説明

(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体の製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体の製造方法およびその中間体に関する。本発明により製造される(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体は、慢性腎不全、副甲状腺機能低下症、骨軟化症、骨粗鬆症などのカルシウム代謝の欠陥症の治療に有効とされている1α−ヒドロキシビタミンD、1α,25−ジヒドロキシビタミンD、1α−ヒドロキシビタミンD、24−エピ−1α,25−ジヒドロキシビタミンD、2β−(3−ヒドロキシプロポキシ)−1α,25−ジヒドロキシビタミンDなどの1α−ヒドロキシビタミンD誘導体、および乾癬などの皮膚疾患や骨髄性白血病などの細胞分化機能に異常をきたした疾患の治療に効果が期待されている1α,24−ジヒドロキシビタミンD、22−オキサ−1α,25−ジヒドロキシビタミンD、22−デヒドロ−26,27−シクロ−1α,24−ジヒドロキシビタミンDなどのビタミンD誘導体などの合成中間体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビタミンD研究の進展に伴い、上記の1α−ヒドロキシビタミンD誘導体を始めとして、数多くのビタミンD誘導体が医薬品として開発されてきている。また、医薬品となるビタミンD誘導体を開発するうえで、その代謝物、分解物または標識化合物などを合成することも重要となる。さらに、最近では種々の側鎖を有するビタミンD誘導体についても検討がなされ、その生物活性が試験されるにしたがって、該側鎖部分を修飾することにより活性が大きく影響を受けることが明らかとなってきている。
【0003】
ビタミンD誘導体の合成のための有用な方法として、ビタミンD誘導体のA環構成部分(A−ring synthons )とCD環構成部分(CD−ring synthons)とを結合させる収斂型(convergent)合成法がある。該収斂型の合成方法において、CD環構成部分に相当する化合物として、(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体が挙げられる。
【0004】
従来の(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体の合成方法としては、例えば、▲1▼CD環構成部分に相当するインダン誘導体にアセチレンエーテルアニオンを付加反応させ、次いで酸加水分解し、得られるエステルを還元する方法[ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)、第105巻、第3270頁(1983年)参照]、▲2▼CD環構成部分に相当するインダン誘導体にα−亜鉛酢酸エステルブロミドをリフォルマツキー(Reformatsky)反応させ[ベスティス アカデミイ ナブクビー エス エス アール セリア キミシニク ナブク(Vestsi kademii Navuk B. S. S. R. Seryia Khimichnykh Navuk)、第79頁(1988年)参照]、得られるエステルを還元する方法などがある。また、▲3▼鎖状のアリルアセテートの[3,3]−シグマトロピック転位反応([3,3]−sigmatropic rearrangements)が知られている[ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)、第102巻、第7587頁(1980年)参照]。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記▲1▼の合成方法では、酸加水分解によってエステルに変換する工程を経るため、応用できる側鎖の種類が限定されてしまうという欠点がある。また上記▲2▼の合成方法では、目的化合物の収率が低いという欠点がある。さらに、上記▲2▼の方法により得られるエステルは二重結合の幾何異性体の混合物となるため、特定の異性体を得るためには煩雑な分離操作を必要とする。
一方、上記▲3▼の方法をヒドロインダン骨格を有する化合物に適用した例はなく、また、該方法を鎖状のアリルアセテートに適用した場合に得られる化合物は二重結合の幾何異性体の混合物となり、特定の異性体を得るためには煩雑な分離操作が必要となる。
【0006】
しかして、本発明の1つの目的は、ビタミンD誘導体の合成中間体(CD環構成部分)として有用な(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体を、温和な条件下に、高収率かつ高立体選択的に、工業的に有利に製造し得る方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体を与える新規な合成中間体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的は、下記一般式(I)
【0008】
【化6】



【0009】
(式中、Rは式−C(CH)Rで示される基または式−ORで示される基を表し、Rは水素原子または式−ORで示される基を表す。ここで、Rが水素原子を表す場合、Rは式−ORで示される基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、カルボキシル基もしくはアルコキシカルボニル基を表し、またRが式−OR で示される基を表す場合、Rは式−ORで示される基を表し;R、R、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基もしくは水酸基の保護を表すか、またはRとR、およびRとRは一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基を表してもよい。)
で示されるヒドロインダノン誘導体(以下、これをヒドロインダノン誘導体(I)と略記する。)を金属ビニル化合物と反応させることにより下記一般式(II−1)
【0010】
【化7】



【0011】
(式中、RおよびRは前記定義のとおりであり、Xは水素原子、金属原子または金属錯体を表す。)
で示される4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(以下、これを4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−1)と略記する。)を得、該4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−1)をアシル化することにより下記一般式(II−2)
【0012】
【化8】



【0013】
(式中、RおよびRは前記定義のとおりであり、Rはアシル基を表す。)で示される4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(以下、これを4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)と略記する。)を得、該4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)を触媒の存在下に異性化反応させ、必要に応じて脱アシル化することを特徴とする下記一般式(III)
【0014】
【化9】



【0015】
(式中、RおよびRは前記定義のとおりであり、R10は水素原子またはアシル基を表す。)
で示される(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(以下、これを(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III)と略記する。)の製造方法、および下記一般式(II)
【0016】
【化10】



