説明

麻酔性ガス回収装置及び麻酔性ガスの回収方法

【課題】動物管理センターなどにおいて小動物の殺処分に使用され、処分器からバッチ的に、かつ多量に排出される高濃度の麻酔性ガスを含む被処理ガスを、比較的小さな規模の装置で効率よく短時間で無害化処理することができる麻酔性ガス回収装置を提供する。
【解決手段】麻酔性ガス回収装置(A)は、小動物を殺処分する処分器(1a,1b,1c)から供給される麻酔性ガスを含む被処理ガスから麻酔性ガスを回収する麻酔性ガス回収装置である。麻酔性ガス回収装置(A)は、処分器(1a,1b,1c)から送られる被処理ガスを貯留するチャンバ(2,2a)、チャンバ(2,2a)から送られる被処理ガスを冷却し麻酔性ガスを冷却し液化させて回収する凝縮装置(3)、凝縮装置(3)に送る冷却液をつくる冷凍機(7)、被処理ガスが凝縮装置(3)で処理された後のガス分に含まれている麻酔性ガスを吸着する吸着器(5)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麻酔性ガス回収装置及び麻酔性ガスの回収方法に関するものである。さらに詳しくは、動物管理センターなどにおいて小動物の殺処分に使用され、処分器(殺処分室)からバッチ的に、かつ大量に排出される高濃度の麻酔性ガスを含む被処理ガスであっても、比較的小さな規模の装置で効率よく短時間で無害化処理することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
麻酔性ガス(揮発性麻酔液:イソフルラン・セボフルラン・ハロセンなどであり、多くは亜酸化窒素と併用されている)は、病院での手術などで人に対して使用される場合(濃度2〜5%)と、動物管理センターなどで殺処分される小動物に対し使用される場合(濃度3〜20%)がある。上記各ケースで使用された麻酔性ガスを含むガスは、従来はそのまま何の処理もされずに大気中に放出されていた。
しかしながら、いうまでもなく麻酔性ガスは生体にとって有毒であり、さらには地球温暖化係数が炭酸ガスの数十倍と極めて大きいなど、環境への影響も懸念されるため、現在では、麻酔性ガスを無害化または回収し、残った処理済みのガス分(空気)を大気中に放出するようになっている。
【0003】
麻酔性ガスを含むガスを無害化処理するものとして、例えば特許文献1記載の余剰麻酔性ガスの処理装置がある。この余剰麻酔性ガスの処理装置は、揮発性麻酔剤と亜酸化窒素を含む余剰麻酔性ガスを、吸着剤が充填された吸着筒に導入し、余剰麻酔性ガス中に含まれる揮発性麻酔性液を吸着除去し、次いでこのガスを亜酸化窒素分解触媒が充填された触媒層に導入し、亜酸化窒素を窒素と酸素に分解するというものであり、手術室から排出される揮発性麻酔性ガスと亜酸化窒素を含む余剰麻酔性ガスを処理することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−172171
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の余剰麻酔性ガスの処理装置は、病院の手術室から少量ずつ徐々に排出される余剰麻酔性ガスを連続的に処理するものであって、例えば小動物の殺処分に使用され、殺処分の度ごとに処分器から排出される多量の麻酔性ガスを含むガスをバッチ的に処理するという条件下においてそのまま使用することには以下のような問題がある。
すなわち、小動物の殺処分に使用される麻酔性ガスは、必ずしも小動物を一時的に眠らせるだけが目的ではなく、場合によっては炭酸ガスなどの窒息ガスを使用せずに麻酔性ガスだけで殺処分する場合もあり、上記したように人に対し使用するものと比べて濃度が高い。
【0006】
しかも、殺処分は、各動物管理センターにおいて、一日あたり4〜5回程度行われており、この条件で麻酔性ガスを含むガスの処理を行うとすると、麻酔性ガスを含むガスを処分器(殺処分室)から完全に抜き取り、麻酔性ガスの回収を殺処分の回数と同じ4〜5回行わなければならない。つまり、各殺処分に要する一連の作業の作業性を考慮すると、殺処分が行われるごとに使用される麻酔性ガスの回収は、一回分を通常15分、長くても30分程度の短い時間で行わなければならないことになる。
【0007】
