説明

1−フェニル1−チオ−D−グルシト−ル誘導体を有効成分とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤。

【課題】小腸上皮に発現するSGLT1(ナトリウム依存性グルコ−ス共輸送体1)及び腎臓に発現するSGLT2(ナトリウム依存性グルコ−ス共輸送体2)を阻害し、消化管からのグルコ−ス吸収抑制と尿糖排泄作用とを併有する、新しいタイプの糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤を見出すこと。
【解決手段】
式(I)


等で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎臓でのグルコ−ス再吸収に関わるナトリウム依存性グルコ−ス共輸送体1(SGLT1)及びナトリウム依存性グルコ−ス共輸送体2(SGLT2)の阻害活性を有する医薬、特に糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病に罹患すると、空腹時の血糖値は126mg/dL以上を示す。また、空腹時の血糖値が正常であっても、食事の後に140〜200mg/dLという高い血糖値を示す場合には、耐糖能異常(以下、IGT(impaired glucose tolerance)という。)と診断される。近年、IGTから糖尿病の移行を遅らせることが、心血管障害のリスクを低減させると考えられている。例えば、1997年に中国で行われたDa Qing IGT and Diabetes Studyでは、ダイエットや運動を行うことでIGTから2型糖尿病への移行を有意に抑制したと報告されている(非特許文献1参照)。また、薬剤治療が有効な例として、糖の加水分解酵素を阻害し、小腸からの糖の吸収を遅延させるα−グルコシダ−ゼ阻害剤アカルボ−スを投与すると、IGTから2型糖尿病への移行を抑制し、さらに高血圧の発症も有意に抑制することが報告されている(非特許文献2参照)。
【0003】
以上のことから、糖尿病の発症を抑えるには、食事療法、運動及び薬物療法によってIGTをコントロ−ルすることが重要である。しかし、現状は年々糖尿病患者数が増加しており様々な成因と病態に対応した新しい治療薬が求められている。
【0004】
糖尿病治療の基本は食事療法と運動療法であるが、規則正しい生活習慣を持続することが困難である場合や、これらを行っても充分な効果が得られない場合には薬物療法を採択する必要がある。
【0005】
小腸上皮には高い頻度でナトリウム依存性グルコ−ス共輸送体1(SGLT1)が発現していることが知られている。このSGLT1は小腸において、ナトリウムに依存し、グルコ−ス又はガラクト−スの能動輸送を司っている(非特許文献3参照)。また、糖尿病モデルラットではSGLT1のmRNAやタンパク発現量が亢進していることが確認されている(非特許文献4参照)。近年、SGLT1活性を阻害し、食事由来のグルコ−ス吸収を抑制し、IGTの改善を図るピラゾ−ル誘導体の合成例が報告されている(特許文献1〜6参照)。
【0006】
また、腎臓には高頻度にナトリウム依存性グルコ−ス共輸送体2(SGLT2)が発現しており、糸球体で一旦濾過されたグルコ−スはSGLT2を介して再吸収される(非特許文献5参照)。そして、SGLT2阻害剤を糖尿病ラットに投与すると、尿への糖排泄を促進し、血糖低下作用を招来し、SGLT2特異的阻害剤は新たな糖尿病治療薬の標的分子と考えられるようになった(非特許文献6参照)。このような背景から、SGLT2阻害剤が研究され様々なグルコース誘導体が提供されている(特許文献7及び8参照)。
【0007】
したがって、SGLT1及びSGLT2活性を同時に阻害できれば、SGLT1阻害に基づく食後高血糖抑制作用とSGLT2阻害に基づく随時血糖低下作用を併有する新しいタイプの糖尿病治療薬を提供できると考えられる。
【0008】
これまで、SGLT2を比較的強く阻害する1−チオ−D−グルシト−ル誘導体について報告されている(特許文献9参照)。しかし、SGLT1及びSGLT2の双方を強力に阻害する1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル誘導体についての報告はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第WO2002/098893号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO2004/014932号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO2004/018491号パンフレット
【特許文献4】国際公開第WO2004/019958号パンフレット
【特許文献5】国際公開第WO2005/121161号パンフレット
【特許文献6】国際公開第WO2004/050122号パンフレット
【特許文献7】欧州特許出願公開第0850948号明細書
【特許文献8】国際公開第WO2001/068660号パンフレット
【特許文献9】国際公開第WO2006/073197号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Pan XR, et al. Diabets Care, 第20巻, 534項, 1997年
【非特許文献2】J.−L. Chiasson, et al. Lancent, 第359巻, 2072項, 2002年
【非特許文献3】W.S.Lee,et al. . J. Biol. Chem. 第269巻,12032項,1994年
【非特許文献4】Y. Fujita, et al. Diabetologia 第41巻,1459項,1998年
【非特許文献5】E. M. Wright, Am. J. Physiol. Renal. Physiol. , 第280巻, F10項, 2001年
【非特許文献6】G. Toggenburger, et al. Biochem. Biophys. Acta., 第688巻, 557項, 1982年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、SGLT1及びSGLT2の双方の活性を阻害し、消化管からのグルコ−ス吸収抑制作用及び尿糖排泄作用を併有する新しいタイプの糖尿病治療薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決するために1−チオ−D−グルシト−ル誘導体のアグリコンの置換基がSGLT阻害活性に及ぼす効果について鋭意研究した結果、ある種の置換基を組み合わせて導入することによりSGLT1及びSGLT2の双方の活性を強力に阻害する化合物(I)から化合物(VII)を見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)式(I)
【0014】
【化1】

【0015】
で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤、
【0016】
(2)式(II)
【0017】
【化2】

【0018】
で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤、
【0019】
(3)式(III)
【0020】
【化3】

で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤、
【0021】
(4)式(IV)
【0022】
【化4】

で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤、
【0023】
(5)式(V)
【0024】
【化5】

で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤、
【0025】
(6)式(VI)
【0026】
【化6】

で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤、
【0027】
(7)式(VII)
【0028】
【化7】

で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤である。
【発明の効果】
【0029】
1−チオ−D−グルシト−ル誘導体のアグリコンにある種の置換基を組み合わせて導入した化合物は、SGLT1及びSGLT2双方の活性を阻害した。また、これらの化合物は優れた血糖低下作用を示した。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明において使用する、
「製薬学的に許容される塩」とは、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウム、アルキルアンモニウムなどとの塩、鉱酸又は有機酸との塩であり、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ぎ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、ラクトビオン酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アジピン酸塩、システインとの塩、N−アセチルシステインとの塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、よう化水素酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、ピクリン酸塩、チオシアン酸塩、ウンデカン酸塩、アクリル酸ポリマ−との塩、カルボキシビニルポリマ−との塩などが挙げられる。
【0031】
「水和物」とは、本発明の化合物又はその塩の製薬学的に許容される水和物である。本発明の化合物又はその塩は、大気にさらされ、あるいは再結晶することなどにより、水分を吸収し、吸着水がつく場合や、水和物となる場合がある。本発明における水和物には、そのような水和物も含まれる。
【0032】
以下に、本発明化合物(I)から(VII)の製造方法を説明する。
【0033】
製造法1
【0034】
式中、Rはメチル基、エチル基、メトキシ基またはメチルチオ基を示し、Rはメチル基またはクロル基を示し、Rはベンジル基またはアリル基を示す。
【0035】
【化8】

【0036】
(1)工程1
化合物(1A)は国際特許公開国際公開第WO2006/073197号パンフレットに準じて製造することができる。また、下記に示す参考例に従って製造することができる。化合物(1A)をn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等の有機金属試薬を用いてリチウム試薬(2A)を調製することができる。このとき反応に用いられる溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエ−テル、トルエン等が挙げられる。反応温度は−78℃から室温であり、好ましくは−78℃〜−25℃である。または、マグネシウム粉末を用いてGrignard試薬(2A)を調整することができる。このとき反応に用いられる溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエ−テル、ジグリム等が挙げられる。また、マグネシウムの活性化剤として、ヨウ素や1,2−ジブロモエタンを用いることもある。
【0037】
次に、化合物(2A)に対してチオラクトン(3A)を加えることで、化合物(4A)を得ることができる。チオラクトン(3A)を加える時の温度は、(2A)がリチウム試薬である場合−78℃〜−25℃が好ましく、(2A)がGrignard試薬である場合−15℃〜25℃が好ましい。
【0038】
(2)工程2(還元)
化合物(4A)とEtSiH、i−PrSiH、t−BuMeSiH又はPhSiHClを、酸の存在下で反応させ、化合物(5A)を合成することができる。この反応に使用する酸としては、BF・EtO、CFCOOH、MeSOH、InCl等が挙げられ、溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル又はそれらの混合溶媒が挙げられ、好ましいのはアセトニトリル−クロロホルム、アセトニトリル−ジクロロメタン等のアセトニトリルとの混合溶媒である。ここでの反応温度は−60℃〜25℃、好ましくは−30℃〜25℃である。
【0039】
(3)工程3(脱保護)
上記で得られた化合物(5A)においてRがベンジル基である場合、パラジウム活性炭、水酸化パラジウム、又は白金−パラジウム活性炭等の触媒を用いて水素雰囲気下にて接触水素添加することにより、脱ベンジル化を行い、発明化合物を得ることができる。中でもパラジウム活性炭、水酸化パラジウムが触媒として好ましい。この反応に使用する溶媒としては、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、酢酸エチル、酢酸、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。反応温度は室温から還流温度であるが、室温が好ましい。
【0040】
また、脱ベンジル化においては、BCl、BCl・MeS、BBr、AlCl、CFCOOH、TfOH等の酸を用いることもできる。この反応に使用する溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフィド、アニソ−ル等が挙げられる。中でも、CFCOOH、TfOH、エタンジチオ−ルをジメチルスルフィド中で用いる方法が好ましい。反応温度は−78℃〜40℃がよい。
化合物(5A)においてRがアリル基(−CH2CH=CH2)の場合には、ジメチルスルホキシド中、tert−ブトキシカリウムを作用させ、異性化(−CH=CHCH3)させた後に、塩酸またはHgCl2/HgOを用いて除去することができる。あるいは、酢酸、p−トルエンスルホン酸水和物、N,N'−ジメチルバルビツル酸等の有機酸の存在下、Pd(PPh34,PdCl2、パラジウム活性炭等を用いて除去することができる。この反応に使用する溶媒としては、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられ、反応温度は25℃〜100℃がよい。
【0041】
製造法2
化合物(5A)は以下に示す方法でも製造することができる。ここで、式中記号は前記と同意義である。
【0042】
【化9】

