説明

麺帯形成装置

【課題】荒麺帯の切れ、厚みの不均一、幅不良、孔あきなどの荒麺帯の成形不良や、中高などの荒麺帯の形状不良を未然に防止する。
【解決手段】一対の荒麺帯圧延ロール2の間に上からドウ3を供給し、ステー26に支えられているドウ押し込み板7の往復運動によりドウ3を一対の荒麺帯圧延ロール2の間に押し込むとともに、一対の荒麺帯圧延ロール2の回転によりドウ3を圧延して、荒麺帯4を形成し、荒麺帯4を一対の麺帯圧延ロール5の回転により圧延して、麺帯6を形成する麺帯形成装置1において、ドウ押し込み板7を自動位置調整装置30により往復運動の方向に位置調整自在に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺帯形成装置において、ドウ押し込み板の位置を自動的に調整する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や特許文献2に見られるように、麺原料としてのドウは、麺帯の形成時に、ホッパーから一対の荒麺帯圧延ロールの間に供給され、ドウ押し込み板(特許文献1のドウ分配板・特許文献2の突入板)の上下方向の往復運動によって、ドウに混入した空気を抜きながら、一対の荒麺帯圧延ロールの間に押し込まれる。このドウ押し込み板の押し込み動作によって、ドウの密度は、均一化し、その固さは、圧延に適切な状態として調整される。
【0003】
従来の殆どのドウ押し込み板は、荒麺帯圧延ロールの軸線方向、換言すると、形成すべき荒麺帯の幅方向で同じ高さのものとして構成されている。このため、一対の荒麺帯圧延ロールの間での溜まり量の偏在状態や、密度の不均一な状態によって、荒麺帯の切れ、厚みの不均一、幅不良、孔あきなどの荒麺帯の成形不良が起き、さらに、両端支持方式の荒麺帯圧延ロールの応力変形によって、一対の荒麺帯圧延ロールの間隔が中央部で大きくなると、荒麺帯の厚みが中央部で厚く、いわゆる中高などの荒麺帯の形状不良が起きやすくなっている。
【特許文献1】特開平7−95843公報
【特許文献2】特開平4−267838公報(特許第3133085公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、荒麺帯の切れ、厚みの不均一、幅不良、孔あきなどの荒麺帯の成形不良や、中高などの荒麺帯の形状不良を未然に防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の下に、請求項1に係る発明は、一対の荒麺帯圧延ロール(2)の間に上からドウ(3)を供給し、ステー(26)に支えられているドウ押し込み板(7)の往復運動によりドウ(3)を一対の荒麺帯圧延ロール(2)の間に押し込むとともに、一対の荒麺帯圧延ロール(2)の回転によりドウ(3)を圧延して、荒麺帯(4)を形成し、この荒麺帯(4)を一対の麺帯圧延ロール(5)の回転により圧延して、麺帯(6)を形成する麺帯形成装置(1)において、上記のドウ押し込み板(7)を自動位置調整装置(30)によって往復運動の方向に位置調整自在に取り付けるようにしている。
【0006】
請求項2に係る発明は、自動位置調整装置(30)を、ドウ押し込み板(7)を往復運動の方向に移動自在に支える滑り案内手段(43、45)と、ドウ押し込み板(7)に固定されている送りナット(38)と、この送りナット(38)にねじ対偶で連結されている送りねじシャフト(37)と、送りねじシャフト(37)を回転駆動する送り用のモータ(39)と、ドウ押し込み板(7)に作用する負荷を検出する負荷センサ(40)と、この負荷センサ(40)からの検出信号に応じてモータ(39)を回転駆動するコントローラ(41)とにより構成し、ドウ押し込み板(7)に作用する負荷を負荷センサ(40)により検出し、検出した負荷に応じてコントローラ(41)により送り用のモータ(39)を回転駆動し、ドウ押し込み板(7)の位置を自動的に調整可能としている。
