説明

齲蝕病変領域を抽出するための方法

【課題】歯の健康な領域から齲蝕病変領域を抽出するための方法。
【解決手段】歯のデジタル画像を生成するステップと、歯の領域を識別するステップと、マーカー制御式のウォーターシェッドアルゴリズムを用いることにより、又は多重解像度表面再構成と共に形態学的なボトムハットに基づく方法を用いることにより病変と疑われる領域を抽出するステップと、偽陽性のものを除去するステップと、を含む。あるいは、歯のデジタル画像を生成するステップであって、歯の蛍光画像を取得し、歯の反射率画像を取得し、蛍光画像と反射率画像の画像データを組み合わせるステップと、歯の領域を識別するステップと、病変と疑われる領域を抽出するステップと、偽陽性のものを除去するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には歯科画像生成の分野に関係し、特に齲蝕(うしょく)の早期検知のための方法に関する。更に詳しくは、本発明は、蛍光及び光の後方散乱を用いて取得された歯の画像の中から齲蝕病変領域を抽出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検出、治療及び予防技術についてこれまでにいくつもの進歩があったにもかかわらず、虫歯は依然として人々を襲う蔓延する症状のままである。適切かつ迅速に治療しないと、齲蝕は永久的な歯の損傷につながり、歯を失うことに繋がることさえある。
【0003】
齲蝕検出のための従来の方法には、視覚的な検査や、鋭い歯科用検査器具を用いた触覚的検査があり、また補助的に放射線(X線)イメージングを用いることもしばしばである。このような方法を用いた検出は、いくぶん主観的であり、その精度は、検査者の専門技能や患部(感染部位)の位置、症状(感染)の程度、観察条件、X線装置及び処理の精度、及びその他の要因によって変化する。従来の検出技術に関する危険も存在する。例えば、弱くなった歯を損ねたり、触覚的方法により感染を広げたり、X線放射に曝したり、等の危険である。視覚的検査及び触覚的検査により齲蝕状況が明らかになるときまでには、疾患は一般に進行した段階にあり、詰め物が必要になったり、適切な時点で治療できなかった場合には歯を失ったりすることになる。
【0004】
より進歩した齲蝕検出方法を求める要望に応えて、X線を用いない、進歩した画像化(イメージング)技術に対して相当の注目がなされてきた。ある方法では蛍光を用い、歯を高強度の青い光で照明する。この技術は、定量的光誘導蛍光法(QLF法:quantitative light-induced fluorescence)とも呼ばれており、健全、健康な歯のエナメルは、ある波長(又は波長帯)の光で励起されると、齲蝕感染により損傷を受けてきた脱灰エナメル質(de-mineralized enamel)よりも、より高強度の蛍光を発する。ミネラル成分の損失と青色光に対する蛍光の減少との相関が、歯の齲蝕領域を特定し、評価するために用いられる。異なる関係が、赤色光励起について見つかっている。齲蝕領域内のバクテリアとバクテリアの副生成物とが、健康な領域よりもはっきりと多い吸収と蛍光を示すスペクトルの領域である。
【0005】
出願人は、齲蝕の光学的検出に関するいくつかの参考文献を見つけた。
【0006】
米国特許第4515476号明細書(発明者Ingmar)には、レーザーを用いて励起エネルギーを与え、齲蝕領域の位置を特定するためにいくつかの他の波長の蛍光を発生させることが記載されている。
【0007】
米国特許第6231338号明細書(発明者de Josselin de Jongら)には、蛍光検出を用いて歯の齲蝕を識別するための画像化装置が記載されている。
【0008】
米国特許出願公開第2004/0240716号明細書(発明者de Josselin de Jongら)には、蛍光を発する組織から得られた画像に対する、改良された画像解析のための方法が記載されている。
【0009】
米国特許第4479499号明細書(発明者Alfano)には、徹照法(transillumination)を用いて、歯の構造の透光性の性質に基づいて齲蝕を検出する方法が記載されている。
【0010】
蛍光作用を用いた歯科画像生成(イメージング)のための製品の中の1つに、オランダのアムステルダムのインスペクター・リサーチ・システムズ・ベーヴェー(Inspektor Research Systems BV)社のQLF臨床システム(QLF Clinical System)がある。アメリカ合衆国イリノイ州レイク・ズーリックのカヴォ・デンタル社(KaVo Dental Corporation)のダイアグノデント・レーザー・カリエス・ディテクション・エイド(Diagnodent Laser Caries Detection Aid)は、赤色光源の照明下でのバクテリア副生産物の蛍光の強度を監視して、齲蝕の活性度を検出する。
【0011】
米国特許出願公開第2004/0202356号明細書(発明者Stookeyら)には、異なる各段階の齲蝕をより精度良く検出するための、蛍光のスペクトルの変化の数学的な処理について記載されている。スペクトル蛍光測定を用いる場合の早期発見の困難性を認めつつも、’2356号明細書(Stookeyら)には、得られたスペクトル値を強化するための方法が記載されており、蛍光画像を取得するカメラのスペクトル応答に適合したスペクトルデータの変形を実現している。
【0012】
上述の方法及び装置は齲蝕検出のための非侵襲、非イオン化の画像化方法を意図したものであるが、更なる改良の余地がある。蛍光画像化方式を用いる既存技術について認識されている欠点の1つは、画像のコントラストに関係する。QLFなどの蛍光発生技術によりもたらされる画像は、健康な領域と感染領域(患部)との間のコントラストが比較的低いことにより、評価が困難になる場合がある。’2356号明細書(Stookeyら)に示されているように、初期の齲蝕についてのスペクトル状及び強度上の変化はとてもかすかなものになる場合があり、病変のない歯の表面のでこぼこと初期齲蝕とを区別することが困難になっている。
【0013】
全体的には、蛍光技術を用いた場合、得られる画像コントラストは症状の重篤さに対応すると認識されている。これらの技術を用いた齲蝕の精密識別では、症状がすなわち初期あるいは早期の齲蝕よりも更に進んだ段階にあることが必要である場合がしばしばある。これは、齲蝕と健康な歯の構造との間の蛍光の差は、早期段階の齲蝕については非常に小さいからである。このような場合、蛍光技術を用いた検出の精度は、従来方法に対して著しい進歩を示すものとはならないかも知れない。この欠点のため、蛍光作用の利用には、初期齲蝕の正確な診断を妨げるいくつかの実用上の限界があるように見える。結果として、齲蝕症状はより重いものになるまでは検出されないまま進行し、例えば詰め物を必要とすることになるかも知れない。
【0014】
極めて早い段階での齲蝕の検出は、予防歯科学にとって特別に関心事である。さきに述べたように、従来技術は、一般に、症状が逆転し得る段階の齲蝕を検出することはできない。一般的な経験則として、初期齲蝕は歯のエナメル質を実質的には貫通していない病変である。このような齲蝕病変が歯の象牙質部分を脅かす前にその齲蝕病変が識別される場合、しばしば再石灰化を実現することができ、初期の損傷を逆転させ、詰め物が必要となることを防止することができる。しかし、更に進んだ齲蝕は、次第に治療が困難になり、たいていの場合何らかの種類の詰め物又は他の種類の治療処置が必要となる。
【0015】
非侵襲の歯科技術についてのチャンスを利用して齲蝕を未然に防ぐために、齲蝕が始まりの時点で検出されることが望ましい。多くの場合、’2356号明細書(Stookeyら)にも示されているように、このレベルの検出は、QLFなどの既存の蛍光画像化技術を用いてでは困難であることが分かっている。結果として、早期の齲蝕は検出されないまま続き、齲蝕が検出される時間までには、安価な予防法を用いた逆転の機会は失われてしまう可能性がある。
【0016】
本出願と共に譲渡された米国特許出願公開第2008/0056551号明細書には、歯の反射率画像と蛍光画像の両方を用いる方法及び装置が、齲蝕を検出するのに用いられる。この方法及び装置は、観察された後方散乱又は反射を用いて、初期齲蝕について、蛍光の効果との組合せにより、齲蝕を検出するための改良された歯科画像化技術を提供する。この技術は、反射強調を用いた蛍光画像化(FIRE:Fluorescence Imaging with Reflectance Enhancement)と呼ばれるが、画像のコントラストを、以前の方法の画像のコントラストよりも向上させるのを補助し、予防的方法で効果が得られそうな段階の初期齲蝕を検出できるようにする。有利なことに、FIRE検出法は、齲蝕感染の早期段階で、蛍光のみを測定する既存の蛍光法を用いた場合よりも、よりよい精度を得ることができる。本出願では、FIRE画像を得るためのシフトダウン(より簡易化)した方法を説明する。
【0017】
本出願と共に譲渡され審査に係属中の「齲蝕の検出のための方法(METHOD FOR DETECTION OF CARIES)」と題される国際特許出願PCT/CN2009/000078号には、照明の変化に対する感度を低下させてFIRE画像を生成するための形態学的方法が記載されている。
