説明

黒色腫の処置

黒色腫を処置する方法は、構造I


で示される化合物、該化合物の互変異性体、該化合物の薬学的に許容される塩、該互変異性体の薬学的に許容される塩、またはその混合物を対象に投与することを含む。該化合物、該化合物の互変異性体、該化合物の塩、該互変異性体の塩、またはその混合物を、転移性癌を処置するための医薬を製造するために使用し得る。可変基Aは、本明細書に記載した基を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、対象における黒色腫を処置する方法および組成物に関する。より具体的には、本発明は、黒色腫の処置での、および黒色腫を処置するための医薬の製造での、4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチルピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]キノリン-2(1H)-オンのような化合物およびその互変異性体、その塩、ならびにその混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
毛細血管は、ヒトの体内のほとんどすべての組織に及び、組織に酸素および栄養を供給し、老廃物を除去する。通常の条件下では、毛細血管を裏打ちする内皮細胞は、分裂せず、したがって、通常、毛細血管は、ヒト成体において数もしくはサイズを増大させない。しかしながら、組織が損傷を受けるか、もしくは月経周期の間の特定の部分であるような特定の通常の条件下で、毛細血管は、素早く増殖し始める。前から存在する血管から新規毛細血管を形成するこの過程は、血管新生または新血管形成として既知である。Folkman, J. Scientific American 275, 150-154 (1996)を参照のこと。創傷治癒の間の血管新生は、成人期における病態生理学的新血管形成の一例である。創傷治癒の間、追加の毛細血管が、酸素および栄養を供給し、肉芽組織を促進し、老廃物の除去を助ける。治癒過程の終結後、毛細血管は、通常、退行する。Lymboussaki, A. “Vascular Endothelial Growth Factors and their Receptors in Embryos, Adults, and in Tumors” Academic Dissertation, University of Helsinki, Molecular/Cancer Biology Laboratory and Department of Pathology, Haartman Institute, (1999)。
【0003】
血管新生はまた、癌細胞の成長において重要な役割を果たす。癌細胞の病巣があるサイズ(おおよそ、直径1から2 mm)に達すると、拡散では癌細胞に十分な酸素および栄養を供給するのに十分ではないので、癌細胞は、腫瘍がより大きく成長するために、血液供給を発現させなければならないことが既知である。したがって、血管新生の阻害は、癌細胞の成長を停止させることが期待される。
【0004】
受容体型チロシンキナーゼ(RTK)は、発生時の細胞増殖および分化、成体組織のリモデリングおよび再生を制御する膜貫通ポリペプチドである。Mustonen, T. et al., J. Cell Biology 129, 895-898 (1995); van der Geer, P. et al. Ann Rev. Cell Biol. 10, 251-337 (1994)。増殖因子またはサイトカインとして既知のポリペプチドリガンドは、RTKを活性化することが知られている。シグナル伝達RTKは、リガンド結合および受容体の外部ドメインにおけるコンフォメーションの遷移を含み、その結果、受容体の二量体化を生じる。Lymboussaki, A. “Vascular Endothelial Growth Factors and their Receptors in Embryos, Adults, and in Tumors” Academic Dissertation, University of Helsinki, Molecular/Cancer Biology Laboratory and Department of Pathology, Haartman Institute, (1999); Ullrich, A. et al., Cell 61, 203-212 (1990)。リガンドのRTKへの結合は、特定のチロシン残基での受容体トランスリン酸化、およびその次の細胞質基質のリン酸化のための触媒ドメインの活性化を生じる。同上。
【0005】
RTKの2つのサブファミリーは、血管内皮に特異的である。これらは、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)サブファミリーおよびTie受容体サブファミリーを含む。クラスV RTKは、VEGFR1 (FLT-1)、VEGFR2 (KDR (ヒト)、Flk-1 (マウス))、およびVEGFR3 (FLT-4)を含む。Shibuya, M. et al., Oncogene 5, 519-525 (1990); Terman, B. et al., Oncogene 6, 1677-1683 (1991); Aprelikova, O. et al., Cancer Res. 52, 746-748 (1992)。
【0006】
癌は、腫瘍細胞増殖を誘導する複数の遺伝学的欠損を含む疾患である。したがって、同時に複数の細胞シグナル伝達経路を阻害する戦略が、より好ましい治療結果を生じ得る。RTK過剰発現および/または活性化突然変異は、しばしば、腫瘍細胞に存在し、腫瘍成長に関与する。Blume-Jensen, P and Hunter, T., “Oncogenic Kinase Signaling,” Nature, 411, pp. 355-65 (2001); Carmeliet, P., “Manipulating Angiogenesis in Medicine,” J. Intern. Med., 255, pp. 538-61 (2004)。たいていのRTKは、リガンド結合に関与する細胞外ドメインならびにシグナル伝達イベントのカスケードを誘導する自己リン酸化および下流シグナル伝達分子の動員を仲介する細胞内キナーゼドメインを含む。III型(PDGFR、CSF-1R、FLT3、およびc-KIT)、IV型(FGFR1-4)、およびV型(VEGFR1-3)RTKのような、癌に関与する30個以上のRTKが存在する。
【0007】
黒色腫は、皮膚色素メラニンを生成するメラニン細胞の悪性腫瘍である。黒色腫は、典型的には、皮膚で生じるが、粘膜面またはメラニン細胞が体内で見出され得るすべての場所で生じ得る。黒色腫は、それらの特徴的な形態および挙動により、1) 表在拡大型黒色腫(SSM)、2) 結節型悪性黒色腫(NM)、3) 末端性黒子型黒色腫(ALM)、4) 悪性黒子型黒色腫(LMM)、および5) 粘膜黒子型黒色腫 (MLM)に分類され得る。SSMは、最も一般的な黒色腫の型であり、しばしば、皮膚上に、暗い、扁平な、わずかに盛り上がった、いくつかの色のマークとして現れる。その早期(放射状期)においては、癌は、表皮をとおして成長し、治療の予後は、良好である。SSMが垂直増殖期に入ると、それは、真皮および基底構造まで成長し、より危険になり、治癒も困難である。NMは、黒色腫の最も攻撃的な型であり、素早く生じ、上部および内部に同時に増殖する。それは、典型的には、皮膚上の均一な黒色小塊として現れるが、他の色も考えられる。ALMは、黒色腫の他の攻撃的な型であり、色黒の患者でしばしば生じる。それは、褐色、黒色であるか、または多彩であり、扁平もしくは結節型であり得る。LMMは、最も少ない一般的な黒色腫であり、典型的には、高齢者の鼻および頬に生じる。病変部位は、黄褐色、褐色、黒色または他の色であり得て、かなり大きく成長し得る(3 cm - 6 cm)。LMMは、ゆっくり成長し、転移する傾向はない。MLMは、ALMと出現が類似しており、口腔、食道、肛門、膣、および結膜を含むさまざまな粘膜部位で生じる。黒色腫が局所的であるときには、それを外科的手術により切除し、治癒率は、しばしば、良好である。しかしながら、黒色腫が原発巣を超えて、例えば、リンパ管系、およびより遠い部位、例えば、中枢神経系、肝臓、または肺に転移すると、それは、処置するのが非常に困難になる。2006年に米国では、62,000を超える黒色腫の新規症例が生じ、7,900人を超える患者が黒色腫で死亡したと概算されている。
【0008】
さまざまなインドリル置換化合物が、最近、WO 01/29025、WO 01/62251、およびWO 01/62252に開示され、さまざまなベンゾイミダゾリル化合物が、最近、WO 01/28993に開示された。これらの化合物は、報告によれば、受容体型および非受容体型チロシンキナーゼの両方のシグナル伝達を、阻害し、調節し、および/または制御することができる。開示された化合物のいくつかは、インドリルもしくはベンゾイミダゾリル基に結合したキノリノン断片を含む。
【0009】
4-ヒドロキシキノリノンおよび4-ヒドロキシキノリン誘導体の合成は、多くの文献で開示されており、それらは、本明細書中で完全に説明されているかのように、それらの全体をすべての目的のために引用により本明細書の一部とする。例えば、Ukrainets et al.は、3-(ベンゾイミダゾール-2−イル)-4-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリンの合成を開示した。Ukrainets, I. et al., Tet. Lett. 42, 7747-7748 (1995); Ukrainets, I. et al., Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinii, 2, 239-241(1992)。Ukrainetsはまた、他の4-ヒドロキシキノリノンおよびチオ類似体、例えば、1H-2-オキソ-3-(2-ベンゾイミダゾリル)-4-ヒドロキシキノリンの合成、抗けいれんおよび抗甲状腺活性を開示した。Ukrainets, I. et al., Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinii, 1, 105-108 (1993); Ukrainets, I. et al., Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinii, 8, 1105-1108 (1993); Ukrainets, I. et al., Chem. Heterocyclic Comp. 33, 600-604, (1997)。
【0010】
さまざまなキノリン誘導体の合成が、WO 97/48694に開示されている。これらの化合物は、核ホルモン受容体に結合でき、骨芽細胞増殖および骨成長を刺激するために有用であるものとして開示されている。該化合物はまた、核ホルモン受容体ファミリーと関連する疾患の処置もしくは予防において有用であるものとして開示されている。
【0011】
キノリンのベンゼン環が硫黄基で置換されているさまざまなキノリン誘導体が、WO 92/18483に開示されている。これらの化合物は、医薬製剤において、および医薬として有用であるものとして開示されている。
【0012】
キノリンおよびクマリン誘導体は、医薬および医薬製剤とは無関係のさまざまな適用での使用を有するものとして開示されている。光重合性組成物での使用のための、または発光特性に関する使用のためのキノリン誘導体の製造を記載した文献は、Okamoto et al.に対して発行された米国特許第5,801,212号; JP 8-29973; JP 7-43896; JP 6-9952; JP 63-258903; EP 797376; およびDE 23 63 459を含み、それらは、本明細書中で完全に説明されているかのように、それらの全体をすべての目的のために引用により本明細書の一部とする。
【0013】
4-アミノ-5-フルオロ-3-[5-(4-メチルピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]キノリン-2(1H)-オンまたはその互変異性体を含む、血管新生および血管内皮細胞増殖因子受容体型チロシンキナーゼの阻害において、および他のチロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼの阻害において有用なさまざまなキノリノンベンゾイミダゾール化合物は、下記の文献に開示されており、それらは、本明細書中で完全に説明されているかのように、それらの全体をすべての目的のために引用により本明細書の一部とする: 米国特許第6,605,617号; 米国特許第6,756,383号; 米国特許出願第10/116,117号(2003年2月6日に、US 2003/0028018として公開された); 米国特許出願第10/644,055号(2004年5月13日に、米国特許出願公開第2004/0092535号として公開された); 米国特許出願第10/983,174号; 米国特許出願第10/706,328号(2004年11月4日に、2004/0220196として公開された); 米国特許出願第10/982,757号(2005年6月3日に、2005/0137399として公開された); および米国特許出願第10/982,543号(2005年9月22日に、2005/0209247として公開された)。
【0014】
腫瘍および癌の処置法における最近の進歩にもかかわらず、癌を処置する新規方法に関する、とりわけ、黒色腫を処置する新規方法および組成物に関する、重大な必要性がなお存在している。
【発明の概要】
【0015】
発明の要約
本発明は、黒色腫、特に、転移性黒色腫を処置する方法を提供する。本発明はさらに、黒色腫を処置するための医薬組成物および医薬の使用での、化合物、その互変異性体、その塩、およびその混合物の使用を提供する。
【0016】
1つの局面では、本発明は、ヒト黒色腫患者のような対象における黒色腫を処置する方法を提供する。黒色腫は、皮膚性(cutaneous)黒色腫または皮膚外(extracutaneous)黒色腫であり得る。ある態様では、転移性黒色腫を処置する方法を提供する。該方法は、対象に有効量の構造Iの化合物、該化合物の互変異性体、該化合物の薬学的に許容される塩、該互変異性体の薬学的に許容される塩、またはその混合物を投与することを含む。構造Iは、下記の式:
【化1】

[式中、
Aは、下記の構造:
【化2】

のうちの1つを有する基であり、
R1は、Hまたは1から6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル基から選択される]
を有する。
【0017】
本発明の方法のさまざまな態様では、対象における黒色腫の成長を阻害するか、疾患を退行させるか、または本明細書に開示した化合物の投与後に安定化させるか、あるいは、投与後の対象における黒色腫のサイズおよび/または範囲を減少させる。
【0018】
ある態様では、R1は、メチル基であり、構造Iの化合物は、構造IA:
【化3】

を有する。構造IAの化合物はまた、本明細書では、“化合物1”、“TKI258”、または4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチルピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オンと呼ぶ。
【0019】
ある態様では、R1は、水素であり、構造Iの化合物は、構造IB:
【化4】

を有する。構造IBの化合物はまた、本明細書では、“化合物2”または4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オンと呼ぶ。
【0020】
ある態様では、R1は、メチル基であり、構造Iの化合物は、構造IC:
【化5】

