説明

鼻適用のための放出制御送達システム

本発明は、性ホルモンの体循環への放出制御にとって経鼻的に投与可能な製剤、特に極めて低用量でのより優れたバイオアベイラビリティおよびより長い作用持続時間をもたらす持続的な様式で、その活性成分の吸収を可能にする製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、性ホルモンの鼻適用後の体循環に対する放出制御のための製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
経鼻薬物送達は、非常に多くの毛細管による速やかな吸着、作用の速やかな発現、肝初回通過代謝の回避、慢性薬物使用における有用性および投与の容易性を含む多数の利点を提供する。
【0003】
大分子および/またはイオン化分子とは対照的に、概して分子量が十分に低い親油性医薬化合物が鼻粘膜によって容易に吸着されることが知られている。かかる薬剤では、静脈内注射後に得られる薬物動態特性に類似する薬物動態特性が得られる可能性がある。
【0004】
しかしながら、治療薬の沈着部位からの速やかな粘膜毛様体クリアランスによって短期間の吸収がもたらされ、かつ鼻腔における分解を誘発しかねない酵素が存在することから、長期間にわたりインビボ(in vivo)において一定の治療薬物濃度を維持することが課題である。
【0005】
これらの制限を克服するのに、鼻腔における滞留時間を増大させるバイオ粘着剤系の使用、鼻膜の透過性を改善するためのエンハンサーの使用または薬剤の分解を防止する安定剤の使用を含む多くの取組みがなされている。
【0006】
したがって、特許文献1ではバイオ粘着ミクロスフィアの使用がイルーム(Illum)により、また特許文献2では原位置でのゲル化ペクチン(gelling pectin)製剤の使用がウエスト・ファーマシューティカルズ(WEST Pharmaceuticals)によって提案されている。
【0007】
比較的小さく親油性の化合物である性ステロイドの鼻吸収に関する検討によると、同ステロイドが鼻粘膜によって容易に吸収され、極めて迅速に血清中で見つかることが示されている。この事実や、化合物の短い半減期、徐放性を有する鼻適用形態の調製における限られた可能性に起因し、ホルモン置換療法が概して長期間の適用であることから、診療におけるそれらの使用はこれまで限られている。
【0008】
これらの薬剤に対して数種類の製剤が提案された。例えば、ほとんど水に溶けないで植物油にはやや良好に溶けるテストステロンの場合、非特許文献1では、テストステロンの水への溶解度が上昇しうる場合、それが鼻投与にとって理想的な候補であると結論付けられた。フセイン(Hussain)は水に可溶性のプロドラッグであるテストステロン17β−N,N−ジメチルグリシネートを使用するように提案し、血清レベルがそれぞれ12分(25mg用量)以内および20分(50mg用量)以内にピーク血漿濃度を有し、かつ約55分の排泄半減期を有する静脈内投与に匹敵することを見出した。性ホルモン置換が緊急治療ではないことからこの速度が必要/所望でないことを述べておかなければならない。
【0009】
非特許文献2では、鼻における薬剤の可溶化および/または製剤の滞留時間延長によって吸収を増大させることが可能であるという仮説に基づき、帯電したテストステロンのサブミクロンO/Wエマルション製剤(水/Tween80、大豆油/Span80)の使用が提案された。コウ(Ko)は中性のエマルション(37%)よりも高い相対的バイオアベイラビリティを有する正(55%)および負(51%)に帯電したエマルション見出した。投与の約20分後、すべての場合においてTmaxが観察された。コウ(Ko)は適用前に血液試料を採取しなかったことからこれらの結果を考察することは困難である。それ故、血清レベルの低下における差異を評価することができないが、グラフから静脈内適用(含水アルコール溶液)後に同レベルが最長の排泄半減期を示すようである。しかし実際には、かかるエマルションは、鼻適用にとって液滴直径(430nm)が許容範囲でないことから適当ではない。
【0010】
プロゲステロンの水および油への溶解度がテストステロンのそれにやや類似するが、様々なアプローチで検討がなされている。
【0011】
非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6および非特許文献7では、アーモンド油(20mg/ml)中に溶解され、鼻スプレーによって投与されるプロゲステロンが、ジメチコーンまたはPEGをベースとする軟膏の中に溶解されたプロゲステロンによって提供される場合よりも高いバイオアベイラビリティをもたらすことが示された。アーモンド油中のプロゲステロンを鼻に適用してから30〜60分後、Cmaxレベルが観察され、それが単回投与の6〜8時間後に著しく低下した。
【0012】
非特許文献8では、ポリエチレングリコール(200mg/ml)中にプロゲステロンが溶解され、30分時点でTmaxが見出された。血清レベルの持続時間は、少なくとも8時間であったが変動が大きかった。
【0013】
しかし、エタノール/プロピレングリコール/水の中でプロゲステロンを調製した場合、Tmaxは5.5分にすぎなかった(非特許文献9)。
【0014】
非特許文献10では、プロゲステロンを含有する粉末混合物(共粉砕および共凍結乾燥されたプロゲステロン/シクロデキストリン)が検討され、2〜5分以内にTmax、かつ約20分以内に既に血清レベルの低下も見出した。