【0043】
(4)工程4
工程1に記載の方法で、中間体化合物(6A)をn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等の有機金属試薬を用いてアリ−ルリチウム試薬を調製することができる。これに対して、チオラクトン(3AB)を加えることで化合物(7A)を得ることができる。このとき反応に用いられる溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエ−テル、トルエン等が挙げられる。反応温度は−78℃から室温であり、好ましくは−78℃〜−25℃である。
【0044】
(5)工程5(酸加水分解)
化合物(7A)中のアセタ−ル基を、塩酸、p−トルエンスルホン酸1水和物等を用いて加水分解することで、化合物(8A)を製造することができる。このとき用いられる溶媒としては、テトラヒドロフラン、エタノ−ル、メタノ−ル、水又はこれらの混合溶媒が好ましい。反応温度は4℃から60℃であり、室温が好ましい。また、反応時間は反応温度により異なるが、1時間〜24時間である。
【0045】
(6)工程6
4−置換トルエン(9A)に対し、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等を用いてフェニルリチウム試薬化合物(10A)を製造することができる。反応に用いられる溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエ−テル、トルエン等が挙げられる。反応温度は−78℃から室温であり、好ましくは−78℃〜−25℃である。反応時間は5分から30分が好ましい。また、金属マグネシウムを用いてGrignard試薬(10A)を製造することもできる。反応に用いられる溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエ−テル、ジグリム等が挙げられる。次に、試薬(10A)と化合物(8A)を反応させて、化合物(11A)を製造することができる。
【0046】
(7)工程7(還元)
化合物(11A)に対して、EtSiH、i−PrSiH、t−BuMeSiH又はPhSiHClを、酸の存在下で反応させ、化合物(5A)を合成することができる。この反応に使用する酸としては、BF・EtO、CFCOOH、InCl等が挙げられ、溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル又はそれらの混合溶媒が挙げられ、好ましいのはアセトニトリル−クロロホルム、アセトニトリル−ジクロロメタン等のアセトニトリルとの混合溶媒である。ここでの反応温度は−60℃〜25℃、好ましくは−30℃〜0℃である。
【0047】
特に好ましい方法として、アセトニトリル溶媒中、約1当量の酸を用いて、反応温度−15℃〜−5℃にて反応性の高いヘミアセタール部位の還元を行う。次に、反応温度0℃〜5℃に昇温し、さらに約1当量の酸を加えベンジル位の水酸基を還元する方法である。

チオラクトン(3A)の製造

【0048】
【化10】

【0049】
化合物(3A)はYuasa, H., et al. J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 2763項,1990年を参考に合成することができる。あるいは、上記スキームに従って合成することができる。
【0050】
(8)工程8
化合物(3B)(国際公開第WO04/106352号パンフレットを参考に製造することができる)の1位水酸基を塩基性条件に耐性で、中性若しくは酸性条件で脱保護可能な保護基で保護する。例えば、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(3,4−DHP)とp-トルエンスルホン酸1水和物を用いてテトラヒドロピラニル基(THP基)で保護し化合物(3C)を合成することができる。このときの溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、クロロホルム等が好ましい。
【0051】
(9)工程9
アセトキシ基の脱保護は、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン等の塩基を用いて行うことができ、溶媒にはメタノール、エタノール、含水メタノール等を用いることができる。次に、臭化ベンジル、塩化ベンジルまたは臭化アリル等を適当な塩基を用いて作用させ化合物(3D)を得ることができる。塩基としては、トリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、tert−ブトキシカリウム等が挙げられ、好ましくは、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウムである。この反応で使用する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等が挙げられ、反応温度は−20℃〜25℃が好ましい。
【0052】
(10)工程10
次に、1位の保護基を脱保護し化合物(3E)を得ることができる。例えば、化合物(3D)をメタノールまたはエタノール中p−トルエンスルホン酸又はピリジニウムp−トルエンスルホン酸で処理することで、THP基を除去できる。
【0053】
(11)工程11
最後に、化合物(3E)を適当な酸化剤で処理しチオラクトン(3A)を製造することができる。この反応に使用する酸化剤としては、ジメチルスルホキシド−無水酢酸、Dess−Martin periodinane、IBX等が好ましく、反応温度は0℃〜40℃である。
【0054】
本発明化合物は、SGLT1及びSGLT2双方の活性を阻害し、消化管からのグルコ−ス吸収抑制と尿糖排泄作用により、IGTを改善し、糖尿病の予防又は治療を行うことができる。
【0055】
よって、本発明の化合物は、SGLT1及びSGLT2阻害剤、又は、糖尿病、糖尿病関連疾患及び糖尿病合併症の予防又は治療剤の有効成分として用いることができる。
【0056】
ここで、「糖尿病」とは、1型糖尿病、2型糖尿病、特定の原因によるその他の型の糖尿病を包含する。
【0057】
ここで、「糖尿病関連疾患」とは、肥満、高インスリン血症、糖代謝異常、高脂質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、脂質代謝異常、高血圧、うっ血性心不全、浮腫、高尿酸血症、痛風などが挙げられる。
【0058】
ここで、「糖尿病合併症」は、急性合併症及び慢性合併症に分類される。
【0059】
「急性合併症」には、高血糖(ケトアシドーシスなど)、感染症(皮膚、軟部組織、胆道系、呼吸系、尿路感染など)などが挙げられる。
【0060】
「慢性合併症」には、細小血管症(腎症、網膜症)、動脈硬化症(アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、下肢動脈閉塞など)、神経障害(感覚神経、運動神経、自律神経など)、足壊疽などが挙げられる。
【0061】
主要な合併症は、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害である。
【0062】
本発明の化合物の投与量は、疾患、症状、体重、年齢、性別、投与経路等により異なってくるが、成人に対し、1日当たり0.1〜1000mg/kg体重であり、0.1〜200mg/kg体重が好ましく、0.1〜10mg/kg体重がより好ましい。これを1日1回から数回に分けて投与することができる。
【0063】
本発明化合物は、該化合物の作用の増強または該化合物の投与量の低減などを目的として、SGLT1及びSGLT2活性阻害薬以外のことなった作用機序の糖尿病治療剤、糖尿病性合併症治療剤、抗高脂血症剤、降圧剤、抗肥満剤、利尿剤、抗血栓剤などの薬剤( 以下、併用薬剤と略記する) と組み合わせて用いることができる。この際、本発明化合物と併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。さらに、本発明化合物と併用薬剤とは、それぞれの活性成分を含む2種類の製剤として投与されてもよいし、両方の活性成分を含む単一の製剤として投与されてもよい。併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明化合物と併用薬剤の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせなどにより適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合、本発明化合物1重量部に対し、併用薬剤を0.01〜100重量部用いればよい。
【0064】
なお、糖尿病治療剤としては、例えばインスリン製剤(例、ウシ、ブタの膵臓から抽出された動物インスリン製剤;大腸菌またはイーストを用い、遺伝子工学的に合成したヒトインスリン製剤;インスリン亜鉛; プロタミンインスリン亜鉛; インスリンのフラグメントまたは誘導体(例、INS−1等)、経口インスリン製剤)、インスリン抵抗性改善剤(例、ピオグリタゾンまたはその塩(好ましくは塩酸塩)、ロシグリタゾンまたはその塩(好ましくはマレイン酸塩) 、リボグリタゾン(Rivoglitazone) (CS−011)(R−119702)、シポグリタザール(Sipoglitazar)(TAK−654)、メタグリダセン(Metaglidasen)(M B X−1 0 2)、ナベグリタザール(Naveglitazar)(L Y−5 1 9 8 1 8)、MX−6054、バラグリタゾン(Balaglitazone) (NN−2344)、T - 1 3 1(AMG131)、P P A Rγ アゴニスト、P P A Rγアンタゴニスト、P P A Rγ/αデュアルアゴニスト、α−グルコシダーゼ阻害剤(例、ボグリボース、アカルボース、ミグリトール、エミグリテート)、ビグアナイド剤(例、フェンホルミン、メトホルミン、ブホルミンまたはそれらの塩(例、塩酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩))、インスリン分泌促進剤(スルホニルウレア剤(例、トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクロピラミド、グリメピリド、グリピザイド、グリブゾール等)、レパグリニド、セナグリニド、ナテグリニド、ミチグリニドまたはそのカルシウム塩水和物) 、GPR40アゴニスト、GPR40アンタゴニスト、GLP−1受容体アゴニスト(例、GLP−1、GLP−1MR剤、リラグルチド(Liraglutide)(NN−2211)、Exenatide(AC−2993) (exendin−4)、Exenatide LAR、BIM-51077、A i b (8,35) hGLP−1(7,37) NH2、CJC-1 1 3 1、AVE0010、GSK-716155)、アミリンアゴニスト(例、プラムリンチド) 、フォスフォチロシンフォスファターゼ阻害剤(例、バナジン酸ナトリウム) 、ジペプチジルペプチダーゼI V 阻害剤( 例、WO02/038541に記載の化合物、NVP−DPP−278、PT−100、P32/98、ビルダグリプチン(Vildagliptin)(LAF−237)、P93/01、シタグリプチン(Sitagliptin)(MK−431)、サクサグリプチン(Saxagliptin)(BMS−477118)、SYR−322、MP−513、T−6666、GRC−8200等)、β3アゴニスト(例、AJ−9677、AZ40140等) 、糖新生阻害剤(例、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、グルコース−6−ホスファターゼ阻害剤、グルカゴン拮抗剤、フルクトース−1, 6−ビスホスファターゼ阻害剤)、SGLT (sodium−glucose cotransporter) 阻害剤(例、WO04/014931、WO04/089967、WO06/073197に記載の化合物、T−1095、Sergliflozin(GSK−869682)、GSK−189075、KGT−1251、KGT−1681、KGA−2727、BMS−512148、AVE2268、SAR7226等)、1 1β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬(例、WO06051662に記載の化合物、BVT-3498、INCB13739)、GPR119アゴニスト(例、PSN−632408、APD−668)、アディポネクチンまたはその作動薬、I K K阻害薬(例、A S−2868)、AMPK活性化薬、レプチン抵抗性改善薬、ソマトスタチン受容体作動薬、グルコキナーゼ活性化薬(例、Ro−28−1675)、膵リパーゼ阻害薬(例、オルリスタット、ATL- 9 6 2)、DGAT−1阻害薬が挙げられる。
【0065】
糖尿病性合併症治療剤としては、例えばアルドース還元酵素阻害剤(例、トルレスタット、エパルレスタット、ゼナレスタット、ゾポルレスタット、ミナルレスタット、フィダレスタット、CT−112)、神経栄養因子およびその増加薬(例、NGF、NT−3、BDNF、ニューロトロフィン産生・分泌促進剤)、神経再生促進薬(例、Y−128)、PKC阻害剤(例、ルボキシスタウリンメシレート(ruboxistaurin mesylate; LY−333531))、AGE阻害剤(例、ALT946、ピマゲジン、ピラトキサチン、N−フェナシルチアゾリウムブロマイド(ALT766)、ALT−711、EXO- 2 2 6、ピリドリン(Pyridorin)、ピリドキサミン)、活性酸素消去薬(例、チオクト酸)、脳血管拡張剤(例、チアプリド、メキシレチン)、ソマトスタチン受容体作動薬(例、B I M 2 3 1 9 0)、アポトーシスシグナルレギュレーティングキナーゼ−1(ASK−1) 阻害薬が挙げられる。
【0066】
抗高脂血症剤としては、例えばスタチン系化合物(例、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、イタバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチンまたはそれらの塩( 例、ナトリウム塩、カルシウム塩)) 、スクアレン合成酵素阻害剤( 例、TAK−475)、フィブラート系化合物(例、ベザフィブラート、クロフィブラート、シムフィブラート、クリノフィブラート)、ACAT阻害剤(例、アバシマイブ(Avasimibe)、エフルシマイブ(Eflucimibe))、陰イオン交換樹脂(例、コレスチラミン)、プロブコール、ニコチン酸系薬剤(例、ニコモール(nicomol)、ニセリトロール(niceritrol))、イコサペント酸エチル、植物ステロール(例、ソイステロール(soysterol)、ガンマオリザノール(γ−oryzanol))、CETP阻害薬(例、Torcetrapib、JTT−705、JTT-302、FM-VP4等)、コレステロール吸収抑制薬(例、エゼチミブ(Ezetimibe)等)が上げられる。
【0067】
降圧剤としては、例えばアンジオテンシン変換酵素阻害剤(例、カプトプリル、エナラプリル、デラプリル) 、アンジオテンシンI I拮抗剤( 例、カンデサルタン シレキセチル、ロサルタン、エプロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、アジルザルタン(TAK−536))、カルシウム拮抗剤(例、マニジピン、ニフェジピン、アムロジピン、エホニジピン、ニカルジピン)、カリウムチャンネル開口薬(例、レブクロマカリム、L−2 7 1 5 2、A L0 6 7 1、N I P−1 2 1)、クロニジンが挙げられる。
【0068】
抗肥満剤としては、例えば中枢性抗肥満薬(例、デキスフェンフルラミン、フェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、アンフェプラモン、デキサンフェタミン、マジンドール、フェニルプロパノールアミン、クロベンゾレックス;MCH受容体拮抗薬(例、WO06/035967に記載の化合物、SB−5 6 8 8 4 9; SNAP−7 9 4 1、T−226296);ニューロペプチドY拮抗薬(例、CP−4 2 2 9 3 5);カンナビノイド受容体拮抗薬( 例、リモナバント(Rimonabant)(SR−1 4 1 7 1 6)、SR−147778) ; グレリン拮抗薬; 1 1β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬( 例、BVT−3 4 9 8、INCB13739))、膵リパーゼ阻害薬(例、オルリスタット、ATL- 9 6 2)、DGAT−1阻害薬、β3アゴニスト(例、AJ−9 6 7 7、AZ4 0 1 4 0)、ペプチド性食欲抑制薬(例、レプチン、CNTF( 毛様体神経栄養因子))、コレシストキニンアゴニスト(例、リンチトリプト、FPL−15849)、摂食抑制薬(例、P−57)が挙げられる。
【0069】
利尿剤としては、例えば、キサンチン誘導体( 例、サリチル酸ナトリウムテオブロミン、サリチル酸カルシウムテオブロミン)、チアジド系製剤(例、エチアジド、シクロペンチアジド、トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ペンフルチジド、ポリチアジド、メチクロチアジド)、抗アルドステロン製剤(例、スピロノラクトン、トリアムテレン)、炭酸脱水酵素阻害剤(例、アセタゾラミド)、クロルベンゼンスルホンアミド系製剤(例、クロルタリドン、メフルシド、インダパミド)、アゾセミド、イソソルビド、エタクリン酸、ピレタニド、ブメタニド、フロセミドが挙げられる。
【0070】
抗血栓剤としては、例えば、ヘパリン(例、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカルシウム、ダルテパリンナトリウム(dalteparin sodium)、AVE−5026) 、ワルファリン(例、ワルファリンカリウムなど) 、抗トロンビン薬(例、アルガトロバン(argatroban)、キシメラガトラン(Ximelagatran)、ダビガトラン(Dabigatran)、Odiparcil、Lepirudin、bivalirudin、Desirudin、ART−123、Idraparinux、SR−123781、AZD−0837、MCC−977、TGN−255、TGN−167、RWJ−58436、LB−30870、MPC−0920、Pegmusirudin、Org-426751等)、血栓溶解薬( 例、ウロキナーゼ(urokinase)、チソキナーゼ(tisokinase)、アルテプラーゼ(alteplase)、ナテプラーゼ(nateplase)、モンテプラーゼ(monteplase)、パミテプラーゼ(pamiteplase)等)、血小板凝集抑制薬( 例、塩酸チクロピジン(ticlepidine hydrochloride)、シロスタゾール(cilostazol)、イコサペント酸エチル、ベラプロストナトリウム(beraprost sodium)、塩酸サルポグレラート(sarpogrelate hydrochloride)など)、抗Xa阻害薬(例、Fondaparinux、BAY−59−7939、DU-176b、YM-150、SR−126517、Apixaban、Razaxaban、LY−517717、MLN−102、Octaparine、Otamixaban、EMD−503982、TC−10、CS−3030、AVE−3247、GSK−813893、KFA−1982等)、血漿中カルボキシペプチターゼB(または活性型thrombin−activatable fibrinolysis inhibitor [TAFIa]としても知られている)阻害薬(例、AZD−9684、EF−6265、MN−462)などが挙げられる。
【0071】
本発明の化合物は、医薬として、全身的又は局所的に、経口投与又は非経口投与することができる。
【0072】
本発明の化合物を医薬として提供する場合、固形剤、液剤等の種々の態様の製剤形態を適宜に採択することができる。その際、製薬学的に許容される担体を配合することも可能である。そのような担体の例としては、一般的な賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、糖衣剤、pH調整剤、溶解剤又は水性若しくは非水性溶媒などが挙げられる。本発明の化合物とこれらの担体から、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、散剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤等を調製することができる。
【実施例】
【0073】
以下に、参考例、実施例及び試験例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
参考例1
2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコノ−1,5−ラクトン(化合物(3AB))の製造
【0074】
【化11】

