説明

(メタ)アクリル酸のホモポリマーおよび/またはコポリマーを含む分散剤を使用して水性分散物中で鉱物を粉砕する方法

【課題】低い初期粘度、高い固体含有量および時間の経過による最小の粘度増加(すなわち、最小のゲル形成)の鉱物分散物を生じさせる粉砕方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、粗い鉱物材料の水性分散物に完全に中和された分散剤を導入して、水性分散物を粉砕し、粉砕の間に、部分的に中和された分散剤を水性分散物に添加することにより、顔料における使用および他のコーティングに好適な、鉱物材料の水性分散物を製造する。本発明の方法は、水性分散物の合計重量を基準にして少なくとも75重量%の固体含有量を有し、粒子の95%以上が2ミクロン未満である非常に微細な粒子の水性分散物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕(grinding)の間に、分散助剤として、アクリル酸/メタクリル酸の水可溶性ホスフィナート(phosphinate)末端ホモポリマーおよび/またはコポリマーを使用することによる、顔料に使用するのに好適な、微粉砕された鉱物の水性分散物を製造する方法に関する。本発明は、当該方法により製造される分散物にも関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品を製造するための、塗料産業のための、コーティング紙のための、ゴムおよび合成樹脂のための充填剤などのための鉱物材料の使用は周知であり、先行技術において示されている。このような鉱物材料には、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムおよびケイ酸カルシウム、並びにケイ酸アルミニウム、カオリン、タルクおよび酸化チタンが挙げられる。例えば、紙コーティングにおいて顔料として使用される場合、1種以上の鉱物材料の固体粒子が、結合剤、分散剤、増粘剤、着色剤および場合によっては他の添加剤とともに水に懸濁される。このようなコーティングは取り扱いおよび適用を容易にするために、貯蔵、輸送およびコーティングプロセスの間にわたって安定なままである低粘度を有しなければならず、並びに、コーティング材料を乾燥させるのに必要とされる熱および時間の量を低減させるために最も高い可能な固体(鉱物)含有量を有しなければならない。
【0003】
カルシウム化合物のようなある種の鉱物材料を顔料として使用することは、その粒子が本質的に分散せず、充分に分散されたままにならないので困難である。典型的には、このような鉱物物質は、構成粒子ができるだけ小さい、すなわち典型的には数ミクロンより小さい非常に微細な水性分散物に粉砕されることによって、有用な形態に変換される。さらに、そのような鉱物材料が当初は成功裏に粉砕され、水性分散物中に分散される場合でさえ、鉱物固体がゲルを形成する傾向がしばしばあり、このことは場合によっては目的の適用に役立たない点にまで分散物の粘度を増大させる。
鉱物材料の分散物中での分散を増大させ、かつゲル形成を低減させるために、1種以上の粉砕剤および/または分散剤(以降、集合的に「分散剤」と称する)が、粉砕の前および/または間に、しばしば鉱物分散物中に導入される。例えば、様々な中和剤によって全体的にもしくは部分的に中和された、低分子量の、水可溶性アクリル系ポリマーおよび/またはコポリマーを分散剤として使用することが周知である。例えば、仏国特許第FR2488814号および第FR2603042号、並びに欧州特許第EP0100947号、EP0127388号、EP0129329号、EP0542644号、EP0100948号およびEP0542643号を参照されたい。
【0004】
米国特許第4,868,228号は鉱物材料の水性分散物中の粉砕剤、特に、そのような粉砕剤を使用して鉱物固体の低粘度水性分散物を生じさせることを開示する。その粉砕剤は、一価の官能性を有する少なくとも1種の中和剤と多価官能性を有する少なくとも1種の中和剤で完全に中和されているアクリル酸ポリマーおよび/またはコポリマーであると記載される。この文献は、比粘度が0.3〜0.8であるアクリル系アルカリポリマーおよび/またはコポリマーの画分のみが粉砕剤の最大の必要とされる特性をもたらすことを教示する。その得られた水性分散物は少なくとも70%の固体を含み、鉱物粒子の少なくとも95%は2ミクロン未満の最大寸法を有する。
仏国特許第FR2488814号は、粒子の95%が2ミクロン未満の寸法を有し、かつ粒子の75%が1ミクロン未満の寸法を少なくとも有する非常に微細な鉱物粒子を高固体濃度で含む、鉱物物質の水性分散物(この水性分散物は従来得られていたものよりもより低い粘度を有する)を製造するためにアクリル系アルカリポリマーおよび/またはコポリマーを使用する方法を開示する。FR2488814号は、比粘度が0.3〜0.8であるアクリル系アルカリポリマーおよび/またはコポリマーの画分のみが粉砕剤の最大の必要とされる特性をもたらすことも教示する。しかし、得られた分散物の粘度が実は長期間にわたって安定ではないこと、および粘度は粉砕後8日で、粉砕が完了した直後に測定された粘度の2〜5倍に増加したことも観察された。米国特許第6395813B1号は、水可溶性ホスホナート末端ホモポリマーおよび/またはコポリマーを用いて粉砕し、その70%以上が2ミクロン未満であり、その70%以上が1ミクロン未満である微細粒子の分散物を形成することにより形成される水中の固体粒子の分散物を開示する。米国特許第6395813B1号は、2000〜6000の重量平均分子量を有するそのような分散剤が特に好ましいことを教示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許発明第FR2488814号明細書
