説明

(+)および(−)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの合成のための方法

本発明は、(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに(−)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンまたはその薬学的に許容される塩の調製のための新規な方法に関する。これらの化合物は、薬学的有用性を有し、かつ、例えば、うつ病、不安障害、摂食障害および尿失禁の治療に有用であることが公知である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は、(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに(−)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンまたはその薬学的に許容される塩の調製のための方法に関する。これらの化合物は、例えば、うつ病、不安障害、摂食障害および尿失禁の治療に有用であることが公知である(米国特許第6,372,919号(特許文献1)、同第6,569,887号(特許文献2)、および同第6,716,868号(特許文献3)を参照)。
【0002】
ラセミ体の(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンおよび(−)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの調製に関する当技術分野で開示されている、一般的なプロセスは、比較的低くかつ一貫性のない収率で目的化合物をもたらす(例えば、米国特許第4,118,417号(特許文献4)、同第4,131,611号(特許文献5)、同第4,196,120号(特許文献6)、同第4,231,935号(特許文献7)、同第4,435,419号(特許文献8)、同第6,372,919号(特許文献1)、同第6,569,887号(特許文献2)、同第6,716,868号(特許文献3);Sorbera, et al., Drugs Future 2005, 30, 7(非特許文献1);およびEpstein, et al., J. Med. Chem., 1981, 24, 481(非特許文献2)を参照)。このようなプロセスのいくつかは高価な試薬の使用に頼っている。既知のプロセスとは対照的に、本発明は、比較的高い収率および鏡像体純度での、(+)または(−)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの調製のための有効な方法を提供する。当然のことながら、(+)および(−)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンは有用な治療剤である。そこで、容易にスケールアップに適用でき、費用効率が高くかつ容易に入手可能な試薬を用い、かつそれゆえに大規模な製造への実用化が可能である、(+)および(−)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの調製のためのプロセスの開発が必要である。従って、本発明は、非常に簡単で、短く、かつ高効率の合成を経る、(+)および(−)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの調製のための方法を提供する。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,372,919号
【特許文献2】米国特許第6,569,887号
【特許文献3】米国特許第6,716,868号
【特許文献4】米国特許第4,118,417号
【特許文献5】米国特許第4,131,611号
【特許文献6】米国特許第4,196,120号
【特許文献7】米国特許第4,231,935号
【特許文献8】米国特許第4,435,419号
【非特許文献1】Sorbera, et al., Drugs Future 2005, 30, 7
【非特許文献2】Epstein, et al., J. Med. Chem., 1981, 24, 481
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明の新規方法は、(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンおよび(−)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの不斉合成に関する。特に、本発明は、下記式 I:

の化合物、もしくはその薬学的に許容される塩、
または下記式 Ib:

の化合物、もしくはその薬学的に許容される塩の調製のための新規方法を提供する。
【0005】
発明の詳細な説明
本発明は、下記式 I:

の化合物、またはその薬学的に許容される塩を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
塩基の存在下、下記式:

の3,4-ジクロロフェニルアセトニトリルと(S)-エピクロロヒドリンとを接触させて、下記式 II:

のシクロプロピル化合物を得る工程;次いで
該式 II の化合物を還元剤で還元して、下記式 III:

のアミノアルコール化合物を得る工程;次いで
該式 III の化合物を塩素化剤で塩素化して、下記式 IV:

のクロロ化合物を得る工程;次いで
該式 IV の化合物を塩基で脱水環化して、式 I の化合物、またはその薬学的に許容される塩を得る工程。
【0006】
本発明は、さらに下記式 I:

の化合物またはその薬学的に許容される塩を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
下記式 IV-1:

の化合物を塩基で脱水環化して、式 I の化合物、またはその薬学的に許容される塩を得る工程。
【0007】
本発明は、さらに下記式 Ib:

の化合物、またはその薬学的に許容される塩を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
塩基の存在下、下記式:

の3,4-ジクロロフェニルアセトニトリルと(R)-エピクロロヒドリンとを接触させて、下記式 IIb:

のシクロプロピル化合物を得る工程;次いで
該式 IIb の化合物を還元剤で還元して、下記式 IIIb:

のアミノアルコール化合物を得る工程;次いで
該式 IIIb の化合物を塩素化剤で塩素化して、下記式 IVb:

のクロロ化合物を得る工程;次いで
該式 IVb の化合物を塩基で脱水環化して、式 Ib の化合物、またはその薬学的に許容される塩を得る工程。
【0008】
本発明は、さらに下記式 Ib:

の化合物、またはその薬学的に許容される塩を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
下記式 IVb-2:

の化合物を塩基で脱水環化して、式 Ib の化合物、またはその薬学的に許容される塩を得る工程。
【0009】
本発明の態様において、塩基の存在下、3,4-ジクロロフェニルアセトニトリルと(S)-エピクロロヒドリン(または(R)-エピクロロヒドリン)とを接触させて、式 II(またはIIb)のシクロプロピル化合物を得る工程で、該塩基は、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)、カリウムt-ブトキシド、カリウムt-ペントキシド、カリウムアミラート、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムテトラメチルピペリジド(LiTMP)、sec-ブチルリチウム、またはtert-ブチルリチウムより選択され得る。この態様の範囲内において、塩基は、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)、およびリチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)より選択される。さらにこの態様の範囲内において、塩基はナトリウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)である。塩基の存在下、3,4-ジクロロフェニルアセトニトリルと(S)-エピクロロヒドリン(または(S)-エピクロロヒドリン)とを接触させて、式 II(またはIIb)のシクロプロピル化合物を得る工程を行うための溶媒は、有機溶媒を包含する。この態様の範囲内において、有機溶媒は、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジグリム、ジメトキシエタン(DME)、またはメチルt-ブチルエーテルを包含する。さらにこの態様の範囲内において、有機溶媒はテトラヒドロフランである。塩基の存在下、3,4-ジクロロフェニルアセトニトリルと(S)-エピクロロヒドリン(または(S)-エピクロロヒドリン)とを接触させて、式 II(またはIIb)のシクロプロピル化合物を得る工程は、通常、約-30℃と約25℃の間の温度範囲で実行される。この態様の範囲内において、温度範囲は約0℃より下である。さらにこの態様の範囲内において、温度範囲は約-20℃と約-5℃の間である。本発明の態様において、式 II(またはIIb)の化合物を還元剤で還元して、式 III(またはIIIb)のアミノアルコール化合物を得る工程で、該還元剤は、ボランジメチルスルフィド錯体、ボランテトラヒドロフラン錯体、水素化ほう素ナトリウム‐三ふっ化ほう素エーテラート、ジアルキルボラン、9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9-BBN)、および水素化リチウムアルミニウム(LAH)より選択され得る。さらにこの態様の範囲内において、還元剤はボランジメチルスルフィド錯体である。式 II の化合物を還元剤で還元して、式 III(またはIIIb)のアミノアルコール化合物を得る工程を行うための溶媒は、有機溶媒を包含する。この態様の範囲内において、有機溶媒は、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジグリム、ジメトキシエタン(DME)、またはメチルt-ブチルエーテルを包含する。さらにこの態様の範囲内において、有機溶媒はテトラヒドロフランである。式 II(またはIIb)の化合物を還元剤で還元して、式 III(またはIIIb)のアミノアルコール化合物を得る工程は、通常、約-30℃と約25℃の間の温度範囲で実行される。この態様の範囲内において、温度範囲は約0℃より下である。さらにこの態様の範囲内において、温度範囲は約-20℃と約-5℃の間である。
【0010】
本発明の態様において、式 III(またはIIIb)の化合物を塩素化剤で塩素化して、式 IV(またはIVb)のクロロ化合物を得る工程で、該塩素化剤は、塩化チオニル、SO2Cl2、およびPh3P/CCl4より選択され得る。さらにこの態様の範囲内において、塩素化剤は塩化チオニルである。式 III(またはIIIb)の化合物を塩素化剤で塩素化して、式 IV(またはIVb)のクロロ化合物を得る工程を行うための溶媒は、有機溶媒を包含する。この態様の範囲内において、有機溶媒は、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジグリム、ジメトキシエタン(DME)、メチルt-ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、またはN-メチルピロリジノンを包含する。さらにこの態様の範囲内において、有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、および酢酸イソプロピルを包含する。式 III(またはIIIb)の化合物を塩素化剤で塩素化して、式 IV(またはIVb)のクロロ化合物を得る工程は、通常、約0℃と約40℃の間の温度範囲で実行される。この態様の範囲内において、温度範囲は約0℃より下である。さらにこの態様の範囲内において、温度は約25℃である。
【0011】
本発明の態様において、式 IV(またはIVb)の化合物を塩基で脱水環化して、式(またはIb)の化合物を得る工程で、該塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、Et3N、i-Pr2NEt、DABCO、DBU、または他のアミン塩基より選択され得る。さらにこの態様の範囲内において、塩基は水酸化ナトリウムである。式 IV(またはIVb)の化合物を塩基で脱水環化して、式I(またはIb)の化合物を得る工程を行うための溶媒は、水性溶媒を包含する。式 IV(またはIVb)の化合物を塩基で脱水環化して、式I(またはIb)の化合物を得る工程において、pHは、通常、約7〜10の範囲である。この態様の範囲内において、pHは約8〜10である。さらにこの態様の範囲内において、pHは約8.5〜9.5である。本発明の態様において、方法の工程は、中間体化合物を単離せずに連続して行われる。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、下記に示す(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの調製のための方法に関する。

