説明

1−D電子走査型の衛星用ユーザ端末アンテナ

衛星通信システムと併用するための固定式地上ユーザ端末アンテナ。この衛星通信システムにおいて、衛星は、間隔を空けて配置された複数の軌道面からなる配列で地球を周回し、複数の軌道面の各軌道面は複数の衛星を有する。ユーザ端末アンテナは、基部と、基部に接続された傾斜プレートとを含む。一本の軸に沿って走査する1次元の電子操作型フェーズドアレイアンテナを有するユーザ端末アンテナが、傾斜プレートに取付けられ、それによってアレイアンテナは、傾斜プレートが傾斜するのに伴って傾斜する。アレイアンテナは、個々の衛星がアレイアンテナの視野を通行するのに伴い、複数の軌道面の一軌道面上にある複数の衛星の個々の衛星を追跡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この発明は、衛星通信システム用のユーザ端末アンテナに関し、より特定的には、間隔をあけて配置された複数の軌道面からなる配列で衛星が地球を周回し、かつ、複数の軌道面の各軌道面が複数の衛星を有する衛星通信システムのためのユーザ端末アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
間隔をあけて配置された複数の軌道面からなる配列で衛星が地球を周回し、かつ、複数の軌道面の各軌道面が複数の衛星を有する衛星通信システムは、衛星通信システムと通信するためにユーザ端末アンテナ(「UTA」)を用いる。UTAは、UTAが空を見晴らせる位置で地上に固定される。UTAは視野を有しており、この視野内で、視野内に存在する衛星通信システムのどのような衛星とも通信できる。
【0003】
地球の自転により、複数の軌道面の各軌道面は、地球が自転するのに伴ってUTAの東西の視野内に上昇入来し、そこを通過し、そこから下降退出する。すなわち、地球が自転するのに伴い、UTAの視野内に存在する、複数の軌道面のうちの特定の軌道面が変化していく。一般的な衛星通信システムは十分な数の軌道面を用いているため、1つの軌道面がUTAの視野から下降退出すると別の軌道面がUTAの視野内に上昇入来し、そのためUTAの視野内には軌道面が常に存在する。加えて、各軌道面上の複数の衛星が地球を周回するため、複数の軌道面のうちの1つの軌道面がUTAの視野内に存在する際に、複数の衛星がその軌道面上で移動するのに伴い、その軌道面上の複数の衛星がUTAの視野内に上昇入来し、そこを通過し、そこから下降退出する。すなわち、複数の衛星がその軌道面上で周回するのに伴い、UTAの視野内に存在してその軌道面上にある複数の衛星のうちの特定の衛星が変化していく。一般的な衛星通信システムは、各軌道面上で十分な数の衛星を使用しているため、1つの軌道面上の複数の衛星のうち少なくとも1つの衛星がUTAの視野内に常に存在して、連続した通信が行なわれ得る。複数の衛星によるUTAの視野への上昇入来、通過、およびそこからの下降退出は、その軌道面がUTAの視野内に存在する限り続く。その軌道面がUTAの視野を通過すると、複数の軌道面のうちの異なる軌道面がUTAの視野内に入り、異なる軌道面上にある複数の衛星の個々の衛星がUTAの視野を通過するため、UTAの視野内には衛星通信システムの少なくとも1つの衛星が常に存在する。
【0004】
地球の自転および軌道面上での複数の衛星の周回により、UTAは、1)個々の衛星がUTAの視野を通過するのに伴い個々の衛星を捕捉および追跡し、2)以前に捕捉および追跡した個々の衛星がUTAの視野を出た後、同一軌道面上の異なる個々の衛星を捕捉および追跡し、3)軌道面がUTAの視野を通過するのに伴い、その軌道面を追跡し、4)以前に追跡した個々の軌道面がUTAの視野を出た後、複数の軌道面のうちの異なる個々の軌道面を追跡することが可能でなければならない。したがって、UTAは、特定の軌道面内にある複数の衛星の上空軌跡(sky track)を追跡するだけでなく、UTAの視野内に存在する際に、地球の自転による複数の軌道面の動きを追跡することが可能でなければならない。
【0005】
このような衛星通信システムと通信するための一般的な先行技術のUTAは、二重放物面反射器(dual dish)の構成を用いる。二重放物面反射器の構成では、第1の放物面反射器がUTAの視野内の衛星を追跡してこの衛星と通信し、第2の放物面反射器が、この
視野に入ってくる別の衛星を捕捉するか、または捕捉する準備をする。この態様で、通信が何ら中断されずに通信機能が第1の放物面反射器から第2の放物面反射器に移管され得る。或る衛星から別の衛星への通信の移管をハンドオフと呼ぶ。二重放物面反射器の設計は、面内および面間両方の衛星のハンドオフに対して連続した通信を提供することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行技術におけるこれらの二重放物面反射器のUTAには欠点がないわけではない。二重放物面反射器のUTAはサイズが相対的に大きい。二重放物面反射器のUTAが大型であることから取扱いおよび設置が難しくなる。大型であれば見た目に良くない。加えて、地方条例によっては、二重放物面反射器のUTAを好ましい位置に、たとえば屋根の上、または遮られずに空を見晴らせる他の位置に設置することを禁止することが考えられる。
【0007】
二重放物面反射器のUTAに代わる先行技術の代替例は、二重放物面反射器の代わりに2次元の電子走査型フェーズドアレイアンテナを用いる。2次元の電子走査型フェーズドアレイアンテナは基本的に平坦であり、アセンブリ全体のサイズは、二重放物面反射器のUTAのサイズよりもかなり小さい。しかしながら、2次元の電子走査型フェーズドアレイアンテナは、二重放物面反射器のUTAに比べて非常に高価である。2次元の電子走査型フェーズドアレイアンテナが高コストであるため、このようなUTAを購入して衛星通信システムを利用するだけの余裕がある潜在的ユーザの数を制限してしまう。衛星通信システムの潜在的ユーザの数を制限してしまうことで、このようなシステムを開発および配備する経済的な根拠が変化して、このシステムを経済的に実用不可能にするおそれがある。
【0008】
したがって、小型であって、それによりUTAの設置が簡単になり、見た目が良く、UTAの望ましい位置での配置を管理する一般的な地方条例に抵触しないUTAが必要とされる。さらに、UTAが使用されるべき衛星通信システムが経済的に実現可能となるように、UTAのコストは多数の潜在的ユーザに手頃なものとなるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
この発明は、衛星通信システムと併用するための先行技術のUTAに関連する欠点を克服するUTAに向けられており、この衛星通信システムでは、間隔をあけて配置された複数の軌道面からなる配置で衛星が地球を周回し、複数の軌道面の各軌道面が複数の衛星を有する。この発明は、このようなUTAを使用する方法にも向けられる。
