説明

1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの塩の液体製剤

1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの乳酸付加塩の液体製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの液体医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第03/029232号(特許文献1)において、遊離塩基である化合物1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジン(化合物I)が開示された。化合物Iは、下記に示す分子構造を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
国際公開第2007/144005号(特許文献2)において、乳酸付加塩を含めた、化合物Iの異なる薬学的に許容可能な酸付加塩が開示された。
【0005】
化合物Iは、セロトニントランスポーター阻害を発揮することが報告されており(国際公開第03/029232号(特許文献1))、情動障害、例えば、うつ病および不安の治療に有用であると考えられている。さらに、化合物Iは、5−HTアンタゴニズムおよび5−HT1Aアゴニズムを発揮し、これはこの化合物が、例えば、うつ病の患者における認知機能障害の治療、ならびに疼痛およびうつ病の残遺症状の治療において有用であることを示唆する(国際公開第2007/144005号(特許文献2)および国際公開第2008/113359号(特許文献3))。
【0006】
国際公開第03/029232号(特許文献1)、国際公開第2007/144005号(特許文献2)および国際公開第2008/113359号(特許文献3)において、化合物Iを用いて行われた、受容体の有効性および疾患の薬理学を報告したインビトロおよびインビボの実験も概説されている。
【0007】
患者の臨床試験において、HAM−D(ハミルトンうつ病評価尺度)を臨床エンドポイントとして使用して化合物Iについて試験した。詳細については、国際公開第2008/113359号(特許文献3)を参照されたい。HAM−Dスケールを使用して、24項目の質問表によって患者におけるうつ病の重症度を評価することができる。臨床試験の結果によると、化合物Iは、睡眠および性に関連する有害事象を回避して、うつ病の治療において特に有用であると考えられている(国際公開第2008/113359号(特許文献3))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/029232号
【特許文献2】国際公開第2007/144005号
【特許文献3】国際公開第2008/113359号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Mutat. Res. 581 (2005) 23-34
【非特許文献2】Eur. J. Pharm. Sci. 28 (2006) 1-6
【非特許文献3】Mooreら、Eur. Neuropsychopharmacol.、18、補遺4、s321、2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多くの医薬化合物について、嚥下するための錠剤、カプセル剤、丸剤または同様のものの経口投与が好ましい投与形態である。しかし、一部の患者、例えば、高齢者および小児患者は嚥下することが困難である可能性があり、液体溶液が、錠剤、カプセル剤、丸剤などを嚥下する必要性を回避する適切な代替物であり得る。溶剤はさらに、柔軟な投与計画の可能性をもたらす。液体溶液の容量を制限するために、溶液中に高濃度の活性成分を有することが必要であり、これによって高溶解度の活性成分がさらに必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、化合物Iの液体製剤に関する。
【0012】
本発明者らは、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのL−乳酸付加塩(=L−乳酸塩)、D−乳酸付加塩(=D−乳酸塩)およびDL−乳酸付加塩(=DL−乳酸塩)が非常に可溶性であることを驚いたことに見出した。したがって、本発明は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのL−乳酸付加塩、D−乳酸付加塩および/またはDL−乳酸付加塩を含む液体製剤に関する。
【0013】
一実施形態において、本発明は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのL−乳酸付加塩である化合物に関する。
【0014】
一実施形態において、本発明は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのD−乳酸付加塩である化合物に関する。
【0015】
一実施形態において、本発明は、本発明の液体製剤を、それを必要としている患者に投与することを含む治療方法に関する。
【0016】
一実施形態において、本発明は、特定の疾患の治療のための液体医薬組成物の製造における本発明の塩の使用に関する。
【0017】
一実施形態において、本発明は、特定の疾患の治療において使用するための本発明の塩であって、液体製剤中にある塩に関する。
【0018】
一実施形態において、本発明は、本発明の液体製剤を含む容器であって、液滴集成装置(drop aggregate)が取り付けられた容器に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】L−乳酸塩無水物(anhydrate)1(AH1)のXRPD
【図2】L−乳酸塩一水和物1(MH1)のXRPD
【図3】L−乳酸塩一水和物2(MH2)のXRPD
【図4】DL−乳酸塩α形態(α)のXRPD
【図5】DL−乳酸塩β形態(β)のXRPD
【図6】α形態の含量を有するDL−乳酸塩一水和物(MH)のXRPD
【図7】α形態の含量を有するDL−乳酸塩γ形態(γ)のXRPD
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明が関連する製剤は、全ての医薬組成物である。
【0021】