を有する。構造ICの化合物はまた、本明細書では、“化合物3”または4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-4-オキシドピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オンと呼ぶ。
【0021】
ある態様では、化合物は、構造I、IA、IB、もしくはICの化合物であり、該化合物の乳酸塩または互変異性体を対象に投与する。
【0022】
ある態様では、黒色腫は、野生型もしくは突然変異型線維芽細胞増殖因子受容体1、2、3、および/または4を発現する。他の態様では、黒色腫は、野生型もしくは突然変異型c-Kitを発現する。また他の態様では、黒色腫は、線維芽細胞増殖因子受容体1および2、1および3、1および4、2および3、2および4、3および4、または1、2、および3、または1、2、3、および4を発現する。本明細書に記載した方法にしたがって処置され得る特定の黒色腫では、1種またはそれ以上の野生型もしくは突然変異型FGFR1、FGFR2、FGFR3、またはFGFR4を発現する。本明細書に記載した方法で処置され得る特定の黒色腫は、野生型もしくは突然変異型c-Kitを発現する。また他の態様では、黒色腫は、野生型Raf、突然変異型Raf、野生型Ras、突然変異型Ras、野生型c-Kit、および/または突然変異型c-Kitタンパク質を発現する。
【0023】
例えば、表在拡大型黒色腫、結節型悪性黒色腫、末端黒子型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、および粘膜黒子型黒色腫を含む、さまざまな異なる型の黒色腫は、本発明の方法にしたがって処置し得る。原発性黒色腫はまた、皮膚性または皮膚外であり得る。皮膚外原発性悪性黒色腫は、眼球黒色腫および軟組織の明細胞肉腫を含む。さらなる適応症は、稀な黒色腫または前癌病変を含み、そこでは、RTK標的関連が関与し得る。本発明の方法はまた、転移性の黒色腫の処置において有用である。
【0024】
黒色腫を処置する方法はさらに、黒色腫の処置のために、1種またはそれ以上の抗癌剤を本明細書に記載した化合物と共に投与することを含む。例えば、黒色腫、とりわけ、転移性黒色腫の処置のための抗癌剤は、アルキル化抗癌剤、例えば、ダカルバジン、テモゾロマイド、メクロレタミン、およびニトロソウレア、例えば、カルムスチン、ロムスチン、およびホテムスチン; タキサン類、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル; ビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン; トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、イリノテカン; サリドマイド; 抗癌抗生物質、例えば、ストレプトゾシンおよびダクチノマイシン; または白金抗癌剤、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチンから選択され得る。本発明の化合物は、多剤併用化学療法レジメン(polychemotherapeutic regimes)、例えば、Dartmouthレジメン、CVD (シスプラチン、ビンブラスチン、およびダカルバジン)ならびにBOLD (ブレオマイシン、ビンクリスチン、ロムスチン、およびダカルバジン)に加えることができる。ある態様では、抗癌剤は、インターフェロン、例えば、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、ペグインターフェロン、例えば、ペグインターフェロンアルファ-2bから選択されるが、これらに限定されない。インターロイキン2のようなインターロイキンはまた、本明細書に記載した化合物と組み合わせて使用し得る。
【0025】
本明細書に記載した黒色腫を処置する方法において、治療上有効量の化合物は、対象の約0.25 mg/kgから約30 mg/kg体重の範囲であり得る。ある態様では、治療上有効量の化合物は、約0.5 mg/kgから約30 mg/kg、約1 mg/kgから約30 mg/kg、約1 mg/kgから約25 mg/kg、約1 mg/kgから約15 mg/kg、または約1もしくは2 mg/kgから約10 mg/kgの範囲であり得る。他の態様では、対象に投与される化合物の量は、約25から約1500 mg/日、および好ましくは、約100もしくは200 mg/日から約500もしくは600 mg/日の範囲である。
【0026】
ある態様では、本明細書に記載した黒色腫を処置する方法は、さらに、処置サイクルの一環として、式I、IA、IB、またはICの化合物を投与することを含む。処置サイクルは、定期的に式I、IA、IB、またはICの化合物を対象に与える投与期、および化合物を投与しない休暇期を含む。例えば、処置サイクルは、7、14、21、または28日間毎日、式Iの化合物の量を投与し、その後、7または14日間、化合物を投与しないことを含み得る。ある態様では、処置サイクルは、7日間毎日、化合物の量を投与し、その後、7日間、化合物を投与しないことを含む。処置サイクルは、処置期間(a course of treatment)を提供するために、1回またはそれ以上、例えば、2、4もしくは6回繰り返し得る。より一般には、処置期間は、対象が本発明の方法による黒色腫の処置を受ける期間を意味する。したがって、処置期間は、対象が本明細書に記載した化合物を毎日もしくは間歇的に投与される期間、および1回もしくはそれ以上の処置サイクルを延長する期間を意味する。さらに、化合物は、処置サイクルの投与期の間、1日に1回、2回、3回、または4回投与し得る。他の態様では、該方法はさらに、処置期間の間、1日に1回、2回、3回、もしくは4回、または1日おきに投与することを含む。
【0027】
したがって、本発明はさらに、癌を患う対象に式I、IA、IB、またはICの化合物、薬学的に許容されるその塩、その互変異性体または互変異性体の薬学的に許容される塩を投与することを含む黒色腫を処置する方法を提供し、ここで、最初の処置サイクルで投与される化合物の量は、1日あたり25 mgであり、投与される化合物の量は、各々次の処置サイクルで、1日あたり1500 mgの化合物が対象に投与されるか、または用量制限毒性が対象に観察されるまで、増やされる。典型的には、該方法において、投与される化合物の量は、最初の処置の後、次の各処置サイクルで2倍である。例えば、最初の処置サイクルは、対象に25 mg/日を投与することを含み得て、次の処置サイクルは、対象に50 mg/日を投与することを含み得る。ある態様では、処置サイクルは、7日間毎日同じ量を投与し、その後、7日間化合物を投与しないことを含む。
【0028】
1つの局面では、本発明は、本発明の方法のいずれかの態様のうちのいずれかに使用するための医薬または医薬組成物の製造における、構造I、IA、IB、および/またはICの化合物、該化合物の互変異性体、該化合物の薬学的に許容される塩、該互変異性体の薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物の使用を提供する。
【0029】
他の局面では、本発明は、構造I、IA、IB、および/またはICの化合物、該化合物の互変異性体、該化合物の薬学的に許容される塩、該互変異性体の薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物を入れた容器を含むキットを提供する。キットは、黒色腫の処置において使用するための他の化合物を含んでいてもよい。キットはさらに、本発明の方法のいずれかを実施するための指示が書かれた使用説明書を含んでいてもよい。ある態様では、書かれた使用説明書は、キットの容器とは別個の紙の文書として含まれてもよく、一方で、別の態様では、書かれた文書は、キットの容器に貼り付けられるラベルに書かれてもよい。
【0030】
本発明のさらなる目的、特徴および利点は、下記の詳細な説明および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、ウエスタンブロットによる黒色腫細胞でのFGFR1-4発現の特徴づけを示す。
【図2】図2は、化合物1がbFGF誘導マトリゲルプラグアッセイで有力な抗血管新生活性を有することを示す。
【図3】図3は、A375M (B-Raf突然変異体)ヒト黒色腫異種モデルで、化合物1が平均腫瘍容積における顕著な抗腫瘍効果を示す図式である。
【図4】図4は、CHL-1 (野生型B-Raf)ヒト黒色腫異種モデルで、化合物1が平均腫瘍容積における顕著な抗腫瘍効果を示す図式である。
【図5】図5は、nu/nuマウスでの黒色腫A375M (B-Raf突然変異体)モデルで、化合物1、カルボプラチン、およびパクリタキセルの組み合わせ治療が平均腫瘍容積における顕著な抗腫瘍効果を示す図式である。
【図6】図6は、雌Nu/NuマウスでのCHL-1黒色腫腫瘍に対して、化合物1の連日投与および/またはカルボプラチンおよびパクリタキセルの毎週投与が平均腫瘍容積における顕著な抗腫瘍効果を示す図式である。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、黒色腫、特に、転移性黒色腫を処置する方法を提供する。本発明はまた、黒色腫を処置するための医薬または医薬組成物の製造における化合物(例えば、構造I、IA、IB、およびICの化合物)、互変異性体、塩、およびその混合物の使用を提供する。理論に拘束されることは望まないが、開示した化合物の黒色腫の処置における驚くべき有効な効果は、化合物のデュアルな活性から生じる結果であると考えられる。本発明化合物は、1種またはそれ以上のFGF受容体を発現する黒色腫細胞を阻害すること、およびVEGFR、FGFRおよびPDGFRβを妨害することで、黒色腫に関連する血管新生を阻害することにより、黒色腫における抗腫瘍効果を及ぼすものと考えられる。本明細書に開示した化合物はまた、野生型もしくは突然変異型RafまたはRas遺伝子型の黒色腫に対して有効であり得る。
【0033】
下記の略称および定義を、本明細書を通して使用する:
【0034】
“bFGF”は、塩基性線維芽細胞増殖因子を示す略称である。
【0035】
“C-Kit”はまた、幹細胞因子受容体または肥満細胞増殖因子受容体として既知である。
【0036】
“CSF-1R”は、コロニー刺激因子1受容体の略称である。
【0037】
“FGF”は、FGFR1、FGFR2、FGFR3およびFGFR4と相互作用する線維芽細胞増殖因子の略称である。
【0038】
“FGFR1”(また、bFGFRと呼ばれる)は、線維芽細胞増殖因子FGFと相互作用するチロシンキナーゼを示す略称である。関連する受容体チロシンキナーゼは、FGFR2、FGFR3およびFGFR4を含む。これらのキナーゼの1個またはそれ以上は、しばしば、黒色腫で発現する(実施例を参照)。
【0039】
“Flk-1”は、胎児肝臓チロシンキナーゼ1を示す略称であり、キナーゼ挿入ドメインチロシンキナーゼもしくはKDR (ヒト)として、また血管内皮細胞増殖因子受容体-2もしくはVEGFR2 (KDR (ヒト)、Flk-1 (マウス))として既知である。
【0040】
“FLT-1”は、fms様チロシンキナーゼ-1を示す略称であり、血管内皮細胞増殖因子受容体-1またはVEGFR1としても既知である。
【0041】
“FLT-3”は、fms様チロシンキナーゼ-3を示す略称であり、幹細胞チロシンキナーゼI (STK I)としても既知である。
【0042】
“FLT-4”は、fms様チロシンキナーゼ-4を示す略称であり、VEGFR3としても既知である。
【0043】
“MIA”は、黒色腫阻害活性を示す。本明細書で使用するとき、MIAタンパク質は、一般に、GenBankデータベースで、GenBank受託番号NM_006533のcDNAによりコードされた受託番号NP_0065として利用可能な12 kDaの可溶性タンパク質、およびMIAタンパク質の少なくとも10個の連続した残基を含む、ほ乳類ホモログもしくはその断片を意味する。MIAタンパク質は、フィブロネクチンおよびラミニン分子に結合し、細胞-マトリクス相互作用を妨害することにより、細胞外マトリクスからの黒色腫の脱離に関与することが示されている(Brockez L. et al., Br. J. Dermatol. 143:256268 (2000))。処理の前後で測定したMIAタンパク質の存在もしくは濃度は、黒色腫阻害剤での処理に対するほ乳類対象の応答を決定するために使用し得る。
【0044】
“MEK1”は、Raf-MEK1-ERKからなるモジュールで、MAPK (マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ)シグナル伝達経路におけるセリン/スレオニンキナーゼを示す略称である。MEK1は、ERK (細胞外制御キナーゼ)をリン酸化する。
【0045】
“PDGF”は、血小板由来増殖因子示す略称である。PDGFは、チロシンキナーゼPDGFRαおよびPDGFRβと相互作用する。
【0046】
“Raf”は、MAPKシグナル伝達経路におけるセリン/スレオニンキナーゼである。
【0047】
“RTK”は、受容体チロシンキナーゼを示す略称である。
【0048】
“Tie-2”は、IgおよびEGF相同性ドメインを有するチロシンキナーゼを示す略称である。
【0049】
“VEGF”は、血管内皮細胞増殖因子を示す略称である。
【0050】
“VEGF-RTK”は、血管内皮細胞増殖因子受容体チロシンキナーゼを示す略称である。
【0051】
一般に、水素もしくはHのようなある元素への言及は、その元素の全ての同位体を含むことを意図する。例えば、構造Iの化合物上の基が省略されているか、またはHとして示されるとき、それはまた、水素もしくはH、重水素およびトリチウムを含む。
【0052】
“1から6個の炭素原子を有する、直鎖および分岐鎖アルキル基”なる句は、ヘテロ原子を含まないが、1から6個の炭素原子を含む非環式アルキル基を意味する。したがって、該句は、直鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルを含む。該句はまた、直鎖アルキル基の分岐鎖異性体を含み、下記を含むが、これらに限定されない: -CH(CH3)2、-CH(CH3)(CH2CH3)、-CH(CH2CH3)2、-C(CH3)3、-CH2CH(CH3)2、-CH2CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH(CH2CH3)2、-CH2C(CH3)3、-CH(CH3)CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2CH(CH3)2、-CH2CH2CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2C(CH3)3、-CH(CH3)CH2CH(CH3)2など。ある態様では、アルキル基は、1から6個の炭素原子を有する、直鎖および分岐鎖アルキル基を含む。他の態様では、アルキル基は、1から4個の炭素原子を有する。また他の態様では、アルキル基は、1から2個の炭素原子を有する、直鎖アルキル基である(メチルもしくはエチル基)。また他の態様では、アルキル基は、1個の炭素原子のみを有し、メチル基(-CH3)である。
【0053】
“薬学的に許容される塩”は、無機塩基、有機塩基、無機酸、有機酸または塩基性もしくは酸性アミノ酸との塩を含む。無機塩基の塩として、本発明は、例えば、アルカリ金属、例えば、ナトリウムもしくはカリウム塩; アルカリ土類金属、例えば、カルシウム、マグネシウムもしくはアルミニウム塩; およびアンモニウム塩を含む。有機塩基の塩として、本発明は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンと共に形成される塩を含む。無機酸の塩として、本発明は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、およびリン酸塩を含む。有機酸の塩として、本発明は、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸の塩を含む。塩基性アミノ酸の塩として、本発明は、例えば、アルギニン、リシンおよびオルニチン塩を含む。酸性アミノ酸の塩として、本発明は、例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸塩を含む。