しかしながら、上記余剰麻酔性ガスの処理装置は、麻酔性ガスを吸着剤による吸着と触媒による分解により処理する構造であり、濃度が低くて比較的少量の麻酔性ガスの処理を特に時間的な制限もなく行うものである。麻酔性ガスを吸着剤による吸着と触媒による分解により処理する構造は、回収率には優れているけれども処理速度は遅い。このため、この装置が、上記小動物の殺処分に使用される高濃度で多量の麻酔性ガスを含むガスを短時間で処理できるような能力を備えるためには、大型で能力が大きい機器が必要になり、装置全体の占有スペースが大きくなるだけでなく、莫大なコストがかかる。
【0008】
そこで本発明の目的は、動物管理センターなどにおいて小動物の殺処分に使用され、処分器(殺処分室)からバッチ的に、かつ多量に排出される高濃度の麻酔性ガスを含む被処理ガスであっても、比較的小さな規模の装置で効率よく短時間で無害化処理することができる麻酔性ガス回収装置及び麻酔性ガスの回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、小動物を殺処分する処分器から送られる、麻酔性ガスを含む被処理ガスから麻酔性ガスを回収する装置であって、
処分器から送られる被処理ガスを貯留する貯留手段と、被処理ガスから麻酔性ガスを液体として回収すべく、前記貯留手段から送られる被処理ガスを冷却する凝縮手段とを備えている、麻酔性ガス回収装置である。
【0010】
本発明の麻酔性ガス回収装置は、凝縮手段で被処理ガスが冷却されて麻酔性ガスが液体となった残りのガス分を処分器へ返送し循環させる手段を備えているのがより好ましい。
【0011】
本発明の麻酔性ガス回収装置は、凝縮手段で被処理ガスが冷却されて麻酔性ガスが液体となった残りのガス分に含まれている麻酔性ガスを吸着する吸着手段を備えているのがより好ましい。。
【0012】
本発明は、小動物を殺処分する処分器から送られる、麻酔性ガスを含む被処理ガスから麻酔性ガスを回収する装置であって、
処分器から送られる被処理ガスを貯留する貯留器と、
該貯留器から送られる被処理ガスから麻酔性ガスを液体として回収すべく被処理ガスを冷却する凝縮装置と、
該凝縮装置で凝縮した液分を回収する回収容器と、
前記凝縮装置に送る冷却液をつくる冷凍機と、
被処理ガスが前記凝縮装置で冷却された後のガス分に含まれている麻酔性ガスを吸着する吸着器と、
該吸着器に送られるガス分を加温する加温器と、
前記吸着器で吸着された麻酔性ガスを取り出して貯留器へ返送する手段と、
を備えている、麻酔性ガス回収装置である。
【0013】
本発明は、小動物を殺処分する処分器から送られる、麻酔性ガスを含む被処理ガスから麻酔性ガスを回収する方法であって、
処分器から送られる被処理ガスを一旦貯留して麻酔性ガスの濃度を平均化し、この被処理ガスを冷却して麻酔性ガスを液体として回収する、麻酔性ガスの回収方法である。
【0014】
特許請求の範囲及び明細書にいう被処理ガスとは、空気または二酸化炭素などのガスと麻酔性ガスを混合したガスであって、麻酔性ガスの回収を行う前のガス、または回収過程にあるガスの意味である。
回収する対象となる麻酔性ガスとしては、例えばイソフルラン(1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、セボフルラン(フルオロメチル−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチルエーテル)、エンフルラン(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル ジフルオロメチルエーテル)、デスフルラン(1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、等のフルオロエ−テル類であるが、これらに限定はされない。
【0015】
貯留手段(貯留器)としては、例えば常圧タイプのチャンバを使用してもよいが有圧(圧縮)タイプのチャンバを使用することもできる。また、両方のチャンバを併用することもできる。有圧タイプのチャンバを使用する場合、処分器からの排気ガス量と同調するためには、大きな圧縮機が必要となる。
処分器の使用圧力は大気圧程度でありその変動幅も小さいため、常圧タイプである水封式のチャンバを採用するのが好ましい。
【0016】
