説明

1以上の連続する分割壁を有するカラム内において蒸留により1以上の供給混合物を分離する方法

【課題】蒸留により、混合物を2つの留分に分離することにおいて処理を統合し、それによって資本コストを削減できる方法を提供する。
【解決手段】カラムの長手方向において該カラムの一端から他端まで連続し、該カラム内部を2つ、3つ、又は4つのカラムサブ領域に完全に分離する1つ、2つ、又は3つの分割壁を有する当該カラム内において、第1カラムサブ領域から第2カラムサブ領域、任意に第3カラムサブ領域、任意に第4カラムサブ領域、及び蒸気流に対して逆流する液相流を用いて、蒸留することにより1種以上の供給混合物を分離する方法であって、上記供給混合物を、カラム内において2つの留分に分離し、該カラムは、単一の底部気化器、及びその頂部に単一の圧縮器を備えたことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向における一端から他端まで連続する1以上の分割壁を有するカラム内において蒸留により1以上の供給混合物を分離する方法、及び該方法の使用方法に関する。
【0002】
化学工業における廉価な製造方法の発展において、処理を統合することは重要な技術的方針の一つである。ここで、複数の装置又は全処理の段階では、装置の数が減らされる準備がなされる。
【0003】
蒸留の技術において、分割壁カラムは、処理統合の典型例である。この分割壁カラムにより、3成分混合物から純粋な留分への分離において、従来の2分離蒸留カラム、又はそれぞれのケーシング内に専用の気化器類及び専用の圧縮機類を備えた(複数の)主カラムを、1つの分割壁と1つの気化器及び1つの圧縮器のみを有する単一蒸留カラムに組み込むことが可能となる。処理の統合により、20〜30%の資本コストを削減することができる。また、供給点(フィードポイント)における混合エントロピーの最小化にともなう改良された熱力学的特性の結果として、さらに同程度のオーダーのエネルギーの削減を達成することができる。
【0004】
更に、4成分混合物の分離を単一の分割壁カラムで行うことも可能である。このカラムの形態では供給点において相対的に大きな混合エントロピーが生じ、エネルギー削減量が減ってしまうので、可能な改善として複数の分割壁を有する蒸留カラムが挙げられる。
より簡易な処理統合の可能性として、分割壁がカラムの上端から下端まで延在する蒸留カラムがある。このカラムの形態においては、同様に資本コストの削減が達成される。しかしながら、この形態のカラムは、主カラムとサイドカラムの一つの装置への単なる結合を示しているに過ぎないので、エネルギーが削減されない。
【0005】
特許文献1には、カラム内において無水フタル酸を蒸留することにより、低沸点留分、高沸点留分、及び無水フタル酸を含む留分に分離する方法が開示されている。文献1に記載のカラムは、その全長に亘って延在し2つのサブ領域を形成する分割壁を有し、2つのサブ領域の底部が相互に連結されているか、或いはカラム内において分割壁に割り込み2つのサブ領域を相互に連結する排水管が、カラムの最下部領域に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE10207460
【特許文献2】EP1088577
【特許文献3】EP0640367
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、分割壁カラムの製造は比較的複雑である。特に、分割壁は正しい形状を保つために負荷のかからない方法で外側カラム壁部に溶接される必要がある。この溶接を行うためには、特にカラムが大きな径を有する場合において、少なくとも2つの(多くの場合、6つから8つの)溶接操作における複雑な手法で分割壁を設ける必要がある。このため、分割壁カラムの使用は、今日まで比較的複雑な分離作業、特に3又は4成分混合物の分離に制限されていた。
【0008】
2成分混合物の蒸留による分離は、特に、それら成分の相対揮発度が非常に小さい場合に複雑になる。蒸留分離技術において、一般的には、1.5未満の相対揮発度では、分離は、成分間の各揮発度の差を増大させる溶媒を用いた場合にのみ実行可能である。溶媒を用いない場合、過度に多数の理論段が要求され、この多数の理論段の要求に応じて蒸留カラムの高さが極めて大きくなってしまうであろう。すなわち、アスペクト比(カラムの長さとカラムの径との比)が非常に大きくなるであろう。アスペクト比の上限は、一般的に約30、又は20である場合もある。今日まで、多数の理論段が要求されることでより高いアスペクト比が要求される場合には、分離は2つのカラム内において行われていた。
