説明

魚焼き用調理具

【課題】魚の両面を発熱体層を有する合成樹脂製シートが密着するように覆い、魚を焼く際に生じる、魚の液状成分を適度に逃がし、魚の皮が剥がれづらく、魚を崩すことなく、電子レンジで簡単にカラッと焼く調理具を提供する。
【解決手段】上面側をシリコーンコート1Aし、魚の形状に沿って曲げることが可能な、発熱層を設けた、合成樹脂製シート1と、当該合成樹脂製シート1の下に張り合わされた、魚の液状成分を吸収可能なシート2からなり、前記合成樹脂製シート1には、魚の液状成分が通る複数の孔を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、魚を電子レンジで簡単に加熱し、カラッとクリスピーに焼くための魚焼き用調理具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子レンジを用いて非加熱物(魚)を加熱する部材は存在する。例えば、特許文献1には発熱体が積層された二つの支持部を備えた加熱補助部材が開示されている。この加熱補助部材は二つの発熱体が積層された支持部が対向することにより、発熱体上に載置された魚の両面に同時に焦げ目をつけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−11044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記加熱補助部材は発熱体が積層された二つの支持部を対向させなければいけないために、加熱補助部材の組み立てが大変面倒で、アルミニウムを蒸着させたPETが魚と直接接触する部分は、焼き上がったあと魚を取り出す際、魚の皮等が剥けてしまう場合がある。また、発熱体が紙等の支持部に積層され連結して使用する構造になっている。魚は厚みが不均一で、さまざまな曲面等を有しているので、発熱体が接触する面積が十分でなく、均等にカラッと焼くことが難しかった。そして、上記構造ゆえに、焼いた魚を皿に移す必要があり、皿に移す際に魚が崩れるという問題点もあった。また、耐熱皿の上に必ず載せて使用する必要があり、煩わしかった。
【0005】
さらに、従来、電子レンジで加熱し、魚を焼く場合、魚から出る油分や水分の逃げ場所がなく、発熱体部分にたまり、焼き上がりがべとつき、カラッとならないという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、魚の両面を発熱体が密着するように覆い、魚を焼く際に生じる、魚の油分や水分を適度に逃がし、魚の皮が剥がれづらく、焼けた魚を崩すことなく、電子レンジで簡単に魚をカラッと焼く調理具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明は次のような技術手段を講じている。
【0008】
本願の魚焼き用調理具は、上面側をシリコーンコート1Aし、下面側に発熱層1Cを設けた、合成樹脂製シート1と、当該合成樹脂製シート1の下に貼り合せられた、魚の液状成分を吸収可能なシート2からなり、前記合成樹脂性シート1には、魚の液状成分が通る複数の孔3を設けている。
【0009】
また、シリコーンコート1A面側を内側に折り畳み、少なくとも一か所を留めることにより、袋状体を形成することができる。
【0010】
魚焼き用調理具を載置可能であるとともに、魚の液状成分を吸収可能な素材でできた受け皿4とからなる魚焼き調理セットとすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
この発明の魚焼き用調理具は、上述のように上面側をシリコーンコート1Aし、下面側に発熱層1Cを設けた合成樹脂シート1と、当該合成樹脂シート1の下に貼り合せられた、魚の液状成分を吸収可能なシート2からなっている。シート状をしているため、魚の上下の面にぴったり密着させることができ、均一にカラッと焼くことができる。また、魚と直接接触する上面側にシリコーンコート1Aをしていることにより、魚が焼けて、シートから取り出す際に、シリコーンコート1Aの離形性により魚の皮が剥がれにくい。
【0012】
また、発熱層1Cを設けた合成樹脂本体1Bのシート面同士が直接接触することにより生じる過加熱を、発熱層1Cを設けた合成樹脂本体1Bにシリコーンコート1Aをすることで、シリコーンコート1Aが絶縁膜となり、過加熱を防止することができる。
