説明

鼻腔内ベンゾジアゼピン組成物

哺乳類に鼻腔内投与するための医薬組成物。本発明の医薬組成物は、有効量のベンゾジアゼピンもしくはベンゾジアゼピンの医薬的に許容可能な塩と鼻腔キャリヤーとを含む。幾つかの実施態様においては、本発明の医薬組成物は、鼻腔内投与すると、速やかな生理学的反応をもたらす。本発明の医薬組成物はさらに、少なくとも1種以上の甘味剤、風味剤、マスキング剤、またはこれらの組み合わせ物を含んでよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、米国特許出願第10/418,260号(2003年4月15日出願)の一部継続出願である。米国特許出願第10/418,260号は、米国特許出願第09/790,199号(2001年2月20日出願。現在は米国特許第6,610,271号)の一部継続出願である。これら特許出願の全開示内容を、参照により本明細書に含める。
【0002】
背景技術
ベンゾジアゼピン類は、不安緩解性、催眠性、抗痙攣性、および鎮痙性に基づくさまざまな臨床症状を予防または治療するのに使用されている。一部のベンゾジアゼピン類はさらに、抗パニック作用、抗うつ作用、健忘作用、および麻酔作用に関して効力を示すことが実証されている。
【0003】
クロルジアゼポキシドとジアゼパム(最も初期のベンゾジアゼピン類)は、典型的な1,4-ジアゼピン環構造を、そしてさらに、ベンゼン環に縮合した5-アリール置換の環を有する。1,4-ジアゼピン構造に多くの変更を加えることで、ミダゾラム(ジアゼピン環に縮合したイミダゾ環を有する短時間作用型のベンゾジアゼピン)、ならびにアルプラゾラムやトリアゾラム(これらは、ジアゼピン環に縮合したトリアゾロ環を有する)が得られている。典型的なベンゾジアゼピン構造をもたなくても、ある種のベンゾジアゼピン類に関連した不安緩解作用または鎮静作用を有する他の化合物がある。こうした他の化合物としては、たとえば、ゾピクロン、ゾルピデム、アベカルニル、およびブレタゼニルなどがある。
【0004】
ベンゾジアゼピン類や他の化合物が示す治療効果は、ある程度は、これらの物質が、抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)の、その受容体に対する作用を高めることによるものである。ベンゾジアゼピン類は、GABA受容体に対して作用し、GABAにクロライドチャネルのより速やかな拍動性オープニング(pulsatile opening)を生じさせ、これにより細胞中へのクロライドの流入が引き起こされる。
【0005】
ベンゾジアゼピン類は、種々の作用開始と種々の作用持続時間を有することから、多種多様な臨床症状を治療する上で有用な物質である。短時間での作用開始と短い作用持続時間を示すベンゾジアゼピン類は、速やかな効果が必要とされる場合(たとえば、外来患者の外科的治療や診断的治療に対して)に有用である。しかしながら、より長い作用持続時間が要求される場合(たとえば、睡眠持続障害の治療において、あるいは発作の抑制に対して)もある。一部のベンゾジアゼピン類は、不安障害、統合失調症、恐怖症、睡眠障害、および抑欝障害を治療するのに使用されている。ベンゾジアゼピン類は、単独であるいは神経安定薬と組み合わせて使用すると、興奮や敵意を含んだ種々の精神病理学的緊急事態の処理に対して有用であることが実証されている。静脈注射のジアゼパムはしばしば、種々の痙攣性緊急事態(癲癇重積状態や破傷風による痙攣)において救命薬となる。ベンゾジアゼピン類はしばしば、痙縮と不随意運動障害(たとえば、舞踏病、ミオクローヌス、および精神安定薬の使用に関連した一部のジスキネジーとジストニー)の実質的な軽減をもたらす。ベンゾジアゼピン類はさらに、急性アルコール禁断を治療する際にも有効である。ベンゾジアゼピン類は、外科的治療の前に投与すると、不安を軽減し、鎮静をもたらし、麻酔の誘発を容易にし、麻酔誘発を取り巻く種々の事象に対して健忘を引き起こす。癌の治療において、ロラゼパムと他のベンゾジアゼピン類は、化学療法に付きものの吐き気や嘔吐を抑えるのに役立つことがある。
【0006】
ベンゾジアゼピン類は種々の疾病を治療するのに使用することができるけれども、患者が処方どおりに医薬を摂取することに従わないか又は医薬を摂取しそこなうことが、多くの疾病の不十分な治療につながっている。一部のベンゾジアゼピン類は注射によって利用できる〔たとえば、静脈内注射(IV)、筋肉内注射(IM)、または皮下注射〕。静脈内経路は通常、医薬を投与するのに最も不便な経路と考えられている。静脈内投与は不服従を引き起こすことがある。なぜなら、注射をするのを患者が恐れるだけでなく、注射部位において生じる痛み、炎症、および感染などの不快な経験も、不服従につながることがあるからである。
【0007】
鼻腔内経路は現在、ベンゾジアゼピン類の投与に関して特別な関心を集めている。鼻腔内経路を介して薬物を投与する場合、薬物は、それが吸収される鼻粘膜に施される。鼻粘膜下の毛細血管の広範囲にわたるネットワークは、薬物の速やかで効果的な体内吸収をもたらすのに特に適している。鼻腔内投与経路は、血漿濃度(バイオアベイラビリティ)と同等の投与量、および静脈内経路の投与量と同等の効力を達成するはずである。
【0008】
薬物の鼻腔内投与は、静脈内経路を凌ぐ多くの利点をもたらす。鼻腔内経路の主要な利点は、非侵襲性の供給であること、薬物の吸収が速やかであること、および治療が簡便であることである。静脈内経路は、鼻腔内経路と異なって皮下注射器の滅菌を必要とし、施設的な状況から(in the institutional setting)、汚染された針によって皮下注射器が誤って突き刺された場合の収縮性疾患の危険性に関して、医療関係者の間で懸念を引き起こしている。さらに、針と注射器の安全な廃棄に対しては厳しい要件が課されている。
【0009】
これとは対照的に鼻腔内投与の場合、患者と所属医療関係者の側にはほとんど時間が必要とされず、また注射可能な経路より施設に関してはるかに楽である。薬物を鼻腔内供給にて治療すると、施設の状況からみて、患者または医療関係者が感染する著しい危険はない。
【0010】
鼻腔内投与が静脈内投与を凌ぐ第2の重要な利点は、患者が鼻腔内供給経路を受け入れることである。注射は、場合によっては、ヒリヒリする浮腫、腫れ、膨れ、ハードネス(hardness)、および痛みを引き起こす。これとは対照的に、鼻腔内投与は非侵襲性であると考えられており、痛みを伴わず、後作用を示さず、多種多様な病状を治療する迅速な手段となる。鼻腔内投与は、患者が子供であるときに特に有利である。多くの(殆どではないとしても)患者は不安を経験し、IM経路やIV経路を介する皮下注射に直面すると、ストレスの徴候を示す。さらに、殆どの人々は、自分とその家族がいつも決まって使用していた、風邪とアレルギーの症状を緩和するための、市販の充血除去剤の形態の鼻腔用スプレーに幾らかの親しみやすさを有している。他の重要な点は、鼻腔スプレーの処方された用量を、熟練した医療従事者を必要とせずに、患者が自分で投与できるということである。
【0011】
医薬業界では、種々の鼻腔内ベンゾジアゼピン組成物が知られている。しかしながら一部の鼻腔内ベンゾジアゼピン組成物は、吸収が良くないか、あるいはピーク血漿濃度到達時間が遅く、このことは、幾つかの臨床症状の予防もしくは治療に対して適切ではない。先行技術による他のベンゾジアゼピン製剤は、患者の順守性を高めていない。たとえば、一部の鼻腔内ミダゾラム製剤は、しばしば鼻の炎症やバーニング(burning)を引き起こすようなpHにてもたらされる。
【0012】
上記の点から、たとえば、速やかな吸収や迅速なピーク濃度到達時間等の、改良された特性を有する鼻腔内ベンゾジアゼピン組成物が求められている。さらに、患者の順守性を向上させる鼻腔内組成物が求められている。
【0013】
発明の概要
種々の実施態様において、哺乳類への鼻腔内投与用の医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成物は、有効量のベンゾジアゼピンもしくは前記ベンゾジアゼピンの医薬として許容しうる塩と鼻腔キャリヤー(a nasal carrier)とを含む。種々の実施態様において、本発明の医薬組成物は、鼻腔内に投与したときに速やかな生理学的反応を生じる。
【0014】
種々の実施態様において、有効量のベンゾジアゼピンもしくは前記ベンゾジアゼピンの医薬として許容しうる塩;鼻腔キャリヤー;および少なくとも1種以上の甘味剤、風味剤、マスキング剤、もしくはこれらの組み合わせ物;を含んだ医薬組成物が、鼻腔内投与用として提供される。
【0015】
種々の実施態様において、有効量のミダゾラムもしくはその医薬的に許容可能な塩、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールを含んだ医薬組成物が、哺乳類への鼻腔内投与用として提供される。
【0016】
種々の実施態様において、ミダゾラムもしくはその医薬的に許容可能な塩と鼻腔キャリヤーとを含んだ有効量の医薬組成物を哺乳類に鼻腔内投与することを含み、このとき速やかな鎮静、速やかな不安緩解、速やかな健忘、または麻酔の速やかな誘発が、鼻腔内投与後の5分以内に起こる、速やかな鎮静、速やかな不安緩解、速やかな健忘、または麻酔の速やかな誘発を必要とする哺乳類を治療する方法が提供される。
【0017】
種々の実施態様において、ミダゾラムもしくはその医薬的に許容可能な塩;鼻腔キャリヤー;および少なくとも1種以上の甘味剤、風味剤、マスキング剤、もしくはこれらの組み合わせ物;を含んだ有効量の医薬組成物を哺乳類に鼻腔内投与することを含む、速やかな鎮静、速やかな不安緩解、速やかな健忘、または麻酔の速やかな誘発を必要とする哺乳類を治療する方法が提供される。
