説明

黄色ブドウ球菌アレルゲン

本発明は、ヒト試料において黄色ブドウ球菌に対する感染を特定するための、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または当該タンパク質の天然由来の断片もしくは変異体の使用を開示する。さらに具体的には、患者の試料において、配列番号1に特異的なIgE分子が検出される。多数のアトピー性皮膚炎患者が配列番号1に特異的なIgEを有している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、黄色ブドウ球菌に由来する新規なアレルゲン、ならびに、当該新規なアレルゲンの診断および治療における使用に関する。
【0002】
アトピー性皮膚炎(“AD”: atopic dermatitis)は、最大で20.5%の子供、および、2.1%〜8.8%の成人に影響を及ぼしている慢性炎症性皮膚疾患である。ADの臨床症状は一定ではなく、皮膚乾燥や湿疹性の病変から、重篤な掻痒や苔癬化変形(lichenified flextures)まで、多種多様である。ADの患者の約80%が血清IgEのレベルの上昇を示すこと、および、IgEのレベルがしばしば疾患の重症度と相関があること、が報告されている。ADは、他のアトピー性疾患(例えば、喘息およびアレルギー性鼻炎)と関連するので、ADの患者は、特異的なIgE抗体を有するとともに、広範囲の食品および吸入性アレルゲンに対してアレルギー症状を示すことが多い。
【0003】
ADを患っている個々の患者は、皮膚の細菌性感染、ウイルス性感染、および、真菌症に対して高い易罹患性を示す。ADの主な皮膚感染症は黄色ブドウ球菌によって引き起こされ、黄色ブドウ球菌は、患者の29%〜100%に影響を及ぼす。ADの患者の皮膚には、黄色ブドウ球菌が、健常人の皮膚と比較して100倍〜1000倍の高い密度(約10cfu/ml)で存在する。健康な人であれば、黄色ブドウ球菌の保菌率はわずか5%〜8%であり、通常、黄色ブドウ球菌はムコサール腔(mucosal cavities)に集中している。黄色ブドウ球菌によるコロニー形成の密度および頻度は、湿疹の重症度と深い相関がある。さらに、黄色ブドウ球菌による皮膚感染症を抗ブドウ球菌性の抗生物質を用いて治療すれば、細菌数および疾患の臨床的重症度が、大幅に低下する。
【0004】
1980年代の初頭以来、複数のグループによって、黄色ブドウ球菌のタンパク質に対して特異的なIgEが、ADの患者の血清中に検出されることが報告されている。ただし、全てのADの患者が黄色ブドウ球菌に対するIgEを生成したわけではない。抗黄色ブドウ球菌IgEの検出可能なタイターは、ほとんどが、中程度ないし重篤なADの患者において観察されている。黄色ブドウ球菌に重複感染(superinfected)しているAD患者は、重複感染していない患者と比較すると、総IgEレベルおよび特異的抗ブドウ球菌性IgEレベルがさらに高い。AD患者は黄色ブドウ球菌の細胞タンパク質および細胞壁成分の双方に対する特異的IgEを生成することが、同時期に複数のグループによって報告されている。
【0005】
一般に、細菌感染症を治療するために使用される標準的な診療は、抗生物質の投与を用いる。黄色ブドウ球菌の場合、黄色ブドウ球菌は、1961年のメチシリンに始まって、続いてペニシリン、さらに最近のバンコマイシンなどの抗生物質に対する耐性を着実に獲得してきている。黄色ブドウ球菌が複数の抗菌クラスに対する耐性を獲得した結果、黄色ブドウ球菌による感染が広く発生し、黄色ブドウ球菌に対するワクチンの開発の要因となった。いくつかのワクチンがすでに生成されており、臨床治験段階にある。これらのワクチンのうち、第III段階試験に入った2つのワクチンは、この段階でどちらも失敗した(Schaffer et al., 2008)。黄色ブドウ球菌に対して有効なワクチンの生成には、異なる特性を有する複数の抗原の混合物を利用する必要があると考えられる。
【0006】
黄色ブドウ球菌株NCTC8325 2821では、核酸のコード配列(coding sequence)が特定済みである(EP 1 829 892を参照)。これらの特定済みのコード配列は、分析対象となった黄色ブドウ球菌株の全ゲノムを反映している。ただし、これらのコード配列にコードされているどのポリペプチドがどの様な機能を有するのかは、一切明らかになっていない。EP 1 829 892からは、これらのポリペプチドが黄色ブドウ球菌細胞においてどのような特異的機能を果たすのか、および、これらのポリペプチドが細胞中のどこに位置しているのかを推定することができない。
【0007】
US2006/0127411には、黄色ブドウ球菌スーパー抗原(エンテロトキシン)B(SEB)の断片が開示されている。これらのペプチドは、IgE抗体に結合することができる。スーパー抗原はプロセス(processed)を受けて抗原結合部位に提示されるのではなく、MHC−II複合体をT細胞受容体へ架橋結合させる(US2006/0127411の段落[0007]を参照)。特に、US2006/0127411が開示するSEB断片は、T細胞の増殖を誘導しない。
【0008】
Oliveira AM et al.(Vet. Immunol. Immunopathol., 113, (2006):64-72)では、黄色ブドウ球菌およびPsoroptes ovisに対する、ヒツジにおける免疫応答について研究している。Oliveira AM et al.は、Psoroptes ovisに感染したヒツジが、分子量が約36kDa、38kDa、50kDa、および、65kDaの黄色ブドウ球菌抗原に対する免疫応答を誘導できることを見出した。ただし、Oliveira AM et al.は、これらの特定の分子量を有するポリペプチドに対して、特定のポリペプチド配列または機能を対応させることができなかった。当該論文には配列情報について何も記載されていないので、特定のポリペプチドを上記各分子量のどれかに対応させることもできない。
【0009】
本発明の1つの目的は、ADを患う患者、または、黄色ブドウ球菌に対する感染によってADに罹るリスクのある患者に対する診断および/または治療戦略を改善するための手段を提供することである。
【0010】
したがって、本発明は、ヒト試料における黄色ブドウ球菌の感染を特定するための、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または当該タンパク質の天然由来の断片もしくは変異体の使用を提供する。
【0011】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質は、黄色ブドウ球菌から得られるタンパク質である。このタンパク質は「2C2」と記載されてきた。配列番号1に記載の2C2タンパク質の変異体に対応するcDNAコーディングの完全長のオープンリーディングフレームは、1698個の塩基対である(配列番号2)。このcDNAは565個のアミノ酸タンパク質へ翻訳され、理論上の分子量は65.8kDa、pIは8.72である。2C2は、アミノ酸4〜442に対応するフィブリノーゲン結合タンパク質Aドメイン(FbpA)と、アミノ酸447〜533に対応するDUF814と称するもう1つのドメイン(機能が未知のドメイン)との、2つのドメインを有している。
【0012】
黄色ブドウ球菌株において病原性タンパク質および耐性タンパク質を全ゲノムにわたって探索した結果、このタンパク質の天然由来の変異体(ここでは一般に「2C2」という用語で呼称する)が特定された(表Iを参照)。2C2は、病原性細菌および臨床的に関連する細菌から得られる何れの既知のタンパク質とも、アミノ酸配列の高い類似性を有していない。これが既知のタンパク質に対する低い交叉反応性を保障し、それ故に、2C2は黄色ブドウ球菌の感染に対する有用かつ特異的なマーカーとなる。このタンパク質は、アレルゲン活性をさらに有している。また、ADを患う患者の血清は2C2に対する特異的IgE分子を含有し、これが、このタンパク質のAD診断マーカーとしての有用性を証明している。さらに、2C2は、ヒトおよび哺乳類において、投与量に依存してT細胞の増殖を刺激し、アレルゲン活性を誘導することができる。
【0013】
2C2は黄色ブドウ球菌に対して特異性を有するとともに、固有でもあるので、複合体試料(例えばヒトの血液試料または組織試料)中でも黄色ブドウ球菌を検出することができる。ここで使用する2C2は、配列番号1のタンパク質および当該タンパク質の天然由来の全ての変異体(例えば、表Iに規定した変異体)に関連する。したがって、配列番号1の変異体におけるアミノ酸の交換(exchanges)は、好ましくは、88、102、111、169、171、211、216、244、258、289、302、441、558、および、565の位置である。天然由来の変異体の核酸およびアミノ酸配列の存在は、例えばPCRや配列決定などの標準的な方法で、単離物を含有する黄色ブドウ球菌において容易に検出および分析可能である。
【0014】
2C2の天然由来の断片も、本発明の目的に適している。これらの断片は、例えば抗体結合などの通常の検出法で適切な検出ができる程度に十分に大きい(5kDaを超える、好ましくは10kDaを超える)。これらの断片(例えば17kDaの断片および22kDaの断片(kDaはSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で決定され、K439〜S565(17kDa)およびK381〜S565(22kDa)に対応する))は安定している(安定していなければ、該断片は、例えばELISAなどの普通の検出法では天然の単離物(例えば、ヒト患者の皮膚または粘膜)において検出不可能である)。したがって、これらの断片は、マーカーペプチドとして特に適している。「天然由来」とは、黄色ブドウ球菌の単離物において、組換えによって(原核生物である宿主細胞または真核生物である宿主細胞において)発現する2C2培養物において、または、黄色ブドウ球菌に感染した患者において、(例えば、ポリクローナルな抗2C2性抗体を用いた「最先端」のELISAによって)検出可能な、任意の完全長の2C2ポリペプチドまたは断片に関連する。
【0015】
本発明は、試料における2C2(つまり、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または当該タンパク質の天然由来の変異体)または2C2の天然由来の断片の存在または非存在について試験を実施する、黄色ブドウ球菌の感染を特定するための試料を分析する方法に関する。
【0016】
