説明

鼻腔用組成物

【課題】 鼻腔内表面をムラなく効率的に被覆することができ、気管内への蓄積の虞がなく安全で、鼻炎による不快感を和らげることができ、かつ、その効果を持続可能な、例えば、花粉症等のアレルギー性鼻炎のような、鼻炎の際などに、鼻腔を保湿するため等に使用される鼻腔用組成物の提供。
【解決手段】 鼻腔に用いられる鼻腔用組成物であって、起泡可能であり、かつ気泡により鼻腔内を前記鼻腔用組成物で被覆可能な起泡剤を含有してなり、該起泡剤が、サポニン及びレシチンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする鼻腔用組成物である。サポニンが、キラヤサポニン及び大豆サポニンのいずれかである態様が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、花粉症等のアレルギー性鼻炎のような、鼻炎の際などに、鼻腔を保湿するため等に使用される鼻腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
風邪やアレルギー等により鼻炎を患った際には、例えば、鼻による呼吸がしにくくなる、眠気を催す、鼻腔粘膜の腫れにより痛みや痒みがおこる等して、強い不快感を生じる。特に、鼻炎が花粉症等のアレルギー性であるときには、一定季節に亘って症状が治まらず、しかも薬剤の経口投与によっても回復しにくいため、長期間の苦痛を余儀なくされることになる。
【0003】
このため、症状を和らげるのを目的として、鼻腔内に塗布又は噴霧する薬剤が多数提案されている。具体的には、例えば、粉末若しくは固形状の薬剤や、液状の薬剤として、血管収縮薬及びフマル酸ケトチフェンを配合した鼻炎用液状点鼻薬(下記特許文献1参照)、ドクダミ茎葉、紅藻類・海苔等からなる抽出液(下記特許文献2参照)などが提案されている。
粘着性を有する薬剤として、免疫化可能な量のインフルエンザウイルス抗原と、免疫応答をするのに充分な量の粘膜付着剤等を含む免疫組成物(下記特許文献3参照)、層状ケイ酸塩化合物と、ベタイン類及びグリセリン類のいずれかとを、少なくとも含有する液状洗鼻剤(下記特許文献4参照)、フェキソフェナジン塩と、賦形剤と、ゲル化剤とを含有する組成物(下記特許文献5参照)などが提案されている。また、生理食塩水により鼻腔を洗浄し、前記症状を和らげることも行われている。
【0004】
しかし、鼻腔内表面は、例えば口腔内には、毛等が存在せず、唾液によって常に湿潤状態が保たれているのに対して、鼻腔内には、鼻毛や俗に鼻くそと呼ばれる老廃物等が存在しており、複雑な構造を有し、通常は乾燥状態にある。しかも、鼻毛の長さ・量は個人差が大きく、鼻腔内の乾燥状態も刻一刻と変化し、単に薬剤を付与しても、鼻腔内全体を被覆することは非常に困難である。また、鼻は口と異なり常時開いているため、一度付与した薬剤が再度鼻腔内から垂れ落ちてしまうこともある。
【0005】
したがって、上述した薬剤の内、粉末若しくは固形状のものや、単に液状のものは、付着していない箇所では鼻腔内表面を被覆できずに、効果が発揮できないという問題や、付与した薬剤が流れてしまいやすく、再度鼻腔から垂れ落ちる等して、却って不快感を増幅させてしまう問題があった。さらに、呼吸により気管内に入り込んでしまうことがあり、それが蓄積すると安全上好ましくないという問題もあった。
【0006】
また、粘着性を有する薬剤では、付与した箇所に留まることが可能となるため、鼻腔から垂れ落ちたり、気管内に入り込むという問題は少ないものの、鼻腔内全体に被覆できず、薬剤が付着しない箇所では効果を発揮できないという問題は依然として残っていた。また、粘着性を有していても、粘着力が弱くなったときには、流れたりすることがあるので、仮に気管内に入り込んだときには、粘着性があるために却って通常の液状の薬剤に比しても安全上好ましくないという問題もあった。
【0007】
一方、薬剤の内、洗浄を主目的としたものや、生理食塩水では、上述の問題とは別に、単に鼻腔内の花粉やホコリ等のアレルゲン物質を洗い流すのみであり、アレルゲン物質の鼻腔粘膜への接触を防ぐことができず、使用後しばらくすると再度不快感を生じるようになるという問題があった。
【0008】
したがって、鼻腔内表面をムラなく効率的に被覆することができ、気管内への蓄積の虞がなく安全で、鼻炎による不快感を和らげることができ、かつ、その効果を持続可能な薬剤が求められているのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開平9−328437号公報
【特許文献2】特開2002−12549号公報
【特許文献3】特表平8−508247号公報
【特許文献4】特開2001−240547号公報
【特許文献5】特表2003−519083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、鼻腔内表面をムラなく効率的に被覆することができ、気管内への蓄積の虞がなく安全で、鼻炎による不快感を和らげることができ、かつ、その効果を持続可能な、例えば、花粉症等のアレルギー性鼻炎のような、鼻炎の際などに、鼻腔を保湿するため等に使用される鼻腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 鼻腔に用いられる鼻腔用組成物であって、起泡可能であり、かつ気泡により鼻腔内を前記鼻腔用組成物で被覆可能な起泡剤を含有してなり、該起泡剤が、サポニン及びレシチンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする鼻腔用組成物である。
