された触媒の合成(金属ナノ粒子と共に固体担体を注入するステップを含む)は、非常に時間を浪費しうる。例えば、炭素−炭素結合形成(ヘック反応)のためのパラジウム触媒反応は、汎用的な工業上の合成ツールである。それはパラジウム(II)酢酸と共に沈降シリカのような固体担体を飽和させるステップと、乾燥させるステップと、水素ガス又は他の好適な還元剤で還元するステップとを含んでいる。
【0004】
多孔性担体上へ金属を取り込む2の公知の方法は、飽和(時に「含浸(incipient wetness)」技術と呼ばれる)及びゾルゲル技術を介した直接的な合成である。飽和は、固体多孔性担体を取り込むステップと、金属塩溶液を担体に添加するステップとを含んでいる。金属塩溶液は、多孔性担体の構成を通って介在し、乾燥すると表層堆積物を形成する。堆積された金属塩の還元中に、金属粒子は多孔性担体の表面上に拡散する傾向を有し、多孔性構成を通じて分散させなけらばならない。この拡散は焼結及び微少な活性面領域のために触媒活性の全体的な減少を導く。
【非特許文献1】Hermans&Geus,Interaction of Nickel Ions With Silica Supports During Deposition−Precipitation,Stud.Surf.Sci.Catal.,1979,pp.113−130
【0005】
ゾルゲル技術は、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)のようなシラン前駆物質と、金属塩を混合するステップを含んでいる。期間にわたり、TEOSは加水分解し、そのSiOH基は金属塩と相互作用する。一度、SiOH基が凝縮し始めて、沈殿を形成すると、金属がSiO基質内でSiO又はSiOH基を終端させることを介して拡散する。ゾルゲル技術における金属塩は、合成中の構成に吸蔵される傾向にある。
【非特許文献2】Lopez et al,Pt/SiO2 Sol−Gel Catalysts:Effects of pH and Platinum Precursor,J.Phys.Chem.,1993,pp.1671−1677
【0006】
従って、金属をケイ質コロイド状組成物に取り込む改良した方法に対するニーズが存在している。特に、シリカベースのコロイド、又は、より均質に拡散した金属粉と、より大きなpH範囲で増大した安定性、及び/又は、他の好適な特徴を有する粒子を生成する合成方法が所望される。更に、狭い粒子サイズ分散を伴うこのようなコロイドを形成することが所望される。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明は高金属性ケイ質物質を調製する方法を提供する。本方法は、1又はそれ以上の金属の1又はそれ以上の塩をケイ酸溶液と混合して、混合物を形成するステップを含んでいる。混合物は懸濁液中でコロイド状シリカ粒子を形成するために塩基性ヒール溶液に添加される。1又はそれ以上のコロイド状シリカ粒子は、取り込まれた金属粒子を含んでいる。いくつかの実施例において、本方法は懸濁液を濃縮するステップと、取り込まれた金属粒子を還元剤で還元するステップと、及び/又は、更なる処理ステップとを含んでいる。
【0008】
本発明は更に、複数の沈殿したシリカ粒子を含む高金属性ケイ質組成物を提供している。粒子はケイ酸溶液と、1又はそれ以上の金属の1又はそれ以上の塩との混合物から作られる。全固体に基づく、約10重量パーセント乃至約50重量パーセントの金属がコロイド状シリカ粒子と結合している。
【0009】
ある態様においては、本発明は約1乃至約250ナノメートルの平均直径を有する複数のコロイド状シリカ粒子を含む高金属性ケイ質組成物を含んでいる。粒子はケイ酸溶液と、1又はそれ以上の金属の1又はそれ以上の塩との混合物から作られる。全固体に基づく、約10重量パーセントまでの金属がコロイド状シリカ粒子と結合している。
【0010】
金属をコロイド物質に直接的に取り込む方法を提供することは本発明の利点である。
【0011】
本発明の更なる利点は、本質的に均質に分散あるいは拡散する高金属性コロイド状シリカ粒子と、狭い粒子サイズ分散とを形成する方法を提供することである。
【0012】
金属成分でコロイド物質を調合し、触媒が生成された後に、ヒドラジンのような還元剤で液体状態の結合する金属を還元する低コストかつ有効な方法を提供することが、本発明の別の利点である。
【0013】