【0007】
請求項3に係る発明は、自動位置調整装置(30)を、ドウ押し込み板(7)を往復運動の方向に移動自在に支える滑り案内手段(43、45)と、ステー(26)とドウ押し込み板(7)との間に連結されているシリンダ(50)とにより構成し、ドウ押し込み板(7)の位置をシリンダ(50)により自動的に調整可能としている。
【0008】
請求項4に係る発明は、自動位置調整装置(30)を、往復運動方向の案内シャフト(46)と、この案内シャフト(46)の案内孔(47)と、案内シャフト(46)のねじ部分にねじ込まれる調整ナット(51)と、ドウ押し込み板(7)をドウ(3)に押し込む方向に付勢するスプリング(24)と、案内シャフト(46)とドウ押し込み板(7)とを連結するホルダー(44)と、ホルダー(44)の部分に組み込まれドウ押し込み板(7)の高さを調整するアクチュエータ(52)とにより構成し、ドウ押し込み板(7)の高さを調整ナット(51)により位置調整自在で、かつ調整位置でドウ押し込み板(7)の変位をスプリング(24)により許容する状態とし、さらにドウ押し込み板(7)の高さをアクチュエータ(52)とにより調整可能としている。
【0009】
請求項5に係る発明は、ドウ押し込み板(7)を荒麺帯圧延ロール(2)の軸線方向にそって分割して複数の押し込み片(27)により構成し、各押し込み片(27)をステー(26)に対して自動位置調整装置(30)によって往復運動の方向に位置調整自在に取り付けるようにしている。
【0010】
請求項6に係る発明は、固定プレート(53)に各押し込み片(27)を、長孔(31)と長孔(31)に挿入され固定プレート(53)にねじ込まれる取付けボルト(32)とによって取り付け、上記固定プレート(53)をステー(26)に対して滑り案内手段(43、45)によりドウ押し込み板(7)の往復運動の方向に移動自在に支え、各押し込み片(27)を自動位置調整装置(30)によって上記往復運動の方向に位置調整自在に取り付けるようにしている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、運転中に、ドウ(3)の物性に応じて、ドウ押し込み板(7)の高さが自動位置調整装置(30)によって適切な位置として調整できるから、荒麺帯の切れ、厚みの不均一、幅不良、孔あきなどの荒麺帯の成形不良や、中高などの荒麺帯の形状不良が未然に防止できる。
【0012】
請求項2に係る発明によると、ドウ押し込み板(7)に作用する負荷に応じて、ドウ押し込み板(7)の位置が自動制御により積極的に調整されるから、運転中にも、ドウ押し込み板(7)の位置調整が可能となり、しかも、位置調整が無段階で連続的にできる。
【0013】
請求項3に係る発明によると、ドウ押し込み板(7)の位置調整がシリンダ(50)により行われるから、運転中にも、ドウ押し込み板(7)の2位置の調整が簡単な操作により容易に設定できる。
【0014】
請求項4に係る発明によると、ドウ押し込み板(7)の高さがアクチュエータ(52)によって積極的に自動制御でのるほか、ドウ押し込み板(7)の位置がスプリング(24)の弾力とドウ(3)の粘弾性との釣合いによって、往復運動の毎に自動的に調整されるから、特別な制御によらなくとも、ドウ(3)の粘弾性に応じて、ドウ押し込み板(7)の位置調整ができる。
【0015】
請求項5に係る発明によると、ドウ押し込み板(7)が複数の押し込み片(27)により構成され、各押し込み片(27)が自動位置調整装置(30)によって往復運動の方向に位置調整自在であるから、各押し込み片(27)の高さがドウ(3)の物性のほか、両端支持方式の一対の荒麺帯圧延ロール(2)の応力変形に応じて、適切に設定できる。
【0016】