【0010】
この発明のUTAは、UTAを支持する基部を有する。この基部に傾斜プレートが接続される。傾斜プレートは、基部を基準として傾斜され得る。この傾斜プレートに、1本の走査軸に沿って走査する1次元の電子走査型フェーズドアレイアンテナ(以降「アレイアンテナ」)が取付けられる。このアレイアンテナは、傾斜プレートが傾斜するのに伴い傾斜する。複数の軌道面のうち1つの軌道面上にある複数の衛星の個々の衛星がアレイアンテナの視野を通行するのに伴い、アレイアンテナは個々の衛星を追跡し、それによりアレイアンテナは、個々の衛星との間でデータを送受信することができる。
【0011】
アレイアンテナの走査軸は、複数の軌道面上にある複数の衛星の軌道とほぼアライメントされるように配向されることが好ましく、それにより、複数の軌道面のうち第1の軌道面上にある複数の衛星のうち第1の衛星がアレイアンテナの視野を通行するのに伴い、アレイアンテナは第1の軌道面上にある第1の衛星を追跡することができる。より好ましくは、走査軸とほぼアライメントされている1本の傾斜軸の周りで傾斜プレートが傾斜し、
アレイアンテナが第1の軌道面上の第1の衛星を追跡するのに伴い、この傾斜軸の周りで傾斜プレートが傾斜する。傾斜プレートが傾斜することによって地球の自転を補償し、それにより、アレイアンテナの視野は第1の軌道面に向けて配向された状態を保ち、アレイアンテナは第1の軌道面上にある第1の衛星との間でデータを送受信できる。
【0012】
第1の軌道面上にあり、アレイアンテナによって追跡されている第1の衛星が、アレイアンテナの視野内の予め定められた衛星解放位置に到達すると、アレイアンテナは、第1の軌道面上にある第1の衛星の追跡から、第1の軌道面上にある複数の衛星のうち第2の衛星の追跡へと切換わる。第1の軌道面上の第2の衛星がアレイアンテナの視野内の予め定められた衛星解放位置に到達すると、アレイアンテナは、第1の軌道面上にある第2の衛星の追跡から、第1の軌道面上にある複数の衛星のうち第3の衛星の追跡へと切換わる。第1の軌道面が予め定められた軌道面解放位置に到達するまで、第1の軌道面上にある複数の衛星の各衛星に対してこの手順が続く。
【0013】
第1の軌道面が予め定められた軌道面解放位置に到達すると、アレイアンテナは、第1の軌道面上にある複数の衛星の個々の衛星の追跡から、複数の軌道面のうち第2の軌道面上にある複数の衛星の個々の衛星の追跡へと切換わる。第1の軌道面上にある個々の衛星の追跡から第2の軌道面上にある個々の衛星の追跡へとアレイアンテナの切換を行なうために、傾斜プレートは、予め定められた軌道面捕捉位置まで傾斜軸の周りで傾斜する。軌道面の切換は、傾斜プレートのフライバック(retrace)によって達成される。予め定められた軌道面捕捉位置まで傾斜プレートが傾斜することにより、アレイアンテナの視野が、複数の軌道面のうち第2の軌道面に向けて配向され、それによって複数の軌道面のうち第2の軌道面上にある複数の衛星のうち第1の個々の衛星を追跡することができ、第2の軌道面上にある第1の個々の衛星との間でデータを送受信することができる。次に、アレイアンテナは、第2の軌道面が予め定められた軌道面解放位置に到達するまで、第2の軌道面上にある複数の衛星の各衛星を追跡し始める。第2の軌道面が予め定められた軌道面解放位置に到達した時点で、傾斜プレートは、予め定められた軌道面捕捉位置まで傾斜軸の周りで傾斜している。予め定められた軌道面捕捉位置まで傾斜プレートが傾斜することにより、アレイアンテナの視野は、複数の軌道面のうち第3の軌道面に向けて配向され、それによって複数の軌道面のうち第3の軌道面上にある複数の衛星のうち第1の個々の衛星が追跡され得、第3の軌道面上にある第1の個々の衛星との間でデータが送受信され得る。この過程は、複数の軌道面の各軌道面に対して続けられて無限に繰返される。
【0014】
1本の傾斜軸を有する1次元の電子走査型フェーズドアレイアンテナを用いることにより、小型のUTAが提供される。加えて、1次元の電子走査型フェーズドアレイアンテナのコストは、2次元の電子走査型フェーズドアレイアンテナのコストよりもはるかに小さい。したがって、この発明は、上述の衛星通信システムとの併用が可能な、安価で小型かつ単純なUTAを提供することにより、先行技術のUTAの欠点を克服する。
【0015】
この発明の利用可能性のさらに別の領域が、以下に提示する詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明および特定の例はこの発明の好ましい実施例を示しているが、これらは例示のためにだけ意図されており、この発明の範囲を限定するように意図されていないことを理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明は、詳細な説明および添付の図面からより完全に理解されるであろう。
【0017】
好ましい実施例の詳細な説明
好ましい実施例の以下の説明は、本質的に単に例示であり、この発明、その用途または使途を限定するように意図されていない。
【0018】
図1A〜図1Bを参照すると、この発明の好ましい実施例に従ったユーザ端末アンテナ(UTA)20が示される。UTAは屋根の上部等の取付具24に取付けられた基部22を有する。基部22は、基部22から上方に延びる架台26を有する。架台26にジンバル28が取付けられる。ジンバル28に傾斜プレート30が取付けられる。傾斜プレート30に、1次元の電子走査型フェーズドアレイアンテナ(アレイアンテナ)32が取付けられる。基部22にレードーム34が取付けられてUTA20を被覆し、それによりUTA20は環境から保護される。UTA20はコントローラ36に接続される。コントローラ36はUTA20の動作を制御する。
【0019】
UTA20は、衛星通信システム38と併用するために設計されている。この衛星通信システム38において、衛星40は、或る配列で地球41を周回する。この配列は、間隔をあけて配置された複数の軌道面44からなる。軌道面44は、高度に傾斜した軌道面であることが好ましい。高度に傾斜した軌道面は、地球の赤道面に対して約70°〜110°の傾斜角を有する。
【0020】
各軌道面44は複数の衛星40を有し、これらの複数の衛星は軌道面44上で地球41を周回する。軌道面44は間隔をあけて配置されていることが好ましく、それによって軌道面44は地球41の全体に対する衛星の有効範囲を提供できる。より好ましくは、軌道面44は等間隔で配置されている。
【0021】
