説明

(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールの製造方法

本発明は(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
優れた鎮痛効果および極めて良好な忍容性を持つ活性成分の一種に、とりわけ欧州特許第0693475号から公知の置換ジメチル−(3−アリール−ブチル)−アミン化合物がある。特に、(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールは、鎮痛薬の開発にとって極めて有望な候補であることが、臨床試験で判明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって本発明の目的は、環境上許容できる条件下に、良好な総収率で、短い経路によって(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを製造することが可能な方法を提供することだった。
【0004】
特に本発明の方法では、全ての立体中心を基質制御によって確立することができ、単一のジアステレオマーだけがほとんど排他的に形成されるので、立体異性体を分離するための複雑な精製工程、および高価なキラル試薬、触媒または配位子を節約することができる。本発明の方法では望ましくない副生成物が生成されないので、各バッチをその最適処理能力で操業することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、(a)一般式(I)の化合物
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、Rは、−C1−6−アルキル、−C3−8−シクロアルキル、−C1−3−アルキレン−フェニル、−C1−3−アルキレン−ナフチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−C1−6−アルキルを表す)
を、グリニャール条件下、不活性反応媒体中で、エチルマグネシウムハライドと反応させる工程を含む、(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールまたはその酸付加塩の製造方法を提供することによって満たされる。
【0008】
好ましくは、一般式(I)の化合物において、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニル、−C(=O)−CH、−C(=O)−C、−C(=O)−CH(CHまたは−C(=O)−C(CHを表す。特に好ましくは、一般式(I)の化合物において、Rは、メチル、エチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−CHを表す。さらに好ましくは、一般式(I)の化合物において、Rは、メチル、ベンジルまたはテトラヒドロピラニルを表す。
【0009】
より一層好ましくは、一般式(I)中のRは、メチルを表す。したがって、非常に好ましくは、(S)−3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オンを、グリニャール条件下、不活性反応媒体中で、エチルマグネシウムハライドと反応させる。
【0010】
好ましくは、エチルマグネシウムブロミドまたはエチルマグネシウムクロリドを、工程a)におけるエチルマグネシウムハライドとして使用する。
【0011】
工程(a)の反応は、好ましくは不活性反応媒体中で、好ましくは、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテルまたはその任意の混合物より成る群から選ばれるような有機エーテル中で行われる。この反応は、特に好ましくは、テトラヒドロフラン中、エチルマグネシウムクロリドを使って、0.5M〜2Mのエチルマグネシウムクロリド濃度で行われる。特に好ましくは、この反応は、1Mまたは2M のエチルマグネシウムクロリド濃度で行われる。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、(a)一般式(I)の化合物
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、Rは、−C1−6−アルキル、−C3−8−シクロアルキル、−C1−3−アルキレン−フェニル、−C1−3−アルキレン−ナフチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−C1−6−アルキルを表す)
を、グリニャール条件下、不活性反応媒体中で、エチルマグネシウムハライドと反応させる工程、
(b)得られた一般式(II)の化合物
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Rは、上に定義した意味を持つ)
を、一般式(III)の化合物
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、Rは、上に定義した意味を持つ)
に、場合により酸付加塩の形で、変換する工程、
(c)得られた一般式(III)の化合物を脱保護して、式(IV)の(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール
【0019】
【化5】

【0020】
を得る工程、
(d)場合により、得られた(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを、酸付加塩に転化する工程
を含む、(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールまたはその酸付加塩の製造方法である。
【0021】
好ましくは、一般式(I)、(II)および(III)の化合物において、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニル、−C(=O)−CH、−C(=O)−C、−C(=O)−CH(CHまたは−C(=O)−C(CHを表す。特に好ましくは、一般式(I)、(II)および(III)の化合物において、Rは、メチル、エチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−CHを表す。さらに好ましくは、一般式(I)、(II)および(III)の化合物において、Rは、メチル、ベンジルまたはテトラヒドロピラニルを表す。
【0022】
より一層好ましくは、一般式(I)、(II)および(III)において、Rはメチルを表す。したがって、(S)−3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(Ia)が、以下の一連の工程(反応式1)により、(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールに変換される。
反応式1
【0023】
【化6】