請求項6に係る発明によると、各押し込み片(27)が固定プレート(53)に長孔(31)と取付けボルト(32)とによって位置調整でき、しかも、この位置調整の状態のまま自動位置調整装置(30)が複数の押し込み片(27)からなるドウ押し込み板(7)を位置調整自在に取り付けられるから、ドウ(3)の物性や両端支持方式の一対の荒麺帯圧延ロール(2)の応力変形に対して高い自由度で対処できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の前提となる麺帯形成装置1の構成を示している。図1において、麺帯形成装置1は、一対の荒麺帯圧延ロール2を平行な状態で有しており、一対の荒麺帯圧延ロール2の間に、上方のホッパー13およびケーシング14によりドウ3を供給するとともに、一対の荒麺帯圧延ロール2の回転によってドウ3を圧延して、荒麺帯4を形成し、この荒麺帯4を下方の1または2以上の搬送コンベア11により送り出し、さらに荒麺帯4を一対の麺帯圧延ロール5の回転により圧延して、1つの麺帯6を形成する。この麺帯6は、図示しないが、必要に応じて、さらに数段の圧延ロールにより圧延される。
【0018】
一対の荒麺帯圧延ロール2は、ロール駆動モータ25と、図示しないギヤによって駆動され、同じ回転数で、図示のように、互いに逆方向に回転する。また一対の麺帯圧延ロール5も、一対の荒麺帯圧延ロール2と同様に、ロール駆動モータ29によって駆動される。一対の荒麺帯圧延ロール2の間隔、一対の麺帯圧延ロール5の間隔は、荒麺帯4または麺帯6の送りの上流から下流につれて徐々に小さくなるように設定され、また、それらの周速度は、上流から下流につれて徐々に大きくなるように設定されている。
【0019】
なお、一対の荒麺帯圧延ロール2やケーシング14は、機台17の上のフレーム18によって支持されており、また、一対の麺帯圧延ロール5および搬送コンベア11は、機台17の上に設置されている。
【0020】
そして、麺帯形成装置1は、ドウ押し込み板7およびドウストッパ8を有している。ドウ押し込み板7は、一対の荒麺帯圧延ロール2の間の上方で往復運動自在に設けられ、一対の荒麺帯圧延ロール2の間にドウ3を押し込むために、その先端を一対の荒麺帯圧延ロール2の間に向けて設けられており、モータ15と、このモータ15の回転を往復運動に変換してドウ押し込み板7に伝達する運動変換装置16とにより構成されている。運動変換装置16は、モータ15の回転を揺動運動や上下運動の往復運動に変換するために、後述するように、てこクランク機構によって構成されている。
【0021】
この例において、ドウ押し込み板7は、円弧状の板材であり、ドウ押し込み板レバー19の先端のステー26に対して往復運動(揺動運動)の方向つまり円弧の接線方向に変位自在に取付けられており、ドウ押し込み板レバー19の基端部は、レバー軸20によりケーシング14に支えられている。
【0022】
また、ドウストッパ8は、一対の荒麺帯圧延ロール2の下方で、一対の荒麺帯圧延ロール2の間を閉塞する閉塞位置から後退した待機位置へと移動自在に設けられ、例えば円弧状の合成樹脂により円弧状板として構成されている。この例で、円弧状合成樹脂板製のドウストッパ8は、1つの荒麺帯圧延ロール2の軸線上で、レバー軸22、ドウストッパレバー21により支持されている。ドウストッパレバー21は、荒麺帯圧延ロール2の両端位置で、その軸線上のレバー軸22により揺動自在に設けられ、操作用のシリンダ23により閉塞位置と待機位置との間を移動するように、操作できるようになっている。ドウストッパ8の先端は、一対の荒麺帯圧延ロール2の間を塞ぐために、その隙間より少し小さい厚みに設定してある。
【0023】
図2は、麺帯形成装置1の起動前でのドウ押し込み板7およびドウストッパ8の状態を示している。図2において、麺帯6の形成に先立って、作業員は、操作用のシリンダ23を操作し、ドウストッパ8を待機位置から閉塞位置へ移動させ、一対の荒麺帯圧延ロール2の間にドウストッパ8を配置して、一対の荒麺帯圧延ロール2の隙間を閉塞することにより、一対の荒麺帯圧延ロール2の間からのドウ3のこぼれ落ちを防止した後、モータ15を起動して、ドウ押し込み板7の往復運動を開始し、そのドウ押し込み板7の往復運動を継続することにより、供給されるドウ3を一対の荒麺帯圧延ロール2の間に押し込む。このとき、ドウ3は、ドウストッパ8による一対の荒麺帯圧延ロール2の間の閉塞作用によって、一対の荒麺帯圧延ロール2の間からこぼれ落ちることはない。