【0017】
(式中、RおよびRは前記定義のとおりであり、R11は水素原子またはアシル基を表す。)
で示される4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(以下、これを4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II)と略記する。)を提供することにより達成される。
【0018】
(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III)において、R10がアシル基であるものを(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III−1)、R10が水素原子であるものを(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III−2)と称する。
【0019】
前記一般式(I)、(II)、(II−1)、(II−2)および(III)において、Rが表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基などが挙げられる。かかるアルキル基は水酸基、保護された水酸基、シクロアルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0020】
ここで用いられる水酸基の保護基としては、水酸基の保護基として機能する基であれば特に制限されないが、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基などの三置換シリル基;メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−メトキシイソプロピル基などの1−(アルコキシ)アルキル基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基などの2−オキサシクロアルキル基;ベンジル基、p−メトキシベンジル基などのアラルキル基;アリル基、プロペニル基などのアルケニル基;p−メトキシフェニル基などのアリール基;アセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基などのアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0021】
保護された水酸基を有しているアルキル基としては、ジオキシメチル基などを挙げることができる。ジオキシメチル基としては、例えばジメトキシメチル基、ジエトキシメチル基などのジアルキルオキシメチル基を挙げることができ、また、エチレンジオキシメチル基、トリエチレンジオキシメチル基、1,2−ジメチルエチレンオキシメチル基、2,2−ジメチルトリメチレンジオキシメチル基、1,3−ジメチルトリメチレンジオキシメチル基などの環状ジオキシメチル基を挙げることもできる。
【0022】
また、Rが表すアルキル基が有していてもよいシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。
【0023】
が表すアルケニル基としては、例えばビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基などが挙げられる。かかるアルケニル基は水酸基、保護された水酸基、シクロアルキル基などの置換基を有していてもよい。ここで水酸基の保護基およびシクロアルキル基としては、前記と同様の基が挙げられる。
【0024】
が表すアルキニル基としては、例えばエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基などが挙げられる。かかるアルキニル基は水酸基、保護された水酸基、シクロアルキル基などの置換基を有していてもよい。ここで水酸基の保護基およびシクロアルキル基としては、前記と同様の基が挙げられる。
【0025】
が表すアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。かかるアリール基は水酸基、保護された水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよい。ここで水酸基の保護基およびシクロアルキル基としては、前記と同様の基が挙げられ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの基が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの基が挙げられる。置換基を有するアリール基としては、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基などが挙げられる。
【0026】
また、Rが表すアラルキル基のアリール基部分としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、アルキル基部分としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などが挙げられる。かかるアラルキル基は水酸基、保護された水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよく、具体的には前記と同様の基が挙げられる。
【0027】
が表す置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基および置換基を有していてもよいアラルキル基の具体例としては、例えば以下に示す基が挙げられる。
【0028】
【化11】



【0029】
(上記式中、R12は水素原子または水酸基の保護基を表し、ここで水酸基の保護基としては、前記と同様の基が挙げられる。)
【0030】
また、Rが表すアルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基などのアルキルオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基などのアラルキルオキシカルボニル基;p−メチルフェニルオキシカルボニル基、p−メトキシフェニルオキシカルボニル基などのアリールオキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0031】
前記一般式(I)、(II)、(II−1)、(II−2)および(III)において、R、R、RおよびRが表すアルキル基としては、カルボニル基の保護基となるアセタールとして機能するものであれば特に制限されないが、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基などが挙げられる。かかるアルキル基は水酸基、保護された水酸基、シクロアルキル基などの置換基を有していてもよい。ここで水酸基の保護基およびシクロアルキル基としては、前記と同様の基が挙げられる。
【0032】
、R、RおよびRが表すアルケニル基としては、例えばビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基などが挙げられる。かかるアルケニル基は水酸基、保護された水酸基、シクロアルキル基などの置換基を有していてもよい。ここで水酸基の保護基およびシクロアルキル基としては、前記と同様の基が挙げられる。
【0033】
、R、RおよびRが表すアルキニル基としては、例えばエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基などが挙げられる。かかるアルキニル基は水酸基、保護された水酸基、シクロアルキル基などの置換基を有していてもよい。ここで水酸基の保護基およびシクロアルキル基としては、前記と同様の基が挙げられる。
【0034】
が表す置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基の具体的な例としては、例えば、以下に示す基が挙げられる。
【0035】
【化12】



