説明

黒色腫腫瘍細胞の識別のためのバイオマーカー

本発明は、黒色腫についての新規のバイオマーカー及び治療標的としてのニューロピリン−2の使用に関する。ニューロピリン−2の存在は、黒色腫に罹患している又は黒色腫を発症するリスクがある個体を診断し検出するためのバイオマーカーとして用いられ得る。循環している黒色腫細胞を捕捉するのにニューロピリン−2を用いる方法もまた記載される。本発明はさらに、黒色腫を罹患している又は黒色腫を発症するリスクがある個体をニューロピリン−2の活性を阻害する作用物質で処置する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年10月13日に出願された米国仮特許出願第61/251,123号明細書及び2009年11月2日に出願された米国仮特許出願第61/257,074号明細書の出願日の利益を主張し、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、黒色腫腫瘍細胞の検出における新規のバイオマーカーとしての、さらには黒色腫の処置における新規の治療標的としての、細胞表面受容体であるニューロピリン−2の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
黒色腫の罹患率は米国内の全てのがんのうち最大級の割合で増加していて、その現在の生涯リスクは58人に1人である。米国では2008年に60,000人を超える患者が黒色腫と診断され、8,000人より多い患者の死亡を伴うことが予想される。現在、後期疾患に対して有効な全身性治療はなく、進行型黒色腫を有する患者についての平均寿命の期待値は6〜9ヶ月である。黒色腫の診断は、良性病変と悪性病変の間に過剰診断及び過小診断の両方につながり得る組織学的な重なりがあることから、難しいものであり得る。加えて、現在の臨床的判断基準を用いて特定の患者について予後を決定することは、不正確である可能性がある。最も有用な原発性皮膚黒色腫の予後指標はBreslowの深達度及び潰瘍の有無である。しかしながら、厚い黒色腫を有する多くの患者は転移がない一方で、薄い腫瘍を有する他の患者はその疾患により早期に死亡する。今までの多数の調査にも関わらず、現在、どの黒色腫が垂直成長及び転移へと進行するかを正確に識別する適当な方法はない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】制御されたヘテロタイプ細胞の共培養法は細胞間コミュニケーション表現型の分析を可能にすることを示す図である。図1Aはヘテロタイプ細胞を共培養する3つの方法を示す。間隙界面法(I)において、RFP−HUVEC及びGFP−1205Lu転移性黒色腫細胞は正確に規定された間隙により隔てられたコロニーの中で共培養される。ランダム混合法(II)において、RFP−HUVEC及びGFP−1205Lu転移性黒色腫細胞は混ぜ合わされ、異種性の細胞集団として培養される。マイクロパターニング法(III)において、正確に規定された大きさ及び形のRFP−HUVECコロニーはGFP−1205Lu細胞により囲まれる。図1Bは間隙界面法を用いて共培養された細胞の6時間時(上段パネル)及び48時間時(下段パネル)の表現型を示す。図1Cはランダム混合法を用いて共培養された細胞の6時間時(上段パネル)及び48時間時(下段パネル)の表現型を示す。図1Dはマイクロパターニング法を用いて共培養された細胞の6時間時(上段パネル)及び48時間時(下段パネル)の表現型を示す。図1EはEGM−2培地中で48時間、単独培養されたRFP−HUVECを示す。図1FはHUVECからの条件培地(CM,conditioned medium)中で48時間、単独培養されたRFP−HUVECを示す。図1Gは1205Lu細胞と48時間共培養されたRFP−HUVECを示す。図1HはGFP−1205Lu細胞と48時間共培養されたRFP−HUVECを示す。
【図2】黒色腫−内皮細胞間相互作用の包括的な遺伝子発現プロファイリングは細胞性コミュニケーションのメディエーターとしてのNRP2を同定することを示す図である。図2Aは黒色腫−内皮細胞間コミュニケーションに関与する遺伝子を同定するためのスクリーニングの略図である。ランダム混合法を用いて、RFP−HUVEC及びGFP−1205Lu転移性黒色腫細胞の集団は共培養系中に播種され、48時間インキュベートされた。細胞はFACSによりソートされ、RNAが単離されて汎ゲノムヒトGeneChipにハイブリダイズされた。共培養により変化した発現プロファイルはRFP−HUVEC及びGFP−1205Lu細胞のホモタイプ培養における発現プロファイルに対して比較され、黒色腫−内皮細胞間コミュニケーションに関連した遺伝子が同定された。図2Bはホモタイプ細胞培養又はその後のRFP−HUVECとのヘテロタイプ共培養において生育されたGFP−1205Lu細胞におけるNRP2発現についてのウエスタンブロット結果を示す。図2Cはヒト黒色腫転移におけるNRP2についての免疫組織化学染色結果を低倍率で示す。図2D及び2Eはヒト黒色腫転移におけるNRP2についての免疫組織化学染色結果を高倍率で示す。矢印は腫瘍−転移性ニッチ界面の境界を指す。図2Fは図2Eにおいて描写された黒色腫細胞についてのMelan−A染色を示し、連続的な腫瘍切片におけるNRP2とMelan−A染色との相関を実証している。
【図3】NRP2に対する中和抗体は転移性黒色腫細胞の増殖を遮断することを示す図である。図3A〜3Cは、10μg/ml(図3A)、5μg/ml(図3B)又は2.5μg/ml(図3C)の正常ウサギIgG(白丸)又はウサギポリクローナルNRP2抗体(黒丸)存在下でのGFP−1205Lu転移性黒色腫細胞についての増殖アッセイを示す。図3Dは10μg/mlのNRP2中和抗体で48時間処理した後のGFP−1205Lu細胞におけるBrdU取り込みの定量を対照抗体での処理と比較して示す。エラーバーは標準偏差を表す。p<0.05、**p<0.01。図3Eは10μg/mlの正常マウスIgG又はマウスモノクローナルNRP2抗体(sc−2025)存在下でのGFP−1205Lu転移性黒色腫細胞を使用した増殖アッセイについての結果を示す。図3F〜Hは10μg/mlの正常ウサギIgG(図3F)、ウサギポリクローナルNRP2抗体(図3G)又はDNase陽性対照(図3H)で処理された1205Lu黒色腫細胞を使用したTUNELアッセイについての結果を示す。図3I及び3Jは正常ウサギIgG(図3I)又はNRP2中和抗体(図3J)で48時間処理した後のGFP−1205Lu細胞の表現型を示す。図3Kは10μg/mlの正常ウサギIgG又はウサギポリクローナルNRP2抗体の存在下、マイトマイシンC添加及び無添加での1205Lu黒色腫細胞に対して行われたスクラッチアッセイの結果を示す。
【図4】規定された初期形状、細胞数及び大きさのHUVECコロニー内における集団性細胞運動の分析は、細胞性パターニングの促進におけるNRP2の不可欠な役割を示唆することを示す図である。図4Aは黒色腫細胞非存在下での円形のHUVEC単独コロニーのT=0、5及び40時間での拡大を示す。図4BはNRP2中和抗体存在下での単層GFP−1205Lu細胞により囲まれた円形HUVECコロニーのT=0、5及び40時間での拡大を示す。図4C〜4Eは規定された形状、細胞数及び大きさのHUVECコロニーからの集団性細胞運動の定量的分析の結果を、島状HUVEC単独(図4C)、島状HUVECと黒色腫との共培養(図4D)及びNRP2中和抗体で処理された島状HUVECと黒色腫との共培養(図4E)について示す。3つの独立した共培養実験が各条件について行われた。エラーバーは平均値の標準誤差を表す。
【図5】黒色腫におけるNRP2受容体及びリガンドの発現分析の図である。図5AはGenechipデータを用いた変化する進行ステージからの黒色腫細胞株におけるNRP2、関連したリガンド及び受容体の定量的発現プロファイルを示す。図5Bは定量的RT−PCRを用いた変化する進行ステージからの黒色腫細胞株におけるVEGFR1、VEGFR2及びVEGFR3の発現を示す。図5Cは変化する進行ステージからの黒色腫細胞株におけるNRP2発現のウエスタンブロット結果を示す。
【図6】異なる腫瘍細胞タイプとの細胞間コミュニケーションは種々の程度のHUVECパターニングを誘導することを示す図である。図6A〜6Cは、48時間の共培養の後に異なる腫瘍細胞株と共培養され(上段パネル)、HUVECネットワーク形成の形態分析を用いて評価された(下段パネル)、RFP−HUVEC単独(図6A)、HCT−116結腸がん細胞と共培養されたRFP−HUVEC(図6B)及びGFP−1205Lu黒色腫細胞と共培養されたRFP−HUVEC(図6C)についての、RFP−HUVECのパターニング結果を示す。図6Dは様々な腫瘍細胞株との共培養により誘導されたHUVECパターニングの形態分析の定量をHUVEC単独の場合と比較して示す。図6Eは、RFP−HUVECとのヘテロタイプ共培養において生育された様々な腫瘍細胞株におけるNRP2発現のウエスタンブロット分析についての結果を示す。用いられた腫瘍細胞株は神経膠芽腫、U87MG、黒色腫、GFP−1205Lu、乳がん、Hs578T、非小細胞肺癌、H460、前立腺がん、PC−3、膵臓がん、Panc3.014、結腸がん、HCT−116、卵巣がん、及びES−2であった。
【図7】正常なヒト組織におけるNRP2についての代表的な染色の図である。図7Aは正常な腎臓におけるNRP2についての染色を示す。図7Bは横紋筋におけるNRP2についての染色を示す。図7Cは精巣におけるNRP2についての染色を示す。
【図8】非メラニン細胞系腫瘍におけるNRP2についての代表的な染色の図である。図8Aは結腸腺癌におけるNRP2についての染色を示す。図8Bは腎細胞癌におけるNRP2についての染色を示す。図8Cは乳管癌におけるNRP2についての染色を示す。図8Dは非メラニン細胞系腫瘍組織(MFH−悪性線維性組織球腫;NSCL sqcc−非小細胞肺がん、扁平細胞;RCC−腎細胞癌;TCC−移行上皮癌/膀胱)の定量化された染色を実証する箱ひげ図を示す。
【図9】メラニン細胞系腫瘍におけるNRP2についての代表的な染色の図である。図9Aは転移性メラニン欠乏性類上皮黒色腫におけるNRP2についての染色を示す。図9Bは悪性黒色腫におけるNRP2についての染色を示す。図9Cは転移性メラニン欠乏性紡錘細胞悪性黒色腫におけるNRP2についての染色を示す。図9Dは色素性類上皮黒色腫におけるNRP2についての染色を示す。図9Eは紡錘細胞結節性黒色腫におけるNRP2についての染色を示す。図9Fは線維形成性悪性黒色腫におけるNRP2についての染色を示す。図9Gはメラニン細胞系腫瘍組織の定量化された染色を実証する箱ひげ図を示す。
【図10】NRP2についての定量化された組織染色の図である。図10はメラニン細胞系腫瘍(緑)及び非メラニン細胞系腫瘍(ピンク)におけるNRP2についての定量化された組織染色をグラフで描写したものである。報告された値はNRP2について陽性の腫瘍及び黒色腫における平均染色パーセントである。黒色腫腫瘍の結果は緑で示され、非メラニン細胞系腫瘍の結果はピンクで示される。
【図11】NRP2は基底上のケラチノサイトにおいて発現されるが、良性母斑においては発現されないことを示す図である。図11A〜11Dは良性母斑におけるNRP2染色の低倍率(10×)画像である。表皮における基底上のNRP2の発現(赤色)が正常なメラニン細胞の染色を伴わないことに注目されたい。図11E〜11FはNRP2で染色された良性母斑のより高倍率(20×)の像である。図11FはNRP2で染色された良性母斑の高倍率像(40×)である。
【図12】NRP2発現は転移性黒色腫細胞に限定されることを示す図である。図12A及び12Cはリンパ節内のMelan−Aで染色された転移性黒色腫細胞についての低倍率(図12A)及び高倍率(図12C)画像である。図12B及び12Dはリンパ節内のNRP2で染色された転移性黒色腫細胞についての低倍率(図12B)及び高倍率(図12D)画像である。矢印はMelan−A及びNRP2による腫瘍組織染色の一致を指す。
【図13】NRP2は分泌タンパク質として発現されることを示す図である。図13Aは、RFP−HUVEC、GFP−1205Lu黒色腫細胞及びHUVEC−1205Lu共培養からの条件培地におけるNRP2発現のIP−ウエスタン分析についての結果を示す。H460(NRP1+/NRP2−)肺がん細胞はNRP2についての陰性対照として包含された。図13Bは、モック並びにNRP2をトランスフェクトされたHEK293T細胞、RFP−HUVEC、GFP−1205Lu黒色腫細胞、HUVEC−1205Lu共培養及びH460(NRP1+/NRP2−)肺がん細胞から回収された条件培地からのNRP2発現のIP−ウエスタン分析の結果を示す。
【図14】NRP2のELISAの図である。図14はSanta Cruz(登録商標)社(Santa Cruz,CA)からのC−9及びH−300抗体を用いて組換え型ヒトNRP2に対して行われたELISAアッセイの結果を示す。
【図15】インビボNRP2イメージングの図である。図15Aは注射から4時間後に撮影されたインビボイメージング結果である。図15Bは注射から72時間後に撮影されたインビボイメージング結果である。図15Cは注射から120時間後に撮影されたインビボイメージング結果である。
【図16】NRP2のFACSを用いた黒色腫細胞の検出を示す図である。図16Aは細胞外染色により標識されて識別された垂直成長期の黒色腫細胞株についてのFACS結果を示す。図16Bは細胞内染色により標識されて識別された垂直成長期の黒色腫細胞株についてのFACS結果を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、黒色腫腫瘍細胞を検出して処置する方法を対象とする。ニューロピリン−2(NRP2)は細胞表面受容体であり、本発明者らは、NRP2が黒色腫細胞の増殖の決定的なメディエーターであることを実証した。したがって、NRP2は黒色腫を処置するための新規の治療標的である。本発明者らはまた、NRP2がi)黒色腫腫瘍細胞上に、ii)黒色腫患者の血清中に可溶性タンパク質として存在することを実証した。したがって、NRP2は黒色腫腫瘍細胞の検出のための新規のバイオマーカーである。
【0006】
したがって、本発明のいくつかの実施形態において、黒色腫に罹患している又は黒色腫を発症するリスクがある対象を処置するのに、NRP2介在性の細胞増殖を阻害する作用物質を用いることが望ましい。いくつかの実施形態において、作用物質はNRP2に選択的に結合する分子である。いくつかの実施形態において、作用物質はNRP2に特異的に結合する抗体である。抗体はモノクローナル又はポリクローナルであり得る。いくつかの実施形態において、作用物質はNRP2に選択的に結合するタンパク質である。いくつかの実施形態において、タンパク質はVEGF又はVEGFの断片である。他の実施形態において、タンパク質はPLEXIN又はPLEXINの断片である。他の実施形態において、タンパク質はセマフォリン又はセマフォリンの断片である。いくつかの実施形態において、作用物質は、当該技術分野で周知である従来の検出方法(複数可)を用いて検出される。いくつかの実施形態において、作用物質は標識されている。標識は蛍光成分、レポーターイオンと結合する部分、磁性粒子、重イオン、金粒子、量子ドット又は当該技術分野で周知の任意の従来の標識であり得る。
【0007】
本発明の1つの態様は、i)対象における黒色腫を検出又は診断するための、ii)黒色腫を発症するリスクがある対象を識別するための、及び/又はiii)対象における黒色腫の再発を予測するためのバイオマーカーとしてNRP2を用いることである。実施形態において、試料は対象から取得され、バイオマーカーは当該技術分野で周知である従来の検出方法(複数可)を用いて検出される。いくつかの実施形態において、生物試料は組織、組織ホモジネート、組織薄片、細胞、剖検試料、病理試料、生検試料又は体液である。いくつかの実施形態において、試料は血液、血漿、血清、尿、浸出液又は髄液である。実施形態において、上記の発明は、生物試料中のi)NRP2を発現している細胞、ii)可溶性のNRP2、又はiii)可溶性のNRP2断片の存在を識別することをさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、生物試料を、NRP2を発現している細胞を選択的に検出する作用物質と接触させることにより識別される。いくつかの実施形態において、作用物質はNRP2に選択的に結合する分子である。いくつかの実施形態において、作用物質はNRP2に特異的に結合する抗体である。抗体はモノクローナル又はポリクローナルであり得る。いくつかの実施形態において、作用物質はNRP2に選択的に結合するタンパク質である。いくつかの実施形態において、タンパク質はVEGF又はVEGFの断片である。他の実施形態において、タンパク質はPLEXIN又はPLEXINの断片である。他の実施形態において、タンパク質はセマフォリン又はセマフォリンの断片である。実施形態において、作用物質は当該技術分野で周知である従来の検出方法(複数可)を用いて検出される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーはイムノアッセイ、フローサイトメトリー、アフィニティーカラム分離又は磁気選別により識別される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーはELISA又は免疫組織化学検査により識別される。他の実施形態において、バイオマーカーは蛍光活性化セルソーター(FACS,fluorescent-activated cell sorting)により識別される。実施形態において、作用物質は標識されている。標識は蛍光成分、レポーターイオンと結合する部分、磁性粒子、重イオン、金粒子、量子ドット又は当該技術分野で周知の任意の従来の標識であり得る。
【0009】
