説明

麺類茹で装置用噴流水調整板

【課題】 茹で槽内で茹で籠の下方に設置し、形成した気泡噴出口から気泡混じりの水流を噴出させてその上方の茹で籠内の麺をこの噴流水でもって乱舞させるようにした噴流水調整板において、噴出する気泡の量を増やし、複数の茹で籠が同時に茹で上がるようにする。
【解決手段】 茹で槽の4方に位置する箇所には下向きの壁面を形成し、茹で籠がその上方に位置する箇所を円筒状に凸型に形成した気泡滞留部とし、この気泡滞留部には所望数の気泡噴出口を形成し、また気泡滞留部での気泡の留まり効率に対応して気泡噴出口の数を適宜調整し、全部の茹で籠についてほぼ等しい強さで噴流水があたるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、麺類茹で装置において槽内で発生する沸騰した気水混合湯の循環、すなわち気泡混じりの水流の力を利用して、茹で籠に入れた麺を乱舞させて麺を均等に茹で上げるために用いる噴流水調整板(「ワッフル板」と称される場合もある。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
業務用の麺類茹で装置では、茹で籠に麺を入れこれを茹で槽内に一定時間入れて麺類を茹で上げるようにしている。そして、茹で籠に入れた麺が均等に茹でられるようにするために途中で箸により適宜かき回して茹で上げるようにしていた。また、複数の茹で籠を同時に入れたような場合、それぞれの茹で籠について麺の茹だり具合を確認していた。
【0003】
そこで、この手作業による麺のほぐし作業を省略するために、茹で槽内で茹で籠の下方に設置し、形成した気泡噴出口から気泡混じりの水流を噴出させてその上方の茹で籠内の麺をこの噴流水でもって乱舞させるようにした噴流水調整板が用いられるようになってきた。その一例を図5に示すと、ステンレス板を門型に形成し、茹で籠の下方に相当する位置に透孔Hを複数形成し(図示したものは茹で籠が4個用のものである。)、その透孔Hから気水混合湯が噴出するようにし、これにより茹で籠に入れた麺が乱舞するようにしてある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし図5に示した従来例における噴流水調整板は、平らなステンレス板に透孔Hを形成していたので、この噴流水調整板の下面を沸騰した気水混合湯が循環しても、気水混合湯がスムーズに噴流水調整板の下面を通過してしまい、せっかく形成した透孔Hから噴出する噴流水の力は弱く、特に気泡の量が少ないために茹で籠内の麺を十分に乱舞させることができなかった。また、この透孔Hの形成部分を若干盛り上げたようなものもあるが、この盛り上げ部分は強度的な意味合いから盛り上げてありその変形も極僅かであって気水混合湯のスムーズな循環を妨げるほどのものとはなっていない。
【0005】
一方、透孔Hは図5に示したように4個の茹で籠に対応する箇所にそれぞれ等しい数の透孔(すなわち透孔の面積も等しい)を形成してある。しかし、実際にこれを使用して麺を茹でてみると、それぞれの箇所において茹で上がり時間が異なることがわかった。これはそれぞれの箇所で微妙に気水混合湯の循環圧力が異なり、また透孔から噴出する気泡の量が異なることに起因している。全ての箇所で茹で上がり時間が同じでないと、複数の茹で籠を同時に茹で始めたような時に、それぞれの茹で籠を個別に茹で上がり具合を確認していたのでは、せっかく茹で籠内の麺が自然に乱舞するようにしたのに、茹で上がりまでを完全に人手を必要とせずに行うことができないことになってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこでこの発明に係る麺類茹で装置用噴流水調整板(請求項1)は前記の課題を解決するために、茹で槽内で茹で籠の下方に設置し、形成した気泡噴出口から気泡混じりの水流を噴出させてその上方の茹で籠内の麺をこの噴流水でもって乱舞させるようにした噴流水調整板において、茹で槽の4方に位置する箇所には下向きの壁面を形成し、茹で籠がその上方に位置する箇所を円筒状に凸型に形成した気泡滞留部とし、この気泡滞留部には所望数の気泡噴出口を形成したものである。
【0007】
またこの発明に係る麺類茹で装置用噴流水調整板(請求項2)は前記の課題を解決するために、茹で槽で複数の茹で籠を同時に茹でられる麺類茹で装置で用いるために、気泡滞留部での気泡の留まり効率に対応して気泡噴出口の数を適宜調整し、全部の茹で籠についてほぼ等しい強さで噴流水があたるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