【0018】
蛍光画像などの歯のデジタル画像に基づいて齲蝕を定量化することにより、病変領域の重篤度についての数値情報が得られると共に、歯科医が治療計画を作成して遂行するのを支援することができる。齲蝕の長期にわたる監視は、歯科医が各病変領域の進行を経時的に観察するのに便利な道具となり得る。米国特許出願公開第2004/0240716号明細書には、齲蝕の定量化のための方法をいくつか記載されているが、それら記載された方法では、一般的には、画像の健全な歯の領域から病変領域をユーザが手作業で抽出する必要があり、またそれら方法は蛍光のみの画像に基づいている。画像から病変領域を手作業で抽出するには、2つの問題がある。第1に、抽出処理が遅く、ユーザが多くのマウスクリック操作を行ったり、画像上で病変領域の境界を示すために線を引いたりすることが必要である。第2に、手作業での抽出には、ユーザの側に相当程度の齲蝕診断経験が必要であり、かつ概して主観的である。更に、蛍光のみの画像では、初期の齲蝕は相対的に低いコントラストで表示され、手作業での病変領域の抽出処理の難しさを増大させる。したがって、記載された方法では、せいぜい妥協的な齲蝕定量化結果が得られるのみである。
【0019】
本出願と共に譲渡され審査に係属中の「齲蝕を定量化するための方法(METHOD FOR QUANTIFYING CARIES)」と題される米国特許出願第12/487729号には、齲蝕を定量化するための、改良された方法が記載されている。しかし、この方法は、歯の画像データ内の病変領域を抽出する、鍵ステップに部分的に依拠している。これを行うための既存の方法は存在するが、従来の技術は期待はずれの結果を生む場合があり、歯の画像データ内から齲蝕領域を適切に特定して抽出することはできない。
【0020】
このように、歯の画像、特に歯のFIRE画像又は蛍光画像から齲蝕病変領域を抽出するためのより進んだ方法を求める要望があることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第4515476号明細書
【特許文献2】米国特許第6231338号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0240716号明細書
【特許文献4】米国特許第4479499号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0202356号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0056551号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の1つの目的は、歯のデジタル画像内の齲蝕病変領域を抽出するための方法を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、歯のFIRE画像に基づき齲蝕病変領域を抽出するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の特徴は、齲蝕病変がFIRE画像から自動的に抽出され、FIRE画像の高いコントラストにより齲蝕の識別に高い感度と高い精度とがもたらされることである。
【0025】
本発明の利点は、歯の画像内の齲蝕病変がユーザの介入無しに自動的に抽出され定量化され、齲蝕の識別及び監視について効率的なワークフロー(作業手順)を提供できることである。
【0026】
これらの目的はあくまで説明のための一例に過ぎず、そのような目的は例えば本発明の1つ又はそれ以上の実施の形態の例と捉えてもよい。開示する発明により本質的に達成される他の望ましい目的及び利点は、当業者には明らかであろう。本発明は、添付する特許請求の範囲により画定される。
【0027】
本発明の1つの側面では、データ処理ハードウエア上で少なくとも部分的に実行される、歯の健康な領域から病変領域を抽出するための方法を提供する。この方法は、歯のデジタル画像を生成するステップと、歯の領域を識別するステップと、マーカー制御式のウォーターシェッド(分水嶺)アルゴリズム(marker-controlled watershed algorithm)を用いることにより、又は多重解像度表面再構成(multi-resolution surface reconstruction)と共にボトムハットに基づく形態学(モルフォロジー)的な方法(morphological bottom-hat based method)を用いることにより病変と疑われる領域を抽出するステップと、偽陽性のもの(false positives:すなわち、誤って抽出されたもの)を除去するステップと、を含む。
【0028】
本発明の他の側面では、データ処理ハードウエア上で少なくとも部分的に実行される、歯の健康な領域から病変領域を抽出するための方法を提供する。この方法は、歯のデジタル画像を生成するステップであって、歯の蛍光画像を取得し、歯の反射率画像(reflectance image)を取得し、蛍光画像と反射率画像の画像データを組み合わせるステップと、歯の領域を識別するステップと、病変と疑われる領域を抽出するステップと、偽陽性のものを除去するステップと、を含む。
【0029】
本発明の以上に説明した目的又は他の目的、以上に説明した利点又は他の利点は、以下に示す本発明の添付の図面により例示したようなより詳しい実施の形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を用いた5つのステップを含んだ齲蝕の定量化方法を示す図である。
【図2A】典型的な反射率画像を示す図である。
【図2B】典型的な蛍光画像を示す図である。
【図2C】典型的なFIRE画像を示す図である。
【図2D】デジタル画像データを組み合わせてFIRE画像を生成する処理を示す図である。
【図3A】デジタル画像生成ステップの実施例を示す図である。
【図3B】抽出ステップで識別された病変領域を有するFIRE画像内の歯の領域を示す図である。
【図3C】本発明に従って健康な歯の領域から病変領域を抽出するステップの実施例を示す図である。
【図3D】健康領域識別ステップの後で健康な歯の領域と病変領域とを分ける病変区分境界線と健康な歯の領域内の膨張線を有するFIRE画像を示す図である。
【図3E】バイリニア(双線形)補間を用いた強度再構成ステップの実施例を示す図である。
【図4A】歯の二値画像を示す図である。
【図4B】原点からの扇形に放射される半直線群から形成される輪郭線を示す図である。
【図4C】求められた内部マーカー及び外部マーカーを示す図である。
【図4D】マーカーにより制御されたウォーターシェッド処理結果を例示する図である。
【図4E】隣り合う歯同士の間の間線(interlines)を例示する図である。
【図5A】図4Aに似た3本の歯の二値画像を示す図である。
【図5B】図5Aの画像に対する距離変換から形成された距離画像Idistを示す図である。
【図5C】シード領域(seeded areas)内のシード点を示す図である。
【図5D】内部マーカー及び外部マーカーを示す図である。
【図5E】マーカー制御のウォーターシェッド処理及び距離変換処理の後の間線を例示する図である。
【図6A】本発明を用いた齲蝕の定量化のための方法を示す図である。
【図6B】本発明を用いた齲蝕の定量化のための他の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に示すのは、本発明のいくつかの好適な実施の形態の詳細な説明であり、図面を参照して説明している。図面において、同一の参照番号は、いくつかの図の各々における構成内の同一の要素を示している。
【0032】
本出願と共に譲渡され審査に係属中のリャンリャン・パン(Liangliang Pan)らによる2009年6月19日に出願された「齲蝕を定量化するための方法(METHOD FOR QUANTIFYING CARIES)」と題される米国特許出願第12/487729号を参照する。
【0033】
ウェイ・ワン(Wei Wang)らによる2009年6月20日に出願された「齲蝕の検出のための方法(METHOD FOR DETECTION OF CARIES)」と題される国際特許出願PCT/CN2009/000078号を参照する。
【0034】
ウォン(Wong)らによる2008年5月6日に公開された「齲蝕の検出のための方法(METHOD FOR DETECTION OF CARIES)」と題される米国特許出願公開第2008/0056551号を参照する。
【0035】
リャン(Liang)らによる2008年5月13日に公開された「齲蝕検出のための装置(APPARATUS FOR CARIES DETECTION)」と題される米国特許出願公開第2008/0063998号を参照する。
【0036】
バーンズ(Burns)らによる2008年7月17日に公開された「歯の齲蝕の早期検出のためのシステム(SYSTEM FOR EARLY DETECTION OF DENTAL CARIES )」と題される米国特許出願公開第2008/0170764号を参照する。
【0037】