【0036】
(上記式中、R12は前記定義のとおりである。)
【0037】
が表す置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基の具体的な例としては、4’−メチルアミル基、4’−メチル−4’−ヒドロキシアミル基などが挙げられる。
【0038】
また、R、R、RおよびRが表す水酸基の保護基としては、前記定義と同様の基が挙げられる。
【0039】
また、RとR、およびRとRが一緒になって表すことのあるアルキレン基としては、例えばエチレン基、トリメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、1,3−ジメチルトリメチレン基などが挙げられる。
【0040】
、R10およびR11が表すアシル基としては、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、モノクロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、モノフルオロアセチル基、ジフルオロアセチル基、トリフルオロアセチル基などを挙げることができ、中でもアセチル基、トリフルオロアセチル基が好適である。
【0041】
Xが表す金属原子としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属原子;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属原子などが挙げられるが、金属原子であればよく、これらに限定されるものではない。該金属原子とともに金属錯体を構成する成分としては、例えばエチレンジアミン、トリエチレンジアミンなどのアミン;トリエチルスズなどのアルキルスズなどのスズ化合物;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのリン配位子などが挙げられる。
【0042】
本発明の製造方法をさらに詳しく説明する。
ヒドロインダノン誘導体(I)から4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−1)を得る工程において、反応に使用される金属ビニル化合物としては、例えばビニルマグネシウムクロリド、ビニルマグネシウムブロミド、ビニルマグネシウムアイオダイド、ビニルリチウムなどを挙げることができる。金属ビニル化合物の使用量は、ヒドロインダノン誘導体(I)1モルに対して通常約0.5モル〜5.0モルの範囲が好ましく、1.0モル〜3.0モルの範囲がより好ましい。
【0043】
かかる反応は溶媒の存在下または非存在下で行うことができ、溶媒の存在下に行うことが好ましい。用いられる溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に制限されないが、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒;n−ヘキサン、n−ペンタン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。その使用量はヒドロインダノン誘導体(I)に対し、5〜200倍重量の範囲が好ましい。
【0044】
反応は、ヒドロインダノン誘導体(I)もしくはその溶液に金属ビニル化合物を加えることにより、または金属ビニル化合物にヒドロインダノン誘導体(I)もしくはその溶液を加え、撹拌することにより行うことができる。反応温度は−100℃〜80℃の範囲が好ましく、−50℃〜30℃の範囲がより好ましい。
【0045】
このようにして得られた4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−1)は通常の有機化合物の単離・精製に用いられる方法により単離・精製することができる。例えば、反応混合物を冷希塩酸にあけ、ジエチルエーテル、酢酸エチル、塩化メチレンなどの有機溶媒で抽出し、必要に応じて抽出液を重曹水、水、食塩水などで洗浄することにより酸性物質、塩基性物質、水溶性物質を除去し、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムなどで乾燥したのちに濃縮し、得られる粗生成物を必要に応じてクロマトグラフィー、再結晶などにより精製することができる。
【0046】
また、これらの4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−1)が側鎖に水酸基または保護された水酸基を有する場合には、必要に応じて水酸基の保護または脱保護を行うことができる。水酸基の保護または脱保護により、異なる側鎖を有する4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−1)を得ることができる。
【0047】
4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−1)は、常法に従いアシル化することにより、4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)に誘導できる。アシル化剤としては、一般式(RCO)O[式中、Rはアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、これらの基はハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。]で示されるカルボン酸無水物、または一般式RCOCl[式中、Rは前記定義のとおりである。]で示されるカルボン酸クロリドが好ましく用いられ、例えば無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、酢酸クロリド、プロピオニルクロリド、ベンゾイルクロリドなどが挙げられる。アシル化剤の使用量は、ヒドロインダノン誘導体(I)1モルに対して通常1.0モル〜5モルの範囲が好ましい。
【0048】
また、反応系に塩基性物質を存在させることがより好適な結果を与える。使用される塩基性物質としては、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジンなどのアミン類;メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、メチルリチウム、ブチルリチウムなどのアルキル金属化合物;水素化リチウム、水素化ナトリウムなどの金属水素化物などを挙げることができる。
【0049】
塩基性物質の使用量は、4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−1)1モルに対して約0.5モル〜10.0モルの範囲が好ましく、1.0モル〜5.0モルの範囲がより好ましい。なお、塩基性物質がアミン類である場合には、10モル以上の大過剰用いてもよい。
【0050】
反応は溶媒の存在下または非存在下で行うことができ、溶媒中で行うことが好ましい。用いられる溶媒は、用いる塩基性物質の性質により適宜選択することができるが、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒;n−ヘキサン、n−ペンタン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;塩化メチレン、ジクロロエタンなどの含ハロゲン炭化水素系溶媒またはこれらの混合溶液などが挙げられる。また、塩基性物質としてアミン類を使用する場合には、これを溶媒とすることもできる。溶媒の使用量は4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−1)に対し、通常5〜200倍重量の範囲が好ましい。
【0051】
反応は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、塩基性物質もしくは塩基性物質と上記溶媒の混合溶液に4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−1)もしくは上記溶媒との混合溶液を加えるか、または4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−1)と上記溶媒との混合溶液に塩基性物質を加え、そののちにアシル化剤、もしくはアシル化剤と上記溶媒との混合溶液を加え、撹拌することにより行う。反応温度は、−100℃〜100℃の範囲が好ましく、−10℃〜80℃の範囲がより好ましい。
【0052】
また、金属ビニル化合物をヒドロインダノン誘導体(I)に付加反応させ、そのまま酸無水物、酸塩化物などのアシル化剤を加えることにより、4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)に誘導することもできる。
【0053】
かかる反応は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、金属ビニル化合物をヒドロインダノン誘導体(I)に付加反応させたのちに、アシル化剤、もしくはアシル化剤と上記溶媒との混合溶液を加えることにより行う。反応温度は、−100℃〜100℃の範囲が好ましく、−10℃〜80℃の範囲がより好ましい。
【0054】
このようにして得られた4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)は通常の有機化合物の単離・精製に用いられる方法により単離・精製することができる。例えば、反応混合物を冷希塩酸にあけ、ジエチルエーテル、酢酸エチル、塩化メチレンなどの有機溶媒で抽出し、必要に応じて抽出液を重曹水、水、食塩水などで洗浄することにより酸性物質、塩基性物質、水溶性物質を除去し、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムなどで乾燥したのちに濃縮し、得られる粗生成物を必要に応じてクロマトグラフィー、再結晶などにより精製することができる。また、これらの4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)が側鎖に水酸基または保護された水酸基を有する場合には、必要に応じて水酸基の保護または脱保護を行うことができる。水酸基の保護または脱保護により、異なる側鎖を有する4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)を得ることができる。
【0055】
4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)から(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III)を得る工程において、反応に使用される触媒としては、例えばパラジウム触媒が好ましく用いられ、具体的にはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)(クロロホルム)ジパラジウムなどの0価錯体;酢酸パラジウム、塩化パラジウム、ビスアセトニトリルパラジウムクロリド、ビスベンゾニトリルパラジウムクロリドなどの2価塩または錯体を挙げることができる。また、酢酸水銀、塩化水銀などの水銀を使用することもできる。好ましくはビスアセトニトリルパラジウムクロリド、ビスベンゾニトリルパラジウムクロリドなどである。
【0056】
触媒の使用量は、4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)に対し0.1モル%〜100モル%である。必要に応じてトリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの三級ホスフィンを添加することもでき、添加量は触媒に対し0.5当量〜3当量の範囲が好ましい。また必要に応じて酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウムなどの酢酸塩を添加することもでき、その添加量は4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)に対し1当量〜10当量の範囲が好ましい。
【0057】
反応は溶媒の存在下または非存在下に行うことができる。使用される溶媒は、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限されないが、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒;n−ヘキサン、n−ペンタン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒またはこれらの混合溶媒などが挙げられ、その使用量は4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)に対し、5〜200倍重量の範囲が好ましい。
【0058】
反応は、4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)もしくはその溶液にパラジウム錯体もしくはその溶液を加えるか、またはパラジウム錯体もしくはその溶液に4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体(II−2)もしくはその溶液を加え、撹拌することにより行う。反応温度は−100℃〜100℃の範囲が好ましく、0℃〜80℃の範囲がより好ましい。
【0059】
このようにして得られた(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III−1)は通常の有機化合物の単離・精製に用いられる方法により単離・精製することができる。例えば、反応混合物を食塩水または水にあけ、ジエチルエーテル、酢酸エチル、塩化メチレンなどの有機溶媒で抽出し、必要に応じて抽出液を希塩酸、重曹水、水、食塩水などで洗浄することにより酸性物質、塩基性物質、水溶性物質を除去し、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムなどで乾燥したのちに濃縮し、得られる粗生成物を必要に応じてクロマトグラフィー、再結晶などにより精製することができる。また反応液を濃縮し、触媒をシリカゲルなどで濾別することで粗生成物を得ることもできる。また粗生成物を精製することなく次の反応に用いることもできる。
【0060】
得られた(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III−1)は、常法に従い脱アシル化することにより(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III−2)に誘導できる。
【0061】
脱アシル化の方法としては、例えば、塩基性物質存在下、水または低級アルコールにより加溶媒分解する方法などを挙げることができる。ここで用いられる塩基性物質としては炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物などを挙げることができる。塩基性物質の使用量は、(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III−1)1モルに対し、約0.5モル〜10.0モルの範囲が好ましく、1.0モル〜5.0モルの範囲がより好ましい。用いられる低級アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノールなどが挙げられる。水または低級アルコールの使用量は、(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III−1)1モルに対して、2〜200モルの範囲が好ましい。
【0062】
反応は溶媒の存在下または非存在下に行うことができる。使用される溶媒は、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限されないが、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒;n−ヘキサン、n−ペンタン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどの低級アルコールまたはこれらの混合溶媒が挙げられる。また、加溶媒分解に用いる水または低級アルコールを溶媒に用いることもできる。その使用量は(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III−1)に対し、5〜200倍重量の範囲が好ましい。反応は、(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III−1)、塩基性物質および水または低級アルコールを混和し、必要に応じて溶媒中で撹拌することにより行う。反応温度は、−30℃〜100℃の範囲が好ましく、−10℃〜80℃の範囲がより好ましい。
【0063】
このようにして得られた(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III−2)は通常の有機化合物の単離・精製に用いられる方法により単離・精製することができる。例えば、反応混合物を食塩水にあけ、ジエチルエーテル、酢酸エチル、塩化メチレンなどの有機溶媒で抽出し、必要に応じて抽出液を希塩酸、重曹水、水、食塩水などで洗浄することにより酸性物質、塩基性物質、水溶性物質を除去し、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムなどで乾燥したのちに濃縮し、得られる粗生成物を必要に応じてクロマトグラフィー、再結晶などにより精製することができる。
【0064】
(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III−2)は、例えば、以下の反応工程に従って、ビタミンD誘導体に変換することができる。
【0065】
【化13】