【0013】
さらなる態様において、本発明は、下記に示す(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの調製のための方法に関する。

【0014】
別の態様において、本発明は、

からなる群より選択される化合物、またはその塩に関する。
【0015】
本発明は、(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンまたは(−)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンが、いかなる中間体の単離も要しない1つの一貫した方法を経て調製され得るように、有効で、かつ原子効率の高い重金属なしの合成を提供する。安価に市販されている3,4-ジクロロフェニルアセトニトリルおよび(S)-エピクロロヒドリン(または(R)-エピクロロヒドリン)から出発し、鍵中間体シクロプロパンを構築する。さらなる処理をせずに、ワンポットで、未精製の反応混合物をボランジメチルスルフィド錯体で還元して、アミノアルコール中間体を得る。目的のcis-アミノアルコールを直接脱水環化して、(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンまたは(−)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンを得る。全合成を、1段階の一貫した方法として行い、(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンのHCl塩または(−)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンのHCl塩を直接単離してもよい。
【0016】
本発明の別の局面は、(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、またはその薬学的に許容される塩が、90%を超える、95%を超える、98%を超える、99%を超える、99.5%(鏡像体過剰率)を超える、または99.9%(鏡像体過剰率)を超える、鏡像体純度(鏡像体過剰率)で存在する、前述の方法に関する。
【0017】
本発明の別の局面は、(−)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、またはその薬学的に許容される塩が、90%を超える、95%を超える、98%を超える、99%を超える、99.5%(鏡像体過剰率)を超える、または99.9%(鏡像体過剰率)を超える、鏡像体純度(鏡像体過剰率)で存在する、前述の方法に関する。
【0018】
「薬学的に許容される塩」という用語は、無機酸または有機酸を含む、薬学的に許容される無毒の酸から調製される塩のことをいう。このような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、およびp-トルエンスルホン酸等が挙げられる。具体的な酸としては、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸、および酒石酸が挙げられる。具体的な酸は塩酸である。
【0019】
本方法は、驚くほど効率的であり、副生成物の生成を最小限にし、かつ生産性および純度を向上させる。本方法のための出発物質および試薬は、市販されているか、もしくは文献で公知であり、または類似化合物に関して記載された文献の方法に従って調製され得る。反応の実行および得られる反応生成物の精製に必要とされる技術は、当業者に公知である。精製法としては、結晶化、蒸留、順相または逆相クロマトグラフィーが挙げられる。
【0020】