ウォン(Wong)らによる2007年5月3日に公開された「齲蝕の検出のための方法及び装置(METHOD AND APPARATUS FOR DETECTION OF CARIES)」と題される米国特許出願公開第2007/0099148号を参照する。
【0038】
この発明は複数の計算ステップを含む。当業者には、これら計算ステップが画像データ処理のための命令群を備えたデータ処理ハードウエアにより実行されてもよいことが認識されるであろう。このような画像操作システムはよく知られているので、この説明は本発明に係る方法を実行するアルゴリズム及びシステムにより特化したものとする。このようなアルゴリズム及びシステムの他の側面、及び画像信号を生成又は処理するためのデータ処理ハードウエア及び/又はデータ処理ソフトウエアは、本発明の属する技術分野において知られたそのようなシステム、アルゴリズム、コンポーネント(構成要素)及び要素の中から選んでもよい。この後の詳細な説明に示されるような説明を与えられれば、ソフトウエアによる実装は、プログラミング技術に熟達した者の通常の技能の範囲内で可能である。
【0039】
そのようなソフトウエアプログラムの格納された命令群は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されていてもよい。そのような記憶媒体には、例えば、磁気ディスクや磁気テープなどの磁気記憶媒体、光ディスクや光テープ、又は機械読み取り可能なバーコードなどの光学的記憶媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)やリードオンリーメモリ(ROM)等の固体電子記憶装置、又は、コンピュータプログラムを記憶するのに用いられるその他の物理的な記憶装置、等が含まれる。そのようなソフトウエアを用いて、本発明は、コンピュータシステムやパーソナルコンピュータなどのデータ処理ハードウエア装置上で、又はデジタル信号処理チップ等の専用のデータ処理コンポーネント(構成要素)を用いる埋め込みシステム上で、利用される。本発明の方法の実行の結果得られる出力は、デジタルデータとして、画像表示のため、電子的メモリへの記憶のため、及び、必須ではないが、他の診断画像処理ユーティリティーによる利用のために供される。
【0040】
この明細書では、「強度」という単語は、光のレベルを指すものとして用いるとともに、広義にはデジタル画像内の画素の値を指すものとしても用いる。
【0041】
「第1」、「第2」などの用語は、それら用語が用いられるところでは、必ずしも順序関係又は優先順位関係を示すものではなく、例えば単に1つの要素を他の要素とより明確に区別するために用いている。
【0042】
この明細書で用いる用語「流域(盆地、たらい)(water basin)」は、画像化技術においてマーカー制御式のウォーターシェッド変換(marker-controlled watershed transformation)を用いる場合に識別され、利用される構造を記述するために用いられるこの分野の用語である。用語「集水域(catchment basin)」を同じように用いる場合もある。この明細書内で「流域」という場合は、この画像化技術の構造物を指す。
【0043】
図1を参照すると、齲蝕(カリエス)を定量化する方法は、コンピュータハードウエアなどのデータ処理ハードウエア上で少なくとも部分的に実行されるものであり、歯のデジタル画像であって歯、歯肉、及び背景に対応する画素の領域についての実際の強度値を含んでいるデジタル画像を生成するステップ110と、歯の各領域を識別し、病変領域と疑われる領域を抽出し、誤って抽出されたもの(偽陽性:false positive)を除去することにより、健康な歯の領域から病変領域を抽出(病変領域を健康な歯の領域とは区別して抽出)するステップ120と、抽出された病変領域に隣接する健康な領域を識別するステップ130と、隣接する健康な領域内の値に従って病変領域内の歯の組織についての強度値を再構成するステップ140と、再構成された強度値と病変領域からの強度値とを用いて齲蝕の状態を定量化(齲蝕の状態を表す値を求める)するステップ150と、を含んでいる。この出願を通して、「病変領域を抽出する」という句は、歯のデジタル画像内の少なくとも1つの病変領域を識別することを意味していることに留意されたい。
【0044】
図2A、図2B及び図2Cは、それぞれ、健康の歯の領域164と早期の病変領域(すなわち齲蝕領域)162とを含んだ歯の表面についての、典型的な反射率画像167,蛍光画像168及びFIRE画像169を示している。概略的には、白色光反射率画像などの反射率画像では、早期齲蝕領域の強度はその周囲の健康な領域の強度よりも高い。これに対し、青色励起光の下で得られるような蛍光画像では、齲蝕領域における蛍光の損失のため、齲蝕領域の強度はその周囲の健康な領域の強度よりも低い。FIRE画像は。蛍光画像から反射率画像の各ドーム領域及び各局所的(領域ごとの)最大値(regional maxima)を減算することにより得られる。結果として、FIRE画像は蛍光画像に見かけ上類似したものとなる。なぜなら、それら両画像では、病変領域内の強度値の方がその周囲の健康な領域の強度値よりも低いからである。しかし、FIRE画像は蛍光画像よりも高コントラストであり、これにより齲蝕の検出において潜在的により感度の高い画像となっている。蛍光画像と反射率画像についての画像データを組み合わせて生成される他の画像も、FIRE画像の代わりとして用いることができることに留意すべきである。
【0045】
図2Dは、本出願と共に譲渡され審査に継続中の「齲蝕の検出のための方法」と題される米国特許出願公開第2008/0056551号明細書(Wongら)の図5に対応している。この図は、FIRE画像169が、処理装置180を用いて蛍光画像168を反射率画像167と組み合わせることにより形成されることを示している。
【0046】
画像処理分野では、画像群から特徴を抽出するのに用いられるよく知られた方法が数多くある。このような方法には、例えば、閾値処理(thresholding)、トップハット(top-hat)、及び形態学的(モルフォロジー)グレースケール再構成技術(morphological grayscale reconstruction techniques)(Luc Vincent, “Morphological grayscale reconstruction in image analysis: applications and efficient algorithms”, IEEE Transaction on Image Processing, Vol.2, No.2, pp.176-201, 1993参照)などがあるが、これらに限定されるわけではない。しかし、すべての技術が歯の画像から病変領域を区分するのに適しているわけではない。歯の画像は、自動的な病変領域の抽出を行うにあたっての課題となる多くの特徴を有している。例えば、歯の画像は平坦な背景を持たなかったり(健康な歯の領域が目標の齲蝕の背景である)、齲蝕部位は固定的なサイズや形状を持たなかったり、歯の表面の輪郭や湾曲により照明が不均一になり、その結果歯の画像の中で強度に変化が生じたりするなどである。本発明は、歯の画像の自動処理に特有の様々な課題に対処する複数の異なる処理技術の組合せを用いることにより、それらの難題を克服する。
【0047】
以下では、齲蝕を定量化するための複数のステップを、図3Aから図5Eを参照して説明する。本発明に従った齲蝕病変の抽出のための方法は、齲蝕を定量化するためのステップ群の中で重要なものであり、これについても説明する。
【0048】
<歯のデジタル画像を生成するステップ110>
図3Aは、歯のデジタル画像を生成するステップ110の1つの例を示しており、蛍光画像を取得するステップ、反射率画像を取得するステップ、及び蛍光画像と反射率画像の画像データ同士を組み合わせることによりFIRE画像などの画像を生成するステップを含んでいる。蛍光画像及び反射率画像がどのようにして得られるかについての詳細は、リャン(Liang)らによる2008年5月13日に公開された「齲蝕検出のための装置」と題される米国特許出願公開第2008/0063998号に説明されている。この実施の形態では、歯のデジタル画像はFIRE画像169であり、これは図2Dに示したように処理装置180を用いて蛍光画像168を反射率画像167と組み合わせることにより形成されたものである。
【0049】
FIRE画像を生成する処理の詳細は、本出願と共に譲渡され審査に継続中の「齲蝕の検出のための方法(METHOD FOR DETECTION OF CARIES)」と題される国際特許出願PCT/CN2009/000078号に開示されている。FIRE画像を生成するための主要なステップは以下の通りである。
【0050】
1.反射率画像を取得し、次いでその反射率画像を、強度値Iwgreenを持つグレー反射率画像へと変換する。グレー反射率画像は、例えば反射率画像のグリーン(緑色)チャンネルの画像である。このグレー反射率画像は、マスクとして扱われ、Imask=Iwgreenという強度値を有する。1つの例では、反射率画像は白色光反射率画像である。白色光は1つ又は複数の白色LEDから発せられたものでもよい。
【0051】
2.以下の式に従って、強度値Imarkerを持つマーカーを生成する。