【0066】
(式中、R、RおよびR10は前記定義のとおりである。)
すなわち、アルコールの酸化[例えば、ジャーナル オブ ジ アメリカン
ケミカル ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)、第105 巻、第3270頁(1983年)参照]、それに続くA環部分とのカップリング反応、酸による加溶媒分解[例えば、テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters )、第25巻、第3147頁(1984年)参照]により薬理活性を有する前述した如きビタミンD誘導体に導くことができる。
【0067】
【実施例】
以下に参考例および実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0068】
実施例1
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インデン−4−イリデン)エタノールの合成]
実施例1−▲1▼
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オールの合成]
窒素雰囲気下、0℃、乾燥テトラヒドロフラン4mlに溶解させたオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インデン−4−オン113mg(0.41mmol)の溶液にビニルマグネシウムブロミド0.58ml(1.41M、0.82mmol、2当量)を滴下した。1時間、室温で撹拌したのちに、反応混合物を冷塩化アンモニウム水溶液にあけ、ジエチルエーテルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール124mgを得た(収率100%)。
【0069】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.80(dd,J=10.8,17.4Hz,1H) 、5.15−5.20(m,3H) 、4.95(d,J=10.8Hz,1H) 、1.10−2.20(m,15H)、1.00(d,J=6.6Hz,3H)、0.96(s,3H)、0.90(d,J=6.9Hz,3H)、0.83(d,J=6.3Hz,3H)、0.81(d,J=6.3Hz,3H)
IRスペクトル(neat、cm−1
3000−3500 、2866、1639
【0070】
実施例1−▲2▼
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテートの合成]
オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール71mgにピリジン0.06ml(0.7mmol)、無水酢酸0.045ml(0.47mmol)を窒素雰囲気下、0℃で加えた。60℃で7時間加熱したのちに、反応混合物を冷1N塩酸水溶液にあけ酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテート10mg(回収分を除いた収率45%)およびオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール55mg(回収率77%)を得た。
【0071】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.90(dd,J=11.5,17.4Hz,1H) 、5.15−5.19(m,2H) 、5.04(d,J=11.5Hz,1H) 、4.97(d,J=17.5Hz,1H) 、2.72(br d,J=14.2Hz,1H)、2.03(s,3H)、1.10−2.20(m,14H)、0.99(d,J=6 .6Hz,3H) 、0.91(d,J=6.6Hz,3H)、0.90(s,3H)、0.83(d,J=6.6Hz,3H)、0.81(d,J=6.6Hz,3H)
【0072】
実施例1−▲3▼
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートの合成]
アルゴン雰囲気下、乾燥テトラヒドロフラン0.3mlにオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテート10mg(0.3mmol)を溶かし、ビスアセトニトリルパラジウムクロリド(10mol%、0.7mg)を加えた。室温下で12時間撹拌したのちに、反応溶液をエーテルで希釈し、飽和食塩水にあけエーテルで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有する(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートを10mg(収率100%)で得た。
【0073】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.11−5.27(m,3H) 、4.67(d,J=6.9Hz,2H)、2.60−2.66(m,1H) 、2.05(s,3H)、1.20−2.40(m,14H)、1.02(d,J=6.6Hz,3H)、0.92(d,J=6.6Hz,3H)、0.84(d,J=6.6Hz,3H)、0.82(d,J=6.6Hz,3H)、0.55(s,3H)
IRスペクトル(neat、cm−1
2954、2866、1740、1668、1455、1369
【0074】
実施例1−▲4▼
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インデン−4−イリデン)エタノールの合成]
メタノール0.5mlに(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテート10mg(29μmol)を溶かし、炭酸カリウム(10mg、0.07mmol、2.5当量)を加えた。室温下で1時間撹拌したのちに、反応溶液をエーテルで希釈し、飽和食塩水にあけエーテルで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有する(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,4,5−トリメチル−2−ヘキセニル)−1H−インデン−4−イリデン)エタノールを7mg(収率80%)で得た。
【0075】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.11−5.27(m,3H) 、4.21(d,J=6.9Hz,2H)、2.60−2.66(m,1H) 、1.20−2.40(m,14H)、1.02(d,J=6.6Hz,3H)、0.92(d,J=6.6Hz,3H)、0.84(d,J=6.6Hz,3H)、0.82(d,J=6.6Hz,3H)、0.55(s,3H)
IRスペクトル(neat、cm−1
3330、2870、1727、1665、1453、1369、1248、1171、1105、1087、1062、1022、969 、836 、753
【0076】
実施例2
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートの合成]
実施例2−▲1▼
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテートの合成]
窒素雰囲気下、0℃、乾燥テトラヒドロフラン4mlに溶解させたオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インデン−4−オン100mg(0.38mmol)の溶液にビニルマグネシウムブロミド0.7ml(1.13M、0.79mmol、2.1当量)を滴下した。1時間、室温で撹拌したのちに、反応混合物を冷塩化アンモニウム水溶液にあけジエチルエーテルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール88mgを得た(収率80%)。
【0077】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.81(dd,J=10.6,17.3Hz,1H) 、5.16(d,J=17.3Hz,1H) 、4.97(d,J=10.6Hz,1H) 、1.0−2.2(m,21H)、0.96(s,3H)、0.90(d,J=6.9Hz,3H)、0.85(d,J=6.3Hz,6H)
【0078】
実施例2−▲2▼
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテートの合成]
オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール88mg(0.3mmol)にピリジン0.25ml(3.0mmol、10当量)、無水酢酸0.14ml(0.15mmol、5当量)を窒素雰囲気下、0℃で加えた。60℃で7時間加熱したのちに、反応混合物を冷1N塩酸水溶液にあけ酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテート20mg(回収分を除いた収率62%)およびオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール60mg(回収率68%)を得た。
【0079】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.81(dd,J=10.6,17.3Hz,1H) 、5.16(d,J=17.3Hz,1H) 、4.97(d,J=10.6Hz,1H) 、2.03(s,3H)、1.0−2.2(m,21H)、0.96(s,3H)、0.90(d,J=6.9Hz,3H)、0.85(d,J=6.3Hz,6H)
【0080】
実施例2−▲3▼
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートの合成]
アルゴン雰囲気下、乾燥テトラヒドロフラン1.5mlにオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテート3mg(9μmol)を溶かし、ビスアセトニトリルパラジウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液0.6ml(1.04M、6.8mol%、0.61μmol)を加えた。70℃で12時間撹拌したのちに、反応溶液を減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有する(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートを3mg(収率100%)で得た。