【0024】
ドウ3が一対の荒麺帯圧延ロール2の間の上位置で適切な溜まり状態(溜まり量)で、かつ適切な密度の均一(固まり)状態になると、ドウ押し込み板7は、適切な状態のドウ3からその状態になる前よりも大きな抵抗を受ける。この大きな抵抗は、ドウ状態検出センサ10により検出できる。この例において、ドウ状態検出センサ10は、モータ15の負荷電流を検出する電流検出センサにより構成されている。
【0025】
やがて、一対の荒麺帯圧延ロール2の間の上位置で、ドウ3が適切な溜まり状態(溜まり量)で、かつ適切な密度の均一(固まり)状態になると、そのドウ3の適切な状態がドウ状態検出センサ10により検出され、その検出状態が図示しないランプなどの点灯によって知られるため、作業員は、操作用のシリンダ23を操作し、ドウストッパ8を後退させて、一対の荒麺帯圧延ロール2の間を開放してから、ロール駆動モータ25、ロール駆動モータ29および搬送コンベア11を起動させる。
【0026】
このとき、一対の荒麺帯圧延ロール2は、回転によってドウ3を圧延し、荒麺帯4の形成を開始する。形成された荒麺帯4は、自重により垂下し、搬送コンベア11の上に乗り、次の一対の麺帯圧延ロール5の間に押し込まれる。一対の麺帯圧延ロール5は、回転によって荒麺帯4をさらに圧延し、麺帯6を形成する。このようにして麺帯形成装置1は、本格的な運転状態となって連続的に麺帯6を形成していく。
【0027】
麺帯形成装置1の本格的な運転状態のときに、ドウ状態検出センサ10の検出信号は、制御装置9に送られる。制御装置9は、ドウ状態検出センサ10からの検出信号にもとづいて、駆動増幅器28を駆動することによって、モータ15の回転数制御(速度制御)を行い、運転中にドウ3の状態に応じて、ドウ押し込み板7の往復運動の速度を増加または減少させ、ドウ3を最良な状態に調節していく。一般的に、ドウ3が適切な溜まり状態で、かつ密度の均一状態になると、ドウ押し込み板7に対する抵抗が増加する。このとき、制御装置9は、モータ15の回転数を標準の回転数よりも低下させる。
【0028】
次に、図3ないし図8は、上記の麺帯形成装置1において、本発明の特徴的な構成、すなわちドウ押し込み板7およびその位置を調整するための自動位置調整装置30の具体的な構成例を示している。
【0029】
先ず、図3および図4の例は、ドウ押し込み板7を荒麺帯圧延ロール2の軸線方向にそって複数、例えは5分割し、5つの押し込み片27により構成すると共に、各押し込み片27をステー26に対して自動位置調整装置30によって往復運動の方向に位置調整自在に取り付けている。
【0030】
自動位置調整装置30は、各押し込み片27を往復運動の方向に移動自在に支える滑り案内手段として例えばあり溝43とあり45と、各押し込み片27に固定されている送りナット38と、この送りナット38にねじ対偶で連結されている送りねじシャフト37と、この送りねじシャフト37を回転駆動する送り用のモータ39と、各押し込み片27に作用する負荷を検出するロートセルなどの負荷センサ40と、この負荷センサ40からの検出信号に応じて送り用のモータ39を回転駆動するコントローラ41とにより構成されている。
【0031】
送り用のモータ39は、サーボモータにより構成され、ブラケット42によってステー26に取付けられている。また、各押し込み片27は、ステー26に対して、滑り案内手段としてのあり溝43とあり45とによって、滑り移動可能となっているが、この滑り案内手段は、他の構造、例えばステー26の2つの案内用孔とそれらの案内用孔に挿入され、各押し込み片27に固定されている2本の案内用シャフトなどにより構成することもできる。