ここで、「hdome」は、グレー反射率画像内のドームの高さを表すものであり、固定値であり、得られた複数のグレー反射率歯画像の強度値に基づいて経験的に選択された値である。1つの発明的な例では、hdomeは50である。
【0052】
3.Imask及びImarkerを入力とする(上掲のLuc Vincentの論文を参照)形態学的グレースケール再構成により、強度値Ireconstructedを持つ再構成画像を生成する。
【0053】
4.グレー反射率画像の各ドーム領域及び各局所的極大値の画像を生成する。この画像は、齲蝕領域と疑われる領域に対応しており、以下の強度値を有する。

【0054】
5.以下の強度値を有するFIRE画像を生成する。

ここで、IFIRE及びIFluoは、それぞれ、生成されたFIRE画像及び取得された蛍光画像のグリーンチャンネルの強度値である。生成されたFIRE画像は、IFIREを蛍光画像のレッド(赤)チャンネル及びブルー(青)チャンネルと組み合わせることで、カラー画像として表示することができる。1つの例では、蛍光画像は青色励起光の下で得られたものである。青色光は、1つ又は複数の青色LEDから発せられるものでよい。FIRE画像は、後続の画像処理ステップ群で用いられるデジタル画像である。
【0055】
歯のデジタル画像を生成するステップ110の他の例は、蛍光画像を取得するステップを含む。この蛍光画像が、後続の画像処理ステップ群で用いられるデジタル画像である。
【0056】
<健康な歯の領域から病変領域を抽出するステップ120>
概略的には、歯のデジタル画像は、1)歯肉、2)歯、3)その他背景の、3つの領域グループに分類することができる。である。齲蝕検出は歯領域165の内側でのみ実行する必要がある。
【0057】
図3Bを参照すると、歯の領域165の内側には、齲蝕領域162,その周囲の健康な歯の領域164,及びそれら2つの領域を分ける区分境界線163がある。歯の領域165,齲蝕領域162,その周囲の健康な歯の領域164,及び区分境界線163を識別する方法を以下に説明する。
【0058】
図3Cは、本発明に従って歯のデジタル画像内の歯領域165から病変領域162を抽出するためのステップ120の一例を示す。ステップ120はユーザからの入力を必要とせず自動的に実行される。特に、ステップ120は、歯の領域165を識別するサブステップ、病変と疑われる1つ又は複数の領域を抽出するサブステップ、及び偽陽性のもの(誤って抽出されたもの)を除去するサブステップを含む。これらのサブステップは。歯の画像に特有の詳細な処理を含んでおり、これについて以下で説明する。
【0059】
カラー画像のあるチャンネルについて画像処理の作業が行われるので、便宜上、以下に示す項Iwred、Iwgreen、Iwblue、Ibred、Ibgreeen、Ibblue、Ifred、Ifgreeen、及びIfblueは、それぞれ、反射率画像、蛍光画像、及びFIRE画像のレッド、グリーン及びブルーの各チャンネルの画素の強度値を表すために用いられる。照明レベルの影響を除去するために、反射率画像及び蛍光画像の両方の強度値は0から150までの範囲に調整される。ここで、0と150はそれぞれ強度値の最小値及び最大値に対応する。
【0060】
上述のように、蛍光画像と同様、FIRE画像は、通常の/健康な歯の領域の中のグリーンの強度値が、齲蝕領域及びその他の背景領域よりも高くなっている。そのため、通常の/健康な歯の領域と齲蝕領域の両方を含んだ歯の領域を歯肉及びその他の背景から分離するために、蛍光画像又はFIRE画像に対して適応的閾値技術(閾値を適応的に変化させる技術)が好適に利用される。
【0061】
<歯の領域を識別するサブステップ165>
本発明の1つの実施形態では、歯の領域165は、デジタル歯画像から以下のようにして識別される。この例及び明細書中の他の例では、蛍光画像及び反射率画像の両方のグレースケール版が用いられ、それらグレースケール画像は、各カラー画像の1つのチャンネル、例えばグリーンチャンネルから、又は画像処理分野でよく知られた方法を用いて3つのチャンネルを混合したものから、生成される。説明の便宜上、以下に示す実施形態では、蛍光画像及び反射率画像のグリーンチャンネル、Ibgreeen及びIwgreenをそれぞれ用いて説明する。
【0062】
閾値画像が、Ibgreeen及びIwgreenから、あるあらかじめ定められた閾値c1及びc2、例えば10及び30、よりもそれぞれ高い強度値を選択することにより、生成される。第2に、それら2つの閾値画像の交わり(共通部分)の領域が、暫定的な歯領域画像Iroi0と見なされる。第3に、Iroi0を生成するのに用いた閾値,例えば30、よりも高い閾値c3を用いて画像Ibgreenを閾値処理することにより、基準二値画像Irefroiが求められる。そして最後に、Iroi0内にあり、且つIrefroi内のオブジェクト(物体)に連結する領域を選択することにより、精密化された歯領域165の画像、すなわちIroiが生成される。以上の4つのステップは、単にFIRE画像又は蛍光画像を閾値処理する場合と比べて、歯領域165の選択の精度を向上させる。精密化された歯領域165の画像は、この後、病変と疑われる領域の抽出及び偽陽性のものの除去のサブステップ群で用いられる。
【0063】
別の例では、閾値処理技術を蛍光画像又はFIRE画像に適用し、歯領域165を求める。この例は、より単純且つ高速な処理のために役立つ。
【0064】
<病変と疑われる領域を抽出するサブステップ>
FIRE画像(Ifgreen)内には、齲蝕についての明確な形態学(モルフォロジー)上の特徴がある。すなわち、齲蝕162の領域の強度は、その周囲の健康な歯の領域164の強度よりも低い。本発明では、この特徴を利用して、数学的な形態学(モルフォロジー)理論に基づいて、齲蝕と疑われる領域を検出し、区分する。
【0065】
1つの例では、マーカー制御方式のウォーターシェッド法が、齲蝕と疑われる領域を検出して区分するために適用される。この方法の鍵は、目標のオブジェクトについて、内部マーカーと外部マーカーを求めることである。本発明によれば、内部マーカーは、形態学的グレースケール再構成技術を用いて求められる。同じ技術は、上述のようにFIRE画像を生成するのにも用いられている。
【0066】
形態学的グレースケール再構成法を用いて内部マーカーを求めるために、局所的流域(局所的盆地)(regional basin)Ihbasinがまず検出される。それら局所的流域は、目標の齲蝕の領域に対応する。なぜなら、それらはその周囲の健康な領域よりも低い強度を持つからである。次に、固定値例えば50を用いてIhbasinを閾値処理することにより、内部マーカーが求められる。固定値は、検出感度の要求条件に従って調整してもよいことに留意されたい。内部マーカーは、領域内のIhbasinの強度が所与の閾値よりも高い領域である。
【0067】
外部マーカーを得るために、まず内部マーカー群から二値画像が形成される。ここで、その二値画像の画素値は、内部マーカーの内部の画素については1であり、そうでなければ0である。次に、距離変換(DT:distance transformation)、すなわち画像の各画素を、目標のオブジェクトに対する最小の距離へと写像する処理、がその二値画像に対して施され、これによりDT画像が生成される(Rosenfeld, A. and Pfaltz, J. による“Sequential operations in digital picture processing”, J. ACM. 13, 1966,及び Ricardo Fabbri, Luciano Da F. Costa, Julio C. Torelli及び Odemir M. Brunoによる“2D Euclidean distance transform algorithms: a comparative survey”, ACM computing surveys 40, 2008参照)。DT画像の局所的極大値を持つ画素群から構成され、内部マーカー同士の間に位置する稜線が、外部マーカーとみなされる。
【0068】
次に、ソーベル(Sobel)演算子を用いてIfgreenの勾配画像が計算される。ソーベル演算子は、画像処理/パターン認識分野の当業者によく知られた画像処理関数であり、その説明は例えば、"Pattern Classification and Scene Analysis, Duda, R. and Hart, P., John Wiley and Sons, 1973, pp.271-272" に示されている。
【0069】
内部マーカー及び外部マーカーと、識別又は算出された勾配画像とを用いて、マーカー制御式のウォーターシェッド変換が適用され、目標の齲蝕の領域162の輪郭が直接的に生成される。マーカー制御式のウォーターシェッド変換の説明は、例えば、Luc Vincentによる“Morphological grayscale reconstruction in image analysis: applications and efficient algorithms”, IEEE Transaction on Image Processing, Vol.2, pp.176-201, 1993に示されている。
【0070】