本発明の別の態様は、NRP2黒色腫細胞の存在をインビボで識別することである。実施形態において、対象に、NRP2を選択的に検出する作用物質の診断上有効な量を投与する。いくつかの実施形態において、作用物質はNRP2に選択的に結合する分子である。いくつかの実施形態において、作用物質はNRP2に特異的に結合する抗体である。抗体はモノクローナル又はポリクローナルであり得る。実施形態において、作用物質は、当該技術分野で周知である従来の検出方法(複数可)を用いて検出される。いくつかの実施形態において、作用物質は標識されている。標識は蛍光成分;レポーターイオンと結合する部分;磁性粒子;重イオン;金粒子;量子ドット;フッ素、ヨウ素、臭素及びアスタチンを包含する放射性同位体;又は当該技術分野で周知の任意の従来の標識であり得る。
【0010】
本発明の別の態様は、試料から黒色腫細胞を単離する方法に関する。本方法は、試料を準備すること、及び試料をニューロピリン−2を発現している細胞を選択的に結びつける作用物質と接触させることを伴う。実施形態において、試料は対象から取得される。試料は細胞を含有する任意の体液であることが可能で、血液を包含する。いくつかの実施形態において、作用物質はNRP2に特異的に結合する抗体である。抗体はモノクローナル又はポリクローナルであり得る。いくつかの実施形態において、作用物質はNRP2に選択的に結合するタンパク質である。いくつかの実施形態において、タンパク質はVEGF又はVEGFの断片である。他の実施形態において、タンパク質はPLEXIN又はPLEXINの断片である。他の実施形態において、タンパク質はセマフォリン又はセマフォリンの断片である。実施形態において、作用物質は、当該技術分野で周知である従来の検出方法(複数可)を用いて検出される。いくつかの実施形態において、作用物質は標識されている。標識は、蛍光成分、レポーターイオンと結合する部分、磁性粒子、重イオン、金粒子、量子ドット又は当該技術分野で周知の任意の従来の標識であり得る。実施形態において、本方法は、単離された細胞(複数可)を水性媒体で洗浄することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、単離された細胞(複数可)の分子解析を行うことをさらに含む。分子解析としては、単離された細胞(複数可)の遺伝分析を包含する、当該技術分野で周知の任意の従来の分子アッセイが挙げられる。実施形態において、分子解析の結果は患者の処置方針を導くのに用いられる。
【0011】
本発明のさらなる態様は、i)対象における黒色腫を検出するための、ii)黒色腫を発症するリスクがある対象を識別するための、又はiii)対象における黒色腫の再発を予測するためのキットである。実施形態において、キットは、i)NRP2を発現している細胞、ii)可溶性のNRP2又はiii)可溶性のNRP2断片の存在を検出する作用物質を含有する。いくつかの実施形態において、作用物質は、NRP2又は可溶性のNRP2断片に特異的に結合する抗体である。抗体はモノクローナル又はポリクローナルであり得る。いくつかの実施形態において、作用物質はNRP2に選択的に結合するタンパク質である。いくつかの実施形態において、タンパク質はVEGF又はVEGFの断片である。他の実施形態において、タンパク質はPLEXIN又はPLEXINの断片である。他の実施形態において、タンパク質はセマフォリン又はセマフォリンの断片である。実施形態において、作用物質は、当該技術分野で周知である従来の検出方法(複数可)を用いて検出される。いくつかの実施形態において、作用物質は標識されている。標識は蛍光成分、レポーターイオンと結合する部分、磁性粒子、重イオン、金粒子、量子ドット又は当該技術分野で周知の任意の従来の標識であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の理解を容易にするため、いくつかの用語及び語句が下に定義される。
【0013】
本明細書で用いられる単数形「a」、「an」及び「the」は文脈が明瞭に他を指示するものでない限り複数形を包含する。それ故に、例えば「タンパク質(a protein)」への言及は、2以上のタンパク質への言及を包含する。
【0014】
本明細書で用いられる「ニューロピリン−2」及び「NRP2」は、膜貫通型糖タンパク質の完全長、異性体及び断片を包含する。また定義内に包含されるのが、自然に又は介入により、例えばジスルフィド結合形成、糖鎖付加、脂質付加、アセチル化、リン酸化若しくは標識成分との抱合などの任意の他の操作若しくは修飾により修飾されたニューロピリン−2である。さらに定義内に包含されるのが、例えば1又は2以上のアミノ酸アナログ(例えば非天然アミノ酸などを包含する)や、同様に従来のものであって当該技術分野で周知の他の修飾を含有するニューロピリン−2である。
【0015】
本明細書で用いられる「黒色腫」としては、悪性メラニン細胞の成長、原発性黒色腫、転移性黒色腫、メラニン細胞若しくはメラニン細胞関連母斑細胞のいずれかに由来する黒色腫、黒色癌、黒色上皮腫、黒色肉腫、表皮内黒色腫、表層進展性黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端黒子型黒色腫、侵襲性黒色腫又は家族性異型母斑黒色腫(FAM−M,familial atypical mole and melanoma)症候群が挙げられるが、これらに限定されるものではない。哺乳類におけるかかる黒色腫は染色体異常、退行性の成長及び発達障害、分裂促進剤、紫外線(UV)、ウイルス感染症、遺伝子の不適切な組織発現、遺伝子発現の変化又は発癌物質によりもたらされる可能性がある。前述の黒色腫は本出願に記載される方法により診断され、査定され、又は処置されることが可能である。
【0016】
「準備される」試料はアッセイを行う人間(又は機械)により取得されることが可能であり、又は別のものにより取得されて、アッセイを実施する人間(又は機械)に移送されることが可能である。
【0017】
対象からの「試料」(例として被検試料)は、心不全を持つ対象における、レベルが上昇した本発明のタンパク質マーカーを含有することが予想される可能性がある試料が意味される。多くの適した試料のタイプが当業者にとって明らかであろう。いくつかの実施形態において、試料は全血、血漿又は血清(凝固因子が除去された血漿)などの血液試料である。例えば、末梢、動脈又は静脈の血漿又は血清が用いられ得る。いくつかの実施形態において、試料は尿、汗、又は髄液などの別の体液であり、これらの中にはタンパク質が血流から時折移される。例えば尿の場合、タンパク質は分解されやすく、そのため本発明のタンパク質の診断断片がスクリーニングされ得る。いくつかの実施形態において、試料は哺乳類組織の組織薄片、組織ホモジネート又は初代培養を包含する組織;細胞、剖検試料、病理試料、生検試料である。試料を取得し、それらを分析用(例として、タンパク質量の検出用)に調製する方法は、従来のものであって当該技術分野で周知である。
【0018】
本明細書で用いられる「対象」は、黒色腫を持つ又は黒色腫を発症するリスクがある任意の動物を包含する。適した対象(患者)としては、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット又はブタなど)、農耕動物、競技動物(例としてイヌ又はウマ)、家畜動物及び愛玩動物(ウマ、イヌ又はネコなど)が挙げられる。非ヒト霊長類及びヒト患者は包含される。加えて、これらの症状を見せていない対象もまた、本発明の方法により評価され得る。
【0019】
「リスクがある」は正常な対象と比較して又は対照群と比較してリスク増加があること、例として患者集団を意味することが意図される。それ故に、特定のマーカーを保有する対象は特異の疾患又は障害についてのリスク増加を持ち、さらなる検査を必要とするものと識別される可能性がある。「リスク増加」又は「リスク上昇」は確率、例として対象が障害を持つ確率における任意の統計的に有意な増加を意味する。
【0020】
本明細書の実施例に提示されるデータの多くは完全長型のNRP2に関するものだが、このタンパク質のいろいろな型が黒色腫を持つ対象又は対象における黒色腫を発症するリスクを指し示すことができることは当業者に明らかであろう。例えば、タンパク質はインタクトな完全長のNRP−2であることができる。加えて、タンパク質は分解型及び/又は断片化型のNRP2であってもよい。かかる場合において、研究者は1又は2以上の断片又は分解産物のレベルを決定することが可能である。その上、NRP2が自然にプロセッシング(例としてアセチル化、メチル化、リン酸化などの翻訳後修飾)を起こしたときは、これらの型のタンパク質のうち任意のものが本発明に包含される。したがって、「ニューロピリン−2」又は「NRP2」は完全長のNRP2、NRP2の断片及び翻訳後修飾型のNRP2をいう。
【0021】
いくつかの実施形態において、ベースライン値と比較した値(又は値の組合せ)の増加(例として統計的に有意な増加)の点からアッセイの結果を表現するのが望ましい。
【0022】
本明細書で用いられる値の「有意な」増加は、適切であって当該技術分野で周知の統計的方法を用いて決定される再現性のある又は統計的に有意な差をいうことが可能であり、不規則変動のために5パーセントより低い変化の確率値を一般に伴う。適した統計的検定は当業者に明らかであろう。適したベースライン値と比較した本発明のタンパク質の量の有意な上昇は、その時、被験対象が黒色腫を持つ又は黒色腫を発症するリスクがあることを指し示している。対象が健常対照又は自身のベースライン(より早い時点で得られた)のレベルを有意に超えるレベルのマーカータンパク質を持つなら、対象は「おそらく」黒色腫を持つ又は黒色腫を発症するリスクがある。レベル増加の程度は確率の%に相関する。一般的に、本発明のマーカー量の上昇の存在は対象が黒色腫を持つことの強い徴候である。
【0023】
本明細書で用いられる「ベースライン値」は、黒色腫を持たない「正常な」健常対象からの同等の試料(例として被験組織と同じタイプの組織からの試料)におけるタンパク質のレベル(量)を一般にいう。必要なら、正常な対象からの同じ組織のプール又は集団が用いられることが可能で、ベースライン値は測定値の平均(average)又は平均(mean)であり得る。適したベースライン値は過度の実験なくして当業者に決定され得る。適したベースライン値は値から編集されるデータベースにおいて利用可能であってもよく、並びに/又は発表されたデータに基づいて若しくは患者組織の後ろ向き研究及び本発明の方法を実行する当業者に明らかであろう他の情報に基づいて決定されてもよい。適したベースライン値は適切な信頼区間を提供する統計的ツールを用いて、標準値から外れた測定レベルが診断の観点から異常であり、黒色腫を予想するものとして受け取られ得るように選択されてもよい。
【0024】
患者試料をベースライン対照の情報源として用いることは、臨床又は研究の状況において一般に実用的でない。したがって、いろいろな参照値のうち任意のものを用いることが可能で、それら参照値は同一又は同様の発現レベルが黒色腫を持たない対象において見い出される。
【0025】
アッセイが行われる時にベースライン又は正常レベルは各アッセイについて確立される必要はなく、むしろベースライン又は正常レベルは、本明細書に記載の方法のうち任意のものを用いて確立されるベースラインレベルなどの所定のタンパク質又はタンパク質のパネルについて予め決定されたベースラインレベルに関する保存情報形態を参照することにより確立され得ることが当業者により理解されるであろう。かかる保存情報形態としては、例えば「正常レベル」(陰性対照)若しくは陽性対照に関する集団若しくは個体データについての参照チャート、リスト若しくは電子ファイル;以前の評価からのデータを記録している患者についてのカルテ;受信者動作特性(ROC,receiver-operator characteristic)曲線;又は患者を診断するのに有用なベースラインレベルに関する任意の他のデータ源が挙げられ得る。いくつかの実施形態において、タンパク質の組合せにおけるタンパク質の量は、ベースライン値と比較して、例としてNeter, Kutner, Nachtsteim, Wasserman (1996) Applied Linear Statistical Models, 4th edition, page 295におけるIrwinに記載されるような直線回帰スコアとして表現される。
【0026】
処置の進行がモニターされているいくつかの実施形態において、ベースライン値は処置が施される前に同じ対象から得られたより早期の測定値に基づくことが可能である。
【0027】
タンパク質の量は任意の適した方法を用いて測定され得る。いくつかの方法は所望のタンパク質に特異的な抗体、結合リガンド又は質量分析タグ付きペプチドの使用を伴う。本発明のアッセイにおける使用に適した抗体は市販されており、又は日常的に調製され得る。所望のタンパク質についてのアッセイにおいて抗体を調製して使用する方法は従来のものであり、例としてImmunochemical Protocols, Manson ed. (Humana Press 1992)におけるGreen et al., Production of Polyclonal Antisera;Current Protocols in Immunology, sections 2.4.1 and 2.5.1-2.6.7 (1992)におけるColigan et al.;Kohler & Milstein, Nature 256:495-7(1975);及びHarlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, page 726 (Cold Spring Harbor Laboratory Pub. 1988)に記載される。
【0028】
インビトロで免疫された又は標的抗原に対する抗体を生産する免疫された個体から単離された不死化ヒトBリンパ球が生成され得る。例としてCole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss ed., p. 77 (1985);Boemer et al., J Immunol, 147 (1):86-95 (1991);及び米国特許第5,750,373号明細書を参照されたい。またヒト抗体は、例えばVaughan et al., Na. Biotech, 14:309-314 (1996)、Sheets et al., Proc Natl Acad Sci, 95:6157-6162 (1998)、Hoogenboom and Winter, 1991, J. Mol. Biol., 227:381、及びMarks et al., J Mol Biol, 222:581 (1991)に記載されるように、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択され得る。抗体ファージライブラリーの生成及び使用のための技術はまた、米国特許第5,969,108号明細書、第6,172,197号明細書、第5,885,793号明細書、第6,521,404号明細書;第6,544,731号明細書;第6,555,313号明細書;第6,582,915号明細書;第6,593,081号明細書;第6,300,064号明細書;第6,653,068号明細書;第6,706,484号明細書;及び第7,264,963号明細書;並びにRothe et al., J Mol Bio, J Mol Biol 376:1182-1200 (2007)に記載される。鎖シャフリング(Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992))などの親和性成熟ストラテジーは当該技術分野で知られており、高親和性のヒト抗体を生成するのに利用されることができる。
【0029】
ヒト化抗体はまた、免疫処置に対して内因性の免疫グロブリン生産の非存在下でヒト抗体の完全レパートリーを生産する能力があるヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスにおいて作成され得る。このアプローチは米国特許第5,545,807号明細書;第5,545,806号明細書;第5,569,825号明細書;第5,625,126号明細書;第5,633,425号明細書;及び第5,661,016号明細書に記載される。
【0030】
いろいろな抗体のうち任意のものが本発明の方法において用いられ得る。かかる抗体としては、例としてポリクローナル、モノクローナル(mAbs)、組換え型、ヒト化又は部分的ヒト化、単鎖、Fab及びそれらの断片が挙げられる。抗体は任意のアイソタイプ、例としてIgM、IgG、IgG2aなどの様々なIgGアイソタイプに属するものであることが可能であり、ヤギ、ウサギ、マウス、ニワトリなどを包含する、抗体を生産する任意の動物種からのものであることが可能である。タンパク質に「特異的な」又はタンパク質を「特異的に結びつける」抗体という用語は、抗体がタンパク質中の規定されたアミノ酸配列又はエピトープを認識することを意味する。ポリペプチドに「特異的な」、ポリペプチドを「特異的に認識する」又は「特異的に結びつける」抗体は、ポリペプチドに選択的に結合し、抗体への結合が意図されない他のポリペプチドに一般的に結合しない抗体をいう。かかる特異性を達成するのに必要とされるパラメーターは、当該技術分野における従来法を用いて日常的に決定され得る。タンパク質をそれに特異的な抗体に結びつけるのに有効な条件は、従来のものであって当該技術分野で周知である。
【0031】