【0015】
これらの結果は、テストステロン(上記参照)や、シクロデキストリン(Aerodiol(登録商標))中で調製されたエストラジオールを含有する、既に市販された水性鼻スプレーにおいて見出された結果と酷似している。10〜30分以内に最大血漿レベルに達し、それが2時間後に既にピーク値の10%にまで低下する。再びこの速度は性ホルモン置換療法にとって必要ではなく、ホルモンの短い排泄半減期を考慮すると望ましくない。
【0016】
上記「遊離/吸着」の課題は別にして、ほとんど重要な肝代謝および短い半減期のみが性ホルモンおよびバイオアベイラビリティと関連させて考察されるが、高度なタンパク質結合もまた課題である。例えば循環する血漿テストステロンの約40%が性ホルモン結合グロブリン(SHBG)に結合する。ここで男性では2%、女性では最大で3%が非結合(遊離)状態であり、その残りはアルブミンおよび他のタンパク質に結合する。アルブミンに結合された分画は容易に解離して生物活性があると推定される一方で、SHBG分画はそうではない。しかし、血漿中のSHBG量は、遊離および結合形態にあるテストステロンの分布を決定する。ここでは遊離テストステロン濃度が薬剤の半減期を決定(限定)する。
【特許文献1】GB 1987000012176号明細書
【特許文献2】PCT/GB98/01147号パンフレット
【非特許文献1】フセイン(Hussain)ら、「Teststerone 17β−N,N−dimethylglycinate hydrochloride:A prodrug with a potential for nasal delivery of teststerone」、J.Pharmaceut.Sci.91(3):785−789頁(2002年)
【非特許文献2】コウ(Ko)ら、「Emulsion formulations of teststerone for nasal administration」、J.Microencaps.、15(2):197−205頁(1998年)
【非特許文献3】チチネッリ(Cicinelli)ら、「progesterone administration by nasal spray」、Fertil Steril56(1):139−141頁(1991年)
【非特許文献4】チチネッリ(Cicinelli)ら、「Nasally−administered progesterone:comparison of ointment and spray formulations」、Maturitas 13(4):313−317頁(1991年)
【非特許文献5】チチネッリ(Cicinelli)ら、「Progesterone administration by nasal sprays in menopausal women:comparison between two different spray formulations」、Gynecol Endocrinol 6(4):247−251頁(1992年)
【非特許文献6】チチネッリ(Cicinelli)ら、「Effects of the repetitive administration of progesterone by nasal spray in postmenopausal women」、Fertil Steril、60(6):1020−1024頁(1993年)
【非特許文献7】チチネッリ(Cicinelli)ら、「Nasal spray administration of unmodified progesterone:evaluation of progesterone serum levels with three different radioimmunoassay techniques」、Maturitas19(1):43−52頁(1994年)
【非特許文献8】シュテーゲ(Steege)ら、「Bioavailability of nasally administered progesterone」、Fertil Steril、46(4):727−729頁(1986年)
【非特許文献9】クマー(Kumar)ら、「Pharmacokinetics of progesterone after its administration to ovariectomized rhesus monkeys by injection,infusion,or nasal spraying」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、79:4185−9頁(1982年)
【非特許文献10】プロバシ(Provasi)ら、「Nasal delivery progesterone powder formulations comparison with oral administration」、Boll.Chim.Farm.132(10):402−404頁(1993年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、患者の鼻に投与される場合に治療上有効であり、かつ安全、安定および製造が容易な性ホルモン製剤系に対する需要は常にある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、様々な性ホルモン製剤について鋭利研究を行い、その結果、驚くべきことに特定の親油性または部分的な親油性を有する系内へ薬剤を混入させることにより、一般に血漿中の持続した血清レベルに起因するより高いバイオアベイラビリティだけでなく、より好ましい血清レベル特性がもたらされることを見出した。