現在、細菌(特に、ヒトの臨床試料において特定される細菌)は、主に培養技術によって特定されるが、これには時間がかかる。例えば、血液の培養物から細菌を検出するためには数日かかり、このことは、患者が先に死亡してしまう可能性があることを意味している。つまり、治療を盲目的に開始せざるを得ないのである。一方、感染の場合には、生命を救い、特にADの患者に役立つ(なぜならば、黄色ブドウ球菌による皮膚コロニーの形成を患う患者は抗生物質療法の利点を享受できるからである)適切な抗菌治療法の選択は正しい診断によって可能になるのであるから、正しい診断の重要性は明らかである。
【0017】
本発明によれば、このような試料における黄色ブドウ球菌の存在または非存在の判定は、試料中の細菌の培養を必要とせず、標準的な試験法(例えば、ELISAまたはPCR)を用いて非常に短時間で実施可能である。また、タンパク質2C2、その断片、または、これらのポリペプチドをコードする核酸に基づいたアッセイには、培養を実施するために生細菌が必要であるというバイアスによる制約がない(試料中の全ての細菌がこれ以上増殖可能ではない場合には偽陰性の結果が、また、培養物が汚染されていれば偽陽性の結果が出る)。
【0018】
配列番号2および配列番号1に記載のDNAおよびアミノ酸配列に基づいて、本発明は、さらに、例えば、黄色ブドウ球菌の感染を特定するためのPCRアッセイ、つまり、サンドイッチELISAアッセイを提供する。
【0019】
本発明に係る適切なELISAでは、2C2タンパク質(または、その断片)は、2C2に対する特異的な抗体を用いて生物学的試料から捕捉され、2C2の別のエピトープを認識するもう1つの抗体、または、以前に起きた結合イベントに特異的な抗体を用いて検出可能である。
【0020】
各患者の試料における2C2またはその断片の存在(または、このようなポリペプチドをコードする核酸の存在)は、この患者の体内(または、皮膚上)が、黄色ブドウ球菌に深刻に感染していることを示唆している。したがって、ヒト試料は、2C2の存在または非存在、または、その天然由来の断片の存在または非存在を調べる試験を行う好ましい試料である。
【0021】
2C2の核酸の検出は、例えばPCR(例えば、非対称PCR、LATE−PCR(Linear−After−The−Exponential−PCR)、ヘリカーゼ依存性増幅、ホットスタートPCR、ライゲーション介在性PCR(Ligation−mediated PCR)、ミニプライマーPCR、MLPA(Ligation−dependent Probe Amplification)、マルチプレックスPCR、ネステッドPCR、定量PCR(Q−PCR)、RT−PCR、固相PCR、タッチダウンPCR(ステップダウンPCR)、または、PAN−AC)などの標準的な核酸試験によって可能である。
【0022】
したがって、本発明は、さらに、生物学的試料における黄色ブドウ球菌の核酸の存在または非存在を判定するためのキットであって、(a)2C2またはその一部をコードする少なくとも1つの核酸配列を増幅するための、少なくとも2つの合成核酸配列を含むプライマーのセットを包含し、上記キットに含まれる上記合成核酸配列のうちの少なくとも1つが、以下の(a)および(b)からなる群より選択されるキットを提供する。すなわち、(a)は適切なプライマー対である。ただし、上記複数のプライマーは、(i)配列番号2に記載の2C2遺伝子またはその相補的配列、または、(ii)黄色ブドウ球菌ゲノムプロジェクト(S. aureus genome projects)(Gill et al., Kuroda et al., Ohta et al., Diep et al., Baba et al., Holden et al., Herron-Olson et al.)から入手可能な2C2遺伝子またはその相補的配列の5’末端または3’末端の非コード領域のうちの少なくとも1つの10bp〜30bpの連続するヌクレオチドを包含する核酸配列である。(ここでは、5’末端方向または3’末端方向に最大で500bpまで、好ましくは最大で200bpまで、特に最大で100bpまで延びるヌクレオチド領域が、(B)において特に好ましい。また、上記複数のプライマーは、2C2遺伝子上の該プライマーまたはその5’または3’端の領域間に位置するヌクレオチド配列を重合(polymerising)するために使用可能である。(上記重合可能な2C2ヌクレオチド配列は、PCRによって検出可能であり、好ましくは、長さが最大で1000bpまで、より好ましくは最大で500bpまで、さらにより好ましくは最大で300bpまである。また、上記複数のプライマーを選択して(PCRによって)2C2の全長DNAを重合してもかまわない))。また、(b)はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に適した試薬である。好ましくは、上記キットは、以下の(c)および(d)をさらに包含する。すなわち、(c)は使用説明書であり、(d)は任意に包含される、黄色ブドウ球菌の存在または非存在を判定するためのポジティブコントロールおよび/またはネガティブコントロールであり、特に2C2またはその断片をコードするコントロール核酸である。適切なPCR試薬の例としては、PCR反応バッファー、Mg2+(例えば、MgCl)、dNTP、DNAポリメラーゼ(例えば、逆転写酵素や耐熱性DNAポリメラーゼ(例えば、Taqに関連するDNAポリメラーゼやPfuに関連するDNAポリメラーゼ))、RNase、PCR反応賦活剤または阻害剤、PCR反応モニタリング剤(例えば、二本鎖DNA色素(例えば、SYBR(登録商標)グリーン)、TaqMan(登録商標)プローブ、分子ビーコン、および、Scorpions(登録商標))、および、PCRグレードの水などがあげられる。
【0023】
本明細書中に記載したプライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイにおいて特に有用である。PCRは、DNA塩基配列のインビトロにおける増幅を行うための実際的なシステムである。例えば、PCRアッセイでは、熱安定性ポリメラーゼおよび約10個〜30個の塩基からなる2つのプライマーを使用する。なお、この2つのプライマーのうちの一方は、増幅される配列の1つの端部における(+)鎖に対して相補的であり、もう一方は、もう一方の端部において(−)鎖に対して相補的である。新たに合成されたDNA鎖は、次に同じプライマー配列に対して更なるテンプレートとして作用するので、プライマーのアニーリング、鎖の伸長、および、解離を連続して繰り返すことによって、所望の配列の急速かつ高度に特異的な増幅を実現し得る。また、PCRを使用して、DNA試料中の規定配列(defined sequence)の存在を検出してもかまわない。
【0024】
一例をあげれば、典型的なPCRアッセイは、増幅される2C2またはその5’末端および/または3’末端の領域(各鎖について1つ)をコードする標的DNAまたはその相補鎖の2つの領域と特異的かつ相補的にそれぞれ結合する2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーから開始し得る。これらを、過剰な量のデオキシヌクレオチド(dNTP)および耐熱性DNAポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)の存在下で(純粋である必要がない)標的DNAに付加してもかまわない。一連の温度サイクル(通常20回〜40回)において、標的DNAを繰り返し変性させ(約80℃〜100℃、例えば90℃で)、標的DNAをプライマーにアニーリングさせ(通常40℃〜65℃で)、プライマーから娘鎖(daughter strand)を成長させ(通常65℃〜80℃、例えば72℃で)、てもかまわない。娘鎖はそれ自身が次のサイクルのテンプレートとして作用するので、両方のプライマーに整合(matching)するDNA断片は、線形的に増幅されるのではなく、指数関数的に増幅される。標的DNAは、純粋である必要もなく、大量に存在する必要もない。したがって、PCRは、本発明によれば、臨床診断において特に適している。
【0025】
試料において2C2ヌクレオチドを特定するための他の好ましい試験としては、この試料の核酸と、2C2に特異的なプローブ(2C2またはその隣接領域をコードする標的核酸を特異的に認識するプローブ)と、をハイブリッド形成用試験管中でハイブリッド形成させることなどがあげられる。ただし、このプローブは、好ましくは、例えば磁気ビーズまたはマイクロアレイなどの固体表面に連結されている。
【0026】
これらの試験では、好ましくは、例えばビオチン、蛍光性分子、放射性分子、発色基質、化学発光マーカーなどの適切な標識を利用する。核酸をビオチン標識する方法は、蛍光性分子および放射性分子をオリゴヌクレオチドおよびヌクレオチドに導入する方法と同様に、当該技術分野において周知である。蛍光性標識、放射性標識、化学発光性標識、発色性標識を検出する方法も、その他のよく使用される標識の検出方法とともに周知である。簡潔に記すと、化学発光は、放射波長および強度によって、もっとも直接的に同定および定量可能である。ビオチンを用いる場合、ビオチンは、検出可能なマーカー(例えば酵素(例えば西洋ワサビのペルオキシダーゼ))に結合しているアビジンやストレプトアビジンなどによって検出される。ストレプトアビジンは、ビオチンに対して高い親和性にて結合し、結合していないストレプトアビジンは洗い流す。次に、西洋ワサビのペルオキシダーゼ酵素の存在を、過酸化物(peroxide)および適切なバッファーの存在下で、発光放射基質(luminescence-emission substrate)を用いて検出する。
【0027】
上述のように、黄色ブドウ球菌の感染の高速かつ高精度の診断は、非常に重要であり、特に、入院患者や免疫系が抑制されている患者(例えば、化学療法などを受けた患者、または、化学療法などを受けている患者)において重要である。
【0028】
2C2に対して特異的な抗体(または、その断片)の存在は、黄色ブドウ球菌にかつて感染したことを示唆している。
【0029】