「検出可能な成分」又は「標識」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、放射性又は化学的手段により検出可能な組成をいう。例えば有用な標識としては32P、35S、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例としてELISAにおいて通常用いられるようなもの)、ビオチン−ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン、抗血清若しくはモノクローナル抗体が利用可能なハプテン及びタンパク質、又は標的に相補的な配列を有する核酸分子が挙げられる。検出可能な成分は放射性、発色性又は蛍光性シグナルなどの測定可能なシグナルをしばしば生成し、これらシグナルは試料中の結合した検出可能な成分の量を定量するのに用いられ得る。シグナルの定量化は、例としてシンチレーション測定、デンシトメトリー、フローサイトメトリー、ELISA又はインタクトな又はその後に消化されたペプチド(1又は2以上のペプチドが査定され得る)の質量分析による直接分析により達成される。当業者は所望の化合物を標識する技術及び検出手段に精通している。かかる技術及び方法は従来のものであって当該技術分野で周知である。
【0032】
本発明の実施形態において、本発明のタンパク質に特異的な抗体は表面上に固定化され(例としてマイクロアレイなどのアレイ上の反応要素であるか、又はBIAcoreなどの表面プラスモン共鳴(SPR,surface plasmon resonance)に基づく技術に用いられる表面などの別の表面上にある)、試料中のタンパク質はその抗体に特異的に結合する能力によって検出される。あるいは、試料中のタンパク質が表面上に固定化され、その抗体に特異的に結合する能力によって検出されることが可能である。特異的な結合に有効な条件を包含する、表面を調製して分析を行う方法は、従来のものであって当該技術分野で周知である。
【0033】
適したイムノアッセイの多くのタイプのなかには、BIAcore分析、FACS分析、免疫蛍光、免疫組織化学染色、ウエスタンブロット(イムノブロット)、ラジオイムノアッセイ、ELISA、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線アッセイ、蛍光イムノアッセイ、蛍光活性化セルソーター(FACS,fluorescence-activated cell sorting)、タンパク質Aイムノアッセイなどの技術を用いた競合及び非競合アッセイ系がある。本発明の方法において用いられるアッセイは比色読み取り、蛍光読み取り、質量分析、目視検査などに基づき得る。アッセイは例として懸濁ビーズ、又は抗体若しくは細胞試料若しくは血液試料がガラススライド若しくはチップなどの表面に付着したアレイを使用して実施され得る。
【0034】
本発明の実施形態において、組織試料は当該技術分野で周知である従来の免疫組織化学的アッセイ(複数可)において、組織中に存在するタンパク質について適した抗体で染色される。
【0035】
一般的に、本明細書に言及される分子生物学的方法は当該技術分野で周知のものであり、例としてSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, current edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY及びAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, NYに記載される。
【0036】
「診断の」は病理状態の存在又は性質を識別することを意味し、特異の疾患又は障害を発症するリスクがある患者を識別することを包含する。診断方法はその感度及び特異度において異なる。診断アッセイの「感度」は、検査で陽性となる病気にかかった個体のパーセンテージ(「真陽性」のパーセント)である。アッセイにより検出されない病気にかかった個体は「偽陰性」である。病気にかかっておらずアッセイにおいて陰性となる対象は「真陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異度」は1から偽陽性率を引いたものであり、ここで「偽陽性」率は検査で陽性となる疾患を有さない個体の比率として定義される。特定の診断方法は状態の確定診断を与えることはできないが、本方法が診断を援助する陽性徴候を提供すれば十分である。
【0037】
本発明の検出(診断)方法は多くの使用に適応され得る。例えば本方法は黒色腫の進行を追うのに用いられ得る。本発明の実施形態において、検出は処置が施される前(又はほぼ同時に)及び後の両方で実施され、本方法は処置の有効性をモニターするのに用いられる。前臨床及び臨床試験において評価され得る対象についての特定の投薬計画又は薬若しくは他の治療法の有効性を決定することが可能なように、対象はこの方法でモニターされ得る。処置方法が成功であるなら、本発明のタンパク質マーカーのレベルは減少することが予想される。
【0038】
本明細書で用いられる「処置される」は、有効量の薬又は他の抗黒色腫手法が対象に施されることを意味する。作用物質の「有効」量は、対象において検出可能な応答(例として治療的応答に属するもの)を引き起こす量をいう。
【0039】
本発明の1つの態様は、NRP2に選択的に結合する作用物質を用いて黒色腫細胞を単離する方法である。実施形態において、本発明は試料から希少な細胞を単離するのに利用される。いくつかの実施形態において、希少な細胞は末梢血からの循環している黒色腫細胞である。一般的に、希少な細胞の単離に使用するためのデバイスは当該技術分野で周知であり、例としてVeridex LLC社によるCellsearch(登録商標)Systemがある。当業者は試料から単一細胞を単離するのに用いられ得る実験条件及び系を認識するであろう。
【0040】
試料から生物細胞を単離する方法に加えて、本発明のいくつかの実施形態は、単離された細胞が追加の情報を与えるのに用いられることができる方法を提供する。実施形態において、本発明の方法を用いて単離された細胞は、追加のインビトロアッセイを用いてさらにアッセイされ得る。いくつかの実施形態において、本発明の方法を用いて単離された細胞は計数される。細胞を計数する従来法はいくつかの実施形態において用いられることが可能で、例えば、例として目視検査といった光学的計数、自動計数、顕微鏡検査に基づく検出;FACS;及び例としてコールターカウンターといった電気的検出を包含するものである。細胞の計数は、疾患の診断、疾患の進行のモニタリング及び処置の効力のモニタリング又は決定に有用であり得る。
【0041】
実施形態において、本発明の方法を用いて単離された細胞はフローサイトメトリー又は他の分析プラットフォームによる免疫細胞化学的分析に供される。かかる分析は診断を容易にし、臨床医に重要な情報を与える。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明の方法を用いて単離された細胞は溶解されることが可能で、細胞又はその一部についての1又は2以上の特性が測定され得る。溶解された細胞において測定され得る生物学的特性の限定されない例としては、mRNA発現、タンパク質発現及びDNA定量が挙げられる。加えて、いくつかの実施形態において、細胞のDNAはシーケンスされることが可能であり、又はある配列特性(例として多型及び染色体異常)が例としてFISH又はPCRといった従来技術を用いて識別され得る。いくつかの実施形態において、細胞はデバイスに結合したまま溶解される。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明の方法により単離された細胞は溶解されずにアッセイされる。非溶解細胞をアッセイする方法の限定されない例としては、細胞外又は細胞内染色を用いること;様々な培地中での形態又は生育特性を観察すること;及び細胞の表面上のバイオマーカーを識別することが挙げられる。さらなる実施形態において、単離された細胞はその後のインビトロアッセイにおける使用の前に、単離された細胞の濃縮集団を取得するために培養される。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、単離された細胞から取得され得る情報としては、特定のゲノムDNA、cDNA又はmRNA配列の識別又は列挙;細胞表面マーカーの識別又は列挙;及び特定の腫瘍のタイプ若しくは存在を指し示しているタンパク質又は他の細胞内容物の識別又は列挙が挙げられる。実施形態において、単離された細胞は原発組織、疾患のステージ若しくは重篤度、又は特定の処置への感受性を決定するために分析されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は黒色腫腫瘍を根絶するための内科、放射線又は外科処置の後に残存する循環中の黒色腫細胞を査定するのに用いられる。さらなる実施形態において、本発明の方法及びデバイスは疾患の発生、再発及び/又は進行の指標としての循環中の黒色腫細胞の存在及び数について患者を査定するために何年にもわたって定期的に行われる。
【0046】
本発明の別の態様は対象が黒色腫に罹患している又は黒色腫を発症するリスクがあるかを検出するためのキットであり、本発明のタンパク質の量を検出するための1又は2以上の作用物質を含む。キットはまた、タンパク質の量の検出、測定及び/又は定量に適した追加の作用物質を包含することができ、標準曲線作成のための従来の分析物を包含する。他の使用のなかで、本発明のキットは実験用途に用いられ得る。当業者は本発明の方法を実施するのに適したキットの構成成分を認識するであろう。
【0047】
抗体に基づく方法がタンパク質レベルを測定するのに用いられることが予定されるなら、キット中の作用物質はタンパク質に特異的な抗体を包むことが可能である。いくつかの実施形態において、抗体は例として化学発光、酵素、蛍光又は放射性成分といった検出可能なマーカーで標識される。いくつかの実施形態において、キットは抗体への標識された結合相手(複数可)を包含する。タンパク質検出のための抗体に基づくキットは従来のものであって当該技術分野で周知である。当業者は抗体を用いてバイオマーカー(複数可)を検出するのに適したキットの構成成分を認識するであろう。
【0048】
いくつかの実施形態において、キットはNRP2の結合相手であるタンパク質を含有する。NRP2の結合相手は例として化学発光、酵素、蛍光又は放射性成分といった検出可能なマーカーで標識され得る。キットはまたNRP2を選択的に結びつけるタンパク質への標識された結合相手(複数可)を包含することが可能である。かかるキットは当該技術分野で周知であり、当業者はNRP2の結合相手を結合剤として用いてバイオマーカー(複数可)を検出するのに適したキットの構成成分を認識するであろう。
【0049】
実施形態において、本発明のキットは本方法を行うための説明書を含むことができる。任意選択で、キットは、哺乳類の対象から試料(例として体液)を得て、キットを用いて黒色腫に罹患している又は黒色腫を発症するリスクがある哺乳類の対象を識別するための説明書を包含することが可能である。いくつかの実施形態において、本発明のキットは適したバッファー、容器又は包装資材を含有する。キットの試薬は試薬が安定である容器の中に、例として凍結乾燥された形又は安定化された液体としてあることができる。試薬はまた例として単一の対象についてアッセイを行うための1回使い切りの形であってもよい。
【0050】
本発明の実施形態は次の限定されない例への参照によりさらに定義されることが可能であるが、この例はNRP2を黒色腫についての新規のバイオマーカー及び治療標的として識別し性質決定するのに利用される方法論を記載するものである。材料及び方法の両者への多くの修飾が本開示の範囲から逸脱することなく実践されることができるのは当業者に明らかであろう。
【0051】
[実施例]
ニューロピリン−2は黒色腫腫瘍細胞の新規のバイオマーカーとして同定された。本明細書に記載される例及び実施形態は説明の目的のみのためのものであって、これらを考慮した様々な修飾又は変更は当業者に示唆されるであろうし本出願の趣旨及び範囲内に含まれるものであることが理解される。
【実施例1】
【0052】
黒色腫−内皮細胞間コミュニケーションはインビトロで観察される
腫瘍細胞の近隣の内皮細胞との相互作用は腫瘍の生存及び転移にとって決定的である。黒色腫はその発生の比較的早いステージで転移する能力のために悪名高い。この攻撃的な挙動は少なくとも部分的に、腫瘍細胞とそれらを囲む間質との間の相互作用に依存する。インビボでの転移の間に生じる腫瘍−間質細胞間の相互作用のモデルとなる長期間のヘテロタイプ細胞共培養系を用いて、血管新生及び軸索誘導に関与する細胞表面受容体であるニューロピリン−2(NRP2)は、黒色腫と内皮細胞との相互作用の間に黒色腫細胞において高度にアップレギュレートされる遺伝子として同定されている。
【0053】
3つの別々の黒色腫及び内皮細胞のインビトロ二次元共培養系が黒色腫−内皮細胞間コミュニケーションの分子決定要因を同定するのに利用された(図1A)。これらの系は共培養の制御度を増加させるように、構成細胞株を区別するのが容易なように設計された。これらの研究で用いられる細胞株としては、安定的に組み込まれた緑色蛍光タンパク質を保有する転移性黒色腫細胞株1205Lu(GFP−1205Lu)及び赤色蛍光タンパク質を安定的にトランスフェクトされたヒト臍帯静脈内皮細胞(RFP−HUVEC)が挙げられる。
【0054】
第一の系(間隙規定法)において、隔てられた黒色腫及び内皮細胞の隣接コロニーは最初にコロニーが150〜200pm隔てられるような方法でインキュベートされた(図1A、左)。1.5×10個のRFP−HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)は24ウェルプレート内のプラスチック製クローニングシリンダー(内径10mm)内部でEGM−2中に接種された。3×10個のGFP−1205Lu細胞はクローニングリングの外側に播種された。4時間のインキュベーションで細胞をプレートに接着させた後、クローニングリングは除去され、ヘテロタイプ細胞集団の間に150〜200pmの間隙が残された。細胞はPBSで洗浄され、新たなEGM−2がウェルに添加された。細胞は次いで24時間移動を許容され、その後にウェルの写真が撮影された。48時間後、ヘテロタイプ細胞は相互作用して自己組織化細胞性ネットワークを界面に生み出した。
【0055】
第二の系(ランダム混合法)において、細胞は50/50の比で予め混合され、このランダムに混合された状態で播種されて、その後に48時間相互作用するのを許された(図1A、中央)。GFP−1205Lu及びRFP−HUVECは95%のコンフルエンス度で1:1の比でEGM−2培養培地中に播種された。細胞は48時間インキュベートされ、蛍光活性化セルソーター(FACS,fluorescence activated cell sorting)を用いて純粋な集団へとソートされた。個々の細胞タイプの対照培養は同一の条件下で生育(bgfregrown)された。共培養及び対照の細胞はPBSで2回洗浄され、トリプシン処理により回収された。回収された細胞はFACS用に氷冷EGM−2中に再懸濁された。
【0056】
第三の系(マイクロパターニング法)はステンシルに基づく技術を利用する。内皮細胞は事前に規定された大きさの円形又は三角形の形状をしたコロニーへとパターン形成され、黒色腫細胞が次いで残った周囲の空間内に播種された(図1A、右)。具体的には、RFP−HUVECはOstuni et al(Ostuni E, Kane R, Chen CS, Ingber DE, Whitesides GM (2000) Patterning Mammalian Cells Using Elastomeric Membranes. 16(20): 7811)により報告された技術と同様のマイクロステンシル技術を用いて二次元コロニーへと微小パターン形成された。高アスペクト比ネガ型フォトレジストであるSU−8はシリコン上へ光パターン形成された。これは100pm高さのポリジメチルシロキサン(PDMS)膜をスピンキャストするための鋳型として用いられた。エラストマー膜はコラーゲンコーティングされたガラス基板表面上に平らに置かれ、次いでHUVEC細胞を含有する培養培地に曝露された。細胞はPDMSステンシルとガラス基板の両方に接着した。膜を剥がすと、HUVECはマイクロステンシルにより保護されていない領域内に残った。
【0057】
円形及び三角形の形状をした各々のコロニーにおける細胞の数は正確に制御された(1mm径の円形コロニーについて88+/−14個の細胞、1mm辺の三角形のコロニーについて72+/−20個の細胞)。共インキュベーションの間及び後に黒色腫と内皮細胞とを区別するため、安定的に組み込まれた緑色蛍光タンパク質を保有する転移性黒色腫細胞株1205Lu(GFP−1205Lu)及び赤色蛍光タンパク質を安定的にトランスフェクトされたヒト臍帯静脈内皮細胞(RFP−HUVEC)が用いられた。利用される3つの異なる共培養技術はヘテロタイプ細胞間の界面の性質及び範囲の点で主に異なる。界面は、第一の方法においては最初は存在しないものの出現してきて、第二の方法においては非常に広範囲だが制御が不十分であり、第三の方法においては良好に規定されて制御されるが非常に広範囲ではない。これらの異なって規定される界面は、空間的な関係を調整した結果として優先的に生じる可能性があるヘテロタイプ細胞の相互作用の範囲を利用者が変えることを可能とする。
【0058】
個々のHUVEC細胞の位置における変化は経時的に手作業で追跡され、座標はMathematica(バージョン6)において実行される特注ソフトウェアパッケージを用いて記録された。速度ベクトルの空間的相関係数は既に記載された(Haga H, Irahara C, Kobayashi R, Nakagaki T, Kawabata K (2005) Collective movement of epithelial cells on a collagen gel substrate. Biophys J 88(3): 2250-2256)ように全ての細胞ペアについて細胞間距離r(我々の分析においては200μMを超えない)の関数として計算された。
【0059】
【数1】