【0024】
一般式(III)においてRがメチルを表す場合は、化合物(IIIa)を、好ましくは、臭化水素酸またはメタンスルホン酸およびメチオニンまたは水素化ジイソブチルアルミニウムと、反応媒体中で、好ましくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチル−メチルエーテルおよびその混合物より成る群から選ばれる反応媒体中で反応させて、式(IV)の(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを得る。
【0025】
一般式(III)においてRがメチル以外のC1−6−アルキルを表す場合は、一般式(III)の各化合物を、好ましくは、臭化水素酸または水素化ジイソブチルアルミニウムと、反応媒体中で、好ましくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチル−メチルエーテルおよびその混合物より成る群から選ばれる反応媒体中で反応させて、式(IV)の(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを得る。
【0026】
一般式(III)においてRがテトラヒドロピラニルを表す場合は、一般式(III)の各化合物を、好ましくは、少なくとも一つの無機酸と、好ましくは塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸からなる群より選択される少なくとも一つの無機酸と、場合により、少なくとも一つの塩、好ましくは塩化アンモニウムおよび硫酸水素カリウムからなる群より選択される少なくとも一つの塩の存在下、反応媒体中で、好ましくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチル−メチルエーテル、水およびその混合物より成る群から選ばれる反応媒体中で反応させて、式(IV)の(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを得る。
【0027】
一般式(III)においてRが−C−3−8−シクロアルキルを表す場合は、一般式(III)の各化合物を、好ましくは、臭化水素酸または水素化ジイソブチルアルミニウムと、反応媒体中で、好ましくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチル−メチルエーテルおよびその混合物より成る群から選ばれる反応媒体中で反応させて、式(IV)の(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを得る。
【0028】
Rが−C1−3−アルキレン−フェニルまたは−C1−3−アルキレン−ナフチルを表す場合は、一般式(III)の化合物を、臭化水素酸または水素化ジイソブチルアルミニウムと、反応媒体中で、好ましくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチル−メチルエーテルおよびその混合物より成る群から選ばれる反応媒体中で反応させるか、または水素および少なくとも一つの触媒の存在下、好ましくはパラジウムまたは白金に基づく少なくとも一つの触媒の存在下、より好ましくはパラジウム担持炭の存在下、反応媒体中で、好ましくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチル−メチルエーテルおよびその混合物より成る群から選ばれる反応媒体中で反応させて、式(IV)の(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを得る。
【0029】
一般式(III)においてRが−C(=O)−C1−6−アルキルを表す場合は、一般式(III)の各化合物を、好ましくは、少なくとも一つの無機酸と、好ましくは塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸からなる群より選択される少なくとも一つの無機酸と、または少なくとも一つの無機塩基と、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群より選択される少なくとも一つの無機塩基と、反応媒体中で、好ましくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチル−メチルエーテル、水およびその混合物より成る群から選ばれる反応媒体中で反応させて、式(IV)の(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを得る。
【0030】
本発明のもう一つの実施形態では、本発明方法の工程c)に従って脱保護を行うための薬剤が、ヨードトリメチルシラン、ナトリウムエチルスルフィド、ヨウ化リチウムおよび臭化水素酸からなる群より選択され、好ましくは臭化水素酸である。
【0031】
化合物(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールは酸付加塩の形で存在することができ、それにより、そのような付加塩を形成する能力を持つ任意の適切な酸を使用することができる。
【0032】
適切な酸との反応による化合物(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールの対応する付加塩への転化は、当業者に周知の方法で達成することができる。適切な酸として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、マンデル酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、グルタミン酸およびアスパラギン酸が挙げられるが、これらに限るわけではない。好ましい一実施形態では、酸付加塩が塩酸塩である。
【0033】
塩形成は、好ましくは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、酢酸アルキル、アセトン、2−ブタノンまたはその混合物などといった適切な溶媒中で達成しうる。また、好ましくは、適切な溶媒におけるトリメチルクロロシランとの反応を、塩酸付加塩の製造に用いることもできる。
【0034】
好ましくは、一般式(I)の化合物は、(a’)一般式(V)の化合物
【0035】
【化7】

【0036】
(式中、Rは、−C1−6−アルキル、−C3−8−シクロアルキル、−C1−3−アルキレン−フェニル、−C1−3−アルキレン−ナフチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−C1−6−アルキルを表す)
を、マンニッヒ条件下、不活性反応媒体中で、ジメチルアミン塩酸塩およびパラホルムアルデヒドと反応させ、
(a’’)次に、得られた一般式(VI)の化合物
【0037】
【化8】

【0038】
(式中、Rは、上に定義した意味を持つ)
を分割すること
によって得ることができる。
【0039】
好ましくは、一般式(V)または(VI)の化合物において、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニル、−C(=O)−CH、−C(=O)−C、−C(=O)−CH(CHまたは−C(=O)−C(CHを表す。特に好ましくは、一般式(V)または(VI)の化合物において、Rは、メチル、エチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−CHを表す。さらに好ましくは、一般式(V)または(VI)の化合物において、Rは、メチル、ベンジルまたはテトラヒドロピラニルを表す。
【0040】
より一層好ましくは、一般式(V)および(VI)において、Rはメチルを表す。したがって、1−(3−メトキシフェニル)プロパン−1−オンが、マンニッヒ条件下、不活性反応媒体中で、ジメチルアミン塩酸塩およびパラホルムアルデヒドにより、3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(VIa)に転化される。
【0041】
好ましくは、工程(a’’)における分割は、一般式(VI)の化合物を、L−(−)−ジベンゾイル酒石酸、L−(−)−ジベンゾイル酒石酸・HOおよびD−(−)−酒石酸からなる群より選択されるキラル酸と反応させた後、得られた塩を分離し、対応する一般式(I)の化合物を遊離塩基の形で遊離させることによって行われる。
【0042】
分割は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよびその任意の混合物より成る群から選ばれるアルコール系反応媒体中で行うか、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよびアセトンからなる群より選択されるアルコール系反応媒体の混合物中で行うことが好ましい。
【0043】
好ましくは、工程(b)による変換は、(b’)一般式(II)の化合物を脱水に付し、(b’’)得られた一般式(VII)の化合物
【0044】
【化9】