金属成分でコロイド物質を調合し、触媒が生成された後に水素ガスのような還元剤で乾燥状態の結合する金属を還元する低コストかつ有効な方法を提供することが、本発明の更なる利点である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、還元前の5.28重量パーセントのPd(0)のPXRDパターンを示している。
【図2】図2は、還元後の5.28重量パーセントのPd(0)のPXRDパターンを例示している。
【図3】図3は、還元後の、0.55(−−)、1.10(−−−)、及び1.82(―)重量パーセントのPd(0)のコロイドアルミノケイ酸塩粒子に対する(111)ピークのPXRDパターンを示している。
【図4】図4は、Pd(0)/Au(0)=4のモル比率を有する1.07重量パーセントのAu(0)及びPd(0)のコロイドアルミノケイ酸粒子の、還元されない(−−−)及び還元された(―)PXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
コロイド状シリカ又はアルミノケイ酸塩のような高金属性ケイ質物質を生成する変更したゾルゲル方法が開示されている。ある実施例においては、選択した金属塩がケイ酸溶液又はアルミニウム塩を含むケイ酸溶液に添加される。シリカ基質内にAl−O−Si結合を形成する場合に、金属−担体間の相互作用を変えるために添加される。アルミニウムに加えて、M−O−Si(M=Ti、B等)を形成する他の金属が添加され、以下に述べるように還元剤で処理される場合に還元されない。一度、金属、ケイ酸及び/又はアルミニウム塩が混合されると、塩基性ヒールへの添加によってコロイドの成長を受ける。コロイド粒子を含む金属塩が、コロイドの安定性を最大化できるように残され、ヒドラジンで還元されて0価の金属含有性のコロイド粒子を生成する。使用前に粒子をコロイド状に保つことは、簡単に噴霧乾燥させ、押し出された触媒粒子のために他の物質と混合させうる場合に、触媒物質を形成する有効な方法になりうる。
【0016】
本発明はコロイド状シリカ又はメタロシリケートのようなケイ質物質に金属粒子を取り込むプロセスを提供している。金属粒子は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第一列遷移金属、第二列遷移金属、ランタニド等のような様々な金属を含みうる。好ましい実施例においては、金属は、パラジウム、白金、鉄、金、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、及びその組合せを含んでいる。より好ましい実施例においては、金属は、パラジウム、金、アルミニウム、及びその組合せを含んでいる。
【0017】
本プロセスは、酢酸パラジウムのような金属塩をケイ酸に添加して、混合物を生成するステップを含んでいる。この混合物を塩基性ヒール溶液に導入するステップ(以下に述べる)は、コロイド状シリカ粒子の形成に導く。パラジウム含有性のコロイド状シリカ粒子は、ある実施例においては還元剤(例えば、ヒドラジン又は水素ガス)で次いで還元され、0価のパラジウム粒子を形成する。更に、酸化金属(例えば、アルミナ、チタニア等)がケイ酸に添加されて、還元された金属と異なる金属−担体間の相互作用を提供するメタロシリケートを生成できることが考えられる。
【0018】
いくつかの金属塩のうちの1又はそれ以上は発明のプロセスにおいて用いられうると考えるべきである。例えば、金とパラジウムのように混合された金属が用いられうる。この例においては、塩化金酸及び酢酸パラジウムがケイ酸に添加されて、高金属性コロイド状シリカを形成できる。用いられうる他の代表的な金属塩は、塩化銅、硝酸第二鉄、硝酸ニッケル、塩化コバルト等、及びその組合せを含んでいる。
【0019】
本発明のコロイド状組成物は、ゲル化又は沈殿で安定であり、一般的には全固体の約0.1重量パーセント乃至約40重量パーセントの濃度を有してコロイド状態にある。金属塩を金属へ還元するとすぐに、物質は低濃度の添加された金属、例えば、固体に基づく約2重量パーセントまでの還元された金属で安定する。一実施例においては、いくつかの沈殿は固体に基づく約2重量パーセント以上の濃度で還元された金属に生じる。別の実施例においては、最少の沈殿は固体に基づく約40重量パーセントまでの濃度で還元された金属に生じる。
【0020】
ある実施例においては、高金属性ケイ質粒子を形成するとすぐに、還元剤を供して、塩形態から0価の形態へ結合した金属粒子を還元する。粒子が溶液中にあり、金属が還元される場合、還元剤は一般的にはヒドラジンであるが、物質が還元前に乾燥(例えば、フラッシュ乾燥、噴霧乾燥等)させた場合はヒドラジンである。