該鼻腔用組成物においては、気泡により鼻腔内を前記鼻腔用組成物で被覆可能な、サポニン及びレシチンから選択される少なくとも1種の起泡剤を含有してなるため、鼻炎による不快感を和らげるために使用したときに、泡の拡散性により鼻腔全体に被覆組成物が拡がり、鼻腔内表面をムラなく効率的に被覆することが可能で、気管内への蓄積の虞がなく安全である。さらに、泡は吸着力があるので、アレルゲン物質の鼻腔粘膜への接触を防ぐことが可能で、鼻炎により不快感を和らげる効果を持続することができる。
<2> サポニンが、キラヤサポニン及び大豆サポニンのいずれかである前記<1>に記載の鼻腔用組成物である。
<3> サポニンを、0.001質量%以上含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の鼻腔用組成物である。
<4> 大豆サポニンを、0.05質量%以上含有する前記<2>から<3>のいずれかに記載の鼻腔用組成物である。
<5> レシチンを、0.075質量%以上含有する前記<1>に記載の鼻腔用組成物である。
<6> 増粘剤を含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の鼻腔用組成物である。
<7> 増粘剤が、アルギン酸ナトリウムである前記<6>に記載の鼻腔用組成物である。
<8> 増粘剤の含有量が、2質量%未満である前記<1>から<7>のいずれかに記載の鼻腔用組成物である。
<9> 泡沫形成器に充填させた前記<1>から<8>のいずれかに記載の鼻腔用組成物である。
該<9>記載の鼻腔用組成物においては、前記<1>から<8>のいずれかに記載の鼻腔用組成物を、泡沫形成器に充填させるため、鼻腔に付与した際に、確実に前記起泡剤により気泡させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、鼻腔内表面をムラなく効率的に被覆することができ、気管内への蓄積の虞がなく安全で、鼻炎による不快感を和らげることができ、かつ、その効果を持続可能な、例えば、花粉症等のアレルギー性鼻炎のような、鼻炎の際などに、鼻腔を保湿するため等に使用される鼻腔用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の鼻腔用組成物は、起泡可能であり、かつ気泡により鼻腔内を前記鼻腔用組成物で被覆可能な起泡剤を含有してなり、さらに必要に応じて、増粘剤、その他の成分を含んでなる。
【0014】
−起泡剤−
本発明の鼻腔用組成物が含有する前記起泡剤は、サポニン及びレシチンから選択される少なくとも1種である。
【0015】
−−サポニン−−
前記サポニンは、ステロイドサポニンとトリテルペノイドサポニンとに大別されるが、人体に対して無害なものであれば、特に制限はなく、適宜選択して使用することができ、例えば、大豆サポニン、小豆サポニン、ユッカフォームサポニン、ビートサポニン、茶種子サポニン、エンジュサポニン、ムクロジサポニン、キラヤサポニン、サボンソウサポニンなどが好適に挙げられる。この中でも特に、入手が容易であると共に、安全性の観点から、キラヤサポニン、大豆サポニンが好ましく、長期間泡が消滅せず、保湿性をより持続できる観点から、キラヤサポニンが最も好ましい。また、前記サポニンの具体的な市販品としては、例えば、キラヤサポニンとして、キラヤニンC−100、キラヤニンP−20(丸善製薬社製)、大豆サポニンとして、ソイヘルスSA(不二製油社製)などが好適に挙げられる。
前記サポニンの鼻腔用組成物全成分に対する含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.001質量以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%が最も好ましい。また、特に、大豆サポニンを使用する際には、0.05質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。前記サポニンの含有量が0.001質量%未満であると、泡が早期に消滅し、鼻炎による不快感を和らげるという効果を持続するのが困難になることがある。
【0016】
−−レシチン−−
前記レシチンとしては、卵黄由来レシチン、大豆由来レシチン、酵母由来レシチンなどが主に挙げられるが、いずれの物質由来のものであっても特に制限はない。また、飽和レシチン、不飽和レシチンのいずれであっても、特に制限はなく、通常市販されているものを適宜選択して使用することができ、例えば、レシチン、水添レシチン、水添リゾレシチンなどが好適に挙げられる。前記レシチンの具体的な市販品としては、例えば、レシチンPWL(J−オイルミルズ社製)などが好適に挙げられる。
前記レシチンの鼻腔用組成物全成分に対する含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.075質量%以上が好ましく、0.75質量%以上がより好ましい。前記レシチンの含有量が0.095質量%未満であると、泡が早期に消滅し、鼻炎による不快感を和らげるという効果を持続するのが困難になることがある。
【0017】
−増粘剤−
前記増粘剤は、起泡剤に粘性を付与して、本発明の鼻腔用組成物を、鼻腔内の付着箇所から流動させずに、該付着箇所に留めておくために、添加するのが好ましい。
前記増粘剤としては、特に制限はなく、通常市販されているものを適宜選択して使用することができ、例えば、アルギン酸ナトリウム、澱粉誘導体、トラガントゴム、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、アラビアガム、カラギナン、ローカストビーンガム、グアーガム、サイリウムシードガム、トラガントガム、ペクチンなどが好適に挙げられる。この中でも特に、入手が容易であると共に、安全性の観点から、アルギン酸ナトリウムが好ましい。前記増粘剤の具体的な市販品としては、例えば、アルギン酸ナトリウムとして、キミカアルギンI−S(キミカ社製)などが好適に挙げられる。