茹で槽の4方に位置する箇所には下向きの壁面を形成し、茹で籠がその上方に位置する箇所を円筒状に凸型に形成した気泡滞留部とし、この気泡滞留部には所望数の気泡噴出口を形成したので、気泡が常に上昇しようとする作用と流れがスムーズでない箇所に気泡がたまり易い現象を利用し、沸騰した気水混合湯に含まれている気泡が気泡滞留部に効率よく取り込まれるようになり、気泡噴出口から大量の気泡が混じっている湯が噴流水として噴き出し、茹で籠内の麺を十分に乱舞させることが可能となる。
【0009】
また、茹で槽で複数の茹で籠を同時に茹でられる麺類茹で装置で用いるために、気泡滞留部での気泡の留まり効率に対応して気泡噴出口の数を適宜調整し、全部の茹で籠についてほぼ等しい強さで噴流水があたるようにしたので、複数の茹で籠で同時に麺を茹で出した場合に全部の茹で籠が同時に茹で上がることとなり、茹で上げ作業が非常に簡単になるとともに失敗がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
噴流水調整板の気泡滞留部は使用する麺類茹で装置にもよるが、気水混合湯中に含まれている気泡が循環中に上昇して気泡滞留部に留まり循環する流れの作用を受けにくくするためには、基本的には直径5〜6cm位の大きさで高さ(底面側から見ると深さ)1〜1.5cm位とする。また、茹で籠内の麺を十分に乱舞させるためには、気泡噴出口は直径3〜6mm程度とし、その数は2個以上とする。
【実施例1】
【0011】
次に、この発明に係る麺類茹で装置用噴流水調整板の一実施例を図面に基づいて述べる。まず、本発明に係る噴流水調整板を設置する麺類茹で装置を図1に基づいて説明すると、1は茹で槽であり、2は茹で槽下面に設置したバーナーである。3はバーナーからの燃焼ガスを外へ排気する煙道であり、図示した例では煙道3の位置は麺類茹で装置の背後側となっている。
【0012】
茹で槽1の底面でバーナ2の上方に位置する箇所には波形の伝熱部4が形成してあり、この伝熱部4は背後側は煙道3まで達しており、正面側は茹で槽1の正面側の側板までは達していないようにしてある。5は本発明に係る噴流水調整板であり、伝熱部4の上方に設置して使用する。6は茹で槽1内で噴流水調整板5の上で麺を茹でる茹で籠である。なお、茹で籠6の茹で槽1内での位置は茹で籠ホルダーにより規制されている。
【0013】
次に本発明に係る噴流水調整板5を図2及び図3に基づいて詳述する。噴流水調整板5は図示したように茹で槽1の4方を囲うように、すなわち茹で槽1に設置時に側面側となる位置と正面側となる位置と向い側となる位置に、下向きの壁面7が形成してある。この壁面7の高さは設置する麺類茹で装置の茹で槽1の底面の波形の伝熱部4の高さより若干高い程度とする。
【0014】
茹で籠がその上方に位置することとなる箇所には、円筒状に凸型に気泡滞留部8が形成してある。そして、気泡滞留部8の上面には所望数の気泡噴出口9が形成してある。気泡滞留部8の大きさとしては直径5〜6cm位で、高さ(底面側から見ると深さ)1〜1.5cm位とする。また、気泡噴出口は直径3〜6mm程度とし、その数は麺を十分乱舞させるために複数個としておくのが望ましい。
【0015】
図2に示す噴流水調整板は図1に示す麺類茹で装置に合わして気泡滞留部8の位置と気泡噴出口9の数を調整したものであり、煙道3側(図2において上側)の気泡噴出口9を4個とし、正面側(図2において下側)の気泡噴出口9を2個とした。
【0016】
次に、上記本発明に係る噴流水調整板の使用方法を図1に基づいて説明する。噴流水調整板を図1に示すように伝熱板4の上に設置する。噴流水調整板により、伝熱面4はその周囲を壁面7で囲まれることになるとともにその上方も覆われ、茹で槽1内において伝熱面4と噴流水調整板により囲まれた区域で湯が積極的に循環するようにする。
【0017】
そして、茹で槽1内に水を入れバーナー2を点火して茹で槽1内の水を加熱する。茹で槽1内の水は煙道3側の方が熱が集まり易いので早く加熱され、結果として上記伝熱面4と噴流水調整板により囲まれた区域では矢印で示すように湯が循環する。湯が沸騰しだすと、湯中に気泡が発生し気水混合湯状態となる。そして、この気水混合湯が循環するようになると、気泡は上方へ移動しようとするので、少しでも高いところへ移動しようとする結果気泡滞留部8に気泡が多く集まるようになる。