【0019】
本発明は、鼻適用のための製剤であって、a)少なくとも1種類の性ホルモン剤;b)少なくとも1種類の親油性または部分的に親油性の担体;およびc)活性を低下させる表面張力と、該製剤を水と接触させる際の原位置でのエマルションの生成に有効な量とを有する化合物または化合物の混合物、を有してなる製剤を含む。
【0020】
好ましくは、該親油性担体が油を含む。
【0021】
より好ましくは、該油が植物油である。
【0022】
最も好ましくは、該油がヒマシ油である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態は、油の量が、製剤の30重量%〜98重量%、好ましくは60〜98重量%、より好ましくは75重量%〜95重量%、さらにより好ましくは85重量%〜95重量%および最も好ましくは約90重量%を含むことを特徴とする。
【0024】
更なる実施形態は、成分(c)が、レシチンと、多価アルコール脂肪酸エステルと、ソルビタン脂肪酸エステルと、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルと、スクロース脂肪酸エステルと、ポリグリセロール脂肪酸エステルとからなる群から選択される少なくとも1種類の界面活性剤、および/またはソルビトールと、グリセリンと、ポリエチレングリコールと、マクロゴールグリセロール脂肪酸エステルとからなる群から選択される少なくとも1種類の湿潤剤、またはこれらの混合物を含むことを特徴とする。
【0025】
最も好ましくは、成分(c)がオレオイルマクロゴールグリセリド、またはオレオイルマクロゴールグリセリドの混合物を含む。
【0026】
好ましくは、成分(c)が、1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%、および最も好ましくは約4重量%の量で製剤中に含まれる。
【0027】
更なる実施形態では粘性調節剤が含まれる。
【0028】
好ましくは、該粘性調節剤は、セルロースおよびセルロース誘導体、多糖類、カルボマー、ポリビニルアルコール、ポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、セチルアルコール、ステアリン酸、蜜ろう、ペトロラタム、トリグリセリドおよびラノリン、またはこれらの混合物からなる群から選択される増粘剤あるいはゲル化剤を含むことが好ましい。
【0029】
最も好ましくは、該増粘剤はコロイド状二酸化ケイ素である。
【0030】
好ましくは、粘性調節剤は、0.5〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%、および最も好ましくは約3重量%の量で製剤中に含まれる。
【0031】
好ましい実施形態では、性ホルモン剤はテストステロンである。
【0032】
好ましくは、性ホルモン剤は、0.5〜6重量%、好ましくは2〜4重量%、より好ましくは0.5〜2重量%、および最も好ましくは約2重量%の量で製剤中に含まれることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
得られた製剤は、化学的かつ物理的に安定であり、かつ薬理活性物質の懸濁剤または溶剤でありうる。好ましくは、同製剤は上記製剤の用量を正確に、粘性も高い状態で送達可能な、保存剤を含まない無気複数回投与装置(multi−dose device)内に充填される。
【0034】
吸収部位では、薬剤または薬剤粒子は、沈着部位で効率的に捕捉され、患者の粘膜を通して予測可能な速度で吸収される必要があり、それによって代謝酵素および/またはタンパク質との結合によって起こりうる不活性化が制限される。
【0035】
本明細書で用いられる以下の用語は、以下のように定義される。
【0036】
「性ホルモン剤」という用語は、少なくとも1種類の性ホルモン(テストステロンなど)または少なくとも1種類の性ホルモンの生物学的プロドラッグ(アンドロステンジオン、プロゲステロン、17−α−ヒドロキシプロゲステロンなど)または少なくとも1種類の性ホルモン誘導体(メスタノロンおよび4−クロロ−1−デヒドロメチルテストステロンなど)またはこれらの組合せを意味するものとする。好ましい実施形態では、性ホルモン剤はテストステロンである。
【0037】
性ホルモン剤は、0.5〜6重量%、好ましくは2〜4重量%、より好ましくは0.5〜2重量%、および最も好ましくは約2重量%の量で製剤中に含まれる。
【0038】
ミクロスフィア、リポソームなどの加工された形態で製剤中に本発明の薬剤を導入してもよい。
【0039】
「親油性担体」という用語は、ヒマシ油、大豆油、ゴマ油またはピーナッツ油などの植物油、エチルオレエートおよびオレイルオレエート、ミリスチン酸イソプロピル、中鎖トリグリセリド、脂肪酸のグリセロールエステル、またはポリエチレングリコールなどの脂肪酸エステル、リン脂質、白色軟パラフィン、あるいは硬化ヒマシ油を含むがこれらに限定されないものとする。特に有用なものはヒマシ油である。
【0040】
油混合物中に薬剤を混入させることも可能である。
【0041】