国際公開第2008/113359号(特許文献3)において、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの結晶性塩基および既知の塩の特性決定が記載された。これらの塩の水溶性を表2に示す。表1は、本発明の塩のXRPD反射、融点および溶解度データを示す。表1および表2からのデータによって明らかなように、DL−乳酸付加塩β形態およびL−乳酸付加塩MH2は、例外的に高い溶解度を有する。結果的に、これらの塩の形態は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンを含む液体製剤における用途に適している。表2によると、メシル酸塩も非常に高い溶解度が有益である。しかし、医薬組成物の合成におけるアルコール性溶媒と組み合わせたメタンスルホン酸(メシレート)の使用は、遺伝毒性である可能性があるアルキルメシレート不純物が生じる危険性を伴う(Mutat. Res. 581 (2005) 23-34(非特許文献1);Eur. J. Pharm. Sci. 28 (2006) 1-6(非特許文献2))。したがって、医薬組成物における用途にはメシル酸塩よりも乳酸塩が優れている。
【0022】
便宜上、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのL−乳酸付加塩、D−乳酸付加塩およびDL−乳酸付加塩は、本発明の塩と称される。L−乳酸付加塩およびDL−乳酸付加塩の両方は、例に示すようにいくつかの多形形態で存在する。DL−乳酸付加塩β形態について、本発明の塩として特記する。便宜のため、乳酸付加塩は、ラクテート(lactates)または乳酸塩(lactate salts)とも称される。
【0023】
多形形態は、表1に一覧表示し、図1〜7に示す、それらの各々のXRPD反射によって特徴付けられる。
【0024】
本発明の状況において、L−乳酸塩のAH1形態は、4.65、10.96および13.97(°2θ)でのXRPD反射によって特徴付けられ、そして図1によってさらに特徴付けられる、無水形態を示すことを意図する。
【0025】
本発明の状況において、L−乳酸塩のMH1形態は、4.36、8.73、11.18、11.81、12.78および13.11(°2θ)でのXRPD反射によって特徴付けられ、そして図2によってさらに特徴付けられる、第1の一水和物形態を示すものとする。
【0026】
本発明の状況において、L−乳酸塩のMH2形態は、5.33、9.75、10.10、14.44および14.63(°2θ)でのXRPD反射によって特徴付けられ、そして図3によってさらに特徴付けられる、第2の一水和物形態を示すものとする。
【0027】
本発明の状況において、DL−乳酸塩のα形態は、6.67、8.33、9.44、11.82および15.35(°2θ)でのXRPD反射によって特徴付けられ、そして図4によってさらに特徴付けられる、第1の多形体を示すものとする。
【0028】
本発明の状況において、DL−乳酸塩のβ形態は、6.01、10.10、10.32、12.06、12.84、13.08および13.58(°2θ)でのXRPD反射によって特徴付けられ、そして図5によってさらに特徴付けられる、第2の多形体を示すものとする。
【0029】
本発明の状況において、DL−乳酸塩のMH形態は、4.37、8.73、11.14、11.78、12.75および13.11(°2θ)でのXRPD反射によって特徴付けられ、そして図6によってさらに特徴付けられる、一水和物形態を示すものとする。
【0030】
本発明の状況において、DL−乳酸塩のγ形態は、4.63、10.94、11.65および13.93(°2θ)でのXRPD反射によって特徴付けられ、そして図7によってさらに特徴付けられる、第3の多形体を示すものとする。
【0031】
乳酸は2−ヒドロキシプロピオン酸としても知られ、本発明において使用される1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンと1:1の酸付加塩を形成する。
【0032】
1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンは、国際公開第03/029232号(特許文献1)および国際公開第2007/144005号(特許文献2)に開示されているように調製し得る。その実施例は、本発明の塩を得るための特定の経路を開示している。要するに、L−乳酸塩AH1およびDL−乳酸塩α形態は、各々L−乳酸またはDL−乳酸を、酢酸エチルなどの適切な無水有機溶媒中で、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンに加え(または逆の場合も同じ)、それに続いて沈殿(沈殿は、例えば、冷却、溶媒の除去、別の無水溶媒の添加、またはこれらの組合せによってもたらし得る)させることによって調製し得る。
【0033】
L−乳酸塩MH1は、L−乳酸塩AH1をより高い相対湿度に曝露させることによって直接形成される。L−乳酸塩MH2は、L−乳酸塩一水和物のより安定的な形態であり、1mLの水を100mgのL−乳酸塩MH1に加えることによって形成される。L−乳酸塩MH2の水溶性は、26mg/mLである。DL−乳酸塩β形態は、水中のDL−乳酸塩α形態のスラリーから得られる。β形態は、DL−乳酸塩のより安定的な多形の変形形態であり、8mg/mLの溶解度を有する。DL−乳酸塩MHは、DL−乳酸塩α形態を、より高い相対湿度に曝露することによって得られる。DL−乳酸塩MH1を加熱することによって、DL−乳酸塩γ形態が得られた。この文献を通して(他に示さない限り)、本発明の塩の濃度の指標、例えば、5mg/mlは、遊離塩基の示した量に相当する濃度、例えば、5mg/mlを示すことを意図する。
【0034】
本発明の製剤中に乳酸が存在することによって本発明の塩の溶解度が増加することを、本発明者らは注目した。D−、L−またはDL−乳酸であれ、乳酸の存在は、本発明の塩の溶解度を20〜25mg/mLまで増加させ得る。
【0035】
L−乳酸およびDL−乳酸の塩のみが作製された。しかし、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンはキラルではなく、L−乳酸塩およびD−乳酸塩はエナンチオマーであり、したがって、D−乳酸塩は(鏡像として)、L−乳酸塩と同じ結晶形で存在し、同じXRPDパターン、融点および溶解度を有する。異なる形態のL−乳酸塩およびDL−乳酸塩についてのX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を、図1〜7において示す。