【0054】
構造Iの化合物は、実施例の項に記載した手順および下記の文献に開示された手順を用いて、容易に合成され、該文献は、本明細書に記載されているかのように、それらの全体をあらゆる目的のために、引用により本明細書の一部とする。該文献は次のとおりである: 米国特許第6,605,617号、米国特許出願第10/644,055号(U.S. 2004/0092535として公開された)、米国特許出願第10/983,174号(U.S. 2005/0261307として公開された)、米国特許出願第10/726,328(U.S. 2004/0220196として公開された)、米国特許出願第10/982,757号(U.S. 20050137399として公開された)、米国特許出願第10/982,543 (U.S. 2005/209247として公開された)、およびPCT特許出願第PCT/US2006/019349号(WO 2006/125130として公開された)。
【0055】
構造Iの化合物、該化合物の互変異性体、該化合物の薬学的に許容される塩、該互変異性体の薬学的に許容される塩、およびその混合物を、医薬および医薬製剤を製造するために使用し得る。そのような医薬および医薬製剤は、本明細書に記載した処置の方法で使用し得る。
【0056】
医薬組成物は、上記実施形態のいずれかに記載する化合物、互変異性体、または塩のいずれかを、本明細書に記載するような薬学的に許容される担体と組み合わせた形で含むことができる。
【0057】
本発明はまた、本発明の1種またはそれ以上の化合物、または薬学的に許容される塩、その互変異性体、またはそれらの混合物を薬学的に許容される担体、賦形剤、結合剤、希釈剤などと混合することにより製造可能な、転移性腫瘍に関連する障害を処置または改善するための組成物を提供する。本発明の組成物は、本明細書に記載した転移性腫瘍を処置するために使用される製剤の製造に使用できる。このような製剤は、例えば、顆粒、粉末、錠剤、カプセル、シロップ、坐薬、注射液、乳剤、エリキシル剤、懸濁液または溶液の形態であり得る。本発明の組成物は、さまざまな投与経路、例えば、経口投与、経鼻内投与、直腸投与、皮下注射、静脈注射、筋肉注射、または腹腔内注射などに合わせて製剤化することができる。下記の用量型を例に挙げて説明するが、これによって本発明が制限されるものではない。
【0058】
経口、口腔および舌下への投与には、粉末、懸濁液、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル、ゲルキャップ、およびキャップレットが、固体用量形として許容される。これらは、例えば、1種またはそれ以上の本発明の化合物、薬学的に許容される塩、互変異性体、またはそれらの混合物を、少なくとも一つの添加物、例えば、デンプンまたは他の添加物と混合して作ることができる。適当な添加物は、ショ糖、乳糖、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン、寒天、アルギネート、キチン、キトサン、ペクチン、トラガカントガム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成もしくは半合成ポリマーまたはグリセリドである。経口用量形は、投与を補助するために、例えば、不活性希釈剤、またはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、パラベンもしくはソルビン酸のような保存剤、アスコルビン酸、トコフェロールもしくはシステインのような抗酸化剤、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、甘味料、風味料または香料など、上記以外の成分を任意選択的に含むことができる。錠剤および糖衣錠は、さらに、適当な既存の被覆物質で処理することができる。
【0059】
経口投与のための液体用量形は、薬学的に許容されるエマルジョン、シロップ、エリキシル剤、懸濁液および溶液の形態が可能であり、これらの液剤には水などの不活性希釈剤を含めることができる。医薬製剤および医薬は、滅菌液を用いて、液体懸濁液や溶液として製造することができ、その場合、滅菌液には、例えば、油、水、アルコールおよびこれらの組み合わせを使用できるが、これらに限定されない。経口もしくは非経腸投与には、薬学的に好適な界面活性剤、懸濁剤、乳化剤を加えることができる。
【0060】
上記したとおり、懸濁液は、油を含み得る。そのような油として、例えば、落花生油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油を挙げることができるが、これらに限定されない。懸濁製剤はまた、脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリドおよびアセチル化脂肪酸グリセリドを含み得る。懸濁液製剤は、アルコール、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、グリセロールおよびプロピレングリコールを含み得るが、これらに限定されない。懸濁製剤には、限定されるものではないが、ポリ(エチレングリコール)のようなエーテル、鉱油およびワセリンなどの石油系炭化水素ならびに水も使用できる。
【0061】
経鼻投与の場合、医薬製剤および医薬は、適当な溶媒および、任意選択的にその他の化合物、例えば、限定されるものではないが、安定剤、抗菌剤、抗酸化剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ改善剤、およびそれらの組み合わせを含むスプレーまたはエアロゾルが可能である。エアロゾル製剤用噴射剤としては、圧縮空気、窒素、二酸化炭素、または炭化水素系低沸点溶媒が使用可能である。
【0062】
注射用用量形には、一般に、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて調製可能な水性懸濁液もしくは油性懸濁液が含まれる。注射用用量形は、溶媒または希釈剤を用いて調製される、溶液相もしくは懸濁液の形態であり得る。許容される溶媒またはビヒクルは、滅菌水、リンゲル液または生理食塩水などである。あるいは、溶媒または懸濁剤として滅菌油も使用できる。使用される油または脂肪酸は、好ましくは、不揮発性天然油もしくは合成油、脂肪酸、モノ、ジまたはトリグリセリドである。
【0063】
注射用の医薬製剤および/または医薬は、上記した適当な溶液で再溶解するのに適した粉末とすることも可能である。これらの例は、凍結乾燥粉末、回転式蒸発器で得られた乾燥粉末またはスプレイドライ粉末、非結晶粉末、顆粒、沈殿物または粒子などであるが、これらに限定されない。注射用製剤は、任意選択的に安定剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ改善剤およびこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0064】
直腸投与用の医薬製剤および医薬は、腸、S状結腸曲および/または結腸で化合物を放出する坐薬、軟膏、浣腸剤、錠剤またはクリームの形態が可能である。直腸に投与する坐薬は、1種またはそれ以上の本発明の化合物、または該化合物の薬学的に許容される塩もしくは互変異性体を、許容されるビヒクル、例えば、普通の保存温度では固相で存在し、体内、たとえば直腸で薬物を放出するに適する温度では液相で存在するココアバターもしくはポリエチレングリコールと混合することによって製造することができる。油もまた、軟ゼラチン型の製剤および坐薬の製造に使用できる。懸濁製剤の製造には、水、食塩水、デキストロース水溶液およびその関連糖液、ならびにグリセロールが使用でき、懸濁製剤は、懸濁剤、例えば、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースのほか、緩衝剤および保存剤も含むことができる。
【0065】
上記した典型的な用量形以外に、薬学的に許容される賦形剤および担体は、当業者に広く知られており、それゆえ本発明に包含される。このような賦形剤および担体は、例えば、“Remingtons Pharmaceutical Sciences” Mack Pub. Co., New Jersey (1991)に記載されており、それは、本明細書に完全に記載されているかのように、その全体をあらゆる目的のために、引用により本明細書の一部とする。
【0066】
本発明の製剤は、下記するように、短時間作用、迅速放出、長時間作用および持続的放出するように設計することが可能である。したがって、医薬製剤を、放出を制御したり、ゆっくり放出されるように製剤化することもできる。
【0067】
本組成物は、例えば、ミセル、リポソーム、あるいは何か別のカプセル化した形態を含むこともできるし、あるいは長時間貯蔵および/または送達効果を賦与するため、長時間にわたって放出する形態で投与することもできる。したがって、医薬製剤および医薬はペレットまたは円柱状に加圧成型し、デポ注射剤として、あるいはステントのようなインプラントとして筋肉内または皮下に埋め込むこともできる。このようなインプラントは、既知の不活性材料、例えば、シリコーンポリマーや生分解性ポリマーを使用できる。
【0068】
特定の投与量は、対象の疾患の状態、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、および食生活、投与間隔、投与経路、排出速度、および使用薬物の組み合わせによって調節可能である。有効量を含む上記用量形は、いずれもルーチン実験の範囲内に入るため、本発明の範囲内にある。
【0069】
治療上有効な用量は、投与経路および用量形によって変化する可能性がある。本発明の好ましい化合物は、高い治療指数を示す製剤である。治療指数は、毒性効果と治療効果の間の用量比であり、LD50とED50の間の比で表すことができる。LD50は、集団の50%が死亡する量を意味し、ED50は、集団の50%に対して治療上有効な量を示す。LD50およびED50は、標準的な医薬手順に従い、動物細胞培養または実験動物で決定される。
【0070】
本発明の範囲に含まれる“処置すること”および“処置”は、障害もしくは疾患と関連する症状の緩和、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化の阻害、停止、反転、または疾患もしくは障害の阻止もしくは予防を意味する。さらに、本発明の範囲に含まれる“処置すること”および“処置”は、皮膚性、皮膚下、もしくは内臓性黒色腫の成長の阻害、皮膚性、皮膚下、もしくは内臓性黒色腫のサイズの減少、皮膚性、皮膚下、もしくは内臓の病変の数の減少、または皮膚性、皮膚下、もしくは内臓の病変のサイズの減少を意味する。さらに、本発明の範囲に含まれる“処置すること”および“処置”は、疾患応答バイオマーカーの変化、例えば、黒色腫阻害活性タンパク質の循環レベルの減少を意味する。例えば、黒色腫を患う患者を処置することの内容において、成功した処置は、黒色腫もしくは疾患組織に栄養供給する毛細血管の増殖の減少、黒色腫による癌成長、毛細血管の増殖、または疾患組織に関連する症状の緩和、毛細血管増殖を阻害するか、もしくは停止すること、または黒色腫の進行もしくは黒色腫細胞の成長もしくは転移を阻害するか、もしくは停止すること、または黒色腫の退行または部分もしくは完全寛解(すなわち、疾患の安定化)、または黒色腫患者の全体の生存率の増加を含み得る。
【0071】
処置はまた、本発明の医薬製剤を他の治療と組み合わせて投与することを含み得る。例えば、本発明の化合物および医薬製剤は、外科手術および/または放射線治療の前に、間に、もしくは後に投与し得る。本発明の化合物はまた、黒色腫の処置で使用される他の抗癌剤と組み合わせて投与し得る。抗癌剤は、悪性腫瘍および癌性増殖の処置のために、当業者、例えば、癌専門医または他の臨床医により使用される薬剤を意味する。したがって、抗癌剤および本明細書に開示した化合物(例えば、構造I、IA、IB、およびICの化合物)を、同時に、別々に、または連続して投与し得る。適当な組み合わせおよび投与レジメンは、腫瘍学および薬学分野の当業者により決定され得る。
【0072】
本発明の化合物および製剤は、抗癌剤、例えば、タキサン類、ニトロソウレア、プラチナ化合物、アルキル化剤、トポイソメラーゼIおよびII阻害剤、ビンカアルカロイド、抗癌抗生物質; インターフェロン、インターロイキン2、および放射線処置と組み合わせて使用するとき、それらが相加もしくは相加以上の、あるいは相乗効果を示すか、またはそれらを示すことが予期されるために、組み合わせ治療において特に適当である。したがって、1つの局面では、本発明は、構造Iの化合物および互変異性体、塩、および/またはその混合物を含む医薬製剤を抗癌剤と組み合わせることを提供する。組み合わせ剤は、同時の、別々の、または連続した投与のために、別々に、または一緒にしてキットの状態で、パッケージされ得る。本発明はまた、そのような製剤および医薬の製造における、化合物、互変異性体、塩、および/または混合物の使用を提供する。
【0073】
他の局面では、本発明は、転移性黒色腫を処置する方法を提供する。該方法は、ダカルバジン(DITC-DOME)、テモゾロマイド(TEMODAR)、カルムスチン(BCNU、BICNU)、ロムスチン(CCNU、CEENU)、ホテムスチン、パクリタキセル(TAXOL)、ドセタキセル(TAXOTERE)、ビンブラスチン(VELBAN)、イリノテカン(CAMPTOSAR); サリドマイド(THALIDOMID); ストレプトゾシン (ZANOSAR); ダクチノマイシン (COSMEGEN); メクロレタミン (MUSTARGEN); シスプラチン(PLATINOL-AQ)、カルボプラチン(PARAPLATIN)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC)、 ソラフェニブ(BAY43-9006、NEXAVAR)、スーテント(SU1248、AVASTIN)、またはエルロチニブ(TARCEVA)から選択される1種またはそれ以上の抗癌剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明の化合物は、多剤併用化学療法レジメン、例えば、Dartmouthレジメン、CVD (シスプラチン、ビンブラスチン、およびダカルバジン)ならびにBOLD (ブレオマイシン、ビンクリスチン、ロムスチン、およびダカルバジン)に加えることができる。本明細書に開示した化合物と組み合わせて使用するために適当な他の化学療法剤は、Lens and Eisen, Expert Opin Pharmacother, 2003 4(12): 2205-2211に記載されたものを含む。ある態様では、抗癌剤は、インターフェロン、例えば、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b (INTRON-A)、ペグインターフェロン、例えば、ペグインターフェロンアルファ-2bを含むがこれらに限定されないものから選択される。インターロイキン、例えば、インターロイキン2 (Proleukin)はまた、本明細書に開示した化合物と組み合わせて使用し得る。
【0074】
本発明の化合物は、さまざまな対象を処置するために使用し得る。適当な対象は、ほ乳類およびヒトのような動物を含む。適当なほ乳類は、霊長類、例えば、キツネザル、類人猿、およびサル(これらに限定されない); 齧歯類、例えば、ラット、マウス、およびモルモット; ウサギおよび野ウサギ; ウシ; ウマ; ブタ; ヤギ; ヒツジ; 有袋類; および肉食動物、例えば、ネコ、イヌ、およびクマを含むが、これらに限定されない。ある態様では、対象または患者は、ヒトである。ある態様では、対象または患者は、マウスもしくはラットのような齧歯類である。ある態様では、対象または患者は、ヒト以外の動物であり、ある態様では、対象または患者は、ヒト以外のほ乳類である。
【0075】
本発明に使用される有機化合物は、互変異性現象を示すことが理解されるべきである。本明細書の中で言及される化学構造は、可能な互変異性体の一つしか表すことができないため、本発明は、描写されたすべての構造の互変異性体をも包含していると理解されるべきである。例えば、構造IAは、1つの互変異性体、すなわち互変異性体Iaで下記する:
【化6】

