説明

髪色提示方法

【課題】対象者が髪色を変えるに際して、顧客の多様な希望を実現する髪色を提示すること。
【解決手段】対象者についての肌色の見え方の変化に関する肌色印象変化情報を取得するステップと、髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが予め対応づけられた色対応情報を参照し、肌色印象変化情報に基づいて髪色変化量情報を取得するステップと、取得された髪色変化量情報に対応する対象者の髪色または髪色の変化量を提示するステップと、を含む髪色提示方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、髪色提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
髪色の色合いを変化させるための種々の化粧方法が従来から提案されている。例えば、髪のカラーリングをする際に、まず下地色で顧客(ユーザ)の肌色と色相やトーンが同系色の色に髪を染め、その後、顧客の好みの色で髪の仕上げの染色をする方法が開示されている(特許文献1参照)。また、2種類以上のヘアカラーをミックスして染色する場合に、顧客と美容師の仕上がりの髪色のイメージのギャップを埋めるため、画像シミュレーションを用いて、予め顧客に仕上がり具合を提示する方法も開示されている(特許文献2参照)。特許文献3に関しては後述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−304637号公報
【特許文献2】特開2005−274928号公報
【特許文献3】特開2005−339522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や2に記載の方法を用いても、顧客(ユーザ)や施術者がイメージしたとおりの色合い、かつ似合う髪色が必ずしも実現するものではなかった。また昨今では、髪色を決定するに際して、顧客の多様な希望を実現できるような方法が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる問題に鑑み、本発明者が鋭意検討を行った結果、対象者(ユーザ)の髪色を変化させることにより、当該対象者の肌色の見た目の印象(見え方)が変化することが明らかとなった。これにより、髪色を選択する際に、対象者の肌色の見え方の変化までを考慮して髪色を提示することで上記の課題が解決されることが新たに見出された。
【0006】
すなわち、本発明によれば、対象者についての肌色の見え方の変化に関する肌色印象変化情報を取得するステップと、髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが予め対応づけられた色対応情報を参照し、前記肌色印象変化情報に基づいて髪色変化情報を取得するステップと、取得された前記髪色変化情報に対応する髪色または髪色の変化量を提示するステップと、を含むことを特徴とする髪色提示方法が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが対応づけられた色対応情報が少なくとも記憶された記憶部と、髪色を変化させる対象者に関する入力情報を取得する入力情報取得部と、前記入力情報取得部で取得した前記対象者に関する前記入力情報に基づいて前記記憶部にアクセスして前記色対応情報を参照し、前記髪色を決定する制御部と、前記制御部により決定した髪色または髪色の変化量を表示して提示する表示部と、を有し、前記制御部が、前記髪色を変化させる対象者に関する前記入力情報として、前記肌色の見え方の変化に関する肌色印象変化情報を取得し、前記記憶部に記憶された前記色対応情報を参照し、前記色対応情報に基づいて、当該肌色印象変化情報と対応づけられた髪色変化量情報を取得し、取得された前記髪色変化量情報に対応する前記対象者の髪色または髪色の変化量を提示する、ことを特徴とする髪色提示装置が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、上記髪色提示方法を、上記髪色提示装置に組み込まれたコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、対象者についての肌色の見え方の変化に関する肌色印象変化情報を取得するステップと、髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが予め対応づけられた色対応情報を参照し、前記肌色印象変化情報に基づいて髪色変化情報を取得するステップと、取得された前記髪色変化情報に対応する毛髪用品を提供するステップと、を含むことを特徴とする毛髪用品の販売方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、対象者について希望する肌色の見え方に関する肌色印象変化情報を取得するステップと、髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが予め対応づけられた色対応情報を参照し、前記肌色印象変化情報に基づいて髪色変化情報を取得するステップと、取得された前記髪色変化情報に対応する毛髪用品の助言を行うステップと、を含むことを特徴とする髪色カウンセリング方法が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが対応づけられているチャートが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、染毛剤などの毛髪用品を選択する際に、対象者が希望する肌色の見え方に対応した髪色または髪色の変化量が提示される。これにより、肌色の見え方の変化をも考慮した顧客の多様な希望を実現することが可能な髪色提示方法などが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一実施形態にかかる髪色提示方法を実行する髪色提示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第一実施形態にかかる髪色提示方法の機能を説明するための機能ブロック図である。
【図3】第一実施形態にかかる髪色提示方法のフローチャートを示す図である。
【図4】実施例1において、被験者に両画像の肌色が同じに見えるものを選択してもらう官能評価実験に用いた画像の概念図である。
【図5】色相に関して、肌色の見え方情報と髪色の変化量情報との同化の関係を示すグラフ図である。
【図6】彩度に関して、肌色の見え方情報と髪色の変化量情報との同化の関係を示すグラフ図である。
【図7】明度に関して、肌色の見え方情報と髪色の変化量情報との対比の関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第一実施形態>
