説明

1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンおよびpH調整剤を含む固体医薬組成物

本発明は、pH依存性薬剤化合物1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンおよびpH調整剤を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH依存性溶解度の薬剤化合物を含む固体医薬組成物、より具体的に、1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンまたは薬学的に許容されるその塩、好ましくはコハク酸塩、(以後“「薬剤」”と呼ぶ)を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本「薬剤」(薬剤)は文献から既知である;その構造および製造は、例えばWO98/35958または米国特許6,258,812に記載されており、これらは引用により本明細書に包含させる。本「薬剤」1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンスクシネートはまた“PTK”または“PTK787”または“PTK/ZK”または“PTK787/ZK222584”としても既知である。
【0003】
本「薬剤」は、強力な経口で活性のVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤であり、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)シグナル伝達をVEGF受容体のATP結合部位に直接結合することにより阻害する。本「薬剤」は微小血管系を減少させ、原発腫瘍および転移を阻害し、そして脱制御された血管形成と関連する疾患、とりわけ新生物疾患(固形腫瘍)、例えば乳癌、結腸の癌、肺癌、とりわけ小細胞肺癌、および前立腺の癌の処置に有用である。
【0004】
本「薬剤」は、胃腸管に沿って顕著なpH依存性溶解度を示す弱塩基性の薬剤化合物である。本「薬剤」は低pH、例えば空腹時の胃のような酸性環境でよく溶けるが(pH1;80g/L)、高い生理学的pHで、例えば小腸における吸収部位で顕著に低い溶解度である(pH7;7.110−4g/L)。結果として、本「薬剤」は、胃の酸性環境から小腸のような胃腸管上部の高いpH環境に移るにつれて溶液から沈殿する傾向にある。しかしながら、本「薬剤」の透過性が小腸で良いため、溶解は胃腸管のこの部分での吸収の律速段階である。胃腸管のpHはまた、例えば、患者が満腹状態かまたは空腹状態か、ある種の薬剤の使用、またはある種の医学的状態の結果として変わり得る。故に、このような薬剤の経口投与は、高い対象内および対象管可変性をもたらし得る。
【0005】
pH依存性溶解度の薬剤を含む医薬組成物の薬剤放出を改善するための種々の概念が議論されているが、減少した対象内および対象間可変性および増加したバイオアベイラビリティをもたらす、本「薬剤」を含む医薬組成物の要求がある。
【0006】
驚くべきことに、本発明者らは、本「薬剤」およびpH調整剤を含む、改善された医薬組成物を同定した。医薬組成物内の微小環境pHのより酸性状態へのシフトは、本「薬剤」が低い溶解度を示すpH条件での薬剤溶解度および薬剤溶解を高める。加えて、対象内および対象管可変性も減少できる。pH調整の程度および期間は、包含されたpH調整剤および使用するポリマーの物理化学的特性に依存する。
【発明の開示】
【0007】
一つの局面において、本発明は:
(i) 本「薬剤」;
(ii) pH調整剤
を含む医薬組成物を提供する。
【0008】
さらなる局面において、本発明は:
(i) 本「薬剤」;
(ii) pH調整剤;
(iii) ポリマー
を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
さらなる局面において、本発明は、脱制御された血管形成に関連する障害を有する患者の処置用薬剤の製造のための、「薬剤」および賦形剤(医薬組成物)の使用を提供する。
【0010】
さらなる局面において、本発明は、例えば、脱制御された血管形成に関連する障害の処置のために「薬剤」を経口投与する方法であって、「薬剤」治療を必要とする患者に、本発明の医薬組成物を経口投与する、好ましくは1日1回投与することを含む、方法を提供する。
【0011】
本発明のこれらおよび他の特性、利点および対象は、以下の明細書、添付の特許請求の範囲および図面を参照して、当業者にはさらに理解され、認識されるであろう。
【0012】
図面の簡単な説明
明細書に取りこまれ、明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の例示的態様を説明する。
図1は、実施例3、4および5の製剤を使用したマトリックス錠剤からの薬剤放出に対するフマル酸の影響を示す − インビボ。
図2は、実施例3および5の製剤を使用したマトリックスミニタブレットからの薬剤放出に対するフマル酸の影響を示す − インビトロ。
図3は、薬剤放出に対するフマル酸の影響を示す − インビボ
A=実施例5のフマル酸無しのマトリックス錠剤;
A−FA=実施例3のフマル酸有りのマトリックス錠剤;
B=実施例5のフマル酸無しのマトリックスミニタブレット;
B−FA=実施例3のフマル酸有りのマトリックスミニタブレット。
図4は、フマル酸包含によるAUC(0−24h)可変性の減少を示す
A=実施例5のフマル酸無しのマトリックス錠剤;
A−FA=実施例3のフマル酸有りのマトリックス錠剤;
B=実施例5のフマル酸無しのマトリックスミニタブレット;
B−FA=実施例3のフマル酸有りのマトリックスミニタブレット。
【0013】
発明の詳細な記載
ここで使用する用語“pH調整剤”は、例えば有機または無機酸または酸性ポリマー、例えばCarbomers、または潜在性の酸のような水素イオン(酸)を放出できる有機または無機化学物質を意味し、そして薬学的に許容される。潜在性の酸は、水の存在下で遊離酸に加水分解する化合物、例えば、グルコノ−δ−ラクトンである。
【0014】