前記増粘剤の鼻腔用組成物全成分に対する含有量としては、起泡剤による安定した泡を形成可能な程度の量であれば、特に制限はないが、例えば、2質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.1質量%未満が最も好ましい。2質量%を超えると、起泡しにくくなることがある。
【0018】
−その他の成分−
本発明の花粉症予防組成物は、必要に応じて、サポニン及びレシチン以外の起泡剤、油脂若しくは油性成分、起泡剤活性成分、香料成分などを併用することができる。
【0019】
−−サポニン及びレシチン以外の起泡剤−−
前記サポニン及びレシチン以外の起泡剤としては、天然成分からなる起泡剤であっても、合成起泡剤であってもよく、適宜選択して使用することができる。
前記合成起泡剤としては、例えば、N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルタウリン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホン酸塩、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、脂肪酸石けん、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などが挙げられる。
前記アシルアミノ酸塩としては、例えば、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、ラウロイルサルコシン、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンカリウム、ミリスルトイルサルコシンナトリウム、オレオイルサルコシン、パルミトイルサルコシンナトリウムなどが挙げられる。
前記アルキルエーテルカルボン酸塩としては、例えば、ラウレス5酢酸、ラウレス5酢酸ナトリウム、ラウレス11酢酸ナトリウム、ラウレス11カルボン酸、酢酸トリデセス−3、酢酸トリデセス−7、トリデセス−3酢酸ナトリウム、トリデセス−6酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記N−アシルタウリン酸塩としては、例えば、ココリルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。
前記アルキル硫酸塩としては、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、例えば、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸トリエタノールアミン、ラウレス−2硫酸アンモニウム、(C12−15)パレス−3硫酸ナトリウム、(C12−15)パレス−3硫酸トリエタノールアミンなどが挙げられる。
前記スルホン酸塩としては、例えば、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムなどが挙げられる。
前記酢酸ベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン、コカミドプロピルベタインなどが挙げられる。
前記イミダゾリン型両性界面活性剤としては、例えば、ココアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホジ酢酸2ナトリウムなどが挙げられる。
前記脂肪酸石けんとしては、例えば、ヤシ油脂肪酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、ラウリン酸カリウムなどが挙げられる。
前記アルキルリン酸塩としては、例えば、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸、ラウリルリン酸2ナトリウムなどが挙げられる。
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩としては、例えば、ラウレスー1リン酸などが挙げられる。
また、その他の合成起泡剤として、例えば、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ココイル加水分解コラーゲンカリウム、ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン、水素添加タロウグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、スルホコハク酸PEG-2オレアミド2ナトリウム、スルホコハク酸ラクレス2ナトリウム、ミリストリルグルタミン酸カリウム、ラウリルグルコシドなども挙げられる。
前記合成起泡剤の添加量としては、特に制限はなく、鼻腔用組成物の品質を害さない程度に、適宜選択して添加することができる。
【0020】
−−油脂若しくは油性成分−−
前記油脂若しくは油性成分としては、前記合成起泡剤として挙げた中の油脂及び油性成分の他に、例えば、ヤシ油脂肪酸モノグリセリンスルホン酸ナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドなどが挙げられる。
前記油脂若しくは油性成分の添加量としては、特に制限はなく、鼻腔用組成物の品質を害さない程度に、適宜選択して添加することができる。
【0021】
−−起泡剤活性成分−−
前記起泡剤活性成分としては、例えば、ビタミン類、ヒアルロン酸、エラスチン、セラミドなどが挙げられる。なお、前記起泡剤活性成分とは、本発明では、添加することにより、起泡剤により好ましい泡質を付与する成分を意味する。