【0018】
種々の実施態様において、ミダゾラムもしくはその医薬的に許容可能な塩と鼻腔キャリヤーとを含んだ医薬組成物に、少なくとも1種以上の甘味剤、風味剤、マスキング剤、もしくはこれらの組み合わせ物を、鼻腔内投与用医薬組成物が得られるように加えることを含む、鼻腔内投与用医薬組成物の製造法が提供される。
【0019】
種々の実施態様の理解をより深めるために、以下に実施例(実施例の範囲は、添付の特許請求の範囲に説明されている)と関連させて説明する。
【0020】
図面の簡単な説明
好ましい態様を説明ないし記載のための選んだが、特許請求の範囲を限定することを意図するものでは決してない。好ましい態様を添付の図面に示す。
【0021】
図1は、3種の異なったミダゾラム組成物に関して、血漿vs時間における4時間に対するミダゾラムの平均血液血漿濃度(n=12)をグラフ表示したものである。
図2は、3種の異なったミダゾラム組成物に関して、血漿vs時間における12時間に対するミダゾラムの平均血液血漿濃度(n=12)をグラフ表示したものである。
【0022】
図3は、3種の異なったミダゾラム組成物に関して、血漿vs時間における4時間に対するミダゾラムの平均血液血漿濃度(n=17)をグラフ表示したものである。
図4は、3種の異なったミダゾラム組成物に関して、血漿vs時間における12時間に対するミダゾラムの平均血液血漿濃度(n=17)をグラフ表示したものである。
【0023】
詳細な説明
種々の実施態様について説明する。これらの実施態様は、特許請求の範囲の理解に役立つように記載されており、決して特許請求の範囲を限定することを意図しておらず、また決して特許請求の範囲を限定すると解釈すべきではない。開示内容を読むと当業者に明らかになる別の物品や方法、変更、および均等物は全て特許請求の範囲の精神と範囲内に含まれる。
【0024】
本発明の医薬組成物はベンビジアゼピンまたは他の化合物を含む。本明細書で使用されるベンゾジアゼピンとしては、アルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバゼパム、クロナゼパム、クロラゼペート、デモキセパム、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、クアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、ゾルピデム、ザレプロン、またはこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。一部のベンゾジアゼピンが示すような不安緩解作用や鎮静作用を有する他の化合物としては、たとえば、ゾピクロン、ゾルピデム、アベカルニル、およびブレタゼニルなどがある。
【0025】
種々の実施態様において、ベンゾジアゼピンは、遊離形であっても、医薬的に許容可能な塩であっても、あるいは錯体形であってもよい。ベンゾジアゼピンの医薬的に許容可能な塩の幾つかの例としては、化合物の毒性を実質的に増大させない塩形成の酸および塩基がある。適切な塩の幾つかの例としては、アルカリ金属(たとえば、マグネシウム、カリウム、およびアンモニウム)の塩、無機酸(たとえば、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸)の塩、ならびに有機酸〔たとえば、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、グロン酸、コハク酸、およびアリールスルホン酸(たとえばp-トルエンスルホン酸)など〕の塩がある。
【0026】
種々の実施態様において、ミダゾラムもしくはその医薬的に許容可能な塩を含んだ医薬組成物が鼻腔内投与用として提供される。種々の実施態様において、本発明の医薬組成物はミダゾラム塩酸塩を含む。ミダゾラムは、8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-1-メチル-4H-イミダゾ-[1,5-a][1,4]ベンゾジアゼピン,[CAS59467-70-8]である。ミダゾラムの分子量は325.8である。
【0027】
ミダゾラムはC18H13ClFN3という分子式を有し、下記の一般構造で示される。
【0028】
【化1】

【0029】
種々の実施態様において、本発明の医薬組成物は、ベンゾジアゼピンもしくはベンゾジアゼピンの医薬的に許容可能な塩と鼻腔キャリヤーとを含む。本明細書で使用している“鼻腔キャリヤー”は、ベンゾジアゼピンもしくは他の化合物を鼻粘膜に送達させるよう意図された溶液、エマルジョン、懸濁液、または粉末を含む。鼻腔キャリヤーは、鼻粘膜に施すのに適した希釈剤を含んでよい。適切な希釈剤は、水性の希釈剤、非水性の希釈剤、またはこれらの組み合わせ物を含む。水性希釈剤の例としては、塩水、水、デキストロース、またはこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。非水性希釈剤としては、アルコール、特に多価アルアルコール(たとえば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびグリセロール)、植物油、鉱油、またはこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。これらの水性希釈剤および/または非水性希釈剤は、溶液、懸濁液、水中油形エマルジョン、または油中水形エマルジョンが形成されるように、種々の濃度および組み合わせにて加えることができる。
【0030】
種々の実施態様において、鼻腔キャリヤーはポリエチレングリコールとプロピレングリコールを含む。種々の実施態様において、ポリエチレングリコールは、組成物の約15容量%〜約25容量%を構成し、プロピレングリコールは、組成物の約75容量%〜約85容量%を構成する。種々の実施態様において、ポリエチレングリコールは約400の平均分子量を有する。種々の実施態様において、ポリエチレングリコールとプロピレングリコールとの比は約1:4である。
【0031】
幾つかの実施態様においては、鼻腔キャリヤーはさらに、酸化防止剤、化学的保存剤、緩衝剤、界面活性剤、および/または粘度を増大させる薬剤などの賦形剤を含有してよい。酸化防止剤は、製剤の酸化を防ぐ物質である。医薬組成物中に使用するための(使用する場合)適切な酸化防止剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびメタ重亜硫酸カリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0032】
種々の実施態様において、組成物は、組成物を保存するような、そして好ましくは鼻粘膜に対して刺激を引き起こさないような量にて選定される保存剤を含有する。幾つかの実施態様において使用するための適切な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、ベンゼトニウム、またはこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。一般には、保存剤は、約0.01重量%〜約0.5重量%の量にて組成物に加える。
【0033】
幾つかの実施態様においては、製剤は保存剤を含有しない。本明細書で使用している“保存剤非含有組成物”とは、いかなる保存剤も含有しない組成物を表わしている。したがって、こうした組成物は、たとえば、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、またはベンゼトニウムを含有しない。
【0034】
組成物中に緩衝剤が使用される場合、緩衝剤は、好ましくは鼻粘膜を刺激しないような量にて選定される。緩衝剤は、pHの変化を少なくする薬剤を含む。医薬組成物中に使用することができる幾つかの緩衝剤としては、クエン酸塩(たとえばクエン酸ナトリウム)、酢酸塩(たとえば酢酸ナトリウム)、リン酸塩(たとえばリン酸ナトリウム)、および/またはこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。一般には、緩衝剤は、約0.01重量%〜約3重量%の量にて組成物に加えられる。
【0035】
1種以上の界面活性剤が使用される場合、組成物中に存在する量は、選択される界面活性剤の種類、投与方式の種類(たとえば、滴下または噴霧)、および求められる効果によって変わる。しかしながら一般には、存在する量は、約0.1mg/ml〜約10mg/mlのオーダーであり、種々の実施態様においては約0.5mg/ml〜約5mg/mlのオーダーであり、そして種々の実施態様においては約1mg/mlが使用される。
【0036】
種々の実施態様において、医薬組成物は、粘度を増大させる1種以上の薬剤を含んでよく、こうした薬剤は、好ましくは、鼻粘膜を刺激せず、且つ鼻腔残留時間を増大させるように量にて選定される。粘度を増大させる幾つかの薬剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、カラゲーニン、カーボポール、および/またはこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。種々の実施態様において、粘度を増大させ、且つ鼻腔残留時間を増大させるのに使用される薬剤はメチルセルロースまたはカーボポールである。一般には、粘度を増大させる薬剤は、約0.1重量%〜約10重量%の量にて組成物中に加えることができる。
【0037】