特に、pH調整剤は、1から7、好ましくは2から6.5またはより好ましくは2.5から5.5のpKaを有する酸性基を含み得る。pKa値がここで記載されているとき、一般にそれらは25℃の水中で測定されたものと解釈すべきである。
【0015】
持続性放出医薬組成物において使用するために、典型的に1から24時間、好ましくは3から16時間である意図される期間に依存して相対的に低い水溶解度のpH調整剤、例えば5%(g/100ml 水)未満の溶解度を有するpH調整剤が好ましい。
【0016】
pH調整剤としての固体酸または医薬的に許容されるその塩の使用は、固体投与形態である本発明の組成物の製造において特に簡便である。
【0017】
本発明の一つの好ましい態様において、pH調整剤は有機酸または医薬的に許容されるその塩である。適当な有機酸は1個以上の酸性基の酸性基を含み、特にカルボン酸およびスルホン酸基から選択される酸性基を含む化合物、特に環境温度で固体であり、2個以上の酸性基を有する化合物である。加えてヒドロキシル基またはアミノ基のような酸性官能基の酸性を増強または減少する官能基が分子に存在できる。
【0018】
具体的な水溶性有機酸は、一、二または多塩基性カルボン酸および一、二または酸スルホン酸から選択される水溶性または水僅溶性有機酸であり、好ましくは環境温度で固体であるこのような酸である。具体的固体水溶性カルボン酸は、例えば1〜20個の炭素原子、特に2〜6個の炭素原子を含む脂肪族一または多カルボン酸、より特に4〜6個およびとりわけ4個の炭素原子を含む二または三カルボン酸を含み、これらの全ての酸は飽和または不飽和であり、分枝または非分枝炭素原子鎖を有してよい。適当な固体水溶性脂肪族一カルボン酸の例は、ソルビン酸(2,4−ヘキサジエン酸)を含む。適当な固体水溶性脂肪族二カルボン酸の例は、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸またはフマル酸を含む。本脂肪族カルボン酸は、所望により、カルボキシ、アミノまたはヒドロキシから選択される、同一または異なり得る1個以上の基(例えば1個、2個または3個の基)で置換されていてよい。適当な置換固体水溶性脂肪族カルボン酸は、例えばグルコン酸、乳酸の固体形態、グリコール酸またはアスコルビン酸のようなヒドロキシ置換脂肪族一カルボン酸;リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸(ヒドロキシマロン酸)、または粘液酸(ガラクタル酸)のようなヒドロキシ置換脂肪族二カルボン酸;ヒドロキシ2置換脂肪族三カルボン酸、例えばクエン酸;またはグルタミン酸またはアスパラギン酸のような酸性側鎖を担持するアミノ酸を含む。
【0019】
適当な芳香族性カルボン酸は、20個までの炭素原子を含む水溶性アリールカルボン酸を含む。適当なアリールカルボン酸は、1個以上のカルボキシル基(例えば1個、2個または3個のカルボキシ基)を担持するアリール基、例えばフェニルまたはナフチル基を含む。本アリール基は、所望によりヒドロキシ、(1−4C)アルコキシ、例えばメトキシ、およびスルホニルから選択される、同一または異なり得る1個以上の基(例えば1個、2個または3個の基)で置換されていてよい。適当なアリールカルボン酸は、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはトリメリト酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)を含む。
【0020】
本発明の他の態様において、pH調整剤は重合有機酸または医薬的に許容されるその塩である。ポリマーの骨格は直鎖状または分枝状またはそれらの混合物であり得る。ポリマーの骨格または分枝は、加えて適当なリンカーと架橋できる。適当な重合酸は酸性基を有する直鎖状骨格、または酸性基を有する分枝状骨格またはそれらの混合物を含む。適当な重合酸は、例えば架橋しているアクリル酸の合成高分子量ポリマー類(例えばCarbopol 71G)または例えばジビニルベンゼンと架橋しているメタクリル酸ポリマーである(例えばAmberlite IRP-64)。さらに適当な重合酸はアルギン酸である。
【0021】
優先的にpH調整剤は有機酸、酸性ポリマー、および潜在性の酸から選択する。
【0022】
さらに好ましいのは、pH調整剤を2種以上の酸および/または塩の混合物を含むクエン酸、フマル酸、コハク酸、コハク酸無水物、アジピン酸およびマレイン酸または薬学的に許容されるそれらの塩から選択する。
【0023】
最も好ましいのは、pH調整剤としてのフマル酸である。
また最も好ましいのは、pH調整剤としてのコハク酸またはコハク酸無水物である。
【0024】
とりわけ好ましいのはフマル酸である。フマル酸は25℃で約3、より具体的に3.03のpKaを有する。
【0025】
加えて、ヒドロキシル基またはアミノ基のような酸性官能基の酸性を増強または減少する官能基がポリマー骨格または分枝に存在できる。
【0026】
本発明の好ましい態様において、医薬組成物中のpH調整剤対酸性薬剤化合物の重量/重量比は、0.005:1またはそれ以上、好ましくは0.01:1から10:1、より好ましくは0.025:1から2:1、さらに好ましくは0.5:1から2:1、最も好ましくは約1:1である。
【0027】
ここで使用する用語“ポリマー”は、セルロース誘導体[例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースK100LV、K 4 M、ヒドロキシプロピルメチルセルロースK 15 M)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウム−カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース(例えば、エチルセルロース100)、酢酸セルロース(例えば、酢酸セルロース CA−398−10 NF)、酢酸フタル酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酪酸セルロース、硝酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸・コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース];アクリル誘導体[例えば、ポリアクリレート、架橋ポリアクリレート]、メタクリル酸(methycrylic acid)コポリマー類、ビニルポリマー類(例えば、ポリビニルピロリドン、酢酸ポリビニル、酢酸フタル酸ポリビニル)および商品名Kollidon SR(登録商標)の下に販売されているようなそれらの混合物、ポリエチレングリコール、ポリアンハイドライド、ポリサッカライド(例えば、キサンタン、キサンタンガム)、ガラクトマンナン、ペクチン、およびアルギネートから成る群から選択されるポリマーである。さらに、ポリマーはpH調整剤の機能に影響し得る。
好ましいポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0028】
本発明のある例示的態様において、本医薬組成物は、医薬組成物中に一般的に見られる付加的な賦形剤を含んでよく、そのような賦形剤の例は増量剤、流動促進剤、滑剤、結合剤、抗酸化剤、抗微生物剤、酵素阻害剤、安定化剤、防腐剤、香味剤、甘味剤および、例えばHandbook of Pharmaceutical Excipients, Rowe et al., Eds., 4th Edition, Pharmaceutical Press (2003)(これは引用により本明細書に包含する)に記載のような他の成分を含むが、これらに限定されない。
【0029】
増量剤および/または結合剤以外の付加的賦形剤は、全医薬組成物の約0.05−11重量%、例えば全組成物の約0.5から約3,5重量%を構成し得る。抗酸化剤、抗微生物剤、酵素阻害剤、安定化剤または防腐剤は、典型的に全医薬組成物の約0.05−1重量%を構成し得る。甘味剤または香味剤は、典型的に全医薬組成物の約2.5%または5重量%まで提供する。滑剤は、典型的に、全医薬組成物の約0.5%から3%、好ましくは約1重量%まで提供する。
【0030】
ここで使用する“滑剤”の例は、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素化ヒマシ油、グリセリルベハプテート(glycerylbehaptate)、モノステアリン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、エチレンオキシドポリマー類、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、DL−ロイシン、コロイド状シリカ、および当分野で既知のその他を含むが、これらに限定されない。
【0031】
ここで使用する“増量剤”の例は、ラクトース(これは無水または水和形態であり得る)、糖、デンプン(例えばコーン、小麦、メイズ、ポテト)、修飾デンプン(例えば、デンプン水解物または前ゼラチン化デンプン)、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、マルトース、グルコース無水物;無機塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸、硫酸カルシウム)、微晶性セルロース、セルロース誘導体を含むが、これらに限定されない。
ここで使用する“流動促進剤”の例は、Aerosil 200またはタルクを含むが、これらに限定されない。
【0032】
ここで使用する“結合剤”の例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、例えば低い見かけの粘性を有する、例えば20℃で2重量%水性溶液について測定して100cps未満、例えば50cps未満、好ましくは20cps未満のHPMC、例えば既知であり、信越社から商品名Pharmacoat(登録商標) 603の下に販売されているようなHPMC 3cps;または既知であり、BASF社から商品名Povidone(登録商標)の下に販売されているようなポリビニルピロリドン(PVP)、例えばPVP K30またはPVP K12を含むが、これらに限定されない。
【0033】
抗酸化剤の例は、アスコルビン酸およびその誘導体、トコフェロールおよびその誘導体、ブチルヒドロキシルアニソールおよびブチルヒドロキシルトルエンを含むが、これらに限定されない。α−トコフェロールとしてのビタミンEが特に有用である。
【0034】
本発明の投与形態は広く実行できる。限定ではなく議論の目的で、以下の多くの態様を衣装および操作の原則に従い3クラスに分類できる。
【0035】
1. 第一のクラスの投与形態は、酸の全量または一部をコア錠剤に含む放出調節型親水性膨潤、浸食、分散性または溶解性モノリシックマトリックス錠剤または圧縮コートマトリックス錠剤またはミニタブレット、顆粒、またはペレットのような多微粒子(multiparticulate)マトリックス系である。
【0036】
2. 第二のクラスの投与形態は、薬剤の放出が一般に膜により調節されているコート放出調節型多微粒子系、例えばコートミニタブレット、ペレット、顆粒またはビーズ(スターター・コアとして酸の結晶を使用するものを含む)から成る。モノリシック系と比較して、多微粒子は、幽門を通る排泄に十分小さいため、平均胃排出が速く、栄養状態にあまり依存しないとの利点を示す。多微粒子は、多くの製剤適用を有し得る。例えば、それらをカプセルに充填でき、または小袋として充填でき、または錠剤に圧縮できる。組成物が錠剤の形であるとき、それは好ましくは放出調節型コート多粒子を与えるために口腔、胃または小腸で崩壊または溶解できる錠剤である。
【0037】
3. 第三クラスの投与形態は2種以上の多微粒子の混合物、例えば即時放出型(IR)および放出調節型(MR)の混合物、または2種以上の異なる放出調節プロファイルを有する多微粒子の混合物から成り、これらはカプセルに充填でき、または小袋として充填でき、または錠剤に圧縮できる。投与形態の投与によるこのような系からの薬剤の全体的放出は、異なる単一放出単位の比率およびそれらの具体的薬剤放出プロファイルにより特徴付けられる。
【0038】