【0075】
(1)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−D−グルコピラノースの製造
2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−D−グルコピラノース(2.0g、5.49mmol)のクロロホルム(40mL)溶液に3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(1.5mL、16.5mmol)とp−トルエンスルホン酸1水和物(104mg、0.549mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製し、淡黄色アモルファスの表題化合物(2.56g)を得た。
【0076】
(2)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコピラノースの製造
次に、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−D−グルコピラノース(2.5g)のメタノール(40mL)溶液に25wt% ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(0.11mL、 0.55mmol)を加え3時間攪拌した。少量のドライアイスを加えて反応液を中和した後に、反応液を濃縮した。得られた残渣をN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)に溶解した。この溶液を、水素化ナトリウム(1.3g、32.9mmol;60% oil)とN,N−ジメチルホルムアミド(4mL)の懸濁液に、氷冷下滴下した。反応液を室温で20分攪拌した後に、4℃に冷却し、臭化ベンジル(5.6g、32.9mmol)を加えた。反応液を室温で12時間攪拌し、メタノール(5mL)を加え、30分攪拌した。反応液に氷水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)にて精製し、表題化合物 (3.36g、96%、2工程)を得た。
【0077】
(3)2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコピラノースの製造
テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル 2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコピラノース(3.30g、5.15mmol)、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸(518mg、2.06mmol)及びエタノール(58mL)の混合物を80℃で2時間攪拌した。反応液を室温まで冷却し、溶媒を濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルに溶解した。この溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)にて精製し、無色結晶の表題化合物(2.89g、quant.)を得た。
13C NMR (125 MHz, CHLOROFORM-d) δ 41.3,67.8, 71.6, 73.0, 73.2, 75.6, 76.2,
81.9, 82.9, 84.4, 127.5, 127.7, 127.8, 127.9, 128.0, 128.3, 128.4, 128.5, 137.8, 138.3, 138.8.
【0078】
(4)2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコノ−1,5−ラクトンの製造
2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコピラノース(2.82g、5.07mmol)、ジメチルスルホキシド(47mL)及び無水酢酸(39mL)の混合物を室温で12時間攪拌した。反応液に氷水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)にて精製し、無色油状の表題化合物(2.3g、82%)を得た。
1H NMR (200 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 3.70 (d, J=4.8 Hz, 2 H) 3.86 - 4.02 (m, 2 H) 4.09 - 4.22 (m, 2 H) 4.40 - 4.68 (m, 7 H) 4.83 (d, J=11.4 Hz, 1 H) 7.12 - 7.41 (m, 20 H).
【0079】
参考例2
2−[4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルフェニル]−1,3−ジオキソラン(化合物(6A))の製造
【0080】
【化12】

