説明

((1S)−1−(((2S)−2−(5−(4’−(2−((2S)−1−((2S)−2−((メトキシカルボニル)アミノ)−3−メチルブタノイル)−2−ピロリジニル)−1H−イミダゾール−5−イル)−4−ビフェニリル)−1H−イミダゾール−2−イル)−1−ピロリジニル)カルボニル)−2−メチルプロピル)カルバミン酸メチル二塩酸塩の結晶形

本開示は、一般に、((1S)−1−(((2S)−2−(5−(4'−(2−((2S)−1−((2S)−2−((メトキシカルボニル)アミノ)−3−メチルブタノイル)−2−ピロリジニル)−1H−イミダゾール−5−イル)−4−ビフェニリル)−1H−イミダゾール−2−イル)−1−ピロリジニル)カルボニル)−2−メチルプロピル)カルバミン酸メチル二塩酸塩の結晶形に関する。本開示はまた、一般に、結晶形を含む医薬組成物、並びにC型肝炎の治療における結晶形の使用方法、およびこのような結晶形を得るための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2007年8月8日に出願された米国仮特許出願第60/954,592号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、((1S)−1−(((2S)−2−(5−(4’−(2−((2S)−1−((2S)−2−((メトキシカルボニル)アミノ)−3−メチルブタノイル)−2−ピロリジニル)−1H−イミダゾール−5−イル)−4−ビフェニリル)−1H−イミダゾール−2−イル)−1−ピロリジニル)カルボニル)−2−メチルプロピル)カルバミン酸メチル二塩酸塩の結晶形に関する。本開示はまた、一般に、結晶形を含む医薬組成物、並びにC型肝炎ウイルス(HCV)の治療における結晶形の使用方法およびこのような結晶形を得るための方法にも関する。
【0003】
C型肝炎ウイルス(HCV)は重大なヒトでの病原体であり、全世界で推定170,000,000人が感染しており、ヒト免疫不全ウイルス1型の感染者数のおおよそ5倍である。これらのHCV感染者の相当な割合は、重篤な進行性肝疾患、例えば肝硬変および肝細胞癌へと進行する。
【0004】
現在、最も効果的なHCV療法はα型インターフェロンとリバビリンとの併用が用いられ、40%の患者で持続性の効力がもたらされている。最近の臨床結果では、ペグ化α型インターフェロンが 、単剤療法としての未修飾のα型インターフェロンよりも優れることを示している。しかしながら、ペグ化α型インターフェロンとリバビリンの併用を含む実験的な治療投与計画をもってでさえ、患者の実質的な分画はウイルスの負荷における持続的な減少を有さない。このように、HCV感染の治療のための効果的な治療剤を開発するのに、明確でまだ対処されていないニーズが存在する。
【0005】
化合物((1S)−1−(((2S)−2−(5−(4’−(2−((2S)−1−((2S)−2−((メトキシカルボニル)アミノ)−3−メチルブタノイル)−2−ピロリジニル)−1H−イミダゾール−5−イル)−4−ビフェニリル)−1H−イミダゾール−2−イル)−1−ピロリジニル)カルボニル)−2−メチルプロピル)カルバミン酸メチルは、HCV感染の治療に有用である。この化合物を結晶化するのは困難なので、純粋な生成物の形成は再現可能となっていない。式(I)によって表され、本明細書で化合物(I)と呼ばれる二塩酸塩が、本明細書でN−2型と呼ばれるある特定の多形に繰り返し結晶化されうることが明らかとなっており、それは高い水溶解度および優れた精製される性質(purification capacity)を与える。
【化1】

化合物(I)
【0006】
その第1の態様において、本開示は、
【化2】

のN−2型を提供する。
【0007】
第2の態様において、本開示は、結晶形の測定が約20℃〜約25℃の温度において、下表:

の単位格子パラメータの特徴を有する、
【化3】

のN−2型を提供する。
【0008】
第3の態様において、本開示は、表3に列挙された単位格子内の部分原子座標(fractional atomic coordinate)の特徴を有する、
【化4】

のN−2型を提供する。
【0009】
第4の態様において、本開示は、約20℃〜約25℃の温度で、10.3±0.1、12.4±0.1、12.8±0.1、13.3±0.1、13.6±0.1、15.5±0.1、20.3±0.1、21.2±0.1、22.4±0.1、22.7±0.1、および23.7±0.1の2θ値での粉末X線回折パターンにおける特徴的なピーク(NIST 他の適当な基準で較正された2θを用い、回転キャピラリー(spinning capillary)を有する回折計(CuKα)で収集した質の高いパターンに基づいている)を有する、
【化5】

のN−2型を提供する。
【0010】
第5の態様において、本開示は、
a)結晶形の測定が約20℃〜約25℃の温度において、下表:

に実質的に等しいパラメータを有する単位格子;
b)約20℃〜約25℃の温度で、10.3±0.1、12.4±0.1、12.8±0.1、13.3±0.1、13.6±0.1、15.5±0.1、20.3±0.1、21.2±0.1、22.4±0.1、22.7±0.1、および23.7±0.1の2θ値での粉末X線回折パターンにおける特徴的なピーク(NIST 他の適当な基準で較正された2θを用い、回転キャピラリーを有する回折計(CuKα)で収集した質の高いパターンに基づいている);および/または
c)典型的には225℃〜245℃の範囲で発生する分解吸熱を有する融解;
のいずれか一つ以上の特徴を有する、
【化6】

のN−2型を提供する。
【0011】
第6の態様において、本開示は、
【化7】

の実質的に純粋なN−2型を提供する。第6の態様の第1の実施形態において、前記N−2型は少なくとも95重量%の純度を有する。第6の態様の第2の実施形態において、前記N−2型は少なくとも99重量%の純度を有する。
【0012】
第7の態様において、本開示は、約20℃〜約25℃の温度で、10.3±0.1、12.4±0.1、12.8±0.1、13.3±0.1、13.6±0.1、15.5±0.1、20.3±0.1、21.2±0.1、22.4±0.1、22.7±0.1、および23.7±0.1の2θ値での粉末X線回折パターンにおける特徴的なピーク(NIST 他の適当な基準で較正された2θを用い、回転キャピラリーを有する回折計(CuKα)で収集した質の高いパターンに基づいている)を有する、
【化8】