【0060】
式中vは細胞iの位置rでの速度ベクトルを意味し、1時間間隔で撮影された2つの画像における細胞位置間の差から計算される。細胞ペアの運動が高度に相関する場合、C(r)の値は1に近づき得る。C(r)の値が低いことは指向性運動における相関が低いことを指し示す。
【0061】
間隙規定法において、腫瘍−内皮細胞間の界面として発達した目を引く内皮細胞ネットワークが徐々に出現し、細胞は進行的に入り混ざった(図1B、下)。注目すべきことに、これらの構造は内皮細胞で構成される腫瘍細胞を取り囲んだ連続的なループを包含し、腫瘍実質において見られるもの(Asaishi K, Endrich B, Gotz A, Messmer K (1981) Quantitative analysis of microvascular structure and function in the amelanotic melanoma A-Mel-3. Cancer Res 41(5): 1898-1904、Endrich B, Hammersen F, Gotz A, Messmer K (1982) Microcirculatory blood flow, capillary morphology and local oxygen pressure of the hamster amelanotic melanoma A-Mel-3. J Natl Cancer Inst 68(3): 475-485)と類似した形状及び型に属していた。この内皮細胞の構造化集合体は、単独で培養された内皮細胞で観察されたランダム集合体(図1F)と異なった。
【0062】
ランダム混合法を用いた黒色腫及び内皮細胞のランダム共培養の評価は、共培養の6時間時には極小のHUVECネットワーク形成を示したが(図1C、上)、共培養の48時間時には明白な細胞ネットワーク形成を示した(図1C、下)。内皮細胞がループ状及び枝状構造の中に徐々に蓄積することにより形成されたネットワークは黒色腫細胞のバックグラウンドに対して明確に区別可能であり、間隙規定法を用いて観察されるものと同様の細胞ネットワーク形態を有した。
【0063】
最後にマイクロパターニング法においては、48時間の共培養の間、内皮細胞は集団性運動の「流れ」の中で予めパターン形成された島状構造から出て周囲の大規模な黒色腫細胞コロニーへと動いて、最初の枝状ネットワークを形成することが見い出された(図1D)。それ故に3つ全ての細胞共培養法は、ヘテロタイプ細胞コロニー間の界面で広範囲に及ぶ内皮細胞の枝状及びループ状ネットワークへの再組織化を結果としてもたらした。
【0064】
基本培地単独又はHUVEC条件培地のいずれかにおける48時間のHUVECのインキュベーションは、HUVECパターニングをインビトロで引き起こすことができなかった(図1E及び1F)。一方、黒色腫細胞の条件培地又は共培養の条件培地のいずれかを使用してインキュベートされたHUVECにおいては、間隙規定及びランダム混合共培養法を用いてインキュベーション48時間時に見い出されたものと同様のネットワークへと細胞が再組織化されたが(図1G及び1H)、このことは黒色腫−HUVEC間コミュニケーションが少なくとも部分的に1又は2以上の腫瘍分泌性可溶性因子(複数可)により仲介されることを示唆する。
【実施例2】
【0065】
黒色腫−内皮細胞間コミュニケーションの間の差次的な遺伝子発現
用いられる共培養法のなかで、ランダム混合法は同様の相対的なヘテロタイプ細胞の数及び広範囲に及ぶヘテロタイプ細胞間の界面のために共培養に加わる細胞のゲノム組成変化における大規模評価にとりわけ有利であり、おそらく大半の細胞が細胞間、内皮−黒色腫間の細胞間コミュニケーションに参加するようになるであろう。したがって、ランダム混合法を用いて、その後に細胞タイプ特異的な蛍光標識の色に基づいてヘテロタイプ細胞をソーティングすることで、ソートされた細胞の遺伝子発現プロファイルが試験された。
【0066】
黒色腫−HUVEC間コミュニケーションを支配する分子経路を定義するため、単独又は混合で48時間培養されたGFP−1205Lu及びRFP−HUVECの遺伝子発現プロファイリングが行われた(図2A)。マイクロアレイ解析は既に記載された(Ryu B, Kim DS, Deluca AM, Alani RM (2007) Comprehensive expression profiling of tumor cell lines identifies molecular signatures of melanoma progression. PLoS One 2(7): e594)ように行われた。4つのGeneChip(GFP−1205Lu単独、GFP−1205Lu共培養、RFP−HUVEC単独、RFP−HUVEC共培養)からの発現レベルを含有するスプレッドシートはMicrosoft Excelにおいて生成された。チップからのシグナルはRMAExpressを用いて正規化された。各細胞タイプについて共培養試料と対照試料との間の発現比を生成するために2つの新たなスプレッドシートが作り出された。Affymetrixソフトウェアにより存在する(「P」)とタグ付けされた遺伝子のみが評価を考慮された。2以上のカットオフシグナル比は共培養された細胞においてアップレギュレートされたとみなされ、0.5以下のシグナルはダウンレギュレートされたとみなされた。Spotfire(Tibco社製,Somerville,MA)は、遺伝子オントロジー(GO,Gene Ontology)分類を使用した所望の遺伝子のアノテーションを包含するマイクロアレイデータのさらなる解析のために用いられた。変化した全ての遺伝子のなかで、所望の特異的遺伝子に関連した分類及び最も一般的な分類の両方が査定された。共培養されたGFP−1205Luにおいて単一培養に対して変化した遺伝子に関連した選択されたGO分類で、0.05より小さいp値を有するものが表1に示される。全ての試料はAffymetrix社からの市販アレイにおいて、Affymetrix GeneChipヒトU133Plus 2.0アレイを用いてAffymetrix社のウェブサイトに記載されるように分析された。JHMI Microarray Core Facilityは現行のMIAMEガイドラインによる全ての手法に従う。マイクロアレイデータはシリーズレコードGSE8699の下で遺伝子発現オムニバス(GEO,Gene Expression Omnibus)リポジトリに供された。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
共培養系に関連した遺伝子発現の特徴的性質の解析は、内皮細胞の発現プロファイルに対する腫瘍細胞の特異的な影響を実証し、その逆も同様に実証した。最初の解析は黒色腫細胞における発現プロファイルの差に焦点が置かれた。HUVECとの共培養の後にGFP−1205Lu細胞において単独で生育された黒色腫細胞に対してアップレギュレートされた遺伝子についての遺伝子オントロジー生物学的分類の評価は、細胞接着、細胞運動、細胞外マトリックス組織化及び血管新生、すなわち腫瘍の進行及び転移にしばしば関連した特徴的性質を制御する遺伝子における変化を実証した(表1)。以前の調査は黒色腫細胞自身の細胞自律的な血管新生特性に様々に起因するものであった進行型黒色腫の血管原性表現型について述べているが(Hendrix MJ, Senor EA, Hess AR, Seftor RE (2003) Vasculogenic mimicry and tumour-cell plasticity: lessons from melanoma Nat Rev Cancer 3(6): 411-421、Velazquez OC, Herlyn M (2003) The vascular phenotype of melanoma metastasis. Clin Exp Metastasis 20(3): 229-235、Dome B, Hendrix MJ, Paku S, Tovari J, Timar J (2007) Alternative vascularization mechanisms in cancer: Pathology and therapeutic implications. Am J Pathol 170(1): 1-15、Hess AR, Margaryan NV, Seftor EA, Hendrix MJ (2007) Deciphering the signaling events that promote melanoma tumor cell vasculogenic mimicry and their link to embryonic vasculogenesis. role of the Eph receptors. Dev Dyn 236(12): 3283-3296)、現在の研究は、黒色腫細胞が近隣の内皮細胞により今度は内皮細胞に影響を及ぼすことが可能な因子及びその機能的な脈管構造を形成する傾向を作り出すように誘導され得ることによれば、より複雑な像を示唆する。
【0070】
共培養条件下で黒色腫細胞においてアップレギュレートされた上位30個の遺伝子のなかには、腫瘍血管新生及び黒色腫転移に既に関連した遺伝子であるチモシンβ4(Clark EA, Golub TR, Lander ES, Hynes RO (2000) Genomic analysis of metastasis reveals an essential role for RhoC. Nature 406(6795): 532-535、Ridley A (2000) Molecular switches in metastasis. Nature 406(6795): 466-467、Cha HJ, Jeong MJ, Kleinman HK (2003) Role of thymosin beta4 in tumor metastasis and angiogenesis. J Natl Cancer Inst 95(22): 1674-1680)、及び内皮細胞の接着に関与する遺伝子であるマルチメリン1(Adam F, Zheng S, Joshi N, Kelton DS, Sandhu A et al. (2005) Analyses of cellular multimerin 1 receptors: in vitro evidence of binding mediated by alphallbbeta3 and alphavbeta3. Thromb Haemost 94(5): 1004-1011)があった。加えて、高度にアップレギュレートされた遺伝子についてのより精密な試験は、それら遺伝子の多くが新規血管床の迅速で頑強な形成を確保するのに責任を持つ可能性がある分泌性構成成分をコードすることを示唆する。とりわけ、I型及びIV型のコラーゲンは両黒色腫細胞自身の運動(注目すべきことに、関係するインテグリンαVもまた共培養後に黒色腫細胞において過剰発現される)と、同様に内皮細胞の付着及び運動の亢進を確保することに影響することが可能であり、細胞コミュニケーションの推定上の間接的手段として働く(Yin Z, Noren D, Wang CJ, Hang R, Levchenko A (2008) Analysis of pairwise cell interactions using an integrated dielectrophoretic-microfluidic system. Mol Syst Biol 4: 232)。フォンウィルブランド因子及びその関係したタンパク質であるマルチメリンは凝固の調節を通じて血管新生を容易にする可能性がある(Nash GF, Walsh DC, KakkarAK (2001) The role of the coagulation system in tumour angiogenesis. Lancet Oncol 2(10): 608-613)。サイトカインCX3CL1の過剰発現は、皮膚由来の内皮細胞を包含するいくつかの細胞タイプの化学誘引にかかわっている(Crola Da Silva C, Lamerant-Fayel N, Paprocka M, Mitterrand M, Gosset D et al. (2009) Selective human endothelial cell activation by chemokines as a guide to cell homing. Immunology 126(3): 394-404)。また注目すべきことに、NRP2は分泌型で存在して内皮細胞の表面上でVEGFシグナル伝達に影響することが可能であり、それ故に細胞増殖及び運動を調節する細胞シグナル伝達を直接的に調整する。これらの結果は、黒色腫細胞が続いて起こる両細胞タイプの挙動に影響を及ぼす可能性がある複数の可溶性因子を生産するよう内皮細胞により誘導され得ることを示唆する。
【実施例3】
【0071】
NRP2は黒色腫−内皮細胞間コミュニケーションの間にアップレギュレートされ、転移性黒色腫において発現される
NRPは神経系及び血管系の発達を調整する膜貫通型糖タンパク質である(Bielenberg DR, Pettaway CA, Takashima S, Klagsbrun M (2006) Neuropilins in neoplasms: expression, regulation, and function Exp Cell Res 312(5): 584-593、Favier B, Alam A, Barron P, Bonnin J, Laboudie P et al. (2006) Neuropilin-2 interacts with VEGFR-2 and VEGFR-3 and promotes human endothelial cell survival and migration. Blood 108(4): 1243-1250、Staton CA, Kumar I, Reed MW, Brown NJ (2007) Neuropilins in physiological and pathological angiogenesis. J Pathol 212(3): 237-248)。NRPは血管内皮増殖因子(VEGF,vascular endothelial growth factor)受容体及びプレキシンと相互作用する共受容体として機能し、別個の機能を有する2つの既知のリガンド、軸索誘導に関与するクラス3セマフォリン及び血管新生を促進することが知られるVEGFファミリーメンバーを結びつける。NRP2の機能を遮断することは、近年、リンパ管内皮細胞運動及び腫瘍に関連したリンパ脈管新生に対する作用を通じて腫瘍転移を阻害することが示されている(Caunt M, Mak J, Liang WC, Stawicki S, Pan Q et al. (2008) Blocking neuropilin-2 function inhibits tumor cell metastasis. Cancer Cell 13(4): 331-342)。NRPはまた、いろいろながんにおいて発現されることから、腫瘍形成にもかかわっている(Bielenberg DR, Pettaway CA, Takashima S, Klagsbrun M (2006) Neuropilins in neoplasms: expression, regulation, and function Exp Cell Res 312(5): 584-593、Klagsbrun M, Takashima S, Mamluk R (2002) The role of neuropilin in vascular and tumor biology. Adv Exp Med Biol 515: 33-48、Bielenberg DR, Hida Y, Shimizu A, Kaipainen A, Kreuter M et al. (2004) Semaphorin 3F, a chemorepulsant for endothelial cells, induces a poorly vascularized, encapsulated, nonmetastatic tumor phenotype. J Clin Invest 114(9): 1260-1271、Chen C, Li M, Chai H, Yang H, Fisher WE et al. (2005) Roles of neuropilins in neuronal development, angiogenesis, and cancers. World J Surg 29(3): 271-275、Chabbert-de Ponnat I, Buffard V, Leroy K, Bagot M, Bensussan A et al. (2006) Antiproliferative effect of semaphorin 3F on human melanoma cell lines. J Invest Dermatol 126(10): 2343-2345、Ellis LM (2006) The role of neuropilins in cancer. Mol Cancer Ther 5(5): 1099-1107、Guttmann-Raviv N, Kessler 0, Shraga-Heled N, Lange T, Herzog Y et al. (2006) The neuropilins and their role in tumorigenesis and tumor progression. Cancer Lett 231(1): 1-11、Bielenberg DR, Klagsbrun M (2007) Targeting endothelial and tumor cells with semaphorins. Cancer Metastasis Rev 26(3-4): 421-431)。加えてNRP2は、近年、黒色腫転移及び血管新生に不可欠なプロセスをインビボで調節することが示されているが(Cohen T, Herzog Y Brodzky A, Greenson JK, Eldar S, Gluzman-Poltorak Z, Neufeld, G Resnick MB. Neuropilin-2 is a novel marker expressed in pancreatic islet cells and endocrine pancreatic tumours. The Journal of pathology 2002; 198:77-82)、これら調節のメカニズムは明確でない。したがって、共培養条件への表現型細胞応答の調節におけるNRP2の潜在的な役割が上記の様々な方法を用いて評価された。
【0072】
NRP2タンパク質の発現は、sc−5542抗体(Santa Cruz社製)を標準的条件下で用いたイムノブロット法により、共培養の間に黒色腫細胞において評価された。試料はアクリルアミドゲル上で泳動され、Immobilon-P膜上にトランスファーされた。膜は次いでSanta Cruz(登録商標)社(Santa Cruz,カリフォルニア)から市販されているNRP2抗体を使用して調べられた。イムノブロット法の結果は共培養された黒色腫細胞におけるNRP2の発現増加を確認する(図2B)。
【0073】
原発性ヒト黒色腫組織におけるNRP2発現の試験は、評価された転移性黒色腫の5/5において腫瘍実質内でのNRP2の特異的な高レベル発現を実証した(図2C〜E)。その上、かかる染色はメラニン細胞マーカーのMelan−Aによる腫瘍染色(図2F)と一致した。したがって、NRP2は転移性黒色腫においてインビボで発現される。
【実施例4】
【0074】
NRP2は黒色腫細胞の増殖を仲介する
NRP2は細胞増殖及び/又は運動を調節することが知られるVEGF及びセマフォリンのシグナル伝達と相互作用することが可能なことから、黒色腫−内皮共培養におけるNRP2過剰発現の機能的意義がNRP2中和抗体を用いて調査された(Nasarre P, Constantin B, Rouhaud L, Harnois T, Raymond G et al. (2003) Semaphorin SEMA3F and VEGF have opposing effects on cell attachment and spreading. Neoplasia 5(1): 83-92、Nasarre P, Kusy S, Constantin B, Castellani V, Drabkin HAet al. (2005) Semaphorin SEMA3F has a repulsing activity on breast cancer cells and inhibits E-cadherin-mediated cell adhesion. Neoplasia 7(2): 180-189)。研究において評価された抗体はNRP2のアミノ酸560〜858位に対して生成されたものであり、したがってセマフォリン及びVEGFリガンドの両者の結合を遮断するであろう。
【0075】
XTTアッセイ
細胞は平底96ウェルプレート中に3,000個の細胞/ウェルで播種された。ウサギポリクローナルNRP2抗体(sc−5542,Santa Cruz社製)及び正常ウサギIgG(sc−2027,Santa Cruz社製)、又はマウスモノクローナルNRP2抗体(sc−13117,Santa Cruz社製)及び正常マウスIgG(sc−2025,Santa Cruz社製)は終濃度10pg/mlで機能研究のために用いられた。XTT試薬(Cell Proliferation Kit II,Roche Applied Science社製)は24時間ごとに8日間、ウェルのサブセットに添加され、色の変化が分光光度計によりモニターされた。細胞数は標準曲線から外挿された。細胞は抗体の存在下で播種され、培地が交換され、抗体は2、4及び6日目に再び新しくされた。BrdU取り込みはBrdU Labeling and Detection Kit I(Roche Applied Science社製)を用いて、製造業者の説明書に従って測定された。
【0076】
興味深いことに、共培養の非存在下においてさえNRP2中和抗体(H−300、sc−5542)は黒色腫細胞の増殖をインビトロで激しく減少させたが(図3A)、このことはNRP2が黒色腫細胞の増殖の決定的なメディエーターであることを示唆する。別のNRP2中和抗体(C−9、sc−13117)を使用した研究もまた増殖抑制性の役割を確認し(図3E)、BrdU取り込みアッセイは抗体処理後48時間時での有意な増殖阻害を実証した(図3D)。増殖阻害は抗体の量が減少すると抑制作用が小さくなったことから滴定可能であった(図3A〜C)。
【0077】
TUNELアッセイ
細胞は平底96ウェルプレート中に3,000個の細胞/ウェルで播種された。ウサギポリクローナルNRP2抗体(sc−5542,Santa Cruz社製)及び正常ウサギIgG(sc−2027,Santa Cruz社製)、又はマウスモノクローナルNRP2抗体(sc−13117,Santa Cruz社製)及び正常マウスIgG(sc−2025,Santa Cruz社製)は終濃度10pg/mlで機能研究のために用いられた。TUNELアッセイの場合、細胞は抗体の存在下で播種され、TUNEL染色は48時間の抗体処理の後又はトランスフェクション後48時間で行われた。TUNEL染色はIn situ Cell Death Detection Kit(TMR Red,Roche Applied Science社製)を用いて行われた。
【0078】
TUNEL染色による細胞のアポトーシスの評価は黒色腫の細胞死に著しい増加がないことを実証した(図3F〜H)。加えて、腫瘍細胞形態は中和抗体での処理の後に顕著には変化しなかった(図3I及び3J)。
【0079】
スクラッチアッセイ
細胞は平底96ウェルプレート中に3,000個の細胞/ウェルで播種された。ウサギポリクローナルNRP2抗体(sc−5542,Santa Cruz社製)及び正常ウサギIgG(sc−2027,Santa Cruz社製)、又はマウスモノクローナルNRP2抗体(sc−13117,Santa Cruz社製)及び正常マウスIgG(sc−2025,Santa Cruz社製)は終濃度10pg/mlで機能研究のために用いられた。スクラッチアッセイの場合、GFP−1205Lu細胞は100%コンフルエンスで24ウェルプレート中に播種された。200plピペットチップが細胞単層中に線を引っかくのに用いられ、細胞はPBS中で3回洗浄された。マイトマイシンCは終濃度0pM又は3pMで10%FBSを加えたDMEM中に添加された。DAPI染色は核を可視化するのに用いられた。全ての実験は3連で行われた。全ての実験についての顕微鏡写真はNikon社製のEclipse顕微鏡を使用して撮影され、MetaMorphソフトウェア(Molecular Devices社製)を用いて分析された。
【0080】
増殖が考慮された場合、NRP2の抗体中和はスクラッチアッセイにおいて細胞運動を顕著には変化させなかった(図3K)。これらの結果は、ホモタイプ細胞培養において黒色腫細胞により発現されたNRP2はおそらくVEGFによるオートクラインシグナル伝達を容易にすることにより細胞増殖を特異的に支持することを示唆する(非特許文献35)。
【0081】
XXT、TUNEL及びスクラッチアッセイの結果は、純粋培養又は共培養環境中での黒色腫細胞増殖の調節におけるVEGFの潜在的な決定的役割を支持する。
【実施例5】
【0082】
NRP2は黒色腫共培養においてHUVECの集団性運動を促進する
NRP2が全ての共培養法で観察された枝状及びループ状ネットワークへの細胞再組織化を伴う方向性を持った集団性内皮細胞運動をも制御することが可能かを調査するために、HUVEC細胞運動の高度時間分解微速度撮影イメージングが用いられた。この目的のためには、最も制御された細胞共培養の方法であるマイクロパターニング法が、初期条件すなわち内皮細胞コロニーの形状及びその大きさの高い再現性度のためにとりわけ都合が良かった。
【0083】
腫瘍細胞はRFP−HUVECと48時間インキュベートされ、落射蛍光顕微鏡検査を用いて写真が撮影された。RFP−HUVECの画像についての閾値はOtsuの方法(Matlabの「graythresh」機能)を用いて決定された。閾値を超えた画素はHUVECに相当し、閾値を下回った画素はバックグラウンド(すなわち共培養されたがん細胞により覆われた領域)に相当した。RFP−HUVEC画像は直径100ピクセルの円を用いて形態的に閉じられ、次いでネットワーク形成の計量が閾値を下回った画素の画分としてコンピューター処理された。この方法は、RFP−HUVECにより覆われなかった少なくとも直径100ピクセルの大きな領域からなる共培養領域の画分を決定した。HUVECが共培養中でランダムに分散するときなどのネットワーク形成の非存在下においては、HUVECにより被覆される大領域はほとんど又は全くないと予想され、ネットワーク形成計量はゼロに近いと予想される。HUVEC細胞が凝集してパターンを形成するときなどのネットワーク形成の存在下においては、HUVECにより覆われない多くの大領域が出現し、ネットワーク形成計量は正であると予想されるであろう。
【0084】
内皮細胞の集団性運動は様々な細胞ペアについての細胞速度の相関C(r)を細胞間距離(r)の関数として推定することにより((Haga H, Irahara C, Kobayashi R, Nakagaki T, Kawabata K (2005) Collective movement of epithelial cells on a collagen gel substrate. Biophys J 88(3): 2250-2256)に記載)、対照(HUVECコロニー単独)及び共培養実験について早い時点(5時間)及び遅い時点(40時間)で定量された(図4)。低密度の純粋なHUVECコロニーについてC(r)は0と予想されるが、高密度なコロニーについては一般に共培養の非存在下であってもより一層高値であることに注目されたい。これは部分的に、コロニー中心から離れて利用可能な空間へと至る測定距離(<200pm)についての細胞運動の相関のためである。
【0085】
黒色腫細胞は早い時点では方向性を持ったHUVEC運動を顕著に亢進したが、遅い時点では亢進しなかった。著しいことに、NRP2中和抗体は黒色腫細胞によるこの早期の亢進作用を完全に消滅させたが(図4B、E)、このことはNRP2が細胞性ネットワーク形成の初期ステージの間の内皮細胞組織化を仲介するのに決定的な役割を果たすことを示唆する。その上、NRP2中和抗体の作用は比較的大きい細胞間距離(>120pm)で最も明白であった。これらの知見は、共培養の間の内皮細胞運動に対するNRP2の作用がおそらく長期のものであり、接触に基づく細胞間相互作用よりむしろ拡散に基づくプロセスを通じて細胞挙動に影響を及ぼす可能性があることを、条件培地を使用した実験の結果と一致して示唆する。これらの結果はさらに、ヘテロタイプ共培養において観察された分岐パターン(図1B〜D)が少なくとも部分的に初期の(最初の5時間にわたる)細胞運動の方向性及び速度におけるNRP2依存的相関に依存する可能性があることを暗に意味する。NRP2、おそらくその分泌型は内皮細胞の動員において黒色腫細胞を助ける可能性があり、このことは、この動員が機能的な新しい脈管構造を結果としてもたらし、それ故に黒色腫の生存を亢進してかつ転移ルートを提供することを確保する。黒色腫増殖及び腫瘍転移におけるNRP2の機能に関するインビボ(Caunt M, Mak J, Liang WC, Stawicki S, Pan Q et al. (2008) Blocking neuropilin-2 function inhibits tumor cell metastasis. Cancer Cell 13(4): 331-342)及びインビトロの証拠を考えると、NRP2は黒色腫−内皮細胞間コミュニケーションの重要なメディエーターであり、黒色腫を処置することにおいて価値のある治療標的である。
【実施例6】
【0086】
NRP2受容体及びリガンドは黒色腫において発現される
黒色腫細胞株のパネルにおけるNRP2リガンド及び共受容体の発現は、黒色腫におけるNRP2の機能に関連した経路を定義するために評価された。以前の変化する悪性進行ステージからの黒色腫細胞株の遺伝子発現研究は、黒色腫進行に関連した分子の特徴的性質を与えた(Ryu B, Kim DS, Deluca AM, Alani RM (2007) Comprehensive expression profiling of tumor cell lines identifies molecular signatures of melanoma progression. PLoS One 2(7): e594)。これらのデータはNRP2、そのホモログであるNRP1並びにその結合相手であるVEGFR1、プレキシンA4A、プレキシンA3、VEGF−A、VEGF−C及びSema3Fの発現を調査するためにマイニングされた。NRP2発現は黒色腫の全てのステージにおいて検出され、放射生育期のものの3つのうち2つにおいてより低い発現が認められた(図5A)。VEGF−Aの発現は早期ステージの黒色腫で後期ステージに対して上昇した一方(図5A)、プレキシン、Sema3F及びVEGF−Cの低レベル発現が評価された全ての黒色腫細胞株において見られ、Nrp1発現は実質的に欠けていた(図5A)。
【0087】
ヒト黒色腫細胞株及びRFP−HUVECにおけるVEGFR1、VEGFR2及びVEGFR3の相対的発現レベルは、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)解析により決定された。次のプライマーオリゴヌクレオチドが用いられた。
VEGFR1フォワード(5'-GCACCTTGGTIGTGGCTGAC-3')
VEGFR1リバース(5'-GAGCAAGGATGAAGGCACTC-3')
VEGFR2フォワード(5'-CATCACATCCACTGGTATTGG-3')
VEGFR2リバース(5'-GCCAAGCTTGTACCATGTGAG-3')
VEGFR3フォワード(5'-CCCACGCAGACATCAAGACG-3')
VEGFR3リバース(5'-TGCAGAACTCCACGATCACC-3')
GAPDHフォワード(5'-CATGAGAAGTATGACAACAGCCT-3')
GAPDHリバース(5'-AGTCCTTCCACGATACCAAAGT-3')
【0088】
RNAはRNeasy Mini Kit(Invitrogen社製)を用いて抽出された。各試料について3pgのRNAがSuperScript First-Strand Synthesis System(Invitrogen社製)を製造業者の説明書に従って用いることで、cDNA合成のために用いられた。qRT−PCRは1反応あたり総容量20pL、各々1pLのcDNA、10pLのSYBR Green PCR master mix(Applied Biosystems社製)、1pLの10pMフォワードプライマー及び1pLの10pMリバースプライマーを含有して実施された。DNAは50℃で2分間、95℃で10分間、その後に95℃で25秒間、60℃で31秒間及び72℃で1分間を40サイクルというパラメーターを用いて増幅された。VEGF受容体遺伝子発現はGAPDHに対する参照プライマーを用いて正規化された。黒色腫細胞株についての未処理の定量データは、RFP−HUVECのVEGF受容体遺伝子発現に対して較正された。
【0089】
試験された全ての細胞株は高レベルのVEGFR1を発現し、種々の低レベルでVEGFR2及びVEGFR3発現を有した(図5B)。NRP2タンパク質の発現もまた垂直成長期の黒色腫において最も高レベルであって、早期(放射)生育期の黒色腫の3つのうち2つにおいて検出可能なタンパク質はほとんどなかった(図5C)。これらの結果は、最も注目すべきことにVEGF受容体を包含する天然の結合相手を通じて、NRP2がその作用を発揮することが可能であることを示唆した。
【実施例7】
【0090】
腫瘍細胞と内皮細胞との間のパターニング相互作用は腫瘍タイプによって変わる
間隙界面共培養法を用いて、様々な腫瘍細胞のHUVECパターニングを促進する能力が評価された(図6)。パターニングはHUVEC細胞のネットワークにより形成された円形領域を自動画像解析システムを用いて定量することにより査定された(図6A〜C、下)。興味深いことに、様々な腫瘍細胞株による幅広いHUVECパターン誘導が観察され、これには卵巣がん細胞、結腸がん細胞及び膵臓がん細胞により誘導された軽度から中等度のパターニング、並びに非小細胞肺がん、前立腺がん、乳がん、神経膠芽腫及び黒色腫の細胞により誘導された最も強いパターニングがあった(図6D、上)。腫瘍細胞のNRP2の発現とパターニングとの間に厳密な相関はなかったが(図6D)、パターニングに関連した腫瘍細胞株の上位5つのうち3つは顕著なレベルのNRP2を発現した。
【0091】
これらの研究は、黒色腫及び神経膠芽腫の細胞を包含するいくつかのがん細胞タイプが高レベルのNRP2発現を持つことが可能であり、これが今度は内皮細胞とのコミュニケーションに影響して内皮細胞のパターニングを促進する可能性があることを示唆する。NRP2が神経細胞及び内皮細胞の運命の界面で機能すること、並びに黒色腫細胞がこの共受容体を通じて内皮細胞とのコミュニケーションへのかかる強い応答を引き起こすことは目を引く。黒色腫の起源細胞は神経堤由来のメラニン細胞であるため、関連した脈管構造を有するこれら腫瘍細胞についての強いコミュニケーションネットワークは神経細胞と内皮細胞との間の相互作用に共通した特徴を持つ。実際に、黒色腫についての発生の早期ステージで転移する目を引く能力は、その神経堤運動に関連した発生合図の遺伝記憶に関係する可能性がある。この神経−内皮細胞の界面で機能する細胞性受容体であるニューロピリンはおそらく細胞間コミュニケーションの決定的なメディエーターとなるものであって、早い時期に決定的な発生上の役割を果たすが、腫瘍の血管新生及び転移を促進する発生合図を再現する可能性もある。それ故に、NRP2は黒色腫細胞の増殖及び黒色腫−内皮細胞間コミュニケーションのメディエーターであり、この疾患における決定的な治療標的である。
【実施例8】
【0092】
皮膚性黒色腫及び良性母斑におけるNRP2の発現
免疫組織化学的分析において評価された組織はDepartment of Pathology of Memorial Sloan-Kettering Cancer Centerのアーカイブに由来し、適切なプロトコールの下で回収されたホルマリン固定、パラフィン包埋された保管材料から確立された検体マイクロアレイであった。用いられた組織検体は患者の臨床データに関するアノテーションは包含されない故に、転帰測定のために選択されなかった。色素性及び非色素性、紡錘及び類上皮、同様に線維形成性の黒色腫の混合物が黒色腫組織マイクロアレイ(TMA,melanoma tissue microarray)に包含された。これらの組織学的パラメーターはメラニン細胞分化抗原の発現と既に相関していた。良性母斑はJohns Hopkins Department of PathologyアーカイブからIRBに許可されたプロトコールの下で取得された。免疫組織化学検査はEnVision System HRP(DakoCytomation社製)を用いて行われた。スライドは脱パラフィン処理され、段階的なアルコール系列を用いて再水和された。クエン酸バッファー(pH6.0、10mM)が抗原回復のために用いられた。キャピラリーギャップ法を用いて、切片はNRP2に対するウサギポリクローナル抗体(SC−5542,Santa Cruz Biotechnology社製)と共に一晩インキュベートされた。1:50の希釈が最適な染色結果を与えることが見い出された。3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC,3-amino-9-ethyl carbazole)が色素原として用いられ、切片はヘマトキシリンで対比染色された。
【0093】
大半の評価用の症例は利用可能な同一検体からの組織切片が3つあったが、組織切片が1つ又は2つしかない症例もあった。各組織切片は分析のために2つの病理学的判読がなされた。1の症例について2以上の切片が利用可能で病理学的判読が一致しなかった場合、その症例を代表するために判読の平均が取られた。各腫瘍タイプについての各症例の最終的な結果は次いで病理医の評価により平均されて、各腫瘍タイプの平均染色パーセンテージ及び強度が決定された。各症例について全切片を平均することにより、1つの切片しか有さない別の症例より重きを置かれた複数の切片を有する症例はなく、複数の切片を有する症例は症例全体を通じてNRP2染色のより的確な代表であった。
【0094】
分析のために用いられた組織は正常組織、様々なタイプの非メラニン細胞系腫瘍及び様々な皮膚性黒色腫であった。TMAスライドはBacus Labs Inc.社製のSlide Scanner(BLISS,Bacus laboratories社製、ロンバード、IL.)を用いてスキャンされてデジタル化された。画像は評価のためTMAJデータベースにアップロードされた。研究されていた組織の代表的試料とみなされなかった組織は分析から除かれた。スライドは定性的に試験され、組織染色が推定されて、組織の20%未満、20〜60%、60%超に存在するという3つに類別された。NRP2染色の強度はまた0〜3にスコア化され、0はNRP2染色がなく、3は最も高い強度であった。染色の範囲及び強度は記録され、NRP2について強く陽性であった対照試料と比較された。
【0095】
特注オープンソース画像解析ソフトウェアパッケージであるFRIDA(FRamework for Image Dataset Analysis)は、組織マイクロアレイスライドのスキャンから生成された画像を包含するRGBカラー画像データセットの解析及び画像解析のために用いられた。赤い染色及びヘマトキシリン単独(核は赤く染色されない)についての色相、彩度及び明度(HSB,Hue saturation and brightness)の区分範囲は組織マイクロアレイ画像セットから定義された。「全組織」、「NRP2染色陽性の組織」、「染色された核」及び「残りの組織」についての特異的な色画素定義を用いて、Javaソフトウェアプログラムは選択された色画素を有する画像を分析して陽性の染色を定量した。本研究において、組織領域全体が「組織領域」と定義され、染色された核は標識された「核」と定義され、特異的なNRP2染色の色が陽性のマスクは「NRP2領域」と定義された。予備検査研究によると核は染色されると予想されず、かつ核は腫瘍細胞において非常に大きいものであり得ることから、NRP2についての染色が予想された残りの組織領域は「組織領域」の中にあって「核」の中にない組織として再定義され、続いて「細胞質」と標識された。核のない全組織領域を再定義することにより、NRP2についての可能性のある全染色領域に基づくより的確な計算が確立された。染色のパーセンテージはFRIDAプログラムにより「NRP2領域」/「細胞質」(核のない全組織領域)として計算された。FRIDAコンピューター解析の結果は病理医評価と共にRバージョン2.6統計ソフトウェアプログラムを用いて解析された。不等分散を有するWelchの2標本t検定はメラニン細胞系腫瘍と非メラニン細胞系腫瘍との間のFRIDA NRP2染色の差を統計的に評価するのに用いられた。
【0096】
正常組織の分析
【0097】
【表3】