したがって、本発明は、抗体を含有している試料において、2C2(配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または当該タンパク質の天然由来の変異体)または抗体(特にIgE)に結合し得る2C2の断片に対して特異的な抗体分子(特にIgE分子)を検出する方法であって、上記試料を2C2(配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または当該タンパク質の天然由来の変異体)またはその抗体に結合し得る断片と接触させ、その後、抗体分子のうちのどれかが、2C2(配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または当該タンパク質の天然由来の変異体)またはその抗体に結合し得る断片に結合したかどうかを分析する方法にも関する。上述のように、本発明に係るこの方法は、好ましくは、IgE分子(または、抗原に結合しているIgEの一部)を検出するために使用される、ただし、この方法を用いて、他の2C2結合分子を検出および単離することも可能である。具体的には、本発明によれば、例えば、個々の患者における黄色ブドウ球菌の免疫反応の特異性を分析するために(例えば、2C2ワクチンの接種後にTh1応答が誘導されたがどうかを分析するために)、他の抗体分子(特にIgG1、IgG2a、IgG4などのIgG)を検出することができる。本方法によれば、2C2に結合し得る抗体を含有する組成物を生成することも可能である。この方法は、抗2C2性IgEの組成物、または、(2C2またはその天然由来の断片を用いて標準的な手法で調製可能な)2C2に特異的なモノクローナル抗体の組成物の調製に特に適している。他方では、この設定、特に天然の受容体または低分子量(例えば、2000Da未満、1000Da未満、または、500Da未満)の2C2結合分子を利用することによって、天然の結合相手または合成された結合相手を特定および単離することもできる。
【0030】
本方法の好適な実施形態によれば、2C2(配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または当該タンパク質の天然由来の変異体)または抗体(特にIgE)に結合し得る当該2C2の断片が、固体の担体に固定された状態で提供され、そして、抗体(特にIgE)を含有する試料に接触させられる。この試料を固体の担体に接触させると、2C2に特異的な抗体(特にIgE)分子が試料中に存在すれば、固定されたポリペプチドに結合し、検出される。接触条件は、試料の特性および試料のスケール、さらにアッセイの特性に応じて容易に最適化可能である(例えば、マイクロアレイ検出であれば、接触時間は大規模ELISAに比べて短くてもよい。定性アッセイ(yes/no)の場合であれば、可能な結合イベントの最大数を確立しなければならない再現可能な定量アッセイ(reproducible quantitative assay)に比べて時間が短くてもかまわない)。
【0031】
好ましくは、上記固体表面は、結合イベントを(定性的に、および/または、定量的に)検出する前に、試料から分離される。したがって、本発明に係る方法の好適な実施形態では、抗体(特にIgE)を含有する試料は、接触後に、この固体表面から分離され、その後で、上記抗体(特にIgE)分子のうちの何れかが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、または当該タンパク質の抗体(特にIgE)に結合し得る断片もしくは変異体に結合したか否かを判定する分析が、試料から分離された状態の固体表面で実施される。
【0032】
本発明に係る方法によって、急性の黄色ブドウ球菌感染症の検出、さらに、2C2に対する感染者の免疫系の抗体産生の原因となった以前の感染の検出ができるようになる。黄色ブドウ球菌は病院における主要な病原体の1つであるので、急性感染症は、好ましくは、例えば免疫抑制状態が原因で感染したヒト患者の試料から病院で検出されるべきである。他方では、本発明によれば、抗2C2抗体とADとの関連性によって、ADが疑われる患者においてADを診断することが可能になる。これは、ADに特化した治療計画、または、より顕著な治療計画のいずれかを示唆している。ADの治療において、黄色ブドウ球菌感染の有無を早期に認識することは非常に有用である。なぜならば、早期に知ることによって、適切な抗菌治療が適用可能だからである。一方では、本発明に係る方法によって、AD患者を適切なサブグループに分類することも可能になる。したがって、本発明は、好ましくは、黄色ブドウ球菌のコロニーを有するAD患者を特定するために使用される。なぜならば、このような患者には特異的な療法を与えられるからである。また、黄色ブドウ球菌に重複感染していないAD患者の約10%が、必要としない余分な薬物療法を受けていると考えられる。
【0033】
したがって、本方法の好適な実施形態によれば、試料は、アトピー性皮膚炎(AD)に罹患している、または、罹患が疑われる(例えば、罹患のリスクを有する)患者から得られたものである。したがって、本発明に係る方法は、ヒト患者におけるアトピー性皮膚炎の診断に非常に適している。
【0034】
2C2もしくはその抗体へ結合し得る断片、または、抗2C2抗体が使用可能な、本発明に係る診断法の典型的な形態としては、放射性アレルゲン吸着試験(RAST)、ペーパーラジオイムノソルベント試験(PRIST)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、イムノラジオメトリックアッセイ(IRMA)、ルミネセンスイムノアッセイ(LIA)、ヒスタミン放出アッセイ、および、IgE免疫ブロット法などがあげられる。
【0035】
2C2およびその断片のIgE結合活性は、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、例えば、(例えば、以前の黄色ブドウ球菌感染によって)以前に2C2に曝露されたことがある個々の患者(つまりアレルギー患者)から得られる血清を用いて判定可能である。簡潔に記すと、試験を行う2C2またはその断片を、マイクロタイタープレートのウェルに塗布する。このウェルを洗浄およびブロッキングをした後、以前に黄色ブドウ球菌に曝露されたことのある(または、2C2で免疫化された)個々の患者の血清または血漿からなる抗体溶液を、ウェル中でインキュベートする。この血漿は、インキュベーションの前にIgGが除去されていてもかまわない。ただし、特異的な抗IgE抗体を使用するのであれば、除去が必ずしも必要なわけではない。標識済みの二次抗体をウェルに添加して、インキュベートする。そして、IgEの結合量を定量し、精製済みの2C2または精製済みの2C2断片によるIgEの結合量と比較する。
【0036】
あるいは、2C2断片の結合活性を、ウエスタンブロット解析によって判定してもかまわない。例えば、試験を行う断片を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法でポリアクリルアミドゲル上において泳動させる。そして、この断片をニトロセルロースに転写し、続いて、アレルギーを有する被験体から得られた血清を用いてインキュベートする。標識済み二次抗体を用いてインキュベーションを行った後に、IgEの結合量を判定し、定量する。2C2断片のIgE結合活性判定するために使用可能な別のアッセイは、競合ELISA(competition ELISA)アッセイである。簡潔に記すと、2C2と反応するIgEを有することが直接ELISAによって示された個々の患者から得られた血漿または血清を組み合わせることによって、IgE抗体のプールを生成する。このプールをELISA競合実験において使用して、2C2に対するIgE結合を、試験した断片と比較する。
【0037】
本発明に係る試験対象となる試料は、好ましくは、ヒトの皮膚または粘膜から得た試料、または、ヒトの血液、血漿、血清、または、リンパの試料である(後者の例は主に2C2に対する抗体を検出するためである。当該抗体を、例えば涙、鼻または気管支からの分泌物または体液(liquor)などの、他の生物学的試料にて検出してもかまわない)。ただし、具体的には、2C2タンパク質またはその天然由来の断片を、例えば、ヒトまたは動物の組織、糞便または尿の試料、食品試料、表面拭き取り試料などの、他の試料にて検出してもかまわない。具体的には、黄色ブドウ球菌中毒が大きな問題(例えば、食品に起因する嘔吐または下痢)であるので、臨床診断に加えて、食品分析が興味深い。このような中毒症状の原因を特定すること(黄色ブドウ球菌が原因なのか、または、例えばサルモネラなどの別の微生物が原因なのか)は、本発明に係る方法を含めた食品試料の分析で扱うべき重要な課題である。
【0038】
別の態様によれば、本発明は、単離された状態の2C2の天然由来の断片に関する。2C2は、試料中で検出可能な安定した小さなタンパク質断片を遊離(liberates)する。本発明に係る好ましい断片は、明細書中に記載するように検出および単離される、2C2のIgEに結合し得る断片である。
【0039】
このようなIgE結合性断片は、ADの診断およびワクチン接種との関連において特に重要であるが、他のアレルギー患者にとっても重要である。
【0040】
本発明は、新しいアレルゲン、つまり、本発明に係るタンパク質2C2をさらに提供する。このタンパク質は、本発明において単離された状態で初めて開示および提供される。黄色ブドウ球菌のゲノムデータベースにオープンリーディングフレームとして含まれてはいたが、その機能が今まで認識されておらず、特に、アレルゲンとして認識されておらず、個別化および単離された状態(例えば、調製、診断、または、科学的な方法においてアレルゲンとして使用するために適した溶液)で提供されたことも、当該タンパク質を産業的に利用可能にする機能を有して提供されたこともなかった。
【0041】
本発明に係る特に好ましい断片は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法における見かけ上の分子量が17kDaである断片、および、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法における見かけ上の分子量が22kDaである断片である。2C2を大腸菌にて組換えによって生成すると、これらの2つの断片は、発現プロセスにおいてただちに形成され、適切な検出が可能になる程度に安定しているように考えられる。これらの断片は、ヒトの患者から得られる2C2特異抗体(特に各種IgE)に対して特異的な結合親和性を示す。
【0042】
別の一実施形態によれば、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または当該タンパク質の天然由来の断片もしくは変異体と、薬学的に許容可能な担体とを含む薬学的組成物に関する。2C2タンパク質またはその天然由来の断片は、薬学的に許容可能な担体を用いて、個々の患者(特にヒト患者)に投与することを可能にする適切な形態で完成させることができる。
【0043】