以下の実施例は、単にさらなる説明の目的で提供するものであり、開示した発明を限定することを意図するものではない。特に断りのない限り、全ての反応は、標準的な空気をなくす操作技術を用いて、N2雰囲気下で行った。溶媒は、Fisher Scientific Companyから購入し、さらに精製することなく用いた。市販の試薬は、AldrichまたはBayerから購入し、さらに精製することなく用いた。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析は、ACE 5 C18(240×4.6 mm I.D., 粒径5 μm)カラムを備えつけたAgilent Technology 1100シリーズの機器を用いて行った。プロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルは、Bruker Avance-400の機器(400 MHz)で測定した。カーボン核磁気共鳴(13C NMR)スペクトルは、プロトン完全デカップリングを伴うBruker Avance-400の機器(100 MHz)で測定した。化学シフトは、テトラメチルシラン(TMS)からダウンフィールドした(downfield)ppmで報告する。
【0021】
実施例1
(1R,5S)-(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.10]ヘキサン
N2雰囲気下、-15℃で、3,4-ジクロロフェニルアセトニトリル(3.50 kg)およびS-(+)-エピクロロヒドリン(2.22 kg)のTHF(18.5 L)溶液に、NaHMDS(16.5 L, THF中2M)を3時間かけて滴下した。反応混合物を-15℃で3時間攪拌し、次いで-5℃で終夜攪拌した。BH3-Me2S(正味, 10M, 4.4 L)を2時間かけて添加した。次いで、反応混合物を3時間かけて徐々に40℃に温めた。40℃で1.5時間熟成した後、反応混合物を20〜25℃に冷却し、2N HCl溶液(27.7 L)中でゆっくりと失活させた。次いで、失活させた混合物を40℃で1時間熟成した。濃NH4OH(6.3 L)を添加して、水層を捨てた。i-PrOAc(18.5 L)および5%第二リン酸ナトリウム(18.5 L)を加えた。次いで、有機相を飽和食塩水(18.5 L)で洗浄し、真空下で、共沸乾燥して、溶媒をi-PrOAc(約24.5 L)に置換した。
【0022】
室温で、上記の未精製アミノアルコールのi-PrOAc溶液を、SOCl2(22.1 mol, 1.61 L)のi-PrOAc(17.5 L)溶液の表面下に、2時間かけてゆっくりと添加した。さらに1〜5時間熟成した後、外部からの冷却でバッチ温度を<30℃で維持しながら、5.0 N NaOH(16.4 L)を1時間かけて添加した。二相反応混合物を室温で1時間攪拌し、NaOHでのpH滴定によりpHを安定化(通常、8.5〜9.0に)させた。有機相を40%含水i-PrOH(21 L)で洗浄し、次いで水(10.5 L)で洗浄した。濃HCl(1.69 L)を添加した。真空下で、含水i-PrOAcを約24.5 Lまで共沸濃縮した。メチルシクロヘキサン(17.5 L)を2時間かけて滴下した。ウェットケーキ(wet cake)を7 Lの40%メチルシクロヘキサン/i-PrOAcで置換洗浄し、次いでスラリー洗浄(7 L, i-PrOAc)および置換洗浄(7 L, i-PrOAc)した。代表的な単離収率:重量%で補正して57〜60%:87〜99.5%(HCl塩に基づく)。
【0023】
(1R,5S)-(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.10]ヘキサンのHCl塩(5.0 kg)をi-PrOH(14.25 L)と水(0.75 L)に、55℃で溶解した。種晶(50 g)を48〜50℃で添加した。バッチを2〜4時間かけて室温(20℃)に冷却した。MeOBu-t(37 L)を2時間かけて滴下した。20℃で1時間熟成した後、バッチを濾過した。ウェットケーキを30% i-PrOHを含有するMeOBu-t 10 Lで置換洗浄し、次いで10% i-PrOHを含有するMeOBu-t 2×7.5 Lで置換洗浄(スラリー洗浄、次いで置換洗浄)した。ウェットケーキを室温でN2下(10〜50 RH%)、吸引乾燥して、(1R,5S)-(+)-1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-アザビシクロ[3.10]ヘキサンの0.5水和物HCl塩を得た。代表的な収率:92%。

