説明

麺類の水切り装置

【課題】茹で籠から吸引した水から麺のくずや残菜、粉類、塩分等を分離して排出してブロア内に入らないようにした麺類の水切り装置を提供すること。
【解決手段】水きり室3に挿入した茹で籠K内の麺に付着した残菜や粉類、塩分を含んだ水を周辺の空気と共に吸引して処理槽4に導入し、処理槽4は、残菜除去部61と貯水部Wとフィルタ部63とを備えており、処理槽4に導入された残菜や粉類、塩分を含む水及び空気は、残菜除去部61で残菜が除去されて、貯水部Wに導入され、貯水部Wに導入された水及び空気は、貯水部Wに溜められた貯水に当たり、導入された水と、この水や導入された空気中に含まれる粉類や塩分、水蒸気とが貯水に吸収され除去されて、フィルタ部63に導入され、フィルタ部63に導入された空気は、空気中にのこっている粉類や水蒸気が除去されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は麺類の水切り装置に関するものであり、さらに詳細には、ラーメンやうどん、そば等の麺類を、1人前ずつ茹で籠に入れて茹で上げた麺類を、茹で籠に入れたままの状態で水切りを行うための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、ラーメン店やうどん店などの飲食店等において、ラーメンやうどん、そば等の麺類を茹で上げる際には、麺類を1人前ずつ入れる茹で籠が利用されており、茹で籠に麺を入れた状態で麺を茹で上げ、麺が茹で上がると、茹で籠の取っ手を持ち、数回茹で籠を勢いよく振ることによって、麺の水切りを行っていた。
【0003】
しかし、この水切り動作は腕や肩に大きな衝撃を与えるものであり、またこの動作は飲食店等の営業時間中、繰り返し行われる動作であるから、調理者に大きな負担を課するものであった。そのため、調理者がけんしょう炎などの症状に悩まされることが多く、改善が望まれていた。
【0004】
この点、ブロアからの吹き出し風により、麺に付いた水を吹き飛ばすことで、麺の水切りを行う装置が知られていた。しかしながら、麺に付いた水を吹き飛ばすには、かなりの風量が必要となるため、ブロアの能力が高くなければならず、コストが高くなるという問題点があった。
【0005】
また、麺類の茹で籠をセットする水切り槽と、水切り槽にセットされた茹で籠内の麺類の水分を吸引する吸引手段とを備え、麺に付いた水を吸引することによって、麺類の水切りを行う装置がある(特許文献1〜3)。しかしながら、この水切り装置においても、ブロアによって吸引され麺から分離された水および同時に吸引された空気が、麺のくずや残菜、粉類を含んだ状態で分離槽やブロアを通って排出されるので、麺のくず等がブロア内に付着するなどして、装置の寿命が短くなるという問題点を有していた。また、麺から分離された水および空気が吸引され外部へ排出される際に、相当な音が出るという問題もあった。
【0006】
さらに、麺類の茹で籠を挿入する水切り室と、前記水切り室の底部に設けられた排水口と消音室とを連結する連結チューブ、第一チャンバー、第二チャンバーおよび第三チャンバーの3室に分割された消音室、消音室底部に設けられた排水機構、およびおよび消音室の排気口に接続された排気装置を備え、前記第一チャンバーと前記第二チャンバーとの間に残菜かごを設けるとともに、前記第二チャンバーと前記第三チャンバーとの間にフィルターを設けたものがある(特許文献4)。
【0007】
しかしながら、このような水切り装置においても、排気装置、すなわちブロアの吸引が強力であるため、残菜かごを通り抜けた麺のくずや粉類、塩分等を含んだ水がブロアの吸引により吸い寄せられ、第二チャンバー内の前記フィルター付近の側壁に勢いよく当たって、麺のくずや粉が大量に付着し、また当該箇所に塩分が蓄積して第二チャンバーの側壁が錆び、腐食してしまうという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平4−16587号公報
【特許文献2】登録実用新案第3033389号公報
【特許文献3】特開2004−81102号公報