【0045】
(式中、Rは、−C1−6−アルキル、−C3−8−シクロアルキル、−C1−3−アルキレン−フェニル、−C1−3−アルキレン−ナフチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−C1−6−アルキルを表す)
を、不活性反応媒体中、水素の存在下で、適切な触媒を使って水素化することによって行われる。
【0046】
好ましくは、一般式(II)の化合物において、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニル、−C(=O)−CH、−C(=O)−C、−C(=O)−CH(CHまたは−C(=O)−C(CHを表す。特に好ましくは、一般式(II)の化合物において、Rは、メチル、エチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−CHを表す。
【0047】
さらに好ましくは、一般式(II)の化合物において、Rは、メチル、ベンジルまたはテトラヒドロピラニルを表す。
【0048】
より一層好ましくは、一般式(II)の化合物において、Rはメチルを表す。したがって、(2S,3R)−1−(ジメチルアミノ)−3−(3−メトキシフェニル)−2−メチルペンタン−3−オールが、脱水(工程(b’))とそれに続く水素化(工程(b’’))とによって、(2R,3R)−3−(3−メトキシフェニル)−N,N,2−トリメチルペンタン−1−アミンに変換される。
【0049】
好ましくは、工程(b’’)における水素化は、脱水工程(b’)後に、水素の存在下で、均一触媒作用によって達成される。水素は好ましくはガス状であるが、その少なくとも一部を液相に溶解させることも可能である。
【0050】
好ましくは、本発明の工程(b’’)における水素化に用いられる均一触媒は、ロジウム、イリジウムまたはルテニウムの遷移金属錯体、特に好ましくはロジウムまたはイリジウムの遷移金属錯体、さらに好ましくはロジウムとジホスフィン配位子との遷移金属錯体である。
【0051】
好ましく使用することができるジホスフィン配位子は、例えば以下の参考文献から公知である:a)H.Brunner,W.Zettlmeier「Handbook of Enantioselective Catalysis」(VCH、ワインハイム、1993)第2巻;b)I.Ojima編「Catalytic Asymmetric Synthesis Second Edition」(Wiley−VCH、ワインハイム、2000)のR.Noyoriら;c)E.N.Jacobsen,A.Pfaltz,H.Yamamoto編「Comprehensive Asymmetric Catalysis Vol I−III」(Springer、ベルリン、1999)およびそこで言及されている文献。
【0052】
特に好ましくは、触媒は、ロジウム(−)−DIPAMP[(R,R)−(−)−1,2−ビス[(2−メトキシフェニル)(フェニル)ホスフィノ]エタン]、ロジウム(+)−DIPAMP[(S,S)−(+)−1,2−ビス[(2−メトキシフェニル)(フェニル)ホスフィノ]エタン]、ロジウムR−Solphos[R−(+)−N,N’−ジメチル−7,7’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−8,8’−ビ−2H−1,4−ベンゾオキサジン]およびロジウムS−Solphos[S−(−)−N,N’−ジメチル−7,7’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−8,8’−ビ−2H−1,4−ベンゾオキサジン]からなる群より選ばれる。工程(b’’)における均一水素化のための、例えば圧力、温度または反応時間などといった反応パラメータは、広範囲にわたって変動することができる。
【0053】
好ましくは、工程(b’’)における均一水素化中の温度は、それぞれに、0〜250℃、特に好ましくは10〜40℃、さらに好ましくは15〜25℃であることができる。
【0054】
工程(b’’)における均一水素化は、好ましくは、減圧下、常圧下または高圧下で、好ましくは0.01〜300barの範囲で行うことができる。3〜20bar、特に8〜12barの範囲の圧力下で反応を行うことは、とりわけ好ましい。
【0055】
反応時間は、さまざまなパラメータ、例えば温度、圧力、反応させる化合物の性質または触媒の特性などに依存して変動する可能性があり、問題の工程について、当業者は予備試験を使って反応時間を決定することができる。
【0056】
脱水工程(b’)は好ましくは酸によって触媒される。好ましくは、酸はギ酸、塩酸、酢酸、硫酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸またはその任意の混合物より成る群から選ばれる。酸を高濃度で使用すると好ましい。特に好ましくは、塩酸の濃度が重量で>20%、好ましくは>30%、特に好ましくは>35%である。あるいは、ガス状の酸を使用することもできる。
【0057】
本発明の工程(b’)で用いられる一般式IIおよびVIIの化合物は、好ましくは、液相にあり、そのために、好ましくは、特定の反応条件下で液体である反応媒体と混合されるか、またはそのような反応媒体に溶解される。
【0058】
適切な反応媒体の例は、水、酢酸、ギ酸、トルエン、塩酸、硫酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸またはその任意の混合物である。もちろん、上述した液体の二つ以上を含む混合物または多相系を、本発明の方法において使用することも可能である。溶媒としての超臨界COにおける反応も可能である。
【0059】
工程(b’)における脱水の反応パラメータ、例えば圧力、温度または反応時間などは、広い範囲にわたって変動することができる。