【0081】
(1)1−[4−(ベンジルオキシ)−2−メチルフェニル]エタノンの製造
4’−ヒドロキシ−2’−メチルアセトフェノン(3.06g、20mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に炭酸カリウム(3.66g、26.4mmol)、臭化ベンジル(2.7mL、22.4mmol)及びn−BuNI(0.75g、2.03mmol)を加え室温で14時間攪拌した。氷冷下、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、次いで水及び酢酸エチルを加えて有機層を分離後、有機層を20wt.%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧下留去して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=8:1→6:1)にて精製し、無色粉末として表題化合物(5.05g、quant.)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM−d) δppm 2.55 (s, 3 H) 2.57 (s, 3 H) 5.11 (s, 2 H) 6.78 − 6.86 (m, 2 H) 7.30 − 7.47 (m, 5 H) 7.75 (dd, J=7.93, 1.09 Hz, 1 H).
【0082】
(2)4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルベンゾイックアシッドの製造
1−[4−(ベンジルオキシ)−2−メチルフェニル]エタノン(20.9g、87.1mmol)のアセトン(300mL)溶液にNaBr(9.86g、95.9mmol)の水溶液(100mL)、水(200mL)及びオキソン(登録商標、オキソン一過硫酸塩化物、アルドリッチ)(59.0g、95.9mmol)を加えて室温にて2.5時間攪拌した。氷冷下、反応液に亜硫酸ナトリウム(20g)の水溶液(50mL)を加え、次いで水及び酢酸エチルを加えて有機層を分離した。その有機層を20wt.%亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄して無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧下留去して、1−[4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルフェニル]エタノンと1−[4−(ベンジルオキシ)−3−ブロモ−2−メチルフェニル]エタノンの混合物(27.2g)を得た。これに5%次亜塩素酸ナトリウム溶液(300mL、255mmol)と水酸化カリウム(4.80g、85.3mmol)の水溶液(10mL)を加え、120℃にて1時間攪拌した後、室温まで冷却し析出した不溶物を濾別した。この不溶物に2N塩酸を加えて酢酸エチルで抽出後、有機層を2N塩酸、飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をメタノ−ルで洗浄し、無色粉末の表題化合物(16.6g、59%、2工程)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ ppm 2.45 − 2.57 (m, 3 H) 5.28 (s, 2 H) 7.18 (s, 1 H) 7.31 − 7.54 (m, 5 H) 8.03 (s, 1 H) 12.83 (brs, 1 H).
ESI m/z = 319 (M−H), 321 (M+2−H).
【0083】
(3)2−[4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルフェニル]−1,3−ジオキソランの製造
4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルベンゾイックアシッド(16.6g、51.7mmol)のクロロホルム(80mL)懸濁液にオキザリルクロリド(5mL、56.9mmol)とN,N−ジメチルホルムアミド(6滴)を加え、室温にて1時間攪拌した後、反応液を濃縮し4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルベンゾイルクロリドを得た。次にN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(5.55g、56.9mmol)とトリエチルアミン(15mL、103mmol)のクロロホルム(60mL)懸濁液に、氷冷下、4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルベンゾイルクロリドのクロロホルム(60mL)溶液を滴下し、室温にて1時間攪拌した。氷冷下、水及びクロロホルムを加えて有機層を分離後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄して無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧下留去して、4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−N−メトキシ−N−メチルベンズアミドを得た。このテトラヒドロフラン(150mL)溶液に−10℃にて水素化リチウムアルミニウム(1.96g、51.7mmol)を加え、同温にて1時間攪拌した。反応液に1N塩酸を加え、酢酸エチルを加えて有機層を分離後、有機層を1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄して無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧下留去して、4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルベンズアルデヒドを得た。このトルエン(120mL)溶液にエチレングリコ−ル(30mL、517mmol)とp−トルエンスルホン酸一水和物(0.50g、2.58mmol)を加えDean−Stark装置を用いて1.5時間加熱還流した。反応液に酢酸エチルを加えて有機層を分離後、有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄して無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製した。さらにNH型シリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム)にて精製し、無色粉末として表題化合物(12.8g、71%、3工程)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM−d) δ ppm 2.34 (s, 3 H) 3.92 − 4.19 (m, 4 H) 5.15 (s, 2 H) 5.87 (s, 1 H) 6.74 (s, 1 H) 7.27 − 7.51 (m, 5 H) 7.72 (s, 1 H).
ESI m/z = 348.
【0084】
参考例3
2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−5−(1,3−ジオキソラン−2−イル) −4−メチルフェニル]−5−チオ−D−グルコピラノース(化合物7A))の製造
【0085】
【化13】

【0086】
2−[4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルフェニル]−1,3−ジオキソラン(12.9g、36.9mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に窒素雰囲気下、−78℃にて2.67M n−ブチルリチウムへキサン溶液(14.5mL、36.9mmol)を滴下し、同温にて30分間攪拌した。次いで2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコノ−1,5−ラクトン(9.77g、17.6mmol)のテトラヒドロフラン(40mL)溶液を滴下し、同温にて15分間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=3:1→2:1)にて精製し、無色透明のアモルファスとして表題化合物(10.6g、73%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.39 (s, 3 H) 3.46 - 3.72 (m, 2 H) 3.86 - 4.22 (m, 8 H) 4.43 - 5.00 (m, 8 H) 5.10 (s, 2 H) 5.92 (s, 1 H) 6.66 - 6.90 (m, 3 H) 7.00 - 7.38 (m, 23 H) 7.57 (brs, 1 H).
ESI m/z = 847 (M+Na+).
【0087】
参考例4
2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−5−ホルミル−4−メチルフェニル]−5−チオ−D−グルコピラノース(化合物(8A))の製造
【0088】
【化14】

【0089】
2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−5−(1,3−ジオキソラン−2−イル) −4−メチルフェニル]−5−チオ−D−グルコピラノース(11.1g、13.5mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、氷冷下、6N塩酸(100mL)を加え、室温にて12時間攪拌した。氷冷下、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)にて精製し、淡黄色油状物として表題化合物(10.1g、quant.)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.64 (s, 3 H) 3.51 - 3.70 (m, 2 H) 3.84 - 4.29 (m, 4 H) 4.46 - 4.97 (m, 8 H) 5.04 - 5.24 (m, 2 H) 6.62 - 6.82 (m, 3 H) 6.99 - 7.38 (m, 23 H) 7.60 (brs, 1 H) 10.05 (s, 1 H).
ESI m/z = 803 (M+Na+).
【0090】
参考例5
1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−メチル−4−(4−メトキシベンジル) ベンゼンの製造
【0091】
【化15】

【0092】
(1)4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルベンズアルデヒド(3.0g、9.83mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、−18℃にて、0.5M 4−メトキシフェニルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(29.5mL、14.7mmol)を滴下し、−15℃にて15分間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、無色油状物として[1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−メチルフェニル](4−メトキシフェニル) メタノール(4.48g)を得た。
【0093】
(2)次に、[1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−メチルフェニル](4−メトキシフェニル)メタノール(4.40g)のアセトニトリル(20mL)とクロロホルム(20mL)の混合溶液に、4℃にて、EtSiH(3.1mL、19.7mmol)とBF・EtO(1.2mL、9.83mmol)を順次加えた。同温で30分攪拌した後に、2M水酸化カリウム水溶液(20mL)を加えた。得られた混合液をクロロホルムで抽出し、有機層を1M塩酸、および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、無色油状の表題化合物(3.46g、89%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.17 (s, 3 H) 3.79 (s, 3 H) 3.82 (s, 2 H) 5.12 (s, 2 H) 6.77 (s, 1 H) 6.82 (d, J=8.4 Hz, 2 H) 7.02 (d, J=8.4 Hz, 2 H) 7.19 - 7.45 (m, 4 H) 7.44 - 7.58 (m, 2 H).
EI m/z = 396,398.
【0094】
参考例6
1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−メチル−4−(4−メチルベンジル) ベンゼンの製造
【0095】
【化16】

【0096】
参考例5と同様な方法で、4−メトキシフェニルマグネシウムブロミドの変わりに4−メチルフェニルマグネシウムブロミドを用いて表題化合物を合成した。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.17 (s, 3 H) 2.31 (s, 3 H) 3.84 (s, 2 H) 5.12 (s, 2 H) 6.76 (s, 1 H) 6.95 - 7.03 (m, 2 H) 7.04 - 7.14 (m, 2 H) 7.22 - 7.58 (m, 6H).
EI m/z = 380,382.
【0097】
参考例7
1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−4−(4−エチルベンジル)−5−メチルベンゼンの製造
【0098】
【化17】


(1)[4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルフェニル](4−エチルフェニル)メタノールの製造
1−ブロモ−4−エチルベンゼン(5.00g、16.4mmol)のテトラヒドロフラン(30mL)溶液に−60℃にて、2.66M n−BuLiのヘキサン溶液(6.47mL、17.2mmol)を5分かけて滴下した。同温にて15分攪拌した後に、この溶液に、4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルベンズアルデヒド(3.03g,16.4mmol)のテトラヒドロフラン(15mL)溶液を滴下し、同温で15分間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、室温まで昇温し、これを酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去して表題化合物を得た。

(2)1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−4−(4−エチルベンジル)−5−メチルベンゼンの製造
次に、[4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルフェニル](4−エチルフェニル)メタノールのクロロホルム(80mL)の溶液に、0℃にて、EtSiH(3.93mL、24.6mmol)とBF・EtO(2.49mL、19.7mmol)を順次加え、同温にて30分攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=98:2)にて精製し、無色油状の表題化合物(5.31g、82%、2工程)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 1.22 (t, J=7.62 Hz, 3 H) 2.17 (s, 3 H) 2.61 (q, J=7.62 Hz, 2 H) 3.85 (s, 2 H) 5.12 (s, 2 H) 6.76 (s, 1 H) 7.01 (d, 2 H) 7.10 (d, 2 H) 7.27 - 7.43 (m, 4 H) 7.48 (d, 2 H).
ESI m/z = 412, 414 (M+NH4+).
【0099】
参考例8
1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−メチル−4−[4−(メチルスルファニル)ベンジル]ベンゼンの製造
【0100】
【化18】

参考例7と同様の方法で4−ブロモトルエンの代わりに4−ブロモチオアニソールを用いて[4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルフェニル][4−(メチルスルファニル)フェニル]メタノール(6.93g、66%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.05 (d, J=3.6 Hz, 1 H) 2.16 (s, 3 H) 2.47 (s, 3 H) 5.13 (s, 2 H) 5.86 (d, J=3.6 Hz, 1 H) 6.73 (s, 1 H) 7.22 (s, 4 H) 7.28 - 7.51 (m, 5 H) 7.70 (s, 1 H).
ESI m/z = 463 (M-Cl-).
続いて[4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルフェニル](4−エチルフェニル)メタノールの代わりに[4−(ベンジルオキシ)−5−ブロモ−2−メチルフェニル][4−(メチルスルファニル)フェニル]メタノールを用いて薄茶色油状の表題化合物(6.28g、94%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.15 (s, 3 H) 2.46 (s, 3 H) 3.84 (s, 2 H) 5.12 (s, 2 H) 6.77 (s, 1 H) 6.98 - 7.06 (m, 2 H) 7.14 - 7.21 (m, 2 H) 7.23 - 7.51 (m, 6 H).
ESI m/z =430 (M+NH4+).
【0101】
参考例9
5−ブロモ−2−クロロ−4−メトキシベンズアルデヒドの製造
【0102】
【化19】