使用する薬学的に許容可能な担体は、好ましくは、生理食塩水、植物油、ミネラルオイル、水性カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、または、水性ポリビニルピロリドンである。ただし、滅菌水も使用可能である。本発明の薬学的に使用可能な処方物は、少なくとも1つの薬学的に容認できる免疫賦活剤または賦形剤をさらに含む。好ましい免疫賦活剤としては、例えば、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシルアミノ酸エステル、リゾレシチン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、メトキシヘキサデシルグリセロール、および、プルロニックポリオールなどの界面活性物質;例えば、ピラン、硫酸デキストラン、ポリイノシン・ポリシチジン、カルバポールなどのポリアミン;例えば、ムラミルジペプチド、ジメチルグリシン、タフトシンなどのペプチド;油の乳濁液;例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムなどのミネラルゲル、および、免疫刺激錯体などがあげられる。上記免疫賦活剤は、例えば、ミョウバン、または、植物油、イソマンニドモノオレアート、および、アルミニウムモノステアレートを含有する組成物であってもかまわない。その他の好ましい免疫賦活剤としは、生体適合性を有するマトリクス物質の微小粒子またはビーズがあげられる。
【0044】
本発明の分子は、患者に対する抗原物質の曝露を延長し、こうすることによって、この患者を感染から長期間保護するために、微小粒子中またはマイクロカプセル中に組み込まれてもかまわない。上記免疫原をリポソーム中に組み込んでも、多糖類および/またはその他の重合体に接合させて、ワクチン処方において使用してもかまわない。したがって、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または当該タンパク質の天然由来の断片もしくは変異体と、薬学的に許容可能な担体とを含むワクチンにも関連する。2C2およびその天然由来の断片は、アレルゲン性を有し、機能的なT細胞エピトープを含有することが示されている。2C2が、健常なヒトにおいてもT細胞の増殖を誘導し、かつIgG抗体を誘導するということが、このタンパク質が一般にアトピーではない人に対しても使用可能であることを示している。また、本発明に係るポリペプチドは、可溶性および免疫原性を有する。本発明に係るワクチンは、好ましくは、別の抗原(特に黄色ブドウ球菌の別の抗原(エピトープ))を含む。
【0045】
通常、このようなワクチンは、注射剤として調製される。また、液体溶液もしくは懸濁液、または、注射の前に液体において溶液もしくは懸濁液を生成するために適した固形物のいずれかとしても調製される。ワクチンは、生理的に許容できる希釈液の存在下で任意の簡便な経路(例えば皮下注射、腹腔内注射、筋肉注射、皮内注射、静脈注射、経口注射、鼻腔内注射、または、乳房内注射)で、患者に投与されてもかまわない。2C2またはその免疫原性断片は、単一用量または複数の用量で投与されてもかまわない。本発明のワクチンは、冷却、または、凍結もしくは凍結乾燥した状態で保存されてもかまわない。上記ワクチンは、コントロールと比較すると、防御免疫応答を誘導するために効果的な量が個々の患者に投与される。効果的な量は、例えば、年齢および体格によって異なり、当該分野の医師によって容易に決定され得る。初期投与および追加免疫注射に適した計画も可変であるが、典型的には、初期投与の後に次の播種または他の投与が行われる。
【0046】
本発明に係る開示によれば、精製済みの抗2C2抗体製剤が提供され得る。このような抗体を含有する原料(例えば、ヒトの血液もしくはリンパ、または、その誘導体を含有する抗体)は、2C2または2C2の抗体結合性の断片を用いて、親和性精製され得る。これらのポリペプチドは、例えば、組換えによって生成(これが好ましい)されても、または、アフィニティーカラムを形成するために、黄色ブドウ球菌の培養物から抽出され、固体表面(例えば、クロマトグラフィー物質)に結合されてもかまわない。アフィニティー精製後に、全ての抗体種、または、少なくとも主な抗体種が抗2C2性である、単離された抗2C2抗体を含有する調製物が得られる。したがって、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または当該タンパク質の天然由来の断片もしくは変異体に対する、単離された抗体、特にIgEおよび/またはIgGを含有する調製物も提供する。2C2またはその天然由来の断片を用いて、2C2に特異的なモノクローナル抗体を標準的な手法で調製することもできる。本発明のモノクローナル抗体は、従来のクローニング手法および細胞融合手法で調製可能である。注目している免疫原(抗原)(2C2またはその1つ以上の天然由来の断片)は、通常、野生型もしくは近交系のマウス(例えば、BALB/c)または所望の抗体を生成するトランスジェニックマウス、ラット、ウサギ、または、未変性抗体またはヒト抗体を生成することができるその他の動物種に投与(例えば腹腔内注射)される。上記免疫原は単独で投与されても、免疫賦活剤と混合されても、ベクター(VEEレプリコンベクター、ワクシニア)から発現しても、または、免疫応答を誘導するDNAもしくは融合タンパク質として発現してもかまわない。融合タンパク質は、担体タンパク質(例えば、β−ガラクトシダーゼ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミンなどが例としてあげられる)に結合した、免疫応答が所望されるペプチドを包含する。これらの場合には、ペプチドは、担体タンパク質とともにハプテンとして作用する。上記動物が、追加免疫注射(例えば2回以上)を受けた後、脾臓を切除して脾細胞を抽出し、周知のケーラーおよびミルスタイン(Koehler and Milstein)のプロセスおよびハーローおよびレーン(Harlow and Lane)のプロセスで骨髄腫細胞に融合させる。次に、この結果得られるハイブリッド細胞を従来の様式で、例えば限界希釈によってクローン化し、こうして得られた、所望のモノクローナル抗体を生成するクローンを培養する。こうして、上記抗体を、ここに記載した方法、例えば(調製用の)2C2カラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製して、さらに、随意的に薬剤として仕上げてもよい。
【0047】
本発明に係るこれらの抗体製剤は、具体的には、黄色ブドウ球菌の検出、または、特に黄色ブドウ球菌感染もしくはADと関連するその他の診断用途のために使用される。本発明に係る抗体は、黄色ブドウ球菌感染を治療するためにも(例えば、受動ワクチン(passive vaccine)の形態で)使用され得る。
【0048】
もう1つの態様によれば、本発明は、配列番号1(配列番号2)に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または当該タンパク質の天然由来の断片もしくは変異体をコードし、黄色ブドウ球菌において配列番号2に隣接して天然にコードされたタンパク質に対応する他のオープンリーディングフレームを含まない核酸に関する。本発明は、2C2遺伝子を単離された(したがって、使用可能な)形態で提供する。これは、本発明に係る核酸が、(黄色ブドウ球菌ゲノム中に)天然に存在する(例えば、Gill et al., Kuroda et al., Ohta et al., Diep et al., Baba et al., Holden et al., Herron−Olson et al.を参照)隣接する(5’、および/または、3’)遺伝子を含まないことを意味している。本発明に係るこの核酸分子を使用して、(適切な原核生物系(大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌など)の宿主細胞または真核生物系(酵母、植物、動物(例えば、CHO、BHK、293細胞)の宿主細胞など)において)組換え2C2タンパク質または断片を生成したり、PCR検出またはマイクロアレイ検出プローブに適したプライマーを設計したりすることができる。
【0049】
好ましくは、本発明に係る核酸は、当業者にとって簡単に利用可能な、適切な発現ベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)に組み込まれる。
【0050】
本発明の本態様は、2C2遺伝子の断片、または、これに隣接する5’領域および3’領域(例えば、PCRプライマーとして使用するためのDNA分子)をさらに含む。これらは、通常、長さが約10bp〜30bpのヌクレオチドである。特異的な核酸プローブはこれより長いこともあり、例えば、30bp〜3000bp、好ましくは40bp〜1000bp、さらに好ましくは50bp〜500bpである。これらの核酸は、さらに、固体表面上(例えば、マイクロアレイチップ上、または、その他のPCRもしくは配列決定面上)に固定されて、本発明に係る方法を実施するために使用されてもよい。
【0051】
本発明について、以下の例および図面を用いてさらに説明する。ただし、本発明はこれらの例や図面に限定されるものではない。
【0052】
図1は、2C2のヌクレオチドおよび推定したアミノ酸配列を示している。左側の番号は、ヌクレオチドおよび推定したアミノ酸の位置を表わしている。終止コドンTAAを(*)によって示した。2C2タンパク質は、ドメインFbpA(影をつけた領域)およびドメインDUF814(下線をつけた配列)の2つのドメインを有している。
【0053】
図2は、ニトロセルロースにブロットした2C2に対する、AD患者の抗2C2性IgE抗体反応性を示している。2C2組換えタンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル上で分離し、ニトロセルロース膜上にブロットした。これらの膜をAD患者およびアレルギーを持たないコントロールの血清を用いて調べ、IgE結合の量をオートラジオグラフィーによって測定した。選択したAD患者およびアレルギーを持たない患者の免疫ブロットを表わしている。分子量(kDa)は左端に示した。
【0054】
図3は、ELISAによって測定した、アトピー性皮膚炎(AD)の患者およびアレルギーを持たない(NA)患者におけるIgG1、IgG2、および、IgG4の各抗体サブクラスのレベルを示している。ボックスプロットは、2回測定した37人のAD患者および8人のNA患者における免疫グロブリンのレベルを表わしている。丸印は異常値を示し、トライアングルは極端な値を示している。