【特許文献4】特開2006−333857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためのものであり、茹で籠から吸引した水から麺のくずや残菜、粉類、塩分等を分離して排出してブロア内に入らないようにした麺類の水切り装置を提供することを目的とする。また、それにより装置の寿命を長くできる麺類の水切り装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、装置が動作する際に出る音を消音することができる麺類水切り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る麺類の水切り装置は、麺の茹で籠を挿入する水切り室と、排気手段を有する吸引手段と、前記水切り室と吸引手段との間に配設される処理槽とを備え、前記吸引手段は、前記水切り室に挿入した茹で籠内の麺に付着した残菜や粉類、塩分を含んだ水を周辺の空気と共に吸引して前記処理槽に導入し、前記処理槽は、残菜除去部と、貯水部と、フィルタ部とを備えており、前記処理槽に導入された残菜や粉類、塩分を含む水及び空気は、前記残菜除去部で残菜が除去されて、前記貯水部に導入され、該貯水部に導入された水及び空気は、該貯水部に溜められた貯水に当たり、導入された水と、この水に含まれる粉類や塩分と、導入された空気中に含まれる粉類や塩分、水蒸気とが前記貯水に吸収され除去されて、前記フィルタ部に導入され、該フィルタ部に導入された空気は、該フィルタにより該空気中に残っている粉類や水蒸気が除去されて、吸引手段へ導入され、吸引手段に導入された空気は、該吸引手段の排気手段により外部へ排気されるようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明の水切り装置によれば、残菜除去部、貯水部、及びフィルタ部の三段階で、麺に付着した水や、麺のくず、粉類、塩分等を除去するので、吸引手段にまで到達する水や、麺のくず、粉類、塩分等が非常に少ない。特に、前記貯水部で吸引した空気中に含まれる前記粉類や水分、塩分等の大半が除去されるので、前記フィルタ付近への前記粉類等の付着が非常に少なくなる。それゆえ、当該麺類の水切り装置の寿命が非常に長くなる。
【0012】
また、本発明に係る麺類の水切り装置において、処理槽は、少なくとも第一槽、第二槽、及び第三槽を有しており、前記第一槽に残菜除去部を備え、前記第二槽に貯水部を備え、また前記第二槽と第三槽との間にフィルタ部を備えるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明に係る麺類の水切り装置において、第二槽は、第一槽の下方に位置すると共に、その底部が貯水部となっており、かつ第一槽から第二槽に導入された残菜や粉類、塩分を含む水及び空気が、前記貯水部に溜まった貯水に当たるよう空気誘導手段を備えるようにするのが好ましい。
さらに、本発明に係る麺類の水切り装置においては、第二槽の底部にオーバーフロー式の排水手段を設けるようにするのが好ましい。
また、本発明の麺類の水切り装置において、処理槽の内壁面に沿って消音壁を配設するようにするのが好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係る麺類の水切り装置においては、水切り室、吸引手段及び処理槽を収容する水切り装置本体を備え、該水切り装置本体の内壁面に沿って消音壁を配設するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の麺類の水切り装置によれば、残菜除去部、貯水部、及びフィルタ部の三段階で、麺に付着した水や、麺のくず、粉類、塩分等を除去するので、吸引手段にまで到達する水や、麺のくず、粉類、塩分等が非常に少ない。特に、吸引された水及び空気中に含まれる前記粉類や水分、塩分等の大半が前記貯水部において除去されるので、前記フィルタ付近への前記粉類等の付着が非常に少なくなる。それゆえ、当該麺類の水切り装置の寿命が非常に長くなる。
【0016】
また、本発明の水切り装置において、処理槽は、少なくとも第一槽、第二槽、及び第三槽を有しており、前記第一槽に残菜除去部を備え、前記第二槽に貯水部を備え、また前記第二槽と第三槽との間にフィルタ部を備えるように、さらに、第二槽は、第一槽の下方に位置すると共に、その底部が貯水部となっており、かつ第一槽から第二槽に導入された残菜や粉類、塩分を含む水及び空気が、前記貯水部に溜まった貯水に当たるよう空気誘導手段を備えることによって、上述のとおり、前記貯水部において粉類や水分、塩分等の大半が除去されるのを促すことができる。
【0017】
また、第二槽の底部にオーバーフロー式の排水手段を設ければ、一定以上水が溜まると自動的に外部へ排水されるので、メンテナンスが容易である。さらに、処理槽の内壁、および水切り装置本体の内壁にそって消音壁を配設することにより、装置が動作して生じる音が大きく減衰される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る麺類の水切り装置の斜視図である。