図1、図2、および図3を用いて、本発明の第一実施形態について説明する。図1は第一実施形態にかかる髪色提示方法を実行するための髪色提示装置の構成を示すブロック図である。図2は第一実施形態にかかる髪色提示方法の機能を説明するための機能ブロック図である。図3は第一実施形態にかかる髪色提示方法のフローチャートを示す図である。
【0015】
はじめに、発明者が本発明に至った経緯について説明する。髪色による印象は、似合うか否かだけでなく、肌色の見え方にも影響を与えることは明らかではなかった。このため、髪色による肌色の見え方の変化を、髪色を変化させる対象者、例えば、美容院や化粧品売り場の顧客に説明し、当該顧客の客観的判断を助ける髪色の提案方法や提案装置は有用と考えられる。しかし、髪色の変化による肌色の印象変化に与える影響を考慮して、髪色を提案する方法や装置は未だ開発されておらず、発明者らはこの点に着目して、本発明を完成するに至った。
【0016】
<髪色提示方法>
ここで、本実施形態の髪色提示方法の概要について説明する。
本実施形態の髪色提示方法は、対象者についての肌色の見え方の変化に関する肌色印象変化情報を取得するステップと、髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが予め対応づけられた色対応情報を参照し、肌色印象変化情報に基づいて髪色変化情報を取得するステップと、取得された髪色変化情報に対応する髪色または髪色の変化量を提示するステップと、を含む。
【0017】
本実施形態の髪色提示方法は、髪色を変化させる対象者の現在の肌色情報を取得し、対象者がなりたいと希望する肌色となるように、髪色の色相、彩度、明度を決定し、その髪色または、現在の髪色からの変化量を提示するものである。対象者は、この情報に基づいて、たとえば、希望する肌色となる髪色の製品を選択することができる。また、この髪色提示方法は、美容師や化粧品やドラッグストアの販売員など、人により行ってもよいし、後述するように、コンピュータを用いて行ってもよい。いずれの場合でも、施術者や販売員らの主観が入ることがなく、対象者との間で感性のギャップを生じることがなく、対象者の希望する肌色の見せ方情報に基づいて、一定の髪色の提示結果を得ることができる。
【0018】
なお、対象者とは、髪色を変化させる本人である。しかし、当該対象者の髪色を変化させたい旨の相談をし、肌色の見え方に対応した髪色の提示を受けるのは、必ずしも本人でなくてもよく、例えば、友人や身内の髪色を変化させたい人、芸能人のマネージャーなど、他人であってもよい。また、髪色とは、毛髪(頭髪)の見た目の色を意味する。たとえば、黒髪、茶髪、白髪混じりの灰色髪、白髪など、対象者の髪色の見た目の色彩を意味する。
【0019】
また、肌色の見え方とは、毛髪および顔の肌をあわせて目視観察した場合の、顔の肌色に関する見た目の印象を意味する。肌色の見え方は、毛髪を含む頭部を目視観察したうえで官能的に評価することができる。肌色は、詳細は後述するが、素顔の肌色であってもよいし、化粧後の肌色であってもよい。
【0020】
肌色印象変化情報は、対象者が希望するような肌色の見え方の変化を表す情報である。肌色の見え方の変化とは、顔の肌色に関する見た目の印象が変化することであり、色彩科学的な肌色(明度、彩度および色相)が実際に変化する場合と、色の同化や対比などの視覚的効果によって肌色の見た目の印象のみが変化する場合と、を含む。このうち、肌色印象変化情報が示す「肌色の見え方の変化」は後者を意味する。
すなわち、肌色印象変化情報とは、対象者の髪色を変化させたことに起因して肌色の見た目の印象が視覚的効果によって変化することを示す情報である。
【0021】
この視覚的効果について説明する。本発明者らの検討により、頭部を覆う髪色によって顔の肌色の見え方が変化することが明らかとなった。たとえば、ある髪色に変化させた場合、肌色を変えていないのに、肌色の見え方が白っぽく変化したり、逆に黒っぽく変化したりするなど明度の変化が生じる場合がある。同様に、肌色がピンク系に鮮やかに見えたり、逆に黄味がかって見えたりするなど、色相や彩度の変化が生じる場合もある。これは、後述するように髪色と肌色との同化や対比が生じるためである。
【0022】
色対応情報は、髪色の色相、彩度または明度の一以上に関する変化量と、肌色の見え方の変化量とが予め対応づけられたデータであり、複数のサンプル提供者の髪色の変化と肌色の見え方の変化とを予め統計的に対応づけたものである。具体的には関数(数式)、データベースまたはテーブルなどの種々の形態を採ることができる。
本実施形態の色対応情報は、髪色の三属性(色相、彩度または明度)の変化量と、肌色の三属性(色相、彩度または明度)の見え方とがそれぞれ対応づけられた情報である。言い換えると、髪色の色相の変化量と肌色の色相の見え方が対応づけられ、髪色の彩度の変化量と肌色の彩度の見え方が対応づけられ、そして髪色の明度の変化量と肌色の明度の見え方が対応づけられている。このほか、色対応情報は、髪色の三属性のいずれかの変化量と、肌色の三属性の他のいずれかの見え方の変化量と、が対応づけられた情報を含んでも良い。
【0023】
そして、色対応情報を参照して得られた髪色変化情報に基づいて、対象者の髪色の色相、彩度または明度の少なくとも1つを変化させることで、対象者についての肌色の見え方が変化する。
【0024】
現在の肌色情報とは、対象者の現在の肌色であり、素顔の肌色であってもよいし、普段行っている化粧後の肌色であってもよい。また、ファンデーションなどのメイクのカウンセリングをした後、その肌色をさらに良く見せるために、本発明の髪色提示方法による髪色の提示を行ってもよい。
【0025】
なお、本実施形態において、肌色その他の情報の取得や髪色などの提示方法は、一対一の聞き取り形式が主として挙げられるが、特に限定されることはない。たとえば、インターネットを利用して情報の取得および提示を行ってもよいし、テレビ電話などを利用してもよいし、写真やデジタル画像などを送付して情報を提供し、髪色提示方法を実施した結果を送付することで髪色を提示するものであってもよい。
【0026】
さらに、本実施形態では、顔サンプルを参照し、対象者の髪色変化前の現在の肌色情報や髪色情報を取得することを含む。この顔サンプルとは、髪色を変化させた際に、対象者の肌色の見え方がどのような変化を生じたか、変化前と変化後との肌色を比較するために用いてもよいし、髪色を変化させるための基礎情報として用いるために取得してもよい。
【0027】
この顔サンプルとしては、デジタルカメラや携帯電話などのモバイル機器のカメラなどで撮った対象者の顔の画像情報であってもよい。後述するように、コンピュータを使用して当該方法を行う際には、特に有効である。また、顔サンプルは、写真などであってもよいし、この写真をスキャナ、デジタルカメラ、携帯電話などのモバイル機器のカメラなどで取り込んでもよい。または、顔サンプルは、モデルの顔や顔型の色サンプルなど、予め用意された複数の顔サンプルから、対象者の肌色の印象変化前の肌色に対応して、最も近いものを選択したものであってもよい。この場合、コンピュータや対象者の画像情報のない環境、状況であっても、本発明の髪色提示方法を実現することができる。