【0032】
この例での運動変換装置16は、モータ15の出力軸によるクランク軸33、クランク34、リンク35、それらとドウ押し込み板レバー19とを連結する連接ピン36とによって構成されている。ドウ押し込み板レバー19は、揺動運動の方向を転換するために、L状のレバーつまりベルクランクにより構成されている。
【0033】
既述の通り、一対の荒麺帯圧延ロール2がその上でドウ3を挟み込んでいるとき、ドウ3が一対の荒麺帯圧延ロール2の中心部分に偏ると、両端支持方式の各荒麺帯圧延ロール2は、応力変形を起こして、中心部分で互いに離れる方向にたわむ。このため、荒麺帯4の成形不良、特に、荒麺帯の厚みが中央部で厚く、いわゆる中高の形成不良が起きやすくなる。
【0034】
一対の荒麺帯圧延ロール2の間でのドウ3の偏りや、部分的に不均一な状態は、負荷センサ40により検出される。すなわち、各押し込み片27の往復運動(揺動運動)中に、負荷センサ40は、例えばモータ39側の送りねじシャフト37の支持位置で、対応の押し込み片27、つまり送りねじシャフト37に作用するスラスト方向の負荷を検出して、ドウ3の偏りや、部分的に不均一な状態に比例した負荷信号をコントローラ41に送る。
【0035】
コントローラ41は、標準負荷と、負荷センサ40により検出された負荷とを比較し、その偏差に応じて、偏差を解消する方向にモータ39を駆動することによって、各押し込み片27の位置を自動的に調整する。ここで、標準負荷は、ドウ3の最適な状態に対応する値として、予め設定されている。
【0036】
このようなフィードバック制御によって、押し込み板7の各押し込み片27は、ドウ3の偏りや不均一な状態を検出し、その状態を自動的に解消していく。この例によると、各押し込み片27に作用する負荷に応じて、各押し込み片27の位置がフィードバック方式の自動制御によって積極的に調整されるから、運転中にも、各押し込み片27の位置調整が可能となり、しかも位置調整が無段階で連続的にできることになる。
【0037】
次に図5は、各押し込み片27の送り駆動手段を送り用のモータ39に代えて調整用のシリンダ50により構成する変形例を示している。調整用のシリンダ50は、ステー26と一体のブラケット42と各押し込み片27との間に連結され、コントローラ41によって駆動され、そのシリンダロッドの進出位置と後退位置との2つの位置で安定となる。このため、押し込み片27の調整位置は、2位置となる。
【0038】
この例で、コントローラ41は、予め設定されるドウ3の原料や麺の種類などのデータにもとづいてフィードホワード制御を実行し、調整用のシリンダ50を操作して、各押し込み片27の位置を前進位置または後退位置に設定するが、図3の例と同様に、負荷センサ40により検出された負荷と、予め設定されている標準負荷とを比較し、その偏差に応じて、偏差を解消する方向に調整用のシリンダ50を操作する方式とすることもできる。
【0039】
この例によると、各押し込み片27の位置調整が調整用のシリンダ50により行われるから、各押し込み片27の代表的な2位置の調整が簡単な操作により容易に設定できる。
【0040】
さらに、図6の自動位置調整装置30は、押し込み板7の運動を上下方向の直線的な往復運動とするとともに、各押し込み片27の位置をばね弾力により調整する例である。なお図6は、中心線の一方の片側のみを示しているが、他方の片側もほぼ同じ構成となっている。
【0041】
図6で、自動位置調整装置30は、長方形状の水平な各押し込み片27を上下方向に往復移動可能として支持する垂直方向の2本の案内シャフト46と、この案内シャフト46を滑り案内するためにステー26に設けられた案内孔47と、案内シャフト46のねじ部分にねじ込まれる調整ナット51と、各押し込み片27をドウ3に押し込む方向に付勢するために2本の案内シャフト46に挿入したスプリング24と、案内シャフト46と各押し込み片27とを連結するホルダー44と、ホルダー44の部分に組み込まれている高さ調整用のアクチュエータ52とにより構成されている。