【0036】
液体製剤は、経口または非経口投与を目的とし得る。輸液を含めた非経口投与のための液体製剤は、多くの点において他の液体製剤と同様であるが、無菌および等張性であることによってさらに特徴付けられる。
【0037】
本発明の液体経口製剤は、シロップ剤、エリキシル剤、経口液剤、懸濁剤として、または濃縮経口製剤として調製し得る。これらの投与形態の1つの利点は、患者が、高齢者および小児患者にとって、または口もしくは咽頭に外傷を有する患者にとって特に困難であり得る、固体形態を嚥下する必要がないことである。
【0038】
シロップ剤およびエリキシル剤は典型的には、活性医薬成分を含む、甘くし、香味付けした液体である。シロップ剤は典型的には、より高い糖含量を有し、エリキシル剤はアルコールもまた含有することが多い。経口液剤は、活性成分の溶液である。懸濁剤は、液体に分散した固体粒子を含む2相系である。シロップ剤、エリキシル剤、経口液剤および懸濁剤の投与は典型的には、相対的に大量の液体、すなわち10〜50mLの液体の摂取を伴う。
【0039】
これと対照的に、本発明の濃縮経口製剤は、適切なディスペンサーから所定の容量の前記製剤を量り取り、このように得られた容量を液体(水、ジュースまたは同様のもの)のグラスに加えて、それによって患者が液体を飲むことによって患者に投与する。便宜上、量り取る容量は、少量、例えば、1mL未満(0.5mL未満など)などの2mL未満である。このような製品の例として、UKにおける監督機関であるMedicines and Healthcare Products Regulatory Agency(MHRA)は、抗うつ剤のシタロプラムを40mg/mlで含む濃縮経口製剤を承認した。
【0040】
特定の実施形態において、本発明の濃縮経口製剤は、所定の滴数の前記製剤を適切なディスペンサー、例えば、液滴集成装置(drop aggregate)を有する容器から量り取り、液滴を液体(水、ジュースまたは同様のもの)のグラスに加えて、それによって患者は液体を飲むことによって患者に投与する。これに関連して、液滴集成装置は、前記容器の中の液体が前記容器から分離した液滴で分注できることを実現する、容器に取り付けられた集成装置である。
【0041】
本発明の濃縮経口製剤が光に曝露されたときに不安定な傾向があることを予試験の結果は示した。この潜在的な問題を克服するために、製剤は、光から保護して、例えば、不透明な容器中で、または箱によって光から保護されている容器中で貯蔵することができる。
【0042】
濃縮経口製剤中の本発明の塩の濃度は、集めることが望ましい滴数(または容量)および投与することが望ましい塩の量によって決定される。概ね5〜20滴を量り取ることが、一方では治療の安全性/有効性と、他方では利便性との間の最適な妥協であると一般に見なされる。本発明の塩の濃度が高すぎる場合、すなわち少ない滴数のみが量り取られる場合、これは治療の安全性または有効性を危うくし得る。少ない滴数では、所望より1滴もしくは2滴多いまたは少ないことは、提供する用量の不確実性を相当に増加させる。他方、本発明の塩の濃度が低すぎる場合、量り取られる滴数が多く、これは患者または看護人にとって不便である。
【0043】
2.5mgの1日投与量では、1mL毎に2.5mgの活性成分の濃度の濃縮経口製剤は、適当であり得る。1mL当たり2.5mgの濃度および20滴/mLの滴数によって、2.5mgの用量について20滴の投与が可能になる。
【0044】
2.5mgの1日投与量では、1mL毎に5mgの活性成分の濃度の濃縮経口製剤は、適当であり得る。1mL当たり5mgの濃度および20滴/mLの滴数によって、2.5mgの用量について10滴の投与が可能になる。
【0045】
2.5mgの1日投与量では、1mL毎に10mgの活性成分の濃度の濃縮経口製剤は、適当であり得る。1mL当たり10mgの濃度および20滴/mLの滴数によって、2.5mgの用量について5滴の投与が可能になる。
【0046】
5mgの1日投与量では、1mL毎に5mgの活性成分の濃度の濃縮経口製剤は、適当であり得る。1mL当たり5mgの濃度および20滴/mLの滴数によって、5mgの用量について20滴の投与が可能になる。
【0047】
5mgの1日投与量では、1mL毎に10mgの活性成分の濃度の濃縮経口製剤は、適当であり得る。1mL当たり10mgの濃度および20滴/mLの滴数によって、5mgの用量について10滴の投与が可能になる。
【0048】
5mgの1日投与量では、1mL毎に20mgの活性成分の濃度の濃縮経口製剤は、適当であり得る。1mL当たり20mgの濃度および20滴/mLの滴数によって、5mgの用量について5滴の投与が可能になる。
【0049】
10mgの1日投与量では、1mL毎に10mgの活性成分の濃度の濃縮経口製剤は、適当であり得る。1mL当たり10mgの濃度および20滴/mLの滴数によって、10mgの用量について20滴の投与が可能になる。
【0050】
10mgの1日投与量では、1mL毎に20mgの活性成分の濃度の濃縮経口製剤は、適当であり得る。1mL当たり20mgの濃度および20滴/mLの滴数によって、10mgの用量について10滴の投与が可能になる。
【0051】
20mgの1日投与量では、1mL毎に20mgの活性成分の濃度の濃縮経口製剤は、適当であり得る。1mL当たり20mgの濃度および20滴/mLの滴数によって、20mgの用量について20滴の投与が可能になる。
【0052】
したがって、一実施形態において、本発明の濃縮経口製剤は、概ね2.5〜20mg/mLの本発明の塩を含む。特定の例には、概ね5〜20mg/mL、概ね5〜15mg/mL、概ね5〜10mg/mL、および概ね2.5mg/mL、5mg/mL、7.5mg/mL、10mg/mL、15mg/mLまたは20mg/mLが含まれる。
【0053】
一実施形態において、本発明の濃縮経口製剤は、少なくとも2.5mg/mLの本発明の塩を含む。
【0054】
一実施形態において、本発明の濃縮経口製剤は、少なくとも5mg/mLの本発明の塩を含む。
【0055】
一実施形態において、本発明の濃縮経口製剤は、少なくとも10mg/mLの本発明の塩を含む。
【0056】
一実施形態において、本発明の濃縮経口製剤は、少なくとも20mg/mLの本発明の塩を含む。
【0057】
本出願の塩に加えて、本出願の経口製剤、特に濃縮経口製剤は、溶媒、緩衝液、界面活性剤、表面張力調整剤、粘度調整剤、保存剤、抗酸化剤、着色剤、味マスク剤、フレイバーなどを含み得る。
【0058】