鼻腔内医薬組成物の苦味を少なくするために、および/または患者の順守性を高めるために、種々の実施態様において、1種以上の甘味剤、風味剤、またはマスキング剤が使用される。甘味剤、風味剤、またはマスキング剤は、医薬組成物に甘味または風味を付与するあらゆる薬剤を含む。甘味剤、風味剤、またはマスキング剤は、鼻腔内投与後に医薬組成物が口中に滴り落ちた場合に生じることがある苦味や不快な味を遮断する。鼻腔内医薬組成物に甘味剤、風味剤、またはマスキング剤を加えることによって、不快な味のために鼻腔内医薬組成物を摂取することに対して患者がもつ障壁が軽減される。鼻腔内医薬組成物に甘味剤、風味剤、またはマスキング剤を加えることによって、患者の順守性が高まるか、あるいは向上する。
【0038】
本明細書で使用している1種以上の甘味剤、風味剤、またはマスキング剤としては、アカシアシロップ、アネトール、アニスオイル、芳香エリキシル、ベンズアルデヒド、ベンズアルデヒドエリキシル、シクロデキストリン、コンパウンド(compound)、キャラウェー、キャラウェーオイル、カルダモンオイル、カルダモンスピリット(cardamom spirit)、コンパウンド、カルダモンチンキ(cardamom tincture)、コンパウンド、チェリージュース、チェリーシロップ、シナモン、シナモンオイル、シナモンウォーター、クエン酸、クエン酸シロップ、丁子油、ココア、ココアシロップ、コリアンダーオイル、デキストロース、エリオジクチオン、エリオジクチオン流エキス剤、エリオジクチオンシロップ、アロマチック(aromatic)、酢酸エチル、エチルバニリン、ウイキョウオイル、ジンジャー、ジンジャー流エキス剤、ジンジャーオレオレジン、デキストロース、グルコース、シュガー、マルトデキストリン、グリセリン、甘草、甘草エリキシル、甘草エキス、甘草エキスピュア、甘草流エキス剤、甘草シロップ、蜂蜜、イソアルコール性エリキシル(iso-alcoholic elixir)、ラベンダーオイル、レモンオイル、レモンチンキ、マンニトール、サリチル酸メチル、ナツメグオイル、オレンジビター、エリキシル、オレンジビター、オイル、橙花油、橙花水、オレンジオイル、オレンジピール、ビター、オレンジピールスイート、チンキ(tincture)、オレンジスピリット、コンパウンド、オレンジシロップ、ペパーミント、ペパーミントオイル、ペパーミントスピリット、ペパーミント水、フェニルエチルアルコール、ラズベリージュース、ラズベリーシロップ、ローズマリーオイル、ローズオイル、ローズウォーター、ローズウォーター、ストロンガー(stronger)、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、サルサパリラシロップ、サルサパリラコンパウンド、ソルビトール液、スペアミント、スペアミントオイル、スクロース、スクラロース、シロップ、タイムオイル、トルーバルサム、トルーバルサムシロップ、バニラ、バニラチンキ、バニリン、ワイルドチェリーシロップ、またはこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。
【0039】
種々の実施態様において、甘味剤は、サッカリン、サッカリンナトリウム、キシリトール、マンニトール、グリセリン、ソルビトール、スクラロース、マルトデキストリン、スクロース、アスパルテーム、アセスルフェームカリウム、デキストロース、グリコシド、マルトース、スイートオレンジオイル、デキストロース、グルコース、蜂蜜、またはこれらの組み合わせ物である。種々の実施態様において使用するための幾つかの風味剤としては、グリセリン、ウインターグリーンオイル、ペパーミントオイル、ペパーミントウォーター、ペパーミントスピリット、メントール、シロップ、またはこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。種々の実施態様において、マスキング剤は味蕾と接触しない。種々の実施態様において、マスキング剤としては、シクロデキストリン、シクロデキストリンエマルジョン、シクロデキストリン粒子、シクロデキストリン錯体、またはこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。
【0040】
バーニング(burning)(それが起こる場合)を軽減するために、医薬組成物は麻酔剤を含有してよい。幾つかの麻酔剤としては、リドカイン、プリロカイン、プロカイン、テトラカイン、クロロプロカイン、前記物質の医薬的に許容可能な塩、またはこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。
【0041】
種々の実施態様において、医薬組成物は、医薬的に許容可能な界面活性剤、医薬的に許容可能な補助溶媒、医薬的に許容可能な接着剤、または医薬的に許容可能な、pHと浸透圧を調整するための薬剤等の成分をさらに含んでよい。本発明の医薬組成物はいずれかの特定のpHに限定されない。しかしながら一般に、鼻腔投与に対しては、弱酸性のpHが好ましい。幾つかの実施態様においては、pHは約3〜約6の範囲であり、他の実施態様においては、pHは約3〜約5の範囲であり、そして他の実施態様においては、pHは約4〜約5の範囲である。pHの調整が必要とされる場合は、適切な酸(たとえば塩酸)または塩基(たとえば水酸化ナトリウム)を加えることによって達成することができる。
【0042】
幾つかの実施態様における医薬組成物は、鼻腔キャリヤー、および/または、甘味剤、風味剤、マスキング剤、あるいはこれらの組み合わせ物と、ベンゾジアゼピンとを、たとえば室温にて無菌条件下でミキシングして混合物を形成させることによって製造することができる。他の実施態様においては、混合物を、たとえば0.22ミクロンのフィルターによって濾過する。当業者には言うまでもないことであるが、ミキシングの順序は重要なことではなく、種々の実施態様は、組成物を限定なくあらゆる順序でミキシングすることを含む。種々の実施態様において、医薬組成物は、無菌の溶液もしくは懸濁液である。
【0043】
医薬組成物は、鼻腔スプレー、滴剤、溶液、懸濁液、およびゲルなどによって鼻腔内投与することができる。鼻腔内投与は業界で認められている用語であり、鼻腔内投与としては、鼻腔中への医薬組成物の投与があるが、これに限定されない。
【0044】
医薬組成物が液体であるとき、鼻粘膜を通して吸収することができる液体の量は、たとえば、成人の場合で約0.025ml〜約2ml、約0.25ml〜約1ml、または約0.05ml〜約15mlであり、小児に対してはより少ない量である。しかしながら本発明の医薬組成物は、いずれかの特定の量に限定されない。
【0045】
鼻腔内供給用の器具は当業界に公知である。医薬組成物と共に使用するのに適した器具は、たとえば、米国ニュージャージー州プリンストンのプファイファー(Pfeiffer)社、および米国コネチカット州Greenwichのバロイス(Valois)社から入手することができる。これらの器具は、医薬組成物を一定の状態で供給することができるので好ましい。これらの器具は、患者が簡単に操作することができ、使用後に器具にベンゾジアゼピンが実質的に残らず、したがって、他の人がベンゾジアゼピンもしくは他の寄生物質を誤用するという懸念なく廃棄することができる。
【0046】
種々の実施態様において、鼻腔内供給器具は、より高い粘度の組成物に対応すべく、たとえば、ポリエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコールを含んだ非水性の組成物に対し、アプリケーターのノーズ部分における排出オリフィスのサイズを約0.07mmに増大させることによって変更を加えることができる。水性組成物の場合、直径は、たとえば約0.05mmであってよい。鼻腔内供給器具はさらに、スワールチャンバーを含んでよい。アプリケーターの部品も、当業界によく知られている方法によって滅菌することができる。
【0047】
鼻腔内供給器具には、単回用量のベンゾジアゼピンを充填することも、あるいは複数回用量のベンゾジアゼピンを充填することもできる。種々の実施態様において、鼻腔内供給器具には、単回用量のベンゾジアゼピンが充填される。幾つかの実施態様において、医薬組成物を収容している溶液とその密閉手段は滅菌処理可能であり、幾つかの実施態様においては、医薬組成物と接触している供給器具の少なくも一部は、滅菌処理できるような配置構成にて組み立てられている。1つ以上の単位用量を組み込んだ供給器具は、当業界によく知られている方法と技術を使用して、包装の前でも後でも滅菌処理することができる。個々の器具を包装し、滅菌処理し、そして出荷することもできるし、あるいはこれとは別に、出荷と保存を含めた全体的なパッケージ品を一挙に滅菌処理し、残りのユニットの無菌性に影響を及ぼすことなく、使用するごとに器具を個別に取り出すこともできる。
【0048】
本発明の組成物と方法にしたがって鼻腔内投与することができるベンゾジアゼピンまたは他の化合物の量は、選択するベンゾジアゼピンの種類、治療を受ける疾病の種類、所望する投与頻度、および所望する効果に依存する。ベンゾジアゼピンもしくは他の化合物が予防または治療において有用である、幾つかの医学的もしくは獣医学的な症状、症候群、疾病、または疾患としては、不安障害、パニック発作、統合失調症、恐怖症、睡眠障害(たとえば不眠症)、抑欝障害、興奮、敵意、癲癇、痙攣、痙縮、不随意運動障害、アルコール禁断、またはこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。ベンゾジアゼピンもしくは他の化合物は、医療治療や歯科的治療(たとえば、外科麻酔の前に不安を軽減する、鎮静作用をもたらす、麻酔の誘発を容易にする、健忘をもたらす、あるいは吐き気や嘔吐を抑える)における付属物として使用することができる。