【0081】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.10(m,1H)、4.66(br t,J=6.7Hz,2H) 、0.8−2.50(m,20H) 、2.05(s,3H)、0.92(d,J=6.6Hz,3H)、0.84(d,J=6.6Hz,3H)、0.82(d,J=6.6Hz,3H)、0.55(s,3H)
【0082】
実施例3
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−アセトキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートの合成]
実施例3−▲1▼
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−アセトキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテートの合成]
窒素雰囲気下、0℃、乾燥テトラヒドロフラン4mlに溶解させたオクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−ヒドロキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インデン−4−オン133mg(0.47mmol)の溶液にビニルマグネシウムブロミド2.8ml(1.13M、3.16mmol、2当量)を滴下した。1時間、室温で撹拌したのちに、反応混合物を冷塩化アンモニウム水溶液にあけジエチルエーテルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−ヒドロキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール113mgを得た(収率77%)。
【0083】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.81(dd,J=10.6,17.3Hz,1H) 、5.16(d,J=17.3Hz,1H) 、4.97(d,J=10.6Hz,1H) 、2.00(br d,J=12.8Hz,1H)、1.7−1.95(m,2H)、0.9−1.65(m,16H) 、1.21(s,6H)、0.95(s,3H)、0.92(d,J=6.7Hz,3H)
13C−NMRスペクトル(67.5MHz、CDCl、TMS基準)δ:
146.87、110.64、74.85 、71.18 、56.78 、55.15 、44.48 、42.45 、40.25 、38.63 、36.25 、35.33 、29.43 、29.24 、26.92 、20.79 、20.22 、18.94 、18.52 、13.07
IRスペクトル(neat、cm−1
3400、2940、2870、1640、1515、1470、1380、1265、1200、1150、1075、990 、985 、935 、910 、870 、810 、780 、760
【0084】
実施例3−▲2▼
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−アセトキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテート3mgおよびオクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−アセトキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オールの合成]
オクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−ヒドロキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール23mg(0.07mmol)にピリジン0.4ml(4.95mmol、70当量)、無水酢酸0.2ml(2.1mmol、30当量)、N,N−ジメチルアミノピリジン8.9mg(0.07mmol、1当量)を窒素雰囲気下、0℃で加えた。60℃で7時間加熱したのちに、反応混合物を冷1N塩酸水溶液にあけ酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−アセトキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イルアセテート3mg(収率14%)およびオクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−アセトキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール5mg(収率20%)を得た。
【0085】
オクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−アセトキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテート
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
6.60(dd,J=11.0,17.7Hz,1H) 、5.06(dd,J=1.7,17.7Hz,1H)、4.93(dd,J=1.7,11.0Hz,1H)、1.97(s,3H)、1.56(s,3H)、1.42(s,6H)、0.9−2.6(m,19H)、0.96(d,J=6.7Hz,3H)、0.91(s,3H)
IRスペクトル(neat、cm−1
2940、1730、1460、1370、1250、1205、1130、1080、950 、940 、890
オクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−アセトキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.81(dd,J=11.0,17.1Hz,1H) 、5.17(dd,J=1.2,17.1Hz,1H)、4.97(dd,J=1.2,11.0Hz,1H)、1.96(s,3H)、1.42(s,6H)、0.8−2.7(m,19H)、0.95(s,3H)、0.91(d,J=6.7Hz,3H)
【0086】
実施例3−▲3▼
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−アセトキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートの合成]
アルゴン雰囲気下、乾燥テトラヒドロフラン1.5mlにオクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−アセトキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテート3mg(8μmol)を溶かし、ビスアセトニトリルパラジウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液0.5ml(1.04M、6.5mol%、0.52μmol)を加えた。70℃で12時間撹拌したのちに、反応溶液を減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有する(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(5−アセトキシ−1,5−ジメチルヘキシル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートを3mg(収率100%)得た。
【0087】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.10(m,1H)、4.66(br t,J=6.7Hz,2H) 、0.8−2.50(m,20H) 、2.05(s,3H)、1.42(s,6H)、0.82(d,J=6.6Hz,3H)、0.55(s,3H)
【0088】
参考例1
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−4H−インダン−4−オ−ルの合成]
窒素雰囲気下、乾燥ジメチルホルムアミド10mlにオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−ヒドロキシ−2−プロピル)−4H−インダン−4−オール544mg(2.56mmol)を溶かし、0℃、イミダゾール380mg(5.58mmol、2.18当量)およびtert−ブチルジメチルシリルクロルシラン396mg(2.62mmol、1.02当量)を加えた。0℃で9時間撹拌したのちに、反応混合物を冷1N塩酸水溶液にあけ酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−4H−インダン−4−オールを717mg得た(収率86%)。
【0089】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
4.08(br s,1H) 、3.57(dd,J=3.1,9.2Hz,1H) 、3.26(dd,J=7.3,9.2Hz,1H) 、1.99(br dt,J=3.4,13.4Hz,1H) 、1.0−1.85(m,12H) 、0.97(d,J=6.7Hz,3H)、0.94(s,3H)、0.89(s,9H)、0.02(s,6H)
IRスペクトル(neat、cm−1
3450、2950、2870、1465、1395、1360、1255、1095、1005、995 、965 、945 、895 、840 、820 、780
【0090】
参考例2
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インデン−4−オンの合成]