溶媒の例には、水、水と混和性の他の溶媒、または可溶化剤および経口の目的のために適切なものが含まれる。適切な溶媒の例は、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ソルビトールおよびベンジルアルコールである。活性成分の水溶性は、溶液への薬学的に許容可能な共溶媒、シクロデキストリンまたはその誘導体の添加によってさらに増加し得る。
【0059】
緩衝系を使用して、製剤のpHを最適なpH範囲に維持し得る。緩衝系は、適当な量の弱酸(酢酸、リン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸またはクエン酸など)およびその共役塩基の混合物である。理想的には、緩衝系は、中性、僅かに酸性または僅かに塩基性の飲料による希釈によって、意図するpH範囲内に留まる十分な能力を有する。
【0060】
界面活性剤は、通常ミセルの形成によって、水性媒体中で可溶性が十分でない活性化合物を可溶化する物質である。好ましくは、使用する界面活性剤は、より低い毒性によって非イオン性であるべきである。高濃度の界面活性剤を使用して、沈殿を伴わないで投与の間に希釈し得る。界面活性剤の例には、tween、spanならびにモノおよびジグリセリドが含まれる。
【0061】
表面張力調整剤を含めて、濃縮経口製剤のための滴数を調節してもよい。表面張力調整剤の一例は、表面張力を減少させ、かつ滴数を増加させるエタノールである。
【0062】
粘度調整剤を含めて、濃縮経口製剤のための液滴速度を調節してもよい。液滴集成装置を取り付けた容器からの分離した液滴として量り取られる製剤についての液滴速度は、好ましくは毎秒2滴を超えるべきではない。粘度調整剤の例には、エタノール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよびグリセリンが含まれる。
【0063】
保存剤を加えて、液体製剤中の細菌、酵母および真菌などの微生物の増殖を防止し得るが、これは繰り返し使用される可能性が高い。適切な保存剤は、所望のpH範囲で薬学的に許容可能で、物理化学的に安定的および有効であるべきである。保存剤の例には、エタノール、安息香酸、ソルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンおよびベンジルアルコールが含まれる。
【0064】
製剤原料は典型的には、固体形態より溶解した形態において化学分解に対してより敏感である。したがって、液体製剤中に抗酸化剤を含むことが必要であり得る。抗酸化剤の例には、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、クエン酸およびEDTAが含まれる。
【0065】
着色剤をいくつかの製剤において使用して、外観の均一性を製品に導入し得る。いくつかの活性成分はさらに光に非常に敏感であってもよく、光からこの製剤を保護するために、および安定化の目的のために、着色剤を液滴製剤に加えることが必要であることが判明する可能性がある。適切な着色剤には、例えば、タルトラジンおよびサンセットイエローが含まれる。
【0066】
甘味剤によって、いくつかの製剤と関連する不快な味をマスクし、または所望の味を達成し得る。甘味剤の例は、サッカリン、サッカリンのナトリウム塩、グルコース、ソルビトール、グリセロール、アセスルファムカリウムおよびネオヘスペリジンジヒドロカルコンである。1種または複数の香味付け物質を加えることによって、味をさらに最適化し得る。適切な香味付け物質は、果物のフレイバー(サクランボ、ラズベリー、カシス、レモンもしくはイチゴのフレイバーなど)、または他のフレイバー(カンゾウ、アニス、ペパーミント、カラメルなど)である。液滴集成装置によって投与し得る化合物Iの乳酸付加塩の濃縮経口製剤の特定の例を、下記に一覧表示する。さらなる例を、実施例の項において提供する。活性化合物とは、化合物IのDL−乳酸塩、L−乳酸塩またはD−乳酸塩を意味する。1%の化合物Iの遊離塩基の形態は、1.3%の活性化合物に相当する。2%の化合物Iの遊離塩基の形態は、2.6%の活性化合物に相当する。実施例は本発明を例示することを単に意図し、限定的であると解釈すべきではない。
0.33% 活性化合物
0.08% パラヒドロキシ安息香酸メチル
0.02% パラヒドロキシ安息香酸プロピル
0.2% ヒドロキシエチルセルロース
水、100%まで適量

0.65% 活性化合物
5% ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン
0.02% 没食子酸プロピル
0.2% ソルビン酸(sorbinsyre)
水、100%まで適量

1.3% 活性化合物
0.1% ヒドロキシエチルセルロース
水、100%まで適量

2.6% 活性化合物
10% ヒドロキシルプロピルβシクロデキストリン
水、100%まで適量
【0067】
国際公開第03/029232号(特許文献1)、国際公開第2007/144005号(特許文献2)および国際公開第2008/113359号(特許文献3)に化合物Iの薬理学的プロファイルが開示されている。要するに、化合物Iは、セロトニントランスポーターの阻害剤、5−HT受容体におけるアンタゴニストおよび5−HT1A受容体におけるアゴニストである。化合物Iは、ラットの脳においてセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンおよびアセチルコリンの細胞外レベルを増加させる[Mooreら、Eur. Neuropsychopharmacol.、18、補遺4、s321、2008(非特許文献3)]。第359号出願はまた、低いレベルの睡眠および性に関連する有害事象を驚いたことに示す対応するHBr付加塩による、うつ病患者の臨床試験からの結果を開示している。
【0068】
これを背景に、本発明の塩は、気分障害(大うつ病性障害、全般性不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、および不安と関連するうつ病、すなわちうつ病および不安の併存など)の治療において有用であることが期待される。細胞外アセチルコリンレベルに対する影響は、認知に対する作用をもたらすと考えられる(アルツハイマー病の治療におけるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用を参照されたい)。したがって、本発明の塩はまた、認知機能障害と関連するうつ病およびアルツハイマー病の治療において使用し得る。
【0069】