【0021】
ある実施例において、本方法はケイ酸溶液を調製するステップを含んでいる。ケイ酸はいずれかの好適な方法を用いて調製されうると考えられている。代表的な方法はオルトケイ酸ナトリウム(NaSiO)、メタケイ酸ナトリウム(NaSiO)、ポリケイ酸ナトリウム(NaSiO、ピロケイ酸ナトリウム(NaSi)等のようなケイ酸ナトリウム、及び/又はそのいずれかの組合せをイオン交換樹脂で脱イオン化するステップを含んでいる。好ましくは、ケイ酸ナトリウムは強酸イオン交換樹脂で脱イオン化されて、ケイ酸又は酸性ゾルを生成している。代替的な方法は公知のストーバー法を用いて、ケイ酸を生成するステップを含んでいる。
【0022】
本方法の高金属性ケイ質物質を合成するのに用いられる塩基性ヒール溶液は、物質を形成するのに触媒として作用する。代替的な実施例においては、ヒール溶液はケイ酸/金属塩の混合物を添加する前に約60℃乃至約90℃で加熱されうる。塩基性ヒール溶液は一般的には10ミリ当量(meq)乃至約200meqの範囲にあり、代替的に様々な塩基タイプを含みうる。代表的な塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン、第四級化合物等、及びその組合せを含んでいる。代表的な第四級化合物は、テトラエチル水酸化アンモニウム、テトラ−n−ブチル水酸化アンモニウム、テトラ−n−プロピル水酸化アンモニウム、テトラメチル水酸化アンモニウム、NNN−トリメチル−2―ブチル水酸化アンモニウム、NNN−トリメチルプロピル水酸化アンモニウム等、及びその組合せを含んでいる。
【0023】
ケイ酸/金属塩の混合物が塩基性ヒール溶液に添加される速度を制御することが粒子サイズ分散を決定するのを可能にすることは、当該技術分野の当業者に公知である。好ましい実施例において、コロイド粒子は約1ナノメートル乃至約250ナノメートルの平均直径を有している。更に好ましい実施例においては、粒子は約4ナノメートル乃至約150ナノメートルの平均直径を有している。
【0024】
本発明の高金属性ケイ質物質は様々な産業アプリケーションで用いられうると考えられる。代表的なアプリケーションは歯科用アプリケーション、タンパク質分離、モレキュラシーブ、ナノ多孔質膜、導波管、フォトニック結晶、耐熱性アプリケーション、ワイン及びジュースの清澄、半導体及びディスクドライブ構成の化学機械的な平坦化、触媒、触媒担体、製紙中の保水及び脱水助剤、充填剤、表面コーティング剤、セラミック物質、インベストメント鋳造用結合剤、平滑剤、プロッパント、化粧品調合剤、及び磨き摩耗剤を含んでいる。特定のこれらの産業アプリケーションは本発明の物質をそのアプリケーションで用いる前に、更に処理されるのを要求できる。可能性のある処理ステップは、限外濾過、脱イオン化、加熱、乾燥、濃縮、表面官能基化等、及びその組合せを含んでいる。
【実施例】
【0025】
前述は、以下の実施例によってよりよく理解されうるが、例示の目的を意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0026】
以下の実施例のためのシリカソースは、ケイ酸(又は、酸性ゾル)とした。ケイ酸は陽イオン交換樹脂を通した57.37グラムの脱イオン水中に25グラムのケイ酸ナトリウム(R−570)を含む溶液を通すことによって作られた。いずれかの好適なカラム又は樹脂を用いることができるが、これらの例において、希釈した珪酸ナトリウム溶液100グラムにつき、約40mlのDowexTM650C強陽イオン交換樹脂(ミシガン州ミッドランドにある、Dow Chemical社から入手可能)を含むカラムが用いられた。
【実施例1】
【0027】
表1に示されたように、酢酸パラジウムが(添加された水のない十分な濃度での)HClで溶解された。いくつかのサンプルにおいて、塩化アルミニウム水和物が攪拌下のケイ酸に添加され、その後、酢酸パラジウム/HClの混合物が添加された。ケイ酸/塩化アルミニウム水和物/酢酸パラジウム/HClの溶液はゲル化又は沈殿で安定する。
【0028】