の実質的に純粋なN−2型を提供する。
【0013】
第8の態様において、本開示は、
【化9】

のN−2型、および医薬的に許容される担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
第9の態様において、本開示は、
【化10】

の実質的に純粋なN−2型、および医薬的に許容される担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物を提供する。第9の態様の第1の実施形態において、前記N−2型は少なくとも95重量%の純度を有する。第9の態様の第2の実施形態において、前記N−2型は少なくとも99重量%の純度を有する。
【0015】
第10の態様において、本開示は、抗HCV活性を有する1つもしくは2つの追加の化合物と組み合わせた、
【化11】

のN−2型を含む医薬組成物を提供する。第10の態様の第1の実施形態において、前記N−2型は少なくとも90重量%の純度を有する。第10の態様の第2の実施形態において、前記N−2型は少なくとも95重量%の純度を有する。第10の態様の第3の実施形態において、前記N−2型は少なくとも99重量%の純度を有する。
【0016】
第10の態様の第4の実施形態において、該抗HCV活性を有する追加の化合物のうち少なくとも一つはインターフェロンまたはリバビリンである。第10の態様の第5の実施形態において、該インターフェロンは、インターフェロンα2B、ペグインターフェロンα、コンセンサスインターフェロン、インターフェロンα2A、およびリンパ芽球インターフェロンτから選択される。
【0017】
第10の態様の第6の実施形態において、本開示は、抗HCV活性を有する1つもしくは2つの追加の化合物と組み合わせた、
【化12】

のN−2型を含む医薬組成物を提供し、その中で、該追加の化合物のうち少なくとも一つは、インターロイキン2、インターロイキン6、インターロイキン12、1型ヘルパーT細胞応答の発生を亢進する化合物、干渉RNA、アンチセンスRNA、イミキモド、リバビリン、イノシン5'−一リン酸脱水素酵素阻害剤、アマンタジン、およびリマンタジンから選択される。
【0018】
第11の態様において、本開示は、治療有効量の
【化13】

のN−2型を哺乳類に投与することを特徴とする、哺乳類におけるHCV感染の治療方法を提供する。第11の態様の第1の実施形態において、前記N−2型は少なくとも90重量%の純度を有する。第11の態様の第2の実施形態において、前記N−2型は少なくとも95重量%の純度を有する。第11の態様の第3の実施形態において、前記N−2型は少なくとも99重量%の純度を有する。第11の態様の第4の実施形態において、該哺乳類はヒトである。
【0019】
本開示の他の実施形態には、本明細書で開示した2つ以上の実施形態および/または態様の適当な組合せが含まれうる。
本開示のさらに他の実施形態および態様は、以下の記載から明らかである。
本開示の化合物はまた、互変異性体としても存在し;それゆえ、本開示には、全ての互変異性型もまた含まれうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、化合物(I)のN−2結晶形の実験およびシミュレーションされた粉末X線回折パターン(T=室温で、CuKα λ=1.54178Å)を説明する。
【図2】図2は、化合物(I)のN−2結晶形の示差走査熱量測定パターンを説明する。
【図3】図3は、化合物(I)のN−2結晶形の固体NMRスペクトルを説明する。
【0021】
本開示は、化合物(I):
【化14】