凝縮手段(凝縮装置)としては、例えば冷凍機から供給される冷却液を熱交換室内に配した流通路に流通させ、被処理ガスを流通路に触れるように流通させて熱交換を行い冷却する構造、あるいはフロンまたはフロン代替ガスなどを熱交換室内に配した流通路に流通させ、潜熱を利用して熱交換を行い冷却する構造などであるが、これらに限定されるものではない。
また、吸着器の吸着剤としては、例えば活性炭、ゼオライト、シリカ、メソポーラスシリカ、アルミナなどが好適に使用可能であるが、これらに限定はされない。
【0017】
(作用)
本発明に係る麻酔性ガス回収装置の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0018】
動物管理センターにおいて、処分器(1a,1b,1c)内で小動物の殺処分が終了すると、排気ブロワ(91)などによって麻酔性ガスを含む被処理ガスが処分器(1a,1b,1c)から排気され、麻酔性ガス回収装置の貯留器(2,2a)へ送られる。
貯留器(2,2a)では、貯留された被処理ガス中の麻酔性ガスの濃度が平均化する。
被処理ガスは貯留器(2,2a)から凝縮装置(3)へ送られる。凝縮装置(3)においては、冷凍機(7)でつくられた冷却液を使用して被処理ガスを冷却し、麻酔性ガスの飽和濃度を下げることによって麻酔性ガスを凝縮させ、液分を得て被処理ガスから分離し回収する。
【0019】
凝縮装置(3)で被処理ガスが冷却されて麻酔性ガスが液体となった残りのガス分は吸着器(5)へ送られる。吸着器(5)に送られるガス分は、麻酔性ガスの吸着を効率よく行うため加温器(96)により加温される。吸着器(5)では、ガス分に残留している微量の麻酔性ガスが吸着剤などによって吸着される。吸着された麻酔性ガスは、吸引などによって吸着器(5)から取り出され、貯留器(2,2a)へ返送されて上記流れで同様に処理される。
【0020】
また、凝縮装置(3)で被処理ガスが冷却されて麻酔性ガスが液体となった残りのガス分が処分器(1d)に返送されるものは、微量の麻酔性ガスが残留しているガス分を処分器(1d)内の被処理ガスと混合することにより、凝縮装置(3)で一度処理されただけの麻酔性ガスの除去が未だ十分でないガス分を大気中へ排出することがないようにして、大気の汚染防止に寄与できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る麻酔性ガス回収装置によれば、被処理ガスから麻酔性ガスを液体として回収すべく、貯留手段(貯留器)から送られる被処理ガスを冷却する凝縮手段(凝縮装置)を備えており、従来のように麻酔性ガスを吸着剤による吸着と触媒による分解により処理するものと比較して迅速で効率的な回収が可能である。したがって、小動物の殺処分に使用され、処分器からバッチ的に、かつ大量に排出される高濃度の麻酔性ガスを含む被処理ガスであっても、比較的小さな規模の装置で効率よく短時間で無害化処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を図に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の麻酔性ガス回収装置の第1実施形態の説明図、
図2は麻酔性ガス回収装置を構成する凝縮装置の断面説明図である。
【0024】
麻酔性ガス回収装置Aは、図1に示すように、貯留器である水封チャンバ2、有圧チャンバ2a、凝縮装置3、回収容器4、吸着器5、クーリングタワー6、冷凍機7、温水器8を備えている。麻酔性ガス回収装置Aには、小動物を殺処分する処分器1a、1b、1cから、殺処分が終了するごとに、使用された麻酔性ガスが送られる。
【0025】
処分器1a、1b、1cは水封チャンバ2と通じており、水封チャンバ2と有圧チャンバ2aの間の経路中には、圧縮機91が設けられている。水封チャンバ2は、ほぼ常圧で被処理ガスを貯留するものである。有圧チャンバ2aは、被処理ガスを圧縮して貯留するものである。被処理ガスは、水封チャンバ2と有圧チャンバ2a内で一時的に貯留されることにより麻酔性ガスの濃度を平均化することができる。
【0026】
有圧チャンバ2aと凝縮装置3の間の経路中には、圧縮機92、冷却器93、94が設けられている。圧縮機92は、凝縮装置3へ送られる被処理ガスを例えば0.5〜0.7MpaG(本実施の形態では0.6MpaGに設定)まで昇圧させる。また、冷却器93、94は、凝縮装置3へ送られる被処理ガスを所要温度まで冷却する。
【0027】