【0060】
工程(b’)における反応温度は35〜100℃であれば好ましく、特に好ましくは45〜80℃、さらに好ましくは50〜60℃である。
【0061】
脱水工程(b’)は、好ましくは、減圧下、常圧下または高圧下で、好ましくは0.01〜300barの範囲で行うことができる。0.5〜5bar、特に0.5〜1.5barの範囲の圧力下で反応を行うことは、とりわけ好ましい。
【0062】
反応時間は、さまざまなパラメータ、例えば温度、圧力、反応させる化合物の性質または触媒の特性などに依存して変動する可能性があり、問題の工程について、当業者は予備試験を使って反応時間を決定することができる。工程(b’)の反応時間は2〜10時間であれば好ましく、特に好ましくは3〜8時間、さらに好ましくは4〜6時間である。
【0063】
ガスクロマトグラフィー法などを利用して反応をモニターするために、継続的な試料採取を、場合により対応する工程パラメータの調節と組み合わせて行うことも可能である。
【0064】
反応媒体における酸の濃度は、好ましくは、ギ酸なら20〜26M、酢酸なら5〜18M、塩酸なら8〜14M、および硫酸なら4〜36M、より好ましくは4〜18Mである。
【0065】
得られた一般式(VII)の特定化合物は、当業者に公知の通常の方法によって、単離および/または精製することができる。
【0066】
あるいは、脱水工程(b’)を、好ましくはイオン交換樹脂、ゼオライト、ヘテロポリ酸、ホスフェート、サルフェートおよび場合により混合金属酸化物からなる群より選択することができる少なくとも一つの酸触媒の存在下で行うこともできる。
【0067】
本発明に関して、触媒という用語は、触媒活性物質そのものと、触媒活性物質を付与された不活性物質との両方を包含する。したがって触媒活性物質は、例えば不活性担体に適用するか、または不活性物質との混合物として存在させることができる。不活性担体または不活性物質としては、例えば炭素および当業者に公知の他の物質が考えられる。
【0068】
適切な触媒およびその製造それ自体は、例えばVenuto,P.B.,Microporous Mater.,1994,2,297;Holderich,W.F.,van Bekkum,H.,Stud.Surf.Sci.Catal.,1991,58,631、Holderich,W.F.,Proceedings of the 10th International Congress on Catalysis,1992,ブダペスト、Guczi,L.ら編「New Frontiers in Catalysis」1993,Elsevier Science Publishers,Kozhenikov,I.V.,Catal.Rev.Sci.Eng.,1995,37,311,Song,X.,Sayari,A.,Catal.Rev.Sci.Eng.,1996,38,329などから、当業者に公知である。対応する文献の記載は、参照により本明細書に組み入れられ、本開示の一部を形成する。
【0069】
これらの触媒は、特にスルホン酸基を持つイオン交換樹脂を使用する脱水に適している。
【0070】
テトラフルオロエチレン/パーフルオロビニルエーテルコポリマーに基づくイオン交換樹脂(場合により、例えばOlahら,Synthesis,1996,513−531およびHarmerら,Green Chemistry,2000,7−14の論文刊行物に記載されているような(対応する記載は参照により本明細書に組み入れられ、本開示の一部を形成する)シリカナノ複合材料の形をとっているもの)は好ましい。対応する製品が、例えばNafion(登録商標)という名称で市販されており、本発明の方法ではそれらもその形態で使用することができる。
【0071】
また、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーに基づくイオン交換樹脂も好ましく、それらは当業者に公知の通常の方法によって製造することができる。
【0072】
脱水には、特に好ましくは、例えばRohm & HaasによってAmberlyst(登録商標)という名称で販売されているような、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーに基づくスルホン酸基含有イオン交換樹脂が考えられ、それらも、本発明の方法にそのまま使用することができる。これらのイオン交換樹脂は、例えば130〜160℃の高温であっても、特に水およびアルコールに対するその安定性が際立っている。
【0073】
これらのイオン交換樹脂の架橋度および構造はさまざまでありうる。例えば不均一な孔径分布を持つマクロポーラスイオン交換樹脂、事実上一様な孔径分布を持つイソポーラスイオン交換樹脂、または細孔を持たないもしくは細孔を事実上持たないゲル様イオン交換樹脂などを挙げることができる。特に、マクロポーラス樹脂は、液相における不均一触媒作用には、とりわけ有利に使用することができる。
【0074】
20〜30nmの平均孔径および樹脂1kgあたり4.70〜5.45当量の最低活性基濃度を持つとりわけ好適なマクロポーラス樹脂は、Amberlyst(登録商標)15、Amberlyst(登録商標)35およびAmberlyst(登録商標)36という名称で市販されており、したがってやはり本発明の方法において使用することができる。
【0075】
脱水を、例えばSiO、Al、TiO、Nb、Bなどの金属酸化物に基づく酸触媒、または例えばAl/SiOもしくはAl/Bなどの混合金属酸化物に基づく酸触媒の存在下で行うことも、同様に好ましい。
【0076】
好ましくは、上述のように酸触媒を使用する場合、脱水(b’)の温度は、それぞれに、0〜250℃、特に好ましくは50〜180℃、極めて好ましくは100〜160℃である。
【0077】