(I)
の結晶形に関する。
【0022】
定義
本明細書中で用いられるように、「多形」とは、同一の化学組成を有するが、結晶を形成する分子、原子、および/またはイオンの異なった空間配置を有する結晶形をいう。
本明細書で用いられる用語「医薬的に許容される」とは、正常な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または合理的な損益比(benefit/risk ratio)に見合った他の問題の合併症を伴わずに、ヒトおよび動物の組織と接触させるのに適した化合物、物質、組成物、および/または製剤をいう。
【0023】
本明細書で用いられる用語「実質的に純粋な」とは、約90%超の純度であるN−2型の化合物(I)をいう。このことは、化合物(I)の多形が、約10%超のいずれの他の化合物も含まず、特に、約10%超のいずれの他の形態の化合物(I)も含まないことを意味している。
【0024】
本明細書で用いられる用語「治療有効量」は、C型肝炎を治療するために単独または併用して投与された場合に有効な化合物(I)の結晶形の量を含むものと意図される。化合物(I)の結晶形およびその医薬組成物は、C型肝炎の治療に有用でありうる。化合物(I)が別の薬物と併用して用いられる場合、本明細書に記載される化合物の組合せは、相乗的な組合せをもたらしうる。例えばChou and Talalay, Adv. Enzyme Regul. 1984, 22, 27-55に記載されている相乗作用は、併用して投与される場合の化合物の効果が、単剤として単独で投与される場合の化合物の効果よりも大きい場合に生じる。
【0025】
用語「治療」とは:
(i)疾患、障害および/または症状にかかりやすいが、まだそれを有しているとは診断されていない患者における、疾患、障害または症状の発生の予防;
(ii)疾患、障害または症状の阻害、すなわち、その進行の抑止;および/または
(iii)疾患、障害または症状の軽減、すなわち、疾患、障害および/または症状の後退を引き起こすことをいう。
【0026】
ある態様において、本開示は、化合物(I)の結晶形を提供する。化合物(I)のこの結晶形は、例えば、賦形剤、担体、および分子構造が異なる一つの他の活性な医薬成分の活性な化学物質からなる群から選択される一つ以上の他の成分を適宜含んでいてもよい医薬組成物に用いられうる。
【0027】
ある態様において、シミュレーションされたPXRDパターンにはない余分なピークから生じる実験で測定されたPXRDパターンにおいて、全ピーク面積の10%未満によって示される相均一性を結晶形が有しており、別の態様において、5%未満によって示される相均一性を結晶形が有しており、別の態様において、2%未満によって示される相均一性を結晶形が有している。別の態様において、シミュレーションされたPXRDパターンにはない余分なピークから生じる実験で測定されたPXRDパターンにおいて、全ピーク面積の1%未満で、結晶形が相均一性を有している。
【0028】
ある態様において、本質的に化合物(I)の結晶形N−2からなる組成物が提供される。この態様の組成物には、組成物中の化合物(I)の重量に基づいて、少なくとも90重量%の結晶形N−2の化合物(I)が含まれうる。残存する物質には、他の形態の化合物および/または反応不純物および/またはその製造から生じる加工不純物(processing impurity)が含まれる。
【0029】
反応不純物および/または加工不純物の存在は、当該技術分野で公知の分析技術、例えば、クロマトグラフィ、核磁気共鳴法、質量分析、または赤外分光法によって決定されうる。
【0030】
結晶性物質の一般的な製造:
結晶形は、様々な方法、例えば、適当な溶媒からの結晶化または再結晶化、昇華、融解からの成長、固体以外から固体への状態変換、超臨界流体からの結晶化、および噴射スプレーによって製造されうる。溶媒混合物からの結晶形の結晶化または再結晶化のための技術には、例えば、溶媒の蒸発、溶媒混合物の温度の低下、分子および/または塩の過飽和溶媒混合物への種晶の付加、溶媒混合物の凍結乾燥、および溶媒混合物への貧溶媒(逆溶媒(countersolvent))の付加が含まれる。ハイスループット結晶化技術は、多形を含む結晶形の製造に用いられうる。多形を含む薬物の結晶、製造方法、および薬物の結晶の評価は、Solid-State Chemistry of Drugs, S. R. Byrn, R.R. Pfeiffer, and J.G. Stowell, 2nd Edition, SSCI, West Lafayette, Indiana (1999)において議論される。
【0031】
溶媒を用いる結晶化技術のために、溶媒の選択は一般に一つまたはそれ以上の因子に依存し、その因子は例えば、化合物の溶解度、結晶化技術、および溶媒の蒸気圧である。溶媒は組み合わせて用いてもよく、例えば、化合物は第一の溶媒の中に可溶化されて溶液を得、続いて貧溶媒の付加によって溶液中の化合物の溶解度を減少させ、結晶の形成が得られうる。貧溶媒は、化合物が低溶解度を有する溶媒である。
【0032】
結晶を製造するための一つの方法において、化合物は適当な溶媒の中で懸濁および/または撹拌されてスラリーを与え、それは加熱されて溶解を促進しうる。用語「スラリー」は、本明細書中で用いられるように、化合物の飽和溶液を意味し、それはまた追加量の化合物を含んで、所定の温度で化合物および溶媒の不均一な混合物を与えうる。
【0033】
種晶はいずれの結晶化混合物にも加えられ、結晶化を促進しうる。種晶の添加は、特定の多形の成長を調節し、または結晶性生成物の粒子サイズ分布を調節するのに用いてもよい。したがって、必要な種晶の量の計算は、利用できる種晶のサイズおよび平均的な生成物粒子の目的のサイズに依存し、これは例えば、「Programmed Cooling of Batch Crystallizers」, J. W. Mullin and J. Nyvlt, Chemical Engineering Science, 1971, 26, 369-377に記載されている。一般に、小さなサイズの種晶は、バッチにおける結晶の成長を効果的に調節するのに必要である。小さなサイズの種晶は、大きな結晶のふるい分け、粉砕、または微粉化、あるいは溶液の微結晶化によって生成しうる。結晶の粉砕または微粉化は、目的の結晶形からの結晶化度においていずれの変化(すなわち、アモルファスまたは別の多形への変化)ももたらさないことに注意を払うべきである。
【0034】
冷却された結晶化混合物は真空下でろ過されてもよく、単離された固体は適当な溶媒、例えば冷却した再結晶溶媒で洗浄してもよく、窒素でパージしながら乾燥して目的の結晶形を得てもよい。単離された固体は、適当な分光学的技術または分析技術、例えば、固体核磁気共鳴法、示差走査熱量測定、粉末X線回折などによって分析し、生成物の好ましい結晶形の形成を確かめてもよい。生じた結晶形は、典型的には、本来結晶化の手順において用いられる化合物の重量に基づいて、単離収率約70重量%超、好ましくは単離収率90重量%超の量で製造される。生成物は、必要であればともに粉砕され、または網目スクリーンを通過して生成物を粉々にしてもよい。
【0035】
結晶形は、化合物(I)を製造するための最終段階の反応系から直接製造されうる。これは、例えば化合物(I)が結晶化されうる溶媒または溶媒混合物を、本方法の最終段階で用いることによって達成されうる。もう一つの方法として、結晶形は蒸留または溶媒付加技術によって得られうる。この目的のための適当な溶媒には、例えば前述の非極性溶媒および極性溶媒、並びにアルコールのようなプロトン性極性溶媒、およびケトンのような非プロトン性極性溶媒が含まれる。
【0036】
サンプル中の一つより多い多形の存在は、粉末X線回折(PXRD)または固体核磁気共鳴法(SSNMR)のような技術によって決定されうる。例えば、シミュレーションされたPXRDパターンと比較した場合の実験で測定されたPXRDパターンにおける余分なピークの存在によって、サンプル中の一つより多い多形が示唆されうる。シミュレーションされたPXRDPXRDは、単一の結晶X線データから計算されうる。Smith, D.K., 「A FORTRAN Program for Calculating X-Ray Powder Diffraction Patterns」, Lawrence Radiation Laboratory, Livermore, California, UCRL-7196 (April 1963)を参照せよ。
【0037】
評価:
N−2型の化合物(I)は、当業者に周知である様々な技術、操作を用いて評価されうる。評価法の例には、これらに限らないが、単結晶X線回折、粉末X線回折(PXRD)、シミュレーションされた粉末X線パターン(Yin, S.; Scaringe, R. P.; DiMarco, J.; Galella, M. and Gougoutas, J. Z., American Pharmaceutical Review, 2003, 6, 2, 80)、示差走査熱量測定(DSC)、固体13C NMR(Earl, W.L. and Van der Hart, D. L., J. Magn. Reson., 1982, 48, 35-54)、ラマン分光法、赤外分光法、吸湿等温線、熱重量分析(TGA)、および高温技術(hot stage technique)が含まれる。
【0038】
形態は、N−2型の単結晶の単位格子測定に基づいている単結晶X線回折を用いて評価および識別されうる。単位格子の詳細な記載は、Stout & Jensen, X-Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York (1968), Chapter 3 において与えられ、それは本明細書に引用される。あるいは、結晶格子内の空間関係における固有の原子配置を、測定された部分原子座標に従って評価してもよい。結晶構造を評価する別の方法は、回折プロファイルが、純粋な粉末物質を表すシミュレーションされたプロファイルと比較される(両者は同一の分析温度で行われる)粉末X線回折解析による方法、および一連の2θ値を特徴とする対象の形態(subject form)についての測定による方法である。
【0039】
X線回折パターンが、用いられた測定条件に依存する測定誤差と共に得られうることは、当業者が認識している。特に、X線回折パターンにおける強度が、用いられた測定条件に依存して変動しうることは、一般に公知である。相対強度もまた、実験条件に依存して変化しうることはさらに理解されるべきであり、したがって、強度の正確な順は考慮されるべきではない。また、通常のX線回折パターンについての回折角の測定誤差は、典型的には約5%またはそれ未満であり、前記回折角に関してこの程度の測定誤差は考慮されるべきである。したがって、本開示の結晶形が、本明細書で開示された添付図に描かれたX線回折パターンと完全に同一のX線回折パターンを与える結晶形に限らないことは理解されるべきである。添付図に開示されたものと実質的に同一のX線回折パターン、DSCサーモグラム、またはSSNMRスペクトルを与えるいずれの結晶形も、本開示の範囲に含まれる。X線回折パターンの実質的同一性を確認する能力は、当業者の範囲内にある。
【0040】
有用性:
N−2型の化合物(I)は、単独でまたは他の化合物と組み合わせて、HCV感染を治療するのに用いられうる。
本開示はまた、治療有効量のN−2型の化合物(I)および少なくとも一つの医薬的に許容される担体を含む組成物も提供する。
【0041】
このような組成物中の活性成分、すなわち、N−2型の化合物(I)は、典型的には、組成物の0.1重量%〜99.9重量%が含まれ、しばしば約5〜95重量%が含まれる。ある場合には、医薬的に許容される調節剤(modifier)(例えば炭酸カルシウムおよび酸化マグネシウム)を用いて製剤のpHを調整して、製剤化された化合物またはその送達形態(delivery form)の安定性を増強してもよい。本開示の多形の製剤には、吸収およびバイオアベイラビリティの亢進のための添加物もまた含まれうる。
【0042】
本開示の医薬組成物は、経口的に、非経口的に、または植え込み式リザーバー(implanted reservoir)によって投与されうる。本明細書で用いられる用語「非経口」には、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、くも膜下腔内、および病巣内の注射もしくは注入法が含まれる。
【0043】
医薬組成物は、無菌注射用製剤、例えば、無菌注射用水性もしくは油性懸濁剤の形態を取りうる。この懸濁剤は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、当該技術分野で公知の技術に従って製剤化されうる。このような化合物の製剤に関する詳細は、当業者に知られている。
【0044】
経口投与される場合、本開示の医薬組成物は、いずれの経口的に許容される製剤、例えば、これらに限らないが、カプセル剤、錠剤、並びに水懸濁液および溶液でも投与されうる。経口用錠剤の場合、通常用いられる担体には、乳糖およびコーンスターチが含まれる。滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムもまた添加されうる。カプセル形態の経口投与のため、有用な担体/希釈剤には、乳糖、高および低分子量ポリエチレングリコール、並びに乾燥コーンスターチが含まれる。水懸濁液が経口投与される場合、活性成分は乳化剤および懸濁剤と混合される。必要であれば、特定の甘味料および/または香料および/または着色料を加えてもよい。
【0045】
上記の組成物のための他の適当な担体は、標準的な薬学の教科書、例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, Penn., 1995で見られる。適当な送達形態の本開示の医薬組成物のデザインおよび製造に関するさらなる詳細は、当業者に知られている。
【0046】
1日につき、体重1キログラムあたり約0.05から約100ミリグラムの間の投与量レベル(「mg/kg」)、より詳細には、1日につき、体重あたり約0.1から約50mg/kgの間の本開示の化合物が、HCV媒介疾患の予防および/または治療のための単独療法において典型的である。典型的に、本開示の医薬組成物は、1日あたり約1から約3回、あるいは持続注入として投与される。このような投与は、慢性または急性治療として用いられうる。担体物質に混合して単一製剤を生成しうる活性成分の量は、治療される対象(host)および特定の投与方法に依存して変化する。
【0047】
当業者が認識するように、上記で列挙したものよりも低用量または高用量が必要でありうる。いずれの特定の患者についての特定の用量および治療計画も、様々な因子、例えば、用いた特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与時間、治療時間、排泄速度、薬物の組合せ、感染の重症度および過程、患者の感染しやすさ、並びに治療医師の判断に依存する。ある態様において、単位製剤は、本明細書で上記に列挙した、活性成分の1日量またはサブ用量、あるいはそれの適当な画分を含むものである。一般に、治療は、該ペプチドの最適用量よりも実質的に少ない用量で始められる。その後は、この条件下の最適効果に達するまで、用量を少しずつ増加させる。一般に、該化合物は、いずれの有害な副作用も引き起こさずに、抗ウイルス的に有効な結果を徐々に与える濃度レベルで、最も望ましく投与される。
【0048】
本開示の組成物が、本開示の多形および一つ以上の追加の治療剤または予防剤の組合せを含む場合、該化合物および別の該薬剤の両方は、単独療法において標準的に投与される約10〜100%の間の投与量レベル、より好ましくは約10〜80%の間の投与量で通常与えられる。該一つ以上の追加の薬剤の投与は、本開示の多形より前、後、またはそれと同時に起こりうる。
【0049】
多形が医薬的に許容される担体とともに製剤化される場合、生じた組成物は、インビボで哺乳類、例えばヒトに投与されて、NS5Aを阻害するかまたはHCVウイルス感染を治療もしくは予防しうる。このような治療はまた、これらに限らないが:免疫調節剤(例えばインターフェロン);他の抗ウイルス剤(例えばリバビリン、アマンタジン);他のNS5Aの阻害剤;HCV生活環における他の標的(例えばヘリカーゼ、プロテアーゼ、ポリメラーゼ、メタロプロテアーゼ、または配列内リボソーム進入部位)の阻害剤;またはそれらの組合せを含む薬剤と組み合わせた本開示の多形を用いて達成してもよい。追加の薬剤を本開示の多形と組み合わせて、単一製剤を製造してもよい。あるいは、これらの追加の薬剤を、多重製剤(multiple dosage form)の一部として哺乳類に別々に投与してもよい。
【0050】
以下の表1は、本開示の化合物とともに投与されうる化合物のいくつかの実例を列挙する。本開示の化合物は、併用療法で、一緒にもしくは別々に、または該化合物を組成物の中に混合することによって、他の抗HCV活性化合物とともに投与されうる。
表1
【表1】