4. 第四クラスの豐形態はIRおよびMR層または異なる放出プロファイルの2個のMR層から成る二層錠剤から成る。さらなる態様において、2つのMR外層および純粋酸または純粋酸と増量剤の内層から成る3層錠剤も包含する。
【0039】
本発明のさらなる態様において、本発明において開示の1種以上の単一特異的放出単位投与形態を、小腸に到達する前に固体投与形態からの薬剤溶解を防止する腸溶性ポリマーでさらにコートする。
【0040】
本発明のさらなる態様において、サブコートを、マトリックスに含まれるpH調整剤から腸溶性コーティングを離すために適用する。
【0041】
本発明の腸溶性コーティングは以下を含み得る(最終重量の%)
・腸溶性コーティング用の2−40%ポリマー類(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(すなわち信越のHP 50またはHP 5)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(すなわち信越のAqoat H、M、またはL)、メチルアクリル酸−エチルアクリル酸コポリマー(メタクリル酸コポリマー、USP)(すなわち、Roehm PharmaのEudragit L、S、L100-55、L30D、ColorconのAcryl-Eze、BASFのKollicoat MAE 30 DP)、フタル酸酢酸セルロース(すなわちFMC BiopolymerのAquacoat CPDまたはEastman KodakからのPolymer)、酢酸フタル酸ポリビニル(Sureteric, Colorcon)
・サブコーティング(錠剤コアと腸溶性コートの間の遮断(isolation)コート)用0−15%ポリマー類:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Pharmacoat 603または606)、エチルセルロース(Aquacoat ECD, FMC Biopolymer, Surelease, Colorcon)、およびエチルセルロース:HPMC=1:1から1:10までのそれらの混合物、ポリビニルアルコール(Opadry II HP, type 85F, Colorcon)
・0−10%可塑剤(トリアセチン、クエン酸トリエチル、PEG 4000、PEG 6000、PEG 8000、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、クエン酸アセチルトリエチル、など)
・0−15%固着防止剤(Aerosil 200、Syloid 244 FP、タルク、モノステアリン酸グリセロール)
・水部分有りまたは無しの有機溶媒またはそれらの混合物、例えばエタノール、アセトン、イソプロパノール、またはコーティングポリマー類およびコーティング溶液のための賦形剤を溶解または分散するために適量の水
・水性腸溶性コーティング懸濁液にポリマー類(すなわちEudragit L100-55)を再分散するための0−0.5%水酸化ナトリウム。
【0042】
以下の実施例はここに記載の本発明を説明するが、その範囲を限定するために供しない。実施例は、本発明の実施法を示唆することのみを意図する。各実施例において使用する、医薬組成物の重量%で示される成分の量は、各記載の後に位置する各表に明示する。
【実施例】
【0043】
1. 放出調節型親水性膨潤、浸食、分散性または溶解性モノリシックマトリックス錠剤またはミニタブレット、ペレットまたは顆粒のような多微粒子系
1.1 製剤成分および範囲
・ 1−80%「薬剤」
・ 1−60%pH調整剤(例えばクエン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸)
・ 10−60%水溶性および水不溶性ポリマー類(例えばMethocel K100M, Methocel K4M, Methocel K100LVまたはそれらの混合物;Kollidon SR)
・ 0−2%Aerosil 200
・ 0−2%ステアリン酸マグネシウム
・ 所望によりさらなる錠剤化賦形剤、例えば、増量剤(3−65%、好ましくは4−55%)、例えばラクトースおよび結合剤(0.5−5%、好ましくは2−3%)、例えばHPMC 3 cps
【0044】
1.2 ミニタブレットおよび圧縮コート錠を含む錠剤用顆粒
活性成分、pH調整剤、ポリマー、および何らかのさらなる錠剤化賦形剤を混合し、水または有機溶媒により湿式造粒する。乾燥顆粒は例えば
1)800μm篩いおよびを通して篩い分けし、カプセルまたはサシェットに入れる、または
2)800μm篩いおよびを通して篩い分けし、圧縮コーティング錠を含むモノリシックマトリックス錠剤に圧縮するまたは
3)400μm篩いおよびを通して篩い分けし、ミニタブレットに圧縮する。
比較目的で、Aerosilおよびステアリン酸マグネシウムから成る外相を添加し、徹底的に混合する。本混合物を例えば、直径5から12mmのモノリシックマトリックス錠剤、または直径例えば1.7から2mmのミニタブレットに圧縮する。
【0045】
1.3 ペレットの製造
さらなる態様において、ポリマー、pH調整剤および何らかのアジュバント(好ましくはセルロース、セルロース誘導体、およびラクトース)を押し出しおよびその後の球形化の手段によりペレットに加工する。
【0046】
本発明の他の対象は、直接ペレット化の手段によるペレットの製造方法である。この場合、出発物質を混合し、結合剤溶液(湿式造粒)または溶融添加剤(例えば、脂肪)の手段によりペレットに加工する。
本発明の他の対象は、噴霧乾燥または噴霧固化の手段によるペレットの製造方法である。
本発明の他の目的は、回転造粒の手段によるペレットの製造方法である。
【0047】
1.4 圧縮コーティング錠の外層を含むマトリックス錠剤およびマトリックスミニタブレットの組成(腸溶性コーティングありまたは無し)
錠剤を250±5mg(φ10mm)の重量で製造した。製造したミニタブレット(1−2mm)の250mg±5mgをカプセルに充填した:
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【0054】
【表8】