この発明および方法を説明するために、軌道面44上の衛星40の軌道は、真の極軌道として図面に存在しかつ示されているものとして論じられる。しかしながら、開示されたこの発明および方法を、極軌道ではないか、または極軌道に近い軌道面44上で地球41を周回する衛星40にも同様に適用できることを理解されたい。したがって、この発明および方法は、極軌道である軌道面44上で衛星40が地球41を周回する衛星通信システム38に限定されず、極軌道ではない軌道面44上で地球41を周回する衛星40は、請求項によって規定されるこの発明の範囲内に入る。
【0022】
好ましくは、図2に示されるように、軌道面44上の衛星40の軌道は、極軌道であるか、または極軌道に近い。図4A〜図4Bで分かるように、衛星40が極軌道面44上で地球41の表面45の上方を周回する際に、各衛星40は地球の表面45上に地表面軌跡(ground track)46を投影する。図4Aは、任意に選択された40°の仰角で、UTA20の視野47内において地球の表面45上に投影された地表面軌跡46を示す。図4Aにおいて、衛星40は南から極軌道に上昇入来して北に下降する。図4Bは、同じ衛星40が極軌道において北から上昇して南に下降する際に、40°の仰角でUTA20の視野47内において地球41の反対側に衛星40が地表面軌跡46を描いていることを示す。地球41が自転しなければ、同じ軌道面44内の各衛星40の地表面軌跡46はすべてがアライメントされて重複し、極軌道の場合、地表面軌跡46は南北に延びる1つの地表面軌跡46となるはずである。しかしながら、実際には地球41が自転しているため、図4A〜図4Bで分かるように、衛星40が地球の表面45の上方で周回するのに伴い、地表面軌跡46は西に傾斜する。地表面軌跡46の西への傾斜は、地球41の自転により生じる。地球41の自転により、個々の軌道面44は、地球の表面45に沿って東から西に移動する。その結果、軌道面44内の各衛星40は、地球41が自転するのに伴い、地球の表面45上に異なる地表面軌跡46を投影する。たとえば、図4A〜図4Bで分かるように、軌道面44上で周回する複数の衛星40により、地球の表面45上に13の異なる地表面軌跡46が投影される。13の異なる地表面軌跡46を示しているのは単に例示のためであり、地表面軌跡46の実際の数はUTA20の機能および衛星通信システム38の詳細に依存して変化することを理解されるべきである。
【0023】
図4A〜図4Bで分かるように、軌道面44上で地球41を周回する衛星40によって投影された地表面軌跡46は、複数の衛星40を有する各軌道面44に対して地球の表面45の全体にわたって繰返される。図2で分かるように、地球41が自転するのに伴い、UTA20が配置されている地球の表面45上を通過する特定の軌道面44が変化する。すなわち、地球41が自転するのに伴い、UTAの視野47を異なる軌道面44が通過する。
【0024】
アレイアンテナ32は、1本の走査軸48に沿って走査することができる。好ましくは、アレイアンテナ32の走査軸48は、複数の軌道面44上の複数の衛星40の軌道とアライメントされる。すなわち、極の上を通る軌道面44上で衛星40が地球41を周回する際に、走査軸は南北方向に配向されることが好ましい。アレイアンテナ32の走査軸48を複数の軌道面44上の複数の衛星40の軌道とアライメントするように配向することにより、以下により詳細に論じるように、衛星40がUTA20の視野47内で地球41を周回するのに伴い、アレイアンテナ32は、軌道面44上の複数の衛星40を追跡することができる。アレイアンテナ32は、アレイアンテナ32が追跡している任意の衛星40との間でデータの送受信ができる。
【0025】
アレイアンテナ32は、開口が2つのアレイアンテナ32であることが好ましく、それによってアレイアンテナ32は、アレイアンテナ32が追跡している衛星40との間でデータの送受信を同時に行なうことができる。好ましくは、アレイアンテナ32は別個の送信開口50と受信開口52とを有する。しかしながら、1つの組合わさった送受信開口を使用することができ、これもなお、請求項によって規定されたこの発明の範囲内に入ることを理解されるべきである。送信開口50を用いて、アレイアンテナ32が追跡している衛星40にデータを送信する。受信開口52を用いて、アレイアンテナ32が追跡している衛星40から送信されているデータを受信する。送信開口50および受信開口52は、長さ54および56、ならびに幅58および60をそれぞれ有する。好ましくは、送信開口50および受信開口52のそれぞれの長さ54および56は、送信開口50および受信開口52のそれぞれの幅58および60よりも大きい。好ましくは、送信開口50および受信開口52のそれぞれの長さ54および56は走査軸48に沿って延び、送信開口50または受信開口52のそれぞれの幅58および60は、それぞれの長さ54および56に対してほぼ垂直である。しかしながら、送信開口50および受信開口52のそれぞれの長さ54および56は走査軸48に沿って延びる必要はなく、幅58および60はそれぞれの長さ56および56に対して垂直である必要はなく、これらのことが請求項によって規定されるこの発明の範囲内にあることを理解されるべきである。
【0026】
当該技術で公知であるように、所定の方向において開口が狭くなるほど、この開口が上述の所定の方向に投射するアンテナビームの幅が広くなる。したがって、開口によって追跡されている軌道を軸に沿って非常に正確に追跡できる場合、その開口の幅をその軸に沿って一層広くしてビームの幅を狭くすることができ、逆に、開口によって追跡されている軌道を軸に沿って正確に追跡できない場合、その開口の幅をその軸に沿って一層狭くして、追跡されている軌道を網羅する一層幅の広いビームを生成しなければならない。走査軸48に沿ったアレイアンテナ32の電子走査は極めて正確であり、閉ループ追跡または開ループ追跡のいずれかによって達成される。したがって、アンテナ開口50および52の長い寸法に対応する電子走査軸に沿って、幅の狭いビームが衛星40を網羅することができる。
【0027】
次に図6を参照すると、南極上方から地球41上を見下ろした斜視図から、1つの軌道面44上で地球41を周回する1つの衛星40の極度に単純化した図が示される。UTA20が地球41の赤道62上に位置付けられていて、UTA20が軌道面44とアライメントされていない場合、個々の衛星40は湾曲した上空軌跡64を有する。すなわち、個