酸触媒と一般式(II)の化合物との比は、好ましくは、1:200〜1:1、特に1:4〜1:2の範囲にある。
【0078】
脱水後に、触媒を簡単な方法で、好ましくは濾過によって、反応混合物から分離することができる。得られた一般式(VII)の特定化合物は、当業者に公知の通常の方法によって単離および/または精製することができる。
【0079】
あるいは、一般式(II)の化合物を、過剰の塩化チオニルに(場合により反応媒体中で、好ましくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチル−メチルエーテルおよびその混合物より成る群から選ばれる反応媒体中で)さらし、次に、得られた反応混合物を40℃〜120℃、好ましくは80℃〜120℃に加熱することによって、脱水工程(b’)を行うこともできる。
【0080】
工程(b’’)の水素化は、水素による不均一触媒作用によって達成することもできる。水素は好ましくはガス状であるが、その少なくとも一部を液相に溶解させることも可能である。
【0081】
本発明に関して、不均一触媒作用とは、工程(b’’)で使用される触媒が、それぞれに、固形の集合状態で存在することを意味する。
【0082】
好ましくは、本発明の工程(b’’)において水素化に用いられる不均一触媒は、一つ以上の遷移金属を含有し、これらの金属は、好ましくは、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Ptからなる群、特に好ましくはRu、Rh、Pd、PtおよびNiからなる群より選択することができる。
【0083】
対応する触媒は、好ましくは、上述した遷移金属の一つ以上を、同じ酸化状態または異なる酸化状態で含有することができる。対応する触媒にとっては、上述した遷移金属の一つ以上を、二つ以上の異なる酸化状態で含有することも好ましいだろう。
【0084】
遷移金属をドープした触媒の製造は、当業者に公知の通常の方法で行うことができる。
【0085】
好ましくは、工程(b’’)において水素化に使用される触媒は、ラネーニッケル、パラジウム、パラジウム担持炭素(1〜10wt%、好ましくは5wt%)、白金、白金担持炭素(1〜10wt%、好ましくは5wt%)、ルテニウム担持炭素(1〜10wt%、好ましくは5wt%)およびロジウム担持炭素(1〜10wt%、好ましくは5wt%)からなる群より選択され、より好ましくはパラジウム担持炭素(1〜10wt%、好ましくは5wt%)を工程(b’’)における水素化のための触媒として使用する。
【0086】
本発明の工程(b’’)で使用される一般式VIIまたはIIIの化合物は、好ましくは液相にあり、そのために、好ましくは、特定の反応条件下で液体である反応媒体と混合されるか、またはそのような反応媒体に溶解される。
【0087】
適切な反応媒体の例は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−プロパノール、トルエン、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、酢酸、酢酸エチル、ギ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびその混合物である。より好ましくは、工程(b’’)における反応媒体として、エタノールを使用する。もちろん、上述した液体の二つ以上を含む混合物または多相系を、本発明の方法において使用することも可能である。溶媒としての超臨界COにおける反応も可能である。
【0088】
工程(b’’)における不均一水素化の反応パラメータ、例えば圧力、温度または反応時間などは、どちらも広い範囲にわたって変動することができる。
【0089】
好ましくは、工程(b’’)における不均一水素化中の温度は、それぞれに、0〜250℃、特に好ましくは15〜180℃、さらに好ましくは15〜30℃である。
【0090】
工程(b’’)における不均一水素化は、好ましくは、減圧下、常圧下または高圧下で、好ましくは1〜300barの範囲で行うことができる。2〜10bar、特に4〜10barの範囲の圧力下で反応を行うことは、とりわけ好ましい。
【0091】
反応時間は、さまざまなパラメータ、例えば温度、圧力、反応させる化合物の性質または触媒の特性などに依存して変動する可能性があり、問題の工程について、当業者は予備試験を使って反応時間を決定することができる。
【0092】
ガスクロマトグラフィー法などを利用して反応をモニターするために、継続的な試料採取を、場合により対応する工程パラメータの調節と組み合わせて行うことも可能である。
【0093】
使用される触媒の総量は、例えば触媒活性成分と存在する任意の不活性物質との比または触媒表面の性質など、さまざまな因子に依存する。当業者は、予備試験を使って、特定の反応に関する触媒の最適量を決定することができる。
【0094】
得られた一般式(III)の特定化合物は、当業者に公知の通常の方法によって、単離および/または精製することができる。
【0095】
本発明のもう一つの実施形態では、工程b)(反応式1)がHによるOH基の直接置換反応であり、これは好ましくはワンポット反応で行われる。より好ましくはOHがHによって置換される。
【0096】
本発明の工程は、それぞれを不連続(バッチ式)に行うか、連続的に行うことができ、不連続法が好ましい。
【0097】
不連続法のための反応器としては、例えばスラリー反応器が考えられ、連続法には、固定床反応器またはループ反応器が考えられる。
【0098】
以下に、(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール塩酸塩の製造方法を説明する。
【実施例】
【0099】
(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール塩酸塩の製造
【0100】
【化10】