有効量を構成する特定量の油は、製剤において使用される特定の粘性調節剤(下記参照)に左右される。したがって、本発明の特定の製剤での使用における特定量を挙げることは現実的ではない。しかし一般に、親油性部分は、製剤の30%〜98重量%、好ましくは60〜98重量%、より好ましくは75%〜95重量%、さらにより好ましくは85%〜95重量%および最も好ましくは約90重量%の量で製剤中に存在しうる。
【0042】
成分(C)は、レシチン、多価アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、およびポリグリセロール脂肪酸エステルなどの(これらに限定されない)少なくとも1種類の界面活性剤、および/またはソルビトール、グリセリン、ポリエチレングリコール、またはマクロゴールグリセロール脂肪酸エステルなどの少なくとも1種類の湿潤剤を含むものとする。しかし特に有用なものは、オレオイルマクロゴールグリセリド(ガトフォセ(Gattefosse)(フランコ(Franco))から入手可能なLabrafil M 1944 CSなど)である。
【0043】
界面活性剤混合物中に薬剤を混入させることも可能である。
【0044】
有効量を構成する特定量の界面活性剤は、製剤において使用される特定の油または油混合物(上記参照)に左右される。したがって、本発明の特定の製剤での使用における特定量を挙げることは現実的ではない。しかし一般に、界面活性剤は、1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%、および最も好ましくは約4重量%の量で製剤中に存在しうる。
【0045】
「粘性調節剤」という用語は、増粘剤またはゲル化剤を意味するものとする。例として、セルロースおよびその誘導体、多糖類、カルボマー、ポリビニルアルコール、ポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、セチルアルコール、ステアリン酸、蜜ろう、ペトロラタム、トリグリセリドまたはラノリンが挙げられるがこれらに限定されない。しかし特に有用なものは、コロイド状二酸化ケイ素(デグサ(Degussa)から入手可能なAcrosil200など)である。
【0046】
増粘剤またはゲル化剤の混合物中に薬剤を混入させることも可能である。
【0047】
有効量を構成する増粘剤/ゲル化剤の特定量は、本製剤において使用される特定の油または油混合物(上記参照)に左右される。したがって、本発明の特定の製剤での使用における特定量を挙げるのは現実的ではない。しかし一般に、増粘剤/ゲル化剤が0.5〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%、および最も好ましくは約3重量%の量で製剤中に存在しうる。
【0048】
本発明に記載の製剤は、例えば凍結乾燥または吹き付け乾燥によって粉末形態に処理されうる。
【0049】
一般に本発明の製剤は、以下の従来の方法によって極めて容易に調製可能である。
【0050】
・エマルション
増粘剤またはゲル化剤、必要ならば界面活性剤を十分な量の水に添加し、高速混合によって分散させる(混合物1)。第2の容器では、水および/または親油性担体、必要ならば界面活性剤を導入する(混合物2)。空気導入を極めて注意深く回避しながら混合物2にホルモンを添加する。混合物2を混合物1に添加し、必要ならばpHおよび張度を調節し、最終混合物を均一化して殺菌する。
【0051】
・水を含まない製剤
親油性担体および乳化剤を攪拌容器内に充填し、粘性調節剤の約75%を混入する。活性成分の均一分散が得られるまで攪拌下でホルモンを添加する。次いで、粘性調節剤の残りを用いて製剤を必要とする粘度まで調節する。
【0052】
製剤は、好ましくはアーサテック(Ursatec)から入手できるCOMODシステムなどの保存剤を含まない無気鼻スプレー装置内に充填される。
【0053】
「より高いアベイラビリティ」とは、単回適用後にベースラインよりも著しく高い性ホルモンの血清レベルが6時間、より好ましくは8時間および最も好ましくは少なくとも10時間にわたって維持されることを意味している。
【0054】
性ホルモンはほとんど水に溶けないため、製剤からの遊離は吸着への速度を制限するステップである。驚くべきことに、本発明の適切な界面活性剤を含有する油性製剤中にテストステロンなどの性ホルモン剤を混入させることにより、長期間にわたる生理学的血清レベルおよびホルモンの安定な持続作用がもたらされることが見出されている。
【0055】
一方では、ホルモンの放出は、その油性担体への溶解度および長期の持続時間にわたって粘膜上に残存する製剤の粘性によって持続される。
【0056】
もう一方では、製剤が粘膜の水分と接触する際、界面活性剤の特性によって薬剤の沈殿が阻止され、薬剤を含有する油滴が形成される。このように適切な界面活性剤を製剤に添加することにより、生物学的等価性を確保する溶解におけるばらつきが大きくないことから、ホルモンの溶解パターンがより好ましく効果的になる。
【実施例】
【0057】
・典型的な製剤
得られた活性成分の血清レベルを考慮して下記に示される製剤を選択したが、同製剤は長期適用にとって重要なスキンケア特性も示す。
【表1】

【0058】
・典型的な血清レベル
テストステロンを含有する様々な製剤(図1参照)を比較すると、本発明の特定の油性製剤においてCmaxが顕著に低下することが明らかであり、これは毒物学上の検討事項を考慮すると望ましい。さらに非結合のテストステロンのレベルが少なくとも10時間にわたってまさに一定であり、これはテストステロン放出の生理的日周リズムに類似している。