構造IAの他の互変異性体、すなわち互変異性体Ibおよび互変異性体Icを下記する:
【化7】

【0076】
したがって、一般に記載された本発明は、下記の実施例を参照することにより容易に理解されるであろうが、それらは、あくまでも例示であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0077】
実施例
化学専門用語に関して、下記の略称を、本出願を通して使用する。
ATP: アデノシン三リン酸
Boc: N-tert-ブトキシカルボニル
BSA: ウシ血清アルブミン
DMSO: ジメチルスルホキシド
DTT: DL-ジチオスレイトール
DMEM: ダルベッコ修飾イーグル培地
ED50: 集団の50%に治療上有効な量
EDTA: エチレンジアミン四酢酸
EGTA: エチレングリコール四酢酸
EtOH: エタノール
FBS: ウシ胎児血清
Hepes: 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー
IC50値: 測定された活性において50%の減少を生じる阻害剤の濃度
KHMDS: カリウムビス(トリメチルシリル)アミド
LC/MS: 液体クロマトグラフィー/質量分析
MOPS: 3-(N-モルホリノ)-プロパンスルホン酸
PBS: リン酸緩衝生理食塩水
PMSF: フェニルメタンスルホニルフルオリド
RIPA: 例えば、50 mM Tris-HCl (pH 7.4)、150 mM NaCl、1 mM PMSF、1 mM EDTA、5 μg/ml Aprotinin、5 μg/ml Leupeptin、1% Triton x-100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDSを含む、細胞溶解バッファー
SDS: ドデシル硫酸ナトリウム
TBME: Tert-ブチル メチル エーテル
THF: テトラヒドロフラン
Tris: 2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール
【0078】
化合物の精製および確認
本発明の化合物を、2690 Separation Moduleを装備したWaters Milleniumクロマトグラフィーシステム(Milford, Massachusetts)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した。分析カラムには、Alltech (Deerfield, Illinois)から入手したAlltima C-18逆相カラム、4.6 x 250 mmを使用した。グラジエント溶離法を使用し、典型的には、5% アセトニトリル/95% 水で開始し、100% アセトニトリルまで変化させた(40分間にわたって)。すべての溶媒は、0.1% トリフルオロ酢酸(TFA)を含んでいた。化合物を、220 nmまたは254 nmでの紫外線(UV)吸収により検出した。HPLC溶媒は、Burdick and Jackson (Muskegan, Michigan)、またはFisher Scientific (Pittsburg, Pennsylvania)から入手した。いくつかの例では、純度は、例えば、Baker-Flex Silica Gel 1B2-Fフレキシブルシートのような、裏面ガラスまたはプラスチックのシリカゲルプレートを用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)により評価した。TLCの結果は、紫外線を照射するか、または既知のヨウ素蒸気およびその他のさまざまな染色技術により、肉眼で容易に検出された。
【0079】
質量分光分析は2種類のLCMS装置のうちの一つで行った: Waters社製System (Alliance HT HPLCおよびMicromass ZQ質量分析装置; カラム: Eclipse XDB-C18, 2.1 x 50 mm; 溶媒系: 0.05% TFAを含む水中の5-95% アセトニトリル; 流速0.8 mL/分; 分子量範囲150-850; コーン電圧20 V; カラム温度40℃)またはHewlett Packard社製System (Series 1100 HPLC; カラム: Eclipse XDB-C18, 2.1 x 50 mm; 溶媒系: 0.05% TFAを含む水中の1-95% アセトニトリル; 流速0.4 mL/分; 分子量範囲150-850; コーン電圧50 V; カラム温度30℃)。すべての質量は、プロトン化した親イオンの質量として示す。
【0080】
GCMS分析は、Hewlet Packard分析装置(Mass Selective Detector 5973を装備したHP6890 Seriesガスクロマトグラフィー; 注入量: 1 μL; 初期カラム温度: 50℃; 最終カラム温度: 250℃; ランプ時間: 20分; ガス流量: 1 mL/分; カラム: 5% フェニルメチルシロキサン, Model #HP 190915-443, カラムサイズ: 30.0 m x 25 μm x 0.25 μm)で行った。
【0081】
分取分離は、Flash 40 クロマトグラフィーシステムおよびKP-Sil, 60A (Biotage, Charlottesville, Virginia)を用いるか、またはC-18逆相カラムを用いたHPLCにより行った。Flash 40 Biotageシステムに使用した典型的な溶媒は、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチル、ヘキサンおよびトリエチルアミンであった。逆相クロマトグラフィーに使用した典型的な溶媒は、0.1% トリフルオロ酢酸を含む種々の濃度のアセトニトリルおよび水であった。
【0082】
4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチルピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オンの合成
【化8】

【0083】
A. 5-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-2-ニトロアニリンの合成
手順A
【化9】

【0084】
5-クロロ-2-ニトロアニリン(500 g、2.898 mol)および1-メチル ピペラジン(871 g、8.693 mol)を、コンデンサーを装備した2000 mLフラスコに入れ、N2でパージした。フラスコを100℃の油浴に入れ、HPLCにより決定されたとおり、5-クロロ-2-ニトロアニリンが完全に反応するまで加熱した(典型的には、一夜)。HPLCにより、5-クロロ-2-ニトロアニリンの消失を確認した後、反応混合物を、機械的に撹拌しながら、2500 mLの室温水に直接注いだ(まだ、温かい状態)。生じた混合物を、室温に到達するまで撹拌し、次いで、それをろ過した。その結果得られた黄色固体を1000 mLの水に加え、30分間撹拌した。生じた混合物をろ過し、生じた固体をTBME (500 mL、2X)で洗浄し、その後、ラバーダムを用いて、真空下で1時間、乾燥させた。生じた固体を乾燥トレイに移し、一定重量まで、50℃で、真空オーブンで乾燥させ、670 g (97.8%)の表題化合物を黄色粉末として得た。
【0085】
手順B
5-クロロ-2-ニトロアニリン(308.2 g、1.79 mol)を、オーバーヘッドスターラー、コンデンサー、ガス注入口、付加ロート、および検温器プローブを装備した4つ口の5000 mL丸底フラスコに加えた。次いで、フラスコをN2でパージした。1-メチルピペラジン(758.1 g、840 mL、7.57 mol)および200 標準強度(proof)エタノール(508 mL)を、撹拌しながら、反応フラスコに加えた。フラスコを再びN2でパージし、反応をN2下で維持した。フラスコを、97℃(+/- 5℃)の内部温度まで、加熱マントルで加熱し、HPLCにより決定されたとおり、反応が完了するまで(典型的には、約40時間)、その温度で維持した。反応が完了した後、加熱を中断し、反応物を、撹拌しながら、約20℃から25℃の内部温度まで冷却し、反応物を2から3時間撹拌した。5-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-2-ニトロアニリンの種晶(0.20 g、0.85 mmol)を、沈殿がすでに生じていないとき、反応混合物に加えた。内部温度を、約20℃から30℃の温度範囲に維持しながら、水(2,450 mL)を、約1時間、撹拌反応混合物に加えた。水の添加を完了した後、生じた混合物を、20℃から30℃の温度で、約1時間撹拌した。次いで、生じた混合物をろ過し、フラスコおよびろ過ケーキを水で洗浄した(3 x 2.56 L)。明黄色固体生成物を、真空オーブンを用いて、約50℃で真空下、416 gの一定重量(98.6%収量)まで乾燥させた。
【0086】
手順C
5-クロロ-2-ニトロアニリン(401 g、2.32 mol)を、オーバーヘッドスターラー、コンデンサー、ガス注入口、付加ロート、および検温器プローブを装備した4つ口の12 L丸底フラスコに加えた。次いで、フラスコをN2でパージした。1-メチルピペラジン(977 g、1.08 L, 9.75 mol)および100% エタノール(650 mL)を、撹拌しながら、反応フラスコに加えた。フラスコを再びN2でパージし、反応をN2下で維持した。フラスコを、97℃(+/- 5℃)の内部温度まで、加熱マントルで加熱し、HPLCにより決定されたとおり、反応が完了するまで(典型的には、約40時間)、その温度で維持した。反応が完了した後、加熱を中断し、反応物を、撹拌しながら、約80℃の内部温度まで冷却し、そして、水(3.15 L)を、内部温度を82℃(+/- 3℃)に維持しながら、1時間にわたって、付加ロートにより混合物に加えた。水の添加を完了した後、加熱を中断し、反応混合物を、4時間未満で、20-25℃の内部温度まで冷却した。次いで、反応混合物を、20-30℃の内部温度でさらに1時間、撹拌した。その後、生じた混合物をろ過し、フラスコおよびろ過ケーキを水(1 x 1 L)、50% エタノール(1 x 1L)、および95% エタノール(1 x 1L)で洗浄した。明黄色固体生成物を乾燥パンに入れ、真空オーブンを用いて、約50℃で真空下、546 gの一定重量(99%収量)まで乾燥させた。
【0087】
B. [6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-酢酸 エチル エステルの合成
手順A
【化10】

【0088】
5000 mLの4つ口フラスコに、スターラー、検温器、コンデンサー、およびガス注入口/排気口を装備した。そのフラスコに、265.7 g (1.12 mol. 1.0 eq)の5-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-2-ニトロアニリンおよび2125 mLの200標準強度EtOHを充填した。生じた溶液を、N2で15分間、パージした。次いで、20.0 gの5% Pd/C (50% H2O w/w)を加えた。反応物を、40-50℃(内部温度)で激しく撹拌し、H2を、混合物中にバブリングした。反応を、HPLCにより、5-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-2-ニトロアニリンの消失に関して、1時間ごとにモニターした。典型的な反応時間は、6時間であった。
【0089】
すべての5-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-2-ニトロアニリンが反応物から消失した後、該溶液を、N2で15分間、パージした。次いで、440.0 g (2.25 mol)のエチル 3-エトキシ-3-イミノプロパノアートヒドロクロライドを、固体として加えた。反応が完了するまで、反応物を、40-50℃(内部温度)で撹拌した。反応を、HPLCにより、ジアミノ化合物の消失に関してモニターした。典型的な反応時間は、1-2時間であった。反応の完了後、室温まで冷却し、セリットろ過物質のパッドを通してろ過した。セリットろ過物質を無水EtOH (2 x 250 mL)で洗浄し、ろ液を減圧下で濃縮し、濃褐色/橙色油状物を得た。生じた油状物を、850 mLの0.37% HCl溶液に入れた。次いで、固体NaOH (25 g)を一度に加え、沈殿を形成した。生じた混合物を1時間撹拌し、次いで、ろ過した。固体をH2O (2 x 400 mL)で洗浄し、真空オーブン中で、50℃で乾燥させ、251.7 g (74.1%)の[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-酢酸 エチル エステルを淡黄色粉末として得た。
【0090】
手順B
5000 mLの4つ口被覆フラスコに、スターラー、コンデンサー、検温器、ガス注入口、および油バブラーを装備した。そのフラスコに、300 g (1.27 mol)の5-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-2-ニトロアニリンおよび2400 mLの200標準強度EtOHを充填した(反応は、95% エタノールで行い得、それを用いて行われているので、この反応のために、200 標準強度エタノールを使用する必要はない)。生じた溶液を撹拌し、N2で15分間、パージした。次いで、22.7 gの5% Pd/C (50% H2O w/w)を、反応フラスコに加えた。反応管を、N2で15分間、パージした。N2でパージ後、フラスコを通してゆっくりではあるが一定の速度でH2を維持することにより、反応管をH2でパージした。反応物を、45-55℃(内部温度)で撹拌し、5-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-2-ニトロアニリンが、HPLCにより決定されたとおり、完全に消失するまで、H2を、混合物中にバブリングした。典型的な反応時間は、6時間であった。
【0091】
すべての5-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-2-ニトロアニリンが反応物から消失した後、溶液を、N2で15分間パージした。ジアミン中間体は、空気に感受性があるので、空気に曝されないように注意した。500 g (2.56 mol)のエチル 3-エトキシ-3-イミノプロパノアートヒドロクロライドを、約30分間にわたって、反応混合物に加えた。ジアミンが、HPLCにより決定されたとおり、完全に消失するまで、反応物を、N2下、45-55℃(内部温度)で撹拌した。典型的な反応時間は、約2時間であった。反応が完了した後、反応物を、温めながら、セリットのパッドを通してろ過した。次いで、反応フラスコおよびセリットを、200 標準強度EtOH (3 x 285 mL)で洗浄した。ろ液を、5000 mLフラスコで合わせ、約3300 mLのエタノールを、真空下で除去し、橙色油状物を得た。水(530 mL)および次いで1M HCL (350 mL)を生じた油状物に加え、生じた混合物を撹拌した。内部温度を約25-30℃に維持しながら、30% NaOH (200 mL)を20分間にわたり加えて、pHを9から10にし、生じた溶液を、激しく撹拌した。生じた懸濁液を、内部温度を約20-25℃に維持しながら、約4時間撹拌した。生じた混合物をろ過し、ろ過ケーキをH2O (3 x 300 mL)で洗浄した。集めた固体を、真空オーブンで、真空下、50℃で、一定重量まで乾燥させ、345.9 g (90.1%)の[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-酢酸 エチル エステルを淡黄色粉末として得た。他の仕上げ(work up)手順では、ろ液を合わせて、エタノールを、少なくとも約90%が除去されるまで、真空下で除去した。次いで、中性pHの水を生じた油状物に加え、溶液を約0℃まで冷却した。次いで、水性20% NaOH溶液を、ゆっくり加えながら、素早く撹拌し、9.2までのpHをもたらした(pHメーターで読み取った)。その後、生じた混合物をろ過し、上記したとおり乾燥させた。他の仕上げ手順は、97%程の高い収量で淡褐色から黄色の生成物を得た。
【0092】
[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-酢酸 エチル エステルの水分量を減少させる方法
以前に完成させ、約8-9% H2Oの水分量まで乾燥させた[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-酢酸 エチル エステル (120.7 グラム)を、2000 mLの丸底フラスコに入れ、無水エタノール(500 mL)に溶解した。黄色溶液を、すべての溶媒を除去するまで、加熱しながら、回転式エバポレーターを用いて、濃い油状物まで濃縮した。該手順を2回以上繰り返した。その結果、得られた濃油状物がフラスコ内に残り、50℃に加熱した真空オーブンに一夜入れた。Karl Fisher解析の結果は、5.25%の水分量を示した。この方法により得られた低下した水分量は、下記の実施例の手順において、増加した収量を提供した。トルエンおよびTHFのような他の溶媒を、この乾燥工程のために、エタノールの代わりに使用し得る。
【0093】
C. 4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オンの合成
手順A
【化11】