【0101】
工程(a’):3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(VIa)の製造
電気式羽根撹拌機、ガス導入ライン、Pt100温度測定装置および油ベースの冷却/加熱システムを装備した100L(L=リットル)二重ジャケット容器中で、1−(3−メトキシフェニル)プロパン−1−オン(16.42kg、100mol)、ジメチルアミン塩酸塩(8.97kg、110mol)、パラホルムアルデヒド(3.30kg、110mol)および塩酸水溶液(32重量%、1.14kg)を、窒素雰囲気下のエタノールに溶解した。反応混合物を16時間還流し、3.5時間以内に25℃まで冷却し、その温度で1時間撹拌した。その懸濁液を遠心分離器で分離し、各7Lのアセトンで3回洗浄した。3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン塩酸塩を水(12.5L)およびtert−ブチル−メチル−エーテル(8.5L)に溶解し、室温で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(32重量%)を、pH値が10.0〜10.5に達するまで加え、相を分離させた。有機相を減圧下、40℃の温度で、圧力が5mbarに達するまで留去した。3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オンを淡黄色油状物(20.75kg、94%)として得て、それを、これ以上精製せずに次の工程に使用した。
【0102】
工程(a’’):(S)−3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(Ia)の製造
【0103】
1.a.アセトンにおける(S)−3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(2R,3R)−O,O’−ジベンゾイル酒石酸塩
機械式撹拌機、温度測定装置および油浴を装備した2L反応プラント中で、(2R,3R)−O,O’−ジベンゾイル酒石酸一水和物(189.1g、0.5mol)をアセトン(550mL)に溶解し、3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(110.6g、0.5mol)を加えた。反応混合物を35℃〜40℃に27時間加熱し、25℃まで冷ました。その懸濁液を吸い上げて(siphoned off)、(S)−3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(2R,3R)−O,O’−ジベンゾイル酒石酸塩を無色の固体として得た(233.2g、80.5%、ee 96.9%、ee=エナンチオマー過剰率)。
【0104】
1.b.アセトン/メタノールにおける(S)−3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(2R,3R)−O,O’−ジベンゾイル酒石酸塩
電気式羽根撹拌機、ガス導入ライン、Pt100温度測定装置および油ベースの冷却/加熱システムを装備した10L二重ジャケット容器中で、(2R,3R)−O,O’−ジベンゾイル酒石酸一水和物(2.1kg、5.5mol)をメタノール(555mL)およびアセトン(3340mL)の混合物に溶解し、3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(1.23kg、5.56mol)を加えた。反応混合物を35℃〜40℃に24時間加熱し、25℃まで冷ました。その懸濁液を吸い上げて、(S)−3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(2R,3R)−O,O’−ジベンゾイル酒石酸塩を無色の固体として得た(2.38kg、74%、ee 98.4%)。
【0105】
2.(S)−3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(Ia)
電気式羽根撹拌機、ガス導入ライン、Pt100温度測定装置および油ベースの冷却/加熱システムを装備した10L二重ジャケット容器中で、(S)−3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(2R,3R)−O,O’−ジベンゾイル酒石酸塩(968g、1.67mmol、ee 98%)をtert−ブチルメチルエーテル(6L)に懸濁し、ジエチルアミン(384g、5.25mol)を加えた。反応混合物を20℃〜25℃で90分間撹拌し、固体を吸い上げた。濾液を減圧下、40℃の温度で、圧力が4mbarに達するまで濃縮した。(S)−3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オンを無色の油状物として得た(356.7g、96.5%、ee 98%)。
【0106】
工程(a):(2S,3R)−1−(ジメチルアミノ)−3−(3−メトキシフェニル)−2−メチルペンタン−3−オール(IIa)の製造
【0107】
1.電気式羽根撹拌機、ガス導入ライン、Pt100温度測定装置および油ベースの冷却/加熱システムを装備した10L二重ジャケット容器中でマグネシウム(削り状)(93.57g、3.85mol)を乾燥エチルエーテル(2L)に懸濁し、エチルブロミド(25g、0.23mol)を加えた。反応が開始した後、90分以内に35℃未満の温度でエチルブロミド(438.6g、4.02mol)を追加し、反応混合物をさらに1時間撹拌した。反応混合物を10℃〜15℃まで冷却し、ジエチルエーテル(0.8L)に溶解した(S)−3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(774.6g、3.5mol、ee 98%)を加え、反応混合物をさらに2時間撹拌した。反応混合物を5℃まで冷却し、硫酸水素アンモニウム水溶液(10重量%、2L)を加えた。相を分離し、有機相を減圧下、40℃で、圧力が5mbarに達するまで濃縮した。(2S,3R)−1−(ジメチルアミノ)−3−(3−メトキシフェニル)−2−メチルペンタン−3−オール(862.3g、98%)を無色の油状物として得た(ee 98%)。
【0108】
2.電気式羽根撹拌機、ガス導入ライン、Pt100温度測定装置および油ベースの冷却/加熱システムを装備した10L二重ジャケット容器中で、(S)−3−(ジメチルアミノ)−1−(3−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(774.6g、3.5mol、ee 95%)を乾燥テトラヒドロフラン(800mL)に溶解し、エチルマグネシウムブロミド(2L、2M THF溶液)を15℃の温度で2時間以内に加えた。反応混合物をその温度で2時間撹拌し、5℃まで冷却し、硫酸水素アンモニウム水溶液(10重量%、2L)を加えた。相を分離し、有機相を減圧下、40℃で、圧力が5mbarに達するまで濃縮した。(2S,3R)−1−(ジメチルアミノ)−3−(3−メトキシフェニル)−2−メチルペンタン−3−オール(871.1g、99%)を無色の油状物として得た(ee 95%)。