【0051】
本開示の別の態様は、本開示の多形を投与することによる、患者におけるHCV NS5A活性の阻害方法を提供する。
【0052】
ある態様において、これらの方法は、患者におけるHCV NS5A活性を低下させるのに有用である。該医薬組成物に、活性成分として本開示の多形のみが含まれる場合、このような方法には、免疫調節剤、抗ウイルス剤、HCV NS5A阻害剤、またはHCV生活環における他の標的、例えば、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、プロテアーゼ、もしくはメタロプロテアーゼの阻害剤から選択される薬剤を前記患者に投与する段階がさらに含まれていてもよい。このような追加の薬剤は、本開示の化合物の投与前、投与と同時、または投与後に患者に投与されうる。
【0053】
別の態様において、これらの方法は、患者におけるウイルス複製を阻害するのに有用である。このような方法は、HCV疾患の治療または予防に有用でありうる。
【0054】
本開示の多形はまた、実験用試薬としても用いられうる。該多形は、ウイルス複製アッセイをデザインするための研究手段、動物アッセイ系の検証およびHCV疾患のメカニズムの知識をさらに深めるための構造生物学研究を提供する手段となりうる。
【0055】
本開示の多形はまた、物質のウイルス汚染を治療もしくは予防するのに用いられてもよく、それゆえ、このような物質、例えば、血液、組織、手術器具および衣服、実験器具および衣服、並びに採血もしくは輸血器具および材料と接触する実験室もしくは医療従事者もしくは患者のウイルス感染の危険性を低下させる。
これらに限らないが、以下の実施例は本開示の実例となる。
【0056】
(実施例)
【化15】