【0018】
そして、気泡滞留部8においては循環水の圧力と滞留している気泡の圧力とにより気泡噴出口9より気泡と湯が勢いよく噴出することになる。すなわち、通常よりも気泡成分が多く含まれた湯が気泡噴出口9より噴流水として噴き出し、茹で籠6内の麺を十分に乱舞させることになる。
【0019】
なお、図1に示す4個茹での麺類茹で装置の場合、図2に示すように気泡噴出口9の数は煙道3側を4個とし、正面側を2個とすると、全部の茹で籠の麺が等しい時間で茹で上がった。循環する気水混合湯の温度としては煙道3側の方が高いが、循環水の圧力としては正面側が煙道3側から押されることにより一番高まり、結果として煙道3側より正面側の気泡噴出口9からの方が噴流水の噴き出し力が強いので、このように気泡噴出口9の数を調整しておくことにより、全部の茹で籠についてほぼ等しい強さで噴流水があたるようになる。茹で槽1内の湯全体的には麺を茹でる時には常時沸騰状態であるので、全部の茹で籠についてほぼ等しい強さで噴流水があたるようにしておけば、全部の茹で籠について茹で時間も等しくなる。
【実施例2】
【0020】
図4は6個茹での本願に係る噴流水調整板の実施例を示すものであり、使用方法は上記実施例と同じである。本実施例においては真ん中に位置する気泡滞留部8の気泡噴出口9を4個とし、煙道3側と正面側の気泡滞留部8の気泡噴出口9を3個とした。6個茹での場合は4個茹での場合と比べて気水混合湯の循環経路が長くなるため、中間部分が一番圧力が弱くなるので、真ん中位置の気泡噴出口9の数を他より多くすることにより、全部の茹で籠についてほぼ等しい強さで噴流水があたるようになる。
なお、気水混合湯の循環圧力は麺類茹で装置により異なるものであるので、気泡噴出口の数の調整は一律に決定できるものではなく、使用する麺類茹で装置に合わして調整する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る噴流水調整板は、茹で籠の数は上記した4個用や6個用に限らずいくつのものについても適用可能である。また、茹で槽の下面の伝熱部の形状や煙道の位置などに合わして簡単に設計変更することが可能である。また、従来例で示したような噴流水調整板が既に設置されている麺類茹で装置においても、それに代えて簡単に本発明に係る噴流水調整板を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る噴流水調整板を使用した例を示す麺類茹で装置の側面図である。
【図2】本発明に係る噴流水調整板の一実施例を示す斜視図である。
【図3】図2のA−A線端面図である。
【図4】本発明に係る噴流水調整板の他例を示す平面図である。
【図5】噴流水調整板の従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 茹で槽
2 バーナー
3 煙道
4 伝熱板
5 噴流水調整板
6 茹で籠
7 壁面
8 気泡滞留部
9 気泡噴出口
H 透孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茹で槽内で茹で籠の下方に設置し、形成した気泡噴出口から気泡混じりの水流を噴出させてその上方の茹で籠内の麺をこの噴流水でもって乱舞させるようにした噴流水調整板において、茹で槽の4方に位置する箇所には下向きの壁面を形成し、茹で籠がその上方に位置する箇所を円筒状に凸型に形成した気泡滞留部とし、この気泡滞留部には所望数の気泡噴出口を形成したことを特徴とする麺類茹で装置用噴流水調整板。
【請求項2】
茹で槽で複数の茹で籠を同時に茹でられる麺類茹で装置で用いるために、気泡滞留部での気泡の留まり効率に対応して気泡噴出口の数を適宜調整し、全部の茹で籠についてほぼ等しい強さで噴流水があたるようにした請求項1記載の麺類茹で装置用噴流水調整板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−43181(P2006−43181A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229183(P2004−229183)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(599157158)株式会社ムロフシ (6)
【Fターム(参考)】