凝縮装置3は、被処理ガスが流通する熱交換室30を有し、熱交換室30の下部には被処理ガスを導入するガス導入部31が設けられ、上部には処理されたガス分を導出するガス導出部32が設けられている。また、熱交換室30には、冷凍機7から延長された冷却管33が上部側から導入され、冷却管33はコイル状に巻かれて(冷却管33の間には通気可能な隙間が形成されている)熱交換室30の下部から外部へ導出され、冷凍機7へ返送されている。熱交換室30の下部には、貯留部34が設けられている。
【0028】
凝縮装置3においては、冷凍機7により冷却された冷却液を冷却管33によって内部に循環させ、熱交換室30内において被処理ガスを所要温度(例えば-10〜0℃)まで冷却することができる。これにより、凝縮装置3では、平均濃度2〜5%の麻酔性ガスを飽和濃度0.15%前後まで一気に下げることができ、これによる麻酔ガスの回収率は95%以上になる。なお、凝縮装置3の入口濃度は何ら規制されることはなく、安定した運転が可能である。
【0029】
凝縮装置3により捕捉された麻酔性ガス(水分を含むが自然に分離する)は麻酔性液となり、凝縮装置3の底部に溜まり、有圧チャンバ2aで回収される麻酔性液と共に回収容器4に移される。
なお、クーリングタワー6から冷凍機7につながる経路には、上記冷却器93に冷水を送って戻る経路がつながっている。
【0030】
凝縮装置3と吸着器5の間の経路には、自動バルブ95、加温器96が設けられている。自動バルブ95は、凝縮装置3における被処理ガスの圧力が0.5〜0.7MpaGとなるように圧力を検出して保持し、その圧力を超えた場合、超えた分だけ後工程の吸着器5に送るようになっている。また、加温器96と吸着器5には、温水器8から被処理ガスを加温するための温水が循環するように送られる。
【0031】
吸着器5は、凝縮装置3から上記のように圧力オーバーフローした低濃度(0.2%以下)の麻酔性ガスを含むガス分を吸着剤によりさらに極限(0.05%以下)まで吸着するもので、吸着剤として活性炭を使用している。なお、吸着器5は二基設けられており、ガス分を並列処理するようになっている。吸着器5は、ガス中から特定のガスを吸着して除去する一般のPSA(Pressure Swing Adsorption)方式のガス発生装置と同等のものであるので、構造についての詳細な説明は省略する。なお、後述する実施形態2の装置のように、吸着器5を設けない構造とすることもできる。
【0032】
なお、麻酔性ガスは地球温暖化係数が炭酸ガスの数十倍ときわめて大きく、例え微量であっても大気中に放出しないことが望ましい。凝縮装置3の0.5〜0.7MpaGの圧力をオーバーした麻酔性ガスを含むガス分は、吸着器5を通過する過程で麻酔性ガスだけが優先吸着され、極微量(0.05%以下)の麻酔性ガスを含むガス(空気)となって大気中に放出される。
【0033】
吸着器5の吸着効率を高めるためには保圧(0.2〜0.5MpaG)が必要であるが、吸着器5に導入されるガス分は、凝縮装置3の0.5〜0.7MpaGの圧力をオーバーしたものであるため、圧縮機なども必要なく、何ら動力も必要ないので、制御弁で圧力を保つことができる。
吸着器5で吸着された麻酔性ガスは、圧縮機97や真空ポンプによる負圧で吸引され、有圧チャンバ2aに戻され、循環される。
なお、麻酔性ガスを含む被処理ガスまたは処理後のガス分が通る経路には、チェックバルブ(逆止め弁:符号省略)が要所に設けられており、被処理ガスなどの逆流を防いでいる。
【0034】
(作用)
麻酔性ガス回収装置Aの作用を説明する。
(1)処分器1a、1b、1c内の麻酔性ガスを含む被処理ガスは、それぞれの処分器で殺処分が終了するごとに圧縮機91で抜き取られ、水封チャンバ2へ送られる。処分器1a、1b、1cから排出される麻酔性ガスの濃度は、約20〜0%(方式によっては、約5〜0%)程度の範囲で変化する。
なお、処分器1a、1b、1cの圧力変動は最低限(±0.5Kpa:±50mmAq)に抑えることが好ましい。また、処分器1a、1b、1cからの通常の排気時間(4〜7分程度)に合わせて処理しようとすると、圧縮機92や凝縮装置3の能力を大きくしなければならず、コスト、占有スペースの点で問題を生じる。殺処分のインターバルは30分程度であるので、処理時間はこれに合わせればよく、能力を抑えることができる分だけ設備も安価に小さくできる。
【0035】