他の例では、形態学的ボトムハット(morphological bottom-hat)演算子に基づく方法を、多重解像度表面再構成法と共に用いて、齲蝕と疑われる領域を検出して区分する。本発明のこの例では、強度値Ibohatを有する原(オリジナル)ボトムハット画像を生成するために、まずボトムハット演算がIfgreenに適用される。次に、多重解像度ストラテジー(手順)が、異なる複数のサイズの齲蝕を検出できるように適合される。このストラテジーに従い、原ボトムハット画像は、2xダウンサンプリング画像や4xダウンサンプリング画像などのような解像度低減画像すなわちダウンサンプリング画像を形成するために、ダウンサンプリング(低解像度化)される。固定サイズの2次元形状の構造要素、例えば10画素の半径の円板、が与えられた場合、形態学的ボトムハット処理が、その画像に対して異なる複数の解像度(すなわち、原ボトムハット画像、2xダウンサンプリングボトムハット画像、及び4xダウンサンプリングボトムハット画像などに)で適用される。2次元構造要素は他の形状を採ってもよいことに留意されたい。構造要素のサイズ、例えば円板の半径は、画像の解像度に応じて,又は目標のオブジェクトのサイズに応じて、調整可能としてもよい。得られた多重解像度(異なる複数の解像度)の複数のボトムハット画像の各々について、それぞれ対応する歯の領域の内部の強度値の統計量に従って、閾値Ithresが以下のように計算される。

ここで、wは経験的に求められた重み付けパラメータであり、Imean及びIstdは、それぞれ、強度値の平均及び標準偏差である。多重解像度ボトムハット画像の各々に対して閾値演算を適用した後、二値画像が得られる。その二値画像の内部では、非零値を持つ領域が、それぞれ対応する解像度の画像内で齲蝕と疑われる初期領域(齲蝕と疑われる領域の初期値)である。それら二値画像の各々を元の解像度へと戻すように補間して補間画像を作成した後、すべての補間画像の結び(和集合)が、病変と疑われる初期領域(最初の被疑領域)を示す。
【0071】
無限の数の解像度を用いることは実行可能ではなく、また構造要素のサイズ及び形状は目標の齲蝕領域162のサイズ及び形状と同じではないので、齲蝕と疑われる初期領域は、通常は、最適の結果ではない。
【0072】
しかし、小さい値の重み付けパラメータwを用いることにより、目標の齲蝕領域は、齲蝕と疑われる初期領域の内側に高い信頼度で含まれ得る。1つの例では、重み付けパラメータwは、原画像、2xダウンサンプリング画像、及び4xダウンサンプリング画像に対し、それぞれ1.0,0.5,及び0の値を持つ。この重み付けパラメータwは、実際の要求条件に従って適切に調整できるようにしてもよい。
【0073】
齲蝕と疑われる初期領域の内側の通常の強度値(すなわち、齲蝕が生じる前の領域の強度値)を、齲蝕と疑われる初期領域の外側の強度値に従って、更に推定してもよい。本発明によれば、強度の推定は表面再構成処理であり、Ireconstructedを生成する。ここで、強度はトポロジー的な表面として取り扱われる。再構成された画像Ireconstructedから原画像Ifgreenを減算することで、差分画像Idiffが得られる。齲蝕領域の内側の強度値は、通常の/健康な歯の領域の強度値よりも低く、通常すなわち健康な歯の領域の内側の各部分同士の間の変化は、齲蝕領域と通常/健康な歯の領域との間の変化ほど大きくはないので、強度値に大きい変化を持つ領域(例えば、>7。ただしこれは要求される検出感度に従って調整可能である)は、齲蝕と疑われる精密化領域(精密化された被疑領域)と捉えられる。
【0074】
形態学的グレースケール再構成技術は、グレースケール画像内のある高さの局所的(領域ごとの)極大値ドーム又はある深さの局所的極小値流域(盆地部:basin)を検出するのにも用いることができるが、歯の画像内の齲蝕病変を抽出するのには、上述の実施形態ほどは適していない。これは、齲蝕領域が異なれば、周囲の領域に対するコントラスト特性も異なるからである。このように、異なる画像や異なる齲蝕感染に適合するためには、高さ又は深さの局所的な極大値が異なっている必要がある。所詮、高さ及び深さは依然として大域的なパラメータである。また、形態学的グレースケール再構成は、本発明の形態学的ボトムハット法よりも、実装が困難であり、かつ遅い。
【0075】
従来のトップ/ボトムハット法は、局所的な極大値ドーム又は極小値流域の領域を検出するのに用いるためのものとも考えられるかも知れないが、この方法は、構造要素のサイズを求めるのが難しいため、齲蝕病変を抽出するのには適していない。これは、本発明の形態学的ボトムハット法とは異なっている。本発明の形態学的ボトムハット法は、多重解像度表面再構成と共に用いられることで、構造要素のサイズを求めるという課題を成功裏に克服する。
【0076】
<偽陽性(誤抽出されたもの)を除去するサブステップ>
実験結果に基づき、齲蝕と疑われる領域として誤って抽出されるもののほとんどは、次の2つのカテゴリにグループ分けすることができる。(1)周囲の領域よりもコントラストが低い領域(例えばコントラストが7より低いもの。ただしこれは実際の条件に従って調整することができる)と、(2)隣り合う歯の隣接する面同士の間の領域(以下では隣接歯間領域と呼ぶ)とである。
【0077】
本発明では、低コントラストの偽陽性のものは、疑われる領域(被疑領域)とその周囲の領域との間の強度コントラストを計算することにより除去される。
【0078】
隣接歯間の偽陽性のものは、隣接歯間の領域の内側に位置する、又は隣接歯間の領域に連結する、齲蝕と疑われる領域の形態学的特徴に従って除去される。これを行うために、隣接歯間領域がまず識別される。
【0079】
歯の画像から隣接歯間領域の位置がどのように特定されるかの詳細な説明は以下の通りである。
【0080】
よく分離されている隣接した複数の歯については、隣接歯間領域は背景の一部である空間を含んでいる。隣接する歯同士の明確な境界を有するこの第1の種類の隣接歯間領域の位置は以下のようにして特定される。まず、歯の領域の二値画像に対して距離変換が適用され、二値画像内で識別された歯の領域の境界から測定された距離が最も大きい画素(最大距離を持つ画素)の位置が特定される。ここで、「最大距離」は多くの公知のアルゴリズムのいずれを用いても容易に求めることができることに留意されたい。ここで説明する例では、もっとも好適には、歯の領域内にある、その歯の領域の境界から最大距離の画素が選択される。しかし、最大距離に実質的に近い距離を持つ画素(例えば、好適には最大距離の90%以内、好適さが少し落ちる場合は最大距離の80%以内)なら、どのような画素でも同様に使用してもよい。このようにしても満足のいく結果が得られることは経験的に求められている。したがって、この出願の全体にわたって、「最大距離の画素」は、いま説明したような態様で「最大距離に実質的に近い距離を持つ画素」と解釈できる。第2に、識別された歯の領域のうち、位置特定された画素に連結したものが、1つのオブジェクトとして割り当てられ、識別された他の各々の歯の領域はそれぞれ他のオブジェクトとして割り当てられる。そして第3に、背景内の画素のうち、2つのオブジェクトの各々に対して実質的に同じ距離の画素が、隣接歯間領域として画定される。本出願にて「同じ距離」とは、2つの画素について、各々から同じ特徴までの距離同士の差が、ある少ないピクセル数を超えないこと、好適には1画素から5画素を超えないこと、好適さが少し落ちる場合には約10画素を超えないことを意味する。この距離の許容範囲は、満足のいく結果が得られるように経験的に求められたものである。したがって、この出願の全体にわたって、「同じ距離」という用語は、今説明したような態様で複数の画素について「実質的に同じ距離」であると解釈してよい。
【0081】
互いに非常に近いか、又は隣接している隣り合った複数の歯については、隣接歯間領域はそれら隣り合った歯同士の明確な境界を含んでいない。歯の画像内のこの第2の種類の隣接歯間領域を識別するには、異なった種類の画像処理方法を採る必要がある。第1の発明的な例では、図4Aから図4Eを参照すると、第2の種類の隣接歯間領域の位置は、最大距離の画素に連結した領域内でマーカー制御式のウォーターシェッド変換と距離変換とを用いた4つのステップにより特定される。
【0082】
図4Aは、目標の歯165aとその隣の2つの歯165b及び165bの二値画像を示している。明るい領域が歯を表し、暗い領域が歯の背景を表している。明るい領域と暗い領域とは、境界線により分離されている。目標の歯165aの中心に近いいかなる点を原点に選んでもよいが、ここでは原点200が歯の境界線に対して極大の距離を持つ画素として規定されている。原点は、実用上の要件に従って他の方法を用いて規定してもよい。例えば、画像の中心に位置する歯が目標の歯として選択され、画像の中心に最も近い局所的な最大値の点が原点として選択されるようにしてもよい。
【0083】
図4Bに示した第1ステップでは、扇形に広がる半直線群210が、原点200から、0°から360°までのすべての方向に延びている。したがって、輪郭線202は、各半直線210が明るい領域と暗い領域との境界線に最初に出会う各点から形成又は画定される。
【0084】