参考例1で得られたオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−4H−インダン−4−オール695mg(2.13mmol)を窒素雰囲気下、乾燥塩化メチレン20mlに溶かし、0℃、ピリジニウムジクロメート1.6g(4.25mmol、2当量)を加えた。室温で4時間撹拌したのちに、エーテルで反応溶液を希釈しセライトで濾過した。濾液を飽和硫酸銅水溶液、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インデン−4−オンを663mg得た(収率96%)。
【0091】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
3.56(dd,J=2.5,9.8Hz,1H) 、3.33(dd,J=6.7,9.8Hz,1H) 、2.44(dd,J=7.3,11.0Hz,1H)、1.2−2.35(m,12H) 、1.02(d,J=6.1Hz,3H)、0.89(s,9H)、0.64(s,3H)、0.03(s,6H)
13C−NMRスペクトル(67.5MHz、CDCl、TMS基準)δ:
212.16、67.66 、61.83 、53.26 、50.02 、41.09 、38.96 、38.69 、27.06 、26.04 、24.16 、19.31 、18.44 、17.16 、12.67 、−5.30 、−5.34
IRスペクトル(neat、cm−1
2950、2900、2870、1730、1718、1690、1465、1395、1365、1305、1250、1210、1190、1130、1095、1060、1040、1005、945 、840 、815 、780
【0092】
実施例4
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートの合成]
実施例4−▲1▼
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール]
参考例2で得られたオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インデン−4−オン663mg(2.04mmol)を窒素雰囲気下、0℃、乾燥テトラヒドロフラン16mlに溶解させ、ビニルマグネシウムブロミド3.6ml(テトラヒドロフラン溶液、1.13M、4.07mmol、2当量)を滴下した。1時間、室温で撹拌したのちに、反応混合物を冷塩化アンモニウム水溶液にあけジエチルエーテルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール742mgを得た(収率100%)。
【0093】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.82(dd,J=11.0,17.4Hz,1H) 、5.17(dd,J=1.2,17.4Hz,1H)、4.98(dd,J=1.2,11.0Hz,1H)、3.57(dd,J=3.7,9.8Hz,1H) 、3.33(dd,J=7.3,9.8Hz,1H) 、1.0−2.05(m,13H) 、0.98(d,J=6.7Hz,3H)、0.96(s,3H)、0.89(s,9H)、0.02(s,6H)
IRスペクトル(neat、cm−1
3480、3100、2940、2870、1715、1645、1520、1470、1395、1370、1260、1090、1000、970 、945 、920 、840 、820 、780
【0094】
実施例4−▲2▼
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテートの合成]
オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール21mg(0.061mmol)にピリジン0.3ml(3.7mmol)、無水酢酸0.2ml(2.1mmol)を窒素雰囲気下、0℃で加えた。100℃で72時間加熱したのちに、反応混合物を冷1N塩酸水溶液にあけ酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテート8mg(回収分を除いた収率36%)およびオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール6mg(回収率29%)を得た。
【0095】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.90(dd,J=11.6,17.7Hz,1H) 、5.05(d,J=11.6Hz,1H) 、4.98(d,J=17.7Hz,1H) 、3.57(dd,J=3.1,9.8Hz,1H) 、3.26(dd,J=7.3,9.8Hz,1H) 、2.72(br d,J=14.0Hz,1H)、2.02(s,3H)、0.8−2.15(m,12H) 、0.98(d,J=6.7Hz,3H)、0.90(s,3H)、0.88(s,9H)、0.02(s,6H)
IRスペクトル(neat、cm−1
2940、2900、2860、1740、1465、1370、1245、1235、1185、1155、1085、1005、945 、910 、835 、810 、775
【0096】
実施例4−▲3▼
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートの合成]
アルゴン雰囲気下、乾燥テトラヒドロフラン2.0mlにオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテート5.5mg(14μmol)を溶かし、ビスアセトニトリルパラジウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液0.6ml(0.89M、3.8mol%、0.53μmol)を加えた。室温下で11時間撹拌したのちに、反応溶液をエーテルで希釈し、飽和食塩水にあけエーテルで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有する(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートを4.3mg(収率78%)で得た。
【0097】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.13(t,J=6.7Hz,1H)、4.64(d,J=6.7Hz,1H)、3.59(dd,J=3.7,9.8Hz,1H) 、3.27(dd,J=7.3,9.8Hz,1H) 、2.6−2.7(m,1H) 、0.8−2.1(m,13H)、2.05(s,3H)、1.00(d,J=6.7Hz,3H)、0.89(s,9H)、0.55(s,3H)
IRスペクトル(neat、cm−1
2940、2860、1740、1465、1360、1225、1080、1020、950 、835 、775
【0098】
実施例5
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−アセトキシ−2−プロピル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートの合成]
実施例5−▲1▼
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−(2−テトラヒドロ−2H−ピラニル)オキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテートの合成]
オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール84mg(0.24mmol)を窒素雰囲気下、0℃、テトラヒドロフラン2mlに溶かし、1Mテトラブチルアンモニウムフロリド0.68ml(0.68mmol、2.9当量)を加えた。0℃で10時間撹拌したのちに、反応混合物を飽和食塩水にあけ酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−ヒドロキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オールを57mg(収率100%)で得た。
【0099】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.79(dd,J=10.4,17.1Hz,1H) 、5.15(dd,J=1.2,17.1Hz,1H)、4.96(br dd,1.22,10.4Hz,1H)、3.60(dd,J=3.1,10.4Hz,1H)、3.35(dd,J=6.7,10.4Hz,1H)、1.7−1.9(m,2H) 、1.0−1.65(m,10H) 、1.02(d,J=6.7Hz,3H)、0.95(s,3H)
13C−NMRスペクトル(67.5MHz、CDCl、TMS基準)δ:
146.72、110.73、74.72 、67.77 、54.91 、53.12 、42.43 、40.06 、38.60 、38.28 、26.38 、20.30 、18.90 、16.61 、13.13
【0100】
実施例5−▲2▼
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−アセトキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテートの合成]
オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−ヒドロキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール22mg(0.09mmol)に窒素雰囲気下、0℃、ピリジン0.5ml(6.18mmol、69当量)、無水酢酸0.2ml(2.1mmol、23当量)、N,N−ジメチルアミノピリジン21mg(0.17mmol、1.9当量)を加えた。90℃で7時間加熱したのちに、反応混合物を冷1N塩酸水溶液にあけ酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−アセトキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテートを5mg得た(収率16%)。
【0101】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