【図2】本発明に係る麺類の水切り装置の側面図である。
【図3】本発明に係る麺類の水切り装置の側断面図である。
【図4】茹で籠が本体内に挿入された状態を示す説明図である。
【図5】本発明に係る麺類の水切り装置における消音壁の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本件発明に係る麺類の水切り装置の一実施形態を、添付の図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る麺類の水切り装置の一実施形態を示す斜視図であり、図2がその側面図である。図1、および図2に示すように、本体2の上面には麺の茹で籠Kを挿入する水切り室3が備えられている。また、本体の下面には、排水口72および排気口511が備えられている。
【0021】
図3は、この実施形態における水切り装置1の側断面図である。図3に示すように、水切り装置1は、本体2内に水切り室3と処理槽4と吸引手段5とを備えている。水切り室3は上方が開口していて茹で籠が挿入可能な形状となっており、また下端にも開口部を有していて円筒状の連通パイプ31を介して処理槽4に接続されている。水切り室3の側壁には、感知部32が設けられており、図4に示すように茹で籠Kを水切り室3内に挿入すると、感知部32が茹で籠Kを感知し、ブロア52を作動させる。尚、感知部32には、光スイッチや、近接スイッチ、或いは他の既知のセンサを適宜選択的に使用できる。
【0022】
処理槽4は、水切り室の下方に位置し連通パイプ31が接続された第一槽41と、第一槽41の下方に位置し第一槽41に連通している第二槽42と、第二槽42の上部に位置する第三槽43とをそなえている。また、第三槽43の上部には、吸引手段5として排気手段51を有するブロア52を備えている。ブロア52は、処理槽4側の空気を吸引し、排気手段(排気パイプ)51を介して排気口511から排気する。
【0023】
第一槽41内には残菜除去手段として残菜かご61が配置されている。これにより、ブロア52によって吸引され水きり室3から第一槽41に導入された残菜や粉類、塩分を含む水及び空気は、前記残菜カゴ61麺のくずなどの残菜が除去される。ここでは、ステンレス製の網かごが用いられているが、麺のくずなどを除去できるものであれば、どのようなものを用いてもよい。尚、第一槽41と第二槽42との間には残菜かごを載置するための開口部を有するレールが配されているが、第一槽41と第二槽42とは、連通しており、空気や水が透過可能である。
【0024】
第二槽42は、第一槽41の下方にあり、第二槽42の底部は、貯水部として水Wを溜めることができるようになっている。また、第二槽42の底部には、高さHだけ第二槽42内に突出し上下に開口した中空円筒形状のオーバーフロー式排水手段(排水パイプ)7が設けられている。これにより、高さHを超えて第二槽42内に水が溜まると排水パイプ7から外部へ排水されるようになっている。
【0025】
また、第二槽42には、空気誘導手段62が設けられている。この実施形態においては、空気誘導手段62はステンレス板で作成され、第一槽41と第三槽43とを仕切る側壁401の下端から下方に且つ第一槽41側へ延びるように形成されている。この空気誘導手段62により、ブロア52により吸引され第一槽41から第二槽42へ導入された水及び空気は、該貯水部に溜められた貯水に当たるように誘導される。これによって、導入された水と、この水に含まれる粉類や塩分と、導入された空気中に含まれる粉類や塩分、水蒸気とが前記貯水に吸収され除去される。
【0026】
第二槽42と第三槽43との間には、水や粉類等を除去するためのフィルタ63が2枚配設されている。フィルタ63は、水や粉類等を除去できるものであれば、どのようなものでもよく、容易に交換可能なものを使用するのが好ましい。また、ここでは2枚のフィルタ63を配設しているが、1枚でもよく、また3枚以上のフィルタを利用するようにしてもよい。
【0027】
また、処理槽4および本体2の内壁面に沿って、消音壁81、82が配されている。これは、水切り装置が動作する際に大きな音が生じるので、これを消音するためのものである。この実施形態において使用される消音壁81、82は図5に示すようなものであって、ステンレス板に所定の径の孔を所定のピッチで多数穿設し、所謂共鳴効果によって音を減衰させるものである。この消音壁81、82は、処理槽4および本体2の内壁面全体に沿って設けるのが好ましいが、必ずしも全面に設ける必要はなく、一部だけでもよい。