大うつ病性障害を有する患者の一部は、臨床的に関連性のあるスケール(HAMDまたはMADRSなど)について改善するが、認知および/または睡眠症状などの他の症状が残るという意味で、例えば、選択的セロトニン輸送阻害剤による治療に対して反応する。本発明の状況において、これらの患者は、残遺症状を有するうつ病を患っていると称される。本発明の塩は、このような患者の治療において有用であることが期待されている。
【0070】
例えば、国際公開第2008/113359号(特許文献3)に示されている前臨床データは、化合物Iが疼痛の治療において使用し得るという考えを支持する。一実施形態において、疼痛は、幻肢痛、神経因性疼痛、糖尿病性ニューロパシー、ヘルペス後神経痛(PHN)、手根管症候群(CTS)、HIVニューロパシー、複合性局所疼痛症候群(CPRS)、三叉神経神経痛、三叉神経痛性チック、外科的介入(例えば、術後鎮痛剤)、糖尿病性脈管障害、毛細血管抵抗、膵島炎と関連する糖尿病症状、月経と関連する疼痛、癌と関連する疼痛、歯痛、頭痛、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経痛、顎関節症候群、筋筋膜疼痛、筋肉損傷、線維筋痛症候群、骨および関節痛(骨関節炎)、関節リウマチ、関節リウマチ、および火傷、筋挫傷または骨折と関連する外傷から生じる浮腫、骨関節炎、骨粗鬆症、骨転移または不明な原因による骨痛、痛風、結合組織炎、筋筋膜疼痛、胸郭出口症候群、上部背痛または下部背痛(全身性、局所性、または原発性脊椎疾患(primary spine disease)(神経根障害)からもたらされる背痛)、骨盤痛、心臓性胸痛、非心臓性胸痛、脊髄損傷(SCI)関連疼痛、中枢性卒中後痛、癌性ニューロパシー、AIDS疼痛、鎌状赤血球疼痛または老人性疼痛を含めた慢性疼痛と関連する。一実施形態において、疼痛は、過敏性腸症候群(IBS)である。
【0071】
薬理学的プロファイルに基づいて、本発明の塩は、摂食障害(肥満、過食、食欲不振および神経性過食など)、ならびに物質乱用(アルコール、ニコチンおよび薬物乱用など)の治療において有用であり得ることがまた期待されている。
【0072】
したがって一実施形態において、本発明は、気分障害;大うつ病性障害;全般性不安障害;パニック障害;心的外傷後ストレス障害;認知機能障害、アルツハイマー病または不安と関連するうつ病;残遺症状を有するうつ病;慢性疼痛;摂食障害または乱用から選択される疾患を治療する方法であって、治療有効量の本発明の液体製剤を、それを必要としている患者に投与することを含む方法に関する。
【0073】
1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの治療において観察される非常に低いレベルの有害事象によって、本発明の液体製剤はまた、睡眠または性に関連する有害事象によって、他の薬物(選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)、選択的ノルアドレナリン再取込み阻害剤(NRI)、ノルアドレナリン/セロトニン再取込み阻害剤(SNRI)または三環系(TCA)などの他の抗うつ剤など)を使用することができない患者のための第二次治療として有用であり得る。この実施形態において、治療を受ける患者は、別の薬剤を投与されてきており(またはまだそれを投与されている)、睡眠または性に関連する有害事象によって、その薬剤を中止もしくは減少させた(または中止もしくは減少させなくてはならない)。一実施形態において、前記液体製剤は濃縮経口製剤である。
【0074】
一実施形態において、治療を受ける患者は、前記患者が治療を受けている疾患を有すると診断されている。
【0075】
典型的な経口投与量は、1回または複数回の投与量(1〜3回の投与など)で投与される、1日当たり約0.01〜約5mg/kg体重、好ましくは1日当たり約0.01〜約1mg/kg体重の範囲である。正確な投与量は、投与頻度および方法、治療を受ける対象の性別、年齢、体重および全身状態、治療を受ける状態の性質および重症度、ならびに治療を受ける任意の合併症、ならびに当業者には明らかな他の要因によって決まる。
【0076】
成人のための典型的な経口投与量は、0.5〜50mg/日(1〜10mg/日など)の範囲の本発明の塩である。これは典型的には、0.5〜50mg(0.5mg、1mg、2.5mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mgまたは40mgなど)の本発明の塩を、毎日1度または2度投与することによって達成し得る。小児の治療の場合、用量は、年齢および/または体重によって減少し得る。
【0077】
「治療有効量」の化合物とは、本明細書において使用する場合、前記化合物を投与することを含む治療的介入において、所与の疾患およびその併発症の臨床症状を治癒、軽減または部分的に抑止するのに十分な量を意味する。これを達成するのに適切な量は、「治療有効量」と定義される。この用語にはまた、前記化合物を投与することを含む治療における、所与の疾患およびその併発症の臨床症状を治癒、軽減または部分的に抑止するのに十分な量が含まれる。各目的のための有効量は、疾患または損傷の重症度、ならびに対象の体重および全身状態によって決まる。適当な投与量の決定は、値のマトリックスを構築し、マトリックスにおける異なるポイントを試験することによって、通例の実験法を使用して達成し得ることが理解され、これは全てが訓練を受けた医師の通常の技量の範囲内である。
【0078】
「治療」および「治療する」という用語は、本明細書において使用する場合、疾患または障害などの状態と闘う目的の、患者の管理および看護を意味する。この用語は、症状または併発症を軽減し、疾患、障害または状態の進行を遅延させ、症状および併発症を軽減または緩和し、かつ/あるいは疾患、障害または状態を治癒または除き、かつ状態を予防する(予防は、疾患、状態、または障害と闘う目的での患者の管理および看護と理解され、活性化合物を投与して、症状または併発症の発症を防止することが含まれる)ために活性化合物を投与するなどの、患者が患っている所与の状態についての広範囲の治療が含まれることを意図する。それにも関わらず、防止的(予防的)および治療上の(根治的)治療は、本発明の2つの別の態様である。治療を受ける患者は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。
【0079】