【0094】
[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-酢酸 エチル エステル(250 g, 820 mmol) (上記したとおり、エタノールで乾燥させた)を、コンデンサー、機械的スターラー、検温器を装備した5000 mLフラスコ内で、THF (3800 mL)に溶解し、アルゴンでパージした。2-アミノ-6-フルオロ-ベンゾニトリル (95.3 g, 700 mmol)を溶液に加え、内部温度を40℃まで上げた。すべての固体が溶解し、溶液温度が40℃に到達したとき、固体KHMDS (376.2 g, 1890 mmol)を、5分間にわたって加えた。カリウム塩基の添加が完了した後、不均一の黄色溶液を得て、内部温度を62℃まで上げた。60分後、内部温度を40℃まで下げ、反応が完了したことをHPLCにより決定した(出発物質または非環化(uncyclized)中間体が存在しない)。次いで、濃い反応混合物を、H2O (6000 mL)に注ぎ、生じた混合物を、それが室温に到達するまで撹拌することにより、クエンチした。その後、混合物をろ過し、ろ過パッドを水(1000 mL 2X)で洗浄した。明黄色固体を乾燥トレイに入れ、50℃で一夜、真空オーブンで乾燥させ、155.3 g (47.9%)の目的物質4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オンを得た。
【0095】
手順B
5000 mLの4つ口被覆フラスコに、蒸留装置、検温器、N2ガス注入口、付加ロート、および機械的スターラーを装備した。[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-酢酸 エチル エステル (173.0 g, 570 mmol)を反応装置に入れ、N2で15分間、パージした。次いで、乾燥THF (2600 mL)を、撹拌しながらフラスコに入れた。すべての固体が溶解した後、溶媒を、必要により加熱を用いて、蒸留により除去した(真空または大気圧(より高い温度は、水を除去するのを助ける))。1000 mLの溶媒を除去した後、蒸留を停止し、反応物をN2でパージした。次いで、1000 mLの乾燥THFを反応管に加え、すべての固体が溶解したとき、さらに1000 mLの溶媒を除去するまで、再び、蒸留を行った(真空または大気圧)。乾燥THFを加え、溶媒を除去するこの工程を、少なくとも4回繰り返し(4回目の蒸留で、60%の溶媒が除去される(最初の3回の蒸留で、ちょうど40%が除去される))、その後、1 mLのサンプルを、Karl Fischer解析のために除去し、水分量を決定した。サンプルが0.20%未満の水を含んでいると解析が示したとき、反応を、次の段落で記載したとおり続けた。しかしながら、解析が0.20%より多くの水を含んでいることを示したとき、水分量が0.20%未満になるまで、上記の乾燥工程を続けた。
【0096】
前段落に記載した手順を用いて、約0.20%以下の水分量を達成した後、蒸留装置を、還流コンデンサーと置き換え、反応物に、2-アミノ-6-フルオロ-ベンゾニトリル(66.2 g, 470 mmol)を入れた(ある手順では、0.95当量を使用する)。次いで、反応物を、38-42℃の内部温度まで加熱した。内部温度が38-42℃に達すると、添加の間、内部温度を約38-50℃に維持しながら、KHMDS溶液(THF中の1313 g, 1.32 mol, 20% KHMDS)を、さらなる漏斗により、5分間、反応物に加えた。カリウム塩基の添加が完了すると、内部温度を38-42℃に維持しながら、反応物を3.5から4.5時間撹拌した(ある例では、それを30から60分間撹拌し、反応物は、その時間内に完了し得る)。次いで、反応サンプルをHPLCにより解析した。反応が完了していないと、さらなるKHMDS溶液を、5分間にわたってフラスコに加え、反応物を、38-42℃で45-60分間、撹拌した(KHMDS溶液の量は、下記のとおり決定した: IPC比率が< 3.50であるとき、125 mLを加え; 10.0 ≧ IPC比率 ≧ 3.50であるとき、56 mLを加え; 20.0 ≧ IPC比率 ≧ 10であるとき、30 mLを加えた。IPC比率は、比環化中間体に相当する領域で割った4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オン)に相当する領域に等しい)。反応が完了すると(IPC比率 > 20)、反応装置を、25-30℃の内部温度まで冷却し、25-30℃の内部温度を維持しながら、水(350 mL)を、15分間にわたって、反応装置に入れた(あるいは、反応を40℃で行い、水を5分以内に加える。素早いクエンチは、時間とともに形成される不純物の量を減少させる)。次いで、還流コンデンサーを、蒸留装置と置き換え、溶媒を、所望により加熱用いて、蒸留により除去した(真空または大気圧)。1500 mLの溶媒を除去した後、蒸留を中断し、反応物をN2でパージした。次いで、内部温度を20-30℃に維持しながら、水(1660 mL)を反応フラスコに加えた。次いで、反応混合物を、20-30℃で30分間撹拌し、その後、5-10℃の内部温度まで冷却し、1時間撹拌した。生じた懸濁液をろ過し、フラスコおよびろ過ケーキを、水(3 x 650 mL)で洗浄した。その結果得られた固体を、真空オーブンで、真空下、50℃で、一定重量まで乾燥させ、103.9 g (42.6%収量)の4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オンを黄色粉末として得た。
【0097】
手順C
【化12】

[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-酢酸 エチル エステル(608 g, 2.01 mol) (乾燥)および2-アミノ-6-フルオロ-ベンゾニトリル(274 g, 2.01 mol)を、加熱マントルに置いた4つ口の12 Lフラスコ(コンデンサー、機械的スターラー、ガス注入口、および検温器を装備している)に入れた。反応管をN2でパージし、トルエン(7.7 L)を撹拌しながら、反応混合物に入れた。反応管をN2で再びパージし、N2下で維持した。混合物の内部温度を、63℃の温度(+/- 3℃)まで上げた。混合物の内部温度を、およそ2.6 Lのトルエンを、減圧下、フラスコから蒸留させながら、63℃(+/- 3℃)に維持した(380 +/- 10 トール、ト字管t = 40℃ (+/- 10℃) (Karl Fischer解析は、混合物中の水分量を調べるために使用した)。水分量が0.03%より多いとき、さらに2.6 Lのトルエンを加え、蒸留を繰り返した。この工程を、水分量が0.03%未満になるように繰り返した。水分量が0.03%未満になったとき、加熱を中断し、反応物を、N2下で、内部温度が17-19℃になるまで冷却した。次いで、THF中のカリウム t-ブトキシド(THF中の20%; 3.39 kg、6.04 moles カリウム t-ブトキシド)を、反応物の内部温度が20℃以下を維持するような速度で、N2下、反応混合物に加えた。カリウム t-ブトキシドの添加が完了した後、反応物を、20℃未満の内部温度で30分間撹拌した。次いで、温度を25℃まで上げ、反応物を、少なくとも1時間、撹拌した。次いで、温度を30℃まで上げ、反応物を、少なくとも30分間、撹拌した。次いで、出発物質の消失が完了するまで、HPLCを用いて反応混合物をモニターした(典型的には、2-3時間で、両方の出発物質は、消失した(領域% HPLCで0.5%未満))。反応が2時間後に完了しなかった場合、さらに0.05当量のカリウム t-ブトキシドを一度に加え、HPLCが反応の完了を示すまで、工程を行った。反応が完了した後、650 mLの水を、撹拌した反応混合物に加えた。次いで、反応物を50℃の内部温度まで温め、THFを、減圧下、反応混合物から蒸留により除去した(約3 Lの量)。次いで、付加ロートを用いて、水(2.6 L)を滴下で加えた。次いで、混合物を室温まで冷却し、少なくとも1時間撹拌した。その後、混合物をろ過し、ろ過ケーキを、水(1.2 L)、70% エタノール(1.2 L)、および95% エタノール(1.2 L)で洗浄した。明黄色固体を乾燥トレイに入れ、一定重量が得られるまで、真空オーブンで、50℃で乾燥させ、674 g (85.4%)の望む4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オンを得た。
【0098】
4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オンの精製
コンデンサー、検温器、N2 ガス注入口、および機械的スターラーを装備した3000 mLの4つ口フラスコを、加熱マントルに置いた。次いで、フラスコに、4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オン(101.0 g, 0.26 mol)を入れ、黄色固体を、95% エタノール(1000 mL)で懸濁し、撹拌した。ある場合には、8:1の溶媒比を使用する。次いで、懸濁液を、約1時間撹拌しながら、穏やかな還流(約76℃の温度)まで加熱した。次いで、反応物を、還流しながら45-75分間撹拌した。この時点で、加熱をフラスコから除去し、懸濁液を、25-30℃の温度まで冷却した。次いで、懸濁液をろ過し、ろ過パッドを水(2 x 500 mL)で洗浄した。その後、黄色固体を乾燥トレイに入れ、一定重量が得られるまで、真空オーブンで、50℃で乾燥させ(典型的には、16時間)、97.2 g (96.2%)の精製生成物を黄色粉末として得た。
【0099】
D. 4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オンの乳酸塩の製造
【化13】

3000 mLの4つ口被覆フラスコは、コンデンサー、検温器、N2 ガス注入口、および機械的スターラーを装備していた。反応管を、少なくとも15分間、N2でパージし、次いで、4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オン(484 g, 1.23 mol)を入れた。D,L-乳酸(243.3 g、1.72 molの単量体-下記の段落を参照)、水(339 mL)、およびエタノール(1211 mL)の溶液を調製し、次いで、反応フラスコに入れた。撹拌を中程度の速度で開始し、反応を68-72℃の内部温度まで加熱した。反応の内部温度を、15-45分間、68-72℃に維持し、次いで、加熱を中断した。生じた混合物を、10-20ミクロンフリットを通してろ過し、12 Lフラスコ中にろ液を集めた。12 Lのフラスコに、内部検温器、還流コンデンサー、付加ロート、ガス注入口および排気口、ならびにオーバーヘッドスターラーを装着した。次いで、ろ液を中程度の速度で撹拌し、還流まで加熱した(約78℃の内部温度)。穏やかな還流を維持しながら、エタノール(3,596 mL)を、20分間にわたって、フラスコに入れた。次いで、反応フラスコを、15-25分間、約64-70℃の範囲の内部温度まで冷却し、この温度を、約30分間維持した。反応装置により、結晶を調べた。結晶が存在しないとき、4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オン (484 mg, 0.1 mole %)の乳酸塩の結晶をフラスコに加え、反応物を、64-70℃で30分間撹拌し、再び、結晶に関してフラスコを調べた。いったん結晶が存在すると、撹拌を低速まで減少させ、反応物を、さらに90分間、64-70℃で撹拌した。次いで、反応物を、約2時間にわたって、約0℃まで冷却し、生じた混合物を、25-50ミクロンフリットフィルターを通してろ過した。反応装置をエタノール(484 mL)で洗浄し、内部温度が約0℃になるまで撹拌した。冷エタノールを、ろ過ケーキを洗浄するために使用し、この手順を、2回以上繰り返した。集めた固体を、真空オーブンで、真空下、50℃で、一定重量まで乾燥させ、510.7 g (85.7%)の4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オンの結晶黄色乳酸塩を得た。典型的には、ラバーダムまたは不活性状態を、ろ過工程の間に使用した。乾燥固体は、あまり吸湿性があるようには思われなかったが、湿潤ろ過ケーキは、水を吸収する傾向があり、粘着質になった。湿潤ケーキの大気への延長した曝露を避けるように注意した。
【0100】
市販の乳酸は、一般に、約8-12% w/wの水を含み、単量体乳酸の他に二量体および三量体を含む。乳酸二量体および単量体のモル比は、一般に、1.0:4.7である。市販グレードの乳酸は、単量体乳酸塩が選択的に反応混合物から沈殿するので、下記の工程で使用し得る。
【0101】
代謝産物の同定
4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-ピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]-1H-キノリン-2-オン(化合物 1)の2つの代謝産物を同定し、本明細書の一部とした引用文献に記載された2週間毒性試験により、ラットのプール血漿で特徴づけた。2つの同定した代謝産物は、下記したとおり、ピペラジン N-オキシド化合物(化合物2)およびN-デスメチル化化合物(化合物3)であった。
【化14】