(1)1−ブロモ−4−クロロ−2−メトキシ−5−メチルベンゼンの製造
(i)4−クロロ−2−メトキシ−5−メチルアニリン(20.2g、117mmol)のアセトン(100mL)溶液に48%臭化水素水(50mL、2.93moL)を加え、亜硝酸ナトリウム(10.1g、146mmol)の水溶液(70mL)を氷冷下滴下し、室温まで昇温して1時間半攪拌した。
(ii)硫酸銅5水和物(87.9g、352mmol)および臭化ナトリウム(36.2g、352mmol)の水溶液(160mL)に、亜硫酸ナトリウム(22.4g、176mmol)の水溶液(70mL)を20分間かけて滴下し、室温で30分間攪拌後、氷冷下静置した。上澄み液をデカンテーションにより除去し、得られた沈殿物をさらに水(1L)で洗浄、上澄み液のデカンテーションを4回繰り返し、臭化銅を無色粉末として得た。そこへ48%臭化水素水(50mL、2.93moL)を加えて攪拌し、(i)で調製したジアゾニウム塩水溶液を40分間かけて氷冷下滴下し、室温で15時間攪拌した。反応溶液中のアセトンを減圧留去して得られた沈殿物を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン)にて精製し、無色結晶の表題化合物(23.5g)を得た。
【0103】
(2)1−ブロモ−(5−ブロモメチル)−4−クロロ−2−メトキシベンゼンの製造
次に、1−ブロモ−4−クロロ−2−メトキシ−5−メチルベンゼン(23.2g)の四塩化炭素(400mL)溶液に、N−ブロモスクシイミド(19.2g)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(1.61g)を加え、1時間加熱還流した。放冷後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し、無色油状の表題化合物(33.5g)を得た。
【0104】
(3)(5−ブロモ−2−クロロ−4−メトキシフェニル)メタノールの製造
1−ブロモ−(5−ブロモメチル)−4−クロロ−2−メトキシベンゼン(33.4g)の1,4−ジオキサン(350mL)溶液に、炭酸ナトリウム(52.0g)の水溶液(350mL)を加え、1時間加熱還流した。放冷後、反応液に水(350mL)を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し、無色粉末の表題化合物(25.8g)を得た。
【0105】
(4)5−ブロモ−2−クロロ−4−メトキシベンズアルデヒドの製造
(5−ブロモ−2−クロロ−4−メトキシフェニル)メタノール(25.8g)のクロロホルム(300mL)溶液に、二酸化マンガン(129g、1.48mol)を加え、室温で18時間攪拌した。不溶物をセライトで炉別し、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=50:1→30:1)にて精製し、無色粉末の表題化合物(20.0g、82%、4工程)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 3.99 (s, 3 H) 6.92 (s, 1 H) 8.12 (s, 1 H) 10.27 (s, 1 H).
【0106】
参考例10
5−ブロモ−2−クロロ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造
【0107】
【化20】


5−ブロモ−2−クロロ−4−メトキシベンズアルデヒド(18.6g、74.4mmol)のジメチルスルホキシド(300mL)溶液にピリジン塩酸塩(43.0g、372mmol)を加え145℃で3時間攪拌した。反応液を氷冷し、10%塩酸水を加えて酸性とし,酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し、無色結晶(20.1g)を得た。これをクロロホルムで再結晶し、無色結晶として表題化合物(11.7g、67%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δppm 7.07 (s, 1 H) 7.96 (s, 1 H) 10.08 (s, 1 H) 12.05 (brs, 1 H).
【0108】
参考例11
5−ブロモ−2−クロロ−4−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)ベンズアルデヒドの製造
【0109】
【化21】


5−ブロモ−2−クロロ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(12.0g、51.0mmol)、テトラブチルアンモニウムヨージド(941mg、2.55mmol)、炭酸カリウム(11.3g、81.5mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(250mL)溶液にアリルブロミド(5.61mL、66.3mmol)を加え、室温で16時間攪拌した。反応液を氷冷後、10%塩酸水(50mL)を加え、さらに水(200mL)を加えたものを酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をエタノールで再結晶し、無色粉末として表題化合物(11.5g、82%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 4.70 (dt, J=5.0, 1.6 Hz, 2 H) 5.40 (dq, J=10.6, 1.4 Hz, 1 H) 5.52 (dd, J=17.3, 1.1 Hz, 1 H) 6.04 (dd, J=17.0, 10.3 Hz, 1 H) 6.90 (s, 1 H) 8.13 (s, 1 H) 10.27 (s, 1 H).
【0110】
参考例12
1−ブロモ−4−クロロ−5−(4−メトキシベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)ベンゼンの製造
【0111】
【化22】


(1)[5−ブロモ−2−クロロ−4−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル](4−メトキシフェニル)メタノールの製造
1−ブロモ−4−メトキシベンゼン(1.43mL、11.43mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に−80℃にて、2.64M n−BuLiのヘキサン溶液(4.54mL、11.98mmol)を5分かけて滴下した。同温にて15分攪拌した後に、この溶液に、5−ブロモ−2−クロロ−4−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)ベンズアルデヒド(3.00g、10.89mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を滴下し、徐々に室温まで昇温し、同温にて30分間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、減圧濃縮してテトラヒドロフランを留去した。これを酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し、淡黄色油状物の表題化合物(3.79g)を得た。
【0112】
(2)1−ブロモ−4−クロロ−5−(4−メトキシベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)ベンゼンの製造
次に、[5−ブロモ−2−クロロ−4−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル](4−メトキシフェニル)メタノール(3.77g、9.83mmol)のクロロホルム(50mL)溶液に、0℃にて、EtSiH(2.35mL、14.74mmol)とBF・EtO(1.49mL、11.79mmol)を順次加え、同温で30分攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム:ヘキサン=1:4)にて精製し、無色油状物の表題化合物(1.56g、39%、2工程)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 3.79 (s, 3 H) 3.93 (s, 2 H) 4.57 (dt, J=5.0, 1.6 Hz, 2 H) 5.32 (dd, J=10.6, 1.4 Hz, 1 H) 5.50 (d, J=1.6 Hz, 1 H) 5.91 - 6.15 (m, 1 H) 6.84 (d, J=8.7 Hz, 2 H) 6.90 (s, 1 H) 7.09 (d, J=8.7 Hz, 2 H) 7.30 (s, 1 H).
EI m/z = 366, 368.
【0113】
参考例13
1−ブロモ−4−クロロ−5−(4−メチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−2−イルオキシ)ベンゼンの製造
【0114】
【化23】


(1)[5−ブロモ−2−クロロ−4−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル](4−メチルフェニル)メタノールの製造
参考例12(1)と同様な方法で、1−ブロモ−4−メトキシベンゼンの代わりに4−ブロモトルエンを用いて合成した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=87:13)にて精製し、無色固体として表題化合物(1.04g、38%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.21 (d, J=3.57 Hz, 1 H) 2.33 (s, 3 H) 4.55 - 4.61 (m, 2 H) 5.33 (dq, J=10.57, 1.45 Hz, 1 H) 5.47 (dq, J=17.31, 1.59 Hz, 1 H) 5.96 - 6.11 (m, 2 H) 6.84 (s, 1 H) 7.15 (d, 2 H) 7.25 (d, 2 H) 7.80 (s, 1 H).
【0115】
(2)1−ブロモ−4−クロロ−5−(4−メチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−2−イルオキシ)ベンゼンの製造
参考例12(2)と同様な方法で、[5−ブロモ−2−クロロ−4−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル](4−メトキシフェニル)メタノールの代わりに[5−ブロモ−2−クロロ−4−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル](4−メチルフェニル)メタノールを用いて合成した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=87:13)にて精製し、無色油状の表題化合物(827mg、83%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.32 (s, 3 H) 3.96 (s, 2 H) 4.57 (dt, J=5.05, 1.59 Hz, 2 H) 5.32 (dq, J=10.57, 1.45 Hz, 1 H) 5.48 (dq, 1 H) 5.96 - 6.11 (m, J=17.23, 10.39, 5.15, 5.15 Hz, 1 H) 6.90 (s, 1 H) 7.05 (d, 2 H) 7.11 (d, 2 H) 7.31 (s, 1 H).
EI m/z = 350, 352.
【0116】
参考例14
1−ブロモ−4−クロロ−5−(4−エチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)ベンゼンの製造
【0117】
【化24】

(1)[5−ブロモ−2−クロロ−4−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル](4−エチルフェニル)メタノールの製造
参考例12(1)と同様な方法で、1−ブロモ−4−メトキシベンゼンの代わりに1−ブロモ−4−エチルベンゼンを用いて合成した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=87:13)にて精製し、無色固体として表題化合物(1.96g、35%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 1.22 (t, J=7.54 Hz, 3 H) 2.20 (d, J=3.57 Hz, 1 H) 2.63 (q, J=7.67 Hz, 2 H) 4.58 (dd, J=5.05, 0.70 Hz, 2 H) 5.33 (dq, J=10.59, 1.44 Hz, 1 H) 5.48 (dq, J=17.25, 1.71, 1.55 Hz, 1 H) 5.95 - 6.15 (m, 2 H) 6.85 (s, 1 H) 7.17 (d, 2 H) 7.28 (d, 2 H) 7.82 (s, 1 H).
【0118】
(2)1−ブロモ−4−クロロ−5−(4−エチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−2−イルオキシ)ベンゼンの製造
参考例12(2)と同様な方法で、[5−ブロモ−2−クロロ−4−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル](4−メトキシフェニル)メタノールの代わりに[5−ブロモ−2−クロロ−4−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル](4−エチルフェニル)メタノールを用いて合成した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=87:13)にて精製し、無色油状の表題化合物(1.55g、83%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 1.22 (t, J=7.54 Hz, 3 H) 2.62 (q, J=7.77 Hz, 2 H) 3.97 (s, 2 H) 4.58 (dt, J=4.97, 1.55 Hz, 2 H) 5.32 (dq, J=10.57, 1.45 Hz, 1 H) 5.48 (dq, J=17.25, 1.66 Hz, 1 H) 6.04 (dddd, J=17.25, 10.41, 5.13, 4.97 Hz, 1 H) 6.90 (s, 1 H) 7.08 (d, 2 H) 7.13 (d, 2 H) 7.33 (s, 1 H).
EI m/z = 364, 366.
【0119】
実施例1
(1−A)
2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−4−メチル−5−(4−メチルベンジル)フェニル]−5−チオ−D−グルコピラノースの製造
【0120】
【化25】

【0121】
1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−メチル−4−(4−メチルベンジル) ベンゼン(3.01g、7.89mmol)のテトラヒドロフラン(15mL)溶液に−60℃にて、2.6M n−BuLiのヘキサン溶液(3.3mL、8.68mmol)を4分かけて滴下した。同温にて30分攪拌した後に、この溶液に、2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコノ−1,5−ラクトン(2.91g,5.26mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を滴下し、同温で15分間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、室温まで昇温しこれを酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製し、淡黄色ガム状の表題化合物(2.44g、54%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.20 (s, 3 H) 2.27 (s, 3 H) 3.46 - 3.59 (m, 1 H) 3.65 (dd, J=9.6, 2.4 Hz, 1 H) 3.78 - 4.16 (m, 5 H) 4.43 - 4.70 (m, 5 H) 4.75 - 4.97 (m, 4 H) 5.09 (s, 2 H) 6.70 - 7.42 (m, 31H).
【0122】
(1−B)
(1S)−1,5−アンヒドロ−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−[2−(ベンジルオキシ)−4−メチル−5−(4−メチルベンジル)フェニル]−1−チオ−D−グルシトールの製造
【0123】
【化26】