【0098】
正常組織についてのNRP2染色の定性的な免疫組織化学的分析は表3に見い出される。NRP2染色は肝臓、腎臓、卵管、膵臓、胎盤組織、精巣、前立腺、横紋筋細胞、検体特異的な乳管組織、表皮、脾臓及び子宮内膜組織において著しかった(図7)。全ての正常肝臓の試料は軽度なNRP−2陽性であり、散在的な肝細胞染色を有した。正常腎臓組織試料の大部分は糸球体内皮細胞、集合管及び集合尿細管の強いNRP2染色を示した。卵管の粘膜内層細胞は全ての検体において間欠的に陽性に染まった。胎盤検体は胎盤絨毛の合胞体栄養細胞の強度の間欠性NRP2染色を示した。これらの同一検体はまた絨毛核内部の胎児毛細管の間欠性染色を示した。乳房組織はコア試料に基づいて乳管内皮細胞の選択的なNRP2染色を示した。横紋筋細胞は全ての利用可能な検体において中等度の散在的なNRP−2染色を示した。皮膚検体は表皮層の内部のみでNRP2について強く陽性に染まり、いくつかの検体は表皮基底細胞層のごくわずかの染色を備えていた。子宮内膜組織の間質細胞及び腺細胞は核の内部でNRP2について間欠的に陽性に染まり、細胞質のごくわずかの染色を有した。精巣は精細管の上皮内でNRP2について強く陽性に染まった。前立腺検体は前立腺内皮細胞において、主に泡沫状細胞質への薄い染色色相として、NRP2について軽度に陽性に染まった。他の全ての組織はNRP2について陰性であった。
【0099】
腫瘍及び黒色腫の分析
【0100】
【表4】