前記起泡剤活性成分の添加量としては、特に制限はなく、鼻腔用組成物の品質を害さない程度に、適宜選択して添加することができる。
【0022】
−−香料成分−−
前記香料成分としては、特に制限はなく、点鼻薬等において通常使用されている香料成分を適宜選択して使用することができ、例えば、メントール、ハッカ、シトラス、シトロネラ、スペアミント、レモン、ペパーミント、ジャスミン、ユーカリ、カモミル、カンファー、ラベンダー、ローズ、アニスなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記香料成分の添加量としては、特に制限はなく、鼻腔用組成物の品質を害さない程度に、適宜選択して添加することができる。
【0023】
−泡の性状−
本発明の鼻腔用組成物は、上述のように、起泡により鼻腔内を被覆可能とするため、該気泡により発生する泡は、例えば、泡量、泡の大きさ、吸着力、保湿性として、以下のような性状を有するのが好ましい。
【0024】
−−泡量−−
前記起泡剤により得られる泡量としては、例えば、本発明の鼻腔用組成物を10mlのメスシリンダー内に10mlの目盛に達するまで噴霧し、泡層上部の目盛をXml、泡層直後の目盛をYmlとしたときに、下記数式1で表される泡量Zmlが、噴霧直後に1ml以上であるのが好ましく、3.8ml以上であるのがより好ましく、7ml以上であるのが最も好ましい。前記泡量が1ml未満であると、泡が早期に消滅してしまい、鼻炎による不快感を和らげるという効果を持続するのが困難になることがある。
<数式1>
Z=X−Y
また、前記噴霧直後の、泡の、鼻腔用組成物全体に対する割合としては、下記数式2で表されるC(体積%)が、10体積%以上であるのが好ましく、31.5体積%以上であるのがより好ましく、51.5体積%以上であるのが最も好ましい。前記Cが10体積%未満であると、泡が早期に消滅してしまい、鼻炎による不快感を和らげるという効果を持続するのが困難になることがある。
<数式2>
C=Z/X×100
【0025】
−−泡の大きさ−−
前記起泡剤により得られる泡の大きさとしては、例えば、水平に静置したアクリル円筒管の外壁に、5mm×5mmの正方形のマーキングをして、固定した非撥水性の紙に、前記円筒管の一方端開口から、前記鼻腔用組成物を3ml噴霧し、温度30℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽内に静置したときに、前記マーキングの横辺上にある泡の個数を数え、下記に示す数式3により求められる泡の平均直径(mm)が、20分後に、0.5mm以下であることが好ましく、0.45mm以下であることがより好ましい。前記泡の直径が5mmを超えると、泡が大きくなり、円滑な呼吸を妨げることがある。
<数式3>
泡の平均直径(mm)=5mm÷泡の個数
【0026】
−−泡の拡散性−−
前記起泡剤により得られる泡の拡散性としては、例えば、壁に対して約60度の角度(鼻腔の角度を想定)で立て掛けた、1束当たり33本の割合で、40束植毛してある歯ブラシに対して、該歯ブラシと同様に、壁に対して約60度の角度で、下方1cmの位置より0.4ml噴霧して、1分経過した後、その束の約半数以上の毛及び毛の間に、前記鼻腔組成物が付着している束数が、26以上であることが好ましく、32以上であることがより好ましい。前記鼻腔組成物が付着している束数が26未満であると、鼻腔内表面に充分に前記鼻腔組成物を拡散できないことがある。
【0027】
−−吸着力−−
前記起泡剤により得られる泡の吸着力としては、例えば、前記鼻腔用組成物を噴霧した非撥水性の紙に、100個の黒砂を吹き付け、温度30℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽内に垂直に固定したときに、20分後の前記黒砂の吸着残存数が15個以上であるのが好ましく、70個以上であるのがより好ましく、90個以上であるのが最も好ましい。前記黒砂の吸着残存数が15個未満であると、吸着力に劣り、前記鼻腔用組成物を鼻腔内に噴霧したときに、噴霧箇所に留まらずに気管内に流れ込む等することがある。
【0028】
−−保湿性−−
前記起泡剤により得られる泡の保湿性としては、例えば、保水時間が30分以上であることが好ましく、45分以上であることがより好ましく、50分以上であるのが最も好ましい。ここで、前記保水時間とは、前記鼻腔用組成物10mlを浸した濾紙を、温度30℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽内に吊るして放置したときに、触手で湿り気が残っていると感じられる時間を意味する。前記保水時間が30分未満であると、鼻炎による不快感を和らげるという効果を持続するのが困難になることがある。
【0029】
−用途−
前記鼻腔用組成物は、上述のように、鼻腔に噴霧した際に、前記起泡剤による気泡により該鼻腔を被覆するため、例えば、花粉症等のアレルギー性鼻炎のような、鼻炎の際に、鼻腔を保湿するために好適に使用可能である。また、鼻炎を患っていないときであっても、例えば、清涼感を得る目的や、眠気を解消させる目的等にも使用可能である。
さらに、鼻腔に付与した際に、確実に前記起泡剤により気泡を発生させるために、泡沫形成器に充填させて使用するのも好ましい。
【0030】
−−泡沫形成器−−
前記泡沫形成器としては、特に制限はなく、レバー等を押すと容器内に圧力が加わり、内部の充填物が噴出孔から噴出される構成の、通常使用されている泡沫形成器を適宜選択して使用できるが、例えば、図1に示す泡沫形成器1が好適に使用可能である。
前記泡沫形成器1は、容器部2と、噴霧部3と、ノズル4とを少なくとも有してなる。
【0031】