【0055】
【表9】

【0056】
【表10】

【0057】
顆粒の組成
【表11】

【0058】
ペレットの組成
【表12】

【0059】
酸を完全に内部錠剤コアにまたは一部コアおよび一部外層に含む圧縮コーティング錠
酸を含む内部コア錠剤の製造のために、錠剤を滑剤と混合した純粋酸、例えば純粋コハク酸から製造し、手動で単発式打錠機(EK0, Korsch, Germany)に供給した。他の態様において、内部コア錠剤を、滑剤と混合した酸および水溶性または水不溶性、好ましくは水不溶性増量剤から成る顆粒から圧縮した。外層のためのマトリックス顆粒を上記(1.2.および1.4)の方法で製造したが、また薬剤とポリマーのみで何ら酸を含まなくてもよかった。
【0060】
圧縮コーティング錠のために、コア錠剤を外層の中心に置き(例えば外層の顆粒を粉末床を製造するために金型に入れ、その中心にコア錠剤を置き、その後外層のさらなる顆粒で覆った)、圧縮力を適用した。
【0061】
外層としてのコハク酸およびコハク酸含有コアを含むマトリックス顆粒から製造した圧縮コーティング錠の組成
実施例13
【表13】

【0062】
1.5 腸溶性コーティングおよびサブコーティングの製造
遮断コートを、HPMC(4−8%)、可塑剤(0−3%)および固着防止剤(0−3%)の水性溶液から適用する。Aquacoat ECDまたはSurelease(水性エチルセルロース分散)を、サブコーティングの遮断効果を改善するために1:10から1:1(エチルセルロース:HPMC)までの比率で添加すべきである。錠剤サイズに基づき、適用するサブコートの総量は2−15%である(より好ましい:大きな錠剤4−10%、ミニタブレット/ペレット:8−15%)。コア重量の2−10%範囲のポリビニルアルコール(Opadry II HP)を有効なサブコーティングのために用い得る。
【0063】
さらに、HPMCサブコートは、何もさらなる添加剤なく、エタノール/アセトン1:1(溶媒あたり約6−10%ポリマー)中の有機懸濁液からコートできた。
【0064】
有機腸溶性コーティング溶液の場合、腸溶性コーティングポリマーおよび可塑剤を有機溶媒に溶解後、固着防止剤を分散する。水性分散からのコーティングに関して、可塑剤を水中に溶解するか微細分散させ、固着防止剤を分散させ、そして最後に再構成した懸濁液(すなわち、AqoatまたはEudragit L 100-55)またはたは市販の水性ポリマー分散(例えばEudragit L 30D, Acryl-Aze, Kollicoat MAE 30 D)を添加する。
【0065】
コーティングは、例えばウルスター原則を有するまたは有しないパン・コーターまたは流動床コーターを使用して、28から50℃の製品温度で、2から45%(より好ましくは大きな錠剤については約10−25%および小さな錠剤/ミニタブレットについては20−40%)のコーティング層まで適用できる。サブコーティング層:2−15%(より好ましい:大きな錠剤4−10%、ミニタブレット/ペレット:8−15%)/腸溶性コーティング層:5−40%(より好ましい:大きな錠剤:8−20%、ミニタブレット/ペレット:15−30%)。本層は、人工胃液または0.1N HCL溶液中で1−3時間の腸溶性抵抗性を確実にするために錠剤サイズに依存し得る(欧州薬局方または米国薬局方に従う)。加えて、胃抵抗性試験中のコアの膨張を最小限に抑えなければならない。
【0066】
【表14】

【0067】
【表15】

【0068】
【表16】

【0069】
【表17】

【0070】
【表18】

【0071】
【表19】

【0072】
2. ミニタブレット、ペレット、顆粒またはビーズのような放出調節型コート多微粒子系
2.1 多微粒子系の製造
2.1.1 顆粒およびミニタブレットの製造
活性成分、pH調整剤、および何らかのさらなる錠剤化賦形剤を混合し、水または有機溶媒により湿式造粒する。乾燥顆粒を、例えば顆粒製造のために800μmを通して篩うか、または400μm篩いを通して篩い分けし、ミニタブレットに圧縮する。圧縮目的で、Aerosilおよびステアリン酸マグネシウムを除く成分から成る外相を添加し、十分に混合した。本混合物を直径例えば1.7から2mmのミニタブレットに圧縮する。得られる顆粒およびミニタブレットを最後に以下に記載のポリマー類を使用したコーティング製剤の一つでコートする(すなわち拡散コート、拡散コートとさらなる腸溶性コート、腸溶性ポリマーを含む拡散コート)。
【0073】
ミニタブレットの組成
【表20】

【0074】
顆粒の組成
【表21】

【0075】
2.1.2 ペレットの製造:
一つの態様において、乾燥混合物を、薬剤、pH調整剤、微晶性セルロース(すなわち、Avicel PH101)およびラクトース遊星ミキサー中で混合することにより製造する。精製水を添加して湿潤塊を得て、それを続いて適当なサイズの篩いを使用して押し出す。本押し出し物をスフェロナイザーで丸め、徹底的に乾燥させ、適当なサイズ選択のために篩い、即時放出型ペレットを得る。1.3.の下に記載の何らかの他のペレット形成法もまた使用できる。得られるペレットを、最後に以下に記載のコーティング製剤の一方でコートする(すなわち拡散コート、拡散コートとさらなる腸溶性コート、腸溶性ポリマーを含む拡散コート)。コートペレットを次いでカプセルまたはサシェットに分配できる。
【0076】
さらに、即時型および放出調節型ペレットを、それらを同じカプセルまたはサシェットに入れることにより組み合わせとして使用できる。
ペレットの組成(量は%で示す)
【表22】

加工中に除去。
【0077】
2.1.3 可溶性および不溶性ノンパレイユ・シードならびに丸めたpH調整剤スターター・コアならびに薬剤粒子に基づくビーズの製造
2.1.3.1 一つの態様において、薬剤溶液を、薬剤、pH調整剤および以下に記載の残りの製剤成分を混合しながら選択した媒体に溶解することにより製造する。ノンパレイユ・シード、すなわち無薬剤コアをウルスター流動床コーターに分配し、流動化させる。予め製造した薬剤溶液を、次いで、シード上に薬剤溶液が滴るまで噴霧し、即時放出型ビーズを得る。ビーズを同じ条件で5分乾燥させる。得られるビーズを再びウルスター流動床コーターに分配し、最後に以下のコーティング製剤(拡散コート、拡散コートとさらなる腸溶性コート、腸溶性ポリマーを含む拡散コート)のコーティング成分の水性分散または有機溶液でコートして、放出調節型ビーズを得る。
【0078】
コートビーズを次いでカプセルまたはサシェットに分配できる。
さらに、即時型および放出調節型ペレットを、それらを同じカプセルまたはサシェットに入れることにより組み合わせとして使用できる。
1000g ノンパレイユ・シードに適用すべきビーズの組成(量は%で示す)
【表23】

フマル酸:1−60%
PTK787:20−70%
Pharmacoat:10−50%
【0079】
2.1.3.2 第二の態様において、ノンパレイユ・シードをウルスター流動床コーターに分配する。流動化後、製剤Aとしての薬剤層溶液噴霧を、シード上に効果的に層薬剤溶液に開始する。薬剤層溶液を使い尽くすまで噴霧を続ける。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(OpadryTM透明)の精製水溶液から成る保護層を、次いでシード上に噴霧し得る。HPMC溶液を使い尽くすまで噴霧を続ける。次いで、製剤Bとしての有機酸およびHPMCの溶液をシード上に噴霧する。ビーズを同じ条件下で5分乾燥させ、即時放出型ビーズを得る。さらに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(OpadryTM)の精製水溶液をシード上に噴霧してよい。得られるビーズを再びウルスター流動床コーターに分配し、最後に以下のコーティング製剤(拡散コート、拡散コートとさらなる腸溶性コート、腸溶性ポリマーを含む拡散コート)のコーティング成分の水性分散または有機溶液でコートして、放出調節型ビーズを得る。最後に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(OpadryTM)の精製水溶液をシード上に噴霧してよい。ビーズを同じ条件下で5分乾燥させ、放出調節型ビーズを得る。
【0080】
コートビーズを次いでカプセルまたはサシェットに分配できる。
さらに、即時型および放出調節型ペレットを、それらを同じカプセルまたはサシェットに入れることにより組み合わせとして使用できる(3.3と比較のこと)。
【0081】
1000g ノンパレイユ・シード(量は%で示す)に適用すべきビーズの組成
実施例18
【表24】