【0102】
4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチル-4-オキシドピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]キノリン-2(1H)-オン(化合物 2)および4-アミノ-5-フルオロ-3-(6-ピペラジン-1−イル-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル)キノリン-2(1H)-オン(化合物 3)の合成
【0103】
化合物1の同定した代謝産物の構造を確認するために、独立して、代謝産物を合成した。
【0104】
化合物2、すなわち、化合物1のN-オキシド代謝産物は、下記のスキームで示したとおり合成した。化合物1を、エタノール、ジメチルアセトアミドおよび過酸化水素の混合物で加熱した。反応の完了後、化合物2を、ろ過により単離し、エタノールで洗浄した。所望により、生成物をさらに、カラムクロマトグラフィーにより精製し得る。
【化15】

【0105】
化合物3、すなわち、化合物1のN-デスメチル代謝産物は、下記のスキームで示したとおり合成した。5-クロロ-2-ニトロアニリンをピペラジンで処理し、4を得て、次いで、ブチルオキシカルボニル(Boc)基で保護化して、5を得た。ニトロ基の還元、その後の3-エトキシ-3-イミノプロピオン酸 エチル エステルとの縮合により、6を得た。塩基としてカリウムヘキサメチルジシラジドを用いた、6と6-フルオロアントラニロニトリルとの縮合により、7を得た。粗生成物7を、水性HClで処理し、精製後、望む代謝産物を黄色/褐色固体として得た。
【化16】