【0055】
図4は、ヒト化RBLアッセイを示している。FcεRIに対応するcDNAコーディングをトランスフェクトしたRBL細胞を、血清と、2C2またはPhl p 1とを用いてインキュベートした。IgEを架橋結合すると、ヒト化RBL細胞は事前形成されたメディエーターを放出し、メディエーターの放出量を記録した。点線はベースライン値を表わしている。
【0056】
図5は、2C2で免疫されたマウスにおける免疫グロブリンの生成レベルを示している。複数のマウス(n=5)を、2C2を用いて1ヶ月間隔で免疫した。異なる時点でマウスの血清を収集し(Pは免疫前の血清、1は免疫から1ヶ月後、2は免疫から2ヶ月後、...)、a)ではIgG1のレベル、b)ではIgG2aのレベル、c)ではIgE抗体のレベルをELISAによって測定した。免疫グロブリンのレベルをボックスプロットとして示す。丸印は異常値を示し、トライアングルは極端な値を示している。
【0057】
図6は、2C2で免疫した後の、マウスの脾臓細胞のリンパ球の増殖を示している。マウスの脾臓リンパ球を、組換え2C2、SE、Phl p 1、または、コンカナバリンAで刺激した。リンパ球の増殖を、7日目に[H]チミジンの取り込みによって確認し、刺激指標として表わした。増殖を3回測定した結果をボックスプロットとして示す。
【0058】
図7は、マウスのRBLアッセイを示している。免疫前のマウスの抗血清、または、組換え2C2で免疫されたマウスの抗血清を用いて感作されたラットの好塩基球性白血病(RBL)細胞のβ−ヘキソサミニダーゼ放出。コントロールとして、RBL細胞をアレルゲンまたは培地(アレルゲンを含まない)だけでも刺激した。図示したバーは、3回の測定結果の平均値および標準偏差を表わしている。
【0059】
図8は、AD患者およびアレルギーを持たない患者のPBMCからの、2C2によって誘導されたサイトカインの放出を示している。PBMCを2C2、Phl p 1、または、培地(MC)で刺激し、放出されたサイトカインの量を示している。水平線は、各群の中央値を示している。
【0060】
〔実施例〕
〔実施例1〕
〔物質および方法〕
〔黄色ブドウ球菌のタンパク質抽出物に対して特異的なIgEを有するアトピー性皮膚炎患者の選択〕
黄色ブドウ球菌のタンパク質抽出物を調製するために、細菌を一晩培養して得た培養物を遠心分離によって回収し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄し、Ultra Turrax(IKA Labortechnik社、ドイツ)およびガラスビーズを用いて破砕した。次に、細菌抽出物を12.5%の調製用SDS−ポリアクリルアミドゲル上で分離し(Laemmli et al., 1970)、電気ブロットすることによってニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell、Dassel、ドイツ)上に転写した(Towbin et al., 1979)。この膜を5mmの細片に切り、バッファーA(0.5%(w/v)のウシ血清アルブミン、0.5%(v/v)のTween 20、および、0.05%(w/v)のNaN3を含有する、pH値が7.4の、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液)で2時間ブロッキングした。そして、AD患者または健常人の血清を用いて、細片を4℃で一晩プローブ(probed)した。徹底的に洗浄した後、125Iで標識済みの抗ヒトIgE抗体(Pharmacia社、Uppsala、スウェーデン)をバッファーAで1:10に希釈して、当該希釈液を用いて上記細片を室温で一晩インキュベートすることによって、結合したIgEを検出し、オートラジオグラフィーによって視覚化した。
【0061】
〔アトピー性皮膚炎患者の血清を用いた、黄色ブドウ球菌ゲノムライブラリーの免疫スクリーニング〕
黄色ブドウ球菌RN450株のライブラリーを含有するLambda Zap IIベクター(Stratagene社、La Jolla、CA、米国)を使用して、大腸菌細胞(XL1−Blue MRF’ 宿主株)を形質転換させた。次に、これらのプラークを、10mMのイソプロピル−1−チオ−L−D−ガラクトピラノシド(IPTG)(Stratagene社)で事前に処理しておいたニトロセルロース膜に移して、タンパク質の発現を誘発した。そして、上記膜をバッファーA中で3回洗浄し、続いて、ADの血清を用いて4℃で一晩インキュベートした。上記膜を徹底的に洗浄し、125Iで標識済みのIgE抗体(Pharmacia社、Uppsala、スウェーデン)をバッファーAで1:15に希釈して用いてIgEに結合するコロニーを特定し、オートラジオグラフィーによって視覚化した。陽性のプラークを、10μLのクロロホルムを加えた500μLのSMバッファー(0.1MのNaCl、8.0mMのMgSO・7HO、および、50mMのTris−HCl)中でコア化(cored)して保存した。
【0062】
〔IgEに対して反応性を有するクローンのDNA配列の決定〕
IgEに結合するクローンのDNAを単離し、当該断片の方向性を有するクローニングをプラスミドpUC18中で実施できるように、Kpn IおよびSac Iで消化した。ライゲーションした生成物を、大腸菌XL−1 Blueに形質転換した。陽性クローンをDNA切断解析によって特定し、二本鎖DNAの配列決定を順方向プライマーおよび逆方向プライマーλgt11(Clontech社)を用いて実施した。得られたcDNAおよび推定したアミノ酸配列を、BLAST−Xアルゴリズムを用いて、GenBankに登録されているものと比較した。
【0063】
〔大腸菌における2C2組換えタンパク質の発現および精製〕
2C2タンパク質をコードするcDNAを、pET23d(Novagen社、Madison、WI、米国)にライゲーションした。このコンストラクトのDNA配列を、配列解析によって確認した。そして、ライゲーションされたベクターにて、大腸菌BL21(DE3)(Stratagene社、East Kew、オーストラリア)を形質転換し、100mg/Lのアンピシリンを含有するLB−培地中で37℃で培養した。培養物のOD600が0.5に達したときに1mMのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシドを添加することによって、タンパク質の発現を4時間誘導した。4000×g、4℃で15分間の遠心分離を実施して細胞を回収し、これをUltra Turrax(IKA Labortechnik社、ドイツ)を用いて、結合バッファー(100mMのNaHPO、10mMのTris.Cl、および、8Mの尿素、pH値は8.0)中で溶解させた。1時間平衡化したNi−NTA樹脂(QIAGEN社、Hilden、ドイツ)を用いて、遺伝子組換えタンパク質であるヘキサヒスチジンをインキュベートした。そして、上記タンパク質の樹脂のスラリーをカラムに仕込み、洗浄バッファーB(100mMのNaHPO、10mMのTris.Cl、および、8Mの尿素、pH値は6.3)を用いて2回洗浄し、さらに、洗浄バッファーC(50mMのNaHPO、300mMのNaCl、20mMのイミダゾール、pH値は8.0)を用いて2回洗浄し、続いて、50mMのNaHPO、300mMのNaCl、および、250mMのイミダゾール(pH値は8.0)を用いて溶出させた。溶出したタンパク質を蒸留水で透析し、Micro−BCA Protein Assay Kit(Pierce社、Rockford、IL、米国)を製造業者の指示にしたがって用いて、最終的なタンパク質の濃度を決定した。
【0064】
〔2C2のIgE免疫ブロット〕
2C2組換えタンパク質を、5%(v/v)のβ−メルカプトエタノールを含有するドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の試料バッファーを用いて5分間煮沸した(Laemmli et al., 1970)。12.5%の調製用SDS−ポリアクリルアミドゲル上で、1レーン当たり約3.5μgのr2C2を分離した(Laemmli et al., 1970)。タンパク質分子量マーカー(Precision Plus Protein Kaleidoscope prestained standards, Bio−Rad社、米国)を標準として使用した。分離したタンパク質を、電気ブロットによってニトロセルロース膜上に転写し(Towbin et al., 1979)、上述のように免疫ブロットを実施した。
【0065】
〔動物〕
雌の5〜8週齢のBALB/c型マウスをCharles River Laboratories社から購入し、特定の病原体を除去した条件下で飼育した。実験は全て、Medical University of Viennaの地方審査部によって承認され、実験動物取り扱いに関する国定指針および国際的な指針にしたがって実施した。
【0066】
〔BALB/c型マウスの免疫〕
マウス(n=5)の複数のグループを、上述のようにAl(OH)(Alu−Gel−S; SERVA Electrophoresis)に吸着させた10μgのr2C2を用いて皮下経路によって感作した(Linhart et al., 2007)。マウスは、1ヶ月の間隔で免疫した。尾の静脈から血液試料を採取し、分析するまで血清を−20℃で保存した。
【0067】
〔ELISAを用いた実験〕
ヒト患者または免疫したマウスの血清中の2C2に対する特異的抗体の量を、ELISAを用いて測定した。マイクロタイター用プレート(Nunc社)に5μg/mlのr2C2を塗布した。ウェルをバッファーAを用いて室温で2時間ブロッキングした。ヒトにおいてIgサブタイプを測定するために、ヒト血清を1/100に希釈し、4℃で一晩インキュベートした。1/1000に希釈した、モノクローナルなマウスの抗ヒトIgG1、IgG2、または、IgE Abs(BD Pharmingen)、および、1/1000に希釈した、HRPに結合したヒツジの抗マウス抗血清(Amersham Biosciences社)を用いて、結合したAbsを検出した。マウスの免疫グロブリンを検出するために、マウスの血清をIgG1の場合には1/500、IgG2aの場合には1/100、および、IgEの場合には1/20に希釈した。1/500に希釈した、モノクローナルなラットの抗マウスIgM、IgG1、IgA、および、IgG2a Abs(BD Pharmingen)、および、1/2000に希釈した、HRPに結合したヤギの抗ラット抗血清(Amersham Biosciences社)を用いて、結合したAbsを検出した。