【0124】
2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−4−メチル−5−(4−メチルベンジル)フェニル]−5−チオ−D−グルコピラノース(2.44g,2.85mmol)のクロロホルム(5.0mL)とアセトニトリル(12.0mL)の混合溶液に、−15℃にて、EtSiH(0.91mL、5.69mmol)とBF・EtO(0.43mL、3.42mmol)を順次加え、1時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)にて精製し、無色粉末の表題化合物(2.1g、88%)を得た。
【0125】
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.17 (s, 3 H) 2.25 (s, 3 H) 3.01 - 3.19 (m, 1 H) 3.49 - 3.60 (m, 1 H) 3.64 - 3.75 (m, 1 H) 3.77 - 3.97 (m, 5 H) 3.98 - 4.11 (m, 1 H) 4.48 - 4.66 (m, 5 H) 4.85 (s, 2 H) 4.90 (d, J=10.7 Hz, 1 H) 4.97 - 5.11 (m, 2 H) 6.66 - 7.52 (m, 31 H).
ESI m/z = 858 (M+NH4+).
【0126】
実施例2
(2−A)
2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−5−(4−メトキシベンジル)−4−メチルフェニル]−5−チオ−D−グルコピラノースの製造
【0127】
【化27】

【0128】
1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−4−(4−メトキシベンジル)−5−メチルベンゼン(3.46g、8.71mmol)のテトラヒドロフラン(17mL)溶液に−50℃にて、2.6M n−BuLiのヘキサン溶液(3.7mL、9.58mmol)を5分かけて滴下した。−60℃にて30分攪拌した後に、この溶液に、2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコノ−1,5−ラクトン(3.22g,5.81mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を滴下し、同温で15分間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、室温まで昇温し、これを酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製し、淡黄色ガム状の表題化合物を(2.22g、44%)得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.20 (s, 3 H) 3.47 - 4.03 (m, 10 H) 4.02 - 4.21 (m, 2 H) 4.51 (s, 2 H) 4.63 (d, J=10.7 Hz, 1 H) 4.73 - 4.98 (m, 4 H) 5.10 (s, 2 H) 6.48 - 7.76 (m, 31 H).
ESI m/z = 895 (M+Na+).
【0129】
(2−B)
(1S)−1,5−アンヒドロ−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−[2−(ベンジルオキシ)−5−(4−メトキシベンジル)−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトールの製造
【0130】
【化28】

【0131】
2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−5−(4−メトキシベンジル)−4−メチルフェニル]−5−チオ−D−グルコピラノース(2.20g,2.52mmol)のクロロホルム(6.0mL)とアセトニトリル(12.0mL)の混合溶液に、−15℃にて、EtSiH(0.80mL、5.04mmol)とBF・EtO(0.38mL、3.02mmol)を順次加え、1時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製し、無色粉末の表題化合物(2.15g、99%)を得た。
【0132】
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.17 (s, 3 H) 3.00 - 3.23 (m, 1 H) 3.55 (t, J=10.8 Hz, 1 H) 3.66 - 4.16 (m, 10 H) 4.45 - 4.65 (m, 5 H) 4.85 (s, 2 H) 4.90 (d, J=10.7 Hz, 1 H) 4.96 - 5.13 (m, 2 H) 6.51 - 7.46 (m, 31 H).
ESI m/z = 879 (M+Na).
【0133】
実施例3
(3−A)
2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−5−[(4−メトキシフェニル)(ヒドロキシ)メチル]−4−メチルフェニル]−5−チオ−D−グルコピラノースの製造
【0134】
【化29】

【0135】
1−ブロモ−4−メトキシベンゼン(520mg、2.78mmol)とテトラヒドロフラン(3mL)の混合物に、2.6 M n−BuLiのヘキサン溶液(1.01mL、2.69mmol)を−78℃にて加えた。直後に、2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−5−ホルミル−4−メチルフェニル]−5−チオ−D−グルコピラノース(700mg、0.896mmol) のテトラヒドロフラン(3mL)溶液を加えてさらに30分間攪拌し、反応液を室温まで昇温した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)にて精製し、無色アモルファスの表題化合物(570mg、72%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.03 - 2.24 (m, 3 H) 3.51 - 4.02 (m, 9 H) 4.49 - 5.16 (m, 10 H) 5.87 (brs, 1 H) 6.73 - 7.36 (m, 31 H).
ESI m/z = 911 (M+Na+) ,887 (M-H).
【0136】
(3−B)
(1S)−1,5−アンヒドロ−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−[2−(ベンジルオキシ)−5−(4−メトキシベンジル)−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトールの製造
【0137】
【化30】

【0138】
2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−5−[(4−メトキシフェニル)(ヒドロキシ)メチル]−4−メチルフェニル]−5−チオ−D−グルコピラノース(570mg、0.641mmol)のアセトニトリル(6.0mL)溶液に、−10℃にて、EtSiH(0.308mL、1.93mmol)とBF・EtO(0.090mL、1.41mmol)を順次加え、10分間攪拌した。反応液にクロロホルム(3.0mL)を加え、つづいて0℃にてBF・EtO(0.090mL、1.41mmol)を加えた。反応混合物を5℃で30分間攪拌した後に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製し、無色粉末の表題化合物(440mg、80%)を得た。スペクトルデータは実施例2と一致した。
【0139】
実施例4
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−メチル−5−(4−メチルベンジル)−2−ヒドロキシフェニル]−1−チオ−D−グルシトールの製造(化合物(I))
【0140】
【化31】

【0141】
(1S)−1,5−アンヒドロ−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−[2−(ベンジルオキシ)−4−メチル−5−(4−メチルベンジル)フェニル]−1−チオ−D−グルシトール(2.1g、2.50mmol)、20%水酸化パラジウム活性炭(2.06g)及び酢酸エチル(20mL)−エタノール(20mL)の混合物を水素雰囲気下、室温で50時間撹拌した。反応液中の不溶物をセライトを通してろ過し、そのろ液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム:メタノール=10:1)にて精製し、無色粉末の表題化合物(340mg、35%)を得た。
1H NMR (300 MHz, METHANOL-d4) δppm 2.07 (s, 3 H) 2.27 (s, 3 H) 2.92 - 3.04 (m, 1 H) 3.58 (dd, J=10.3, 9.0 Hz, 1 H) 3.73 (dd, J=11.5, 6.6 Hz, 1 H) 3.78 - 3.88 (m, 3 H) 3.94 (dd, J=11.5, 3.8 Hz, 1 H) 4.29 (d, J=10.6 Hz, 1 H) 6.60 (s, 1 H) 6.94 - 6.98 (m, 2 H) 7.01 - 7.04 (m, 2 H) 7.05 (s, 1 H).
ESI m/z = 408 M+NH4+),389 (M-H).
元素分析 Calcd for C21H26O5S・H2O:C, 61.72; H, 6.92. Found: C, 61.85; H, 6.78.
【0142】
実施例5
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−メトキシベンジル)−4−メチル−2−ヒドロキシフェニル]−1−チオ−D−グルシトールの製造(化合物(II))
【0143】
【化32】

【0144】
(1S)−1,5−アンヒドロ−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−[2−(ベンジルオキシ)−5−(4−メトキシベンジル)−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトール(2.11g、2.46mmol)、20%水酸化パラジウム活性炭(2.1g)及び酢酸エチル(20mL)−エタノール(20mL)の混合物を水素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。反応液中の不溶物をセライトを通してろ過し、そのろ液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム:メタノール=10:1)にて精製し、無色粉末の表題化合物(690mg、69%)を得た。
1H NMR (300 MHz, METHANOL-d4) δppm 2.08 (s, 3 H) 2.91 - 3.06 (m, 1 H) 3.26 (t, 1 H) 3.59 (dd, J=10.3, 8.9 Hz, 1 H) 3.68 - 3.78 (m, 1 H) 3.74 (s, 3 H) 3.81 (s, 2 H) 3.82- 3.88 (m, 1 H) 3.94 (dd, J=11.3, 3.7 Hz, 1 H) 4.29 (d, J=10.6 Hz, 1 H) 6.60 (s, 1 H) 6.69 - 6.82 (m, 2 H) 6.96 - 7.03 (m, 2 H) 7.04 (s, 1 H).
ESI m/z = 429 (M+Na+)
元素分析 Calcd for C21H26O6S・H2O:C, 59.27; H, 6.65. Found: C, 59.32; H, 6.40.
【0145】
実施例6
(1S)−1,5−アンヒドロ−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−[2−(ベンジルオキシ)−5−(4−エチルベンジル)−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトールの製造
【0146】
【化33】

1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−4−(4−エチルベンジル)−5−メチルベンゼン(5.31g、13.4mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に−60℃にて、2.66M n−BuLiのヘキサン溶液(5.05mL、13.4mmol)を5分かけて滴下した。同温にて15分攪拌した後に、この溶液に、2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコノ−1,5−ラクトン(6.76g,12.2mmol)のテトラヒドロフラン(25mL)溶液を滴下し、同温で2時間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、室温まで昇温した。これを酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去して2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−5−(4−エチルベンジル)−4−メチルフェニル]−5−チオ−D−グルコピラノースを得た。これをクロロホルム(30mL)とアセトニトリル(30mL)の混合溶液に溶解し、0℃に冷却した。次に、EtSiH(2.92mL、18.3mmol)とBF・EtO(1.86mL、14.6mmol)を順次加え、1時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をNH型シリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)とシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=87:13)にて精製し、淡黄色ガム状の表題化合物(3.41g、33%、2工程)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 1.16 (t, J=8.16 Hz, 3 H) 2.18 (s, 3 H) 2.48 - 2.61 (m, 2 H) 3.06 - 3.17 (m, 1 H) 3.54 (t, J=8.70 Hz, 1 H) 3.70 (d, J=10.26 Hz, 1 H) 3.76 - 3.98 (m, 5 H) 4.05 (d, J=11.81 Hz, 1 H) 4.50 - 4.64 (m, 5 H) 4.82 - 4.93 (m, 3 H) 5.00 - 5.10 (m, 2 H) 6.73 (s, 1 H) 6.78 (d, J=6.06 Hz, 2 H) 6.94 (br. s., 3 H) 7.09 - 7.19 (m, 5 H) 7.22 - 7.34 (m, 18 H) 7.35 - 7.44 (m, 2 H).
ESI m/z = 872 (M+NH4+) , 889 (M+Cl-).
【0147】
実施例7
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−エチルベンジル)−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトールの製造(化合物(III))
【0148】
【化34】