【0049】
種々の実施態様において、医薬組成物はミダゾラムを含み、速やかな鎮静、速やかな不安緩解、速やかな健忘、または麻酔の速やかな誘発を必要とする哺乳類に投与される。本明細書で使用している、ベンゾジアゼピンもしくは他の化合物の“有効量”は、ベンゾジアゼピンによる治療を必要とする症状、疾病、および/または疾患の軽減もしくは緩和を達成するのに有効な量を含む。哺乳類に対する医薬組成物の最大用量は、望ましいレスポンスを引き出し、そして望ましくない又は容認しえない副作用を引き起こさない最も多い用量である。ベンゾジアゼピンの最小用量は、所望の効果を達成する最も少ない用量である。いずれにしても、開業医は、当該分野における技能と知見に基づいて決定することができ、本発明は、哺乳類において所望の効果を達成するのに有効な用量を含む(この用量に限定されない)。鼻腔内投与に適したベンゾジアゼピンの用量は約0.1mg〜約30mgであるが、これに限定されない。たとえば、鼻腔内投与のためのミダゾラム塩酸塩の用量は約0.1mg〜約20mgであるが、これに限定されない。
【0050】
種々の実施態様において、驚くべきことに、ミダゾラムを含んだ医薬組成物は、鼻腔内投与すると、速やかな吸収とピーク到達時間(Tmax)を有し、このため静脈内経路によって投与されるミダゾラムより速やかな作用発現をもたらす、ということが見出された。たとえば、鼻腔内投与されたミダゾラムに対するTmaxは、場合によっては約5分であるが、静脈内投与されたミダゾラムに対するTmaxは約15分であった。種々の実施態様において、ミダゾラムを含んだ医薬組成物は、鼻腔内投与後に、2.5mg用量から約40ng/mlの最大血漿濃度(Cmax)を、または5mg用量から約80ng/mlの最大血漿濃度(Cmax)を達成する。種々の実施態様において、鼻腔内投与後のミダゾラムに対するAUCと、同等用量の静脈内投与後のミダゾラムに対するAUCとの比は少なくとも約1:1.7である。
【0051】
種々の実施態様において、ベンゾジアゼピンは、ベンゾジアゼピンによる治療を必要とする疾病および/または疾患に罹っている哺乳類に投与される。ここで言う哺乳類は、たとえば、ヒトのほかに、イヌやネコ等の愛玩動物、ラットやマウス等の実験動物、およびウマやウシ等の家畜を含む。
【0052】
種々の実施態様において、速やかな鎮静、速やかな不安緩解、速やかな健忘、または麻酔の速やかな誘発を必要とする哺乳類を治療する方法が提供される。この方法は、ミダゾラムもしくはその医薬的に許容可能な塩を鼻腔キャリヤー中に含んだ医薬組成物を有効量にて哺乳類に鼻腔内投与することを含む。医薬組成物はさらに、甘味剤、マスキング剤、または風味剤を含有してよい。種々の実施態様において、ミダゾラムを含んだ医薬組成物が哺乳類に鼻腔内投与され、医薬組成物が哺乳類によって代謝され、約1ng/ml〜約8ng/mlの1-ヒドロキシミダゾラム血漿レベルを達成する。
【0053】
実施例
下記の実施例は、種々の組成物の改良された吸収、速やかなピーク濃度到達時間、および優れたバイオアベイラビリティを示している。実施例はさらに、鼻腔内投与後の不快な味を軽減することによって患者の順守性を向上させる、たとえば甘味剤を含んだミダゾラム組成物を示している。
【0054】
(実施例1)
本実施例は、12人の健常な男性被験者と女性被験者における、鼻腔内(IN)投与、筋内(IM)投与、および静脈内(IV)投与後の5.0mgミダゾラム(MZ)を比較する。
【0055】
被験者
非喫煙で健常な12人の被験者(男性6人、女性6人)〔年齢が20〜29歳(平均22.3歳)、体重が132〜202ポンド(平均157ポンド)〕が、インフォームドコンセントを得た後に、入院患者に関するこの実験に参加した。この実験に登録されたボランティアのうちの11人が白人であり、1人がアジア人であった。実験参加者は、包含/除外の基準、病歴、身体診察と鼻診察、バイタルサイン、臨床試験、およびプロトコルに記載の他の治療に基づいて選定した。被験者は、身長とエルボー幅(elbow breadth)に関して理想的体重の±20%以内であり、体重は少なくとも60kg(132ポンド)であった。被験者は、良好な健常状態にあり、臨床的に重大な鼻の手術を受けておらず、鼻ポリープも、鼻の他の身体的異常もなく、また心臓血管疾患、胃腸疾患、腎疾患、肝疾患、肺疾患、および血液疾患もなかった。後遺症を有する脳外傷、低血圧、心不全、心伝導系障害、慢性呼吸器疾患、出血傾向、または緑内障の病歴、睡眠時無呼吸の正規診断、あるいはアルコール依存症や薬物乱用の病歴を有する被験者は除外した。被験者は、投与する時点の48時間前、および実験中は、アルコールやカフェインを含有する飲み物を控えた。被験者には、スクリーニングの日から実験が終了するまで、MZの代謝作用や鼻の生理機能と相互作用するような処方薬および非処方薬を控えるよう求めた。被験者は、スクリーニング評価の間、薬力学(PD)的評価を行うことができること実証しなければならなかった。インフォームドコンセントを得、グッド・クリニカル・プラクティス(Good Clinical Practice)に関して適用可能なガイドラインにしたがって本実験を行った。
【0056】
静脈内用製剤と筋内用製剤
ケンタッキー・ホスピタル・インベスティゲイショナル・ドラッグ・サービス・ファーマシー大学(University of Kentucky Hospital Investigational Drug Service Pharmacy)における投与のために、市販のMZ〔ホフマン-ラロシュによるヴァースト(Versed)(登録商標)インジェクション〕を使用して静脈内(IV)溶液と筋内(IM)溶液を調製した。MZの無菌溶液(1.0mg/mlの5ml)を、10mlの全体積が15分で注入されるように、通常の生理食塩水で10mlに希釈した。5.0mgの筋内MZ(5.0mg/1.0mlを1ml)を希釈せずに投与した。
【0057】
MZの鼻腔内用製剤
ケンタッキー・カレッジ・オブ・ファーマシー・センター・フォー・ファーマスーティカル・サイエンス・アンド・テクノロジー大学(University of Kentucky College of Pharmacy Center for Pharmaceutical Science and Technology)(CPST)においてGMP条件下にて25mg/mlの鼻腔内MZ製剤を調製した。鼻腔内製剤は、ミダゾラム25mg;ポリエチレングリコール400,USP 0.18ml;ブチル化ヒドロキシトルエン,NF 0.10mg;サッカリン粉末,NF 1.00mg;およびプロピレングリコール,USP Q.S.〜1.00ml;を含んだ。この製剤は、単回用量の市販計量噴霧器(単位用量スプレーポンプ,米国ニュージャージー州プリンストンのプファイファー社)の改良品からの0.1mlスプレー中にて2.5mgのMZをもたらした。各被験者は、それぞれの鼻腔中にトータルで5.0mgの単回スプレーを受けた。
【0058】
プロトコル
非盲検でランダム化されたスリーウェイ・クロスオーバー・スタディ・デザイン(three-way crossover study design)を使用した。治療の割り当ては、統計学者によって指示されるランダムオーダーにしたがった。3つの治療は以下の通りであった:
治療A: 5.0mg(1.0mg/mlの5ml)の静脈内MZを15分で注入;
治療B: 5.0mgの筋内MZ(5.0mg/1.0ml);および
治療C: 5.0mgの鼻腔内MZ溶液(噴霧器にて2.5mg/100μlを1回)。
これら3つの治療を、6日ウォッシュアウト周期によって分けた。各投与の後に、PK血液サンプルを採取した。MZ(1.0mg/mlの5ml)の無菌溶液を、トータルで10mlの体積になるよう通常の生理食塩水で希釈し、ストップウォッチを使用して看護婦が15分で注入した。鼻腔内MZ用量は、改良された単位用量噴霧器(米国ニュージャージー州プリンストンのプファイファー社)を使用して医師が投与した。5.0mgの筋内MZ(5.0mg/1.0ml)は、希釈せずに投与した。薬物の投与は、少なくとも8時間にわたる一晩絶食の後の朝に行った。被験者は、投与後の2時間にわたって絶食を続けた。薬物投与の前後2時間以内を除いて水の摂取は許容した。被験者には、各用量を投与する少なくとも2時間前に、ジュース360mlの摂取を許容した。被験者は、PD試験を実施するための投与の1時間前に目覚めさせた。抗凝血剤であるヘパリンナトリウムを収容した10mlのバキュテイナー(Vacutainer)(登録商標)チューブ中に血液サンプルを採取した。以下のスケジールによる静脈穿刺によって連続した血液サンプルを得た:MZ投与後の0分〔プレ投与(pre-dose)〕、5分、10分、20分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、8時間、および12時間。PK分析においては、実際のサンプリング時間を使用した。採取後、血液を4℃にて冷凍遠心分離機にかけて血漿と細胞を分離し、血漿をポリプロピレン製チューブに移した。カンザス州ショーニーのカンザス・シティー・アナリティカル・サービス社(KCAS)に発送するまで、この血漿を実験場所にて−20℃以下の温度で保存した。
【0059】
MZとα-ヒドロキシミダゾラムに関するLC/MS/MSアッセイ