【0028】
ここで、色の三属性について説明する。色の三属性には、色相、彩度、明度があり、これらが変化することで、色が変化して見える。また、色の三属性と色の変化とには、「同化」または「対比」の関係がある。ここでは、「同化」とは、色の属性の変化と正の相関をもって色が変化して見えることを意味し、「対比」とは、色の属性の変化と負の相関をもって色が変化して見えることを意味する。この色の三属性と肌色の見え方との同化または対比の関係の詳細は実施例において後述するが、色相および彩度については、髪色の変化の方向と肌色の見え方の変化の方向とが同化の関係にあることを発明者らは知見した。一方、明度については、髪色の変化の方向と肌色の見え方の変化の方向とが対比の関係にあることを発明者らは知見した。したがって、この知見に基づいて、髪色の色相、彩度または明度を変化させることにより、肌色の見え方を対象者らが希望するとおりに変化させることができる。
【0029】
すなわち、本実施形態における色対応情報は、髪色の色相または彩度の変化の方向と、肌色の色相または彩度の見え方の変化の方向と、が同化の関係をもって互いに対応づけられた情報を含む。
【0030】
そして、本実施形態における色対応情報は、髪色の明度の変化の方向と、肌色の明度の見え方の変化の方向と、が対比の関係をもって互いに対応づけられた情報を含む。
【0031】
本実施形態の髪色提示方法では、さらに、対象者の現在の髪色情報と、髪色の変化の傾向に関する傾向情報と、を取得する。傾向情報は、対象者らが変化を希望する髪色の傾向を示す情報であり、たとえば色相、色彩または明度の少なくともいずれか、およびその変化の方向を示す情報である。そして、これらの髪色情報、傾向情報および色対応情報に基づいて、髪色変化情報を取得する。さらに、本実施形態の髪色提示方法では、髪色の変化量を提示するステップを行う場合に、肌色印象変化情報と、この髪色変化情報に対応する髪色または髪色の変化量と、を提示してもよい。このような髪色提示方法では、希望する髪色の傾向を予め取得してから、希望する肌色の見え方となる髪色を決定するので、髪色の色相、色彩、明度のすべてを考慮して髪色を決定するよりも迅速に処理を行うことが可能となる。
【0032】
具体的には、例えば、髪色をブラウン系にするか、黄色系にするか、紫系にするか、オレンジ系にするかなど、髪色を変化させる大局的な色相の方向を傾向情報として指定することができる。そして、現在の髪色から、この傾向情報が示す色相の方向に向かって髪色を変化させることで、対象者らが希望する肌色の見え方の変化を実現してもよい。ここで、大局的な色相とは、色相を数段階から数十段階程度の基本色に区分し、この基本色のそれぞれに関して彩度および明度を更に数段階から数十段階程度に区分した場合の個々の色をいう。基本色としては、赤、黄、緑、青、紫の五段階を例示することができる。このほか、赤、黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、紫青、紫、赤紫の十段階を基本色として設定してもよい。そして、色味とは、かかる大局的な個々の色彩における基本色の色合いの強さをいう。
【0033】
または、色相を固定して、髪色の彩度または明度の少なくとも1つを変化させることによって対象者が希望する肌色の見え方を実現してもよい。
【0034】
さらに、髪色提示方法において、対象者の現在の肌色情報と、印象変化後の肌色の見え方を示す変化後肌色情報、すなわち、対象者がこうなりたいと希望する肌色の見え方情報を取得してもよい。そして、対象者の現在の肌色情報と変化後肌色情報とに基づいて肌色印象変化情報を求め、これと色対応情報とに基づいて髪色の変化量情報を求めるステップを行ってもよい。このような髪色提示方法では、対象者らが希望する肌色の見え方に対応した髪色または髪色の変化量を提示することができる。
【0035】
具体的には、対象者の現在の髪色の色相の赤味または黄味を変化させるとよい。これにより、対象者のナチュラルな髪色を残しながら、その色味を微調整することで肌色の見た目の印象における赤味または黄味を強くすることができる。
【0036】
<髪色提示装置の構成>
なお、図1に示すように、上記髪色提示方法を行う髪色提示装置100は、髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが対応づけられた色対応情報が少なくとも記憶された記憶部10と、髪色を変化させる対象者に関する入力情報を取得する入力情報取得部20と、入力情報取得部20で取得した対象者に関する入力情報に基づいて、記憶部10にアクセスして肌色の色対応情報を参照し、髪色を決定する制御部30と、制御部30により決定した髪色または髪色の変化量を表示して提示する表示部40と、を有する。
【0037】
また、図2に示すように、本実施形態の制御部10は、記憶部10に記憶された色対応情報を参照する髪色情報参照部31と、当該色対応情報に基づいて、当該肌色印象変化情報と対応づけられた髪色変化量情報を取得する差分算出部32と、色対応情報を参照して取得した髪色変化量情報に基づいて、髪色を決定する髪色決定部33と、決定された色に対して、色相、彩度または明度の少なくとも1つをさらに変化させる三属性変化部34と、提示された髪色と、当該髪色に対応する肌色印象変化情報および髪色変化量情報を、記憶部10に記憶する情報蓄積部35から構成されている。
【0038】
これらは、コンピュータに組み込まれ、プログラムとして実行される。また、記憶部10としては、コンピュータ内部に設置または外部に接続されたハードウエアであってもよいし、コンピュータ内部のRAM、ROMであってもよいし、CD、DVD、メモリカード、USBメモリなどであってもよい。なお、記憶部10には、顧客情報や商品情報など、他の情報が記憶されていてもよい。また、記憶部10に記憶された肌色の見え方情報と髪色の変化量情報とが対応づけられた髪色情報は、予めサンプルを入力しておいてもよいし、後述するように、髪色提示結果を記憶して情報を蓄積していくものであってもよい。
【0039】
また、図1に示すように、髪色提示装置100には、入力情報取得部20に情報を送信するための入力手段50が接続されている。この入力手段50は、例えば、キーボード、マウス、デジタルカメラ、携帯電話などのモバイル機器のカメラ、髪色や肌色を取得するマイクロカメラ、または分光光度計などの測色器や色差計、その他の取得手段、などが挙げられる。
【0040】
さらに、髪色提示装置100には、表示部40により変化後の髪色または変化量を表示して対象者らに提示するための出力手段60が接続されている。この出力手段60としては、例えば、コンピュータ、デジタルカメラ、携帯電話などのモバイル機器のカメラ、その他のモニタ61、カラープリンタ62、などが挙げられる。
【0041】
〔髪色提示方法の具体的処理〕