【0013】
さらに、シリコーンコート1Aされた合成樹脂シート1に複数の孔3を設け、合成樹脂シート1の下に魚の液状成分(魚を焼くときに生ずる油分、水分等)を吸収可能なシート2を貼り合せることで、魚を焼く際に生じる魚の液状成分を適度に吸収し、魚の焼き上がりがべとつかず、カラッと焼き上がる。また、電子レンジ内が汚れるのを防止することもできる。
【0014】
また、離形性のある、シート状の当該魚焼き用調理具を使って、魚を焼くことにより、焼き上がった魚を、皿等に盛り付ける際、魚を傷めず容易に移すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の魚焼き用調理具の上面、下面を示す説明図(a)(b)及び使用状態の上面、下面を示す説明図(c)である。
【図2】この発明の魚焼き用調理具の断面図及びその部分拡大図である。
【図3】この発明の魚焼き用調理具の層の構成の説明図である。
【図4】この発明の魚焼き調理セットを使って実際に魚の切り身を焼いている状態の斜視図である。
【図5】この発明の魚焼き調理セットを使って実際に魚の切り身を焼いている状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下この発明の好適な実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1、図2、図3に示すように、この発明の魚焼き用調理具は、上面側(魚と直接接触する面を上面側とする)をシリコーンコート1Aし、下面側に発熱層1Cを設けた合成樹脂シート1と、当該合成樹脂シート1に貼り合せられた、魚の液状成分を吸収可能なシート2からなっている。発熱層1Cは合成樹脂シート1の上面又は両面に設けることもできる。
【0018】
そして、シリコーンコート1Aがなされ、発熱層1Cを設けた合成樹脂シート1には複数の孔3が設けられ、当該合成樹脂シート1の下に、孔3の設けられていない魚の液状成分を吸収可能なシート2が貼り合せられている。魚の液状成分を吸収可能なシート2に孔3を設けることもできる。
【0019】
合成樹脂シート1は図1、図2、図3に示すように、上面側にシリコーンコート1Aがなされている。このシリコーンコート1Aはジメチルシリコーン等が好ましい。また、その他の離形性を有する、食品性のシリコーンを利用することができる。
【0020】
シリコーンの離形性により、焼いた魚の皮が剥がれづらく、カリッと焼けた魚を容易に当該魚焼き用調理具から離すことができる。また、焼き上がった魚を当該魚焼き用調理具から、滑らすように皿等に移すこと等も可能であるため、魚を傷めず皿等に盛り付けることが可能である。
【0021】
当該魚焼き用調理具のシートの上面を魚全体に密着させるように包み込んで使用する場合、シリコーンコート1Aしていなければ、発熱層1Cを設けた合成樹脂本体1Bと、発熱層1Cを設けた合成樹脂本体1Bが直接接触する。その際、マイクロ波の照射により、過加熱が生じる場合があるが、シリコーンは電気絶縁性が比較的高いため、発熱層1Cを設けた合成樹脂製シート1の上面(魚と直接接触する面)にシリコーンコート1Aすることで、シリコーンが絶縁膜となり、過加熱を防止することも可能である。
【0022】
また、シリコーンの界面性、撥水性により、魚を焼く際に生じる魚の液状成分が、合成樹脂製シート1に設けられた孔3を通して、合成樹脂製シート1の下面に貼り合せられた、魚の液状成分を吸収可能なシート2の吸収力により、吸収されやすくなる。
【0023】
発熱層1Cを設けた、合成樹脂製シート1は電子レンジのマイクロ波を照射することで、魚をカリッと焼けることができる程度まで発熱する。この発熱層1Cは少なくともマイクロ波によって発熱する物質である、アルミニウム、金、白金などの層を有したものである。例えば、強靭性、寸法安定性、耐熱性に優れ、耐薬品性、食用油や酸等に強いポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂本体1Bに、マイクロ波による発熱性、コスト、生産性等に優れる、アルミニウムを蒸着させて発熱層1Cを形成し、魚の形状に沿って曲げることが可能な、シート状にすることが好適である。
【0024】
合成樹脂製シート1の厚さは12〜25μm程度が好ましい。
【0025】