【0106】
アッセイ手順
チロシンキナーゼ
多くのタンパク質チロシンキナーゼのキナーゼ活性を、ATPおよびリン酸化のためのチロシンアミノ酸残基を含む適当なペプチドもしくはタンパク質を提供し、リン酸部分のチロシン残基への移動をアッセイすることにより測定した。FLT-1 (VEGFR1)、VEGFR2、VEGFR3、Tie-2、PDGFRα、PDGFRβ、およびFGFR1受容体の細胞質ドメインに相当する組み換えタンパク質を、バキュロウイルス発現系(InVitrogen)を用いて、Sf9昆虫細胞で発現させ、Glu抗体相互作用(Gluエピトープタグ化構築体のために)によるか、または金属イオンクロマトグラフィー(His6 (配列番号1)タグ化構築体)により、精製し得る。各アッセイのために、試験化合物をDMSOで連続希釈し、次いで、適当なキナーゼ反応バッファー+ATPと混合した。キナーゼタンパク質および適当なビオチン化ペプチド基質を、最終濃度が50-100μLになるように加え、反応物を、室温で1-3時間インキュベートし、その後、25-50μLの45 mM EDTA、50 mM Hepes pH 7.5の添加により反応を止めた。停止反応混合物(75μl)をストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート(Boehringer Mannheim)に移し、1時間インキュベートした。リン酸化ペプチド生成物を、ユーロピアム標識化抗ホスホチロシン抗体PT66を用いて、DELFIA時間分解蛍光システム(WallacまたはPE Biosciences)で測定した(抗体希釈のために、DELFIAアッセイバッファーに1 mM MgCl2を補充した修飾を有する)。時間分解蛍光を、Wallac 1232 DELFIA蛍光光度計またはPE Victor IIマルチシグナルリーダーに読み出した。50% 阻害のための各化合物の濃度(IC50)は、XL Fitデータ解析ソフトウェアを用いた非線形回帰により計算した。
【0107】
FLT-1、VEGFR2、VEGFR3、FGFR3、Tie-2、およびFGFR1キナーゼを、50 mM Hepes pH 7.0、2 mM MgCl2、10 mM MnCl2、1 mM NaF、1 mM DTT、1 mg/mL BSA、2μM ATP、および0.20-0.50μMの相当するビオチン化ペプチド基質でアッセイした。FLT-1、VEGFR2、VEGFR3、Tie-2、およびFGFR1キナーゼを、各々、0.1 μg/mL、0.05 μg/mL、または0.1 μg/mLで加えた。PDGFRキナーゼアッセイのために、ATPおよびペプチド基質濃度を、1.4 μM ATP、および0.25 μMビオチンGGLFDDPSYVNVQNL-NH2 (配列番号2)ペプチド基質まで変化させることを除いては上記したのと同じバッファー条件で、120 μg/mLの酵素を使用した。
【0108】
組み換えおよび活性型チロシンキナーゼFynおよびLckは、市販で入手可能であり、Upstate Biotechnologyから購入した。各アッセイのために、試験化合物をDMSOで連続希釈し、次いで、適当なキナーゼ反応バッファー+10 nM 33Pγ標識化ATPと混合した。キナーゼタンパク質および適当なビオチン化ペプチド基質を、150μLの最終濃度になるように加えた。反応物を、室温で3-4時間、インキュベートし、次いで、100 mM EDTAおよび50μM非標識ATPを含む100μLの反応停止バッファーを含んだストレプトアビジン被覆白色マイクロタイタープレート(Thermo Labsystems)に移すことにより反応を止めた。1時間のインキュベーション後、ストレプトアビジンプレートをPBSで洗浄し、200μLのMicroscint 20シンチレーション液を各ウェルに加えた。プレートを被覆し、TopCountを用いて計測した。50% 阻害のための各化合物の濃度(IC50)は、XL Fitデータ解析ソフトウェアを用いた非線形回帰により計算した。
【0109】
Fyn、Lckおよびc-ABLのためのキナーゼ反応バッファーは、50 mM Tris-HCl pH 7.5、15 mM MgCl2、30 mM MnCl2、2 mM DTT、2 mM EDTA、25 mM β-グリセロールリン酸、0.01% BSA/PBS、0.5 μMの適当なペプチド基質(ビオチン化Srcペプチド基質: FynおよびLckのために、ビオチン-GGGGKVEKIGEGTYGVVYK-NH2 (配列番号3))、1 μM非標識ATP、および1 nMキナーゼを含んでいた。
【0110】
c-KitまたはFLT-3のキナーゼ活性を、ATPおよびリン酸化のためのチロシンアミノ酸残基を含む適当なペプチドもしくはタンパク質を提供し、リン酸部分のチロシン残基への移動をアッセイすることにより測定した。c-KitまたはFLT-3受容体の細胞質ドメインに相当する組み換えタンパク質を購入した(Proquinase)。試験のために、例示化合物、例えば、4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチルピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]キノリン-2(1H)-オンをDMSOで希釈し、次いで、下記のキナーゼ反応バッファー+ATPと混合した。キナーゼタンパク質(c-KitまたはFLT-3)およびビオチン化ペプチド基質(ビオチン-GGLFDDPSYVNVQNL-NH2 (配列番号2))を、最終濃度が100μLになるように加えた。これらの反応物を、室温で2時間、インキュベートし、その後、50μLの45 mM EDTA、50 mM Hepes pH 7.5の添加により反応を止めた。停止反応混合物(75μl)をストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート(Boehringer Mannheim)に移し、1時間インキュベートした。リン酸化ペプチド生成物を、ユーロピアム標識化抗ホスホチロシン抗体PT66を用いて、DELFIA時間分解蛍光システム(WallacまたはPE Biosciences)で測定した(抗体希釈のために、DELFIAアッセイバッファーに1 mM MgCl2を補充した修飾を有する)。時間分解蛍光を、Wallac 1232 DELFIA蛍光光度計またはPE Victor IIマルチシグナルリーダーで決定した。50% 阻害のための各化合物の濃度(IC50)は、XL Fitデータ解析ソフトウェアを用いた非線形回帰により計算した。
【0111】
FLT-3およびc-Kitキナーゼを、50 mM Hepes pH 7.5、1 mM NaF、2 mM MgCl2、10 mM MnCl2および1 mg/mL BSA、8 μM ATPおよび1 μMの相当するビオチン化ペプチド基質(ビオチン-GGLFDDPSYVNVQNL-NH2 (配列番号2))でアッセイした。FLT-3およびc-Kitキナーゼの濃度は、2 nMでアッセイした。最終濃度1 μMのリン酸化ペプチド基質を、ユーロピアム標識化抗ホスホチロシン抗体(PT66)を用いてインキュベートした(Perkin Elmer Life Sciences, Boston, MA)。ユーロピアムは、時間分解蛍光を用いて検出した。IC50は、非線形回帰により計算した。
【0112】
FGFR2およびFGFR4を、下記の方法の各々を用いて、サードパーティベンダー(third party vendors)によりアッセイした。
【0113】
方法A: KinaseProfiler (Upstate/Millipore)直接放射(direct radiometric)アッセイを、下記のとおり使用した。25 μLの最終反応量で、FGFR2またはFGFR4 (ヒト、5-10 mU)を、8 mM MOPS pH 7.0、0.2 mM EDTA、2.5-10 mM MnCl2、0.1 mg/mL poly(Glu,Tyr) 4:1、10 mM Mg 酢酸塩および[γ32P-ATP](比放射能は、およそ500 cpm/pmolであり、濃度は、所望による)と共にインキュベートした。反応は、MgATP mixの添加により開始する。室温で40分間のインキュベーション後、5 μLの3%リン酸溶液の添加により反応を停止する。次いで、10 μLの反応物をFiltermat Aにスポットし、75 mM リン酸で、5分間を3回、メタノールで1回洗浄し、その後、乾燥させ、シンチレーション計測を行う。
【0114】
方法B: Millipore Z'-LYTE キナーゼアッセイ(Invitrogen)は、蛍光共鳴エネルギー移動に基づいており、下記のとおり使用した。2X FGFR2またはFGFR4/Tyr 04 Peptide Mixtureを、50 mM HEPES pH 7.5、0.01% BRIJ-35、10 mM MgCl2、4 mM MnCl2、1 mM EGTA、2 mM DTTで調製した。最終の10 μL Kinase Reactionは、50 mM HEPES pH 7.5、0.01% BRIJ-35、10 mM MgCl2、2 mM MnCl2、1 mM EGTA、1 mM DTT中の0.3-2.9 ng FGFR2もしくは2.4-105 ng FGFR4および2 μM Tyr 04 Peptideからなる。1時間のキナーゼ反応インキュベーション後、1:32に希釈した5 μLのDevelopment Reagent Bを加える。
【0115】
MIAタンパク質
ウエスタンブロット解析: CHL-1細胞または血漿を、本明細書に記載したとおり、MIAタンパク質に関してアッセイした。全血を、血漿の製造のために、BD microtainer(登録商標) セパレーターチューブ(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)で集めた。CHL-1細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS, Mediatech, Inc., Herndon, VA)で2回洗浄し、新鮮な1 mM フッ化フェニルメチルスルホニル、Complete Mini プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(溶解バッファーの2錠剤/25 mL) (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)および1X ホスファターゼ阻害剤カクテルII (Sigma Aldrich, St. Louis, MO)を含むRIPAバッファー(50 mM Tris HCl、pH 7.4、150 mM NaCl、1 mM EDTA、1 mM EGTA、2 mMオルトバナジウム酸ナトリウム、20 mM ピロリン酸、1% Triton X 100、1% デオキシコール酸ナトリウムおよび0.1% SDS)を用いて、氷上で20分間、溶解した。ライセートを遠心管に集め、4℃で20分間、14K RPMで回転させ、QIAshredderチューブ(QIAGEN, Inc., Valencia, CA)でろ過した。タンパク質濃度は、製造者のプロトコール(Pierce, Rockford, IL)に従い、BCAアッセイを用いて決定した。サンプルを、Novex(登録商標) 18% Tris-Glycine ゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、標準的な方法により、ウエスタンブロットのために加工した。MIAを、5%乾燥ミルクを含むTBST (0.1% Tween(登録商標)20を含む、Tris緩衝食塩水, Fisher Scientific, Hampton, NH)で1:1000に希釈したヤギポリクローナル抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いて検出し、4℃で一夜、インキュベートした。二次抗体は、1:5000に希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗ヤギ抗体(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を用いた。タンパク質バンドは、Enhanced Chemiluminescence (Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)を用いて視覚化した。等しいローディングおよびトランスファーは、β-アクチン検出(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)により確認した。2つの商業的供給源(Axxora, LLC, San Diego, CAおよびProSpec Tany TechnoGene, LTD, Rehovot, Israel)からのヒト組み換えMIAタンパク質(MW 12 kDa)を、ポジティブコントロールとして使用した。
【0116】
MIA ELISAアッセイ: 等しい数のヒト黒色腫および結腸直腸癌細胞(各細胞株のために〜250,000細胞)を、組織培養プレートに播種し、各細胞株のための培養培地を、48時間後に集めた。培養培地または血漿中のMIAのレベルを、製造者のプロトコール(Roche Diagnostics Corporation, Indianapolis, IN)に従い、市販のワンステップELISAキットにより測定した。試験サンプル中のMIA濃度を、3-37 ng/mLの範囲の標準曲線を用いて計算した。MIA濃度が最大標準濃度を超えると、サンプルを1:5に希釈し、再び、結果が標準曲線の範囲内になるようにアッセイした。データを、有意のレベルとしてP ≦ 0.05を用いて、スチューデントt検定(両側分布、2サンプル不等分散)により評価した。
【0117】
統計解析
線形回帰分析は、Microsoft Excel (Redmond, WA)を用いて行った。2つの処理群間における統計的な有意性を測定するために、スチューデントt検定を用いた。多重比較は、一方向分散分析(ANOVA)を用いて行い、異なる処理手段を比較するpost-testは、Student-Newman Keul’s検定法を用いて行った(SigmaStat, San Rafael, CA)。生存率の検討には、ログランク検定(Prism, San Diego, CA)を用いて、各種処理とビヒクルによる処理群間の生存率曲線の有意性を決定した。試験終了時に正常な健康状態にあって安楽死させたマウスは、長期生存したとし、この統計では削除した。p < 0.05における差は、統計的に有意であると見なした。
【0118】
黒色腫細胞株のウエスタン解析。黒色腫細胞株を氷冷PBSで洗浄し、プレートから集め、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Roche Diagnostics, Indianapolis, IN)および1 mM PMSF (Sigma)を含む、RIPAバッファー(20mM Tris、pH 8; 135 mM NaCl; 2 mM EDTA pH 8; 10% グリセロール; 1% Triton X-100; 0.1% SDS; 0.1% デオキシコール酸ナトリウム)で、4℃で1時間、溶解した。タンパク質ライセートを、14000 rpmで10分間、遠心分離し、生じた上清を集めた。タンパク質量は、BCAアッセイ(Pierce Chemical Company, Rockford, IL)を用いて決定した。全タンパク質を、Novex Tris-Glycine SDS-PAGE ゲル(Invitrogen)で電気泳動し、タンパク質を、0.45 μM ニトロセルロース膜(Invitrogen)にトランスファーした。FGFR-1、2、3および4のタンパク質レベルを検出するために、全タンパク質(100μg)を、Novex Tris-Glycine SDS-PAGE ゲル(Invitrogen)で電気泳動し、タンパク質を、0.45 μM ニトロセルロース膜(Invitrogen)にトランスファーした。膜を、5% 脱脂乾燥ミルク(ブロッキングバッファー)を含むTBS-T (0.1% Tween 20)で、最低1時間、4℃でブロックし、次いで、ブロッキングバッファー(全タンパク質)または5% BSA (ホスホ-タンパク質)を含む、ろ過TBS-T中の一次抗体を用いて、3-4時間または一夜、インキュベートした。ブロッキングバッファー中の二次抗マウスもしくは抗ウサギ抗体を、室温で1時間、インキュベートした。膜を、TBS-T (0.1% Tween20)で、3x15分間洗浄し、ECLウエスタン検出(Amersham Biosciences)を行い、その後、Kodakフィルムに曝した。ウエスタン解析は、FGFR-1 (Novus Biologicals ab10646)、FGFR-2 (Novus Biologicals ab5476)、FGFR3 (Novus Biologicals ab10649)およびFGFR-4 (Santa Cruz C-16)に特異的な抗体を用いて行った。
【0119】
クローン形成アッセイ。クローン形成生存アッセイを、修飾した二層軟寒天アッセイを用いて、24ウェルプレートフォーマットで行った。簡潔には、底層は、20% ウシ胎児血清、0.01% w/v ゲンタマイシンおよび0.75% 寒天を補充した0.2 mL/ウェルのイスコフ改変ダルベッコ培地(Invitrogen)から構成された。ヒト黒色腫細胞株を、NMRI nu/nuマウスにおいて、皮下で増殖する固体ヒト腫瘍異種移植片として、連続継代で増殖させた。単一細胞懸濁液は、機械的な解離および次のRPMI 1640-Medium (Invitrogen)中のIV型コラゲナーゼ(41 U/mL, Sigma)、DNase I (125 U/mL, Roche)およびIII型ヒアルロニダーゼ(100 U/mL, Sigma)からなる酵素消化を用いたインキュベーション(37℃で30分間)により作製した。細胞を、200 μmおよび50 μmメッシュサイズの篩を通過させ、滅菌PBSで2回洗浄した。細胞(1.5x104から6x104)を、0.4%寒天を補充した培養培地に、一つずつ播種し、基底層に入れ、さまざまな濃度の化合物1に曝した後に、湿潤雰囲気下、37℃、7.5% 二酸化炭素で8 - 20日間、インキュベートした。コロニー成長(> 50 μmの直径)に関して、顕微鏡で細胞をモニターした。最大のコロニー形成時に、自動イメージ解析システム(OMNICON 3600, Biosys GmbH)で計測を行った。
【0120】
薬剤効果は、処理したウェルにおける平均コロニー数と未処理コントロールの平均コロニー数の比較により得られたコロニー形成割合の観点で示した(相対的なコロニー数は、試験/コントロール、すなわち、T/C-値[%]としてプロットした)。EC50-、EC70-およびEC90-値は、それぞれ、50%、70%および90%までコロニー形成を阻害するのに必要とされる薬剤の濃度であった。各実験のためのポジティブコントロールとして、1000 μg/mLの濃度の5-FU (Medac)を、コントロールの< 30%のコロニー生存を達成するために使用した。
【0121】
インビボ FGF仲介マトリゲル血管新生アッセイ。簡潔には、0.5 mL マトリゲル(Becton Dickinson, Bedford, MA)およびウシ2 μg bFGF (Chiron Corporation; Emeryville, CA)の混合物を、雌BDF1マウス(Charles River, Wilmington, MA)の皮下に埋め込んだ。ビヒクルまたは化合物1を、マトリゲルの埋め込み後、8日間毎日、経口投与した。血管形成は、それらを動物から除去した後、マトリゲルプラグでヘモグロビンレベルを測定することにより定量した。ヘモグロビン量は、製造者の指示に従い、Drabkinの手順(Sigma Diagnostics, St. Louis, MO)により測定した。
【0122】
動物。Charles River Laboratories, Inc. (Wilmington, MA)から入手した免疫欠損Nu/Nu雌マウス(4-8週齢)を、12時間の明暗周期で、滅菌filter-topケージ内の隔離部屋(barrier facility)で飼育し、滅菌粗粉および水を不断給餌した。マウスの新生児の皮下にIDチップを埋め込み、次いで、試験開始前に少なくとも7日間、順化を行った。すべての動物実験は、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care Internationalに認可された施設で、Institutional Animal Care and Use CommitteeおよびGuide for The Care and Use of Laboratory Animals (National Research Council)のすべてのガイドラインに従い行った。
【0123】
インビボ有効性試験のための細胞培養。ヒト黒色腫細胞株A375Mを、10% FBS、1% ビタミン、非必須アミノ酸(NEAA)およびピルビン酸ナトリウムを含むEMEM培地で、5% CO2を含む湿潤雰囲気下、37℃で、6代培養した。ヒト黒色腫細胞株CHL-1を、低グルタミン + 10% FBSを含むDMEM培地で、5% CO2を含む湿潤雰囲気下、37℃で、6代培養した。
【0124】
A375 (突然変異体B-Raf)およびCHL-1 (野生型B-Raf)モデルにおける、単剤化合物1のインビボ有効性。腫瘍細胞を埋め込む当日に、腫瘍細胞を集め、2.5x107 細胞/mLで、HBSS (A375細胞)または50% HBSS + 50% マトリゲル(CHL-1細胞; Becton Dickenson and Company, Franklin Lakes, NJ)に再懸濁した。細胞を、5 x 106 細胞/200μL/マウスで、右脇腹に皮下注射した。
【0125】
平均腫瘍容積が〜200 mm3 (細胞接種後、12-15日間)に到達したとき、マウスを、腫瘍容積に基づいて、無作為に9もしくは10の群に分け、10、30、60または80 mg/kgの毎日の経口投与で、ビヒクルまたは化合物1を投与した。群サイズは、群あたり9匹の動物(A375試験)または群あたり10匹の動物(CHL-1試験)であった。化合物1 (バッチ41)を、5 mMクエン酸で調製した。腫瘍容積および体重を、Study Director 1.4 ソフトウェア(Studylog Systems, Inc., So. San Francisco, CA)を用いて、週に2-3回評価した。腫瘍のカリパス測定は、式: 1/2 [長さ(mm) x 幅(mm)]2)を用いて、平均腫瘍容積(mm3)に変換した。腫瘍成長阻害(TGI)は、[1-T/C] x 100%(ここで、T = 試験群の平均腫瘍容積およびC = コントロール群の平均腫瘍容積(単剤試験))として計算した。処理対ビヒクルにおける平均腫瘍容積の比較は、両側スチューデントt検定(Excelソフトウェア)を用いて評価した。
【0126】
CHL-1試験では、また、黒色腫により分泌される黒色腫マーカー黒色腫阻害活性(MIA)タンパク質の血漿レベルを測定した。
【0127】
化合物 1 + カルボプラチン + パクリタキセル組合わせ剤インビボ有効性試験: 雌nu/nuマウス(6-8週齢)の右脇腹に、3x106 A375MもしくはCHL-1細胞(50%マトリゲル/0.1 mL/マウスでの5 x 106細胞)を皮下注射した。処理は、平均腫瘍容積が200-250 mm3になったとき、開始した(試験の0日目; n=10 マウス/群)。処理は、薬剤ビヒクル単独、qd; カルボプラチン(50 mg/kg) + パクリタキセル (20もしくは25 mg/kg; 1x/wk x 4 wks); 化合物1 (30もしくは50 mg/kg); 4週間毎日(qd)または化合物1およびカルボプラチン + パクリタキセルの組み合わせ療法(示した用量で; 1日目)からなる。
【0128】
腫瘍容積および体重は、Study Director 1.4ソフトウェア(Studylog Systems, Inc., So. San Francisco, CA)を用いて、毎週2-3回測定した。腫瘍のカリパス測定は、式: 1/2 [長さ(mm) x 幅(mm)]2)を用いて、平均腫瘍容積(mm3)に変換した。腫瘍成長阻害(TGI)は、[1-{(処理群の平均腫瘍容積 - 無作為な腫瘍容積)/コントロール群の平均腫瘍容積 - 無作為な腫瘍容積} x 100で計算した。TGIは、ビヒクルの平均腫瘍容積が〜1500-2000 mm3であるとき計算した。応答は、処理開始時の各動物の腫瘍容積と比較して、完全応答(CR、測定不能な腫瘍)か、または部分応答(PR、50-99% 腫瘍容積減少)かの形で定義した。
【0129】
組み合わせ療法の予期される%腫瘍成長阻害率[組み合わせ処理の観察された% T/C (%T/Cobs)で割った、(%T/Cexp = %T/C 処理 1 x %T/C 処理 2)]が>1であるときを、相乗効果と定義した。%T/Cexp/%T/Cobs =1のときを相加効果と、%T/Cexp/%T/Cobs <1 (39)のときを拮抗作用と定義した。
【0130】
FGF-R細胞捕捉ELISAアッセイ。1日目、細胞の播種: HEK293細胞をトリプシン処理し、CASYカウンター(Schaerfe System)を用いて計測し、104 細胞/ウェルを、100 μLのDMEM 4.5 g/L グルコース、10 % FBS、1 % L-グルタミン中に、96ウェルプレート(TPP # 92096)に播種した。細胞を、37℃、5% CO2で24時間、インキュベートした。
【0131】
1日目、細胞トランスフェクションおよび試験プレートの被覆: HEK293細胞に、Fugene-6試薬(Roche #11814443001)を用いて、下記のとおり、pcDNA3.1-FGF-R1、pcDNA3.1-FGF-R2、pcDNA3.1-FGF-R3、pcDNA3.1-FGF-R4またはpcDNA3.1ベクターをトランスフェクトした。Fugene-6試薬(0.15 μL/ウェル)を、最初に、Optimem I (Gibco # 31985-047) (5 μL/ウェル)と混合し、その後、ベクターDNA(0.05 μL/ウェル)を添加した。このミックスを室温で15分間インキュベートした。次いで、5.2 μLのこの混合物を細胞に加えた。細胞を、37℃、5% CO2で24時間、インキュベートした。FluoroNunc 96ウェルプレート(Maxisorp black F96, Nunc # 437111A)を、2 μg/mLのα-FGF-R1 AB (R&D Systems # MAB766)、α-FGF-R2 AB (R&D Systems # MAB665)、α-FGF-R3 AB (R&D Systems # MAB766)またはα-FGF-R4 AB (R&D Systems # MAB685) ABで被覆した。FluoroNuncプレートを、4℃で一夜、インキュベートした。
【0132】
3日目、化合物の希釈、細胞処理および細胞加工: FluoroNunc被覆プレートを、0.05 % Tween(登録商標)20 (Sigma # P-1379)を含む200 μLのPBS/0で3回洗浄し、0.05 % Tween(登録商標)20、3 % Top Block (VWR-International # 232010)を含む200 μL/ウェルのPBS/0を用いて、室温で2時間、ブロックした。次いで、プレートを、0.05 % Tween(登録商標)20を含む200 μLのPBS/0で3回洗浄した。化合物(10 mMでストック)の連続希釈を、最初に、DMSO (Serva # 20385)で行った。最終希釈工程は、細胞において0.2 % DMSOを達成するために、増殖培地で行った。11.5 μLの各希釈物を、トリプリケートで、細胞に加えた。処理工程は、37℃で40分間、行った。細胞を、100 μL/ウェル ELISA溶解バッファー(50 mM Tris pH 7.5、150 mM NaCl、1 mM EGTA、5 mM EDTA、1 % Triton、2 mM NaVanadate、1 mM PMSFおよびプロテアーゼ阻害剤カクテルRoche # 11873580001)で溶解し、50 μLの細胞ライセートをFluoroNunc被覆プレートに移した。次いで、被覆プレートを、4℃で5時間、インキュベートした。プレートを、0.05 % Tween(登録商標)20を含む200 μL/ウェルのPBS/0で3回洗浄した。α-pTyr-AP AB (Zymed PY20 # 03-7722) (0.3 % TopBlock / PBS / 0.05 % Tween(登録商標)20で1:10000)を、50μL/ウェルで加えた。プレートを、4℃で一夜、インキュベートし、Thermowell(商標)シーラーで密閉した。
【0133】
4日目、アッセイ結果(revelation): FluoroNuncプレートを、0.05 % Tween(登録商標)20を含む200 μLのPBS/0で3回、H20で1回洗浄した。90 μL CDP-Star (Applied Biosystems # MS1000RY)を、各ウェルに加えた。プレートを、暗所、室温で、45分間インキュベートし、次いで、発光を、TOP Count NXT ルミノメーター(Packard Bioscience)を用いて測定した。
【0134】
結果
化合物1は、FGFRキナーゼ活性の有力な阻害因子であることを証明する
化合物1の特異性を、上記の精製酵素を用いたATP競合結合アッセイにより、種々のRTKに対して試験した。化合物1は、FLT3 (1 nM)を含むキナーゼに対して、非常に有力であることが見出され、c-KIT (2 nM), VEGFR1/2/3 (10 nM); FGFR1/3 (8 nM); PDGFRβ (27 nM)およびCSF-1R (36 nM)に対して、ナノモルオーダーでの活性を有した(表1A参照)。クラスIII、IVおよびV RTKに対する選択性を確認するために、化合物1を、PI3K/AktおよびMAPK(K)経路における他のキナーゼに対して試験し、ごくわずかな活性のみ(IC50 > 10 μM)を有することを見出した(表1A参照)。
【0135】
表1A. さまざまなRTKに対する4-アミノ-5-フルオロ-3-[6-(4-メチルピペラジン-1−イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2−イル]キノリン-2(1H)-オンの活性
【表1】