【0068】
〔リンパ球増殖アッセイ〕
AD患者またはコントロールの患者から採取したヘパリン添加血液を、PBSを用いて1:2の比で希釈し、末梢血単核球(PBMC)を、Ficoll−Paqueを用いた勾配遠心分離によって単離した。2mMのグルタミン、50mMのβ−メルカプトエタノール、および、0.1mg/mlのゲンタマイシンを加えたUltraculture培地(Bio Whittaker、Walkersville、MD、米国)中で、PBMCを再懸濁した。96個のウェルを有する無菌プレート(Nunc社)で、1ウェル当たり2×10個の細胞を培養し、5%のCOを与えながら、2C2(1.0μg/ウェル)、Phl p 1(1.0μg/ウェル)、SE(10.0μg/ウェル)、および、IL−2(正のコントロール)または培地(負のコントロール)を用いて37℃で刺激した。6日後に、0.5μCiのH−チミジンを各ウェルに添加し、細胞を16時間インキュベートした。取り込まれたH−チミジンの量をシンチレーション測定によって測定し、刺激指標(SI)として報告し、培地のコントロール値に対する抗原刺激後の平均的増殖の比として算出した。マウスのリンパ球の増殖を行うために、2C2で免疫したマウスの脾臓を(1回目の免疫から100日目に)無菌状態下で切除し、ホモジェナイズした。赤血球を溶解した後で、細胞を洗浄し、完全培地(RPMI 1640、10%のFCS、0.1mg/mlのゲンタマイシン、および、2mMのグルタミン)中で再懸濁した。単細胞の懸濁液を、1ウェル当たり2×10個の細胞(200μL)の割合で、96個のウェルを有する丸底プレート(Nunc社、Roskilde、デンマーク)に3組播き、コンカナバリンA(0.5μg/ウェル)、r2C2(1.0μg/ウェル)、SE(10.0μg/ウェル)、rPhl p 1(1.0μg/ウェル、Biomay社、ウイーン、オーストリア)または培地を用いて6日間刺激した。リンパ球の増殖量を、上述のように測定した。
【0069】
〔ラットの好塩基球白血病(RBL)およびヒト化RBLアッセイ〕
5%のCOを与えながら、RBL−2H3細胞を、96個のウェルを有する組織培養プレート(1ウェル当たり4×10個の細胞)で、37℃で24時間培養した。1/10に希釈したマウス血清を用いて2時間インキュベートすることによって、受動感作を実施した。タイロードバッファー(137mMのNaCl、2.7mMのKCl、0.5mMのMgCl、1.8mMのCaCl、0.4mMのNaHPO、5.6mMのD−グルコース、12mMのNaHCO、10mMのHEPES、および、0.1%(w/v)のBSA、pH値は7.2)を用いて、細胞を2回洗浄し、結合していない抗体を除去した。RBL細胞の脱顆粒を、0.3μg/mlのr2C2添加することによって誘導し、放出されたβ−ヘキソサミニダーゼの量を30分後に分析した。結果は、1%のTriton X−100を添加後に放出されたβ−ヘキソサミニダーゼの総量の百分率で表わし、3回の測定の平均値を示している。ヒト化RBLアッセイを実施するために、ヒト高親和性IgE受容体鎖であるFcεRIをコードするcDNAを導入したRBL細胞を使用した。細胞(1ウェル当たり1×10個)を、AD患者または健常人からの血清を用いた複数の希釈物(1:10、1:30、1:100、および、1:300)で、37℃の5%のCOを含む恒温器中で一晩受動感作(passively sensitization)した。細胞をタイロードバッファー中で洗浄し、脱顆粒を、0.3μg/mlの2C2を添加することによって誘導し、放出されたβ−ヘキソサミニダーゼの量を1時間後に測定した。β−ヘキソサミニダーゼの量は、50μLの細胞上清をアッセイ溶液(0.16mMの4−メチルウンベリフェリル−N−アセチル−D−グルコサミドを含む0.1Mのクエン酸、pH値4.5)と混合することによって測定した。100μLのグリシンバッファー(pH値は10.7)を添加することによって反応を停止させ、励起状態、かつ、360nmおよび465nmの各放射波長における蛍光量を測定した。
【0070】
〔データの統計解析〕
異なるパラメータ間の相関について、ソフトウェアSPSS(登録商標)を用いてMann−Whitmey U試験によって試験を行った。
【0071】
〔結果〕
〔黄色ブドウ球菌のゲノムライブラリーおよびIgE反応性クローンのスクリーニング〕
黄色ブドウ球菌のλgt11ゲノムライブラリーに対して、6人のAD患者から採取した血清IgEを用いて免疫スクリーニングを実施したところ、11種類のIgE反応性クローンが存在していることが明らかになった。これらのクローンのファージDNAを単離し、Eco RIおよびKpn I/Sac Iを用いて切断解析を実施し、さらに、DNAの配列決定を実施した。この切断解析後の挿入サイズによれば、挿入サイズが最大のクローンが、完全長のオープンリーディングフレームを有するクローンでもあったので、このクローン(2C2と称する)を選択してさらに研究を進めた。
【0072】
〔2C2のDNAおよびアミノ酸配列〕
IgE反応性のタンパク質である2C2に対応するcDNAコーディングの完全長のオープンリーディングフレームは、1698個の塩基対からなる。このcDNAは、565個のアミノ酸に翻訳され、理論分子量が65.8kDaであって、pIが8.72である。Pfamデータベース(http://pfam.sanger.ac.uk/)で検索してみると、2C2は、アミノ酸4〜442に対応するフィブリノーゲン結合タンパク質Aドメイン(FbpA)と、アミノ酸447〜533に対応するDUF814と称するもう1つのドメイン(機能が未知のドメイン)との、2つのドメインを有することが明らかになった(図1)。GenBankには、2C2と98%を超える配列相同性を有する、黄色ブドウ球菌由来のアミノ酸配列の8つの登録(entries)が存在した(表I)。
【0073】
【表1】

【0074】
複数の研究グループが黄色ブドウ球菌株において病原性タンパク質および耐性タンパク質を全ゲノムにわたって探した結果、表Iに列挙したタンパク質を特定した。次の疑問点は、他の病原菌が、アミノ酸配列が2C2に類似するタンパク質を発現させたかどうかということであった。2C2と、5種類の他の臨床的に関連する細菌から得られた2C2の相同タンパク質との間のアミノ酸配列における類似度を表にまとめた(表II)。
【0075】
【表2】

【0076】
2C2は、病原性細菌および臨床的に関連する細菌から得られるどの既知のタンパク質とも高いアミノ酸配列類似度を共有していなかった。
【0077】
〔大腸菌における2C2の発現および精製〕
組換え2C2を、IPTG誘導によって、大腸菌発現系においてヘキサヒスチジンタンパク質(hexahistidine protein)として発現させた。このタンパク質をニッケル−NTAカラムを用いて精製し、カラム上で再折り畳んで(refolded)可溶性タンパク質を得た。このタンパク質は理論分子量が65.8kDaであり、SDS−ポリアクリルアミドゲル上では遊離して、より小さなタンパク質分子量を有する多数のバンドを形成することが明らかになった。このタンパク質の小断片の主なものは、17kDaおよび22kDaであった。1mMのIPTGを用いて誘導させた後で、2C2を発現させた大腸菌の可溶化液の免疫ブロットを行うと、大腸菌における発現プロセスの間に、タンパク質分解のプロセスがすでに開始していたことが分かる。2C2の円偏光二色性スペクトル(circular dichroism spectrum)は、折り畳まれていないタンパク質のスペクトルを示した。
【0078】
〔AD患者の1/3が2C2に対する特異的IgEを有している〕
68人のAD患者および17人の健常人からの血清を用いて、ニトロセルロースにブロットした2C2に対する血清IgE反応性を分析した(表III)。
【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【0082】
【表6】

【0083】
【表7】

【0084】
【表8】

【0085】
【表9】

【0086】
【表10】

【0087】

AA:アレルギー性喘息
AD:アトピー性皮膚炎
AR:アレルギー性鼻炎
f:女性
kUl−1:1リットル当たり1000ユニット
m:男性
ND:不明
N:なし
RC:鼻結膜炎
SAE:黄色ブドウ球菌エンテロトキシン
SE:ブドウ球菌エンテロトキシン
TSST:毒素性ショック症候群毒素
Y:ある
+:陽性反応
−:陰性反応
(+):弱い陽性反応
AD患者のうち、34人が女性、28人が男性、および、6人は性別不明であった。患者は2歳から69歳までの多様な年齢群で構成されていた。患者の約半分が他のアレルギー性疾患(例えば、アレルギー性喘息やアレルギー性鼻炎)を患っており、多様なアレルゲンソースに対して感作された。
【0088】
AD患者の34%が2C2に対するIgE結合を示した一方で、試験を受けたアレルギーを持たない患者はだれも一切IgE反応を示さなかった(図2)。高い全血清IgEレベルは2C2に対するIgE反応に関連していることが多いが、IgE結合が発生するための必要条件ではなかった(表III)。全血清IgEレベルが低い患者の中には(例えば、15番、26番、39番)抗2C2IgE抗体を有している人もいた(表III、図2)。
【0089】
〔AD患者は、健常人と比較すると、高い抗2C2 IgG1およびIgG4抗体を有しているが、IgG2抗体を有していない〕
アレルギーを持たない患者(n=7)と比較した、AD患者(n=38)における特異的な抗2C2 IgG抗体サブタイプ(IgG1、IgG2、および、IgG4)のレベルを、ELISAに基づくアッセイを用いて測定した。抗2C2 IgG1およびIgG4抗体のレベルの中央値は、AD患者では健常人と比較すると上昇した(図3)。健常人における抗2C2 IgG2抗体のレベルの中央値は、AD患者の場合よりわずかに高かったが、この差は統計学的に有意ではない。
【0090】
〔2C2は機能的なT細胞エピトープを含有する〕
アトピー性皮膚炎患者の新鮮な血液およびアレルギーを持たない患者の新鮮な血液から、末梢血単核球(PBMC)を単離し、2C2、Phl p 1、または、黄色ブドウ球菌抽出物を用いて7日間刺激した。培地コントロールと比較した、抗原刺激の際のT細胞の増殖の量を、取り込まれたチミジンの量によって測定した(表IV)。
【0091】
【表11】

【0092】