【0101】
NRP2についての免疫組織化学染色はいろいろな腫瘍について評価された(表4、図8)。乳房の腫瘍はNRP2について検体特異的に染まり、2/5の乳小葉癌細胞の症例が軽度な陽性の染色を有し、3/5の乳管癌症例がNRP2陽性の染色を有したが、全ての切片にはわたらなかった。平滑筋肉腫検体もまたNRP2について症例特異的なように染まり、1つの検体は陰性の染色を有し、他の2つは陽性の染色を有した。腎細胞癌(明細胞)症例5例のうち4例はNRP2について陽性に染まり、大半の切片は強く陽性に染まった。結腸腺癌はNRP2について症例特異的に陽性に染まり、2/4の症例がNRP2について軽度な陽性の染色を有した。陽性に染まった結腸腺癌は散在的な核内及びクリプト細胞細胞質の染色があった。膀胱の移行上皮癌のNRP2についての染色もまた症例特異的であり、2/3の症例が軽度な陽性の染色を有した。粘液性卵巣、漿液性卵巣、肺腺癌、脂肪肉腫、紡錘細胞肉腫、非小細胞肺がん(扁平細胞癌)及び悪性線維性組織球腫の全ての症例はNRP2について陰性であった。
【0102】
いろいろな腫瘍のFRIDAコンピューター解析(図8D)は全ての染色腫瘍組織の平均パーセンテージが10.4%であったことを指し示した。腎細胞癌は最も平均染色パーセントが高く、49.9%であった。この結果は驚くべきものではないが、それは正常腎組織は腎糸球体及び尿細管においてNRP2について強く陽性に染色されるためである。残りのNRP2陽性腫瘍のコンピューター解析は平均染色パーセンテージを乳管癌5.1%、乳小葉癌2.9%、結腸腺癌3.7%、平滑筋肉腫9.9%、移行上皮癌9.7%と計算した(表4、図8D、図10)。これらの結果は下に論ずるように、評価された大部分の黒色腫よりも顕著に低いものである。
【0103】
【表5】