【特許文献2】仏国特許発明第FR2603042号明細書
【特許文献3】欧州特許第EP0100947号明細書
【特許文献4】欧州特許第EP0127388号明細書
【特許文献5】欧州特許第EP0129329号明細書
【特許文献6】欧州特許第EP0542644号明細書
【特許文献7】欧州特許第EP0100948号明細書
【特許文献8】欧州特許第EP0542643号明細書
【特許文献9】米国特許第4,868,228号明細書
【特許文献10】米国特許第6,395,813B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
低い初期粘度、高い固体含有量および時間の経過による最小の粘度増加(すなわち、最小のゲル形成)の鉱物分散物を生じさせる粉砕方法を有することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は顔料として使用するのに好適な鉱物材料の分散物を製造する方法を提供する。鉱物は炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、および/または酸化チタンであってよい。本方法は、(A)水と、粒子を含む粉砕される鉱物とを含む混合物であって、当該混合物の合計重量を基準にして少なくとも75重量%の固体含有量を有する混合物を製造する工程;(B)完全に中和された分散剤を、混合物中に存在する鉱物の乾燥重量を基準にして0.1重量%〜0.5重量%の量で混合物に導入する工程;(C)混合物を粉砕して、水性分散物を生じさせる工程;(D)酸基の当量を基準にして少なくとも30%中和されている、部分的に中和された分散剤の少なくとも2つの割当て分(portions)を、粉砕の間に、分散物に導入する工程、ただし当該割当て分の合計は混合物中に存在する鉱物の乾燥重量を基準にして0.2重量%〜1.0重量%である;並びに(E)鉱物粒子の95%以上が2ミクロン未満の最大寸法を有するまで、分散物を粉砕するのを継続する工程;を含む。例えば、分散物は少なくとも110分間粉砕されうる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
完全に中和された分散剤および部分的に中和された分散剤のそれぞれは、式:
【0009】
【化1】

【0010】
を有する水可溶性リン含有ポリマー(phosphorus−containing polymer)の1種以上から選択され、
式中、Aはエチレン性不飽和モノマーを含む単位から導かれるポリマーであり;Bは水素、フェニル、C−Cアルキルであるか、もしくはエチレン性不飽和モノマーから構成されるポリマーであり;Xは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムもしくはアミン残基であり、前記エチレン性不飽和モノマーはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、スルホン酸系不飽和モノマー(sulfonic unsaturated monomer)、およびCOOH基を有する不飽和の重合可能なモノマーからなる群から選択され、
前記完全に中和された分散剤および部分的に中和された分散剤のそれぞれは、(a)55重量%〜80重量%のアクリル酸、(b)20重量%〜45重量%のメタクリル酸、並びに(c)0重量%〜10重量%の、マレイン酸、無水マレイン酸、スルホン酸系不飽和モノマー、およびCOOH基を有する不飽和の重合可能なモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー;を含み、ここで、重量パーセントは分散剤の合計重量を基準にしており、成分(a)、(b)並びに(c)のパーセンテージの合計は100を超えない。分散剤は(重量/数)平均分子量ベースで、2,000〜10,000の分子量を有する。
【0011】
ある実施形態においては、部分的に中和された分散剤の少なくとも2つの割当て分は、合計で、混合物中に存在する鉱物の乾燥重量を基準にして0.2重量%〜0.8重量%である。例えば、限定されるものではないが、その少なくとも2つの割当て分は複数の割当て分を含むことができ、その第1のグループが2つの別個に導入される割当て分を含み、その2つの割当て分は、合計で、混合物中に存在する鉱物の乾燥重量を基準にして0.26重量%の部分的に中和された分散剤であり、その第2のグループが4つの別個に導入される割当て分を含み、その4つの割当て分は、合計で、混合物中に存在する鉱物の乾燥重量を基準にして0.53重量%の部分的に中和された分散剤であることができる。