6.60(dd,J=11.0,17.7Hz,1H) 、5.07(dd,J=1.2,17.7Hz,1H)、4.94(br d,J=11.0Hz,1H)、4.12(dd,J=3.4,10.7Hz,1H)、3.87(dd,J=7.0,10.7Hz,1H)、2.35−2.55(m,2H) 、2.18(br d,J=16.5Hz,1H)、2.05(s,3H)、1.57(s,3H)、0.9−2.0(m,10H)、1.06(d,J=6.7Hz,3H)、0.92(s,3H)
IRスペクトル(neat、cm−1
2950、1740、1650、1605、1460、1390、1385、1230、1040、990 、890
【0102】
実施例5−▲3▼
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−アセトキシ−2−プロピル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートの合成]
アルゴン雰囲気下、乾燥テトラヒドロフラン1.5mlにオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−アセトキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテート5mg(15μmol)を溶かし、ビスアセトニトリルパラジウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液0.5ml(1.04M、3.5mol%、0.52μmol)を加えた。70℃で12時間撹拌し、反応溶液を減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有する(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−アセトキシ−2−プロピル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートを4mg(収率80%)で得た。
【0103】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.06(m,2H)、4.56(t,J=3.4Hz,1H)、4.12(dd,J=3.4,10.7Hz,1H)、3.87(dd,J=7.0,10.7Hz,1H)、2.35−2.55(m,1H) 、2.18(br d,J=16.5Hz,1H)、2.05(s,3H)、1.57(s,3H)、0.9−2.0(m,11H)、1.06(d,J=6.7Hz,3H)、0.65(s,3H)
【0104】
実施例6
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−(2−テトラヒドロ−2H−ピラニル)オキシ−2−プロピル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートの合成]
実施例6−▲1▼
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−(2−テトラヒドロ−2H−ピラニル)オキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オールの合成]
実施例5−▲1▼で得られたオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−ヒドロキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール28mg(0.12mmol)を窒素雰囲気下乾燥塩化メチレン2mlに溶かし、触媒量のパラトルエンスルホン酸を加え、0℃にした。3,4−ジヒドロ−2H−ピラン0.015ml(0.16mmol、1.4当量)を滴下し、30分撹拌する。反応混合物を飽和重曹水にあけ酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−(2−テトラヒドロ−2H−ピラニル)オキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オールを35mg得た(収率94%)。
【0105】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.82(dd,J=10.6,17.3Hz,2H) 、5.17(dd,1.4,17.3Hz,2H)、5.05(m,1H)、4.98(dd,J=1.4,10.6Hz,2H)、4.54(m,1H)、3.8−3.93(m,3H)、3.69(ddd,J=3.4,9.5,24.1Hz,1H) 、3.3−3.55(m,3H)、3.02(ddd,J=6.7,7.6,9.5Hz,1H)、0.95−2.05(m,19H)、0.99(d,J=6.7Hz,6H)、0.96(s,6H)
IRスペクトル(neat、cm−1
3460、2930、2870、1720、1640、1440、1370、1350、1260、1180、1020、910 、865 、810
【0106】
実施例6−▲2▼
[オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−(2−テロラヒドロ−2H−ピラニル)オキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテートの合成]
オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−(2−テトラヒドロ−2H−ピラニル)オキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール35mg(0.11mmol)を窒素雰囲気下、乾燥エーテル3mlに溶解させる。この溶液を0℃に冷却し、n−ブチルリチウム0.1ml(1.76N、0.18mmol、1.6当量)を加えた。室温下で30分撹拌したのちに、反応混合物を−78℃に冷却し、塩化アセチル0.025ml(0.35mmol、3.2当量)を加えた。14時間撹拌したのちに、反応溶液を冷1N塩酸水溶液にあけ酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有するオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−(2−テロラヒドロ−2H−ピラニル)オキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテート10mg(回収分を除いた収率24%)およびオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−(2−テトラヒドロ−2H−ピラニル)オキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−オール8mg(回収率23%)を得た。
【0107】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.81(dd,J=10.9,17.7Hz,2H) 、5.17(d,J=17.7Hz,2H) 、5.05−5.12(m,1H) 、4.97(d,J=10.4Hz,2H) 、4.8−4.9(m,1H) 、4.56(br dd,J=14.4,22.5Hz,1H)、4.04(t,J=6.1Hz,1H)、3.85(br s,2H) 、3.69(br dd,J=9.5,24.1Hz,1H) 、3.3−3.6(m,3H) 、3.02(dd,J=7.3,14.6Hz,1H)、2.05(s,3H)、2.04(s,3H)、1.0−2.0(m,36H)、0.97(s,6H)、0.90(d,J=5.1Hz,3H)、0.88(d,J=5.1Hz,3H)
IRスペクトル(neat、cm−1
2930、1730、1450、1370、1240、1025、920
【0108】
実施例6−▲3▼
[(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−(2−テトラヒドロ−2H−ピラニル)オキシ−2−プロピル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル アセテートの合成]
アルゴン雰囲気下、乾燥テトラヒドロフラン1.5mlにオクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−(2−テトラヒドロ−2H−ピラニル)オキシ−2−プロピル)−1H−インダン−4−ビニル−4−イル アセテート10mg(26μmol)を溶かし、ビスアセトニトリルパラジウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液0.9ml(1.04M、3.6mol%、0.94μmol)を加えた。70℃で12時間撹拌し、反応溶液を減圧下で濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記物性を有する(E)−(オクタヒドロ−7a−メチル−1−(1−(2−テトラヒドロ−2H−ピラニル)オキシ−2−プロピル)−1H−インデン−4−イリデン)エチル
アセテートを10mg(収率100%)で得た。
【0109】
H−NMRスペクトル(270MHz、CDCl、TMS基準)δ:
5.06(m,2H)、4.56(t,J=3.4Hz,2H)、4.52(t,J=3.4Hz,2H)、4.30(t,J=6.8Hz,1H)、4.12(t,J=6.8Hz,1H)、3.86(m,3H)、3.72(ddd,J=3.1,9.2,24.4Hz,1H) 、3.35−3.45(m,4H) 、3.08(dt,J=6.7,9.2Hz,1H) 、2.45(br dd,J=7.9,11.0Hz,2H) 、0.8−2.4(m,35H)、1.57(s,3H)、1.09(d,J=6.7Hz,3H)、1.04(d,J=6.7Hz,3H)、0.66(s,3H)、0.65(s,3H)
【0110】
【発明の効果】
本発明によれば、ビタミンD誘導体の合成中間体として有用な(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体(III)を、温和な条件下に、高収率かつ高立体選択的に、工業的に有利に製造する方法、および該化合物を与える新規な合成中間体が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】