水酸化ナトリウムヒールは、4ネックの丸底フラスコ中で約80℃に加熱された。0.55、1.10および1.82重量パーセント(全固体に基づく)のパラジウム金属シリカコロイドのために、ケイ酸/塩化アルミニウム水和物/酢酸パラジウム/HClの溶液は、表1の各反応について約10ml/分の速度で攪拌下のフラスコ内へ滴下された。5.28重量パーセントのパラジウムのサンプルのために、唯一の調製の差は塩化アルミニウム水和物がないことであった。混合された金属シリカコロイド触媒は更に、パラジウム対金のモル比率が4の、1.07重量パーセントの全金属成分で生成された。この混合された金属触媒は次いで限外濾過によって全固体の16.3%まで濃縮された。
【0029】
【表1】

【0030】
酢酸パラジウム/HClの溶液の濃度に依存して、ケイ酸又はケイ酸/塩化アルミニウム水和物の溶液への添加後の呈色は0.55重量%のPd(0)サンプルについて明るい黄褐色であり、5.28重量%のPd(0)サンプルについて暗褐色であった。溶液はゲル化又は沈殿で非常に安定し、コロイド粒子の生成に用いる前に数時間保存された。苛性のヒールは80℃に加熱され、ケイ酸/酢酸パラジウム又はケイ酸/塩化アルミニウム水和物/酢酸パラジウムの溶液は、10ml/分で滴下され、約10ナノメートルの意図されたシリカコロイド粒子サイズを生成した。
【実施例2】
【0031】
実施例1からのサンプルは次いで、脱イオン水中の10重量%のヒドラジン溶液の1mlで還元する時又は還元するとすぐに、特性づけられた。高金属性シリカコロイドの特性付けは、透過型電子顕微鏡(TEM)、粉末X線回折(PXRD)及び窒素吸着を含んでいた。熱電子タングステンフィラメントを装備したPhilips(FEI) EM208S TEM(100kV)又はLaBフィラメントを装備したJEOL 3010 TEM(300kV)が用いられた。か焼されたサンプル上のPXRDは、波長1.78897Åを有するCo Kα放射線を用いたPhilips PANalytical(登録商標) X’Pert Pro 3040で実行された。サンプルは十分な量の脱イオン水で洗浄されて、存在するNaClを除去した。窒素吸着測定はQuantachrome(登録商標)のAutosorb−1Cで実行された。各サンプルは300℃で3時間脱気された。
【0032】
0.55、1.10及び1.82重量%のPd(0)サンプルが同様に(すなわち限外濾過による更なる濃度なく)用いられ、ヒドラジンでの還元前に、5.28重量%のPd(0)サンプルが14%の固体まで濃縮され、1.07重量%のPd(0)及びAu(0)サンプルが16.3%の固体まで濃縮された。還元前の5.28重量%のPd(0)に対する粉末X線回折(PXRD)パターンが図1に示されている。サンプルはPXRDパターンの取得前にベントフード内で空気乾燥された。PXRDパターンは100%の強度である(111)ピークを含む識別可能なピークの間隙であり、Pd(0)について2θ=46.943にすべきである。環境条件下、室温で乾燥後に還元が起こらないことは明らかである。更に、存在するPd(0)相又は酢酸パラジウム相はない。
【0033】
図2はヒドラジンで還元後の5.28重量%のPd(0)サンプルのPXRDパターンを示している。2θ=46.71での広範なPd(0)の(111)ピークが見られうる。表2は平均のPd(0)粒子サイズを示し、表1からの特定のサンプルに対しシェラーの式(t=0.9λ/(Bcosθ))を用いて算出している。
【0034】
【表2】

【0035】
図2のPd(0)以外に、他のパラジウム相が存在しないため、パラジウムの100%還元が想定される。5.28重量%のPd(0)サンプルはシリカ基質内でAlを用いない唯一のサンプルである。様々な酸化金属をシリカ担体に添加することは、担体−金属間の相互作用を変えることができる。担体−金属間の相互作用は、微少な粒子Pd(0)粒子が得られるため本発明の直接的な合成技術においては重要な役割として作用しないことは明らかである。更に、パラジウム塩の濃度が粒子サイズを決定するのにより重要な役割を果たすことは明らかである。
【0036】
図3によると、0.55(−−)、1.10(−−−)、及び1.82(―)重量%のPd(0)物質の還元後のPXRDパターンが示されている。PXRDパターンはPd(0)と結合する(111)ピークを示している。5.28重量%のPd(0)サンプルと同様に、ピークは総ての3つのサンプルについて非常に広範であり、表2に示されるようなシェラーの式によって決定される平均粒子サイズを有している。低い方の0.55及び1.10重量%のPd(0)サンプルは、2.87nmのPd(0)の平均粒子サイズを有する高い方の1.82重量%のPd(0)サンプルよりも大きい、それぞれ4.24及び4.60nmのPd(0)の平均粒子サイズを有している。5.28重量%のPd(0)サンプルは低い方のPd(0)の重量%サンプルよりも、平均して小さな粒子サイズを有し、一般的には、既知のゾルゲル合成技術を介した金属微粒子のドーピング中にPXRDによって観察されない。