該容器部2には、鼻腔用組成物10が充填されている。前記容器部2は、底面側から上面近傍部分までは、略円柱状を成しているが、該上面近傍部分では、若干幅が狭まり、上面から一定部分では、図示しないネジ部が形成されている。なお、前記容器部2の形状は、図示の例に限定されず、鼻腔用組成物10を充填可能な形状であれば、通常容器の形状として知られているどのような形状としてもよい。
【0032】
前記噴霧部3は、噴霧部本体5と、泡沫形成体6とを少なくとも有している。
前記噴霧部本体5は、先端中心部に、噴霧孔5aが設けられると共に、鉛直方向略中央位置に、楕円盤状の操作レバー7が設けられている。また、下方側の円柱状を成す部分においては、内面が前記容器部2のネジ部に螺合している。
前記泡沫形成体6は、先端中心部に噴霧孔6aが設けられると共に、円周方向に沿って一定間隔で、図示の例では8つの噴霧小孔6b、6b・・が設けられている。
【0033】
前記ノズル4は、上端が噴霧部3の噴霧部本体5内面において、該噴霧部3と一体的に連設し、下方側の大部分が容器部2内に延在している。また、上方側の一定域において。図示しないバネ部材により付勢されている。
【0034】
前記鼻腔用組成物10の噴霧に際しては、前記操作レバー7の押操作により、ノズル4をバネ部材の付勢力に抗して容器部2下方側へ押し込むと、該鼻腔用組成物10が前記噴霧孔5aから噴霧された後、前記泡沫形成体6の噴霧孔6aから噴出されることにより、泡沫が形成される。
なお、前記泡沫形成器1について、写真を図2に示す。
前記泡沫形成器1は、先端中心部に噴霧孔6aが設けられると共に、円周方向に沿って一定間隔で噴霧小孔6b、6b・・が設けられた泡沫形成体6が、噴霧部3に備えられているので、適度の大きさの泡を形成することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例について、説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
[実験1]
(実施例1)
−鼻腔用組成物の調製−
発泡剤としてのキラヤサポニン25質量%を含有するキラヤニンC−100(丸善製薬社製)1.0質量%、すなわちキラヤサポニン0.25質量%と、アルギン酸ナトリウム0.05質量%と、残部の精製水(98.95質量%)とからなる鼻腔用組成物を調製した。
【0037】
−泡量の測定−
泡沫形成器として、マジックリン(花王社製)の内容物を除去して、洗浄後乾燥させた容器に、前記鼻腔用組成物を充填した後、該泡沫形成器により、約1ml/回のペースで、10mlのメスシリンダー内に、10mlの目盛に達するまで連続的に噴霧し、噴霧直後、10分後、20分後、30分後、40分後、50分後、60分後における、泡層上部の目盛Xml、泡層下部の目盛Ymlを調べた上で、下記に示す数式1により泡量Zmlを求め、かつ、下記の数式2により鼻腔用組成物全体における泡の割合C(体積%)を求めた。なお、後述する実施例において、泡量Zが0mlとなったときには、その後の測定を中止した。結果を表1に示す。
<数式1>
Z=X−Y
<数式2>
C=Z/X×100
【0038】
(実施例2)
実施例1において、キラヤニンC−100の含有量を0.1質量%、すなわちキラヤサポニン0.025質量%とした以外は同様にして、鼻腔用組成物を調製し、泡量を測定した。その結果を表1に示す。
【0039】
(実施例3)
実施例1において、キラヤニンC−100の含有量を0.01質量%、すなわちキラヤサポニン0.0025質量%とした以外は同様にして、鼻腔用組成物を調製し、泡量を測定した。その結果を表1に示す。
【0040】
(実施例4)
実施例1において、キラヤニンC−100の含有量を0.001質量%、すなわちキラヤサポニン0.00025質量%とした以外は同様にして、鼻腔用組成物を調製し、泡量を測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

表1の結果からも明らかな通り、起泡剤として、キラヤサポニンを含有した本発明の鼻腔用組成物は、泡量及びその持続性を充分に有するので、泡の有する拡散性により鼻腔内表面をムラなく効率的に被覆することができ、かつ、鼻炎による不快感を和らげる効果を持続可能である。
【0042】
(実施例5)
発泡剤としての大豆サポニン60質量%を含有するソイヘルスSA(不二製油社製)1.0質量%、すなわち大豆サポニン0.6質量%と、アルギン酸ナトリウム0.05質量%と、残部の精製水(98.95質量%)とからなる鼻腔用組成物を調製し、実施例1と同様にして泡量を測定した。その結果を表2に示す。
【0043】
(実施例6)
実施例5において、ソイヘルスSAの含有量を0.1質量%、すなわち大豆サポニン0.06質量%とした以外は同様にして、鼻腔用組成物を調製し、泡量を測定した。その結果を表2に示す。
【0044】
(実施例7)
実施例5において、ソイヘルスSAの含有量を0.01質量%、すなわち大豆サポニン0.006質量%と、とした以外は同様にして、鼻腔用組成物を調製し、泡量を測定した。その結果を表2に示す。
【0045】
(実施例8)
実施例5において、ソイヘルスSAの含有量を0.001質量%、すなわち大豆サポニン0.0006質量%とした以外は同様にして、鼻腔用組成物を調製し、泡量を測定した。その結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

表2の結果からも明らかな通り、起泡剤として、大豆サポニンを含有した本発明の鼻腔用組成物は、泡量及びその持続性を有するので、泡の有する拡散性により鼻腔内表面をムラなく効率的に被覆することができ、かつ、鼻炎による不快感を和らげる効果を持続可能である。
【0047】
(実施例9)