第2のステップでは、内部マーカー及び外部マーカーが以下のようにして識別又は求められる。図4Cに示すように、内部マーカーは原点200の周りのある円形領域222、及びグレー領域220a,220b,220c,220dから求められる。本発明の1つの例では。円形領域222の半径は、極大距離、すなわち原点から歯の境界までの距離の、3/4倍として選択される。グレー領域220a,220b,220c,220dは、図4Aに示した明るい領域と暗い領域との間の境界により画定された歯の領域165a,165b,165cから輪郭線202により囲まれる領域を減算することにより求められる。外側の明るい領域224は、図4Aの暗い領域に対応しているが、これは外部マーカーと捉えられる。
【0085】
第3のステップでは、マーカー制御式のウォーターシェッド変換が、上述のようにして求められた内部マーカー及び外部マーカーを有するグレースケールFIRE画像の勾配画像に対して適用される。1つの例では、グレースケールFIRE画像がFIRE画像のグリーンチャンネル、すなわちIfgreenから生成される。別の例では、画像処理分野でよく知られた方法を用いて3つのチャンネルを混合することによりFIRE画像を生成してもよい。この変換により、結果として、図4Cの円形領域222に対応する内部マーカーに連結した流域(盆地部)170と、図4Cのグレー領域220a,220b,220c,220dに対応する内部マーカーに連結した流域172a,172b,172c,172dとがそれぞれ得られる。この変換により、分水嶺(ウォーターシェッド)ライン173a,173bも得られる。分水嶺ライン173aは、流域172aと172bとを分かち、分水嶺ライン173bは流域172cと172dとを分かつ。さきに述べたように、「流域」という用語は、集水域とも呼ばれ、画像化技術におけるマーカー制御式のウォーターシェッド変換の分野の用語であり、当業者にとって公知のものである。
【0086】
第4のステップでは、流域の2つのグループに対する距離が同じ画素群が、第2の種類の隣接歯間領域として捉えられる。図4Eは、識別された隣接歯間領域の位置を示す間線176のうちのいくつかの部分を示している。間線176は、マーカー制御式のウォーターシェッド変換と距離変換とにより得られる。領域174aは流域170から得られる。領域174bは、流域172aと172bの組合せから得られる。領域174cは、流域172cと172dの組合せから得られる。
【0087】
第2の発明的な例では、図5Aから図5Eを参照すると、明確な境界を持たない第2の種類の隣接歯間領域の位置は、最大距離の画素に連結した領域において、マーカー制御式のウォーターシェッド変換と距離変換とを異なった形で適用した4つのステップにより特定される。この第2の発明的な例は、第1の発明的な例と第3及び第4ステップは共通しているが、第1及び第2ステップは異なっている。
【0088】
図4Aと同様、図5Aは、目標の歯165aと、その隣の2つの歯165b及び165cとの二値画像を示している。明るい領域は歯を表し、暗い領域は歯の背景を表している。
【0089】
図5Bに示すように、第1のステップでは、図5Aの画像に対して距離変換が適用され、その結果として、距離画像Idistが生成される。この距離画像の画素の値は、当該画素の歯の背景までの最も近い距離を表す。図5Cと図5Dに示される第2のステップでは、内部マーカー230a,230b,230cと、外部マーカー232とが、以下のようにして求められる。
【0090】
Idistをマスクとして、Idist−hdomeをマーカーとして用い、形態学的グレースケール再構成を用いることにより、再構成画像Idreconを得ることができる。そして、以下の式に従ってIseedsを求めることができる。

ここで、Tdrecon及びTdistはそれぞれ閾値(例えばTdrecon=5,Tdist=10)である。記号(Idrecon > Tdrecon)は、Idreconの画素値がTdreconよりも大きい領域を指し、記号(Idist > Tdist)は、Idistの画素値がTdistよりも大きい領域を指す。記号∩は、交わり(積集合)演算子であり、集合理論の分野でなじみのあるものである。
【0091】
Iseedsから得られるシード領域230a,230b,230cは、図5Cに示される。各シード領域内では、図5Bの距離画像Idistに従い、シード点が、極大距離を持つ画素として識別される。例えば、シード点234a,234b,及び234cは、それぞれ、シード領域230a,230b,230c内で極大距離を持つ点である。シード点を原点とし、そのシード点の距離を半径として、各シード領域に対して円形領域が、当該シード点に対応する内部マーカーとして生成される。より詳しくは、円形の内部マーカー236a,236b,及び236cが、図5Dに示すように、それぞれシード点234a,234b,及び234cから生成される。歯の背景領域は、外部マーカー232a,232bとして用いられる。
【0092】
第1の発明的な例(図4Aから図4Eを参照)の第3のステップと同様、この例の第3のステップでは、図5Eに示すように、上述のようにして求められた内部マーカー236a,236b,及び236c及び外部マーカー232a,232bを持つグレースケールFIRE画像の勾配画像に対して、マーカー制御式のウォーターシェッド変換が適用され、各内部マーカー236a,236b,及び236cについて流域(盆地部)領域238a,238b,238cがそれぞれ求められる。最後に、第4のステップでは、第1の発明的な例の第4のステップと同様、間線240a,240bの位置が、2つの隣り合う流域領域から同じ距離を持つ画素として特定される。
【0093】
隣接歯間領域の位置が求められた後、隣接歯間領域に連結する、齲蝕と疑われる領域が特定される。いくつかの本当の齲蝕がこれらの領域内に位置しているので、隣接歯間領域に連結するすべての齲蝕と疑われる領域が除去されるべきとは必ずしもいえない。本当の齲蝕はしばしば、グレースケール画像内で明るい画素により囲まれたそれよりも暗い画素の領域である「グレースケールの穴(grayscale hole)」に見える。したがって、この「グレースケールの穴」という特徴が、齲蝕と疑われる領域のうちのどれが本当の齲蝕であり確保すべきであるかの検査のために用いられ、隣接歯間領域に連結する、齲蝕と疑われる領域のうちの他のものは、偽陽性(誤って抽出されたもの)として除去される。
【0094】
偽陽性が除去された後、残っている齲蝕と疑われる領域が、抽出された齲蝕領域162である。齲蝕の検診(スクリーニング)又は診断を補助するために、これらの領域を、歯のFIRE画像、蛍光画像、及び反射率画像に存在しない偽色(false colors)により縁取り又は強調してもよい。また、それらは、以下に示すステップ群において、齲蝕の定量化のために用いてもよい。
【0095】
<抽出された病変領域に隣接する健康な歯の領域を見つけるステップ130>
図3Dに戻ると、抽出された病変領域に隣接する健康な歯の領域を見つけるステップ130が、齲蝕と疑われる領域162を、画像処理分野でよく知られた演算である形態学的(モルフォロジー)膨張により外側に向かって膨張線166まで拡張することにより実行される。このステップは、ユーザの入力を必要とせずに、自動的に実行される。このステップとステップ140と150とは、好適には、以下に説明する理由から、蛍光画像に対して実行される。拡張された齲蝕と疑われる領域の周囲の領域は、通常/健康な領域と見なされ、膨張線166を構成する画素群の値は、周囲の通常/健康な領域の強度値と見なされる。形態学的膨張ステップのアルゴリズムでの実装は、本願と共に譲渡された米国特許出願公開第2008/0170764号明細書の図3に示されたものと同様である。このステップによれば、検出された齲蝕と疑われる領域及び通常/健康な領域内の顕著でない強度変化に検出誤差が存在する可能性のある場合でも、誤差が低減される。
【0096】
<病変領域内の歯の組織の強度値を再構成するステップ140>
抽出された病変の重篤さを評価するため、及び識別された病変の経時的な進行を監視するためには、齲蝕と疑われる領域の、齲蝕が生じる前における通常の強度を推定することが有益である。これは、ステップ130で見出された周囲の通常/健康な領域の強度値に基づく様々な方法により実行することができる。
【0097】
1つの例では、周囲の健康な領域が識別された後、病変領域内の再構成された歯の強度値が、以下に示すように、隣接する健康な領域の値に従ったバイリニア(双線形)補間技術を用いて求められる。
【0098】
図3Eは、図3Dに示された注目領域161の分解図である。病変領域R162内の各画素Pについて、健康な領域内の膨張線166上において、当該画素Pの左、右、上、下に4つの画素が存在し、それぞれP,P,P,Pと名付ける。Pでの再構成強度値Iの推定は、バイリニア補間を用いて計算することができ、これは以下の式で示される。

【0099】
バイリニア補間は、このようにして、齲蝕の領域162内のすべてのピクセルについてそれぞれ実行され、これにより領域全体の通常の強度値が再構成される。
【0100】
別の例では、周囲の健康な領域が識別された後、病変領域内の歯の組織の再構成強度値が、二次元のスプライン・フィッティングやベジェ・フィッティングなどの表面フィッティング技術を用いて求められる。
【0101】