PE/Sciex API III + LC/MS/MSシステムをカンザス州ショーニーのKCASによるMRMモードにて使用して、MZとα-ヒドロキシミダゾラムに関してサンプル分析を行った。0.50ng/ml未満の濃度を定量限界未満濃度(BQL)として記録した。500ng/mlより大きい濃度を有するサンプルは、アッセイ濃度が0.50〜500.0ng/mlの範囲内になるよう希釈して再度分析した。
【0060】
薬物動力学(PK)データの分析
対数線形最小二乗回帰分析による標準的な非区画化法(non-compartmental methods)を使用してPKパラメーターを調べて消失速度定数を決定した(WinNonlin,カリフォルニア州パロアルトのPharsight社)。濃度対時間曲線の下側の面積を、線形法則と対数台形法則との組み合わせを使用して時間ゼロから無限大まで(AUC0-∞)算出し、このとき測定可能な最後の血清濃度を消失速度定数(λz)で割ることによって無限大に外挿した(Proost,1985)。最大濃度(Cmax)とCmax到達時間に対する値(Tmax)をWinNonlinによって決定した。0.693/λzから消失の半減期を求めた。クリアランス(CL/F)は、用量をAUC0-∞で割ることによって求めた。消失のための分散量(Vz/F)と定常状態での分散量(Vss)はモーメント曲線によって求めた(Gibaldi and Perrier,1982)。Vz/Fは、用量/(λz*AUC0-∞)として算出した。Vssは、静脈内データに対するCL*MRTとして算出した。鼻腔内剤形と筋内剤形に対する絶対バイオアベイラビリティ(F)はそれぞれ、F=AUCIN,0-∞/AUCIV,0-∞およびF=AUCIM,0-∞/AUCIV,0-∞によって求めた。筋内用量と比較したときの鼻腔内用量の相対バイオアベイラビリティは、AUCIN,0-∞/AUCIM,0-∞によって算出した。平均血漿濃度は、グラフによる評価のみに対して算出した。算出値は、推定サンプリング時間の5%以内に抜き取った測定可能な濃度を有するサンプルからのデータを含めた。
【0061】
統計的データ分析
スタティスティカル・アナリシス・システムPC-SASの6.12版を使用して統計的分析を行った。統計的検査法は、臨界値が0.05の両側検定であった。シーケンス、被験者(シーケンス)、治療、および時間などのファクターを組み込んだ分散分析(ANOVA)を、対数変換したAUCとCmaxに関して行った。ANOVAからの最小二乗幾何平均を使用して、AUCとCmaxに対する治療グループ間の比と90%信頼区間を算出した。3つの治療に対するキャリーオーバーの影響を、対数変換したAUCとCmaxのANOVAを使用して分析した。鼻腔内治療と筋内治療との間のTmax値の差を、ランク変換したTmaxのANOVAを使用して比較した。このANOVAモデルは、シーケンス、被験者(シーケンス)、治療、および時間などのファクターを組み込んだ。3つの治療全てに対する性別の影響を、性別、治療、および時間などのファクターを組み込んだ対数変換したAUCとCmaxのANOVAを使用して分析した。
【0062】
実施例1の結果
12人の被験者については、臨床的に重大もしくは深刻な有害事象を起こすことなく実験を完了した。身体診察、鼻腔の評価、または臨床試験において、臨床的に関連した変化は認められなかった。データに対する研究者の主要な観察から、一般には、実験薬物の用量は十分に許容され、生じた事象は、温和〜中程度、および一時的(2〜90分)なものである、ということがわかった。12人の被験者のうちの2人は軽い目まいを起こし、35〜50分続いた。12人の被験者のうちの3人は視覚低下を起こし、5〜90分続いた。呼吸抑制、無呼吸、喉頭けいれん、気管支けいれん、または喘鳴を起こした被験者はいなかった。3通りの投与に対する最初の4時間と全12時間にわたる平均血漿濃度vs時間曲線のプロフィールを図1と図2に示す。図1は、鼻腔内投与後のMZの吸収が極めて速やかであったことを示している。MZの濃度は、12人のうちの2人が5分で、そして8人が10分以下でピークに達した。血漿濃度vs時間曲線においては、鼻腔内用量をのみ込むことによる吸収を示すような二次的もしくは後発の隆起は観察されなかった。表1には、3通りの治療に対するPKデータがまとめてある。メジアンTmax値は、鼻腔内投与と筋内投与に対してそれぞれ10分および30分であった。鼻腔内投与後のCmax値は、筋内投与後のCmax値より高く、常により早い時間にて生じた。筋内投与と鼻腔内投与との相対バイオアベイラビリティは、平均で79%であった。残念ながら、表1における鼻腔内経路と筋内経路によるMZの絶対バイオアベイラビリティは、静脈内投与に対するAUC0-∞の過小評価によって過大評価されている。静脈内投与に対して得られているAUC0-∞は真のAUC0-∞を過小評価している。なぜならこの実験では、Cmax付近のエリアが獲得されていないからである。しかしながら、筋内投与に対するデータは正確であり、筋内投与と比較して鼻腔内投与の相対バイオアベイラビリティが高いと結論することが許容されうる。筋内投与に対する鼻腔内投与の相対バイオアベイラビリティが高いことから、鼻腔内経路によって投与されるMZに対するバイオアベイラビリティが良好であった、ということが確認される。
【0063】
【表1】

【0064】
AUC0-∞とCmaxの値に関しては、性別による有意差は見られなかった(P>0.1)。性別による影響は、AUC0-t値に関して有意であった(P=0.0452,M>F)。筋内製剤の場合、男性と女性との間にAUC0-tのより大きな差が観察された。鼻腔内製剤の場合、差はより小さかった(12%)。治療の効果を分析するためにデータを組み合わせた。筋内製剤より鼻腔内製剤のほうが、Tmaxが著しく短かった。静脈内投与の場合、注入の終了時にTmaxとCmaxは捕えられなかった。2通りの鼻腔内治療に対して対数変換したAUC0-∞、AUC0-t、およびCmaxに及ぼすキャリーオーバーの影響の統計的分析を行った。シーケンスBCとCBに関して、シーケンス、被験者(シーケンス)、治療、および時間などのファクターを組み込んだANOVAからのP値は>0.1であり、したがってキャリーオーバーの影響は大きくはなく、このことは、表2における分析が有効であることを示している。
【0065】
表2には、治療A、B、およびCの後のCmaxとAUCの比と90%信頼区間がまとめられている。AUC0-tとAUC0-∞は、静脈内治療と鼻腔内治療との間(C/A)より、筋内治療と静脈内治療との間(B/A)のほうがより同等であった。しかしながら、Cmax値は、治療B(筋内)と比較して治療C(鼻腔内)の後のほうが、ほぼ50%ほど高かった。
【0066】
【表2】

【0067】
1-ヒドロキシミダゾラム代謝産物の濃度は、常に親薬物の濃度より低かった。
考察
12人の健常な男性ボランティアと女性ボランティアに対し、5.0mgのMZを静脈内、筋内、または鼻腔内に単回投与した後の、MZの薬物動力学を評価した。被験者はいずれも、臨床的に重大な又は深刻な悪影響を起こさずに実験を完了した。MZの薬物動力学は安定していて、速やかではあるが作用持続時間は比較的短かった。鼻腔内MZの平均絶対バイオアベイラビリティは、静脈内AUCの約7%が失われると仮定して約65%であると予測される。筋内投与と比較した場合の平均相対バイオアベイラビリティは79%であった。鼻腔内投与後のバイオアベイラビリティが十分ではないのは、鼻粘膜を通しての吸収時の代謝、あるいは単に不十分な吸収と飲み込みによって説明することができる。飲み込みの形跡は認められなかった。血漿クリアランスと分配量は高かった。MZの鼻腔内製剤は速やかな吸収を示した(メジアンピーク時間は10分)。筋内投与と比較すると、鼻腔内製剤は、より早いピーク血漿濃度到達時間と、より高いピーク血漿濃度を示した。
【0068】
結論
静脈内投与されたMZは、体内にて広範囲に且つ速やかに分配される。トータルの全身性クリアランスが28L/hrであるということは、MZが高度に精製された薬物(a highly cleared drug)であることを示している。MZの鼻腔内製剤は速やかな吸収を示し、筋内投与の場合よりかなり速くピーク濃度に到達した。鼻腔内剤形からのMZの絶対バイオアベイラビリティは良好であり、この剤形を臨床用途向けにさらに実験を進めることが求められる。筋内投与と比較したときの相対バイオアベイラビリティは79.2%(23.7%CV)であった。このプロトコルの実施時において、健常な被験者におけるMZのさらなる実験を妨げるような有害事象は治療中に発生しなかった。この薬物に対する有害事象は軽いものであり、予測された程度であった。心臓血管や呼吸器官に対する有害事象がないことから明らかなように、全ての被験者にとって、この薬物が十分に許容された。
【0069】
(実施例2)
本実験では、2.5mgと5.0mgの鼻腔内(IN)MZおよび2.5mgの静脈内(IV)MZを18人の健常な男性被験者と女性被験者に投与した後の、ミダゾラム(MZ)の薬物動力学を比較する。
【0070】
被験者
非喫煙で健常な18人の被験者(男性が9人、女性が9人)〔年齢が20〜29歳(平均22.3歳)、体重が60〜92kg(平均71kg)〕が、インフォームドコンセントを得た後に、入院患者に関するこの実験に参加した。この実験に登録されたボランティアのうち、17人が白人であり、1人がアフリカ系アメリカ人であった。17人の被験者がこの実験を完了した。実験参加者は、包含/除外の基準、病歴、身体診察と鼻診察、バイタルサイン、臨床試験、およびプロトコルに記載の他の治療に基づいて選定した。被験者は、身長とエルボー幅(elbow breadth)に関して理想的体重の±25%以内であり、体重は少なくとも60kg(132ポンド)であった。被験者は、良好な健常状態にあり、臨床的に重大な鼻の手術を受けておらず、鼻ポリープも、鼻の他の身体的異常も、バイタルサインもなく、また心臓血管疾患、胃腸疾患、腎疾患、肝疾患、肺疾患、血液疾患、または神経疾患もなかった。発作性疾患、後遺症を有する脳外傷、低血圧、心不全、心伝導系障害、慢性呼吸器疾患、出血傾向、狭隅角緑内障、睡眠時無呼吸の正規診断、抑鬱障害もしくは精神疾患の正規診断、あるいはアルコール依存症や薬物乱用の医学的診断等の病歴を有する被験者は除外した。ギルバート症候群の病歴を有するか、あるいは増大した血清総ビリルビンレベル(an increased serum total bilirubin level)に対する他の何らかの病因を有する被験者、および薬物の吸収、分配、生体内変換、または排泄に影響を及ぼす他の何らかの臨床症状(たとえば、急性呼吸器疾患やアレルギー性鼻炎など)を有するか、あるいはMZもしくは製剤成分に対してアレルギーである被験者は除外した。鎮静薬/催眠薬の習慣的な使用歴(すなわち、1週間に少なくとも1回)を有するか、あるいは実験薬物の投与前の2週間以内に鎮静薬/催眠薬を摂取した被験者は除外した。被験者は、投与する時点の48時間前、および実験中は、アルコールやカフェインを含有する飲み物を控えた。被験者には、投与してから7日以内および実験中、MZの代謝作用や鼻の生理機能と相互作用するような処方薬と非処方薬、ワクチン、ハーブ系サプリメント、および栄養補給剤を控えるよう求めた。
【0071】
静脈内製剤
ケンタッキー・ホスピタル・インベスティゲイショナル・ドラッグ・サービス・ファーマシー大学における投与のために、市販のMZ〔ホフマン-ラロシュによるヴァースト(Versed)(登録商標)インジェクション〕を使用して静脈内(IV)溶液を調製した。MZの無菌溶液(5.0mg/mlの0.5ml)を、10mlの全体積が15分で注入されるように、通常の生理食塩水で10mlに希釈した。
【0072】
MZの鼻腔内製剤
ケンタッキー・カレッジ・オブ・ファーマシー・センター・フォー・ファーマスーティカル・サイエンス・アンド・テクノロジー大学(CPST)においてGMP条件下にて25mg/mlの鼻腔内MZ製剤を調製した。鼻腔内製剤は、ミダゾラム25mg;ポリエチレングリコール400,USP 0.18ml;ブチル化ヒドロキシトルエン,NF 0.10mg;サッカリン粉末,NF 1.00mg;およびプロピレングリコール,USP Q.S.〜1.00ml;を含んだ。この製剤は、単回用量の市販計量噴霧器(単位用量スプレーポンプ,米国ニュージャージー州プリンストンのプファイファー社)の改良品からの0.1mlスプレー中にて2.5mgのMZをもたらした。各被験者は、一方の鼻腔中に2.5mg用量の単回スプレーを、またはそれぞれの鼻腔中にトータルで5.0mg用量の単回スプレーを受けた。
【0073】
プロトコル
非盲検でランダム化されたスリーウェイ・クロスオーバー・スタディ・デザインを使用した。治療の割り当ては、統計学者によって指示されるランダムオーダーにしたがった。3つの治療は以下の通りであった:治療A:2.5mg(1.0mg/mlの5ml)の静脈内MZを15分で注入;治療B:2.5mgの鼻腔内MZ溶液、噴霧器にて2.5mg/100μlを1回;および治療C:5.0mgの鼻腔内MZ溶液、噴霧器にて2.5mg/100μlを2回、鼻孔ごとに1つの噴霧器。これら3つの治療を、6日ウォッシュアウト周期によって分けた。各投与の後に、PK血液サンプルを採取した。MZ(1.0mg/mlの5ml)の無菌溶液を、トータルで10mlの体積になるよう通常の生理食塩水で希釈し、ストップウォッチを使用して看護婦が15分で注入した。鼻腔内MZ用量は、改良された単位用量噴霧器(米国ニュージャージー州プリンストンのプファイファー社)を使用して医師が投与した。薬物の投与は、少なくとも8時間にわたる一晩絶食の後の朝に行った。被験者は、投与後の2時間にわたって絶食を続けた。薬物投与の前後2時間以内を除いて水の摂取は許容した。被験者には、各用量を投与する少なくとも2時間前に、ジュース240mlの摂取を許容した。実験中、グレープフルーツジュースの摂取は許容しなかった。抗凝血剤であるヘパリンナトリウムを収容した10mlのバキュテイナー(Vacutainer)(登録商標)チューブ中に血液サンプルを採取した。以下のスケジールによる静脈穿刺によって連続した血液サンプルを得た:MZ投与後の0分〔プレ投与(pre-dose)〕、5分、10分、20分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、8時間、および12時間。PK分析においては、実際のサンプリング時間を使用した。採取後、血液を4℃にて冷凍遠心分離機にかけて血漿と細胞を分離し、血漿をポリプロピレン製チューブに移した。カンザス州ショーニーのカンザス・シティー・アナリティカル・サービス社(KCAS)に発送するまで、この血漿を実験場所にて−20℃以下の温度で保存した。
【0074】
MZとα-ヒドロキシミダゾラムに関するLC/MS/MSアッセイ
PE/Sciex API III + LC/MS/MSシステムをカンザス州ショーニーのKCASによるMRMモードにて使用して、MZとα-ヒドロキシミダゾラムに関してサンプル分析を行った。0.50ng/ml未満の濃度を定量限界未満濃度(BQL)として記録した。500ng/mlより大きい濃度を有するサンプルは、アッセイ濃度が0.50〜500.0ng/mlの範囲内になるよう希釈して再度分析した。
【0075】
薬物動力学(PK)データの分析
投与の前と後に鼻孔スプレーポンプを計量することにより鼻腔内用量を決定した。これらの鼻腔内溶液(2.5mg/ml,密度1.056)の重量と濃度を使用して、各被験者への用量を確認し、送達を評価した。PK分析に対しては、用量重量(dose weights)は使用しなかった。対数線形最小二乗回帰分析による標準的な非区画化法(non-compartmental methods)を使用してPKパラメーターを調べて消失速度定数を決定した(WinNonlin,カリフォルニア州パロアルトのPharsight社)。濃度対時間曲線の下側の面積を、線形法則と対数台形法則との組み合わせを使用して時間ゼロから無限大まで(AUC0-∞)算出し、このとき測定可能な最後の血清濃度を消失速度定数(λz)で割ることによって無限大に外挿した(Proost,1985)。最大濃度(Cmax)とCmax到達時間に対する値(Tmax)をWinNonlinによって決定した。0.693/λzから消失の半減期を求めた。クリアランス(CL/F)は、用量をAUC0-∞で割ることによって求めた。消失のための分散量(Vz/F)と定常状態での分散量(Vss)はモーメント曲線によって求めた(Gibaldi and Perrier,1982)。Vz/Fは、用量/(λz*AUC0-∞)として算出した。Vssは、静脈内データに対するCL*MRTとして算出した。鼻腔内剤形に対する絶対バイオアベイラビリティ(F)は、F=AUCIN,0-∞/AUCIV,0-∞によって求めた。平均血漿濃度は、グラフによる評価のみに対して算出した。算出値は、推定サンプリング時間の5%以内に抜き取った測定可能な濃度を有するサンプルからのデータを含めた。
【0076】
薬力学(PD)データの分析
ビジュアル・アナログ・スケール(Visual Analog Scales)(VAS)とスタンフォード・スリーピネス・スケール(Stanford Sleepiness Scale)(SSS)を使用して自己報告式測定値を採集した。VASとSSSは、静脈内投与後と鼻腔内投与後の0分(プレ投与)、10分、20分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、および12時間に処理した。オブザーバー・セデーション・レーティング(Observer Sedation Rating)も行った。オブサーバーが各被験者に対して、静脈内投与後と鼻腔内投与後の0分(プレ投与)、10分、20分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、および12時間にて、鎮静の定性的なカテゴリー尺度を使用して鎮静の程度を等級付けした。覚醒/鎮静スケール(Alertness/Sedation Scale)に関するオブザーバー評価を使用して、上記時点における鎮静を等級付けした。OAA/Sスケールは以下のカテゴリーで構成される:反応、話しぶり、顔の表情、および目つき。それぞれのカテゴリーにおいて被験者を評価した。OAA/Sは2つの方法にてスコアをつけた。複合スコア(a composite score)は、4つの評価カテゴリーのいずれか1つにおける最も低いスコアとして記録した。合計スコアは、4つのカテゴリースコアの合計として算出した。従属変数は治療の関数として分析した。さらに、線形台形法則を使用して、ピーク効果、時間対ピーク効果(tome to peak effects)、およびAUCの分析を評価した。別個のAUC分析を、投与後のベースラインと4時間との間のAUCに対して(AUC4、ピーク効果の持続時間にわたって)、ならびに投与後のベースラインと測定可能な最後の時点との間、およびベースラインと12時間との間のAUCに対して(それぞれ、AUCallとAUC12)完了した。
【0077】
統計的データ分析