次に、この実施形態における水切り装置1を使用手順に従って、さらに説明する。
【0028】
先ず、茹で籠に麺を入れ、麺を茹で上げた状態で、そのまま茹で籠Kを手に持ち、水切り室3内に挿入する(図4参照)。そうすると、感知部32が茹で籠Kを感知し、ブロア52を動作させる。なお、この実施形態においては、感知部17には、光スイッチを使用している。
ブロア52が動作し、吸引を始めると、茹で籠K内で麺に付いた水および周辺の空気が吸引され、連通パイプ31を通って処理槽4の第一槽41に導入される。
【0029】
第一槽41に導入された残菜や粉類、塩分を含む水及び空気は、残菜カゴ61を通って第二槽42へと導入されるが、このとき残菜かご61で麺のくずなどの残菜が除去される。
【0030】
第二槽42に導入された水及び空気は、空気誘導手段62に誘導されて貯水部に溜められた貯水Wに当たる(図4における矢印X)。ここで、導入された水と、この水に含まれる粉類や塩分と、導入された空気中に含まれる粉類や塩分、水蒸気とが前記貯水に吸収され除去される。さらに吸引された空気は、フィルタ63、63を透過して第三槽43に導入される(図4における矢印Y、Z)が、このフィルタ63、63において、空気中にのこっている粉類や水蒸気がさらに除去され、吸引手段へと導入される。そして、吸引手段へ導入された空気は、排気パイプ51を通って外部へ排気される。
【符号の説明】
【0031】
1 麺類の水切り装置
2 本体
3 水切り室
4 処理槽
5 吸引手段
51 排気パイプ
52 ブロア
61 残菜かご
62 空気誘導手段
63 フィルタ
7 排水手段(排水パイプ)
81、82 消音壁
W 貯水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺の茹で籠を挿入する水切り室と、排気手段を有する吸引手段と、前記水切り室と吸引手段との間に配設される処理槽とを備え、
前記吸引手段は、前記水切り室に挿入した茹で籠内の麺に付着した残菜や粉類、塩分を含んだ水を周辺の空気と共に吸引して前記処理槽に導入し、
前記処理槽は、残菜除去部と、貯水部と、フィルタ部とを備えており、
前記処理槽に導入された残菜や粉類、塩分を含む水及び空気は、前記残菜除去部で残菜が除去されて、前記貯水部に導入され、
該貯水部に導入された水及び空気は、該貯水部に溜められた貯水に当たり、導入された水と、この水に含まれる粉類や塩分と、導入された空気中に含まれる粉類や塩分、水蒸気とが前記貯水に吸収され除去されて、前記フィルタ部に導入され、
該フィルタ部に導入された空気は、該フィルタにより該空気中に残っている粉類や水蒸気が除去されて、吸引手段へ導入され、
吸引手段に導入された空気は、該吸引手段の排気手段により外部へ排気されるようにしたことを特徴とする麺類の水切り装置。
【請求項2】
処理槽は、少なくとも第一槽、第二槽、及び第三槽を有しており、
前記第一槽に残菜除去部を備え、前記第二槽に貯水部を備え、また前記第二槽と第三槽との間にフィルタ部を備えることを特徴とする請求項1記載の麺類の水切り装置。
【請求項3】
第二槽は、第一槽の下方に位置すると共に、その底部が貯水部となっており、かつ第一槽から第二槽に導入された残菜や粉類、塩分を含む水及び空気が、前記貯水部に溜まった貯水に当たるよう空気誘導手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の麺類の水切り装置。
【請求項4】
第二槽の底部にオーバーフロー式の排水手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至3記載の麺類の水切り装置。
【請求項5】
処理槽の内壁面に沿って消音壁を配設したことを特徴とする請求項1乃至4記載の麺類の水切り装置。
【請求項6】
水切り室、吸引手段及び処理槽を収容する水切り装置本体を備え、該水切り装置本体の内壁面に沿って消音壁を配設したことを特徴とする請求項1乃至5記載の麺類の水切り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−207554(P2010−207554A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89559(P2009−89559)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(305030582)
【Fターム(参考)】