次に、図2の髪色提示方法の機能ブロック図、および、図3の髪色提示方法の処理にかかるフローチャートを用いて、本実施形態の髪色提示装置100を用いて行われる本実施形態の髪色提示方法の具体的な一実施例について説明する。髪色提示装置100で行われる髪色提示方法の各処理(ステップ)としては、制御部30が、全体の制御も行う役割を果たしている。また、後述するが、S4、S5、および、S7のステップは、必要に応じて任意で行えばよく、省略してもよい。
【0042】
髪色提示装置100は、制御部30の制御により、以下の髪色提示方法の各ステップを実行する。
髪色を変化させる対象者について、入力情報取得部20が、肌色の見え方情報を取得するステップ(S1)。
このステップS1では、肌色の見え方情報の他に、現在の髪色情報、および傾向情報を取得してもよい。
髪色情報参照部31が、記憶部10にアクセスして、当該記憶部10に記憶された色対応情報を参照するステップ(S2)。
差分算出部32が、色対応情報に基づいて、入力情報取得部20で取得した肌色印象変化情報と対応づけられた髪色変化量情報を取得するステップ(S3)。
髪色決定部33が、髪色変化量情報に基づいて、髪色を決定するステップ(S4)。
三属性変化部34が、髪色決定部33が決定した髪色に対して、色相、彩度、および、明度との少なくとも1つをさらに変化させるステップ(S5)。
表示部40が、以上により決定された、髪色を出力手段60に表示して提示するステップ(S6)。
表示部40にて提示された髪色と、当該髪色に対応する肌色の見え方情報および髪色の変化量情報を、情報蓄積部35が記憶部10に記憶するステップ(S7)。
【0043】
なお、本実施形態に代えて、表示部40が対象者の髪色の変化量を提示する場合、髪色決定部33が髪色を決定するステップS4は不要である。また、三属性変化部34が髪色をさらに変化させるステップS5は髪色の微調整を行うステップであり、当該ステップは任意で行えばよい。
【0044】
以下、上記各処理の詳細について図2および図3を参照しながら説明する。
(S1)
S1では、制御部30の制御により、入力情報取得部20が、髪色を変化させる対象者についての肌色の見え方の変化に関する肌色印象変化情報、現在の髪色情報、および傾向情報を取得する。なお、肌色印象変化情報は、対象者の現在の肌色情報と、印象変化後の肌色の見え方を示す変化後肌色情報と、を取得して求めてもよい。この肌色情報は、上述したように、スキャナ、デジタルカメラ、携帯電話などのモバイル機器のカメラや測色器などの入力手段50により入力された、デジタル画像や、スキャナで読み取った画像や、写真をデジタルカメラで改めて撮影したデジタル画であってもよい。また、インターネットやテレビ電話で送信されるデジタル画像から取得してもよい。また、予め記憶部10に記憶された複数の肌色見本をディスプレイなどに表示して、キーボードやマウスなどの入力手段50により対象者の肌色を選択してもよいし、対象者の肌色に対応したカードや冊子に記載の色見本の番号などをキーボードなどから入力してもよい。これらの情報は、記憶部10に記憶してもよいし、RAMやROM上に記憶し、最終的に消去または顧客の管理情報として記憶部10に記憶してもよい。
【0045】
また、この肌色情報の取得の際に、対象者の現在の髪色情報を取得、および、対象者についての肌色の見え方の変化に関する肌色印象変化などをヒアリングしてもよい。希望する肌色の見え方の変化に関する肌色印象変化とは、具体的に、本実施形態では、髪色を変化させる対象者(以下「本人」と呼ぶ)が希望する肌色、たとえば、より明るい肌色に見せたい、ピンク系の肌色に見せたい、若々しい肌色に見せたい、小麦色がより際だつ健康的な肌色に見せたい、特定の芸能人のような顔色に見せたいなど、希望の肌色の見せ方の具体的な情報を示す。また、変化後の髪色とは、茶色系にしたい、金髪系にしたいなど、希望の髪色の具体的な三属性にかかる色情報や髪色の変化量の大小を示す。これらの情報を取得することにより、以下のS2での髪色情報の参照を、より効率的に行うことができる。また、現在の髪色や肌色を取得することにより、髪色や肌色の見え方の変化前と変化後とを比較する情報源にもなる。
【0046】
(S2)
次に、髪色情報参照部31は、S1で取得した本人の現在の肌色情報に基づいて、記憶部10にアクセスして、当該記憶部10に記憶された色対応情報を参照する。この色対応情報とは、具体的には、髪色変化量情報、すなわち、髪色をどのように変化させると、どのように肌色が見えるかが、対応づけられた情報である。これは、この髪色にすると、このような肌色の見え方となる、というように、口頭やサンプルで適宜に本人に示してもよいが、本実施形態では、髪色提示装置100により、客観的に、S1で取得した本人が希望する髪色の具体的な色相から、その髪色とした場合に対応する肌色の見え方情報を参照するものである。
【0047】
(S3)
次に、差分算出部32が、S1で取得した現在の肌色と希望する肌色との差分(肌色差分)、傾向情報、および色対応情報に基づいて、現在の髪色と希望する髪色との差分(髪色差分)を求める。具体的な色対応情報は特に限定されるものではなく、たとえば、以下の表1に示すように、肌色差分の値と髪色差分の値とがテーブル形式で互いに対応づけられた対応表とすることができる。このほか、色対応情報は、髪色差分と肌色差分との関係を示す数式でもよく、または当該数式を表す電気回路でもよい。この差分、すなわち色対応情報が、髪色変化量情報である。
【0048】
【表1】

【0049】
(S4)
次に、髪色決定部33が、上記S2で参照した色対応情報と、上記S3で算出した、髪色変化量情報とに基づいて、髪色を決定する。この髪色の決定も、特に限定されるものではないが、たとえば、上記表1に示すように、肌色差分と髪色差分との対応表から、基本となる髪色の色番号などを決定してもよい。
【0050】
(S5)
次に、三属性変化部34は、髪色決定部33が決定した髪色に対して、色相、彩度、および、明度との少なくとも1つを変化させる処理を行う。この処理は、たとえば、S4で決定した髪色にした場合、本人が希望する肌色の見え方と微妙なずれを生じている場合などに、行うのが好ましい。したがって、特にずれなどが生じていない場合や処理をより簡易にする場合には、S5の処理は省いて、次の表示処理(S6)に進んでもよい。
【0051】
(S6)
そして、表示部40は、上記ステップの実行により決定した髪色を、本人に提示する。この提示方法は、番号で示された色見本を提示してもよいが、本実施形態では、コンピュータ、デジタルカメラ、携帯電話などのモバイル機器のカメラ、その他のモニタ61、カラープリンタ62などの出力手段60に、髪色変化前の顔画像と髪色変化後の顔画像とを表示し、髪色変化量と、髪色の変化による肌色の見え方の変化が、明確に視認できるようにしている。
【0052】
そして、本人が、当該画像を視認することで、当該髪色が気に入るか否かがわかるとともに、髪色を変えることにより、どのように肌色の見え方が変わるかを明確に把握することができる。なお、提示された髪色と肌色の見え方で本人や施術者らが満足した場合には、提示が終了する。