【表25】

加工中に除去
【0082】
2.1.3.3 第三の態様において、ノンパレイユ・シードをウルスター流動床コーターに分配する。流動化後、製剤B(第二の態様参照)としてのpH調整剤およびHPMCを含む溶液の噴霧を、シード上に効果的に層薬剤溶液に開始する。pH調整剤層溶液を使い尽くすまで噴霧を続ける。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(OpadryTM透明)の精製水溶液から成る保護層を次いでシード上に噴霧し得る。HPMC溶液を使い尽くすまで噴霧を続ける。次いで、製剤A(第二の態様参照)としての薬剤の溶液をシード上に噴霧する。薬剤層溶液を使い尽くすまで噴霧を続ける。ビーズを同じ条件下で5分乾燥させ、即時放出型ビーズを得る。さらに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(OpadryTM)の精製水溶液をシード上に噴霧してよい。得られるビーズを再びウルスター流動床コーターに分配し、最後に以下のコーティング製剤(拡散コート、拡散コートとさらなる腸溶性コート、腸溶性ポリマーを含む拡散コート)のコーティング成分の水性分散または有機溶液でコートして、放出調節型ビーズを得る。最後に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(OpadryTM)の精製水溶液をシード上に噴霧してよい。ビーズを同じ条件下で5分乾燥させ、放出調節型ビーズを得る。
【0083】
コートビーズを次いでカプセルまたはサシェットに分配できる。
さらに、即時型および放出調節型ペレットを、それらを同じカプセルまたはサシェットに入れることにより組み合わせとして使用できる。
【0084】
2.1.3.4 第四の態様において、適当な容器中、例えば0.3から1mmの平均直径を有するpH調整剤の丸めたスターター・コアを、例えばPVPを含むアルコール性ポリマー溶液で均質に噴霧し、薬剤およびpH調整剤でビーズが再び自由に回転するまで混合する。乾燥後、この操作を薬剤の所望の総量が得られるまで繰り返す。しかしながら、薬剤を接着性溶液に溶解し、この溶液または懸濁液をスターター・コア上に均質に噴霧することも可能である。適当な結合剤は、デンプンペースト、糖シロップ、およびゼラチン、グアーガム、セルロースエーテル(例えばHEC、HPMC)、またはPVPの溶液のような接着性溶液を含む。スターター・コア中の酸は、薬剤と混合した酸と異なってよい。スターター・コアにとりわけ適当なのは、ほぼ球形を有する酸、例えば酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、アスコルビン酸である。
【0085】
2.1.3.5 第五の態様において、本発はまた、ポリマーコーティング、pH調整剤およびアジュバントを、薬剤上への重層適用によりビーズ上に加工する方法にも関する(重層法)。
【0086】
2.2 拡散コーティング組成物
2.2.1 コーティング成分および範囲
・ 拡散コーティング用1−20%ポリマー類、例えばエチルセルロース(Aquacoat ECD, FMC Biopolymer、Surrelease、Colorcon)、アクリル/メタクリル酸−エステル/Eudragit RL、Eudragit RS(Roehm)
・ 孔形成剤としての0−20%水溶性ポリマー類、すなわちヒドロキシプロピルメチルセルロース3、6cps(Pharmacoat 603, 606、信越)、ポリエチレングリコール(PEG 2000 - PEG 8000)
・ サブコーティング用0−15%ポリマー類(錠剤コアおよび腸溶性コート間の遮断コート):ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Pharmacoat 603または606)、エチルセルロース(すなわちAquacoat ECD, FMC Biopolymer, Surelease, Colorcon)および/またはエチルセルロース:HPMC=1:1から1:10までのそれらの混合物、ポリビニルアルコールe(Opadry II HP, type 85F, Colorcon)
・ 孔形成剤としての0−20%腸溶性コーティングポリマー類(可能なポリマー類のリストは上記参照)
・ 0−10%可塑剤(トリアセチン、クエン酸トリエチル、PEG 4000、PEG 6000、PEG 8000、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、アセチルクエン酸トリエチルなど)
・ 0−15%固着防止剤(Aerosil 200、Syloid 244 FP、タルク、モノステアリン酸グリセロールなど)
・ 水部分有りまたは無しの有機溶媒またはそれらの混合物(エタノール、アセトン、イソプロパノール)またはコーティングポリマー類およびコーティング溶液用賦形剤を溶解または分散するために適量の水適量
【0087】
2.2.2 アクリル/メタクリル酸エステルポリマー類に基づくコーティング
拡散コーティングに使用するポリマー類は、水性懸濁液または有機溶液からの1:1から9:1の比までのEudragit RS/RL混合物である。適当な可塑剤はコーティング分散(5−20%)の1から30%までの範囲のクエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチンである。Eudragit RSを、有機溶液または水性分散中酢酸・コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Type Aqoat type M(MF)またはH(HF)のような孔形成剤としての腸溶性コーティングポリマーと、または有機溶液中ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(すなわちHP 50、HP 55)と組み合わせ得た。腸溶性孔系製剤は、胃の酸性環境における薬剤放出を抑制する。固体投与形態内の低微小環境pHのために、腸溶性孔系製剤の溶液がph>5.5の腸液にある後、薬剤が溶解し、均一となる。それにより少ない対象内および対象間変動が期待される。
【0088】
コーティング層を、コア重量の5から30%、殆どの場合7から15%、すなわち10%で適用する。Eudragit RSおよび腸溶性孔形成剤の比は、放出プロファイルに適合させるために95:5から50:50までで変わり得る。
【表26】