々の衛星40が68によって示されるように上昇位置または下降位置にある場合、個々の衛星40は水平線上に低く現れる。個々の衛星40が軌道面44上で地球41を周回し、個々の衛星40が70として示されるUTA20の真西(または図示していないが真東)にある位置に接近すると、個々の衛星40は水平線上の最も高い位置に現れる。同様に、衛星が位置68において上昇および下降する際に、衛星は水平線上の最も低い位置に現われる。このことは、ユーザ端末20が軌道面44上にある衛星40の上空軌跡64の真下にないとき、軌道面44上で周回する各衛星40に当てはまる。上空軌跡64の曲率には、東西方向に幅を拡げたビームを用いるか、または衛星の位置変化を東西方向に機械的に追跡することによって対応することができる。送信開口50および受信開口52のビーム幅は、衛星40が上昇位置68から真西の位置70(または図示していないが真東の位置)へ、および下降する位置68へと周回するのに伴い、衛星40の仰角の変化を補償するのに十分な幅を有している必要がある。軌道が極軌道である場合、送信開口52および受信開口54のそれぞれの幅58および60は、東西方向とほぼアライメントされていることが好ましい。したがって、送信開口50および受信開口52のそれぞれの幅58および60は、衛星40が地球41を周回するのに伴い、個々の衛星40の仰角の変化を網羅する幅広いビームを生成するように設計される。アレイアンテナ32は東西方向に沿って電子的に走査しないため、送信開口50および受信開口52のそれぞれの幅58および60は、送信開口50および受信開口52のそれぞれの長さ54および56よりも狭いことが好ましい。送信開口50および受信開口52のそれぞれによって投射されるビームの幅は、アレイアンテナ32の視野71を規定する。すなわち、アレイアンテナ32の視野71は、アレイアンテナ32の視野71内においてアレイアンテナ32が任意の衛星40との間でデータの送受信を行なうことのできる空間領域を表わす。
【0028】
ジンバル28により、傾斜プレート30は基部22に対して傾斜できる。ジンバル28により、傾斜プレート30は1本の傾斜軸72の周りで傾斜できる。傾斜軸72は、アレイアンテナ32の電子走査方向48とアライメントされることが好ましい。傾斜軸72を走査方向48とアライメントすることにより、アレイアンテナ32は走査軸48に対して垂直に傾斜する。以下により詳細に論じるように、傾斜軸72の周りでアレイアンテナ32を傾斜させることにより、地球41が自転するのに伴ってアレイアンテナ32の視野71は軌道面44に向けて配向された状態を保ち、軌道面44がUTA20の東からUTA20の真上を経てUTA20の西へと移動するのに伴い、アレイアンテナ32は、軌道面44上の個々の衛星40を追跡することができる。図3で分かるように、傾斜軸72がアレイアンテナ32の走査軸48とアライメントされて走査軸48が南北方向に延びる場合、アレイアンテナ32は南北方向に沿って電子的に走査することができ、かつ、東西方向に沿って傾斜することができる。
【0029】
UTA20の視野47は、アレイアンテナ32の視野と、傾斜プレート30が傾斜軸72の周りで傾斜することのできる範囲とによって規定される。すなわち、UTA20の視野47は、傾斜プレート30が傾斜軸72の周りで傾斜することのできる最大範囲の全範囲を動くアレイアンテナ32の視野71の投影である。したがって、UTA20の視野47は、衛星40が中に存在することができてかつUTA20と通信することのできる領域を表わす。
【0030】
UTA20に接続されたコントローラ36は、アレイアンテナ32の電子走査に加え、傾斜軸72を中心としたアレイアンテナ32の傾斜を制御する。コントローラ36は衛星通信システム38の配列の軌道情報を知っており、それによりコントローラ36は、UTA20の動作を制御して衛星通信システム38との接触を維持することができる。傾斜軸72を中心にアレイアンテナ32を傾斜させることにより、アレイアンテナ32の配向と、アレイアンテナ32の関連する視野71の配向とを変化させる。すなわち、アレイアンテナ32の視野71は、傾斜軸72を中心にアレイアンテナ32を傾斜させて走査軸48
に沿って電子的に走査することにより、空中の任意の特定の地点に向けて配向され得る。したがって、UTA20は、UTA20の動作範囲内およびUTA20の視野47内を通過する、軌道面44上の個々の衛星40を追跡することができる。
【0031】
傾斜軸72を走査軸48とほぼアライメントされたものとして説明し示してきたが、このことが、衛星40による極軌道の場合についてのものであることを理解されるべきである。傾斜軸72は、傾斜プレート30が傾斜軸72の周りで傾斜して地球41の自転を補償できるように配向される。軌道が極軌道ではない場合、傾斜軸72は走査軸48とほぼアライメントされないことが多く、傾斜プレート30は、走査軸48が軌道面44とほぼアライメントされている間に地球41の自転を補償することができる。したがって、傾斜軸72は、請求項によって規定されるこの発明の範囲内に収まるように走査軸48とアライメントされる必要がないことを理解されるべきである。
【0032】
UTA20の上述の視野47は、UTA20が任意の衛星40と通信可能なUTA20の最大視野を表わす。しかしながら、UTA20の最大視野のあらゆる部分において、障害物が衛星40とのUTA20の通信を妨げるおそれがある。典型的な障害物は、建築物、樹木、またはUTA20の視野47を最大視野未満に縮小する干渉源等の物体であり得る。実施上の考慮事項もまた、視野47を最大視野未満に縮小する。たとえば、軌道面44の数および間隔、ならびに軌道面44内における複数の衛星40の数および間隔は、衛星通信システム38と通信するために最大視野の全体を必ずしも使用する必要がないように、複数の軌道面44および複数の衛星40が最大視野内に同時に存在し得るようなものであることが考えられる。したがって、UTA20の一般的な視野47は、UTA20の最大視野の一部である。この発明を説明するために、UTA20の最大視野と視野47との間の区別をこれ以上行なわず、単に視野47と呼ぶことにする。したがってUTA20の視野47は、その中でUTA20が衛星通信システム38の任意の衛星40と通信することのできる空間領域を表わす。
【0033】