病変領域内の歯の組織の強度値を再構成するための更に別の例は、ラプラス方程式を解くことにより、拡張された齲蝕と疑われる領域の境界上の画素の値から内側に向かってなめらかに補間することである。この例は、よく知られた画像処理技術(よく知られたMatlabソフトウエアの画像処理ツールボックス内の関数"roifill"に実装されているものなど)を利用したものであり、結果として更に精度のよい推定を行うことができる。
【0102】
<齲蝕の状態を定量化するステップ150>
上述のように、齲蝕領域162についての定量情報は、抽出された病変の重篤さを評価したり、及び識別された病変の経時的な進行を監視したりするのに有益である。歯の画像内の齲蝕の状態は、齲蝕領域のサイズ(例えば面積)を計算したり、齲蝕領域の蛍光損失率(fluorescence loss ratio)を計算したりするなどといった多くの方法で定量化することができる。
【0103】
1つの例では、病変領域は、齲蝕の領域162内の実際の画素数を計数し、次にそれをmmのような実際の空間的な次元へと変換することにより計算される。
【0104】
他の例では、蛍光損失が、齲蝕の状態を測定するのに用いられる。歯の構造内での蛍光損失は、当該構造内の歯質脱灰(demineralization)の程度の直接的に示すものであることが証明されている。この量は、歯の蛍光画像内の強度値から直接計算できる。蛍光画像において、病変領域内の各画素での蛍光損失率ΔFは次の式を用いて計算される。

ここで、Iは、ステップ140からの再構成強度値であり、Iは、蛍光画像IFluoのグリーンチャンネルの実際に測定された強度値である。齲蝕が生じているところでは、ΔF>0である。
【0105】
病変領域の全蛍光損失(whole fluorescence loss)Lは、病変領域内でのΔFの総和である。すなわち、

である。
【0106】
図6Aは、本発明のステップ120を用いた齲蝕の定量化のための他の方法を示す。この方法は、FIRE画像、又は、歯の蛍光画像と反射率画像とを本発明に従って組み合わせることで求められる他の画像、を生成するステップを含む。図6Aは図1に類似している。しかし、図6Aでは、歯のデジタル画像が、FIRE画像、又は、蛍光画像と反射率画像とから生成された他の画像である。特に、反射率画像は白色光又は単色光を用いて生成されるが、蛍光画像は紫外−青範囲の励起光の下で生成される。抽出された病変領域に隣接する健康な領域を識別するステップ130では、破線の矢印160aで示すように、蛍光画像を入力としてFIRE画像の代わりに用いてもよい。病変領域内の強度値を再構成するステップ140、及び齲蝕領域の状態を定量化するステップ150では、矢印160で示すように、蛍光画像は入力としても用いられる。
【0107】
図6Bは,本発明のステップ120を用いる齲蝕の定量化のための方法の更に別の例を示す。それは図6Aに似ているが、ステップ120が異なっており,より詳しくはステップ120は特に歯の画像から歯の領域165を識別するステップ、齲蝕と疑われる領域を抽出するステップ、及び偽陽性(誤って抽出されたもの)を除去するステップを含んでいる。破線の矢印160aは、蛍光画像がステップ130で使用されることを示しており、矢印160は、蛍光画像がステップ140及び150で使用されることを示している。
【0108】
本発明のステップ120を用いる齲蝕の定量化のための方法の別の方法では、再び図1を参照すると、ステップ110で生成されたデジタル画像は歯の蛍光画像である。既に説明したように、蛍光画像はFIREが象と似た特性を有しているので、齲蝕領域抽出ステップ120で用いられる方法は蛍光画像に対してもすべて実行可能である。したがって、この別の例では、蛍光画像がステップ110から150までのすべてのステップで用いられる。
【0109】
本発明を、現在の好適な実施の形態を特に参照しながら、詳細に説明してきた。しかし、本発明の精神と範囲の中で様々な変形や改良が可能であることが理解されるであろう。したがって、いま開示した実施の形態は、すべての点で、あくまで例示的なものであって限定的なものでないと考えられる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に示されており、これと等価な意味及び範囲の中に含まれるすべての変更は、その中に含まれるものである。
【符号の説明】
【0110】
110 歯のデジタル画像を生成するステップ、
120 健康な歯の領域から病変領域を抽出するステップ、
130 抽出された病変領域に隣接する健康な領域を識別するステップ、
140 病変領域内の歯の組織の強度値を再構成するステップ、
150 齲蝕の状態を計算するステップ、
160,160a 矢印、
161 注目領域、
162 病変領域(すなわち齲蝕の領域)
163 区分境界線、
164 健康な歯の領域、
165 歯の領域、
165a,165b,165c 歯、
166 膨張線、
167 反射率画像、
168 蛍光画像、
169 FIRE画像、
170 円形の内部マーカー領域222に対応する流域、
172a,172b,172c,172d 流域、
173a,173b 分水嶺ライン、
174a 流域170に対応する領域、
174b 流域172a及び172bの組み合わせに対応する領域、
174c 流域172c及び172dの組み合わせに対応する領域、
176 歯同士の間の間線、
180 処理装置、
200 原点、
202 輪郭線、
210 半直線、
220a,220b,220c,220d 内部マーカーに対応するグレー領域、
222 目標の歯の上の、内部マーカーに対応する円形領域、
224 外部マーカーに対応する明るい領域、
230a,230b,230c シード領域、
232a,232b 外部マーカー、
234a,234b,234c シード点、
236a,236b,236c 内部マーカー、
238a,238b,238c 流域領域、
240a,240b 間線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯のデジタル画像から、1又はそれ以上の病変領域を歯の健康な領域から抽出するための方法であって、
歯のデジタル画像にアクセスするステップと、
歯のデジタル画像を処理することにより1又はそれ以上の歯領域を識別するステップと、
マーカー制御式のウォーターシェッドアルゴリズムを適用することにより、又は形態学的ボトムハットに基づく方法を多重解像度表面再構成法とともに適用することにより、歯のデジタル画像から、1又はそれ以上の病変と疑われる領域を抽出するステップと、
抽出された病変と疑われる領域群の中から、1又はそれ以上の偽陽性のものを識別して除去するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、歯のデジタル画像にアクセスするステップでは、歯の蛍光画像を取得する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、歯のデジタル画像にアクセスするステップは、
歯の蛍光画像を取得するステップと、
歯の反射率画像を取得ステップと、
前記蛍光画像の画像データと前記反射率画像の画像データとを組み合わせるステップと、
を含む方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、1又はそれ以上の歯領域を識別するステップは、
歯のグレースケール蛍光画像から、あらかじめ定められた第1の閾値c1より高い強度データ値を選択することにより、第1閾値画像を生成するステップと、
歯のグレースケール反射率画像から、あらかじめ定められた第2の閾値c2より高い強度データ値を選択することにより、第2閾値画像を生成するステップと、
前記第1の閾値画像と前記第2の閾値画像との共通部分から暫定的な歯領域画像を生成するステップと、
前記グレースケール蛍光画像から、閾値c1を上回るあらかじめ定められた第3の閾値c3より高い強度データ値を選択することにより、基準二値画像を生成するステップと、
前記暫定的な歯領域画像内にあり、かつ前記基準二値画像内のオブジェクトに連結している領域から、精密化された歯領域画像を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記グレースケール蛍光画像及び前記グレースケール反射率画像のうちの一方又は両方が、前記蛍光画像及び前記反射率画像のグリーンチャンネルからそれぞれ取得される、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、閾値処理を用いて1つ又はそれ以上の歯領域を識別するステップを更に含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、1又はそれ以上の偽陽性のものを識別して除去するステップは、1又はそれ以上の隣接歯間領域の位置を特定するステップと、それら1又はそれ以上の隣接歯間の偽陽性のものを除去するステップと、を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、1又はそれ以上の病変と疑われる領域を抽出するステップは、
前記歯のデジタル画像から1又はそれ以上の内部マーカーを識別するステップと、
前記歯のデジタル画像から1又はそれ以上の外部マーカーを識別するステップと、