【0089】
【表27】

【0090】
【表28】

【0091】
2.2.3 エチルセルロース(+孔形成剤)に基づくコーティング
エチルセルロースに基づく拡散コートの放出速度を、コーティング層厚(コーティング量)および/または可塑剤(クエン酸トリエチル、PEG 4000、PEG 4000)のような親水性コーティング化合物または色素/固着防止剤(例えばコロイド状二酸化ケイ素、Syloid 244 FP)の量により、または孔形成性ポリマー類の添加により調節すべきである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、有機コーティング溶液から適用するエチルセルロースと組み合わせるべき、またはAquacoat ECD分散(エチルセルロースの30%水性分散)と組み合わせた一般的に既知の孔形成剤である。エチルセルロースと孔形成剤の比率は95:5から50:50で変化し得る。ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP 50)または酢酸・コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Aqoat)のような腸溶性ポリマー類も酸性胃での薬剤放出を抑制し、pH>5.5の腸液における放出を制御するための適当な孔形成剤である。
【0092】
HP 50は、5−50%の範囲で有機溶液からのエチルセルロースコートと組み合わせ得る。適用するコーティング層はコア重量の5−30%の範囲であり、コアペレットまたはミニタブレットのサイズおよび容量に依存する。
【0093】
【表29】

【0094】
【表30】

【0095】
【表31】

【0096】
【表32】

【0097】
2.3 多微粒子系への拡散コーティングの適用
多微粒子製剤(ミニタブレット、ペレット、顆粒、ビーズ)へ適用される拡散コートを、ウルスター原則を備えた流動床装置またはHuettlin型の装置(ターボジェット)で、28から45℃の製品温度でコートする。トレイ乾燥機または流動床装置で1−5時間、40℃(Eudragit)−60℃(Aquacoat)でコーティング後、水性分散から適用したコートを硬化させる(テンパー)ことが提案される。
最終投与形態は、多粒子製剤を充填したスティックパックまたは硬カプセル、またはコート多粒子ペレットを遊離させる崩壊錠剤である。
【0098】
有機溶液の場合、可塑剤およびポリマー類を有機溶媒混合物に溶解し、最後に固着防止剤を分散させる。水性分散に付いて、可塑剤を水に溶解し、ホモゲナイザーを使用して固着防止剤を細かく分散させる。最後に予め製造した(商業的に入手可能である)または水に予め分散させたポリマー分散を可塑剤−固着防止剤−水混合物に添加し、噴霧前にときどき撹拌する。
【0099】
3 即時放出型および放出調節型多微粒子混合物
3.1 IRおよびMRペレットの組み合わせ
2.1.2.(ペレットの製造)の方法に従い製造した即時および放出調節型ペレットを、それらを同じカプセルまたはサシェットに入れることにより組み合わせとして使用できる。限定ではなく議論の目的で、多くの組み合わせは、即時放出型製剤では10−90%の薬剤量および放出調節型製剤では10−90%の薬剤量を含み得る(90/10;80/20;70/30;60/40;50/50;40/60;30/70;20/80;10/90)。
加えて、2.1.2.に記載の方法に従い製造した即時放出型ペレットおよび1.3に記載の方法に従い製造した放出調節型ペレットを組み合わせとして使用できる。
【0100】
3.2 IRおよびMR顆粒およびミニタブレットの組み合わせ
2.1.1(顆粒およびミニタブレットの製造)に記載の方法に従い製造した即時型および放出調節型顆粒またはミニタブレットを、それらを同じカプセルまたはサシェットに入れることにより組み合わせとして使用できる。限定ではなく議論の目的で、多くの組み合わせは、即時放出型製剤では10−90%の薬剤量および放出調節型製剤では10−90%の薬剤量を含み得る(90/10;80/20;70/30;60/40;50/50;40/60;30/70;20/80;10/90)。
加えて、2.1.1.に記載の方法に従い製造した即時放出型顆粒またはミニタブレットおよび1.2に記載の方法に従い製造した放出調節型顆粒またはミニタブレットを組み合わせとして使用できる。
【0101】
3.3 IRおよびMRビーズの組み合わせ
2.1.3(ビーズの製造)に記載の方法に従い製造した即時型および放出調節型ビーズを、それらを同じカプセルまたはサシェットに入れることにより組み合わせとして使用できる。限定ではなく議論の目的で、多くの組み合わせは、即時放出型製剤では10−90%の薬剤量および放出調節型製剤では10−90%の薬剤量を含み得る(90/10;80/20;70/30;60/40;50/50;40/60;30/70;20/80;10/90)。
さらに、2.1.3.1および2.1.3.2に記載の方法により製造した放出調節型ビーズを、それらをウルスター流動床コーターに分配し、予め製造した薬剤溶液(それをシード上に滴るまで噴霧する)を噴霧することによりさらに加工可能である。ビーズを同じ条件で5分乾燥させる。さらに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(OpadryTM)の精製水溶液を保護層としてシード上に噴霧してよい。このような投与形態の投与に際し、薬剤の外側のIR部分が胃内の低pHで完全に溶解し、一方内部MR部分は、小腸においてpH制御系から完全に拡散する。
【0102】
4 即時放出型および放出調節型層または異なる放出調節型プロファイルの2種の放出調節型層を含む二層錠剤
二層錠剤を、第一層の顆粒を金型に入れ、それを続いて単発式打錠機でわずかに圧縮することにより製造した。その後第二層組成の顆粒をわずかに圧縮した錠剤の上に入れ、圧縮力を適用して、二層錠剤を製造した。
【0103】
実施例19:IRおよびMR層を含む二層錠剤
【表33】