実施例4と同様な方法で、(1S)−1,5−アンヒドロ−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−[2−(ベンジルオキシ)−4−メチル−5−(4−メチルベンジル)フェニル]−1−チオ−D−グルシトールの代わりに(1S)−1,5−アンヒドロ−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−[2−(ベンジルオキシ)−5−(4−エチルベンジル)−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトールを用いて合成し、シリカゲルカラムグラフィ−の後にエタノールから再結晶を行い、無色粉末の表題化合物(392mg、24%)を得た。
1H NMR (300 MHz, METHANOL-d4) δppm 1.19 (t, J=7.62 Hz, 3 H) 2.08 (s, 3 H) 2.58 (q, J=7.56 Hz, 2 H) 2.99 (ddd, J=10.22, 6.41, 3.73 Hz, 1 H) 3.25 (t, 1 H) 3.59 (dd, J=9.71, 8.47 Hz, 1 H) 3.74 (dd, J=11.50, 6.37 Hz, 1 H) 3.85 (t, J=9.64 Hz, 3 H) 3.95 (dd, J=11.42, 3.81 Hz, 1 H) 4.30 (d, J=10.41 Hz, 1 H) 6.61 (s, 1 H) 6.96 - 7.09 (m, 5 H).
ESI m/z = 422 (M+NH4+) , 403 (M-H) , 439 (M+Cl-).
【0149】
実施例8
(1S)−1,5−アンヒドロ−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−[2−(ベンジルオキシ)−4−メチル−5−[4−(メチルスルファニル)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトールの製造
【0150】
【化35】


実施例6と同様の方法で1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−4−(4−エチルベンジル)−5−メチルベンゼンの代わりに1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−メチル−4−[4−(メチルスルファニル)ベンジル]ベンゼンを用いて薄黄色ガム状の表題化合物(3.27g、27%、2工程)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.16 (s, 3 H) 2.39 (s, 3 H) 3.07 - 3.16 (m, 1 H) 3.49 - 3.60 (m, 1 H) 3.63 - 3.75 (m, 1 H) 3.76 - 4.10 (m, 6 H) 4.42 - 4.66 (m, 5 H) 4.85 (s, 2 H) 4.90 (d, J=10.6 Hz, 1 H) 4.97 - 5.11 (m, 2 H) 6.69 - 7.48 (m, 31 H).
【0151】
実施例9
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[2−ヒドロキシ−4−メチル−5−[4−(メチルスルファニル)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトールの製造(化合物IV))
【0152】
【化36】


(1S)−1,5−アンヒドロ−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−[2−(ベンジルオキシ)−4−メチル−5−[4−(メチルスルファニル)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトール(1.09g、1.25mmol)、ジメチルスルフィド(4.5mL)、m−クレゾール(1.2mL)、トリフルオロ酢酸(7.5mL)、1,2-エタンジチオール(0.3mL)の混合溶液に−20℃にてトリフルオロメタンスルホン酸(1.5mL)を滴下した。同温にて40分攪拌した後に、反応液を飽和炭酸ナトリウム水溶液と氷の混合物に注いだ。酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=50:1→10:1)にて精製し、更にエタノールから再結晶を行い、無色粉末の表題化合物(166mg、31%)を得た。
1H NMR (300 MHz, METHANOL-d4) δppm 2.08 (s, 3 H) 2.43 (s, 3 H) 2.99 (ddd, J=10.2, 6.4, 3.7 Hz, 1 H) 3.22 - 3.31 (m, 1 H) 3.59 (dd, J=10.3, 9.0 Hz, 1 H) 3.74 (dd, J=11.5, 6.4 Hz, 1 H) 3.80-3.88 (m, 3 H) 3.95 (dd, J=11.5, 3.7 Hz, 1 H) 4.30 (d, J=10.4 Hz, 1 H) 6.61 (s, 1 H) 6.99 - 7.08 (m, 3 H) 7.11 - 7.18 (m, 2 H).
ESI m/z = 440 (M+NH4+) , 445 (M+Na+) , 421 (M-H) , 457 (M+Cl-).
【0153】
実施例10
(10−A)
1−C−[4−クロロ−5−(4−メチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1-イル−5−チオ−D−グルコピラノースの製造
【0154】
【化37】

実施例1(1−A)と同様な方法で、1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−メチル−4−(4−メチルベンジル) ベンゼンの代わりに1−ブロモ−4−クロロ−5−(4−メチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−2−イルオキシ)ベンゼン、2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコノ−1,5−ラクトンの代わりに2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1−イル−5−チオ−D−グルコノ−1,5−ラクトンを用いて、無色油状の表題化合物(426mg、29%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.29 (s, 3 H) 3.34 - 3.47 (m, 1 H) 3.47 - 4.31 (m, 14 H) 4.37 (dd, J=12.43, 5.75 Hz, 1 H) 4.60 (d, J=4.82 Hz, 2 H) 4.88 (s, 1 H) 4.94 (d, J=1.55 Hz, 1 H) 5.08 - 5.38 (m, 7 H) 5.42 - 5.59 (m, 2 H) 5.78 - 6.15 (m, 4 H) 6.93 (s, 1 H) 6.98 - 7.08 (m, 4 H) 7.24 (br. s., 1 H).
ESI m/z = 644 (M+NH4+) , 625 (M-H) , 661 (M+Cl-).
【0155】
(10−B)
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−5−(4−メチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1−イル−1−チオ−D−グルシトールの製造
【0156】
【化38】

実施例1(1−B)と同様な方法で、2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−4−メチル−5−(4−メチルベンジル)フェニル]−5−チオ−D−グルコピラノースの代わりに1−C−[4−クロロ−5−(4−メチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1-イル−5−チオ−D−グルコピラノースを用いて、無色固体の表題化合物(271mg、65%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.29 (s, 3 H) 2.94 - 3.04 (m, 1 H) 3.25 (t, J=9.09 Hz, 1 H) 3.38 - 4.20 (m, 11 H) 4.28 (d, J=5.60 Hz, 2 H) 4.36 (dd, J=12.05, 5.98 Hz, 2 H) 4.54 (dt, J=4.97, 1.63 Hz, 2 H) 4.81 - 4.92 (m, 2 H) 5.09 - 5.32 (m, 7 H) 5.33 - 5.51 (m, 2 H) 5.80 - 6.10 (m, 4 H) 6.86 (s, 1 H) 7.02 (td, 2 H) 7.03 (d, 2 H) 7.22 (s, 1 H).
ESI m/z = 628 (M+NH4+) , 633 (M+Na+) , 645 (M+Cl-).
【0157】
実施例11
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−2−ヒドロキシ−5−(4−メチルベンジル)フェニル]−1−チオ−D−グルシトールの製造(化合物(V))
【0158】
【化39】

(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−5−(4−メチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1−イル−1−チオ−D−グルシトール(242mg、0.396mmol)のテトラヒドロフラン(8mL)溶液にN,N−ジメチルバルビツル酸(618mg、3.96mmol)とテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(91.5mg、0.0792mmol)を加え、90℃で3時間攪拌した。反応液を室温まで冷却して水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を炉別後、溶媒を減圧下留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム:メタノール=9:1)にて精製し、更にヘキサン:酢酸エチル:エタノールから再結晶を行い、淡赤色粉末の表題化合物(64.2mg、39%)を得た。
1H NMR (600 MHz, METHANOL-d4) δppm 2.26 (s, 3 H) 2.95 (ddd, J=10.09, 6.42, 3.67 Hz, 1 H) 3.22 (t, J=8.71 Hz, 1 H) 3.53 (t, 1 H) 3.67 - 3.79 (m, 2 H) 3.84 - 3.96 (m, 3 H) 4.25 (d, J=10.55 Hz, 1 H) 6.80 (s, 1 H) 7.01 (d, 2 H) 7.03 (d, 2 H) 7.12 (s, 1 H).
ESI m/z = 428 (M+NH4+) , 433 (M+Na+) , 409 (M-H) , 445 (M+Cl-).
【0159】
実施例12
(12−A)
1−C−[4−クロロ−5−(4−エチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1-イル−5−チオ−D−グルコピラノースの製造
【0160】
【化40】

実施例1(1−A)と同様な方法で、1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−メチル−4−(4−メチルベンジル) ベンゼンの代わりに1−ブロモ−4−クロロ−5−(4−エチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−2−イルオキシ)ベンゼン、2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコノ−1,5−ラクトンの代わりに2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1-イル−5−チオ−D−グルコノ−1,5−ラクトンを用いて、無色油状の表題化合物(1.00g、39%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 1.20 (t, J=7.62 Hz, 3 H) 2.59 (q, J=7.51 Hz, 2 H) 3.37 - 3.46 (m, 1 H) 3.47 - 4.42 (m, 15 H) 4.60 (d, J=4.35 Hz, 2 H) 4.87 (s, 1 H) 4.92 (d, J=3.89 Hz, 1 H) 5.08 - 5.37 (m, 7 H) 5.41 - 5.58 (m, 2 H) 5.79 - 6.14 (m, 4 H) 6.93 (s, 1 H) 7.06 (d, 2 H) 7.07 (d, 2 H) 7.26 (br. s., 1 H).
ESI m/z = 639 (M-H) , 675 (M+Cl-).
【0161】
(12−B)
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−5−(4−エチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1−イル−1−チオ−D−グルシトールの製造
【0162】
【化41】

実施例1(1−B)と同様な方法で、2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−4−メチル−5−(4−メチルベンジル)フェニル]−5−チオ−D−グルコピラノースの代わりに1−C−[4−クロロ−5−(4−エチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1-イル−5−チオ−D−グルコピラノースを用いて、無色固体の表題化合物(564mg、65%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 1.20 (t, J=7.54 Hz, 3 H) 2.59 (q, J=7.82 Hz, 2 H) 2.95 - 3.04 (m, 1 H) 3.25 (t, J=8.55 Hz, 1 H) 3.36 - 3.94 (m, 7 H) 3.99 (d, J=5.60 Hz, 2 H) 4.03 - 4.19 (m, 2 H) 4.27 (d, J=5.75 Hz, 2 H) 4.36 (dd, J=12.43, 5.44 Hz, 2 H) 4.54 (dt, J=4.82, 1.63 Hz, 2 H) 4.85 (dd, J=15.85, 2.64 Hz, 2 H) 5.06 - 5.32 (m, 7 H) 5.32 - 5.48 (m, 2 H) 5.80 - 6.10 (m, 4 H) 6.86 (s, 1 H) 7.06 (d, J=3.26 Hz, 4 H) 7.22 (br. s., 1 H).
ESI m/z = 642 (M+NH4+) , 647 (M+Na+) , 659 (M+Cl-).
【0163】
実施例13
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−2−ヒドロキシ−5−(4−エチルベンジル)フェニル]−1−チオ−D−グルシトールの製造(化合物(VI))
【0164】
【化42】