PC-SAS(6.12版、ノースカロライナ州カリーのSASインスティチュート)を使用して統計的分析を行った。PKパラメーターに対する統計的検査法は、特に明記しない限り、臨界値が0.05の両側検定であった。シーケンス、被験者(シーケンス)、治療、および時間などのファクターを組み込んだ分散分析(ANOVA)を、対数変換したAUCとCmaxに関して行った。ANOVAからの最小二乗幾何平均を使用して、AUCとCmaxに対する治療グループ間の比と90%信頼区間を算出した。3つの治療に対するキャリーオーバーの影響を、ANOVAを使用して評価した。3つの治療全てに対する性別の影響を、性別、治療、および時間などのファクターを組み込んだ、対数変換したAUCとCmaxのANOVAを使用して分析した。治療B対するある被験者216のデータ(one subject 216’s data)を、PKパラメーターの要約統計量中に含めた。しかしながら、被験者216(治療Bに対して異状値を有する)と被験者218(早めの投与中止)は、評価可能な被験者に対するPK分析から除外した。
【0078】
各PDパラメーターに及ぼす治療の影響を、シーケンス、被験者(シーケンス)、治療、および時間などのファクターを組み込んだANOVAを使用して試験した。治療PD効果(treatment PD effects)に対するキャリーオーバーの影響も、ANOVAを使用して評価した。幾つのケースにおいてはかなりのキャリーオーバーが見られたが、この点は予測されていたことである。なぜなら、試験を繰り返すと、パフォーマンスの変化がもたらされるからである。
【0079】
実施例2のPK結果
17人の被験者については、臨床的に重大もしくは深刻な有害事象を起こすことなく実験を完了した。1人の被験者は2.5mgの鼻腔内単回投与を受け、それに引き続く治療に戻らなかった。身体診察、鼻腔の評価、または臨床試験において、臨床的に関連した変化は認められなかった。データに対する研究者の主要な観察から、一般には、実験薬物の用量は十分に許容され、生じた事象は、温和〜中程度、および一時的なものである、ということがわかった。2.5mgの静脈内投与後、2.5mgの鼻腔内投与後、および5.0mgの鼻腔内投与後に目まいを起こしたものが、それぞれ1人、2人、および0人報告された。目まいは最長で86分続いた。18人の被験者のうち3人は視覚低下と複視を起こし、これが5〜40分続いた。呼吸抑制、無呼吸、喉頭けいれん、気管支けいれん、または喘鳴を起こした被験者はいなかった。
【0080】
3つの治療に対する、最初の4時間と12時間全体における平均血漿濃度vs時間曲線のプロフィールを図3と図4に示す。図3は、鼻腔内投与後のMZの吸収が極めて速やかである、ということを示している。
【0081】
2つの鼻腔内治療に対し、MZの濃度は、被験者の1/4〜1/3が5分でピークに達した。メジアンTmax値は、2.5mgと5.0mgの鼻腔内投与に対して10分(5〜20分の範囲)であった。3人の被験者は、5.0mgの鼻腔内投与後にCmax値を示し、この値は、2.5mgの静脈内注入における15分後のCmax値より高かった。1人の被験者は低い血漿濃度を示し、これらの血漿濃度は増大したり減少したりして、特にパターンは認められなかった。この被験者の消失速度定数は、結果として判定保留とした。濃度は、4時間にわたって1.15ng/ml〜3.16ng/mlの範囲であり、次いで定量化可能限界値未満に低下した。
【0082】
表3には、3通りの治療に対するPKデータがまとめてある。Tmax値は、2通りの鼻腔内治療に対して大幅には異ならなかった(P>0.2)。
【0083】
【表3】

【0084】
投与した実際の用量は、投与前と投与後のポンプを計量することによって求めた。それらは、意図した用量より平均で約16%だけ低かった。範囲は、意図した用量より38%少ない量から意図した用量より20%多い量であった。
【0085】
【表4】

【0086】
鼻腔内投与に対し、MZの絶対バイオアベイラビリティは平均して60〜61%であった。しかしながら、表3における、鼻腔内経路によるMZの絶対バイオアベイラビリティは、鼻腔噴霧器の用量供給が意図する量より少ないことから過小評価されている。表4に記載の用量重量のデータは、本実験における供給用量が、平均して、意図した用量の約84%であったことを示している。実際の投与量(重量)に基づいてバイオアベイラビリティを算出し直すと、鼻腔内投与に対するバイオアベイラビリティは約72%となる。AUC0-∞とCmaxの値に関しては、性別による有意差は見られなかった(P>0.1)。性別による影響は、用量正規化した(dose-normalized)AUC0-∞値に関しては有意であった(P=0.0371,M>F)。治療効果を分析するためにデータを組み合わせた。2つ鼻腔内治療に関して、対数変換したAUC0-∞、AUC0-t、およびCmaxに及ぼすキャリーオーバーの影響の統計的分析を行った。シーケンス、被験者(シーケンス)、治療、およびシーケンスに対する時間などのファクターを組み込んだANOVAからのP値は>0.3であり、したがってキャリーオーバーの影響は大きくはなく、このことは、表5における分析の有効性を示している。
【0087】
表5には、治療A、B、およびCの後の、CmaxとAUSとの比と90%信頼区間がまとめられている。用量正規化したCmax値とAUS値との比は、予測されたとおり、治療B(鼻腔内)と比較して治療C(鼻腔内)後にほぼ1であった。
【0088】
【表5】

【0089】
α-ヒドロキシミダゾラム代謝産物の濃度は常に、親薬物の濃度より低かった。
【0090】
実施例2のPD結果
表6には、PD VAS等級の分析がまとめてある。Cmax(ピーク効果)、時間対ピーク効果(Tmax)、および等級曲線の下の面積(AUC4、AUC12、およびAUCall)がVAS等級に関して記載されている。統計的な有意性とP値を示したVASパラメーターが、表6におけるブレーク(break)上にアルファベット順に示されている。これらの等級は、MZ PDに及ぼす用量と経路の典型的な影響を示している。40回の測定のうち30回の測定に対して、影響の大きさの順序は、最も大きな影響をもたらすIV用量と同じであり、次いでより多いIN用量、次いでより少ないIN用量であった。これらのデータには多くの傾向があったが、しかしながら、40パラメーターのうちの10パラメーターの等級だけが有意性に達した。“薬物を再び摂取しようとする意思がある(willing to take drug again)”、“不安な状態(anxious)”、または“刺激を受けている状態(stimulated)”に対するパラメーターは、いずれも有意性に達しなかった。欠測値の数が多いので、VAS等級からの結果は慎重に解釈すべきである。これらの統計的な比較は、今後の研究デザインにおける有用性の観点からここに記載されている。
【0091】
【表6】

【0092】
考察
健常な男性ボランティアと女性ボランティアに対し、2.5mgと5.0mgのMZを静脈内、または鼻腔内に単回投与した後の、MZの薬物動力学を評価した。18人の被験者のうちの17人は、臨床的に重大な又は深刻な事象を起こさずに実験を完了した。1人の男性被験者は、治療を1回受けた後にスケジュールの理由から抜けた。MZの薬物動力学は安定していて、吸収が速やかであるが(鼻腔内投与後のメジアンピーク時間は10分)作用持続時間は比較的短かった。鼻腔内MZの平均絶対バイオアベイラビリティは約60〜61%であった。しかしながら実際の用量供給重量(dose deliver weights)に基づくと、バイオアベイラビリティは、鼻腔内投与に対して約72%であった。用量の84%供給は、製造時における噴霧器の充填不足のためであると思われる。鼻腔内投与後の不十分なバイオアベイラビリティの残りは、鼻粘膜を通しての吸収時の代謝作用によって、あるいは単に不十分な吸収と飲み込みによって説明することができる。飲み込みの形跡はないが、MZの経口バイオアベイラビリティが低いことから起きていることが考えられる。MZに対して推測されるように、血漿クリアランスと分配量は高かった。
【0093】
3通りの治療はいずれも、スリープスコア(sleep scores)、VAS等級、およびオブザーバー等級に関して被験者等級の変化をもたらす、ということがPD分析から明確にわかる。PD効果の強さは、用量投与後の最初の2時間にわたって最も大きかった。全てのPD結果の程度に及ぼす効果の大きさの順序は、常に同じというわけではなかったが、殆どの場合において、静脈内投与は、高用量の鼻腔内MZ(この後は低用量の鼻腔内MZ)と比較して、最も大きいか又は同等程度の持続時間/大きさの効果をもたらした。効果のピーク時間は、静脈内投与と鼻腔内投与との間で統計的には異ならなかった。AUC分析によって決定されるように、開始は、効果の持続時間ほどには、用量に応じて変化しなかった。
【0094】
結論
静脈内投与されたMZは、体内にて広範囲に且つ速やかに分配される。トータルの全身性クリアランスが21L/hrであるということは、MZが高度に精製された薬物(a highly cleared drug)であることを示している。MZの鼻腔内製剤は速やかな吸収を示し、ピーク濃度を達成するのにメジアン時間は10分であった。血漿濃度の上昇は、幾つかのケースにおいては重脈内注入の場合に匹敵した。α-ヒドロキシミダゾラム代謝産物の濃度は常に、親薬物の代謝産物濃度より低かった。鼻腔内剤形からのMZの絶対バイオアベイラビリティは約60%であり、この剤形を臨床用途向けにさらに実験を進めることが求められる。3通りの治療はいずれも、スリープスコア、VAS等級、およびオブザーバー等級に関して被験者等級の変化をもたらす、ということがPD分析から明確にわかった。PD効果の強さは、用量投与後の最初の2時間にわたって最も大きかった。
【0095】