【0104】
実施例20:IRおよびMR層を含む二層錠剤
【表34】

【0105】
5 インビトロ溶解試験
マトリックス錠剤の溶解試験をUSP Iバスケット装置(Sotax A7)で行う。溶解試験を1000mlリン酸緩衝液(pH6.8、SDS 0.2%w/V)を使用して、37℃および100rpmの回転速度でトリプリケートで行う。ミニタブレットを、溶解試験をUSP IIパドル装置(Sotax A7)を使用して行う以外、同じ条件を使用して評価する。予定した間隔でサンプルを溶解媒体から取り、0.45μm膜フィルターを通して濾過し、分光測光法で評価する。一定溶解容量を維持するために等量の新鮮緩衝液を添加する。
【0106】
pH調整剤としてのフマル酸の混合は、pH6.8でのPTK787の放出を顕著に増加させる;結果として、ほとんど全ての薬剤が6時間後に放出される(図1)。
このデータと一致して、フマル酸を混合したマトリックスミニタブレットから放出される薬剤はpH6.8で顕著に増加する(図2)。
【0107】
6 インビボ吸収試験dy
本試験は、一晩、約20時間絶食させた6匹の雄ビーグル犬で行う。イヌの体重は、最初の投薬前は9.35から13.35kgの範囲である。我々は、マトリックス錠剤のブロックおよびマトリックスミニタブレットのブロックに分けた2ブロック交差試験設計を使用する。
5%グルコースで1:1の比に希釈した塩酸ラニチジン溶液(50mg/5ml)を、(ミニ)錠剤の投与前2分および30分以内にゆっくりのボーラスとして静脈内注射する。ミニタブレット(100mg PTK787/イヌ)を充填した2個の錠剤または2個のカプセルを経口で喉の奥に投与し、その後プラスチックシリンジを通して20ml 水で流し込む。錠剤製剤投与4時間後、イヌに標準イヌ餌300g ペレットを与える。全ての時間、水は自由摂取とする。2mlの血液サンプルを投与前(t=0)および投与0.25、0.50、0.75、1、1.5、2、3、4、6、8、10、および24時間後に橈側皮静脈からヘパリン処理シリンジに集める。10分、4℃で遠心分離後に血漿を得る。
血漿中の薬剤濃度をHPLC MS/MS法を使用して決定する。
【0108】
pH調整剤の混合は、マトリックス錠剤およびマトリックスミニタブレットからのPTK787のインビトロおよびインビボ性能を顕著に高める。モノリシックマトリックス錠剤の場合、AUC(0−24h)はフマル酸の存在によりおよそ5倍に増加し、ミニタブレットの場合、pH調整剤による平均AUC(0−24h)レベルの8倍増加(p<0.001)が観察できる(図3)。
さらに、pH調整剤は、変動の係数の観点からイヌ間可変性を顕著に減少させる(p<0.001)(図4)。
以下の表は、モノリシック錠剤およびミニタブレットから得られる平均薬物動態学的パラメータを要約する。
【0109】
血清濃度および薬物動態学的パラメータ
【表35】

A=実施例5のフマル酸無しのマトリックス錠剤;
A−FA=実施例3のフマル酸有りのマトリックス錠剤;
B=実施例5のフマル酸無しのマトリックスミニタブレット;
B−FA=実施例3のフマル酸有りのマトリックスミニタブレット。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施例3、4および5の製剤を使用したマトリックス錠剤からの薬剤放出に対するフマル酸の影響を示す − インビボ。
【図2】実施例3および5の製剤を使用したマトリックスミニタブレットからの薬剤放出に対するフマル酸の影響を示す − インビトロ。
【図3】薬剤放出に対するフマル酸の影響を示す − インビボ。
【図4】フマル酸包含によるAUC(0−24h)可変性の減少を示す。
【符号の説明】
【0111】
A=実施例5のフマル酸無しのマトリックス錠剤
A−FA=実施例3のフマル酸有りのマトリックス錠剤
B=実施例5のフマル酸無しのマトリックスミニタブレット
B−FA=実施例3のフマル酸有りのマトリックスミニタブレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジン(「薬剤」)または薬学的に許容されるその塩;
(ii) pH調整剤
を含む、固体医薬組成物。
【請求項2】
(i) 1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジン(「薬剤」)または薬学的に許容されるその塩;
(ii) pH調整剤;
(iii) ポリマー
を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンスクシネートを含む、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
pH調整剤が水素イオンを放出でき、そして薬学的に許容される有機または無機化学物質である、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
pH調整剤が有機酸、酸性ポリマー類、および潜在性の酸から選択される、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
pH調整剤がクエン酸、フマル酸、コハク酸、コハク酸無水物、アジピン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびマレイン酸から選択される、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
pH調整剤がフマル酸である、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
pH調整剤がコハク酸またはコハク酸無水物である、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項9】
pH調整剤が酸性基を有する直鎖状骨格、または酸性基を有する分枝状骨格を含む重合有機酸またはそれらの混合物である、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項10】
pH調整剤対「薬剤」の重量/重量比が0.01:1から10:1である、請求項1から9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
pH調整剤対「薬剤」の重量/重量比が0.5:1から2:1である、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
pH調整剤対「薬剤」の重量/重量比が約1:1である、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項13】
脱制御された血管形成に関連する障害を有する患者の処置用薬剤の製造のための、請求項1から12のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項14】
例えば脱制御された血管形成に関連する障害の処置のために「薬剤」を経口投与する方法であって、「薬剤」治療を必要とする患者に請求項1から12のいずれかに記載の医薬組成物を経口投与することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−504795(P2009−504795A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527378(P2008−527378)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008216
【国際公開番号】WO2007/022944
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】