化合物2の製造
窒素ライン、オーバーヘッド撹拌機および熱電対を取り付けた3つ口丸底フラスコ(1L)に、1,1’−(ビフェニル−4,4’−ジイル)ジエタノン(20g、83.9mmol、1当量)、CH2Cl2(200mL)および臭素(8.7mL、27.1g、169.3mmol、2.02当量)を入れた。混合物を周囲条件下で、窒素下約20時間撹拌した。生じたスラリーにCH2Cl2(200mL)を加え、減圧蒸留によって約150mLに減るまで濃縮した。スラリーを次いでTHFに溶媒交換し、減圧蒸留によって目標容積の200mLにした。スラリーを1時間かけて20〜25℃に冷却し、20〜25℃でさらに1時間撹拌した。オフホワイトの結晶性固形物を濾過し、CH2Cl2(150mL)で洗浄した。生成物を60℃で減圧乾燥して、目的の生成物(27.4g、69.2mmol、82%)を得た:
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.95-7.85 (m, 4H), 7.60-7.50 (m, 4H), 4.26 (s, 4H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 191.0, 145.1, 133.8, 129.9, 127.9, 30.8; IR (KBr, cm-1) 3007, 2950, 1691, 1599, 1199; C16H12Br2O2についての元素分析: C, 48.52; H, 3.05; Br, 40.34. 実測値: C, 48.53; H, 3.03; Br, 40.53. C16H13Br2O2について計算されたHRMS (M + H; DCI+): 394.9282. 実測値: 394.9292. 融点 224-226 ℃.
【0057】
【化16】

化合物3の製造
窒素ライン、熱電対およびオーバーヘッド撹拌機を取り付けたジャケットフラスコ(jacketed flask)(500mL)に、化合物2(20g、50.5mmol、1当量)、1−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリン(22.8g、105.9モル、2.10当量)およびアセトニトリル(200mL)を入れた。スラリーを20℃に冷却し、続いてDIPEA(18.2mL、13.5g、104.4mmol、2.07当量)を加えた。スラリーを25℃に加温し、3時間撹拌した。生じた透明な有機溶液をNaCl水(3×100mL、13重量%)で洗浄した。豊富なアセトニトリル溶液をトルエン(目標容積=215mL)に溶媒交換し、減圧蒸留によって0.5容積%未満のアセトニトリルにした。
【0058】
【化17】

化合物4の製造
化合物3のトルエン溶液に酢酸アンモニウム(78g、1.011モル、20当量)を加え、95〜100℃に加熱した。混合物を95〜100℃で15時間撹拌した。反応完了後、混合物を70〜80℃に冷却し、酢酸(7mL)、n−ブタノール(40mL)、および酢酸水(80mL、5容積%)を加えた。温度を>50℃に維持しながら、生じた二相性溶液を分離した。温度を>50℃に維持しながら、豊富な有機相に、酢酸水(80mL、5容積%)、酢酸(30mL)およびn−ブタノール(20mL)を加えた。温度を>50℃に維持しながら、生じた二相性溶液を分離し、豊富な有機相を追加の酢酸水(80mL、5容積%)で洗浄した。豊富な有機相を次いでトルエンに溶媒交換し、減圧蒸留によって目標容積の215mLにした。温度を>60℃に維持しながら、メタノール(64mL)を加えた。生じたスラリーを70〜75℃に加熱し、1時間経過させた。スラリーを1時間かけて20〜25℃に冷却し、その温度でさらに1時間経過させた。スラリーを濾過し、ケーキをトルエン:メタノール(10:3、200mL)で洗浄した。生成物を70℃で減圧乾燥して、目的の生成物(19.8g、31.7mmol、63%)を得た:
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.00-11.00 (s, 2H), 7.90-7.75 (m, 4H), 7.75-7.60 (m, 4H), 7.60-7.30 (s, 2H), 4.92-4.72 (m, 2H), 3.65-3.49 (m, 2H), 3.49-3.28 (m, 2H), 2.39-2.1 (m, 2H), 2.10-1.87 (m, 6H), 1.60-1.33 (s, 8H), 1.33-1.07 (s, 10H); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 154.1, 153.8, 137.5, 126.6, 125.0, 78.9, 78.5, 55.6, 55.0, 47.0, 46.7, 33.7, 32.2, 28.5, 28.2, 24.2, 23.5; IR (KBr, cm-1) 2975, 2876, 1663, 1407, 1156, 1125; calcd for C36H45N6O4について計算されたHRMS (M + H; ESI+): 625.3502. 実測値: 625.3502. 融点 190-195 ℃ (分解した).
【0059】
【化18】