前記歯のデジタル画像から勾配画像を形成するステップと、
前記勾配画像に対してマーカー制御式のウォーターシェッド変換を適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、形態学的ボトムハットに基づく方法を多重解像度表面再構成法とともに適用するステップは、
前記歯のデジタル画像に対して第1の解像度でボトムハット演算を適用することにより原ボトムハット画像を生成するステップと、
前記原ボトムハット画像を低解像度化することにより、1又はそれ以上の低解像度化ボトムハット画像を生成するステップであって、前記各低解像度化ボトムハット画像は前記第1の解像度よりも低減された解像度のものであるところのステップと、
前記原ボトムハット画像及び前記1又はそれ以上の低解像度化ボトムハット画像に対して形態学的ボトムハット法を適用することにより、複数の形態学的ボトムハット処理済み画像を形成するステップと、
前記複数の形態学的ボトムハット処理済み画像の各々に対して閾値処理を適用することにより、複数の二値ボトムハット処理済み画像を形成するステップと、
複数の二値ボトムハット処理済み画像の各々を補間して前記第1の解像度にすることにより、複数の補間画像を生成するステップと、
前記複数の補間画像の結びとして1又はそれ以上の病変と疑われる領域を識別するステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、1又はそれ以上の隣接歯間領域の位置を特定するステップでは、
前記歯のデジタル画像の二値画像に対して距離変換を適用することにより、識別された歯領域内にある画素であって、前記二値画像内の前記識別された歯領域の境界線からの測定距離が最大の画素の位置を特定するステップと、
前記位置が特定された画素に連結した前記識別された歯領域を第1のオブジェクトとして割り当てるステップと、
前記位置が特定された画素に連結していない前記識別された歯領域を第2のオブジェクトとして割り当てるステップと、
前記第1のオブジェクトと前記第2のオブジェクトとに対して実質的に同じ距離である少なくとも第1の隣接歯間領域を、背景内の画素群として求めるステップと、
により、少なくとも、明確な境界を持つ第1の隣接歯間領域の位置を特定する、方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法であって、1又はそれ以上の隣接歯間領域の位置を特定するステップでは、
前記歯の二値画像内に原点を画定するステップと、
前記原点から外側に向かって複数の角度で半直線群を扇形に投射するステップと、
歯と背景領域との間の境界線に各半直線が最初に出会う点群での輪郭線を求めるステップと、
前記歯のデジタル画像から内部マーカー及び外部マーカーを求めるステップと、
前記歯のデジタル画像のグレースケール版の勾配画像に対して前記内部マーカー及び外部マーカーを用いてマーカー制御式のウォーターシェッド変換を適用し、流域の第1のグループと第2のグループとを形成するステップと、
前記流域の第1のグループ及び第2のグループに対して実質的に同じ距離の画素群を第1の隣接歯間領域として識別するステップと、
により、少なくとも、明確な境界を持たない第1の隣接歯間領域の位置を特定する、方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、1又はそれ以上の隣接歯間領域の位置を特定するステップでは、
前記歯のデジタル画像の二値画像に対して距離変換を適用することにより、各画素の値が当該画素から前記歯の背景までの最短距離を表す距離画像を形成するステップと、
前記距離画像に従って内部マーカー及び外部マーカーを求めるステップと、
前記歯のデジタル画像のグレースケール版の勾配画像に対して前記内部マーカー及び外部マーカーを用いてマーカー制御式のウォーターシェッド変換を適用し、流域の2つのグループを形成するステップと、
前記流域の2つのグループに対して実質的に同じ距離の画素群を第1の隣接歯間領域として識別するステップと、
により、複数の隣接歯間領域の位置を特定する、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、1又はそれ以上の抽出された病変領域を表示するステップを更に含む、方法。
【請求項14】
歯の健康な領域から病変領域を抽出する方法であって、
歯のデジタル画像を生成するステップであって、歯の蛍光画像を取得し、歯の反射率画像を取得し、前記蛍光画像及び前記反射率画像の画像データ同士を組み合わせるステップと、
前記歯のデジタル画像を処理することにより、1又はそれ以上の歯領域を識別するステップと、
前記歯のデジタル画像から1又はそれ以上の病変と疑われる領域を抽出するステップと、
前記抽出された1又はそれ以上の病変と疑われる領域から1又はそれ以上の偽陽性のものを識別して除去するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、1又はそれ以上の歯領域を識別するステップが、
歯のグレースケール蛍光画像から、あらかじめ定められた第1の閾値c1より高い強度データ値を選択することにより、第1閾値画像を生成するステップと、
歯のグレースケール反射率画像から、あらかじめ定められた第2の閾値c2より高い強度データ値を選択することにより、第2閾値画像を生成するステップと、
前記第1の閾値画像と前記第2の閾値画像との共通部分から暫定的な歯領域画像を生成するステップと、
前記グレースケール蛍光画像から、閾値c1を上回るあらかじめ定められた第3の閾値c3より高い強度データ値を選択することにより、基準二値画像を生成するステップと、
前記暫定的な歯領域画像内にあり、かつ前記基準二値画像内のオブジェクトに連結している領域から、精密化された歯領域画像を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、前記1又はそれ以上の病変と疑われる領域を抽出するステップでは、マーカー制御式のウォーターシェッドアルゴリズムを用いる、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、前記1又はそれ以上の病変と疑われる領域を抽出するステップでは、形態学的ボトムハットに基づく方法を多重解像度表面再構成法と共に用いる、方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法であって、前記1又はそれ以上の偽陽性のものを除去するステップでは、1又はそれ以上の隣接歯間領域の位置を特定し、それらから1又はそれ以上の隣接歯間の偽陽性のものを除去する、方法。
【請求項19】
請求項14に記載の方法であって、前記1又はそれ以上の病変と疑われる領域を抽出するステップは、
前記歯のデジタル画像を処理することにより1又はそれ以上の内部マーカーを識別するステップと、
前記歯のデジタル画像を処理することにより1又はそれ以上の外部マーカーを識別するステップと、
前記歯のデジタル画像を処理することにより勾配画像を形成するステップと、
前記勾配画像に対してマーカー制御式のウォーターシェッド変換を適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
請求項14に記載の方法であって、前記1又はそれ以上の病変と疑われる領域を抽出するステップは、
前記歯のデジタル画像に対してフル解像度でボトムハット演算を適用することにより原ボトムハット画像を生成するステップと、
前記原ボトムハット画像を低解像度化することにより、1又はそれ以上の低解像度化ボトムハット画像を生成するステップと、
前記原ボトムハット画像及び前記1又はそれ以上の低解像度化ボトムハット画像に対して形態学的ボトムハット法を適用することにより、複数の形態学的ボトムハット処理済み画像を形成するステップと、
前記複数の形態学的ボトムハット処理済み画像の各々に対して閾値処理を適用することにより、複数の二値ボトムハット処理済み画像を形成するステップと、
複数の二値ボトムハット処理済み画像の各々を補間して前記フル解像度にすることにより、複数の補間画像を生成するステップと、
前記複数の補間画像の結びとして1又はそれ以上の病変と疑われる領域を識別するステップと、
を含む、方法。
【請求項21】
歯のデジタル画像から、少なくとも1つの病変領域を歯の健康な領域から抽出するための方法であって、
歯のデジタル画像にアクセスするステップと、
歯のデジタル画像の中から歯領域を識別するステップと、
識別された歯領域に従って1又はそれ以上の病変と疑われる領域を抽出するステップと、
抽出された1又はそれ以上の病変と疑われる領域群の中から、1又はそれ以上の偽陽性のものを除去するステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2011−103118(P2011−103118A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−228897(P2010−228897)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(507224587)ケアストリーム ヘルス インク (76)
【Fターム(参考)】