【0024】
本発明を、そのある特定の態様に関して記載および説明してきたが、当業者は、方法および手順の種々の適応、変更、改変、置換、削除、または付加が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることを、十分に理解するであろう。例えば、本明細書で前記に記載した特定の条件以外の反応条件を、前記で示した本発明の方法から化合物を調製するための試薬または方法における変動の結果として適用してもよい。同様に、出発物質の比反応性は、特定の置換基の存在もしくは製造の条件に従って、およびそれに応じて変化してもよく、結果におけるこのような予期される変動または相違は、本発明の目的および慣習に従って予測される。それゆえ、本発明は添付の特許請求の範囲により定義されること、およびこのような特許請求の範囲は道理にかなう程度の広義に解釈されることが、意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式 I:

の化合物、またはその薬学的に許容される塩を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法:
塩基の存在下、下記式:

の3,4-ジクロロフェニルアセトニトリルと(S)-エピクロロヒドリンとを接触させて、下記式 II:

のシクロプロピル化合物を得る工程;次いで
該式 II の化合物を還元剤で還元して、下記式 III:

のアミノアルコール化合物を得る工程;次いで
該式 III の化合物を塩素化剤で塩素化して、下記式 IV:

のクロロ化合物を得る工程;次いで
該式 IV の化合物を塩基で脱水環化して、式 I の化合物、またはその薬学的に許容される塩を得る工程。
【請求項2】
下記式 I:

の化合物またはその薬学的に許容される塩を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法:
下記式 IV-1:

の化合物を塩基で脱水環化して、式 I の化合物、またはその薬学的に許容される塩を得る工程。
【請求項3】
塩基の存在下、3,4-ジクロロフェニルアセトニトリルと(S)-エピクロロヒドリンとを接触させて、式 II のシクロプロピル化合物を得る工程で、該塩基が、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)、カリウムt-ブトキシド、カリウムt-ペントキシド、カリウムアミラート、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムテトラメチルピペリジド(LiTMP)、sec-ブチルリチウム、およびtert-ブチルリチウムより選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
塩基が、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)およびリチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
塩基がナトリウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
式 II の化合物を還元剤で還元して、式 III のアミノアルコール化合物を得る工程で、該還元剤が、ボランジメチルスルフィド錯体、ボランテトラヒドロフラン錯体、水素化ほう素ナトリウム‐三ふっ化ほう素エーテラート、ジアルキルボラン、9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9-BBN)、および水素化リチウムアルミニウム(LAH)より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
還元剤がボランジメチルスルフィド錯体である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
式 III の化合物を塩素化剤で塩素化して、式 IV のクロロ化合物を得る工程で、該塩素化剤が、塩化チオニル、SO2Cl2、およびPh3P/CCl4より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
塩素化剤が塩化チオニルである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
式 IV の化合物を塩基で脱水環化して、式 I の化合物を得る工程で、該塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、Et3N、i-Pr2NEt、DABCOおよびDBUより選択される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
塩基が水酸化ナトリウムである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
工程が中間体化合物を単離せずに連続して行われる、請求項1記載の方法。
【請求項13】

からなる群より選択される化合物、またはその塩。

【公表番号】特表2010−500972(P2010−500972A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521739(P2009−521739)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/010288
【国際公開番号】WO2007/127396
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508320310)ドブ ファーマシューティカル インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】