【0136】
多くのタンパク質チロシンキナーゼのキナーゼ活性を、化合物2および3に関して、上記の手順を用いて測定し、表1Bで示したIC50値を得た。
【0137】
表1B. 化合物2-3のIC50
【表2】

【0138】
ヒト黒色腫細胞におけるFGFR1-4の発現。FGFR1-4のタンパク質レベルを、一連のヒト初代黒色腫腫瘍移植片(Oncotest腫瘍:1341/3、1765/3、276/7、462/6、514/12、672/3、989/7)および細胞株(CHL-1、HMCB、SK-Mel-2、A375M、G361、SK-Mel-28、SK-Mel-31)について調べ、ウエスタン解析による4つのFGF受容体の相対的な発現をプロファイルした(図1)。各FGFRの抗体特異性は、各FGFRを発現する一過的発現FGFR+ 293T細胞からのタンパク質ライセートを用いて確認した(データは示していない)。
【0139】
図1で示したとおり、すべての黒色腫細胞は、細胞上に異なるパターンのFGFRを発現した。かなりのレベルのFGFR1 (SK-Mel-28を除く)、FGFR2 (MEXF 462を除く)、FGFR3 (G361を除く)が、黒色腫細胞で見出された。FGFR4発現は、CHL-1、HMCB、A375M、G361での高レベルの発現、276/7、514/12、672/3、989/7での中程度の発現、SK-Mel-2、462/6、1765/3での低レベルの発現、SK-Mel-28、SK-Mel-31および1341/3での未検出と、わずかに一致しなかった。
【0140】
黒色腫腫瘍細胞に対する化合物1のインビトロコロニー形成評価。我々は、エクスビボでの7種の初代黒色腫移植片(1341/3、1765/3、276/7、462/6、514/12、672/3、989/7)に対する化合物1軟寒天コロニー形成活性を評価した。これらの実験で、腫瘍細胞を、0.001nMから10 μMの範囲のさまざまな濃度の化合物1に曝した。薬剤応答は、相対的なEC50値から評価した(表2参照)。化合物1に対する一般的な応答性は、1765/3 (2.58 μM) > 989/7 (2.54 μM) > 1341/3 (2.24 μM) > 672/3 (1.67 μM)> 276/7 (1.14 μM) > 514/12 (1.05 μM) > 462/6 (0.70 μM)のオーダーであった。
【0141】
表2 黒色腫腫瘍細胞に対する化合物1のコロニー形成評価
【表3】

【0142】
化合物1は、FGF仲介インビボ血管新生を阻害する。化合物1がFGF仲介インビボ血管新生を阻害し得るか否かを決定するために、その効果を、bFGF誘導マトリゲルインプラントモデルで評価した。わずかな新血管形成は、マトリゲル単独で(bFGF補充なしに)観察されたが、皮下マトリゲルインプラントへのbFGFの添加により、新血管形成のかなりの誘導を生じた(これらは、マトリゲルプラグ中のヘモグロビンレベルの定量により決定された)(図2)。3 - 100 mg/kgの用量で、8日間毎日の化合物1の処理により、bFGF誘導新血管形成の用量依存的阻害を生じた(3 mg/kgのIC50)。すべての用量は、ビヒクルと比較して、統計的に有意な減少を生じた(p<0.05)。興味深いことに、> 10 mg/kgのすべての用量は、未補充マトリゲルインプラントで観察された定常ヘモグロビンレベル未満であり、このことは、明らかに、化合物1がbFGF誘導インビボ血管新生をかなり阻害することを示す。
【0143】
化合物1の抗腫瘍有効性試験: 化合物1の単剤活性またはカルボプラチン + パクリタキセルと組み合わせた化合物1の活性を、同様のFGFR発現プロファイルを有するが、B-Raf突然変異状態が異なる2種の黒色腫腫瘍モデル(A375M B-Raf突然変異体およびCHL-1 B-Raf野生型)で、基準にしたがって評価した。
【0144】
A375 黒色腫モデルで単剤としての化合物1の活性: 化合物1は、Nu/Nuマウスにおけるヒト黒色腫A375M皮下異種モデルで、かなりの腫瘍成長阻害を証明した。原発性腫瘍成長の解析は、図3に示す。3、5、21および25日の投与日数で、ビヒクル群と比較した80 mg/kg群において、平均腫瘍成長でかなりの差異が存在した。腫瘍成長阻害(TGI)の割合は、25日目の腫瘍容積に基づく。10、30、60および80 mg/kgでの化合物1の経口投与は、各々28%、45%、58%および69% TGIを生じた。有意な体重減少(〜5%以上の体重減少)または他の毒性に関する臨床的な兆候は、どの群においても観察されなかった。
【0145】
CHL-1 黒色腫モデルで単剤としての化合物1の活性: 化合物1は、Nu/Nuマウスにおけるヒト黒色腫CHL-1皮下異種モデルで、かなりの腫瘍成長阻害を証明した。原発性腫瘍成長の解析は、図4に示す。8-25日の投与日数で、ビヒクル群と比較した30、60および80 mg/kg群において、平均腫瘍成長でかなりの差異が存在した。TGIの割合は、25日目の腫瘍容積に基づく。10、30、60および80 mpkでの化合物1の経口投与は、各々64%、73%、89%および87% TGIを生じた。有意な体重減少(〜5%以上の体重減少)または他の毒性に関する臨床的な兆候は、どの群においても観察されなかった。
【0146】
血漿MIAを、ビヒクル、30 mg/kgおよび80 mg/kg群で、0、8および22日目に評価した(データは、示していない)。すべての群における0日目のMIAレベルは、検出の閾値か、もしくは閾値以下であった。8日目に、ビヒクル群でのMIAレベルは、7.7 ng/mLまで上昇したが、処理群でのMIAレベルは、検出されなかった。腫瘍容積およびMIAレベルはまた、22日目で、ビヒクル群と比較して低かった。全体的に、血漿MIAレベルは、8および22日目で、処理動物で低く(すなわち、未検出)、ビヒクルコントロールで高かった。
【0147】
カルボプラチン + パクリタキセルと組み合わせた化合物1の活性: A375M黒色腫モデルにおいて、毎日の化合物1単独投与は、統計的にビヒクル処理とは異なる、かなりの腫瘍成長阻害を生じた(74% TGI, p<0.05)。毎週のカルボプラチン(50 mg/kg)およびパクリタキセル(20 mg/kg)は、約45%のTGIを生じた(図5および表3)。化合物1およびカルボプラチン + パクリタキセルの組み合わせ処理は、この処理コホートで観察された1/10部分応答で、抗腫瘍活性を増大させ(94% TGI対ビヒクル、p< 0.001)、単剤療法よりも優れていた。化合物1 (50 mg/kg)とカルボプラチン + パクリタキセルの組み合わせ治療は、一般に、単剤および組み合わせ群で観察された<5% 体重減少(BWL)で耐容であり、相加応答として解析した(表2/3、すなわち、予測/観察(E/O) 〜1参照)。
【0148】
表3 A375M黒色腫モデルでの組み合わせ処理における化合物1の活性
【表4】

腫瘍成長阻害(TGI) = [1-{(平均腫瘍容積、処理群のTV - 無作為な腫瘍容積)/(コントロール群の平均腫瘍容積 - 無作為な腫瘍容積)} x 100]; BAR = 明瞭な機敏な応答性(bright, alert, responsive); BWL = 体重減少; 統計試験 = Kruskal-Wallis-One Way Analysis of Variance on Ranks/Dunn’s; 応答 = CR (完全応答、測定不能な腫瘍)、またはPR (部分応答、処理開始時の各動物の腫瘍容積と比較して、50-99%の腫瘍容積減少); 相加応答 = 1.0のE/O比。
【0149】
カルボプラチン + パクリタキセルの組み合わせ療法をまた、CHL-1モデルで評価した。図6および表4で示したとおり、化合物1 (30 mg/kg)の毎日投与 + カルボプラチン (50 mg/kg) + パクリタキセル (25 mg/kg)の毎週投与での腫瘍阻害は、単剤と比較してかなり増大した(84% TGI)。化合物1およびカルボプラチン + パクリタキセルの組み合わせ療法は、十分に耐容であり、化合物1 (30 mg/kg, qd)単独ではなく(p<.05、t検定)、カルボプラチン + パクリタキセル (p<.05、ANOVA/Dunn’s)とかなり異なっていた。しかしながら、薬剤応答のより詳細な解析では、CHL-1 黒色腫モデル(E/O>1)において、化合物1 + カルボプラチン + パクリタキセルを用いたとき、相加応答以上のものが観察された(相乗効果を暗示)。
【0150】
表4. 雌Nu/NuマウスでのBRaf WT CHL-1 黒色腫腫瘍に対する化合物1および/またはカルボプラチン + パクリタキセルの組み合わせ
【表5】

腫瘍成長阻害(TGI) = [1-{(平均腫瘍容積、処理群のTV - 無作為な腫瘍容積)/(コントロール群の平均腫瘍容積 - 無作為な腫瘍容積)} x 100]; BAR = 明瞭な機敏な応答性; BWL = 体重減少; 統計試験 = Kruskal-Wallis-One Way ANOVA on Ranks/Dunn’s; E/O = 1 (相加応答)、E/O >1 (相乗効果)。
【0151】
FGF-R細胞捕捉ELISAアッセイ: 表5で下記したとおり、化合物1は、FGF受容体および他のチロシンキナーゼの細胞内リン酸化を阻害する。
【0152】
表5. 化合物1は、RTK標的の細胞内リン酸化を阻害する
【表6】

*FGFR3K650Eは、多発性骨髄腫患者の一部で見られた活性型突然変異である。
【0153】
構造Iの他の化合物、例えば、構造IBおよびICの化合物は、上記したとおり製造した。これらの化合物を用いた研究は、化合物Iに関して上記した方法を用いて実施し得る。これらの研究は、これらの化合物がまた、マウス、ヒト、および他のほ乳類対象において、黒色腫を処置するのに有用であることを示す。
【0154】
すべての公開物、特許出願、発行された特許、および本明細書中で言及した他の文献は、各個々の公開物、特許出願、発行された特許、および他の文献が、特に、および個々に、その全体を引用により本明細書の一部として示すかのように、引用により本明細書の一部とする。引用により本明細書の一部とされた文献に含まれる定義は、それらが本明細書の開示と矛盾するとき、除外されるものとする。
【0155】
本発明は、例示のために本明細書に記載した実施形態に限定されるものではなく、本明細書の範囲に入るものとして、あらゆるそのような形態を包含するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色腫を処置する方法であって、黒色腫を患う対象に治療上有効量の構造I
【化1】

[式中、
Aは、
【化2】

から選択される基であり、
R1は、Hまたは1から6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル基から選択される]
で示される化合物、該化合物の互変異性体、該化合物の薬学的に許容される塩、該互変異性体の薬学的に許容される塩、またはその混合物を投与することを含む、方法。
【請求項2】
R1が、メチル基であり、構造Iの化合物が、構造IA
【化3】

を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1が、水素であり、構造Iの化合物が、構造IB
【化4】

を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
R1が、メチル基であり、構造Iの化合物が、構造IC
【化5】

を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
構造Iの化合物の乳酸塩またはその互変異性体を対象に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
黒色腫が転移性である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
黒色腫が、表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫、末端黒子型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、または粘膜黒子型黒色腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
黒色腫が、皮膚性(cutaneous)または皮膚外(extracutaneous)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
黒色腫が、眼球内もしくは軟組織の明細胞肉腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
黒色腫の処置のために、さらに、1種またはそれ以上の抗癌剤を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1種またはそれ以上の抗癌剤が、アルキル化抗癌剤、ニトロソウレア、タキサン類、ビンカアルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、抗癌抗生物質、およびプラチナ抗癌剤からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1種またはそれ以上の抗癌剤が、ダカルバジン、テモゾロマイド、カルムスチン、ロムスチン、ホテムスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、イリノテカン、サリドマイド、ストレプトゾシン、ダクチノマイシン、メクロレタミン、シスプラチン、およびカルボプラチン、メシル酸イマチニブ、ソラフェニブ、スーテント、またはエルロチニブからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
1種またはそれ以上の抗癌剤が、インターフェロンおよびインターロイキン2からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
1種またはそれ以上の抗癌剤が、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、ペグインターフェロンアルファ-2b、およびインターロイキン2からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
治療上有効量の化合物が、約0.25 mg/kgから約30 mg/kgの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
治療上有効量の化合物が、約25 mg/日から約1500 mg/日の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
治療上有効量の化合物が、約100 mg/日から約600 mg/日の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
黒色腫が、線維芽細胞増殖因子受容体1、2、3、および/または4を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
黒色腫が、野生型Raf、突然変異型Raf、野生型Ras、突然変異型Ras、野生型c-Kitまたは突然変異型c-Kitを発現する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−520881(P2010−520881A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552899(P2009−552899)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/056122
【国際公開番号】WO2008/112509
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】