【0012】
本発明は、水と少なくとも1種の分散剤とを含む媒体中の粒子状鉱物固体の分散物であって、分散剤が、2,000〜10,000の重量平均重量を有するアクリル酸の水可溶性ホスホナート末端(phosphonate terminated)ホモポリマーを含み、粒子状鉱物固体の95%以上が2マイクロメートル未満の粒子サイズを有し、当該分散物が分散物の合計重量を基準にして少なくとも75重量%の固体含有量を有する分散物も提供する。
【0013】
本発明の方法は、完全に中和された分散剤を粗い鉱物材料の水性分散物に導入し、その水性分散物を粉砕し、粉砕の間に、部分的に中和された分散剤をその水性分散物に添加することによって、顔料および他のコーティングにおける使用に好適な鉱物材料の水性分散物を生じさせる。分散剤は水可溶性リン含有ポリマーである。本発明の方法は、水性分散物の合計重量を基準にして少なくとも75重量%の固体含有量を有し、粒子の95%以上が2ミクロン未満である非常に微細な粒子の水性分散物を生じさせる。このような水性分散物は紙のコーティングの分野における使用に好適であると共に、塗料、セラミクス、掘削流体(drilling fluids)、合成樹脂およびゴムのための充填剤、洗剤、並びに当該懸濁物を使用する何らかの他の分野、例えば特に、セメント、プラスターおよび建築産業における適用の他の分野における使用に好適である。
【0014】
完全に中和されているか、または部分的に中和されているかにかかわらず、分散剤は式:
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Aはエチレン性不飽和モノマーを含む単位から導かれるポリマーであり;Bは水素、フェニル、C−Cアルキルであるか、もしくはエチレン性不飽和モノマーから構成されるポリマーであり;Xは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムもしくはアミン残基である)を有する水可溶性リン含有ポリマーである。前記エチレン性不飽和モノマーはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、スルホン酸系不飽和モノマー、およびCOOH基を有する不飽和の重合可能なモノマーからなる群から選択される。前記完全に中和された分散剤および部分的に中和された分散剤のそれぞれは、(a)55重量%〜80重量%のアクリル酸、(b)20重量%〜45重量%のメタクリル酸、並びに(c)0重量%〜10重量%の、マレイン酸、無水マレイン酸、スルホン酸系不飽和モノマー、およびCOOH基を有する不飽和の重合可能なモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー;を含む。重量パーセントは分散剤の合計重量を基準にしており、成分(a)、(b)並びに(c)のパーセンテージの合計は100を超えない。例えば、ある実施形態においては、分散剤は(a)55重量%〜75重量%のアクリル酸、(b)25重量%〜45重量%のメタクリル酸、並びに(c)0重量%〜10重量%の、マレイン酸、無水マレイン酸、スルホン酸系不飽和モノマー、およびCOOH基を有する不飽和の重合可能なモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含むことができる。
【0017】
分散剤は2,000〜10,000、例えば、3,000〜6,000の重量平均分子量を有する。低粘度で安定な分散物は、高い分子量の分散剤を用いて得られうるが、6000を超える分子量のポリマーではゲル形成の傾向が増大し、これはいくつかの用途において不利である場合がある。
【0018】
分散剤としての使用に好適なアクリル酸ポリマーおよび/またはコポリマーは水性媒体、アルコール系媒体、水性アルコール系媒体、芳香族系媒体または脂肪族系媒体中で、アクリル酸並びに下記のモノマーおよび/またはコモノマーの少なくとも1種から、公知の方法を用いた重合によって製造される:メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イソクロトン酸、アコニット酸、メサコン酸、シナピン酸、ウンデシレン酸、アンゲリカ酸、ヒドロキシアクリル酸、およびアクロレイン、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、特に、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、イミダゾール類、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ジイソブチレン、酢酸ビニル、スチレン、アルファメチルスチレン並びにメチルビニルケトン。分散剤がアクリル酸のコポリマーである場合には、他のモノマーは好ましくはマレイン酸もしくは無水マレイン酸、メタクリル酸またはCOOH基を有する不飽和の重合可能な任意のモノマーである。さらに、水可溶性分散剤は、好ましくは、アクリル酸およびメタクリル酸のホスホナート末端コポリマーである。このようなポリマーは、例えば、米国特許第4,046,707号、米国特許第5,376,731号、米国特許第5,077,361号および米国特許第5,294,686号に従って製造されうる。