試験対象となった6人の患者のうち、患者Tおよび患者SはADを患い、免疫ブロット結果によれば抗2C2 IgEを有する。患者PHおよび患者KYはADを患っているが、免疫ブロットによれば2C2に対する検出可能なIgE反応を有していなかった。また、患者SHおよび患者RVは健常人であった(図2)。2C2は、複数の患者(T、S、KY)において投与量に依存してT細胞の増殖を刺激することができることが明らかになった。T細胞の増殖を誘導する2C2の能力は、特異的な抗2C2 IgEの利用可能性、または、これらの患者におけるADの存在には依存しなかった。Phl p 1はインタクトなT細胞エピトープを有することが以前に特定されていたので、このアレルゲンを、このアッセイにおけるコントロールアレルゲンとして使用した。黄色ブドウ球菌抽出物に対するT細胞の増殖量は、患者間において大きなばらつきがあった(表IV)。
【0093】
〔2C2はアレルゲン性活性を誘導できる〕
アレルゲン性活性を誘導する2C2の能力を、ヒトFcε RI受容体を発現するRBL細胞を用いて調べた。ヒト化RBL細胞に、アレルギー患者(n=5)またはアレルギーを持たない患者(患者SH)からの抗2C2 IgE抗体を添加した。図4に示すように、1人の患者(S)がヒト化RBL細胞上でIgE−アレルゲンが架橋結合する際に高いメディエーター放出量を示した一方で、別の患者(MK)はほんのわずかなメディエーター放出量を示した。それ以外の患者におけるメディエーター放出量は、ベースライン値未満であった。試験対象となった患者のなかでは、ヒト化RBL細胞によるメディエーター放出量は抗2C2抗体の量と相関がなかった(図2および4)。Phl p 1は特徴がよく同定されたアレルゲンであるので、Phl p 1をこのアッセイにおけるコントロールタンパク質として使用した。
【0094】
〔2C2で免疫されたマウスは、抗2C2 IgG1、IgG2a、および、IgE抗体を生成した〕
ミョウバンに吸着された組換え2C2で免疫されたマウスは、ELISAアッセイ測定によれば、特異的なIgG1およびIgG2a抗体を生成した。抗体の最大タイターは、3回目以降の免疫化から生成された(図5)。同様に、マウス抗2C2 IgE抗体は、4回目の免疫化後にIgG1およびIgG2a抗体と同じレベルで生成された(図5)。
【0095】
〔組換え2C2で免疫した後のマウス脾臓細胞のリンパ球増殖〕
2C2で皮下免疫されたマウス(n=5)の脾臓を、免疫プロトコールの終了時に切除し、新鮮なリンパ球細胞を単離した。これらの細胞を、2C2、Phl p 1、黄色ブドウ球菌抽出物(SE)、または、コンカナバリンA(Con A)のいずれかを用いて刺激した(図6)。免疫されたマウスから得られる脾臓のリンパ球細胞が、2C2で刺激されると、SEまたは正のコントロールであるコンカナバリンAと比較して高い増殖を示すことが見出された(図6)。組換え型Phl p 1をコントロールタンパク質として使用したところ、この組換え型Phl p 1がもっとも低いリンパ球増殖量を示した。
【0096】
〔抗2C2 マウス血清を用いたRBLアッセイが特異的なメディエーター放出を示した〕
2C2で免疫する前またはその後にマウス(n=5)から得られた血清を、2C2の存在下または非存在下において、RBL細胞に添加した。我々は、生成されたマウスの抗2C2 IgE抗体が、2C2の存在下においてRBL細胞上で架橋結合でき、この結果、メディエーター放出が起きることを見出した(図7)。試験対象となった負のコントロールは、いずれも、メディエーター放出量があまり大きくなかった(図7)。
【0097】
〔検討〕
本研究では、黄色ブドウ球菌から得られる2C2と呼ばれるIgE結合タンパク質の特定について開示する。2C2は、フィブリノーゲン結合タンパク質Aドメインファミリーに属し、565個のアミノ酸からなり、理論分子量は65.8kDaである。このタンパク質は安定しておらず、自発的に遊離して小さなタンパク質断片を形成するが、それでもなおアレルゲンとしての特性および免疫原としての特性を維持する。
【0098】
本研究で試験対象となった68人のAD患者の1/3が抗2C2 IgE抗体を有していたが、健常人はだれもIgE反応を一切示さなかった。大半の場合、AD患者の高い全血清IgEレベルは、何人かの患者を例外として除けば、抗2C2 IgE抗体の存在と相関していた。2C2は、このタンパク質で免疫されたマウスにおいて、特異的なIgG1、IgG2a、および、IgE抗体の生成を誘導する能力があったので、免疫原性タンパク質でもあり、アレルゲン性タンパク質でもある。
【0099】
AD患者においてIgE抗体に結合する以外に、2C2は、ヒトの実験においても、マウスの実験においても、RBL細胞からのメディエーター放出を刺激することができた。また、2C2は、このタンパク質で刺激された際のヒトのリンパ球細胞およびマウスのリンパ球細胞の両方の活性化されたT細胞の増殖によって分かるように、機能的T細胞エピトープを有していた。正常な人においてもこのT細胞の増殖の誘導が起こること、および、IgG抗体は、このタンパク質がアトピーではない人に対しても一般的に使用可能であることを示している。2C2は、適切なRBL細胞に添加された、ヒト血清またはマウス血清からの特異的な抗2C2 IgE抗体を架橋結合し、メディエーター放出を引き起こすこともできた。これは、このタンパク質が即時型皮膚反応を誘発することもできることを間接的に示唆している。
【0100】
ADを患う個々の患者の血清は、アレルギーを持たない患者の血清と比較すると、多量の抗2C2 IgG1およびIgG4抗体を含有していたが、両患者群の間には、IgG2抗体レベルにおける有意差が存在しなかった。この知見は、これらの患者には、2C2に対する免疫活性との関連において、活性Th1経路が存在することを示している。
【0101】
2C2は、多数の原核生物によく見られるタンパク質ドメインである、フィブロネクチン結合タンパク質Aドメインファミリーに属する。ただし、2C2の一次アミノ酸配列をヒト病原菌から得られる既知のフィブロネクチン結合タンパク質と比較すると、2C2に類似のタンパク質は見つけられなかった。したがって、2C2は、固有のフィブロネクチン結合タンパク質であり、既知のタンパク質に対する抗体交叉反応性が低いと考えられ、したがって、黄色ブドウ球菌感染に対する良好な診断マーカーとして使用可能であると結論し得る。また、2C2は、IgE結合タンパク質であるので、ヒト血清における黄色ブドウ球菌に対する特異的なIgE抗体の存在を確認するアッセイにも使用可能である。
【0102】
したがって、これらの結果は、2C2が強力な免疫原性特性および抗原性の特性を示す可溶性抗原であるので、2C2が黄色ブドウ球菌ワクチンタンパク質パネルに適した抗原であることを示している。
【0103】
〔実施例2〕
〔物質および方法〕
〔スーパー抗原活性を測定するためのアッセイ〕
組換え2C2(r2C2)および既知の黄色ブドウ球菌スーパー抗原(SEA、SEB、SEE)(Toxin Technology Inc.社、米国)の、株化されたT細胞における増殖を誘導する能力について試験を行った。なお、この株化されたT細胞は、もともと、5人のアレルギー患者から主要なヨモギアレルゲンArt v 1に対する反応性を有しているとして選択されたものである。細胞を、96個のウェルを有するプレート(Nunc社)で、1ウェル当たり3×10個の細胞の割合で培養し、異なる濃度の2C2(1ウェル当たり200ng、1μg、5μg)、SEA、SEB、SEE(1ウェル当たり10ng、50ng、250ng)、または、培地単独で37℃で5%のCO229,30を与えながら刺激した。48時間後に、H−チミジンを添加し、取り込まれた量を16時間後にシンチレーション測定によって求めた。1ウェル当たり5μgのr2C2、および、1ウェル当たり250ngのスーパー抗原の場合について、2回の測定の平均値として結果を示す。
【0104】
〔結果〕
〔特異的リンパ球増殖性応答を誘導するために、黄色ブドウ球菌2C2は、抗原提示を必要とし、スーパー抗原としては作用しない〕
4人のAD患者および2人のアレルギーを持たない患者から単離された末梢血単核球(PBMC)の、黄色ブドウ球菌2C2、主要なチモシー牧草アレルゲン、Phl p 1、または、培地単独に対するリンパ球増殖性応答を測定した。AD患者では、2C2がPhl p 1よりも強い増殖を誘導した。その一方で、アトピーではない人から得られた細胞では、類似の応答が観察された。
【0105】
これまでに特徴が同定されたIgE反応性黄色ブドウ球菌成分は、全てスーパー抗原である。したがって、5人のアレルギー患者から得られた株化されたT細胞を、抗原提示細胞の非存在下で、2C2または既知の黄色ブドウ球菌スーパー抗原(例えばSEA、SEB、および、SEE)に接触させた。たとえスーパー抗原の20倍の濃度で使用しても、2C2は増殖応答を誘導しなかった。スーパー抗原SEAおよびSEEは、試験対象となった全ての株化されたT細胞において同等に高レベルの増殖を誘発した。その一方で、SEBは、5つの株化されたT細胞のうちの1つにおいてのみ強い増殖を誘導した。T細胞を培地単独で培養した場合は、増殖が一切観察されなかった。
【0106】
スーパー抗原は、プロセスされず、抗原結合部位において提示もされないが、MHC II複合体をT細胞受容体に架橋結合させる。その一方で、2C2が特異抗原として作用してT細胞を抗原特異的に刺激することが示すことができる。
【0107】
〔黄色ブドウ球菌2C2は、培養PBMCにおいてプロ炎症性サイトカインIL−6およびTNF−αの放出を誘導する〕
AD患者およびアレルギーを持たない患者のPBMCに由来する上清であって、サイトカインを放出させるために2C2およびPhl p 1で刺激した上清についても分析した。興味深いことに、2C2は、AD患者およびアレルギーを持たない患者から得られたPBMCにおいて、高レベルのプロ炎症性サイトカインIL−6およびTNF−αを誘導した(図8)。AD患者およびアレルギーを持たない患者のPBMCにおける、2C2および牧草花粉アレルゲンPhl p 1による、Th2サイトカインおよびTh1サイトカインの誘導は、培地コントロールと比較すると少なかった(図8)。大腸菌から同様に精製されたPhl p 1について記録された内毒素濃度は、2C2の場合の3倍(83.3EU(エンドトキシン活性単位)/ml)であったので、2C2によるIL−6およびTNF−αの比較的強力な誘導は、内毒素の混入が原因となって起きるのではないと考えられる。
【0108】
〔参考文献〕
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Diep et al., Lancet 367 (2006):731-739.