化合物5の製造
窒素ラインおよびオーバーヘッド撹拌機を備えた反応器(250mL)に、化合物4(25.0g、40.01mmol、1当量)を入れ、続いてメタノール(250mL)およびHCl水(6M、32.85mL、400.1mmol、10当量)を入れた。温度を50℃に上昇させ、50℃で5時間撹拌した。生じたスラリーを20〜25℃に冷却し、約18時間撹拌を保持した。スラリーの濾過によって、固形物を得て、それを90% メタノール/水(V/V、100mL)およびメタノール(2×100mL)で連続的に洗浄した。ウェットケーキを真空オーブン中終夜50℃で乾燥して、目的の生成物(18.12g、31.8mmol、79.4%)を得た。
【0060】
化合物5の再結晶
窒素ラインおよびオーバーヘッド撹拌機を備えた反応器(250mL)に、上記の化合物5(17.8g)を入れ、続いてメタノール(72mL)を入れた。生じたスラリーを50℃で4時間撹拌し、20〜25℃に冷却し、20〜25℃で1時間撹拌を保持した。スラリーの濾過によって、結晶性固形物を得て、それをメタノール(60mL)で洗浄した。生じたウェットケーキを真空オーブン中4日間50℃で乾燥して、精製した生成物(14.7g、25.7mmol、82.6%)を得た:
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.5-10.25 (br, 2H), 10.1-9.75 (br, 2H), 8.19 (s, 2H), 7.05 (d, J = 8.4, 4H), 7.92 (d, J = 8.5, 4H), 5.06 (m, 2H), 3.5-3.35 (m, 4H), 2.6-2.3 (m, 4H), 2.25-2.15 (m, 2H), 2.18-1.96 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 156.6, 142.5, 139.3, 128.1, 127.5, 126.1, 116.9, 53.2, 45.8, 29.8, 24.3; IR (KBr, cm-1) 3429, 2627, 1636, 1567, 1493, 1428, 1028. C26H32N6Cl4についての元素分析: C, 54.75; H, 5.65; Cl, 24.86; 1.9% 水で調整した: C, 53.71; H, 5.76; N, 14.46; Cl, 24.39. 実測値: C, 53.74; H, 5.72; N, 14.50; Cl, 24.49; KF = 1.9. 融点 240 ℃ (分解した).
【0061】
【化19】

化合物(I)の製造
窒素ラインおよびオーバーヘッド撹拌機を備えたジャケットフラスコ(1L)に、アセトニトリル(100mL)、ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(13.69g、89.4mmol、2.5当量)、N−(メトキシカルボニル)−L−バリン(15.07g、86mmol、2.4当量)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(16.46g、85.9mmol、2.4当量)および追加のアセトニトリル(100mL)を連続して入れた。生じた溶液を20℃で1時間撹拌し、精製した化合物5(20.4g、35.8mmol、1当量)を加えた。スラリーを約0℃に冷却し、温度を10℃未満に維持しながら、ジイソプロピルエチルアミン(18.47g、142.9mmol、4当量)を30分かけて加えた。溶液を3時間かけてゆっくりと15℃に加熱し、15℃で12時間保持した。生じた溶液にNaCl水(120mL、13重量%)を加え、1時間50℃に加熱した。20℃に冷却した後、酢酸イソプロピル(100mL)を加えた。二相性溶液をフィルター(0.45μm)に通して濾過し、混合物を分離した。豊富な有機相を、NaCl(13重量%)を含有するNaOH溶液(0.5N、2×240mL)で洗浄し、続いてNaCl水(120mL、13重量%)で洗浄した。混合物を次いで酢酸イソプロピルに溶媒交換し、減圧蒸留によって目標容積の400mLにした。生じた濁った溶液を20℃に冷却し、フィルター(0.45μm)を通して濾過した。透明な溶液を次いでエタノールに溶媒交換し、減圧蒸留によって目標容積の140mLにした。温度を50℃に維持しながら、1.24M HClのエタノール溶液(66.4mL、82.3mmol、2.3当量)を加えた。混合物に次いで化合物(I)の種晶(以下の製造を参照)(33mg、0.04mmol、0.001当量)を加え、生じたスラリーを50℃で3時間撹拌した。混合物を1時間かけて20℃に冷却し、その温度でさらに22時間経過させた。スラリーを濾過し、ウェットケーキをアセトン:エタノール(2:1、100mL)で洗浄した。固形物を真空オーブン中70℃で乾燥して、目的の生成物(22.15g、27.3mmol、76.3%)を得た。
【0062】
【化20】