【0019】
重合媒体は水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール類、もしくはジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メルカプトエタノール、tertドデシルメルカプタン、チオグリコール酸およびそのエステル、ドデシルメルカプタン、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、2−メルカプトプロピオン酸、チオジエタノール、ハロゲン化溶媒、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル、並びにモノプロピレングリコールのエステルおよびジエチレングリコールのエステルであってよい。
【0020】
アクリル系ポリマー分散剤を完全にまたは部分的に中和するのに使用される中和剤は、一価または二価官能性(function)を有することができ、例えば、限定されるものではないが、水酸化ナトリウムもしくは水酸化マグネシウムであることができ、または中和剤は一価官能性(functional)中和剤と二価官能性中和剤の混合物であってよい。
【0021】
分散されるまたは懸濁される固体鉱物材料は、水性媒体中に分散または懸濁される場合に充分に化学的に不活性であるあらゆる粒子状固体であってよい。粒子は概して無機であり、実質的に水に不溶性である。例としては、これに限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、クレイ、カオリン、タルクおよび金属酸化物が挙げられる。
【0022】
分散媒体は水または水含有溶液であることができる。この媒体はアルコール、グリコール、界面活性剤または湿潤剤も含むことができる。
【0023】
本発明の方法によって製造される分散物は、少なくとも2つの重要な利点、すなわち、特に微細な粒子分散物において、分散物がゲルを形成する傾向の低減、および分散物の粘度の低減をもたらす。さらに、これらの利点は、分散物中の固体粒子の重量パーセンテージが高い、例えば、70%を超える、例えば、75%を超えて、かつ粒子サイズが極めて均一で非常に微細な、すなわち、粒子の95%以上が2ミクロン未満である系について得られる。
【0024】
上述の得られる生成物を達成するために、本発明の方法は、完全に中和された分散剤ポリマー投与物、および逐次的な、部分的に中和された分散剤ポリマー投与物(酸基の当量を基準にして少なくとも30%中和されている)の複数段階での添加を伴い、分散物がゲルを形成する傾向を低減するのを促進し、より低い初期粘度を促進し、および分散物の合計重量を基準にして固体鉱物粒子の重量パーセンテージが少なくとも75%である分散物を得る。
【0025】
鉱物材料、例えば当該明細書に開示されるような炭酸カルシウムを粉砕するための様々な方法がある。当業者に理解されるように、粉砕は典型的には、水性媒体、粉砕される鉱物材料および分散剤を含む水性懸濁物に導入される非常に微細な粒子を含む粉砕用物質(grinding material)の使用を伴う。例えば、粉砕用物質は0.20ミリメートル(mm)〜4mmの粒子サイズを有することができる。粉砕用物質は概して酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、もしくはこれらの混合物、または非常に硬質の合成樹脂、スチールなどの物質から造られうる。しかし、水性分散物を物理的に粉砕する装置および特定の方法は、本発明の方法に従って限定されない。
【0026】
粉砕後に、鉱物の満足のいく微細さに到達するのに必要な時間は、粉砕される鉱物の性質および量、粉砕用物質(酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムが好ましい)の硬度およびサイズ、使用される撹拌の方法、温度、分散剤の量およびその添加速度、並びに最後に、当該方法の間の中和の程度に従って変化する。
【0027】
本発明の方法およびそれにより生産される水性分散物が、下記の資料および実施例によってさらに明確にされるであろう。
【実施例】
【0028】
【表1】

【0029】
分散剤A、BおよびCは、過硫酸塩開始剤および連鎖移動剤としてイソプロピルアルコール(IPA)を使用して、当業者に周知の方法を用いて製造された。分散剤2および4〜12は連鎖移動剤として次亜リン酸ナトリウム(NaHP)を使用して製造された。分散剤1は連鎖移動剤として、メタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulphite)(SMBS)を使用して製造され、分散剤3は本発明のホスホナート含有ポリマーであって連鎖移動剤として亜リン酸(HPO)を使用して製造された。
【0030】
後述の実施例における実験のそれぞれは、概して、次の基本的手順に従って行われた。