上面側をシリコーンコート1Aし、下面側に発熱層1Cを設けた、合成樹脂製シート1には複数の孔3が設けられている。当該複数の孔3は図1(a)、図2、図3のように合成樹脂製シート1に一定の間隔で複数設けている。
【0026】
この孔3が合成樹脂製シート1に設けられていることで、魚を焼く際に生じる魚の液状成分が、この孔3を通して、魚の液状成分を吸収可能なシート2に吸収されることで、合成樹脂製シート1の上面に魚の液状成分が溜まらず、魚の表面の仕上がりが良く、カラット焼き上げることができる。また、魚を焼く際に生じる魚の液状成分を吸収可能なシート2に吸収することで電子レンジ内が汚れることを防止することができる。
【0027】
孔3は合成樹脂製シート1の全体に設けることが好ましい。また、孔3は魚を焼いた際に生じる液状成分を、魚の液状成分を吸収可能なシート2に案内することが可能な大きさとしている。合成樹脂製シート1はキリ等を刺すことによって開孔すれば、開孔時に合成樹脂製シート1から屑が発生せず効率的に開孔することも可能である。
【0028】
また、当該孔3によって、電子レンジで加熱する際に発生した蒸気が、合成樹脂製シート1と魚の間にこもることなく、放出されるので発熱効果が効率よく発現して魚の表面の仕上がりが良く、カラッと焼き上がる。
【0029】
魚の液状成分を吸収可能なシート2はドライラミネート方法や、ウエットラミネート方法により合成樹脂製シート1に貼り合せられている。また、その他適宜の方法で貼り合せることができる。材質は紙、不織布、織物、スポンジ、ウレタン等、適宜の材料を使用することができる。
【0030】
当該魚の液状成分を吸収可能なシート2はコスト面等から、紙を使用することが好ましい。使用する紙は50〜120g/m2の紙を使用することが好ましい。
【0031】
魚を焼く際は、図1(c)、図4、図5に示すように、合成樹脂製シート1のシリコーンコート1Aされている面を内側にして、魚全体を包むような袋状体にする。シートを半分に折って、折った合成樹脂シートの一か所ないし複数個所を閉じて、袋状にする。シートのサイズは魚のサイズに応じて対応可能な大きさにすることができるが、家庭で魚の切り身を焼くのには、断裁寸法200×200mm程度の当該魚焼き用調理具を半分に折ったサイズの袋状体にすることが好ましい。
さらに、業務用の大型電子レンジで大量の魚を一度に焼く際には適宜のサイズにすることもできる。
また、合成樹脂製シート1の2枚の上面どうしを重ね、複数個所閉じて袋状にすることも可能である。
当該魚焼き用調理具は耐熱性、耐水性等に優れたタックシール5等で、重ねられた合成樹脂製シート1を留めることで、一辺ないし隣接する2辺が開口した袋状にすることが好ましい。また、タックシール5で留める代わりに魚焼き用調理具の縁の数か所を接着剤等適宜の材料で接着することができる。
【0032】
当該魚焼き用調理具は魚を焼いている際に、魚の上下に接触して、大きく開かないようになっていればよく、また、魚の出し入れが簡易にできるようになっていることが好ましい。
【0033】
袋状の魚焼き用調理具に魚を入れ、手等で、魚焼き用調理具を魚の形に添わせるようにし、魚焼き用調理具と魚を接触させることで、魚を裏返すことなく、均一に魚全体の表面の仕上がりが良くなり、カラッと焼き上がる。
【0034】
魚焼き用調理具が薄いシート状であることによって、厚みが不均一で、様々な曲面を有している魚や魚の切り身等に容易に接触させることができる(図5)。よって、従来の発熱体が紙等の支持部に積層され連結して使用する構造は魚と発熱体との隙間部分が多く存在したが、本発明によれば大幅に魚と接触する面積が増加可能となる。
【0035】
また、載置可能な魚の液状成分を吸収可能な素材でできた受け皿4の上に、袋状にした魚焼き用調理具を載置することで、魚を焼いた際に生じる油分や水分が、合成樹脂製シート1の下面に貼り合わされた魚の液状成分を吸収可能なシート2で、吸収しきれなかった油分や水分を吸収することが可能となる上うえに、電子レンジの内部の汚れを防止可能となる。
【0036】
また、本発明の受け皿4を使用することで、耐熱皿が必要なく、簡易に魚を焼くことが可能となる。さらに、当該受け皿4を食する際の皿にすることもできるため、魚を皿に移し替える手間も省け、かつ、魚を皿に移し換える際に魚が崩れることを防止できる。
【0037】