化合物(I)の炭素処理および再結晶
上記の化合物(I)(3.17g)をメタノール(22mL)に溶解することによって、化合物(I)の溶液を製造した。溶液を〜5psig、流速〜58mL/分で、47mM Cuno Zeta Carbon(登録商標) 53SP フィルターに通した。炭素フィルターをメタノール(32mL)ですすいだ。減圧蒸留によって溶液を16mLに減るまで濃縮した。温度を40〜50℃に維持しながら、アセトン(15.9mL)および化合物(I)の種晶(5mg、以下の手順を参照)を加えた。生じたスラリーに次いで30分かけてアセトン(32mL)を入れた。スラリーを50℃で2時間保持し、約1時間かけて20℃に冷却し、20℃で約20時間保持した。固形物を濾過し、アセトン:メタノール(2:1、16mL)で洗浄し、真空オーブン中60℃で乾燥して、精製した化合物(I)(2.14g、67.5%)を得た:
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, 80 ℃): 8.02 (d, J=8.34 Hz, 4 H), 7.97 (s, 2 H), 7.86 (d, J=8.34 Hz, 4 H), 6.75 (s, 2 H), 5.27 (t, J=6.44 Hz, 2 H), 4.17 (t, J=6.95 Hz, 2 H), 3.97 - 4.11 (m, 2 H), 3.74 - 3.90 (m, 2 H), 3.57 (s, 6 H), 2.32 - 2.46 (m, 2 H), 2.09 - 2.31 (m, 6 H), 1.91 - 2.07 (m, 2 H), 0.88 (d, J=6.57 Hz, 6 H), 0.79 (d, J=6.32 Hz, 6 H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6): δ 170.9, 156.9, 149.3, 139.1, 131.7, 127.1, 126.5, 125.9, 115.0, 57.9, 52.8, 51.5, 47.2, 31.1, 28.9, 24.9, 19.6, 17.7; IR (neat, cm-1): 3385, 2971, 2873, 2669, 1731, 1650. C40H52N8O6Cl2についての元素分析: C, 59.18; H, 6.45; N, 13.80; Cl, 8.73. 実測値 C, 59.98; H, 6.80; N, 13.68; Cl, 8.77. 融点 267 ℃ (分解した).
【0063】
化合物(I)の種晶の製造
丸底フラスコ(250mL)に、化合物5(6.0g、10.5mmol、1当量)、N−(メトキシカルボニル)−L−バリン(3.87g、22.1mmol、2.1当量)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(4.45g、23.2mmol、2.2当量)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.289g、2.14mmol、0.2当量)、およびアセトニトリル(30mL)を入れた。生じたスラリーに次いでジイソプロピルエチルアミン(7.33mL、42.03mmol、4当量)を加え、24〜30℃で約18時間撹拌した。混合物に水(6mL)を入れ、約5時間50℃に加熱した。混合物を冷却し、酢酸エチル(32mL)および水(30mL)を入れた。層を分離し、豊富な有機層を、NaHCO3水(30mL、10重量%)、水(30mL)、およびNaCl水(20mL、10重量%)で洗浄した。豊富な有機層を次いでMgSO4で乾燥し、濾過し、残渣になるまで濃縮した。粗物質を次いでフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、0〜10% メタノールのジクロロメタン溶液)によって精製して、遊離塩基の化合物(I)を得た。
【0064】
遊離塩基の化合物(I)(0.03g)を20℃でイソプロパノール(1mL)に溶解した。無水HCl(70μL、エタノールに溶解、濃度約1.25M)を加え、反応混合物を撹拌した。溶液にメチルtert−ブチルエーテル(1mL)を加え、生じたスラリーを40℃〜50℃で12時間勢いよく撹拌した。結晶スラリーを20℃に冷却し、濾過した。ウェットケーキを20℃で風乾した。白色結晶性固形物(N−2型の化合物(I))を得た。
【0065】
下記の一つ以上の試験方法を用いて、N−2型を分析した。
1 単結晶X線測定
Cu Kα照射(λ=1.54178Å)の回転陽極発生装置(rotating anode generator)を備えたブルカー APEX2 Kappa CCD回折計を用いて、室温で回折データを集めた。測定された強度データの索引付けおよび処理は、APEX2ソフトウェアパッケージ/プログラムスイート(program suite)(APEX2 データ収集および処理ユーザーインターフェース:APEX2 ユーザーマニュアル、v1.27;ブルカー AXS社、5465 イースト・シェリル・パークウェイ(East Cheryl Parkway)、マディソン、WI 53711 USA)を用いて実行した。全データセットを用いて、最終的な単位格子パラメータを決定した。
【0066】
SHELXTLソフトウェアパッケージ(Sheldrick, GM. 1997, SHELXTL. Structure Determination Programs. Version 5.10, Bruker AXS, Madison, Wisconsin, USA.)を用いて、構造を直接法によって解析し、完全行列(full-matrix)最小二乗法によって精密化した。精密化において最小化された関数は、Σw(|Fo|−|Fc|)2であった。RはΣ||Fo|−|Fc||/Σ|Fo|として定義され、一方、Rw=[Σw(|Fo|−|Fc|)2/Σw|Fo21/2であり、ここでwは観測強度における誤差に基づく適当な重み関数である。示差フーリエマップ(Difference Fourier map)を、精密化の全段階で調査した。すべての水素でない原子を、異方性熱変位パラメータで精密化した。最終の示差フーリエマップにおいて、水素結合に関わる水素原子を置いたが、一方、他の水素原子の位置は、標準的な結合距離および結合角を有する理想化された配置(idealized geometry)から計算した。これらは等方性温度因子を割り当てられ、固定パラメータによる構造因子計算に含められた。
【0067】
N−2型の結晶データを表2に示す。部分原子座標を表3に列挙する。座標におけるわずかな変化は可能であり、本開示の範囲内であると見なされることは、当業者に理解されているはずである。
【0068】
表2. N−2型の結晶データ
【表2】

【0069】
表3. 原子座標
【表3】



【0070】
2. 粉末X線回折
約200mgをフィリップス粉末X線回折(PXRD)サンプルホルダーの中に詰めた。サンプルをフィリップスMPDユニット(45KV、40mA、Cu Kα)に移した。データを室温で2〜32の2θの範囲で収集した(連続走査モード、走査速度0.03度/秒、オートダイバージェンス(auto divergence)および散乱防止スリット(anti scatter slit)、受光スリット(receiving slit):0.2mm、サンプルスピナー(sample spinner):ON)。
PXRDパターン、および単結晶データから計算されたシミュレーションされたパターンの結果を図1に示す。
【0071】
表4は、N−2型の化合物(I)を表す特徴的なPXRDピークを列挙する。
表4. NIST 他の適当な基準で較正された2θを用い、回転キャピラリーを有する回折計(CuKα)で収集した質の高いパターンに基づく、室温での特徴的な回折ピーク位置(2θ±0.1度)。
【表4】