【0042】
スプリング24は、各押し込み片27によるドウ3の押し込み時に、ドウ3から大きな抵抗を受けたときに、押し込み片27の変位を許容し、かつその大きな抵抗力に対抗して、押し込み片27の位置を消極的に変えて、大きな抵抗力を弾力的に吸収するために設けられている。高さ調整用のアクチュエータ52は、サーボモータまたはシリンダにより構成し、図3または図5の制御方式によって制御するものとする。
【0043】
長方形状の水平な各押し込み片27と2本の案内シャフト46とは、T字状のホルダー44によって連結されており、2本の案内シャフト46は、各押し込み片27の旋回を防止するための回り止めとして働く。高さ調整用のアクチュエータ52は、ホルダー44の部分に組み込まれるが、この例で、各ホルダー44の水平な部分に取り付けられている。このため、ホルダー44の垂直な部分は、ホルダー44の水平な部分に対して、垂直方向に移動自在であり、上端部分でアクチュエータ52の出力軸の部分に連結されている。
【0044】
各押し込み片27の高さは、案内シャフト46の上部のねじ部分にねじ込まれる調整ナット51を回すことによってそれぞれ独立に調整できる。そのとき、スプリング24の弾力も変わるため、他の適切な弾力のスプリング24が必要となるときには、交換用として特性の異なるスプリング24を用意する。この調整位置で、各押し込み片27の変位は、スプリング24の弾力的な伸縮により許容されている。
【0045】
なお、ステー26は、上下方向に往復直線運動自在とするために、ステー26の両端に取付けられた滑りシャフト48と、滑りシャフト48を案内するためにフレーム18の側面に取付けられている上下のスラスト滑り軸受け49とで支持されている。この例においても、運動変換装置16は、図3と同様に、モータ15の出力軸によるクランク軸33、クランク34、リンク35、それらとステー26とを連結する連接ピン36とによって構成されている。
【0046】
押し込み板7の往復運動中に、各押し込み片27は、ドウ3の偏りや不均一な固さなどの状態に応じて、ドウ3から異なる抵抗力を受ける。このとき、各押し込み片27毎のスプリング24は、抵抗力を吸収する方向に弾力的に伸縮することによって、各押し込み片27の位置を消極的に調整する。
【0047】
このようにして、各押し込み片27の位置は、スプリング24の弾力とドウ3の粘弾性との釣合いによって決まり、往復運動の毎に自動的に調整されるから、特別な位置制御によらなくとも、ドウ3の粘弾性に応じて、各押し込み片27の位置調整が個別にできることになる。この消極的な調整によって、押し込み板7の各押し込み片27は、ドウ3の偏りや不均一な状態を解消していく。
【0048】
スプリング24の弾力的な伸縮による各押し込み片27の位置調整が充分でないときで、特に必要なときに、アクチュエータ52は、各押し込み片27の位置を自動的に調整することによって、各押し込み片27の位置調整を補って行く。
【0049】
さらに図7および図8の例は、ドウ押し込み板7を荒麺帯圧延ロール2の軸線方向にそって複数、例えは5分割し、5つの押し込み片27により構成し、各押し込み片27をを固定プレート53に、長孔31とこの長孔31に挿入され固定プレート53にねじ込まれる取付けボルト32とによって固定する構成としている。
【0050】
固定プレート53は、ステー26に対して滑り案内手段としてのあり溝43とあり45とによりドウ押し込み板7の往復運動の方向に移動自在に支えている。ステー26と固定プレート53とは、図示しないが、図6と同様に、モータやシリンダなどによるアクチュエータ52により操作できるようになっている。
【0051】