(2)水封チャンバ2に一時貯留された被処理ガスは、水封チャンバ2内で濃度が平均化する。水封チャンバ2内の被処理ガスは、圧縮機91によって有圧チャンバ2aへ送られて所要圧力で圧縮されて貯留される。これにより、比較的多量の被処理ガスを貯留することが可能である。また、有圧チャンバ2aでは、麻酔性ガスが結露などによって一部回収される。
(3)有圧チャンバ2a内の被処理ガスは、圧縮機92によって凝縮装置3側へ送られる。被処理ガスは、凝縮装置3側へ送られる途中、冷却器93と冷却器94により所定の温度に冷却される。
【0036】
(4)被処理ガスが凝縮装置3に導入されると、被処理ガスが冷却され、飽和濃度が下がり、被処理ガスに所要の濃度で含まれる麻酔性ガスが液化し、貯留部34で麻酔性液として回収される。そして、被処理ガスが処理された後の十分に冷却されているガス分は、外部の導入経路にある上記冷却器94へ返送され、被処理ガスの冷却のために利用される。
【0037】
(5)凝縮装置3で回収した麻酔性液は、上記有圧チャンバ2aで回収された麻酔性液と共に回収容器4で回収され、麻酔性液を再利用する工程へ送られる。
(6)凝縮装置3で冷却処理されながら凝縮装置3から出るガス分のうち、例えば0.5〜0.7MpaGの圧力を超えた分(圧力的オーバーフロー)は、自動バルブ95を通り抜けて吸着器5側へ送られる。また、上記(4)の工程で冷却器94において熱交換に利用されたガス分も自動バルブ95へ送られ、上記と同様に所定の圧力を超えた分は吸着器5側へ送られる。
【0038】
(7)凝縮装置3によって被処理ガスが処理されることによって生じた、ごく僅かではあるが麻酔性ガスを含むガス分は、加温器96によって、麻酔性ガスの吸着効率がよい適当な温度に加温されて吸着器5へ送られる。吸着器5と加温器96には、温水器8から所定の温度の温水が供給されている。また、吸着器5と加温器96から出た温水は温水器8に戻り循環する。
【0039】
(8)吸着器5に導入されるガス分にごく僅かに含まれる麻酔性ガスが吸着器5の吸着剤によって吸着される。吸着剤で吸着された麻酔性ガスは、圧縮機97の負圧によって吸着剤から取り出され、有圧チャンバ2aへ返送され、凝縮装置3や吸着器5を通る循環処理経路に乗って最終的には回収される。
(9)吸着器5の吸着処理で残ったガスは麻酔性ガスを含まないか、極めて微量しか含まないので、大気中に放出される。
【0040】
(10)麻酔性ガス回収装置Aが停止した後の装置内に残った麻酔性ガスを含んだ被処理ガスは、凝縮装置3内のガス及び吸着器5内のガスと共に有圧チャンバ2aに戻される。これは、施設の休日など使用状況を考えて数日以上運転が行われない場合を想定して設定されているもので、その間の漏れや誤操作などにより麻酔性ガスが大気中に放出されることを防止し、さらには性能の低下につながる麻酔性ガスによる装置内部の劣化を防止する。つまり、麻酔性ガス回収装置Aにおいては、大気中へ放出されるガスは麻酔性ガスを回収した後のものに限定されることになる。
【0041】
麻酔性ガス回収装置Aは、処分器1a、1b、1cから排出される麻酔性ガスに対しては98%以上回収する能力を有しているが、処分器1a、1b、1cに注入された全麻酔性ガスに対しては、殺処分された小動物の体内、体表に残留するものがあるために、85±3%程度の回収率となる。
【実施例2】
【0042】
図3は本発明の麻酔性ガス回収装置の第2実施形態の説明図である。
なお、本実施形態では、図3において上記麻酔性ガス回収装置Aと同等箇所に同一符号を付して示し、構造について重複する説明は基本的に省略する。
【0043】
麻酔性ガス回収装置Bは、上記麻酔性ガス回収装置Aと次の点で相違する。すなわち、麻酔性ガス回収装置Bには吸着器5は設けられておらず、また、凝縮装置3によって被処理ガスから麻酔性ガスが除去された後のガス分は、処分器1dへ返送され、循環しながら処理されるようになっている。
【0044】
図3に示すように、処分器1dから排出された被処理ガスは、冷却器(熱交換器)94へ送られ、冷却されて凝縮装置3へ送られる。凝縮装置3には冷凍機7から冷却液が送られる。凝縮装置3によって被処理ガスから除去された麻酔性ガスは、分離器98を介し回収容器4に集められる。
【0045】