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Towbin et al., Proc Natl Acad Sci U S A 76 (1979):4350-4354.
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】2C2のヌクレオチドおよび推定したアミノ酸配列を示している。左側の番号は、ヌクレオチドおよび推定したアミノ酸の位置を表わしている。終止コドンTAAを(*)によって示した。2C2タンパク質は、ドメインFbpA(影をつけた領域)およびドメインDUF814(下線をつけた配列)の2つのドメインを有している。
【図2】ニトロセルロースにブロットした2C2に対する、AD患者の抗2C2性IgE抗体反応性を示している。2C2組換えタンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル上で分離し、ニトロセルロース膜上にブロットした。これらの膜をAD患者およびアレルギーを持たないコントロールの血清を用いて調べ、IgE結合の量をオートラジオグラフィーによって測定した。選択したAD患者およびアレルギーを持たない患者の免疫ブロットを表わしている。分子量(kDa)は左端に示した。
【図3】ELISAによって測定した、アトピー性皮膚炎(AD)の患者およびアレルギーを持たない(NA)患者におけるIgG1、IgG2、および、IgG4の各抗体サブクラスのレベルを示している。ボックスプロットは、2回測定した37人のAD患者および8人のNA患者における免疫グロブリンのレベルを表わしている。丸印は異常値を示し、トライアングルは極端な値を示している。
【図4】ヒト化RBLアッセイを示している。FcεRIに対応するcDNAコーディングをトランスフェクトしたRBL細胞を、血清と、2C2またはPhl p 1とを用いてインキュベートした。IgEを架橋結合すると、ヒト化RBL細胞は事前形成されたメディエーターを放出し、メディエーターの放出量を記録した。点線はベースライン値を表わしている。
【図5】2C2で免疫されたマウスにおける免疫グロブリンの生成レベルを示している。複数のマウス(n=5)を、2C2を用いて1ヶ月間隔で免疫した。異なる時点でマウスの血清を収集し(Pは免疫前の血清、1は免疫から1ヶ月後、2は免疫から2ヶ月後、...)、a)ではIgG1のレベル、b)ではIgG2aのレベル、c)ではIgE抗体のレベルをELISAによって測定した。免疫グロブリンのレベルをボックスプロットとして示す。丸印は異常値を示し、トライアングルは極端な値を示している。
【図6】2C2で免疫した後の、マウスの脾臓細胞のリンパ球の増殖を示している。マウスの脾臓リンパ球を、組換え2C2、SE、Phl p 1、または、コンカナバリンAで刺激した。リンパ球の増殖を、7日目に[H]チミジンの取り込みによって確認し、刺激指標として表わした。増殖を3回測定した結果をボックスプロットとして示す。
【図7】マウスのRBLアッセイを示している。免疫前のマウスの抗血清、または、組換え2C2で免疫されたマウスの抗血清を用いて感作されたラットの好塩基球性白血病(RBL)細胞のβ−ヘキソサミニダーゼ放出。コントロールとして、RBL細胞をアレルゲンまたは培地(アレルゲンを含まない)だけでも刺激した。図示したバーは、3回の測定結果の平均値および標準偏差を表わしている。
【図8】AD患者およびアレルギーを持たない患者のPBMCからの、2C2によって誘導されたサイトカインの放出を示している。PBMCを2C2、Phl p 1、または、培地(MC)で刺激し、放出されたサイトカインの量を示している。水平線は、各群の中央値を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄色ブドウ球菌の感染を特定するために、試料を分析する方法であって、
上記試料中における、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または上記タンパク質の天然由来の断片もしくは変異体の存在または非存在、または、上記試料中における、上記タンパク質、断片または変異体をコードする核酸の存在または非存在、が検査される、方法。
【請求項2】
上記試料が、ヒトの患者に由来する試料であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記方法が、上記タンパク質、断片または変異体をコードする核酸の存在または非存在を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって検査することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
抗体を含有している試料中で、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、または、抗体が結合し得る上記タンパク質の断片もしくは変異体、に対して特異的な抗体分子を検出する方法であって、
上記試料を、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する上記タンパク質、または、抗体が結合し得る上記タンパク質の断片もしくは変異体に接触させ、
上記接触の後で、上記抗体分子の何れかが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する上記タンパク質、または、抗体が結合し得る上記タンパク質の断片もしくは変異体に結合したか否かが分析されることを特徴とする、方法。
【請求項5】
IgEを含有している試料中で、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、または、IgEが結合し得る上記タンパク質の断片もしくは変異体、に対して特異的なIgE分子を検出する方法であって、
上記試料を、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する上記タンパク質、または、IgEが結合し得る上記タンパク質の断片もしくは変異体に接触させ、
上記接触の後で、上記IgE分子の何れかが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する上記タンパク質、または、IgEが結合し得る上記タンパク質の断片もしくは変異体に結合したか否かが分析されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する上記タンパク質、または、抗体が結合し得る上記タンパク質の断片もしくは変異体を、固体表面に結合した状態で、上記抗体を含有する試料に接触させ、
上記接触の後で、上記抗体を含有する試料を上記固体表面から分離し、
上記分離の後で、上記抗体分子の何れかが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する上記タンパク質、または、抗体が結合し得る上記タンパク質の断片もしくは変異体に結合したか否かの分析が、上記試料から分離された状態の上記固体表面上にて実施されることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
上記方法が、固相酵素免疫検定法(ELISA)であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
単離された状態の、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の天然由来の断片、または、上記タンパク質の天然由来の変異体。
【請求項9】
上記断片が、IgEに結合し得る断片であることを特徴とする、請求項8に記載のタンパク質断片。
【請求項10】
上記断片が、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における見かけ上の分子量が17kDaである断片、または、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における見かけ上の分子量が22kDaである断片であることを特徴とする、請求項9に記載のタンパク質断片。
【請求項11】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、または、上記タンパク質の天然由来の断片もしくは変異体と、
薬学的に許容可能な担体と、を含んでいる、薬学的組成物。
【請求項12】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、または、上記タンパク質の天然由来の断片もしくは変異体と、
薬学的に許容可能な担体と、を含んでいる、ワクチン。
【請求項13】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または上記タンパク質の天然由来の断片もしくは変異体に対する、単離された抗体を含んでいる、調製物。
【請求項14】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質または上記タンパク質の天然由来の断片もしくは変異体をコードしている核酸であって、黄色ブドウ球菌中で配列番号2に隣接して天然にコードされているタンパク質に対応する他のオープンリーディングフレームを含んでいない核酸。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸を含んでいる、発現ベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−504746(P2013−504746A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528277(P2012−528277)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005561
【国際公開番号】WO2011/029607
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(507180423)ビオマイ アクチエンゲゼルシャフト (12)
【Fターム(参考)】