発泡剤としてのレシチン95質量%を含有するレシチンPWL(J−オイルミルズ社製)1.0質量%、すなわちレシチン0.95質量%と、アルギン酸ナトリウム0.05質量%と、残部の精製水(98.95質量%)とからなる鼻腔用組成物を調製し、実施例1と同様にして泡量を測定した。その結果を表3に示す。
【0048】
(実施例10)
実施例9において、レシチンPWLの含有量を0.1質量%、すなわちレシチン0.095質量%とした以外は同様にして、鼻腔用組成物を調製し、泡量を測定した。その結果を表3に示す。
【0049】
(実施例11)
実施例9において、レシチンPWLの含有量を0.01質量%、すなわちレシチン0.0095質量%とした以外は同様にして、鼻腔用組成物を調製し、泡量を測定した。その結果を表3に示す。
【0050】
(実施例12)
実施例9において、レシチンPWLの含有量を0.001質量%、すなわちレシチン0.00095質量%とした以外は同様にして、鼻腔用組成物を調製し、泡量を測定した。その結果を表3に示す。
【0051】
【表3】

表3の結果からも明らかな通り、起泡剤として、レシチンを含有した本発明の鼻腔用組成物は、泡量及びその持続性をある程度有するので、泡の有する拡散性により鼻腔内表面をムラなく効率的に被覆することができ、かつ、鼻炎による不快感を和らげる効果を持続可能である。
【0052】
[実験2]
(実施例13)
−吸着力の測定−
水平に静置したアクリル円筒管の内壁に固定した非撥水性の紙に、前記円筒管の一方端開口から、実験1で使用したのと同じ泡沫形成器により、実施例1で調製した鼻腔用組成物を2ml噴霧した後、直径1〜1.5mmの黒砂100個を同様に噴霧し、温度30℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽内に垂直に固定して、吸着力の指標としての、固定直後、3分後、6分後、9分後、12分後、15分後、18分後、21分後、24分後の黒砂の吸着残存数を数えた。その結果を表4に示す。
【0053】
(実施例14)
実施例13において、実施例1で調製した鼻腔用組成物の代わりに、実施例2で調製した鼻腔用組成物を噴霧した以外は同様にして、黒砂の吸着残存数を数えた。その結果を表4に示す。
【0054】
(実施例15)
実施例13において、実施例1で調製した鼻腔用組成物の代わりに、実施例4で調製した鼻腔用組成物を噴霧した以外は同様にして、黒砂の吸着残存数を数えた。その結果を表4に示す。
【0055】
(実施例16)
実施例13において、実施例1で調製した鼻腔用組成物の代わりに、実施例5で調製した鼻腔用組成物を噴霧した以外は同様にして、黒砂の吸着残存数を数えた。その結果を表4に示す。
【0056】
(実施例17)
実施例13において、実施例1で調製した鼻腔用組成物の代わりに、実施例9で調製した鼻腔用組成物を噴霧した以外は同様にして、黒砂の吸着残存数を数えた。その結果を表4に示す。
【0057】
(比較例1)
実施例13において、実施例1で調製した鼻腔用組成物の代わりに、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)を噴霧した以外は同様にして、黒砂の吸着残存数を数えた。その結果を表4に示す。
【0058】
(比較例2)
実施例13において、実施例1で調製した鼻腔用組成物の代わりに、アルギン酸ナトリウム粉末100質量%からなる粉末状花粉症抑制剤を噴霧した以外は同様にして、黒砂の吸着残存数を数えた。その結果を表4に示す。
【0059】
【表4】

表4の結果からも明らかな通り、本発明の鼻腔用組成物は、生理食塩水や粉末状の薬剤に比して、飛躍的に吸着力が向上していることが判った。したがって、前記鼻腔用組成物は、鼻腔内に噴霧したときに、噴霧箇所に留まり、気管内に流れ込む等する虞がない。また、鼻炎による不快感を和らげる効果も持続可能である。
【0060】
[実験3]
(実施例18)
−保湿性の測定−
ロート上に濾紙を置くと共に、該ロートの下に受け皿としてのビーカを置き、前記濾紙に、実験1で使用したのと同じ泡沫形成器により、実施例1で調製した鼻腔用組成物を10ml噴霧した後、温度30℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽内に前記濾紙を吊るして、保湿性の指標としての保水時間を測定した。具体的には、前記濾紙を吊るした直後、4分後、8分後、12分後、16分後、20分後、24分後、28分後、32分後、36分後、40分後、44分後、48分後、52分後、56分後、60分後に触手し、湿り気が残っていると感じられたときには、表中に「○」と記載し、その時間まで保水時間があるとみなす一方、触手により湿り気が感じられないときには、表中に「×」と記載し、その時間は保水時間がないとみなした。その結果を表5及び表6に示す。
【0061】
(実施例19)
実施例18において、実施例1で調製した鼻腔用組成物の代わりに、実施例2で調製した鼻腔用組成物を噴霧した以外は同様にして、保水時間を測定した。その結果を表5及び表6に示す。
【0062】
(実施例20)
実施例18において、実施例1で調製した鼻腔用組成物の代わりに、実施例4で調製した鼻腔用組成物を噴霧した以外は同様にして、保水時間を測定した。その結果を表5及び表6に示す。
【0063】
(実施例21)
実施例18において、実施例1で調製した鼻腔用組成物の代わりに、実施例5で調製した鼻腔用組成物を噴霧した以外は同様にして、保水時間を測定した。その結果を表5及び表6に示す。
【0064】
(実施例22)
実施例18において、実施例1で調製した鼻腔用組成物の代わりに、実施例9で調製した鼻腔用組成物を噴霧した以外は同様にして、保水時間を測定した。その結果を表5及び表6に示す。
【0065】
(比較例3)