【0109】
工程(b’):(R)−3−(3−メトキシフェニル)−N,N,2−トリメチルペンタ−3−エン−1−アミン(VIIa)の製造
【0110】
1.電気式羽根撹拌機、ガス導入ライン、Pt100温度測定装置および油ベースの冷却/加熱システムを装備した10L二重ジャケット容器中で、(2S,3R)−1−(ジメチルアミノ)−3−(3−メトキシフェニル)−2−メチルペンタン−3−オール(754.1g、3mol、ee 95%)をアセトン(5L)に溶解した。塩化水素(110g、3.0mol)を、15分以内に、15℃の温度で反応混合物中に導入した。反応混合物を0℃〜5℃まで冷却し、その温度で24時間の後、吸い上げた。生成物を乾燥器中、40℃および10mbarで14時間保存した。(2S,3R)−1−(ジメチルアミノ)−3−(3−メトキシフェニル)−2−メチルペンタン−3−オール塩酸塩を無色の固体として得た(722.3g、83.7%、ee 100%)。
【0111】
2.温度計、機械式圧縮空気撹拌機(mechanical compressed air stirrer)、還流冷却器および油浴を装備した250mL三口フラスコに、上述のようにして得た(2S,3R)−1−(ジメチルアミノ)−3−(3−メトキシフェニル)−2−メチルペンタン−3−オール塩酸塩を入れ、塩化水素水溶液(150mL、36重量%)を加えた。反応混合物を55℃に5時間加熱し、20℃まで冷ました。水酸化ナトリウム水溶液(33重量%)を、pH値が11に達するまで、冷却しながら加えた。酢酸エチル(150mL)を加え、反応混合物を10分間撹拌し、相を分離し、酢酸エチルを減圧下、60℃で、圧力が10mbarに達するまで除去した。(R)−3−(3−メトキシフェニル)−N,N,2−トリメチルペンタ−3−エン−1−アミン(21g、90%)を油状残渣として得た(Z/E比4.5:1)。
【0112】
工程(b’’):(2R,3R)−3−(3−メトキシフェニル)−N,N,2−トリメチルペンタン−1−アミン塩酸塩(IIIa)の製造
【0113】
1.水素および窒素供給手段、電気式気泡撹拌機(gassing stirrer)、Pt100温度測定装置、点検用ガラス(inspecting glass)およびガスコントローラーを持つ固定式蓋(stationary mounted lid)を装備した二重ジャケット水素化装置「Buchi bpc」中で、(R)−3−(3−メトキシフェニル)−N,N,2−トリメチルペンタ−3−エン−1−アミン(5kg、21.43mmol)を乾燥エタノール(13L)に、温度25℃、毎分850±150回の撹拌回転数で溶解した。水素化装置に窒素を注ぎ込んだ。パラジウム担持炭(375g、5重量%)を塩化水素水溶液(675g、32重量%)に懸濁し、反応混合物に加えた。水素化装置に再び窒素を注ぎ込み、反応を、水素の一次圧5barおよび内部水素圧力1barで、反応が完了するまで行った。水素化装置に窒素を注ぎ込み、触媒を単層フィルター上で濾過土(filtering earth)と共に濾去した。濾液を減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチルにとり、水酸化ナトリウム水溶液(10重量%、3.7L)をpH値が10〜12に達するまで20℃で加えた。有機相を減圧下、45℃〜50℃で、圧力が5mbarに達するまで濃縮した。その油状残渣は(2R,3R)−3−(3−メトキシフェニル)−N,N,2−トリメチルペンタン−1−アミンと(2R,3S)−3−(3−メトキシフェニル)−N,N,2−トリメチルペンタン−1−アミンの混合物(4.5kg、95%、比5.5(R,R):1(R,S))だった。
【0114】
電気式羽根撹拌機、ガス導入ライン、Pt100温度測定装置および油ベースの冷却/加熱システムを装備した100L二重ジャケット容器中で、(2R,3R)−3−(3−メトキシフェニル)−N,N,2−トリメチルペンタン−1−アミンと(2R,3S)−3−(3−メトキシフェニル)−N,N,2−トリメチルペンタン−1−アミンの混合物(10kg、42.56mol、比5.5:1)をアセトン(50L)に溶解した。塩化水素(1.55kg、42.51mol)を15分以内に、5℃〜25℃の温度で反応混合物中に導入した。反応混合物を0℃〜5℃まで冷却し、2時間撹拌した後、遠心分離した。その湿った固体を撹拌容器に入れ、アセトン(30L)を加え、反応混合物を15分間加熱還流した。15℃〜20℃まで冷却した後、生成物を遠心分離し、乾燥器中、40℃〜50℃、150mbarで14時間保存した。(2R,3R)−3−(3−メトキシフェニル)−N,N,2−トリメチルペンタン−1−アミン塩酸塩(7.17kg、63%)を無色の固体として得た。ジアステレオマー過剰率100%。
【0115】
工程(c):(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール塩酸塩(IV)の製造
【0116】
1.電気式羽根撹拌機、ガス導入ライン、Pt100温度測定装置および油ベースの冷却/加熱システムを装備した100L二重ジャケット容器中で、(2R,3R)−3−(3−メトキシフェニル)−N,N,2−トリメチルペンタン−1−アミン塩酸塩(5kg、18.4mol)をメタンスルホン酸(19.5L)に溶解し、メチオニン(3.35kg、22.5mol)を加えた。反応混合物を75℃〜80℃の温度で16時間撹拌し、15℃〜25℃まで冷却し、その温度で水(12.5L)をゆっくり加えた。水酸化ナトリウム水溶液(約28L、32重量%)を、温度を50℃未満に保ちながら、pH値が10〜12に達するまで加えた。酢酸エチル(15L)を加え、反応混合物を、毎分150回の撹拌回転数で、15分間撹拌した。相を分離し、有機相を水(15L)で洗浄した。活性炭(0.05kg)を有機相に加え、30分間撹拌した後、濾去した。溶媒を減圧下、40℃〜50℃の温度で、圧力が50mbarに達するまで除去した。残渣をこれ以上精製せずに次の工程に使用した。
【0117】
2.上述のようにして得た残渣を、撹拌しながらアセトン(25L)に溶解し、塩化水素(0.78kg、21.4mol)を、20℃〜25℃の温度で反応混合物中に導入した。懸濁液を0℃〜5℃の温度で3時間撹拌し、遠心分離した。反応容器中の湿った固体にイソプロパノール(35L)を加え、反応混合物を15分間加熱還流した。反応混合物を0℃〜5℃まで冷却し、その温度で3時間撹拌した。遠心分離後に、生成物を乾燥器中、30℃〜40℃、150mbarで、16時間保存した。(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノール塩酸塩(4.18kg、88%)を純度100%の無色の固体として得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(I)
【化1】