まず、0.2%の量の完全に中和されたポリマー分散剤を、粉砕が行われるステンレススチール二重壁ビーカー中で、水、鉱物クレイ、および粉砕用媒体(ボール)に添加することにより分散物が製造された。
得られた水性溶液を1400−1600rpmの速度でまず5分間撹拌し、次いで1400±10rpmの速度でさらに5分間撹拌して、10分間を完了した。
合計量0.8%の部分的に中和された分散剤が等しい割当て分に分けられ、粉砕時間の残りの時間にわたって、一度に1つの割当て分ずつ、逐次的に、5分ごとに、粉砕時間が合計110分になるか、または95%が2ミクロン未満である所望の粒子サイズが達成されるまで添加された。
固体含有量(水性媒体の合計重量を基準にした重量%)、粒子サイズ(ミクロン、すなわちμm)並びに水性分散物の最終的なpHおよび粘度が粉砕時間後直ちに(T)測定された。
最後に、従来のブルックフィールド型粘度計を用いて、ゲル化傾向および粘度が測定された。
水性分散物に添加されたものとしての、後述の分散剤の重量パーセントは、分散物中の鉱物材料の乾燥重量と比較した、添加された分散剤の乾燥重量を基準とする。
【0031】
実施例1
異なる末端基を有するホモポリマー(100AA)を使用した、少なくとも95%の粒子サイズが2ミクロン未満である炭酸カルシウムの分散物についての粘度およびゲル化傾向の測定。ゲル化傾向および粘度は1時間後(T)、24時間後(T24)および144時間後(T144)のそれぞれで測定された。
4つの実験(異なる分散剤であるA+B、1、2および3を使用するそれぞれの実験)のそれぞれについて、粉砕の開始前に、溶液中で0.2重量%の完全に中和された分散剤が水性分散物に添加された。粉砕の間に、部分的に中和された分散剤が次の通り添加された:2つの別個の段階で添加された合計0.26重量%、および4つの別個の段階で添加された合計0.53%。結果は下記の表2に示され、これは、ホスフィナート(phosphinate)末端ホモポリマー、特に、本発明に従った分散剤2が、1時間後に、分散剤の組み合わせA+B、およびホスホナートまたはナメタ重亜硫酸ナトリウム(SMBS)末端ポリマーよりも、有意に低い初期粘度および低いゲル化傾向をもたらすことを示している。
【0032】
【表2】

【0033】
実施例2
異なる組成比(AA/MAA)および分子量でホスフィナート末端コポリマーを使用した、少なくとも95%の粒子サイズが2ミクロン未満の炭酸カルシウムの分散物についての粘度およびゲル化傾向の測定。ゲル化傾向および粘度は1時間後(T)、24時間後(T24)、168時間後(T168)、および28日後(T28d)のそれぞれで測定された。
上述のと同じ粉砕方法を使用して、すなわち、粉砕の開始前に、溶液中で0.2重量%の完全に中和された分散剤が水性分散物に添加され、続いて、粉砕時間の間に、部分的に中和された分散剤が次の量:4つの別個の段階で添加された合計0.26%、および7つの別個の段階で添加された合計0.53%;で添加され、後述する15の炭酸カルシウム分散物が製造された。これら15の実験の結果が下記の表3に報告され、これは本発明の方法に従って添加された、本発明の分散剤、すなわち、アクリル/メタクリル酸ホスフィナート末端コポリマーが、168時間後に、市販の公知の分散剤(すなわち、組み合わせA+BおよびC+B)と比べて等しいかまたはより低い粘度増加の水性分散物を生じさせることを示す。特に、分散剤としてホスフィナート末端ポリマーを用いて製造される、少なくとも76%固体の固体含有量、pH8.6、および鉱物粒子の少なくとも96%が2ミクロン以下である鉱物材料の水性分散物については、等しい特性であるが分散剤としてホスフィナートでない末端ポリマーを使用して製造される分散剤についてよりも、ゲル化傾向がより低い。
【0034】
【表3】

【0035】
概して、分散剤が少なくとも25重量%のメタクリル酸(ポリマーの合計重量を基準にして)および3500を超える重量平均分子量のコポリマー組成物を含む場合に、結果は増強されることにさらに留意されたい。実施例1および2に示されるように、ホスフィナート末端分散剤は、本発明の方法に従って導入される場合に、1週間または28日間の静置後でさえ安定な分散物をもたらす。
上述の本発明の実施形態は単なる例示であり、当業者は本発明の意図および範囲を逸脱することなく、改変および修飾をすることができると理解される。すべてのそのような改変および修飾は本発明の範囲内に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料として使用するのに好適な鉱物材料の分散物を製造する方法であって、
(A)水と、粒子を含む粉砕される鉱物とを含む混合物であって、当該混合物の合計重量を基準にして少なくとも75重量%の固体含有量を有する混合物を製造する工程;
(B)完全に中和された分散剤を、混合物中に存在する鉱物の乾燥重量を基準にして0.1重量%〜0.5重量%の量で混合物に導入する工程;
(C)混合物を粉砕して、水性分散物を生じさせる工程;
(D)酸基の当量を基準にして少なくとも30%中和されている、部分的に中和された分散剤の少なくとも2つの割当て分を、粉砕の間に分散物に導入する工程、ただし当該割当て分の合計は混合物中に存在する鉱物の乾燥重量を基準にして0.2重量%〜1.0重量%である;並びに