衛星通信システム38と通信することが望まれる際に、アレイアンテナ32の視野71が複数の軌道面44のうち第1の軌道面76に向けて配向されるまで、コントローラ36は傾斜軸72の周りでアレイアンテナ32を傾斜させる。好ましくは、コントローラ36は、傾斜軸72の周りでアレイアンテナ32を傾斜させ、それによりアレイアンテナ32の走査軸48は、第1の軌道面76とほぼアライメントされる。コントローラ36が複数の軌道面44の各軌道面44上にある複数の衛星40の軌道および位置について既知であるため、コントローラ36は、特定の軌道面44内の特定の衛星40が、いつUTA20の視野47内に入り、UTA20による捕捉および追跡が可能になるかを予測することができる。第1の軌道面76がアレイアンテナ32の視野71内に入るようにアレイアンテナ32が傾斜されると、コントローラ36はアレイアンテナ32に対し、第1の軌道面76上の第1の衛星74が配置されている位置を電子的に走査させ、それによりアレイアンテナ32は、第1の衛星74を捕捉することができる。アレイアンテナ32が第1の軌道面76上の第1の衛星74を捕捉すると、第1の軌道面76上の第1の衛星74が地球41を周回するのに伴いアレイアンテナ32の視野71を通行するのに伴って、アレイアンテナ32は第1の衛星74を電子的に追跡する。好ましくは、コントローラ36は、アレイアンテナ32が第1の軌道面76上の第1の衛星74を電子的に追跡するのに伴い傾斜軸72の周りで傾斜プレート30を傾斜させ、それによってアレイアンテナ32の視野71は、アレイアンテナ32が第1の軌道面76上の第1の衛星74を追跡している間、第1の軌道面76に向けて配向された状態を保つ。傾斜軸72の周りで傾斜プレート30が傾斜することによって地球41の自転を補償し、それにより視野71および電子走査軸48は、地球41が自転する間、第1の軌道面76に向けて配向された状態を保つ。
【0034】
図4A〜図4Bで分かるように、第1の軌道面76上の第1の衛星74が予め定められ
た衛星解放位置78に到達すると、アレイアンテナ32は第1の軌道面76上の第1の衛星74の追跡から第1の軌道面76上の第2の衛星80の追跡へと切換わる。アレイアンテナ32が傾斜軸72の周りで傾斜され、それによってアレイアンテナ32の視野71が第1の軌道面76に向けて配向されているため、第1の軌道面76上にある第1の衛星74の追跡から第1の軌道面76上にある第2の衛星80の追跡への切換は、アレイアンテナ32の視野71内の予め定められた衛星捕捉位置82まで走査軸48に沿って電子的に走査(フライバック)することによって達成できる。この切換は、アンテナビームをほぼ瞬時にフライバックすることによって達成される。この発明で使用される電子走査型フェーズドアレイアンテナの特性は、これらのアンテナが、ほぼ瞬時にその走査角を変更できることである。したがって、同一軌道面上における1つの衛星から別の衛星への切換は、通信が失われることなく達成される。アレイアンテナ32が第1の軌道面76上の第1の衛星74の追跡から第1の軌道面76上の第2の衛星80の追跡へと切換わると、第1の軌道面76上の第1の衛星74がアレイアンテナ32の視野71内の予め定められた衛星解放位置78を通過して進行し続けるのに伴い、アレイアンテナ32は、第1の軌道面76上の第1の衛星74の追跡を中止することによって第1の軌道面76上の第1の衛星74を解放する。次に、第1の軌道面76上の第2の衛星80が第1の軌道面76上で地球41を周回して、予め定められた衛星捕捉位置82と予め定められた衛星解放位置78との間でアレイアンテナ32の視野71を通行するのに伴い、アレイアンテナ32は、上述のように第1の軌道面76上の第2の衛星80を捕捉し、第1の軌道面76上の第2の衛星80の追跡を開始する。個々の衛星40の解放、走査軸48に沿った電子的走査、および同一軌道面内の異なる個々の衛星40の捕捉を、面内のフライバックと呼ぶ。走査軸48に沿ったアレイアンテナ32の走査が電子的に行なわれるため、切換はほぼ瞬時である。ほぼ瞬時の切換により、面内のフライバック中にUTA20と衛星通信システム38との間で送信されているデータの損失が防止される。
【0035】
図4A〜図4Bは、第1の軌道面76がUTA20の視野47を通過するのに伴った面内のフライバックを表わす2次元の図を示す。視野47は、40°を超える仰角で地球41の表示上に重ね合わされている。第1の衛星74が第1の軌道面76上で地球41を周回するのに伴い、第1の軌道面76上の第1の衛星74によって投影された地表面軌跡84が示される。地表面軌跡84は、第1の軌道面76上の第1の衛星74が衛星捕捉位置82を通過し、UTA20の視野47を通行し、衛星解放位置78を通過することを示す。アレイアンテナ32による、第1の軌道面76上にある第1の衛星74の電子的追跡が、矢印86によって表わされる。上で論じたように、アレイアンテナ32は、第1の衛星74がUTA20の視野47を通過するのに伴い、第1の軌道面76上の第1の衛星74が衛星解放位置78を通過するまで第1の衛星74を追跡する。
【0036】
第1の軌道面76上の第1の衛星74が衛星解放位置78に到達すると、アレイアンテナ32は、矢印87によって表わされる面内のフライバックを行なう。上で論じたように、アレイアンテナ32は、予め定められた衛星捕捉位置82まで第1の軌道面76に沿って電子的に走査する。図4A〜図4Bで分かるように、面内のフライバックは真の南北方向の電子走査である。なぜなら、走査軸48が南北方向となるようにアレイアンテナ32が配向されているためである。また、第1の軌道面76上の第1の衛星74によって投影された地表面軌跡84が、地球41の自転により西に傾斜していることも分かる。第1の軌道面76上の第1の衛星74がアレイアンテナ32の視野71を通過する際の第1の衛星74の追跡経路86もまた、西に傾斜している。なぜなら、アレイアンテナ32の視野71が第1の軌道面76に向けて配向された状態を保つように、アレイアンテナ32が傾斜軸72の周りで傾斜されているためである。
【0037】
第1の軌道面76上の第2の衛星80によって投影された地表面軌跡90が図4Aに示される。アレイアンテナ32が面内のフライバック87を行なって衛星捕捉位置82まで
電子的に走査すると、第1の軌道面76上の第2の衛星80がアレイアンテナ32の視野71内に入り、アレイアンテナ32によって捕捉される。次にアレイアンテナ32は、矢印92によって示されるように、第1の軌道面76上の第2の衛星80がアレイアンテナ32の視野71を通行するのに伴い、第1の軌道面76上の第2の衛星80の経路を追跡する。第1の軌道面76上の第2の衛星80が衛星解放位置78に到達すると、アレイアンテナ32は矢印94によって示される面内のフライバックを行ない、アレイアンテナ32は、第1の軌道面76上にある第2の衛星80の追跡を中止することによって第1の軌道面76上にある第2の衛星80を解放する。次にアレイアンテナ32は、衛星解放位置78から衛星捕捉位置82まで第1の軌道面76の軌道経路に沿って電子的に走査し、第1の軌道面76上にある複数の衛星40のうち第3の衛星96が捕捉、追跡、および解放され得る。軌道面44上にある衛星40を捕捉、追跡、および解放してから、同一軌道面44内の別の衛星40を捕捉、追跡、および解放する過程は、予め定められた軌道面の解放位置98に軌道面44が入るまで繰返され、その時点で面間のフライバックが行なわれる。
【0038】