麺帯形成装置1の運転時に、荒麺帯4に形成不良が起きると予測されるとき、作業員は、麺帯形成装置1の運転に前に、図8に例示するように、固定プレート53に対する各押し込み片27の取付けに当たり、各押し込み片27の長孔31と取付けボルト32との締め付け位置の調節によって、例えは一対の荒麺帯圧延ロール2の中央部で押し込み片27を高く、両端部で押し込み片27を低く設定し、押し込み片27の下端を段状に設定する。このような設定後に、自動位置調整装置30は、各押し込み片27の設定状態を維持したまま、それらの押し込み片27を必要に応じて位置調整することになる。
【0052】
このような設定によると、麺帯形成装置1の往復運動の過程で、中央部で高い押し込み片27は、中央部に偏って溜まりやすい傾向にあるドウ3を両端部に移行させ、荒麺帯圧延ロール2の応力変形や、ドウ3の偏りによる荒麺帯4の成形不良を未然に防止する。この例によれば、その実施が容易であり、手動調整の操作も簡単にできる。
【0053】
なお、図3、図5および図7の例のような揺動運動と、図6の例のような上下方向の直線的な往復運動とは、基本的に置換可能である。さらに、各例でドウ押し込み板7は、複数の押し込み片27により構成されているが、本発明において、ドウ押し込み板7は、分割されていないで、1つの板材により構成することもできる。ドウ押し込み板7が1つの板材により構成されている場合、その駆動原としてのモータ39、シリンダ50やアクチュエータ52は、1つで足りることになる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る麺帯形成装置1は、うどん麺、そば麺、中華麺、各種のヌードルについても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の前提となる麺帯形成装置1の概略的な側面図である。
【図2】麺帯形成装置1でのドウ押し込み板7とドウストッパ8の側面図である。
【図3】麺帯形成装置1において本発明の要部としての自動位置調整装置30の側面図である。
【図4】図3での自動位置調整装置30の要部の断面図である。
【図5】他の自動位置調整装置30の側面図である。
【図6】他の自動位置調整装置30の要部の正面図である。
【図7】他の自動位置調整装置30の要部の側面図である。
【図8】図7でのドウ押し込み板7の正面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 麺帯形成装置 2 荒麺帯圧延ロール
3 ドウ 4 荒麺帯
5 麺帯圧延ロール 6 麺帯
7 ドウ押し込み板 8 ドウストッパ
9 制御装置 10 ドウ状態検出センサ
11 搬送コンベア
13 ホッパー 14 ケーシング
15 モータ 16 運動変換装置
17 機台 18 フレーム
19 ドウ押し込み板レバー 20 レバー軸
21 ドウストッパレバー 22 レバー軸
23 シリンダ 24 スプリング
25 ロール駆動モータ 26 ステー
27 押し込み片 28 駆動増幅器
29 ロール駆動モータ 30 自動位置調整装置
31 長孔 32 取付けボルト
33 クランク軸 34 クランク
35 リンク 36 連接ピン
37 送りねじシャフト 38 送りナット
39 モータ 40 負荷センサ
41 コントローラ 42 ブラケット
43 あり溝 44 ホルダー
45 あり 46 案内シャフト
47 案内孔 48 滑りシャフト
49 スラスト滑り軸受け 50 調整用のシリンダ
51 調整ナット 52 アクチュエータ
53 固定プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の荒麺帯圧延ロール(2)の間に上からドウ(3)を供給し、ステー(26)に支えられているドウ押し込み板(7)の往復運動によりドウ(3)を一対の荒麺帯圧延ロール(2)の間に押し込むとともに、一対の荒麺帯圧延ロール(2)の回転によりドウ(3)を圧延して、荒麺帯(4)を形成し、この荒麺帯(4)を一対の麺帯圧延ロール(5)の回転により圧延して、麺帯(6)を形成する麺帯形成装置(1)において、