(式中、Rは式−C(CH)Rで示される基または式−ORで示される基を表し、Rは水素原子または式−ORで示される基を表す。ここで、Rが水素原子を表す場合、Rは式−ORで示される基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、カルボキシル基もしくはアルコキシカルボニル基を表し、またRが式−OR で示される基を表す場合、Rは式−ORで示される基を表し;R、R、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基もしくは水酸基の保護基を表すか、またはRとR、およびRとRは一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基を表してもよい。)
で示されるヒドロインダノン誘導体を金属ビニル化合物と反応させることにより下記一般式(II−1)
【化2】



(式中、RおよびRは前記定義のとおりであり、Xは水素原子、金属原子または金属錯体を表す。)
で示される4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体を得、該4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体をアシル化することにより下記一般式(II−2)
【化3】



(式中、RおよびRは前記定義のとおりであり、Rはアシル基を表す。)で示される4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体を得、該4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体を触媒の存在下に異性化反応させ、必要に応じて脱アシル化することを特徴とする下記一般式(III)
【化4】



(式中、RおよびRは前記定義のとおりであり、R10は水素原子またはアシル基を表す。)
で示される(E)−ヒドロインダン−4−イリデンエタノール誘導体の製造方法。
【請求項2】
下記一般式(II)
【化5】



(式中、Rは式−C(CH)Rで示される基または式−ORで示される基を表し、Rは水素原子または式−ORで示される基を表し、R11は水素原子またはアシル基を表す。ここで、Rが水素原子を表す場合、Rは式−ORで示される基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、カルボキシル基もしくはアルコキシカルボニル基を表し、またRが式−ORで示される基を表す場合、Rは式−ORで示される基を表し;R、R、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基もしくは水酸基の保護基を表すか、またはRとR、およびRとRは一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基を表してもよい。)
で示される4−ビニル−4−オキシヒドロインダン誘導体。

【特許番号】特許第3563135号(P3563135)
【登録日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【発行日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−322081
【出願日】平成6年12月26日(1994.12.26)
【公開番号】特開平8−176038
【公開日】平成8年7月9日(1996.7.9)
【審査請求日】平成13年8月30日(2001.8.30)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【参考文献】
【文献】特開平06−321830(JP,A)
【文献】特開平01−110667(JP,A)
【文献】特開平06−345689(JP,A)
【文献】特開昭62−234038(JP,A)
【文献】特公昭55−034781(JP,B1)
【文献】特公昭55−034780(JP,B1)
【文献】特開昭47−010371(JP,A)
【文献】Journal of Organic Chemistry,1991年,Vol.56,No.1,pp461-3
【文献】Journal of Natural Products,1990年,Vol.53,No.3,pp565-72
【文献】Journal of the American Chemical Society,1983年,Vol.105,No.10,pp3270-3