【0059】
点線は、最も好ましい製剤における鼻孔あたり1噴霧の単回適用後の血清レベルを示す(表1参照)。
【0060】
本発明の鼻適用のための製剤は、テストステロン放出の生理的な日周リズムに類似していることにより、従来の製剤、特に徐放用製剤、と異なることが結論付けられる。同製剤は正常なテストステロンレベルを上回るおよび下回ることも回避しており、それはホルモン置換療法における患者および要求にとって好ましい。図1に示すように(上の線)、この意味でテストステロンを含有する単純な鼻スプレーでは不十分である。
【0061】
前述の説明、特許請求の範囲および/または図面において開示された特徴は、いずれも独立に、および任意に組み合わせることで、それらの様々な形態において本発明を実現するための材料でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ベースライン時およびテストステロンの鼻適用後での遊離テストステロンの血清レベルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻適用のための製剤であって、
a)少なくとも1種類の性ホルモン剤、
b)少なくとも1種類の親油性または部分的に親油性の担体、
c)活性を低下させる表面張力と、前記製剤を水と接触させる際の原位置でのエマルションの生成に有効な量とを有する化合物または化合物の混合物、
を有してなることを特徴とする製剤。
【請求項2】
前記親油性担体が油を含むことを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記油が植物油であることを特徴とする請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記油がヒマシ油であることを特徴とする請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
油の量が、製剤の30重量%〜98重量%を占めることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
成分(c)が、レシチンと、多価アルコール脂肪酸エステルと、ソルビタン脂肪酸エステルと、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルと、スクロース脂肪酸エステルと、ポリグリセロール脂肪酸エステルとからなる群から選択される少なくとも1種類の界面活性剤および/またはソルビトールと、グリセリンと、ポリエチレングリコールと、マクロゴールグリセロール脂肪酸エステルとからなる群から選択される少なくとも1種類の湿潤剤、またはこれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
成分(c)がオレオイルマクロゴールグリセリド、またはオレオイルマクロゴールグリセリドの混合物を含むことを特徴とする請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
成分(c)が1〜20重量%の量で前記製剤中に含まれることを特徴とする請求項6または7に記載の製剤。
【請求項9】
粘性調節剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
前記粘性調節剤が、セルロースおよびセルロース誘導体、多糖類、カルボマー、ポリビニルアルコール、ポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、セチルアルコール、ステアリン酸、蜜ろう、ペトロラタム、トリグリセリドおよびラノリン、またはこれらの混合物からなる群から選択される増粘剤あるいはゲル化剤を含むことを特徴とする請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記増粘剤がコロイド状二酸化ケイ素であることを特徴とする請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記粘性調節剤が0.5〜10重量%の量で前記製剤中に含まれることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項13】
前記性ホルモン剤がテストステロンであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
前記性ホルモン剤が0.5〜6重量%の量で前記製剤中に含まれることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の製剤。

【図1】
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【公表番号】特表2007−530446(P2007−530446A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538697(P2006−538697)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012122
【国際公開番号】WO2005/044273
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(502198504)
【Fターム(参考)】