上記のドウ押し込み板(7)を自動位置調整装置(30)によって往復運動の方向に位置調整自在に取り付けることを特徴とする麺帯形成装置(1)。
【請求項2】
自動位置調整装置(30)を、ドウ押し込み板(7)を往復運動の方向に移動自在に支える滑り案内手段(43、45)と、ドウ押し込み板(7)に固定されている送りナット(38)と、この送りナット(38)にねじ対偶で連結されている送りねじシャフト(37)と、送りねじシャフト(37)を回転駆動する送り用のモータ(39)と、ドウ押し込み板(7)に作用する負荷を検出する負荷センサ(40)と、この負荷センサ(40)からの検出信号に応じてモータ(39)を回転駆動するコントローラ(41)とにより構成し、ドウ押し込み板(7)に作用する負荷を負荷センサ(40)により検出し、検出した負荷に応じてコントローラ(41)により送り用のモータ(39)を回転駆動し、ドウ押し込み板(7)の位置を自動的に調整可能とすることを特徴とする請求項1記載の麺帯形成装置(1)。
【請求項3】
自動位置調整装置(30)を、ドウ押し込み板(7)を往復運動の方向に移動自在に支える滑り案内手段(43、45)と、ステー(26)とドウ押し込み板(7)との間に連結されているシリンダ(50)と、このシリンダ(50)を駆動するコントローラ(41)とにより構成し、コントローラ(41)によりシリンダ(50)を駆動し、ドウ押し込み板(7)の位置を自動的に調整可能とすることを特徴とする請求項1記載の麺帯形成装置(1)。
【請求項4】
自動位置調整装置(30)を、往復運動方向の案内シャフト(46)と、この案内シャフト(46)の案内孔(47)と、案内シャフト(46)のねじ部分にねじ込まれる調整ナット(51)と、ドウ押し込み板(7)をドウ(3)に押し込む方向に付勢するスプリング(24)と、案内シャフト(46)とドウ押し込み板(7)とを連結するホルダー(44)と、ホルダー(44)の部分に組み込まれドウ押し込み板(7)の高さを調整するアクチュエータ(52)とにより構成し、ドウ押し込み板(7)の高さを調整ナット(51)により位置調整自在で、かつ調整位置でドウ押し込み板(7)の変位をスプリング(24)により許容する状態とし、さらにドウ押し込み板(7)の高さをアクチュエータ(52)とにより調整可能とすることを特徴とする請求項1記載の麺帯形成装置(1)。
【請求項5】
ドウ押し込み板(7)を荒麺帯圧延ロール(2)の軸線方向にそって分割して複数の押し込み片(27)により構成し、各押し込み片(27)をステー(26)に対して自動位置調整装置(30)によって往復運動の方向に位置調整自在に取り付けることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、または請求項4記載の麺帯形成装置(1)。
【請求項6】
固定プレート(53)に各押し込み片(27)を、長孔(31)と長孔(31)に挿入され固定プレート(53)にねじ込まれる取付けボルト(32)とによって取り付け、固定プレート(53)をステー(26)に対して滑り案内手段(43、45)によりドウ押し込み板(7)の往復運動の方向に移動自在に支え、各押し込み片(27)を自動位置調整装置(30)によって上記往復運動の方向に位置調整自在に取り付けることを特徴とする請求項5記載の麺帯形成装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−330116(P2007−330116A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163319(P2006−163319)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(390026631)株式会社冨士製作所 (25)
【Fターム(参考)】