第1の軌道面76が予め定められた軌道面解放位置98に至ると、UTA20は面間のフライバックの矢印99によって示される面間のフライバックを行なう。このフライバックは、UTA20が、衛星解放位置78から衛星捕捉位置82までアレイアンテナ32に電子的に走査またはフライバックさせ、それと同時にアレイアンテナ32を軌道面解放位置98から軌道面捕捉位置100まで傾斜軸72の周りで傾斜させることによって行なわれる。面間のフライバック99により、アレイアンテナ32の視野71は、第1の軌道面76に向けて配向されていたところから、複数の軌道面44のうち第2の軌道面102に向けて配向されるようになる。次にアレイアンテナ32は、第2の軌道面102上にある複数の衛星40のうち第1の衛星104を捕捉する。次に、第2の軌道面102上にある第1の衛星104が衛星捕捉位置82と衛星解放位置78との間でアレイアンテナ32の視野71を通行するのに伴い、アレイアンテナ32は第2の軌道面102上にある第1の衛星104を追跡し始める。次にアレイアンテナ32は、第2の軌道面102に沿って面内のフライバックを行ない、第2の軌道面102上にある複数の衛星40のうち第2の衛星108を捕捉する。第2の軌道面102上の衛星40を捕捉、追跡、および解放し、その後第2の軌道面102上の別の衛星40をフライバック、捕捉、追跡、および解放する過程は、予め定められた軌道面解放位置98に第2の軌道面102が到達するまで繰返され、その時点で上で論じたように面間のフライバックが行なわれ、複数の軌道面44のうち第3の軌道面112上にある複数の衛星40のうち第1の衛星110が捕捉、追跡、および解放され得る。
【0039】
軌道面44上のさまざまな衛星40の捕捉、追跡、および解放を行なうアレイアンテナ32の上述の過程は、UTA20と衛星通信システム38との間で通信が所望されなくなるまで引続き繰返される。この過程により、UTA20は通信システム38と接触し続けることができる。面間のフライバック99が生じると、機械的な傾斜運動を得るために時間が必要とされるため、UTA20と衛星通信システム30との間の通信が一時的に失われる。すなわち、アレイアンテナ32の視野71が軌道面解放位置98において第1の軌道面76に向けて配向されるようにアレイアンテナ32が位置付けられているため、アレイアンテナ32の視野71が軌道面捕捉位置100において第2の軌道面102に向けて配向されるまで、傾斜軸72の周りでジンバル28が回転しなければならない。予め定められた軌道面捕捉位置100を基準とした、予め定められた軌道面解放位置98の位置に依存して、傾斜プレート30が傾斜軸72の周りで傾斜しなければならない傾斜度が変化し得る。したがって、面間のフライバックを行なうのに必要な時間量もまた変化する。面間のフライバック動作に数秒を要することが予想される。したがって、面間のフライバックが生じる前に、衛星通信システム38とコントローラ36との間で面間のフライバック中の通信を停止するデータ転送プロトコルが確立されることが好ましい。データ転送プロ
トコルは、面間のフライバックが完了するまでコントローラ36および衛星通信システム38がデータを互いに転送し合うことを中止してデータをバッファに格納する、予め定められた時間を設定する。面間のフライバックが完了すると、データ転送プロトコルはUTA20および衛星通信システム38に対し、衛星通信システム38とUTA20との間で面間のフライバック中に格納された情報を転送させる。この態様で、面間のフライバック動作中もデータは失われない。
【0040】
図4Bは、軌道面44上の衛星40が南に下降する際のアレイアンテナ32の面内のフライバックおよび面間のフライバックを示す。面内のフライバックおよび面間のフライバックは、上で説明して図4Aに示したものと同様である。
【0041】
上昇する(北に向かう)衛星は地球41の反対側で必ず下降(南に向かう)しなければならないため、衛星の配列42は、上昇する軌道面および下降する軌道面が互いに隣接する少なくとも1つの「境界線」114を有していなければならない。面間のフライバックが配列の境界線114と交差する際に、アレイアンテナ32は傾斜軸72の周りで傾斜し、それによって上述のようにアレイアンテナ32の視野71は、軌道面捕捉位置100に向けて配向されるが、アレイアンテナ32は面内のフライバックを行なわない。なぜなら、面間のフライバックが配列の境界線114と交差するとき、アレイアンテナ32がそれに向けて配向されている衛星解放位置78が、衛星捕捉位置82になるためである。上述のように、および図4Bで示したように、その後、面間のフライバックが配列の境界線114と再び交差するまで、面内のフライバックおよび面間のフライバックが行なわれる。次に、図4Aで示されるように面内のフライバックおよび面間のフライバックが行なわれる。
【0042】
衛星の配列42における軌道面44の数およびこれらの軌道面44の間隔は、軌道面捕捉位置100および軌道面解放位置98の位置に変化をもたらす。すなわち、UTA20は、UTA20の視野47内に別の軌道面44が入るまで面間のフライバックを行なうことができない。所定の軌道面44内の衛星40の数は、衛星捕捉位置82および衛星解放位置78の位置に変化をもたらす。すなわち、アレイアンテナ32は、別の衛星40が同一軌道面44内に入り、かつ、アレイアンテナ32の視野71内に入るまで、面内のフライバックを行なうことができない。加えて、軌道面44同士の間隔および各軌道面44上にある衛星40同士の間隔は等しいことが好ましいが、この発明は不均等な間隔にも対応する。したがって、軌道面捕捉位置100、軌道面解放位置98、衛星捕捉位置82、および衛星解放位置78をUTA20の視野47の縁部に位置付けることは望ましくない。なぜなら、アレイアンテナ32の動作または配向の誤差に対するマージンも、軌道面44または衛星40の不均等な間隔に対するマージンも設けられていないためである。したがって、軌道面捕捉位置100、軌道面解放位置98、衛星捕捉位置82、および衛星解放位置78は、UTA20の視野47の十分内側に位置付けられることが好ましく、それによりUTA20は、衛星通信システム38の潜在的な多様性に対応することができる。
【0043】
この発明の説明は本質的に単に例示であるため、この発明の骨子から逸脱しない変形は、この発明の範囲内にあるものと意図される。このような変形は、この発明の精神および範囲からの逸脱と捉えられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】傾斜プレートおよびアレイアンテナを示す、この発明のUTAの側面図である。
【図1B】アレイアンテナの開口を示す、図1AのUTAの正面図である。
【図2】極軌道に複数の軌道面を有する、この発明と両立可能な衛星の配列を極から見た図である。
【図3】図2の衛星の配列と併用される、図1A〜図1BのUTAの電子走査軸および機械的傾斜軸を表わす図である。