【0104】
様々な原発性悪性黒色腫及び転移性黒色腫におけるNRP2についての免疫組織化学染色は表5に示される。色素性類上皮黒色腫は最も陽性のNRP2染色を実証し、全ての症例がNRP2についての陽性染色を有しており(8/8)、大半の検体は病理医の評価によって60%超の中等度から強度の染色を有した(表5、図9)。メラニン欠乏性類上皮黒色腫の症例は全てNRP2について陽性に染まり(6/6)、大部分の染色が病理医の評価によって60%超で、全て中等度から強度の染色を有した。紡錘細胞結節性黒色腫の全ての症例もまたNRP2について陽性に染まり(3/3)、その大半は中等度の強度を示し、その全ては病理医の評価によって20%超の染色があった。全ての黒色腫症例のうち、線維形成性悪性黒色腫は最も軽度の染色があった。線維形成性悪性黒色腫の全ての症例は陽性であり(5/5)、その全ては病理医の評価によって20%未満に染まった。その他の悪性黒色腫症例は17/18の検体においてNRP2陽性に染まった。これらの大多数は視野の20%超が染まり、染色強度は軽度から強度まで変化した(図9)。
【0105】
NRP2について染色されたいろいろな黒色腫についてのFRIDA解析は、分析された全ての組織についての平均が46.9%であって(図9G)、分析されたその他の腫瘍から著しい増加があったことを示した(図10)。線維形成性悪性黒色腫は最も低い染色パーセンテージであり、平均8.5%であった。紡錘細胞結節性黒色腫のコンピューター解析はNRP2について平均13.9%が陽性と指し示した。類上皮タイプの黒色腫はNRP−2について最も多くの染色があり、色素性類上皮黒色腫の発現は平均42.6%でメラニン欠乏性類上皮黒色腫は平均NRP2陽性パーセンテージは40.2%だった。他の黒色腫はコンピューター解析による平均NRP2発現が46.4%であった。
【0106】
転移性黒色腫もまたNRP2について分析された。転移性の悪性黒色腫症例は分析された5例全てにおいてNRP2陽性に染まった。全ての症例は病理医の評価によって60%超に染まり、全てが中等度から強度の染色を有した。転移性メラニン欠乏性紡錘細胞黒色腫は8/9の検体においてNRP2陽性に染まり、染色強度は軽度から強度まで変化した。転移性メラニン欠乏性類上皮悪性黒色腫の症例については、全ての症例が陽性に染まり(8/8)、全ての切片が病理医の評価によって20%超の染色を有し、染色の大部分が60%超であった。これらの症例の大部分はNRP2について強度に染まった。
【0107】
転移性黒色腫のFRIDA解析は非転移性黒色腫についての解析と同様であった。転移性メラニン欠乏性紡錘細胞黒色腫はコンピューター解析による平均NRP2染色パーセントが22.2%であった。一方、転移性メラニン欠乏性類上皮細胞黒色腫及び他の転移性悪性黒色腫は、それぞれ63.5%及び50.6%とより高いパーセンテージであった(図10)。
【0108】
メラニン細胞系及び非メラニン細胞系のNRP2発現についての、FRIDA結果と比較した不等分散を有するWelchの2標本t検定がR統計ソフトウェアパッケージを用いて行われた。メラニン細胞系腫瘍は平均NRP2染色パーセントが40%であったのに対し、非メラニン細胞系腫瘍の平均はたった10%であった。平均における差は30%であり、染色パーセントにおける差についての95%信頼区間は(23.6、35.5)であった。平均における差は統計的に有意であることが見い出された(p<0.0001)。
【0109】
NRP2についての良性母斑の染色もまた限定された数の組織検体において評価された。注目すべきことに、評価された全ての良性母斑はNRP2についての染色が陰性であったが、基底上のケラチノサイトはNRP2について陽性に染まった(図11)。興味深いことに、正常なヒトメラニン細胞もまた表皮内部でのNRP2についての染色は陰性であった。
【0110】
NRP2の発現が転移状況において見られる黒色腫細胞に限定されることを確認するため、腫瘍検体はNRP2及びMelan−Aについて評価された。転移性黒色腫においてNRP2の発現はMelan−Aの発現と一致したことから、これらの細胞におけるNRP2の特異的な発現が示唆される(図12)。
【0111】
17/18の他の悪性黒色腫が病理医の評価によって平均して60%超のNRP2陽性の染色を有し(コンピューター解析によって46.4%)、それらは高強度である一方で、良性母斑はNRP2発現について完全に陰性であることから、我々の研究はNRP2が黒色腫についての有用なマーカーであり、悪性メラニン細胞系腫瘍に対して良性メラニン細胞系腫瘍の鑑別を援助する可能性があることを示唆する。加えて、良性及び悪性メラニン細胞系腫瘍におけるNRP2の差次的な発現を考えると、NRP2は黒色腫において有用な予後バイオマーカーである可能性がある。NRP2が分泌型で発現され得ることを考えると、この分泌タンパク質の検出もまた潜在性の転移性疾患を有する患者の識別のためのサロゲート黒色腫マーカーとして有用な可能性がある。
【実施例9】
【0112】
タンパク質NRP2は分泌タンパク質として発現される
HUVECパターニングは腫瘍に関連した分泌性可溶性因子に依存し、かつNRP2は分泌型及び細胞表面受容体としての両方で存在することができることから(Staton CA, Kumar I, Reed MW, Brown NJ (2007) Neuropilins in physiological and pathological angiogenesis. J Pathol 212(3): 237-248)、HUVEC単独、GFP−1205Lu細胞単独のいずれか、又はランダム混合法を用いて共培養された細胞に由来する条件培地におけるNRP2の発現が評価された(図13A)。HUVEC単独により条件付けされた培地に対してRFP−HUVEC及びランダム混合法共培養系の両者により条件付けされた培地におけるNRP2の濃度の顕著な上昇が観察された。これらの結果は、NRP2が少なくとも部分的に可溶性型で黒色腫細胞により生産され得、それ故にNRP2はパラクライン黒色腫−内皮細胞間コミュニケーションの潜在的に興味深い推定上のメディエーターであることを示唆する。
【0113】
これらの結果はモック及びNRP2がトランスフェクトされたHEK293T細胞、RFP−HUVEC、GFP−1205Lu黒色腫細胞、HUVEC−1205Lu共培養及びH460(NRP1+/NRP2−)肺がん細胞から回収された条件培地からのNRP2発現のIP−ウエスタン分析により確認され、さらに支持された(図13B)。
【実施例10】
【0114】
ELISAによる組換え型ヒトNRP2の検出
濃度を変化させた組換え型ヒトNRP2(R&D Systems社製,2215−N2)は96ウェルプレート中に播種された。ウサギポリクローナルNRP2抗体(Santa Cruz(登録商標)社製,sc−5542)及びマウスモノクローナルNRP2抗体(Santa Cruz(登録商標)社製,sc−13117)は濃度を変化させた組換え型ヒトNRP2を検出することができた(図14)。したがって、ELISAは患者血流中のNRP2レベルを検出するのに用いられることが可能であり、黒色腫患者のスクリーニングのための鋭敏なツールを提供するものである。
【実施例11】
【0115】
インビボでの黒色腫イメージング
SCIDマウスは1205Lu黒色腫細胞及びH460肺がん細胞を皮下注射された。NRP2に対する抗体(Santa Cruz社製,sc−5542)、ポドプラニン(リンパ脈管構造を見るため)及びCD31(血管密度を見るため)は125Iで放射性標識された。抗体は静脈内注射され、注射から4時間後(図15A)、72時間後(図15B)及び120時間後(図15C)にイメージングされた。
【実施例12】
【0116】
FACSを用いた黒色腫細胞の検出
実験は、NRP2発現がNRP2抗体標識(Santa Cruz社製,sc−5542)及びFACs分析を通じて黒色腫細胞上で検出され得るかを決定するために行われた。垂直成長期黒色腫細胞株の細胞外染色及びFACS分析は、標識され得る細胞のサブ集団を明らかにする(図16A)。NRP2についての細胞内染色は、99.8%を超える黒色腫細胞がNRP2の細胞外MAMドメインを標的とするNRP2特異的抗体を用いて標識され識別され得ることを実証する(図16B)。これらの結果は、NRP2発現についてのFACS分析が細胞試料中で黒色腫細胞を検出するのに十分な感度及び特異度を提供することを指し示す。
【0117】
本明細書で引用される全ての論文、特許、特許出願、インターネットサイト及び受託番号/データベース配列(ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の両者を包含する)は、全ての目的について本明細書に参照によりその全体が組み入れられ、その組み入れは個々の論文、特許、特許出願、インターネットサイト又は受託番号/データベース配列がそれぞれ参照によりそのように組み入れられることが具体的に個別に指し示されたのと同程度のものである。
【0118】
本明細書で参照される参考文献は便宜のために下に収載される。
【0119】
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【図1A】