【0053】
しかし、提示された画像を視認して、本人や施術者らが、もう少し肌色を白く見せたいとか、髪色を明るくしたいとか、さらなる希望がある場合は、三属性変化部34による色相、色彩、明度の変化処理を行って、髪色と肌色の見え方を変化させ、表示部40により、さらに変化させた髪色と肌色の見え方の画像などを出力手段60に出力する処理を繰り返してもよい。さらには、S1の情報取得ステップから行ってもよい。このようにすることにより、本人や施術者らの満足度を、より向上させることができるとともに、最適な肌色の見え方を可能とする髪色を提示することができる。
【0054】
(S7)
次に、情報蓄積部35が、当該顧客情報として、上記で提示した髪色を記憶部10に記憶してもよい。また、当該髪色と、当該髪色とするに至った肌色の見え方情報と、これに対応づけた髪色変化量情報とを、色対応情報に追加情報として記憶部10に記憶してもよい。そして、これらの記憶情報を、それ以降に髪色を提示する基準の情報として用いてもよい。なお、これらの情報を、本人の元の髪色や肌色、年齢、性別ごとに取得するデータ取得装置をさらに備えていてもよく、髪色を変化させるあらゆる対象者への対応および提示が可能なものとなる。
【0055】
以上のように、本実施形態の髪色提示装置100を用いて、本実施形態の髪色提示方法を行うことにより、対象者は髪色を変化させることで、肌色の見え方も変化することを視認することができ、髪色を変化させるための参考とすることができる。したがって、染毛剤などの毛髪用品を選択する際に、顧客などの髪色を変化させる本人の感性や施術者のスキルの高低などに影響されることがなく、対象者が希望する肌色の印象変化を与える髪色を提示することが可能となる。なお、本実施形態では、髪色提示方法により髪色を提示されるのは、髪色を変化させる対象者である「本人」であるが、前述したように、髪色を提示されるのは、必ずしも本人でなくてもよく、他人であってもよい。
【0056】
<第二実施形態>
<毛髪用品の販売方法>
次に、本発明の第二実施形態の毛髪用品の販売方法について説明する。
まず、毛髪用品の販売方法は、対象者についての肌色の見え方の変化に関する肌色印象変化情報を取得するステップと、髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが予め対応づけられた色対応情報を参照し、肌色印象変化情報に基づいて髪色変化情報を取得するステップと、取得された髪色変化情報に対応する毛髪用品を提供するステップと、を含む。
【0057】
〔毛髪用品の販売方法具体的処理〕
そして、本実施形態の毛髪用品の販売方法を具体的に実施する場合、第一実施形態と同様の髪色提示装置100を使用して以下のステップを行う。
髪色を変化させる対象者について、入力情報取得部20が、肌色の見え方情報を取得するステップ(S11)。
このステップS11でも、肌色の見え方情報の他に、現在の髪色情報、および傾向情報を取得してもよい。
髪色情報参照部31が、記憶部10にアクセスして、当該記憶部10に記憶された色対応情報を参照するステップ(S12)。
差分算出部32が、色対応情報に基づいて、入力情報取得部20で取得した肌色印象変化情報と対応づけられた髪色変化量情報を取得するステップ(S13)。
髪色決定部33が、髪色変化量情報に基づいて、髪色を決定するステップ(S14)。
三属性変化部34が、髪色決定部33が決定した髪色に対して、色相、彩度、および、明度との少なくとも1つをさらに変化させるステップ(S15)。
表示部40が、以上により決定された髪色を出力手段60に表示して提示するステップ(S16)。
表示部40にて提示された髪色と、当該髪色に対応する肌色の見え方情報および髪色の変化量情報を記憶部10に記憶するステップ(S17)。
さらに、図示はしないが、提示した髪色に対応する毛髪用品を顧客に提供するステップ(S18)と、を含む。
【0058】
上記本実施形態の毛髪用品の販売方法は、第一実施形態と同様にS11〜S17までは、髪色提示装置100などのコンピュータ、その他の機器を用いて、プログラムとして実行し、S18のみ美容院や化粧品売り場、ドラッグストアの顧客に対して、美容師や販売員が口頭で行ってもよい。または、S18までコンピュータ処理により実行できるようにしてもよい。さらには、コンピュータを使用せずに、テーブル形式などの色対応情報を参照してS12を行うこととし、その他のステップを手作業または口頭で行うこととしてもよい。
【0059】
以下、本実施形態の毛髪用品の販売方法の上記各処理の詳細について説明する。本実施形態のS11〜S17までの処理は、前述した第一実施形態の髪色提示方法のS1〜S7の処理と同様であるため、説明は省略する。したがって、以下では、S18の処理について説明する。
【0060】
(S18)
S18の処理では、S11〜S17の髪色提示方法によって提示された髪色に基づいて、当該髪色および肌色の見え方となる毛髪用品を販売する処理である。この毛髪用品は、髪色提示方法によって提示された髪色に基づいて、美容師や販売員らが選択してもよいし、自動販売機のように顧客が選択した毛髪用品が自動的に商品の取出口などに提供されるものであってもよい。
【0061】
毛髪用品としては、特に限定されるものではないが、たとえば、染毛剤、染毛料、脱色剤、かつら、つげ毛、植毛用毛髪などが挙げられる。染毛剤とは、ここでは医薬部外品に分類されるもの示し、いわゆる白髪染めやヘアカラー剤などを示し、頭髪全体を染色するもの、メッシュや白髪部分のみなど、毛髪の一部のみ染色するものを含む。また、永久的または半永久的に染色可能なものを示し、天然由来の染料を用いたものであってもよいし、人工的な染料を用いたものであってもよい。また、染毛料とは、ここでは化粧品に分類されるものを示し、いわゆるヘアマニキュア、ヘアスプレーなどを示す。また、シャンプー剤やリンス剤、トリートメント剤のように、使用する度に、徐々に髪色が変化するものも含んでもよい。この場合、永久的または半永久的に染色可能なものであってもよいし、一時的に染色して、通常のシャンプー剤や温水などで洗い流せるものであってもよい。また、脱色剤とは、毛髪を染色するものではなく、メラニン色素を除去して、髪色を薄くするものである。脱色の度合いによって、髪色が茶色系、灰色系、金色系、白色系となる。
【0062】
また、かつらは、頭部全体を被覆して装着するものであってもよいし、頭部の一部のみに装着するものであってもよい。また、人毛を用いたものであってもよいし、人工毛を用いたものであってもよい。また、付け毛とは、地毛に付加して用いるものであり、いわゆる、地毛とは異なる色のものをメッシュ的に付加するもの、地毛と近い色のものを付加して長さや髪型を変化させるエクステンションなども含み、主にファッション目的で用いられるものが挙げられる。この場合も、人毛であってもよいし、人工毛であってもよい。また、植毛用毛髪とは、毛髪のない部分に毛髪を永久的または半永久的に植毛または付着させるものである。