また、凝縮装置3によって被処理ガスから麻酔性ガスが除去された後の十分に冷却されたガス分は、分離器98を介して上記冷却器94へ送られ、被処理ガスを冷却するために利用される。このガス分は、さらに復温器99によって適温まで加温され、処分器1dへ返送されるか、大気中へ放出される。なお、返送と放出の切換はバルブの操作によって行うことができるが、大気への放出は処理作業終了後に行う。
【0046】
麻酔性ガス回収装置Bは、上記のように凝縮装置3で被処理ガスが処理された後のガス分が処分器1dに返送することができるので、微量の麻酔性ガスが残留しているガス分を処分器1d内の被処理ガスと混合することにより、凝縮装置3で一度処理されただけの麻酔性ガスの除去が未だ十分でないガス分を大気中へ排出することがないようにして、大気の汚染防止に寄与できる。
【0047】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示されている実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の麻酔性ガス回収装置の第1実施形態の説明図。
【図2】麻酔性ガス回収装置を構成する凝縮装置の断面説明図。
【図3】本発明の麻酔性ガス回収装置の第2実施形態の説明図。
【符号の説明】
【0049】
A 麻酔性ガス回収装置
2 水封チャンバ
2a 有圧チャンバ
3 凝縮装置
30 熱交換室
31 ガス導入部
32 ガス導出部
33 冷却管
34 貯留部
4 回収容器
5 吸着器
6 クーリングタワー
7 冷凍機
8 温水器
91 ブロワ
92 圧縮機
93 冷却器
94 冷却器
95 自動バルブ
96 加温器
97 圧縮機
1a、1b、1c 処分器
B 麻酔性ガス回収装置
98 分離器
99 復温器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小動物を殺処分する処分器(1a,1b,1c,1d)から送られる、麻酔性ガスを含む被処理ガスから麻酔性ガスを回収する装置であって、
処分器(1a,1b,1c,1d)から送られる被処理ガスを貯留する貯留手段(2,2a)と、
被処理ガスから麻酔性ガスを液体として回収すべく、前記貯留手段(2,2a)から送られる被処理ガスを冷却する凝縮手段(3)と、
を備えている、
麻酔性ガス回収装置。
【請求項2】
凝縮手段(3)で被処理ガスが冷却されて麻酔性ガスが液体となった残りのガス分を処分器(1d)へ返送し循環させる手段(98)を備えている、請求項1記載の麻酔性ガス回収装置。
【請求項3】
凝縮手段(3)で被処理ガスが冷却されて麻酔性ガスが液体となった残りのガス分に含まれている麻酔性ガスを吸着する吸着手段(5)を備えている、請求項1または2記載の麻酔性ガス回収装置。
【請求項4】
小動物を殺処分する処分器(1a,1b,1c,1d)から送られる、麻酔性ガスを含む被処理ガスから麻酔性ガスを回収する装置であって、
処分器(1a,1b,1c,1d)から送られる被処理ガスを貯留する貯留器(2,2a)と、
該貯留器(2,2a)から送られる被処理ガスから麻酔性ガスを液体として回収すべく被処理ガスを冷却する凝縮装置(3)と、
該凝縮装置(3)で凝縮した液分を回収する回収容器(4)と、
前記凝縮装置(3)に送る冷却液をつくる冷凍機(7)と、
被処理ガスが前記凝縮装置(3)で冷却された後のガス分に含まれている麻酔性ガスを吸着する吸着器(5)と、
該吸着器(5)に送られるガス分を加温する加温器(96)と、
前記吸着器(5)で吸着された麻酔性ガスを取り出して貯留器(2,2a)へ返送する手段と、
を備えている、
麻酔性ガス回収装置。
【請求項5】
小動物を殺処分する処分器から送られる、麻酔性ガスを含む被処理ガスから麻酔性ガスを回収する方法であって、
処分器(1a,1b,1c,1d)から送られる被処理ガスを一旦貯留して麻酔性ガスの濃度を平均化し、この被処理ガスを冷却して麻酔性ガスを液体として回収する、
麻酔性ガスの回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−142685(P2008−142685A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336424(P2006−336424)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(394006048)福岡酸素株式会社 (3)
【Fターム(参考)】