【図4A】地球が自転するのに伴い、かつ、地上のユーザの視点から複数の衛星が北に下降するのに伴い、図2の衛星の配列の軌道面内にある複数の衛星によって形成された地表面軌跡を示す図である。
【図4B】地球が自転するのに伴い、かつ、地上のユーザの視点から複数の衛星が南に下降するのに伴い、図2の衛星の配列の軌道面内にある複数の衛星によって形成された地表面軌跡を表わす図である。
【図5】アレイアンテナが、或る軌道面上にある第1の衛星の追跡から、図2の衛星の配列の同一軌道面内にある第2の衛星の追跡へと切換わることを示す図である。
【図6】衛星が赤道上のUTAの視点から上昇および下降するのに伴い、図2の衛星の配列の軌道面内にある個々の衛星の追跡を示す、南極上方の地点から観察した簡略図である。
【図7】図6に示された現象を赤道上方の地点から観察した簡略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星通信システム用の固定式地上ユーザ端末アンテナであって、前記衛星通信システムにおいて、衛星は、間隔をあけて配置された複数の軌道面からなる配列で地球を周回し、かつ、複数の軌道面の各軌道面は複数の衛星を有し、前記ユーザ端末アンテナは、
基部を含み、前記基部は前記ユーザ端末アンテナを支持し、前記ユーザ端末アンテナはさらに、
傾斜プレートを含み、前記傾斜プレートは前記基部に接続され、前記基部に対して傾斜され得、前記ユーザ端末アンテナはさらに、
1本の走査軸に沿って走査する1次元の電子走査型フェーズドアレイアンテナを含み、前記アレイアンテナは前記傾斜プレートに取付けられ、それにより前記アレイアンテナは、前記傾斜プレートが傾斜するのに伴って傾斜し、前記アレイアンテナは、前記複数の軌道面のうち1つの軌道面上にある前記複数の衛星の個々の衛星が前記アレイアンテナの視野を通行するのに伴い、前記個々の衛星を追跡し、それにより前記アレイアンテナは、前記個々の衛星との間でデータを送受信することができる、ユーザ端末アンテナ。
【請求項2】
前記アレイアンテナの前記走査軸は、前記複数の軌道面上にある前記複数の衛星の軌道と実質的にアライメントされるように配向され、それにより前記アレイアンテナは、前記複数の軌道面のうち第1の軌道面上にある前記複数の衛星のうち第1の衛星が前記アレイアンテナの前記視野を通行するのに伴い、前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星を追跡することができる、請求項1に記載のユーザ端末アンテナ。
【請求項3】
前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星が、前記アレイアンテナの前記視野内の予め定められた衛星解放位置に到達すると、前記アレイアンテナは、前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星の追跡から、前記第1の軌道面上にある前記複数の衛星のうち第2の衛星の追跡へと切換わる、請求項2に記載のユーザ端末アンテナ。
【請求項4】
前記アレイアンテナは、予め定められた衛星捕捉位置まで前記第1の軌道面をフライバックすることにより、前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星の追跡から、前記第1の軌道面上にある前記第2の衛星の追跡へと切換わる、請求項3に記載のユーザ端末アンテナ。
【請求項5】
前記傾斜プレートは、前記走査軸と実質的にアライメントされた1本の傾斜軸の周りで傾斜する、請求項2に記載のユーザ端末アンテナ。
【請求項6】
前記傾斜プレートは、1本の傾斜軸の周りで傾斜し、
前記傾斜プレートは、前記アレイアンテナが前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星を追跡するのに伴って前記傾斜軸の周りで傾斜し、前記傾斜プレートが傾斜することによって地球の自転を補償し、それにより前記アレイアンテナの前記視野は、前記第1の軌道面に向けて配向された状態を保ち、前記アレイアンテナは、前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星との間でデータを送受信することができる、請求項2に記載のユーザ端末アンテナ。
【請求項7】
前記傾斜プレートは1本の傾斜軸の周りで傾斜し、
前記アレイアンテナが、前記第1の軌道面上にある前記複数の衛星の個々の衛星の追跡から、前記複数の軌道面のうち第2の軌道面上にある前記複数の衛星の個々の衛星の追跡へと切換わる際に、前記傾斜プレートは、予め定められた軌道面捕捉位置まで前記傾斜軸の周りで傾斜し、前記予め定められた軌道面捕捉位置まで前記傾斜プレートが傾斜することにより、前記アレイアンテナの前記視野は、前記複数の軌道面のうち前記第2の軌道面に向けて配向され、それにより、前記複数の軌道面のうち前記第2の軌道面上にある前記
複数の衛星の第1の個々の衛星が追跡され得、前記第2の軌道面上にある前記第1の個々の衛星との間でデータが送受信され得る、請求項2に記載のユーザ端末アンテナ。
【請求項8】
前記アレイアンテナは二重フィードアレイアンテナであり、それによって前記アレイアンテナはデータを同時に送受信することができる、請求項2に記載のユーザ端末アンテナ。
【請求項9】
前記アレイアンテナは別個の送信開口および受信開口を有し、前記送信開口は、前記アレイアンテナが追跡している前記個々の衛星にデータを送信し、前記受信開口は、前記アレイアンテナが追跡している前記個々の衛星からデータを受信する、請求項2に記載のユーザ端末アンテナ。
【請求項10】
前記複数の軌道面上にある前記複数の衛星の前記軌道は極軌道であり、
前記アレイアンテナは、前記走査軸が実質的に南北に延びるように配向され、
前記傾斜プレートは、前記走査軸と実質的にアライメントされている一本の傾斜軸の周りで傾斜する、請求項2に記載のユーザ端末アンテナ。
【請求項11】
前記間隔をあけて配置された複数の軌道面は等間隔で配置されている、請求項2に記載のユーザ端末アンテナ。
【請求項12】
前記アレイアンテナは、幅および長さを有する開口を有し、開口の長さは前記走査軸に沿って延び、開口の幅は前記開口の長さに対して実質的に垂直であり、前記開口の長さは前記開口の幅よりも大きい、請求項2に記載のユーザ端末アンテナ。
【請求項13】
前記開口の幅は、前記アレイアンテナによって生成されるアンテナビームの幅が、前記複数の軌道面上にある前記複数の衛星の前記軌道の曲率を補償するように寸法が決定される、請求項12に記載のユーザ端末アンテナ。
【請求項14】