【0072】
3. 示差走査熱量測定
示差走査熱量測定(DSC)実験を、ティー・エイ・インスツルメント(登録商標)モデルQ2000、Q1000または2920において行った。サンプル(約2〜6mg)をアルミニウム皿において秤量し、100分の1ミリグラムまで正確に記録し、DSCに移した。窒素ガスを用いて50mL/分で装置をパージした。10℃/分の加熱速度で、室温と300℃の間でデータを収集した。下向きの吸熱ピークでプロットを作成した。
結果を図2に示す。
【0073】
4. 固体NMR(SSNMR)
すべての固体C−13NMR測定を、ブルカーDSX−400、400MHz NMR分光計で行った。およそ12kHzで測定中に試料を高速回転させて(magic-angle spinning)(MAS)、高出力プロトンデカップリングおよびTPPMパルスシークエンスおよび傾斜振幅交差分極(ramp amplitude cross-polarization)(RAMP−CP)を用いて、高分解能スペクトルが得られた(A.E. Bennett et al. J. Chem. Phys. 1995, 103, 6951)(G. Metz, X. Wu, and S.O. Smith, J. Magn. Reson. A., 1994, 110, 219-227)。サンプルのおよそ70mgを、キャニスターデザインジルコニアローター(canister-design zirconia rotor)に詰め込み、各実験に用いた。化学シフト(δ)は、38.56ppmにセットされた高周波共鳴で、外部基準のアダマンタンを基準とした(W.L. Earl and D.L. VanderHart, J. Magn. Reson., 1982, 48, 35-54)。
SSNMRスペクトルを図3に示す。
【0074】
表5は、N−2型の化合物(I)を表す特徴的なSSNMRピークを列挙する。
表5:N−2型の化合物(I)のSSNMRピーク位置。TMSスケールに対するピーク位置δ(ppm)。
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

のN−2型。
【請求項2】
結晶形の測定が約20℃〜約25℃の温度において、下表:

の単位格子パラメータの特徴を有する、
【化2】

のN−2型。
【請求項3】
表3に列挙された単位格子内の部分原子座標の特徴を有する、
【化3】

のN−2型。
【請求項4】
約20℃〜約25℃の温度で、10.3±0.1、12.4±0.1、12.8±0.1、13.3±0.1、13.6±0.1、15.5±0.1、20.3±0.1、21.2±0.1、22.4±0.1、22.7±0.1、および23.7±0.1の2θ値での粉末X線回折パターンにおける特徴的なピークを有する、
【化4】

のN−2型。
【請求項5】
a)結晶形の測定が約20℃〜約25℃の温度において、下表:

に実質的に等しいパラメータを有する単位格子;
b)約20℃〜約25℃の温度で、10.3±0.1、12.4±0.1、12.8±0.1、13.3±0.1、13.6±0.1、15.5±0.1、20.3±0.1、21.2±0.1、22.4±0.1、22.7±0.1、および23.7±0.1の2θ値での粉末X線回折パターンにおける特徴的なピーク;および/または
c)典型的には225℃〜245℃の範囲で発生する分解吸熱を有する融解;
のいずれか一つ以上の特徴を有する、
【化5】

のN−2型。
【請求項6】
【化6】

の実質的に純粋なN−2型。
【請求項7】
前記N−2型が少なくとも95重量%の純度を有する、請求項6の形態。
【請求項8】
前記N−2型が少なくとも99重量%の純度を有する、請求項6の形態。
【請求項9】
約20℃〜約25℃の温度で、10.3±0.1、12.4±0.1、12.8±0.1、13.3±0.1、13.6±0.1、15.5±0.1、20.3±0.1、21.2±0.1、22.4±0.1、22.7±0.1、および23.7±0.1の2θ値での粉末X線回折パターンにおける特徴的なピークを有する、
【化7】

の実質的に純粋なN−2型。
【請求項10】
【化8】

のN−2型、および医薬的に許容される担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
【化9】

の実質的に純粋なN−2型、および医薬的に許容される担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項12】
前記N−2型が少なくとも95重量%の純度を有する、請求項11の医薬組成物。
【請求項13】
前記N−2型が少なくとも99重量%の純度を有する、請求項11の医薬組成物。
【請求項14】
抗HCV活性を有する1つもしくは2つの追加の化合物と組み合わせた、
【化10】

のN−2型を含む医薬組成物。
【請求項15】
前記N−2型が少なくとも90重量%の純度を有する、請求項14の医薬組成物。
【請求項16】
前記N−2型が少なくとも95重量%の純度を有する、請求項14の医薬組成物。
【請求項17】
前記N−2型が少なくとも99重量%の純度を有する、請求項14の医薬組成物。
【請求項18】
該抗HCV活性を有する追加の化合物のうち少なくとも一つがインターフェロンまたはリバビリンである、請求項14の組成物。
【請求項19】
該インターフェロンが、インターフェロンα2B、ペグインターフェロンα、コンセンサスインターフェロン、インターフェロンα2A、およびリンパ芽球インターフェロンτから選択される、請求項18の組成物。
【請求項20】
該追加の化合物のうち少なくとも一つが、インターロイキン2、インターロイキン6、インターロイキン12、1型ヘルパーT細胞応答の発生を亢進する化合物、干渉RNA、アンチセンスRNA、イミキモド、リバビリン、イノシン5'−一リン酸脱水素酵素阻害剤、アマンタジン、およびリマンタジンから選択される、請求項14の組成物。
【請求項21】
治療有効量の
【化11】

のN−2型を哺乳類に投与することを特徴とする、哺乳類におけるHCV感染の治療方法。
【請求項22】
前記N−2型が少なくとも90重量%の純度を有する、請求項21の方法。
【請求項23】
前記N−2型が少なくとも95重量%の純度を有する、請求項21の方法。
【請求項24】
前記N−2型が少なくとも99重量%の純度を有する、請求項21の方法。
【請求項25】
該哺乳類がヒトである、請求項21の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−535785(P2010−535785A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520184(P2010−520184)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/071734
【国際公開番号】WO2009/020828
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】