一実施形態において、本発明は、気分障害;大うつ病性障害;全般性不安障害;パニック障害;心的外傷後ストレス障害;認知欠損、アルツハイマー病または不安と関連するうつ病;残遺症状を有するうつ病;慢性疼痛;摂食障害または乱用から選択される疾患の治療のための液体製剤の製造のための、本発明の塩の使用に関する。
【0080】
一実施形態において、前記塩は、DL−乳酸塩のβ形態およびL−乳酸塩のMH2形態から選択される。
【0081】
一実施形態において、前記液体製剤は濃縮経口製剤である。
【0082】
一実施形態において、本発明は、気分障害;大うつ病性障害;全般性不安障害;パニック障害;心的外傷後ストレス障害;認知欠損、アルツハイマー病または不安と関連するうつ病;残遺症状を有するうつ病;慢性疼痛;摂食障害または乱用から選択される疾患の治療において使用するための、本発明の塩であって、液体製剤中にある塩に関する。
【0083】
一実施形態において、前記塩は、DL−乳酸塩およびL−乳酸塩から選択される。
【0084】
一実施形態において、前記液体製剤は濃縮経口製剤である。
【0085】
一実施形態において、本発明は、DL−乳酸付加塩、L−乳酸付加塩および/またはD−乳酸付加塩から選択される1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの塩を含む液体製剤に関する。特に、前記液体製剤は濃縮経口製剤である。
【0086】
一実施形態において、本発明は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのL−乳酸付加塩である化合物に関する。MH2形態について特に言及する。
【0087】
一実施形態において、本発明は、概ね5.33、9.75、10.10、14.44および14.63(°2θ)でのXRPD反射、例えば、図3において示すようなXRPDパターンを有する、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのL−乳酸付加塩である化合物に関する。
【0088】
一実施形態において、本発明は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのD−乳酸付加塩である化合物に関する。
【0089】
一実施形態において、本発明は、概ね6.01、10.10、10.32、12.06、12.84、13.08、13.58(°2θ)でのXRPD反射、例えば、図5において示すようなXRPDパターンを有する、DL−乳酸付加塩のβ形態である化合物に関する。
【0090】
本発明の塩は、単独でまたは別の治療的活性化合物と組み合わせて投与してもよく、2種の化合物は、同時または順次に投与し得る。本発明の塩と有利に合わせ得る治療的活性化合物の例には、鎮静剤または催眠剤(ベンゾジアゼピンなど);抗痙攣薬(ラモトリギン、バルプロ酸、トピラメート、ガバペンチン、カルバマゼピンなど);気分安定剤(リチウムなど);ドーパミン作動性薬物(ドーパミンアゴニストおよびL−ドーパなど);ADHDを治療する薬物(アトモキセチンなど);精神刺激薬(モダフィニル、ケタミン、メチルフェニデートおよびアンフェタミンなど);他の抗うつ剤(ミルタザピン、ミアンセリンおよびブプロプリオンなど);ホルモン(T3、エストロゲン、DHEAおよびテストステロンなど);非定型抗精神病薬(オランザピンおよびアリピプラゾールなど);定型抗精神病剤(ハロペリドールなど);アルツハイマー病を治療する薬物(コリンエステラーゼ阻害剤およびメマンチン、葉酸など);S−アデノシル−メチオニン;免疫調節剤(インターフェロンなど);オピエート(ブプレノルフィンなど);アンジオテンシンII受容体1アンタゴニスト(AT1アンタゴニスト);ACE阻害剤;スタチン類;ならびにα1アドレナリン作動性アンタゴニスト(プラゾシンなど)が含まれる。
【0091】
本明細書において引用した公開資料、特許出願、および特許を含めた全ての参照文献は、本明細書において他で行われる特定の文献の任意の別々に行われる組込みに関わらず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれており、(法律によって許容される最大限の範囲において)各参照文献が個々におよび具体的に参照により組み込まれていることが示されているのと同一程度に、ならびに各参照文献が本明細書においてその全体が記載されているのと同一程度に本明細書に組み込まれている。
【0092】
本発明を記載することとの関連で、用語「a」および「an」および「the」および同様の指示対象の使用は、本明細書において他に示さず、または状況によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈される。例えば、「化合物」という語句は、他に示さない限り、本発明の様々な「化合物」または特定の記載した態様を意味すると理解される。
【0093】
他に示さない限り、本明細書において提供する全ての正確な値は、相当する近似値の代表である(例えば、特定の要因または測定に関して提供される全ての正確な例示的値はまた、適当な場合、「約」で修飾される相当する概算的測定を実現すると考えられる)。
【0094】
1種または複数の要素に関して「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」または「含有する(containing)」などの用語を使用した、任意の態様または本発明の態様の本明細書における記載は、特に明記しない限り、または明らかに状況と矛盾しない限り、その特定の1種または複数の要素「からなる」、「から本質的になる」、または「を実質的に含む」、同様の態様または本発明の態様を支持することを意図する(例えば、特定の要素を含むとして本明細書に記載されている組成物は、特に明記しない限り、または明らかに状況と矛盾しない限り、その要素からなる組成物としてまた記載されると理解すべきである)。
【実施例】
【0095】
分析
X線粉末ディフラクトグラム(XRPD)は、CuKα1線を使用したPANalytical X’Pert PRO X線回折計で測定した。試料を、X’celerator検出器を使用して反射モードにより2θ範囲5〜40℃で測定した。この書類を通して、回折データは、±0.1(°2θ)で示す。
【0096】
例1
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、L−乳酸塩のAH1形態