実施例18において、実施例1で調製した鼻腔用組成物の代わりに、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)を噴霧した以外は同様にして、保水時間を測定した。その結果を表5及び表6に示す。
【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

表5及び表6の結果からも明らかな通り、本発明の鼻腔用組成物では、30分を超える保水時間を有し、比較例に比して、保湿性が高いことが判った。特に、起泡剤の含有量を高くした実施例16〜18では、45分を超える保水時間を有し、飛躍的に保湿性が高くなることが判った。したがって、前記鼻腔用組成物は、鼻炎による不快感を和らげる効果を持続可能である。
【0068】
〔実験4〕
−泡の拡散性の評価−
(実施例23)
実施例1で調製した鼻腔組成物をヨウ素で着色し、図1に示した泡沫形成器1により、壁に対して約60度の角度(鼻腔の角度を想定)で立て掛けた、先端に近づくに連れて細く形成された毛(鼻毛を想定)が、1束当たり33本の割合で、40束植毛してある歯ブラシに対して、該歯ブラシと同様に、壁に対して約60度の角度で、下方1cmの位置より約0.1mlずつ4回、すなわち約0.4ml噴霧した。1分経過後、その束の約半数以上の毛及び毛の間に、泡沫又は溶液が付着している束数を数えることにより、泡の拡散性の評価を行った。なお、この測定は、再度歯ブラシを乾燥させた上で合計5回行い、その平均値を算出した。その結果を表7に示す。また、前記鼻腔用組成物を噴霧した後の状態、及び後述する比較例4の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を噴霧した後の状態を、それぞれ撮影した写真を図3に示す。図3において、左側が前記鼻腔用組成物を噴霧した後の状態、右側が0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を噴霧した後の状態である。
【0069】
(実施例24)
実施例23において、実施例1で調製した鼻腔組成物の代わりに、実施例2で調製した鼻腔用組成物を噴霧した以外は同様にして、泡の拡散性の評価を行った。その結果を表7に示す。なお、前記鼻腔用組成物を噴霧した後の状態を撮影した写真を図4に示す
【0070】
(実施例25)
実施例23において、実施例1で調製した鼻腔組成物の代わりに、実施例5で調製した鼻腔用組成物を噴霧した以外は同様にして、泡の拡散性の評価を行った。その結果を表7に示す。なお、前記鼻腔用組成物を噴霧した後の状態を撮影した写真を図5に示す
【0071】
(実施例26)
実施例23において、実施例1で調製した鼻腔組成物の代わりに、実施例9で調製した鼻腔用組成物を噴霧した以外は同様にして、泡の拡散性の評価を行った。その結果を表7に示す。なお、前記鼻腔用組成物を噴霧した後の状態を撮影した写真を図6に示す
【0072】
(比較例4)
実施例23において、実施例1で調製した鼻腔組成物の代わりに、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)を噴霧した以外は同様にして、泡の拡散性の評価を行った。その結果を表7に示す。
【0073】
(比較例5)
実施例23において、実施例1で調製した鼻腔組成物の代わりに、アルギン酸ナトリウム粉末100質量%からなる粉末状花粉症抑制剤を噴霧した以外は同様にして、泡の拡散性の評価を行った。その結果を表7に示す。
【0074】
【表7】

表7の結果からも明らかな通り、本発明の鼻腔用組成物は、噴霧により歯ブラシの8割を超える範囲に拡散可能なことが判った。したがって、鼻腔内に噴霧したときに、鼻腔内表面をムラなく効率的に被覆することができる。
【0075】
〔実験5〕
(実施例27)
−泡の大きさの測定−
水平に静置したアクリル円筒管の外壁に、5mm×5mmの正方形のマーキングをして、固定した非撥水性の紙に、前記円筒管の一方端開口から、実験1で使用したのと同じ泡沫形成器により、実施例1で調製した鼻腔用組成物を3ml噴霧した後、温度30℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽内に静置して、静置直後、10分後、20分後、30分後、40分後、50分後の、前記マーキングの横辺上にある泡の個数を数え、下記に示す数式3により泡の平均直径(mm)を求めた。その結果を表8に示す。なお、鼻腔用組成物を噴霧した後の状態を撮影した写真を図7に示す。
<数式3>
泡の平均直径(mm)=5mm÷泡の個数
【0076】
(実施例28)
実施例27において、実施例1で調製した鼻腔用組成物の代わりに、実施例2で調製した鼻腔用組成物を噴霧した以外は同様にして、泡の平均直径(mm)を求めた。その結果を表8に示す。
【0077】
【表8】

表8の結果からも明らかな通り、本発明の鼻腔用組成物は、50分経過後であっても0.5mm以下の小さな泡径を保持しており、泡が大きくなり、円滑な呼吸を妨げることがなく、安全性が高いことが判った。
【0078】
〔実験6〕
増粘剤の含有量を異ならせて、どの程度起泡力が異なるかを調べた。
(実施例29)
−起泡力の評価−
実験1で使用したのと同じ泡沫形成器により、実施例1で調製した鼻腔用組成物を、20mlのメスシリンダー内に、10mlの目盛に達するまで噴霧した後、前記メスシリンダーの口を押さえて、ほぼ均等な力で10回上下に手で強く震とうした。震とう後、水平な台上に5分間静置し、溶液表面から泡沫表面までの容積を測定して起泡力を評価した。その結果を表9に示す。
また、測定時の泡の状態を目視によっても確認したところ、起泡力に優れ、溶液中に残ったままとなっている泡沫は存在しなかった。なお、鼻腔用組成物を噴霧した後の状態を撮影した写真を図8に示す。