衛星通信システムと通信するために、1本の傾斜軸の周りで傾斜する傾斜プレートに取付けられて1本の走査軸を有する1次元の電子走査型フェーズドアレイアンテナを有する地上ユーザ端末アンテナを使用する方法であって、前記衛星通信システムにおいて、衛星は、間隔をあけて配置された複数の軌道面からなる配列で地球を周回し、かつ、前記複数の軌道面の各軌道面は複数の衛星を有し、前記方法は、
前記アレイアンテナの前記走査軸が、前記複数の軌道面上にある前記複数の衛星の軌道と実質的にアライメントされるように前記ユーザ端末アンテナを配向するステップと、
前記アレイアンテナの視野内にある、前記複数の軌道面のうち第1の軌道面にある前記複数の衛星のうち第1の衛星を捕捉するステップと、
前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星が地球を周回するのに伴い、前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星が前記アレイアンテナの前記視野を通行している間に、前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星を追跡するステップと、
前記アレイアンテナが前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星を追跡している間に、前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星との間でデータを送受信するステップとを含む、方法。
【請求項15】
予め定められた軌道面捕捉位置まで前記傾斜プレートを傾斜させるステップをさらに含み、それにより、第1の衛星を捕捉する前記ステップを行なう前に、前記アレイアンテナの前記視野は、前記複数の軌道面のうち前記第1の軌道面に向けて配向される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の衛星を追跡する前記ステップは、前記アレイアンテナが前記第1の軌道面上
にある前記第1の衛星を追跡するのに伴い、前記傾斜軸の周りで前記傾斜プレートを傾斜させるステップを含み、それにより、前記アレイアンテナが前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星を追跡している間、前記アレイアンテナの前記視野は前記第1の軌道面に向けて配向された状態を保つ、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の衛星を追跡する前記ステップは、
前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星が予め定められた衛星解放位置に至るまで、前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星を追跡するステップと、
前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星が前記予め定められた衛星解放位置を通過して進行し続けるのに伴い、前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星の追跡を中止することによって前記第1の軌道面上にある前記第1の衛星を解放するステップと、
予め定められた衛星捕捉位置まで前記アレイアンテナを用いて走査することにより、前記第1の軌道面上にある前記複数の衛星のうち第2の衛星を捕捉するステップと、
前記第1の軌道面上にある前記第2の衛星が前記第1の軌道面上で地球を周回して、前記予め定められた衛星捕捉位置と前記予め定められた衛星解放位置との間で前記アレイアンテナの前記視野を通行するのに伴い、前記第1の軌道面上にある前記第2の衛星を追跡するステップとを含み、
前記第1の衛星との間でデータを送受信する前記ステップは、前記アレイアンテナによって追跡されている、前記複数の軌道面のうち任意の軌道面上にある前記複数の衛星のうち任意の衛星との間でデータを送受信するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の軌道面上にある前記第2の衛星が前記予め定められた衛星解放位置に至ると、前記第1の軌道面上にある前記第2の衛星を解放するステップをさらに含み、
前記第1の軌道面が予め定められた軌道面解放位置に至るまで、前記第1の軌道面上にある第1の衛星を捕捉、追跡、および解放し、その後、前記第1の軌道面上にある第2の衛星を捕捉、追跡、および解放するステップが、前記第1の軌道面上にある前記複数の衛星の各衛星に対して繰返される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の軌道面が前記予め定められた軌道面解放位置に至ると、前記第1の軌道面上にある前記複数の衛星のうち任意の衛星の追跡を中止することによって前記第1の軌道面を解放するステップと、
前記第1の軌道面が前記予め定められた軌道面解放位置に至ると、前記予め定められた軌道面捕捉位置まで前記傾斜軸の周りで前記傾斜プレートを傾斜させるステップとをさらに含み、それにより、前記アレイアンテナの前記視野は、前記複数の軌道面のうち第2の軌道面に向けて配向され、
前記第2の軌道面が前記予め定められた軌道面捕捉位置と前記予め定められた軌道面解放位置との間にある間に、前記第1の軌道面上にある前記複数の衛星の各衛星を捕捉、追跡、および解放する前記ステップが、前記第2の軌道面上にある前記複数の衛星の各衛星に対して行なわれる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
データを送受信する前記ステップは、前記第1の軌道面上にある前記複数の衛星の個々の衛星の追跡から、前記第2の軌道面上にある前記複数の衛星の個々の衛星の追跡へと切換わる前に、データ転送プロトコルを取り決めるステップを含み、それによって切換えによりデータが失われない、請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−500794(P2006−500794A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−564978(P2003−564978)
【出願日】平成15年1月10日(2003.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/000888
【国際公開番号】WO2003/065501
【国際公開日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【出願人】(591009037)ザ・ボーイング・カンパニー (15)
【氏名又は名称原語表記】THE BOEING COMPANY
【Fターム(参考)】