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン塩基(5.00g)を、酢酸エチル(50mL)に50℃で溶解した。溶液は少し混濁状であり、濾紙を通して濾過した。L−(+)−乳酸(1.84g)を溶液に加え、室温で撹拌した。沈殿が開始し、懸濁液を室温で2時間撹拌し、生成物を濾過によって単離した。固体を真空オーブン中で40℃にて一晩乾燥させた。AH1の水溶性は、物質は水に曝露したときに一水和物に変換するため、測定することは可能でなかった。
【0097】
例2
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、L−乳酸塩のMH1形態
例1からの100mgの1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、L−乳酸塩のAH1形態を、開放した容器中で周囲条件(22℃、30%RH)に置いた。MH1の溶解度は、化合物が水性スラリー中でMH2に変換するため、測定することは可能でなかった。
【0098】
例3
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、L−乳酸塩のMH2形態
例2からの100mgの1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、L−乳酸塩のMH1形態に、1mLの水を加え、混合物を一晩置いた。沈殿物(MH2形態)を濾過する。
【0099】
例4
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、DL−乳酸塩のα形態
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン塩基(5.00g)を、酢酸エチル(50mL)に50℃で溶解した。溶液は少し混濁状であり、濾紙を通して濾過し、透明となった。DL−乳酸(1.68g)を溶液に加え、室温で撹拌した。2時間後、沈殿が開始した。懸濁液を室温で2時間撹拌し、生成物が濾過によって単離した。固体を真空オーブン中で40℃にて一晩乾燥させた。水中のα形態の溶解度は、化合物が水性スラリー中でβ形態に変換するため、測定することは可能でなかった。
【0100】
例5
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、DL−乳酸塩のβ形態
例5からの100mgの1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、DL−乳酸塩のα形態を、1mLの水に加え、混合物を一晩置いた。沈殿物(β形態)を濾過した。
【0101】
例6
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、DL−乳酸塩のMH形態
例5からの10mgの1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、DL−乳酸塩のα形態を、高い相対湿度(25℃、95%RH)に4時間曝露した。水中のMHの溶解度は、それが水性スラリー中でβ形態に変換したため、測定することは可能でなかった。
【0102】
例7
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、DL−乳酸塩のγ形態
例7からの10mgの1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、DL−乳酸塩のMH形態を、50℃に加熱した。γ形態の水溶性は、それが水性スラリー中でβ形態に変換するため、測定することは可能でなかった。
【0103】
例8
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、DL−乳酸塩のβ形態
200gの1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン、HBr(526mmol)をMe−THF(3.5L)中で撹拌し、1MのNaOH(1L)を加えた。懸濁液を15分間撹拌し、その後、全ての固体が溶解した。相を分離し、ブランク濾過(blank filtration)の後、Me−THF相は半分の容量に減少した。室温に冷却した後、DL−乳酸(1.5当量、約789mmol)を加え、溶液を0.5%のβ形態で種晶添加した。5分後、沈殿が開始し、懸濁液を周囲温度で一晩撹拌した。次いで、懸濁液を氷上で冷却し、濾過し、200mLのMe−THFで洗浄し、真空下で50℃にて一晩乾燥させた。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
例9
1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンD,L−乳酸塩の合成
【0107】
【化2】

50g(132mmol)のHBr塩を800mLのトルエンに懸濁させ、250mL(250mmol;1.9当量)のNaOH水溶液(1M)を加えた。2相混合物を、全ての固体が溶液となるまで65℃に温め、次いで室温に冷却した。相が分離し、有機相を真空中で蒸発させ、僅かに黄色の固体を得た。125mLのエタノールおよび20mL(269mmol;2.0当量)のDL−乳酸(90%)を加え、懸濁液を全ての固体が溶解するまで温め、続いて室温に冷却した。溶液を1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンD,L−乳酸塩β形態の少数の結晶で種晶添加し、懸濁液を室温で一晩撹拌し、続いて氷バスで冷却した。沈殿物を濾過し、エタノールで洗浄し、真空オーブン中で乾燥させ、36.5gの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンD,L−乳酸塩β形態(71%収率)を得た。
【0108】
例10
濃縮経口製剤
下記で示した濃縮経口製剤を調製し、示したような条件下で安定性試験に曝露した。25/60は、25℃および60%RHを示し、40/75は、40℃および75%RHを示し、60は60℃を示す。数は、試験期間に続く残存する活性化合物の量を示す。
【0109】
経口液滴製剤中の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの残存量は、勾配逆相HPLCによって決定した。移動相は、TFAを加えた水およびアセトニトリルの混合物からなった。検出は、226nmでのUVによってであった。
a)
1.3% 活性化合物 約1% 遊離塩基
0.08% パラヒドロキシ安息香酸メチル