(E)鉱物粒子の95%以上が2ミクロン未満の最大寸法を有するまで、分散物を粉砕するのを継続する工程;
を含む方法。
【請求項2】
前記完全に中和された分散剤および部分的に中和された分散剤のそれぞれが式
【化1】

を有する水可溶性リン含有ポリマーの1種以上から選択され、
式中、Aはエチレン性不飽和モノマーを含む単位から導かれるポリマーであり;Bは水素、フェニル、C−Cアルキルであるか、もしくはエチレン性不飽和モノマーから構成されるポリマーであり;Xは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムもしくはアミン残基であり、
前記エチレン性不飽和モノマーはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、スルホン酸系不飽和モノマー、およびCOOH基を有する不飽和の重合可能なモノマーからなる群から選択され;
前記完全に中和された分散剤および部分的に中和された分散剤のそれぞれが
(a)55重量%〜80重量%のアクリル酸、
(b)20重量%〜45重量%のメタクリル酸、並びに
(c)0重量%〜10重量%の、マレイン酸、無水マレイン酸、スルホン酸系不飽和モノマー、およびCOOH基を有する不飽和の重合可能なモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー;を含み、
ここで、重量パーセントは分散剤の合計重量を基準にしており、成分(a)、(b)並びに(c)のパーセンテージの合計は100を超えない;
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記完全に中和された分散剤および部分的に中和された分散剤のそれぞれが
(a)55重量%〜75重量%のアクリル酸、
(b)25重量%〜45重量%のメタクリル酸、並びに
(c)0重量%〜10重量%の、マレイン酸、無水マレイン酸、スルホン酸系不飽和モノマー、およびCOOH基を有する不飽和の重合可能なモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー;
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記完全に中和された分散剤および部分的に中和された分散剤のそれぞれが(重量/数)平均分子量を基準にして2,000〜10,000の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記導入する工程の少なくとも2つの割当て分が複数の割当て分を含み、その第1のグループが2つの別個に導入される割当て分を含み、当該2つの別個に導入される割当て分は合計で、混合物中に存在する鉱物の乾燥重量を基準にして0.26重量%の部分的に中和された分散剤であり、並びにその第2のグループが4つの別個に導入される割当て分を含み、当該4つの別個に導入される割当て分は合計で、混合物中に存在する鉱物の乾燥重量を基準にして0.53重量%の部分的に中和された分散剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記完全に中和された分散剤および部分的に中和された分散剤が、それぞれ、一価官能性、二価官能性およびその混合物からなる群から選択される中和剤を用いて中和されている請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも110分間粉砕が継続する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記鉱物が、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、および酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種の鉱物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
粉砕が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、スチールおよび硬質合成樹脂からなる群から選択される粉砕用物質の存在下で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
水および少なくとも1種の分散剤を含む媒体中の粒子状鉱物固体の分散物であって、前記分散剤が2,000〜10,000の重量平均重量のアクリル酸の水可溶性ホスホナート末端ホモポリマーを含み、粒子状鉱物固体の95%以上が2マイクロメートル未満の粒子サイズを有し、当該分散物が分散物の合計重量を基準にして少なくとも75重量%の固体含有量を有する、分散物。

【公開番号】特開2009−242784(P2009−242784A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−43718(P2009−43718)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】