このプロトコルの実施時において、健常な被験者におけるMZのさらなる実験を妨げるような、治療上の突発的有害事象は治療中に発生しなかった。この薬物に対する有害事象は軽いものであり、予測された程度であった。心臓血管や呼吸器官に対する有害事象がないことから明らかなように、全ての被験者にとって、この薬物が十分に許容された。
【0096】
実施態様を大まかに説明してきたが、これらの実施態様は、以下の文献や実施例を通してより容易に理解することができる。これらの文献や実施例は例証のためのものであって、特に明記しない限り、これらによって本発明が限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】3種の異なったミダゾラム組成物に関して、血漿vs時間における4時間に対するミダゾラムの平均血液血漿濃度(n=12)をグラフ表示したものである。
【図2】3種の異なったミダゾラム組成物に関して、血漿vs時間における12時間に対するミダゾラムの平均血液血漿濃度(n=12)をグラフ表示したものである。
【図3】3種の異なったミダゾラム組成物に関して、血漿vs時間における4時間に対するミダゾラムの平均血液血漿濃度(n=17)をグラフ表示したものである。
【図4】3種の異なったミダゾラム組成物に関して、血漿vs時間における12時間に対するミダゾラムの平均血液血漿濃度(n=17)をグラフ表示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のベンゾジアゼピンもしくはその医薬的に許容可能な塩;鼻腔キャリヤー;および少なくとも1種以上の甘味剤、風味剤、マスキング剤、もしくはこれらの組み合わせ物;を含んでなる、鼻腔内投与用の医薬組成物。
【請求項2】
ベンゾジアゼピンが、アルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバゼパム、クロナゼパム、クロラゼペート、デモキセパム、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、クアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、ゾルピデム、ザレプロン、またはこれらの組み合わせ物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ベンゾジアゼピンがミダゾラムである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬組成物の体積が約0.1mlである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
医薬組成物が保存剤を含有しない、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
医薬組成物が緩衝剤を含有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
医薬組成物が無菌の溶液もしくは懸濁液である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
医薬組成物が麻酔剤を含有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項9】
少なくとも1種以上の甘味剤、風味剤、もしくはマスキング剤が、サッカリン、サッカリンナトリウム、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、スクロース、スクラロース、マルトデキストリン、アスパルテーム、アセスルフェームカリウム、デキストロース、グリコシド、マルトース、スイートオレンジオイル、グリセリン、ウインターグリーンオイル、ペパーミントオイル、ペパーミントウォーター、ペパーミントスピリット、メントール、またはこれらの組み合わせ物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
医薬組成物が約5.0のpHを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
有効量のミダゾラムもしくはその医薬的に許容可能な塩、ポリエチレングリコール、サッカリン粉末、およびプロピレングリコールを含む、哺乳類への鼻腔内投与用の医薬組成物。
【請求項12】
ポリエチレングリコールが医薬組成物の約15容量%〜約25容量%を構成し、プロピレングリコールが医薬組成物の約75容量%〜約85容量%を構成する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬組成物が保存剤を含有する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
医薬組成物が保存剤を含有しない、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
医薬組成物が麻酔剤を含有する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
医薬組成物が、鼻腔内投与後の約5分以内〜約20分以内に最大血漿濃度到達時間(Tmax)を達成する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項17】
医薬組成物が、鼻腔内投与後の約5分以内に最大血漿濃度到達時間(Tmax)を達成する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項18】
医薬組成物が、鼻腔内投与後に、2.5mgの用量から約40ng/mlの、または5mgの用量から約80ng/mlの最大血漿濃度(Cmax)を達成する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項19】
鼻腔内投与のミダゾラムに対するAUCと、同用量のミダゾラムを静脈内投与した後の、ミダゾラムに対するAUCとの比が少なくとも約1:1.7である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
ミダゾラムもしくはその医薬的に許容可能な塩と鼻腔キャリヤーとを含んだ医薬組成物の有効量を哺乳類に鼻腔内投与することを含む、速やかな鎮静、速やかな不安緩解、速やかな健忘、または麻酔の速やかな誘発を必要とする哺乳類を治療する方法であって、
速やかな鎮静、速やかな不安緩解、速やかな健忘、または麻酔の速やかな誘発が、鼻腔内投与後の5分以内に起こる、上記方法。
【請求項21】
ミダゾラムもしくはその医薬的に許容可能な塩;鼻腔キャリヤー;および少なくとも1種以上の甘味剤、風味剤、マスキング剤、もしくはこれらの組み合わせ物;を含んだ医薬組成物の有効量を哺乳類に鼻腔内投与することを含む、速やかな鎮静、速やかな不安緩解、速やかな健忘、または麻酔の速やかな誘発を必要とする哺乳類を治療する方法。
【請求項22】
少なくとも1種以上の甘味剤、風味剤、もしくはマスキング剤が、サッカリン、サッカリンナトリウム、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、スクロース、アスパルテーム、アセスルフェームカリウム、デキストロース、グリコシド、マルトース、スイートオレンジオイル、グリセリン、ウインターグリーンオイル、ペパーミントオイル、ペパーミントウォーター、ペパーミントスピリット、メントール、またはこれらの組み合わせ物である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
速やかな鎮静、速やかな不安緩解、速やかな健忘、または麻酔の速やかな誘発が、鼻腔内投与後の5分以内に起こる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
速やかな鎮静、速やかな不安緩解、速やかな健忘、または麻酔の速やかな誘発が、鼻腔内投与後の5分以内の最大血漿濃度到達時間(Tmax)にて起こる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
医薬組成物が、鼻腔内投与後に約1ナノグラム/ml〜約8ナノグラム/mlの1-ヒドロキシミダゾラム血漿レベルを達成する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
ミダゾラムもしくはその医薬的に許容可能な塩と鼻腔キャリヤーとを含んだ医薬組成物に、少なくとも1種以上の甘味剤、風味剤、マスキング剤、もしくはこれらの組み合わせ物を、鼻腔内投与用医薬組成物が得られるように加えることを含む、鼻腔内投与用医薬組成物の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−529525(P2007−529525A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503975(P2007−503975)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/008090
【国際公開番号】WO2005/089768
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(503300203)ユニバーシティ・オブ・ケンタッキー・リサーチ・ファウンデーション (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF KENTUCKY RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】