0.02% パラヒドロキシ安息香酸プロピル
水、100%まで適量
【0110】
【表3】

b)
1.3% 活性化合物 約1% 遊離塩基
5% ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン
水、100%まで適量
【0111】
【表4】

c)
1.3% 活性化合物 約1% 遊離塩基
0.1% ヒドロキシエチルセルロース
水、100%まで適量
【0112】
【表5】

d)
1.3% 活性化合物 約1% 遊離塩基
1.1% L−乳酸
0.1% ヒドロキシエチルセルロース
水、100%まで適量
【0113】
【表6】

e)
2.6% 活性化合物 約2% 遊離塩基
10% ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン
水、100%まで適量
【0114】
【表7】

f)
2.6% 活性化合物 約2% 遊離塩基
10% ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン
10% エタノール96%
水、100%まで適量
【0115】
【表8】

g)
2.6% 活性化合物 約2% 遊離塩基
10% メチルβシクロデキストリン
水、100%まで適量
【0116】
【表9】

h)
2.6% 活性化合物 約2% 遊離塩基
10% メチルβシクロデキストリン
10% エタノール96%
水、100%まで適量
【0117】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
DL−乳酸付加塩、L−乳酸付加塩およびD−乳酸付加塩から選択される1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの塩を含む液体医薬製剤。
【請求項2】
前記塩がDL−乳酸付加塩である、請求項1に記載の液体製剤。
【請求項3】
前記塩がL−乳酸付加塩である、請求項1に記載の液体製剤。
【請求項4】
前記塩がD−乳酸付加塩である、請求項1に記載の液体製剤。
【請求項5】
前記塩の濃度が2.5mg/mL超である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の液体製剤。
【請求項6】
気分障害;大うつ病性障害;全般性不安障害;パニック障害;心的外傷後ストレス障害;認知機能障害、アルツハイマー病または不安と関連するうつ病;残遺症状を有するうつ病;慢性疼痛;摂食障害または乱用から選択される疾患を治療する方法であって、治療有効量の請求項1〜5のいずれか一つに記載の液体製剤を、それを必要としている患者に投与することを含む方法。
【請求項7】
所定の容量の前記液体製剤を量り取り、このように得られた容量を液体に加え、この液体を患者に経口的に投与する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
気分障害;大うつ病性障害;全般性不安障害;パニック障害;心的外傷後ストレス障害;認知機能障害、アルツハイマー病または不安と関連するうつ病;残遺症状を有するうつ病;慢性疼痛;摂食障害または乱用から選択される疾患の治療のための液体製剤の製造における、DL−乳酸付加塩、L−乳酸付加塩およびD−乳酸付加塩から選択される1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの塩の使用であって、前記塩が液体製剤中にある、使用。
【請求項9】
前記塩がDL−乳酸付加塩である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記塩がDL−乳酸付加塩のβ形態である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記塩がL−乳酸付加塩である、請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記塩がL−乳酸付加塩のMH2形態である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記塩がD−乳酸付加塩である、請求項8に記載の使用。
【請求項14】
前記液体製剤が2.5mg/mL超の前記塩を含む、請求項8〜13のいずれか一つに記載の使用。
【請求項15】
気分障害;大うつ病性障害;全般性不安障害;パニック障害;心的外傷後ストレス障害;認知機能障害、アルツハイマー病または不安と関連するうつ病;残遺症状を有するうつ病;慢性疼痛;摂食障害または乱用から選択される疾患の治療において使用するための、DL−乳酸付加塩、L−乳酸付加塩およびD−乳酸付加塩から選択される1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンの塩であって、液体医薬製剤中にある塩。
【請求項16】
前記塩がDL−乳酸付加塩である、請求項15に記載の塩。
【請求項17】
前記塩がL−乳酸付加塩である、請求項15に記載の塩。
【請求項18】
前記塩がD−乳酸付加塩である、請求項15に記載の塩。
【請求項19】
前記液体製剤が2.5mg/mL超の前記塩を含む、請求項15〜18のいずれか一つに記載の塩。
【請求項20】
1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのL−乳酸付加塩である化合物。
【請求項21】
L−乳酸付加塩のMH2形態である、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンのD−乳酸付加塩である化合物。
【請求項23】
DL−乳酸付加塩のβ形態である化合物。
【請求項24】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の液体製剤を含む、液滴集成装置(drop aggregate)が取り付けられた容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−524735(P2012−524735A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506342(P2012−506342)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/DK2010/050084
【国際公開番号】WO2010/121621
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】