実施例11と同様な方法で、(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−5−(4−メチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1−イル−1−チオ−D−グルシトールの代わりに(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−5−(4−エチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1−イル−1−チオ−D−グルシトールを用いて、淡赤色粉末の表題化合物(97.8mg、29%)を得た。
1H NMR (600 MHz, METHANOL-d4) δppm 1.18 (t, J=7.57 Hz, 3 H) 2.57 (q, J=7.64 Hz, 2 H) 2.96 (ddd, J=10.20, 6.53, 3.44 Hz, 1 H) 3.22 (t, J=8.94 Hz, 1 H) 3.54 (dd, J=10.32, 8.94 Hz, 1 H) 3.71 (dd, J=11.69, 6.65 Hz, 1 H) 3.76 (dd, J=10.32, 8.94 Hz, 1 H) 3.86 - 3.96 (m, 3 H) 4.25 (d, J=10.55 Hz, 1 H) 6.80 (s, 1 H) 7.01 - 7.07 (m, 4 H) 7.14 (s, 1 H).
ESI m/z = 442 (M+NH4+) , 423 (M-H) , 459 (M+Cl-).
【0165】
実施例14
(14−A)
1−C−[4−クロロ−5−(4−メトキシベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1−イル−5−チオ−D−グルコピラノースの製造
【0166】
【化43】

実施例1(1−A)と同様な方法で、1−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−メチル−4−(4−メチルベンジル)ベンゼンの代わりに1−ブロモ−4−クロロ−5−(4−メトキシベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)ベンゼン、2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−5−チオ−D−グルコノ−1,5−ラクトンの代わりに2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1−イル−5−チオ−D−グルコノ−1,5−ラクトンを用いて、無色油状の表題化合物(1.35g、54%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 3.35 - 3.47 (m, 1 H) 3.49 - 3.63 (m, 2 H) 3.69 (t, 2 H) 3.77 (s, 3 H) 3.80 - 4.42 (m, 10 H) 4.60 (d, J=5.0 Hz, 2 H) 4.82 - 4.99 (m, 2 H) 5.05 - 5.38 (m, 8 H) 5.41 - 5.60 (m, 2 H) 5.76 - 6.17 (m, 4 H) 6.73 - 6.84 (m, 2 H) 6.92 (s, 1 H) 6.99 - 7.11 (m, 2 H) 7.34 (brs., 1 H).
ESI m/z = 660 (M+NH4+), 641 (M-H).
【0167】
(14−B)
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−5−(4−メトキシベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1−イル−1−チオ−D−グルシトールの製造
【0168】
【化44】

実施例1(1−B)と同様な方法で、2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−1−C−[2−(ベンジルオキシ)−4−メチル−5−(4−メチルベンジル)フェニル]−5−チオ−D−グルコピラノースの代わりに1−C−[4−クロロ−5−(4−メトキシベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1−イル−5−チオ−D−グルコピラノースを用いて、無色固体の表題化合物(750mg、56%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 2.88 - 3.08 (m, 1 H) 3.25 (t, J=9.0 Hz, 1 H) 3.35 - 4.66 (m, 20 H) 4.73 - 4.99 (m, 2 H) 5.06 - 5.33 (m, 7 H) 5.33 - 5.55 (m, 2 H) 5.72 - 6.18 (m, 4 H) 6.74 - 6.83 (m, 2 H) 6.86 (s, 1 H) 7.04 (d, J=8.7 Hz, 2 H) 7.21 (s, 1 H).
ESI m/z = 649 (M+Na+), 644 (M+NH4+), 625 (M-H).
【0169】
実施例15
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシベンジル)フェニル]−1−チオ−D−グルシトールの製造(化合物(VII))
【0170】
【化45】

実施例11と同様な方法で、(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−5−(4−メチルベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1−イル−1−チオ−D−グルシトールの代わりに(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−5−(4−メトキシベンジル)−2−(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)フェニル]−2,3,4,6−テトラ−O−プロパ−2−エン−1−イル−1−チオ−D−グルシトールを用いて合成し、シリカゲルカラムグラフィ−の後に活性炭(粉末)による脱色、酢酸エチルから再結晶を行い、無色粉末の表題化合物(180mg、38%)を得た。
1H NMR (300 MHz, METHANOL-d4) δppm 2.91 - 3.05 (m, 1 H) 3.24 (t, J=8.9 Hz, 1 H) 3.29 - 3.35 (m, 2 H) 3.57 (t, J=9.6 Hz, 1 H) 3.66 - 3.87 (m, 4 H) 3.87 - 4.00 (m, 3 H) 4.27 (d, J=10.4 Hz, 1 H) 6.74 - 6.87 (m, 3 H) 7.01 - 7.11 (m, 2 H) 7.14 (s, 1 H).
ESI m/z = 449 (M+Na+), 444 (M+NH4+), 425 (M-H).
【0171】
製剤実施例
【0172】
【表1】

【0173】
製造方法
薬物を乳糖一水和物、結晶セルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−スカルシウム及びヒドロキシプロピルセルロ−スと混合し、この混合物を粉砕機で粉砕する。粉砕された混合物を撹拌造粒機で1分間混合し、その後、水で4〜8分間造粒する。得られた造粒物を70℃、40分間乾燥する。造粒乾燥末を500μmの篩で篩過する。篩過後の造粒乾燥末とステアリン酸マグネシウムを、V型混合機を用いて30rpmで3分間混合する。ロ−タリ−式打錠機を用いて得られた打錠用顆粒を圧縮成形し表2のように製錠する。
【0174】
【表2】

【0175】
試験例1
(1)ヒトSGLT1又はヒトSGLT2のクロ−ニング並びに発現ベクタ−への導入
ヒト小腸由来mRNAからヒトSGLT1配列(NM_000343)を逆転写の後増幅し、pCMV−tag5A(ストラタジ−ン社)に導入した。また、ヒトSGLT2配列(NM_003041)はヒト腎由来mRNAから同様な方法で調製し、pcDNA3.1+hygro(インビトロジェン社)に導入した。それぞれのクロ−ンの配列が、報告されている配列と一致することを確認した。
【0176】
(2)ヒトSGLT1又はヒトSGLT2を安定に発現するCHO−k1細胞の作成
ヒトSGLT1及びヒトSGLT2発現ベクタ−を、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)を用いてCHO−k1細胞へトランスフェクションした。SGLT発現細胞は、500μg/mLの濃度のジェネティシン(SGLT1)又はハイグロマイシンB(SGLT2)の存在下で培養し耐性株を選択し、下記に示す系により糖取り込み比活性を指標に取得した。
【0177】
(3)細胞におけるナトリウム依存的糖取り込み阻害試験
ヒトSGLT1又はヒトSGLT2を安定に発現する細胞をナトリウム依存的糖取り込み活性阻害試験に用いた。
細胞を前処理用緩衝液(140mM 塩化コリン、2mM KCl、1mM CaCl、1mM MgCl、10mM HEPES/5mM Tris、pH7.4)1mL中で20分間インキュベ−ションした。前処理用緩衝液を除去し、試験化合物を含む取り込み用緩衝液([14C]メチル α−D−グルコピラノシドを含むメチル α−D−グルコピラノシド(SGLT1阻害では0.1mM、SGLT2阻害では1mM)、140mM NaCl、2mM KCl、1mM CaCl、1mM MgCl、10mM HEPES/5mM Tris、pH7.4)を200μL加え、37℃にて30分(SGLT1)又は1時間(SGLT2)取り込み反応を行った。反応後細胞を洗浄用緩衝液(10mM メチル α−D−グルコピラノシド、140mM 塩化コリン2mM KCl、1mM CaCl、 1mM MgCl、10mM HEPES/5mM Tris、pH7.4)1mLで2回洗浄し、0.2M NaOH溶液400μLに溶かした。アクアゾ−ル2(パ−キンエルマ−社)を加えよく混和した後、液体シンチレ−ションカウンタ−(ベックマンコ−ルタ−社)で放射活性を測定することによって糖取り込み量を算出した。対照群として試験化合物を含まない取り込み用緩衝液を調製した。また基礎取り込み用としてNaClに代えて塩化コリンを含む取り込み用緩衝液を調製した。
【0178】
適当な6濃度の試験化合物を用いて糖取り込み量を測定し、対照群の糖取り込み量を100%とした場合に、その取り込み量が50%阻害される試験化合物の濃度をIC50値として算出した。
【0179】
(4)結果
表3に化合物(I)〜化合物(VII)および化合物98(特許文献9に開示)のSGLT阻害活性を示す。化合物98のエトキシ基をメチル基、エチル基、メトキシ基あるいはメチルチオ基に変換した化合物(I)〜(VII)は、意外にも、SGLT2阻害活性を保持したまま、化合物98より3〜6倍強いSGLT1阻害活性を示すことがわかった。
【0180】
【表3】

【0181】
(5)試験例2
db/dbマウスにおける血糖低下作用確認試験
実験動物としてdb/dbマウス(日本クレア、雄性、7週齢)を用いた。試験物質は、0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液に懸濁させ、1mg/10mLの濃度に調製した。試験当日、以下記載の採血法及び血糖値測定法に従い、db/dbマウスの血糖値の平均値と分散に出来る限り差が生じないよう群分けし、1群あたりの匹数を6匹とした。マウスの体重を測定後、調製した試験物質懸濁液をマウス経口投与用ゾンデにて10mL/kgの容量で強制経口投与し、対照群には0.5%CMC水溶液のみ投与した。採血は、試験物質投与前(0time)及び、経口投与0.5、1、2、4、6、8、24時間後の計8点で実施した。尚、試験は、自由摂食、摂水下で行った。
採血は、エーテル麻酔下で病態動物の眼窩静脈洞よりヘパリンコート採血管を用いて行い、血糖値は、グルコースCIIテストワコー(和光純薬株式会社)を用いて測定した。血糖降下作用強度(%)は、各試験物質投与群の0から8時間までの随時血糖値より台形法を用いて血糖値-時間曲線下面積(AUC)を算出し、対照群のそれに対する降下の割合で表記した。
(6)結果
【0182】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明により、小腸上皮に発現するSGLT1(ナトリウム依存性グルコ−ス共輸送体1)及び腎臓に発現するSGLT2(ナトリウム依存性グルコ−ス共輸送体2)を阻害し、消化管からのグルコ−ス吸収抑制と尿糖排泄作用とを併有する1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤を提供することが期待される。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤。
【請求項2】
式(II)
【化2】

で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤。
【請求項3】
式(III)
【化3】

で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤。
【請求項4】
式(IV)
【化4】

で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤。
【請求項5】
式(V)
【化5】

で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤。
【請求項6】
式(VI)
【化6】

で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤。
【請求項7】
式(VII)
【化7】

で表される1−フェニル 1−チオ−D−グルシト−ル化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病、糖尿病関連疾患又は糖尿病性合併症の予防又は治療剤。




【公開番号】特開2010−18611(P2010−18611A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139698(P2009−139698)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】