受け皿4は、図4、図5のように、魚焼き用調理具を袋状にした大きさよりも、一回り大きい上部が開放した浅い箱状のもので、電子レンジのマイクロ波が魚に均一にあたり、かつ、魚を焼く際に生じる魚の液状成分がこぼれ出ない程度の高さの周壁があればよい。周壁の高さは、例えば10mmくらいが好ましい。受け皿は魚の液状成分が吸収するような材質である紙によって形成されていることが好ましいが、不織布、織物、スポンジ、ウレタン等適宜の材料を使用することもできる。
【0038】
また、魚の頭や尾が魚焼き用調理具からはみ出た場合も収まる大きさ、又は頭、尾部分が乗せられる程度の周壁の高さにすることもできる。
【0039】
受け皿4となる上部が開放した、浅い箱状の受け皿4は袋状体のシートの大きさより一回り大きい大きさの直方体の箱が望ましいが、袋状体のシートが入る大きさであれば、上部が開放した円柱体等多種の形状とできる。
【0040】
シリコーンコート1A面側を内側に折り畳み、少なくとも1か所を留めることにより、袋状体を形成した魚焼き用調理具又は合成樹脂製シート1の2枚の上面どうしを重ね、複数個所閉じて袋状にした魚焼き用調理具と魚の液状成分を吸収可能な素材でできた受け皿4とからなるものを以下「魚焼き調理セット」という。
【0041】
図4、図5は実際、魚を魚焼き調理セットにセットした図である。魚焼き用調理具が柔らかいシート状になっているため、魚の不均一な形状に対して自在に沿うことができ、均一にパリッとクリスピーに焼け、調理具の組み立て等煩わしい作業もなく、容易に魚を出し入れでき、魚を皿に移し替える手間も省け、若年層、単身赴任者、共働き、オール電化家庭等向けに簡単な調理方法の提供ができ、高齢者が炎を使用せず、安全かつ簡便に魚を焼くことが可能である。
【0042】
図4のように、断裁サイズ200×200mmの魚焼き用調理具を半分に折った長方形の魚焼き用調理具の短辺側の3分の1ずつのところに2か所、長辺側はタックシール5を貼った短辺側から50mmのところに1か所フィルム性のタックシール5で留め、袋状体にした魚焼き用調理具に切り身を入れて十分に魚焼き用調理具を魚に密着させ、袋状体にした魚用調理具より一回り大きい底面積を有する、高さ10mmの上部が開放した箱状の受け皿に載置し、合成樹脂シート1には20mm間隔でシート全体にキリで0.5mm程度の孔を開け、600wの家庭用電子レンジに鮭や鯵の切り身を4分から5分加熱したところ、満遍なく発熱層が魚に接触するため、魚の上下両方の表面の仕上がりが良く、魚の皮がカリッとなった。また、魚の皮が、魚焼き用調理具に引っ付いて剥がれづらく、見た目にも美しく、美味しいそうな魚に仕上がる。また、表面が高温で焼けているため、魚の旨み成分は魚の内部に閉じ込められ、パサパサした感じもなくふっくらとした焼き魚に仕上がった。
【符号の説明】
【0043】
1 上面側をシリコーンコートし発熱層を設けた合成樹脂シート
1A シリコーンコート
1B 合成樹脂本体
1C 発熱層
2 魚の液状成分を吸収可能なシート
3 孔
4 受け皿
5 タックシール
6 魚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側をシリコーンコート(1A)し、魚の形状に沿って曲げることが可能な、発熱層(1C)を設けた合成樹脂製シート(1)と、当該合成樹脂製シート(1)の下に貼り合せられた、魚の液状成分を吸収可能なシート(2)からなり、前記合成樹脂性シート(1)には、魚の液状成分が通る複数の孔(3)を設けたことを特徴とする魚焼き用調理具。
【請求項2】
シリコーンコート(1A)面側を内側に折り畳み、少なくとも一か所を留めることにより、袋状体を形成した請求項1の魚焼き用調理具。
【請求項3】
請求項1又は2の魚焼き用調理具と当該調理具を載置可能であるとともに、魚の液状成分を吸収可能な素材でできた受け皿(4)とからなる魚焼き調理セット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−239492(P2012−239492A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109294(P2011−109294)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000111133)ニッポー株式会社 (24)
【Fターム(参考)】