【0063】
<第三実施形態>
<髪色カウンセリング方法>
次に、本発明の第三実施形態の、髪色カウンセリング方法について説明する。
まず、髪色カウンセリング方法は、対象者について希望する肌色の見え方に関する肌色印象変化情報を取得し、髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが予め対応づけられた色対応情報を参照し、肌色印象変化情報に基づいて髪色変化情報を取得し、取得された髪色変化情報に対応する毛髪用品の助言を行うことを含む。
【0064】
〔髪色カウンセリング方法具体的処理〕
そして、本実施形態の髪色カウンセリング方法を具体的に実施する場合、第一実施形態と同様の髪色提示装置100を使用して以下のステップを行う。
髪色を変化させる対象者(本人)について、入力情報取得部20が、肌色の見え方情報を取得するステップ(S21)。
このステップS21でも、肌色の見え方情報の他に、現在の髪色情報、および傾向情報を取得してもよい。
髪色情報参照部31が、記憶部10にアクセスして、当該記憶部10に記憶された色対応情報を参照するステップ(S22)。
差分算出部32が、色対応情報に基づいて、入力情報取得部20で取得した肌色印象変化情報と対応づけられた髪色変化量情報を取得するステップ(S23)。
髪色決定部33が、髪色変化量情報に基づいて、髪色を決定するステップ(S24)。
三属性変化部34が、髪色決定部33が決定した髪色に対して、色相、彩度、および、明度との少なくとも1つをさらに変化させるステップ(S25)。
表示部40が、以上により決定された髪色を出力手段60に表示して提示するステップ(S26)。
表示部40にて提示された髪色と、当該髪色に対応する肌色の見え方情報および髪色の変化量情報を記憶部10に記憶するステップ(S27)。
さらに、図示はしないが、提示した髪色に対応する毛髪用品の助言を行うステップ(S28)と、を含む。
【0065】
上記本実施形態の髪色カウンセリング方法は、第一実施形態と同様にS21〜S27までは、髪色提示装置100などのコンピュータ、その他の機器を用いて、プログラムとして実行してもよいし、美容院や化粧品売り場、ドラッグストアの顧客に対して、美容師や販売員が口頭で行ってもよい。または、S28までコンピュータ処理により実行できるようにしてもよい。さらには、コンピュータを使用せずに、テーブル形式などの色対応情報を参照してS22を行うこととし、その他のステップを手作業または口頭で行うこととしてもよい。
【0066】
以下、本実施形態の毛髪用品の販売方法の上記各処理の詳細について説明する。本実施形態のS21〜S27までの処理は、前述した第一実施形態の髪色提示方法のS1〜S7の処理と同様であるため、説明は省略する。したがって、以下では、S28の処理について説明する。
【0067】
(S28)
S28の処理は、前述した髪色提示方法によって提示された髪色または変化量に基づいて、どのような毛髪用品が適しているか、本人やその代理人である相談者に対して助言をする処理である。したがって、本実施形態は、髪色について、トータル的にカウンセリングを行う方法である。
【0068】
本実施形態の髪色カウンセリング方法も、美容院や化粧品売り場、ドラッグストアの顧客に対して、美容師や販売員が口頭で行ってもよい。または、カウンセリングまで、コンピュータなどの装置を用いて、当該髪色カウンセリング方法すべてをプログラムとして実行してもよい。
【0069】
なお、助言の結果、どのような毛髪用品または髪色とするかは、特に限定されないが、前述の第二実施形態で挙げたような、染毛剤、染毛料、脱色剤、かつら、付け毛、植毛用毛髪などの毛髪用品または髪色の選択に対するカウンセリングが挙げられる。
【0070】
<第四実施形態>
<チャート>
次に、本発明の第四実施形態のチャートについて説明する。
本実施形態のチャートは、髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが対応づけられているものである。色の三属性では、髪色の変化量と、肌色の見え方の変化量とは、以下のような関係がある。このシートを利用し、三属性を微細に変化することにより、肌色の見え方の変化量まで含めた髪色の提示を実現することが可能となる。そのため、本人らの満足度をより向上させることができる。
【0071】
このチャートは、髪色の色相または彩度の変化の方向と、肌色の色相または彩度の見え方の変化の方向と、が同化関係をもって互いに対応づけられた情報を含む。また、髪色の明度の変化の方向と、肌色の明度の見え方の変化の方向と、が対比関係をもって互いに対応づけられた情報をさらに含んでもよい。
【実施例】
【0072】
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例では、髪色提示方法その他で用いるための、髪色変化による肌色の見え方変化の定量化を実現した。
【0073】
(実施例1)
(1)髪色を変化させた画像(髪色変化画像)の作成
まず、基準画像の顔の肌色を変えず、髪色を複数とおりに変化させた複数の画像を作成した。具体的には、サンプル提供者の顔のフルカラーの基準画像(デジタル画像)を用意し、この基準画像において、毛髪の領域を指定した。次に、当該毛髪領域の平均の色相(H)を0から360で表現し、また彩度(S)と明度(V)を0から100で表現した。さらに、毛髪領域の色の三属性の値をそれぞれ変化させた髪色変化画像を作成した。毛髪の領域の指定および当該領域の色の三属性の変化は、上記の特許文献3に記載された方法を用いて行うことができる。
【0074】
作成結果を以下の表2に示す。なお、明度については、基準画像よりも明度が高くなることを正(プラス)とし、明度を低くなることを負(マイナス)と表現している。また、彩度については、基準画像よりも彩度が高くなることを正(プラス)とし、彩度が低くなることを負(マイナス)と表現している。また、色相は可視光の波長により決定されるが、基準画像よりも髪色に黄味を帯びさせることを、色相を高くすると表現し、色相の正(プラス)方向とする。逆に、基準画像よりも髪色に赤味を帯びさせることを、色相を低くすると表現し、色相の負(マイナス)方向とする。
【0075】
【表2】

【0076】
(2)肌色を変化させた画像(肌色変化画像)の作成
つぎに、基準画像の髪色を変えず、顔の肌色を以下のように複数とおりに変化させた複数の肌色変化画像を作成した。肌領域の指定および当該領域の色の三属性の変化についても、上記の特許文献3に記載された方法を用いて行うことができる。
(2−1)色相
(1)で用いたものと同じ基準画像において、予め顔の肌領域を指定しておき、当該肌領域の平均の色相(H)を、以下の表3に示すように、基準画像からそれぞれ1.0刻みに10通りに変化させた画像を作成した。
【0077】
【表3】

【0078】
(2−2)彩度
(1)で用いた基準画像において、予め顔の肌領域を指定しておき、当該肌領域の平均の彩度(S)を、以下の表4に示すように、基準画像からそれぞれ0.25刻みに10通りに変化させた画像を作成した。