【0037】
図4はPd(0)/Au(0)=4のモル比率を有する1.07重量%のAu(0)及びPd(0)コロイド状アルミノケイ酸塩粒子のPXRDパターン(還元されない(−−−)及び還元された(―))である。図3に示した1.10重量%のPd(0)のPXRDはPd(0)(111)について非常に特徴的なピークを与えているが、図4にAu(0)及びPd(0)の双方についての1.07重量%の(111)ピークは見られない。非常に広範なPXRDピークが、アルミノケイ酸塩基質を通ずるAu(0)及びPd(0)粒子の良い分散と、それらの微小粒子サイズとを示している。
【実施例3】
【0038】
窒素吸着は還元後の0.55、1.10、及び1.82重量%のPd(0)サンプルについてBET表面積を決定するのに用いられた。結果は表3に示された。コロイド粒子の直径は式:2727/BET表面積、で算出された。
【0039】
【表3】

【0040】
表面積と結合するコロイド粒子のサイズは、0.55重量%のPd(0)サンプルについて12.3nmであり、1.10重量%のPd(0)サンプルについて10.5nmであり、1.82重量%のPd(0)サンプルについて10.8nmである。総ての3つのサンプルについての粒子サイズ値は、約10nmの意図された粒子サイズにうまく相関付けられる。総ての3つのサンプルは相当のヒステリシスを有するIV型等温線を示すが、等温線の吸着部分は約2乃至約30nmの孔隙サイズ分散を与えた。
【0041】
ここに述べた現存の好ましい実施例に対する様々な変化及び変更が当該技術分野の当業者に明らかであることは理解すべきである。このような変化及び変更は本発明の範囲から離れることなく、意図された利点を減ずることなくなされうる。従って、このような変化及び変更は添付の請求項によってカバーされることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高金属性ケイ質物質を調製する方法であって、当該方法が、
a)混合物を形成するために、1又はそれ以上の金属の1又はそれ以上の塩をケイ酸溶液と混合するステップと;
b)懸濁液中にコロイド状シリカ粒子を形成するために、前記混合物を塩基性ヒール溶液に添加するステップであって、前記コロイド状シリカ粒子の1又はそれ以上が取り込まれた金属粒子を含むステップと;
c)前記懸濁液を選択的に濃縮するステップと;
d)生成物を形成するために、還元剤で前記取り込まれた金属粒子を選択的に還元するステップと;
e)前記コロイド状シリカ粒子又は前記生成物を選択的に更に処理するステップと;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法が、前記ケイ酸溶液を調製するためにケイ酸ナトリウム溶液を脱イオン化するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法が、前記混合物を形成するために、1又はそれ以上の金属の1又はそれ以上の塩を前記ケイ酸溶液と混合する前に塩化アルミニウム水和物を前記ケイ酸溶液と結合させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法が、酢酸パラジウム、塩化金酸、塩化アルミニウム水和物、塩化銅、硝酸第二鉄、硝酸ニッケル、塩化コバルト、及びその組合せからなる群から選択される1又はそれ以上の金属の1又はそれ以上の塩を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記塩基性ヒール溶液が水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン、第四級化合物、及びその組合せからなる群から選択される1又はそれ以上の塩基を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法が、約1ナノメートル乃至約250ナノメートルにコロイド状シリカ粒子のサイズを制御するために、制御速度で前記混合物を前記塩基性ヒール溶液に添加するステップを含み、前記サイズが前記制御速度に依存することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法が、約4ナノメートル乃至約150ナノメートルにコロイド状シリカ粒子のサイズを制御するために、制御速度で前記混合物を前記塩基性ヒール溶液に添加するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法が、約60℃乃至約90℃に前記塩基性ヒール溶液を加熱するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記還元剤がヒドラジン及び水素ガスからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記取り込まれた金属粒子が前記コロイド状シリカ粒子内に本質的に均質に拡散することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記コロイド状シリカ粒子又は前記生成物を更に処理するステップが、限外濾過、脱イオン化、加熱、乾燥、濃縮、表面官能基化、及びその組合せからなる群から選択される1又はそれ以上のプロセスを用いるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法が、歯科用アプリケーション、タンパク質分離、モレキュラシーブ、ナノ多孔質膜、導波管、フォトニック結晶、耐熱性アプリケーション、ワイン及びジュースの清澄、半導体及びディスクドライブ構成の化学機械的な平坦化、触媒、触媒担体、製紙中の保水及び脱水助剤、充填剤、表面コーディング剤、セラミック物質、インベストメント鋳造用結合剤、平滑剤、プロッパント、化粧品調合剤、及び磨き摩耗剤からなる群から選択される産業用アプリケーションにおいて前記コロイド状シリカ粒子又は前記生成物を用いるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
高金属性ケイ質組成物であって、ケイ酸溶液と、1又はそれ以上の金属の1又はそれ以上の塩との混合物から作られる複数の沈殿したシリカ粒子を含み、全固体に基づく約10重量パーセント乃至約50重量パーセントの金属が、前記コロイド状シリカ粒子と結合することを特徴とする高金属性ケイ質組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の高金属性組成物において、前記金属が還元された金属であることを特徴とする高金属性組成物。
【請求項15】
高金属性ケイ質組成物であって、約1乃至約250ナノメートルの平均直径を有し、ケイ酸溶液と、1又はそれ以上の金属の1又はそれ以上の塩との混合物から作られる複数のコロイド状シリカ粒子を含み、全固体に基づく約10重量パーセントまでの金属が、前記コロイド状シリカ粒子と結合することを特徴とする高金属性ケイ質組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の高金属性ケイ質組成物において、前記金属が還元された金属であることを特徴とする高金属性ケイ質組成物。
【請求項17】
請求項15に記載の高金属性ケイ質組成物が、前記コロイド状シリカ粒子と結合する複数の異なる金属を含むことを特徴とする高金属性ケイ質組成物。
【請求項18】
請求項15に記載の高金属性ケイ質組成物において、前記金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第一列遷移金属、第二列遷移金属、ランタニド、及びその組合せからなる群から選択されることを特徴とする高金属性ケイ質組成物。
【請求項19】
請求項15に記載の高金属性ケイ質組成物において、前記金属が、パラジウム、白金、鉄、金、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、及びその組合せからなる群から選択されることを特徴とする高金属性ケイ質組成物。
【請求項20】
請求項15に記載の高金属性ケイ質組成物において、前記コロイド状シリカ粒子が、稠密な及び乾燥したコロイド状シリカ粒子を含むことを特徴とする高金属性ケイ質組成物。

【公表番号】特表2010−509496(P2010−509496A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535512(P2009−535512)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/084095
【国際公開番号】WO2008/058240
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】