(式中、Rは、−C1−6−アルキル、−C3−8−シクロアルキル、−C1−3−アルキレン−フェニル、−C1−3−アルキレン−ナフチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−C1−6−アルキルを表す)
で表わされる化合物を、グリニャール条件下、不活性反応媒体中で、エチルマグネシウムハライドと反応させる工程、
(b)得られた一般式(II)
【化2】

(式中、Rは、上に定義した意味を持つ)
で表わされる化合物を、一般式(III)
【化3】

(式中、Rは、上に定義した意味を持つ)
で表わされる化合物に、場合により酸付加塩の形で、変換する工程、
(c)得られた一般式(III)の化合物を脱保護して、式(IV)
【化4】

で表わされる(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを得る工程、
(d)場合により、得られた(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールを、酸付加塩に転化する工程
を含む、(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)−フェノールまたはその酸付加塩の製造方法。
【請求項2】
Rがメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニル、−C(=O)−CH、−C(=O)−C、−C(=O)−CH(CHまたは−C(=O)−C(CHを表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Rがメチル、エチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−CHを表す、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
Rがメチル、ベンジルまたはテトラヒドロピラニルを表す、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程(a)で使用されるエチルマグネシウムハライドがクロリドまたはブロミドである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
不活性反応媒体がジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチル−メチルエーテル、ジイソプロピルエーテルまたはその任意の混合物より成る群から選ばれる、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
一般式(I)の化合物が、(a’)一般式(V)
【化5】

(式中、Rは、−C1−6−アルキル、−C3−8−シクロアルキル、−C1−3−アルキレン−フェニル、−C1−3−アルキレン−ナフチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−C1−6−アルキルを表す)
で表わされる化合物を、マンニッヒ条件下、不活性反応媒体中で、ジメチルアミン塩酸塩およびパラホルムアルデヒドと反応させ、(a’’)次に、得られた一般式(VI)
【化6】

(式中、Rは、上に定義した意味を持つ)
で表わされる化合物を分割することによって得られる、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
Rがメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニル、−C(=O)−CH、−C(=O)−C、−C(=O)−CH(CHまたは−C(=O)−C(CHを表す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
Rがメチル、エチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−CHを表す、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
Rがメチル、ベンジルまたはテトラヒドロピラニルを表す、請求項7〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
工程(a’’)における分割が、一般式(VI)の化合物をL−(−)−ジベンゾイル酒石酸、L−(−)−ジベンゾイル酒石酸・HOおよびD−(−)−酒石酸からなる群より選択されるキラル酸と反応させた後、得られた塩を分離し、対応する式(I)の化合物を遊離塩基の形で遊離させることによって行われる、請求項7〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
分割が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよびその任意の混合物より成る群から選ばれるアルコール系反応媒体中で行われる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
工程(b)による変換が、(b’)一般式(II)の化合物を脱水に付し、(b’’)得られた一般式(VII)
【化7】

(式中、Rは、−C1−6−アルキル、−C3−8−シクロアルキル、−C1−3−アルキレン−フェニル、−C1−3−アルキレン−ナフチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−C1−6−アルキルを表す)
で表わされる化合物を、不活性反応媒体中、水素の存在下で、適切な触媒を使って水素化することによって行われる、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
Rがメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニル、−C(=O)−CH、−C(=O)−C、−C(=O)−CH(CHまたは−C(=O)−C(CHを表す、請求項13記載の方法。
【請求項15】
Rがメチル、エチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネチル、テトラヒドロピラニルまたは−C(=O)−CHを表す、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
Rがメチル、ベンジルまたはテトラヒドロピラニルを表す、請求項13〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
脱水工程(b’)後に、工程(b’’)における水素化が均一触媒作用によって達成される、請求項13〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
脱水工程(b’)が酸によって触媒される、請求項13〜17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
酸がギ酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、臭化水素酸またはその任意の混合物より成る群から選ばれる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
工程(b’’)の水素化が不均一触媒作用によって達成される、請求項13〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
水素化に使用される触媒がラネーニッケル、パラジウム、パラジウム担持炭素、白金、白金担持炭素、ルテニウム担持炭素またはロジウム担持炭素からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
反応媒体がジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチル−メチルエーテル、ジイソプロピルエーテルまたはその任意の混合物より成る群から選ばれる、請求項13〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
工程b)がHによるOH基の直接置換反応であり、好ましくはワンポット反応で行われる、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。

【公表番号】特表2010−508240(P2010−508240A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521156(P2009−521156)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006515
【国際公開番号】WO2008/012047
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(390035404)グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (127)
【Fターム(参考)】