【0079】
【表4】

【0080】
(2−3)明度
(1)で用いた基準画像において、予め顔の肌領域を指定しておき、当該肌領域の平均の明度(V)を、以下の表5に示すように、基準画像からそれぞれ0.65刻みに10通りに変化させた画像を作成した。
【0081】
【表5】

【0082】
(3)官能評価実験
図4は、前述の(1)で作成した髪色変化画像と、前述の(2)で作成した肌色変化画像と、を対比可能に並べて配置した評価試験画像の模式図である。かかる評価試験画像を、美容専門家(美容師)である5人の被験者に視認させ、両画像の肌色が同じに見えるものを選択させる官能評価実験を行った。具体的には、図4中の(1)〜(n)までの図は、表1に示した髪色明度+4の画像および髪色明度−4の髪色変化画像(2通り:図4の左側)と、表4に示した肌色明度変化1〜10の肌色変化画像および基準画像(計11通り:図4の右側)と、を個別に組み合わせて配置した22通りの評価試験画像である。上述のように、髪色変化画像は肌色を不変として髪色のみを変化させた画像の群であり、肌色変化画像は髪色を不変として肌色のみを変化させた画像の群である。
【0083】
そして、上記の5人の被験者に22通りの評価試験画像を目視観察させ、対比される二枚の画像において肌色が同じに見えるものを選択させた。すなわち、髪色の明度を変化させた髪色明度+4または髪色明度−4の画像において目視観察される肌色の見え方が、基準画像における肌色の見え方と同じであるか、または肌色の明度を変化させた肌色変化画像の肌色のいずれかと同等の見え方になるか、を調査した。
【0084】
また、色相に関しても同様に、基準画像の髪色の色相のみを+10または−10に変化させた髪色変化画像(表1:2通り)と、同じく基準画像の顔の肌色の色相のみを変化させた肌色変化画像および基準画像(表2:計11通り)と、を個別に組み合わせて配置した22通りの評価試験画像を用意した(図示せず)。そして、上記の5人の被験者に評価試験画像を目視観察させ、対比される二枚の画像において肌色が同じに見えるものを選択させた。これにより、髪色の色相を変化させた髪色色相+10または髪色色相−10の画像において目視観察される肌色の見え方が、基準画像における肌色の見え方と同じであるか、または肌色の色相を変化させた肌色変化画像の肌色のいずれかと同等の見え方になるか、を調査した。
【0085】
そして、彩度に関しても同様に、基準画像の髪色の彩度のみを+7または−8に変化させた髪色変化画像(表1:2通り)と、同じく基準画像の顔の肌色の彩度のみを変化させた肌色変化画像および基準画像(表3:計11通り)と、を個別に組み合わせて配置した22通りの評価試験画像を用意した(図示せず)。そして、上記の5人の被験者に評価試験画像を目視観察させ、対比される二枚の画像において肌色が同じに見えるものを選択させた。これにより、髪色の彩度を変化させた髪色彩度+7または髪色彩度−8の画像において目視観察される肌色の見え方が、基準画像における肌色の見え方と同じであるか、または肌色の彩度を変化させた肌色変化画像の肌色のいずれかと同等の見え方になるか、を調査した。
【0086】
(4)評価結果
以下の表6に、髪色の色相、彩度、および、明度を変化させて上記官能評価実験を行った結果に基づいて、肌色の見え方変化の定量化の結果を示す。
【0087】
【表6】

【0088】
上記表6の結果に基づいて、肌色の見え方の変化量(被験者5人の平均値)を、髪色変化量に対してプロットした結果を、図5、図6および、図7示す。なお、髪色を変化させない場合の肌色の見え方の変化量はゼロであるから、図5、図6、および、図7のグラフにおいて、回帰線は原点を通る条件にて求めた。これらの結果より、髪色の変化(横軸:X)に対する肌色の見え方(縦軸:Y)の変化は、色相と彩度は同化の関係にあり、明度は対比の関係にあることが判明した。
【0089】
(実施例2)
次に、実施例2では、本発明の髪色カウンセリング方法を用いた実験を行った。そして、カウンセリング時の、対象者である顧客の肌色と髪色の測定項目、顧客の希望する肌色の見え方の方向性と髪色の変化量、および、プリセット項目との関連を考察した。その結果を、以下の表7に表示する。
【0090】
なお、測定色の項目で「×」とは、顧客の肌色または髪色を測定しなかったことを意味する。これに対して「○」とは、顧客の肌色または髪色を測定したことを意味する。また、顧客希望の項目で「×」とは、顧客の肌色または髪色の希望をヒアリングしなかったことを意味する。これに対して「○」とは、顧客の肌色または髪色の希望をヒアリングしたことを意味する。また、プリセット項目の「プリセット」とは、予め決まった特定の方向に向かって単に肌色や髪色を自動的に変化させることを意味する。したがって、プリセット項目で「○」とは、顧客の希望をヒアリングせず、予め決まった特定の方向に向かって単に色を変化させたことを意味する。これに対して「×」とは、顧客の希望をヒアリングしてその希望に対応させて色を変化させたことを意味する。具体的には、たとえば、事例1では肌色の見え方の方向が「○」で髪色変化量が「×」である。これは、肌色の見え方の方向をヒアリングせず、トレンド色など、髪色の変化量の方向性のみをヒアリングして、髪色を変化させたことを意味するものである。
【0091】
【表7】

【0092】
また、上記表7において、たとえば、事例3では、対象者の肌色と髪色を測定し、白く見せたいなど、対象者の希望する肌色の見え方と、茶色系、アッシュ系など、髪色変化量とをヒアリングした内容を入力情報として、その差分などを求めるなどして、肌色の見え方の方向性と髪色とを出力して提示するものである。そして、この結果に基づいて、もう少し肌色を白くできるよう髪色の色相、彩度、明度を変化させて、髪色を再提示し、最終決定した色の製品を販売、アドバイスする。これにより、髪色を変化させる本人を含む対象者が希望する肌色の見え方に対応する髪色を提示することができ、本人らの満足度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0093】
10 記憶部
20 入力情報取得部
30 制御部
31 髪色情報参照部(制御部)
32 差分算出部(制御部)
33 髪色決定部(制御部)
34 三属性変化部(制御部)
35 情報蓄積部(制御部)
40 表示部
50 入力手段
60 出力手段
61 モニタ(出力手段)
62 カラープリンタ(出力手段)
100 髪色提示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者についての肌色の見え方の変化に関する肌色印象変化情報を取得するステップと、
髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが予め対応づけられた色対応情報を参照し、前記肌色印象変化情報に基づいて髪色変化情報を取得するステップと、
取得された前記髪色変化情報に対応する髪色または髪色の変化量を提示するステップと、を含むことを特徴とする髪色提示方法。
【請求項2】
前記髪色変化情報に基づいて、前記対象者の髪色の色相、彩度または明度の少なくとも1つを変化させて、前記対象者についての肌色の見え方を変化させるステップを、さらに含む請求項1に記載の髪色提示方法。
【請求項3】
前記色対応情報は、前記髪色の色相または彩度の変化の方向と、前記肌色の色相または彩度の見え方の変化の方向と、が同化の関係をもって互いに対応づけられた情報を含む請求項2に記載の髪色提示方法。
【請求項4】
前記色対応情報は、前記髪色の明度の変化の方向と、前記肌色の明度の見え方の変化の方向と、が対比の関係をもって互いに対応づけられた情報を含む請求項2または3に記載の髪色提示方法。
【請求項5】
前記肌色印象変化情報を取得するステップでは、前記対象者の現在の髪色情報と、髪色の変化の傾向に関する傾向情報と、を取得し、
前記髪色変化情報を取得するステップでは、前記髪色情報、前記傾向情報および前記色対応情報に基づいて前記髪色変化情報を取得し
前記髪色の変化量を提示するステップでは、前記肌色印象変化情報と、前記髪色変化情報に対応する髪色または髪色の変化量と、を提示する請求項1から4のいずれか一項に記載の髪色提示方法。
【請求項6】
前記肌色印象変化情報を取得するステップでは、前記対象者の現在の肌色情報と、印象変化後の肌色の見え方を示す変化後肌色情報と、を取得して前記肌色印象変化情報を求める請求項1から4のいずれか一項に記載の髪色提示方法。
【請求項7】
前記対象者の現在の髪色の色相の赤味または黄味を変化させるステップを、さらに含む請求項1から6のいずれか一項に記載の髪色提示方法。
【請求項8】
顔サンプルを参照し、前記対象者の現在の前記肌色情報および現在の前記髪色情報を取得するステップを、さらに含む請求項6または7に記載の髪色提示方法。
【請求項9】
前記顔サンプルが、前記対象者の顔の画像情報である請求項8に記載の髪色提示方法。
【請求項10】
前記顔サンプルが、予め用意された複数の顔色サンプルおよび複数の髪色サンプルから、前記対象者の現在の前記肌色情報または現在の前記髪色情報に対応して選択されたものである請求項8に記載の髪色提示方法。
【請求項11】
髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが対応づけられた色対応情報が少なくとも記憶された記憶部と、
髪色を変化させる対象者に関する入力情報を取得する入力情報取得部と、
前記入力情報取得部で取得した前記対象者に関する前記入力情報に基づいて前記記憶部にアクセスして前記色対応情報を参照し、前記髪色を決定する制御部と、
前記制御部により決定した髪色または髪色の変化量を表示して提示する表示部と、を有し、
前記制御部が、
前記髪色を変化させる対象者に関する前記入力情報として、前記肌色の見え方の変化に関する肌色印象変化情報を取得し、
前記記憶部に記憶された前記色対応情報を参照し、
前記色対応情報に基づいて、当該肌色印象変化情報と対応づけられた髪色変化量情報を取得し、
取得された前記髪色変化量情報に対応する前記対象者の髪色または髪色の変化量を提示する、ことを特徴とする髪色提示装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記色対応情報を参照して取得した前記髪色変化量情報に基づいて、前記髪色を決定し、
決定された前記髪色に対して、色相、彩度または明度の少なくとも1つをさらに変化させること、をさらに有する請求項11に記載の髪色提示装置。
【請求項13】
前記入力情報取得部が、前記対象者の現在の肌色と印象変化後の肌色の見え方、または現在の髪色と変化後の髪色の少なくともいずれかを前記入力情報として取得し、
前記制御部が、
現在の前記肌色と印象変化後の肌色の見え方との差分にあたる肌色差分、または現在の髪色と変化後の髪色との差分にあたる髪色差分を求めることにより、前記肌色印象変化情報を取得し、
前記肌色差分または前記髪色差分のいずれかに基づいて、前記色対応情報から前記髪色変化量情報を取得する請求項11または12に記載の髪色提示装置。
【請求項14】
前記制御部は、
提示された前記髪色と、当該髪色に対応する前記肌色印象変化情報および前記髪色変化量情報を、記憶部に記憶することを、さらに有する請求項11から13のいずれか一項に記載の髪色提示装置。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載の髪色提示方法を、請求項11から14のいずれか一項に記載の髪色提示装置に組み込まれたコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項16】
対象者についての肌色の見え方の変化に関する肌色印象変化情報を取得するステップと、
髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが予め対応づけられた色対応情報を参照し、前記肌色印象変化情報に基づいて髪色変化情報を取得するステップと、
取得された前記髪色変化情報に対応する毛髪用品を提供するステップと、を含むことを特徴とする毛髪用品の販売方法。
【請求項17】
前記毛髪用品が、染毛剤、染毛料、脱色剤、かつら、付け毛または植毛用毛髪のいずれかである請求項16に記載の毛髪用品の販売方法。
【請求項18】
対象者について希望する肌色の見え方に関する肌色印象変化情報を取得するステップと、
髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが予め対応づけられた色対応情報を参照し、前記肌色印象変化情報に基づいて髪色変化情報を取得するステップと、
取得された前記髪色変化情報に対応する毛髪用品の助言を行うステップと、を含むことを特徴とする髪色カウンセリング方法。
【請求項19】
前記毛髪用品が、染毛剤、染毛料、脱色剤、かつら、付け毛または植毛用毛髪のいずれかである請求項18に記載の髪色カウンセリング方法。
【請求項20】
髪色の変化量と肌色の見え方の変化量とが対応づけられていることを特徴とするチャート。
【請求項21】
前記髪色の色相または彩度の変化の方向と、前記肌色の色相または彩度の見え方の変化の方向と、が同化の関係をもって互いに対応づけられた情報を含む請求項20に記載のチャート。
【請求項22】
前記髪色の明度の変化の方向と、前記肌色の明度の見え方の変化の方向と、が対比の関係をもって互いに対応づけられた情報を含む請求項20または21に記載のチャート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−8319(P2013−8319A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142193(P2011−142193)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】