【図1B−1D】

【図1E−1H】

【図2A】

【図2B】

【図2C−2F】

【図3A−3E】

【図3F−3J】

【図3K】

【図4A−4B】

【図4C−4D】

【図4E】

【図5A】

【図5B】

【図5C】

【図6A−6C】

【図6D−6E】

【図7A−7C】

【図8A−8C】

【図8D】

【図9A−9F】

【図9G】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における黒色腫を検出又は診断する方法であって、
a.前記対象から生物試料を取得すること、
b.前記試料中のi)ニューロピリン−2を発現している細胞、ii)可溶性のニューロピリン−2、又はiii)可溶性のニューロピリン−2断片の存在を検出すること、及び
c.前記ニューロピリン−2の発現を黒色腫の存在と関連付け、それによって対象における黒色腫を検出又は診断すること
を含む方法。
【請求項2】
黒色腫を発症するリスクがある対象を識別する方法であって、
a.前記対象から生物試料を取得すること、
b.前記試料中のi)ニューロピリン−2を発現している細胞、ii)可溶性のニューロピリン−2、又はiii)可溶性のニューロピリン−2断片の存在を検出すること、及び
c.前記ニューロピリン−2の発現を黒色腫を発症するリスクと関連付け、それによって黒色腫を発症するリスクがある対象を識別すること
を含む方法。
【請求項3】
対象における黒色腫の再発を予測する方法であって、
a.前記対象から生物試料を取得すること、
b.前記試料中のi)ニューロピリン−2を発現している細胞、ii)可溶性のニューロピリン−2、又はiii)可溶性のニューロピリン−2断片の存在を検出すること、及び
c.前記ニューロピリン−2の発現を黒色腫再発のリスクと関連付け、それによって対象における黒色腫の再発を予測すること
を含む方法。
【請求項4】
生物試料が組織、組織ホモジネート、組織薄片、細胞、剖検試料、病理試料、生検試料又は体液である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
体液が血液、血漿、血清、尿、浸出液又は髄液である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
検出がイムノアッセイ、アフィニティーカラム分離、磁気選別又はFACSを行うことを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
検出が、生物試料をニューロピリン−2又はニューロピリン−2の結合相手であるタンパク質を発現している細胞を選択的に検出する作用物質と接触させることを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
作用物質が、ニューロピリン−2に特異的に結合する抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
抗体が標識化されている、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
タンパク質がVEGF、VEGFの断片、PLEXIN、PLEXINの断片、セマフォリン又はセマフォリンの断片である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
タンパク質が標識化されている、請求項7又は12に記載の方法。
【請求項14】
標識が、蛍光標識、別のレポーターイオンと結合する部分、磁性粒子、重イオン、金粒子又は量子ドットである、請求項11又は13に記載の方法。
【請求項15】
対象における黒色腫細胞をインビボで識別する方法であって、
a.前記対象に、ニューロピリン−2を選択的に検出する標識化された作用物質の診断上有効な量を投与すること、及び
b.前記標識化された作用物質を検出すること
を含む方法。
【請求項16】
作用物質が、ニューロピリン−2に特異的に結合する抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
標識が、蛍光標識、別のレポーターイオンと結合する部分、磁性粒子、重イオン、金粒子又は量子ドットである、請求項15〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
ニューロピリン−2を発現していると識別された対象に黒色腫に対する処置を与えることをさらに含む、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
対象における黒色腫を診断又は検出するためのキットであって、i)ニューロピリン−2を発現している細胞、ii)可溶性のニューロピリン−2、又はiii)可溶性のニューロピリン−2断片の存在を検出する作用物質を少なくとも1つ含むキット。
【請求項22】
黒色腫を発症するリスクがある対象を識別するためのキットであって、i)ニューロピリン−2を発現している細胞、ii)可溶性のニューロピリン−2、又はiii)可溶性のニューロピリン−2断片の存在を検出する作用物質を少なくとも1つ含むキット。
【請求項23】
対象における黒色腫の再発を予測するためのキットであって、i)ニューロピリン−2を発現している細胞、ii)可溶性のニューロピリン−2、又はiii)可溶性のニューロピリン−2断片の存在を検出する作用物質を少なくとも1つ含むキット。
【請求項24】
作用物質が、ニューロピリン−2又は可溶性のニューロピリン−2断片に特異的に結合する抗体である、請求項21〜23のいずれかに記載のキット。
【請求項25】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項24に記載のキット。
【請求項27】
作用物質が、ニューロピリン−2の結合相手であるタンパク質である、請求項21〜23のいずれかに記載のキット。
【請求項28】
タンパク質がVEGF、VEGFの断片、PLEXIN、PLEXINの断片、セマフォリン又はセマフォリンの断片である、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
作用物質が標識化されている、請求項21〜28のいずれかに記載のキット。
【請求項30】
標識が、蛍光標識、別のレポーターイオンと結合する部分、磁性粒子、重イオン、金粒子又は量子ドットである、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
作用物質を収容するための容器をさらに含む、請求項21〜30のいずれかに記載のキット。
【請求項32】
対象から生物試料を得るための説明書をさらに含む、請求項21〜30のいずれかに記載のキット。
【請求項33】
細胞試料から標的黒色腫細胞を少なくとも1つ選択的に単離する方法であって、
a.標的黒色腫細胞を少なくとも1つ含む細胞試料を準備すること、及び
b.前記細胞試料と、ニューロピリン−2を発現している細胞を選択的に検出する作用物質とを、前記標的黒色腫細胞(複数可)が前記作用物質に結合して、結合した黒色腫細胞(複数可)が得られるのに有効な条件下で接触させること
を含む方法。
【請求項34】
結合した黒色腫細胞(複数可)を水性媒体で洗浄することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
標的黒色腫細胞(複数可)の存在を検出することをさらに含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
単離された標的黒色腫細胞(複数可)をインビトロアッセイにおいて用いることをさらに含む、請求項33〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
作用物質が、ニューロピリン−2に特異的に結合する抗体である、請求項33〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
作用物質が標識化されている、請求項33〜39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
標識が、蛍光標識、別のレポーターイオンと結合する部分、磁性粒子、重イオン、金粒子又は量子ドットである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
黒色腫について対象を処置する方法であって、
a.黒色腫に罹患している又は黒色腫を発症するリスクがある対象を識別すること、及び
b.前記対象に黒色腫細胞の増殖を阻害する作用物質を投与することであって、前記作用物質がニューロピリン−2介在性の細胞増殖を阻害するものであること
を含む方法。
【請求項43】
作用物質が、ニューロピリン−2に選択的に結合する分子である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
作用物質が、ニューロピリン−2に特異的に結合する抗体である、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項44に記載の方法。

【図10】
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【図11A−11F】
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【図12A−12D】
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【図13A−13B】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【公表番号】特表2013−507641(P2013−507641A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534319(P2012−534319)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/052486
【国際公開番号】WO2011/047033
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(398076227)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー (35)
【Fターム(参考)】