【0079】
(実施例30)
実施例29において、アルギン酸ナトリウムの含有量を0.1質量%とした以外は同様にして、鼻腔用組成物を調製し、起泡力を評価した。その結果を表9に示す。
また、測定時の泡の状態を目視によっても確認したところ、実施例29と同様に、起泡力に優れ、溶液中に残ったままとなっている泡沫は存在しなかった。なお、鼻腔用組成物を噴霧した後の状態を撮影した写真を図9に示す。
【0080】
(実施例31)
実施例29において、アルギン酸ナトリウムの含有量を1.0質量%とした以外は同様にして、鼻腔用組成物を調製し、起泡力を評価した。その結果を表9に示す。
また、測定時の泡の状態を目視によっても確認したところ、溶液の粘度が高く、溶液中に残ったままとなっている泡沫が見られた。
【0081】
(実施例32)
実施例29において、アルギン酸ナトリウムの含有量を2.0質量%とした以外は同様にして、鼻腔用組成物を調製し、起泡力を評価した。その結果を表9に示す。
また、測定時の泡の状態を目視によっても確認したところ、溶液の粘度が高く、ほとんどの泡沫が溶液表面中に表れず、溶液中に残ったままであった。なお、泡の容積による確認の結果を表9に示す。
【0082】
【表9】

表9の結果からも明らかな通り、増粘剤の含有量としては、起泡剤による安定した泡を形成可能とする観点から、2質量%未満であることが好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.1質量%が最も好ましいことが判った。
【0083】
[実験7]
(実施例33)
−官能性評価−
実施例1で調製した鼻腔用組成物の試作品を、モニターとして7人の花粉症患者に7日間使用してもらい、その使用感を以下の5段階により評価してもらった。その結果、7人の評価点数の平均値は3.9であった。
<評価>
5・・・非常にすっきりする
4・・・すっきりする
3・・・どちらかと言えばすっきりする
2・・・あまりすっきりしない
1・・・全くすっきりしない
【0084】
(比較例6)
−官能性評価−
アルギン酸ナトリウム粉末100質量%からなる粉末状花粉症抑制剤を、モニターとして5人の花粉症患者に7日間使用してもらい、その使用感を実施例17と同様にして評価してもらった。その結果、5人の評価点数の平均値は1.4であった。
【0085】
本実験の結果より、本発明の鼻腔用組成物は、比較例に比して、使用感に優れることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の鼻腔用組成物は、鼻腔に噴霧した際に、前記起泡剤による気泡により該鼻腔を被覆するため、例えば、花粉症等のアレルギー性鼻炎のような、鼻炎の際に、鼻腔を保湿するために好適に使用可能である。また、鼻炎を患っていないときであっても、例えば、清涼感を得る目的や、眠気を解消させる目的等にも使用可能である。
さらに、鼻腔に付与した際に、確実に前記起泡剤により気泡を発生させるために、泡沫形成器に充填させて使用するのも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、泡沫形成器1の要部概略図である。
【図2】図2は、泡沫形成器1の写真である。
【図3】図3は、実施例23及び比較例4において、鼻腔用組成物等を噴霧した後の状態を撮影した写真である。
【図4】図4は、実施例24において、鼻腔用組成物を噴霧した後の状態を撮影した写真である。
【図5】図5は、実施例25において、鼻腔用組成物を噴霧した後の状態を撮影した写真である。
【図6】図6は、実施例26において、鼻腔用組成物を噴霧した後の状態を撮影した写真である。
【図7】図7は、実施例27において、鼻腔用組成物を噴霧した後の状態を撮影した写真である。
【図8】図8は、実施例29において、鼻腔用組成物を噴霧した後の状態を撮影した写真である。
【図9】図9は、実施例30において、鼻腔用組成物を噴霧した後の状態を撮影した写真である。
【符号の説明】
【0088】
1・・・・・・・・・・・泡沫形成器
2・・・・・・・・・・・容器部
3・・・・・・・・・・・噴霧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻腔に用いられる鼻腔用組成物であって、起泡可能であり、かつ気泡により鼻腔内を前記鼻腔用組成物で被覆可能な起泡剤を含有してなり、該起泡剤が、サポニン及びレシチンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする鼻腔用組成物。
【請求項2】
サポニンが、キラヤサポニン及び大豆サポニンのいずれかである請求項1に記載の鼻腔用組成物。
【請求項3】
サポニンを、0.001質量%以上含有する請求項1から2のいずれかに記載の鼻腔用組成物。
【請求項4】
レシチンを、0.075質量%以上含有する請求項1に記載の鼻腔用組成物。
【請求項5】
増粘剤を含有する請求項1から4のいずれかに記載の鼻腔用組成物。
【請求項6】
増粘剤が、アルギン酸ナトリウムである請求項5に鼻腔用組成物。
【請求項7】
泡沫形成器に充填させた請求項1から6のいずれかに記載の鼻腔用組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−206459(P2006−206459A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17504(P2005−17504)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(593169382)ベントレップ・サンテ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】