【0009】
この従来技術を鑑みて、本発明の目的は、蒸留により、混合物を2つの留分に分離することにおいて処理を統合し、それによって資本コストを削減できる方法を提供することである。特に、蒸留カラムの高さは短くされるべきであり、また、アスペクト比が減少されるべきである。更に、要求される蒸留コラムの数も減じられるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、カラムの長手方向において該カラムの一端から他端まで連続し、該カラム内部を2つ、3つ、又は4つのカラムサブ領域に完全に分離する1つ、2つ、又は3つの分割壁を有する当該カラム内において、第1カラムサブ領域から第2カラムサブ領域、任意に第3カラムサブ領域、任意に第4カラムサブ領域、及び蒸気流に対して逆流する液相流を用いて、蒸留することにより1種以上の供給混合物を分離する方法であって、上記供給混合物を、カラム内において2つの留分に分離し、該カラムは、単一の底部気化器、及びその頂部に単一の圧縮器を備えたことを特徴とする方法により達成される。
【0011】
1つのカラムでは非常に多数の理論段が要求されるので今日まで少なくとも2つのカラムにおける分離が要求されていたか、或いは溶媒を用いた分離が要求されていた低い相対揮発度を持つ混合物は、カラムが1つ以上の完全に連続する分割壁を有する分割壁カラムとして構成される場合、カラムの高さ領域に亘る温度分布の結果として分割壁で熱負荷が生じるという蒸留技術における予備的な観念があるにもかかわらず、単一のカラム内で分離を行うことが可能であることを発見した。
【0012】
本発明の方法において、長手方向における一端から他端まで連続する1つ以上の分割壁を有するカラムが、使用される。
【0013】
分割壁は任意の公知の技術的デザインを含んでいても良い。特に、分割壁は、カラム本体に溶接されるシート状金属部分、一体的に接続されるシート状金属部分、或いは特許文献2に記載されているように、接続又はクランプされる多数の個々の部分を含んでいても良い。
【0014】
分割壁の両側で約5℃を越える温度が確立されるシステムの場合、分割壁が断熱的に形成されていることが好ましい。技術的な設計の例は、特許文献3に記載されている。
【0015】
特殊の用途に応じて、分割壁の両側で異なる圧力が生じる。カラム内部を分割するために、包装要素の不規則な床(disordered bed)が用いられる場合、分割壁は、当業者に良く知られている適切な構造的手段を持って強化される必要がある。この構造的手段は、例えば、引張アンカである。規則的な包装材、又はトレイが用いられる場合、多くの場合においてこれらの付加的な構造的手段が施される。
【0016】
本発明によれば、1つ以上の供給混合物が、1つ以上の完全に連続している分割壁を有するカラム内において唯2つの留分、すなわち、底部留分及び上部留分に分離される。これにより、供給点における混合エントロピーの発生が回避されることでエネルギー利得が減少されるが、処理の統合の結果として3成分又は4成分混合物の場合、20〜30%の資本コストが削減される。すなわち、単一のカラムで蒸留による分離が実行される。
【0017】
本発明に方法において取り出される2つの留分は、現実的には純粋な留分である。すなわち、それぞれが、少なくとも90質量%以上又は少なくとも99質量%以上の単一の物質を含む。
【0018】
一つの実施の形態において、単一の供給混合物をカラムに供給し、そのカラムは単一で連続の分割壁を備える。この分割壁は、カラム内部を2つの完全に分離されたサブ領域に分割する。
【0019】
1つ以上の中間的な気化器、及び/又は1つ以上の中間的な圧縮器を備えていると有利である。
【0020】
1つの底部留分及び1つの上部留分に加えて、1つ以上の気相又は液相の側流をカラムから取り出しても良い。
【0021】
第1カラムサブ領域の底部から第1の留分を取り出し、気相を第1カラムサブ領域から第2のカラムサブ領域に運び、第2のカラムサブ領域からの底流を第1カラムサブ領域の頂部に運び、そして、第2のカラムサブ領域の頂部から第2の留分を取り出すことが好ましい。
【0022】
他の実施の形態として、カラムの長手方向において該カラムの一端から他端まで連続し、カラム内部を3つの完全に分離されたカラムサブ領域に分割する2つの分割壁が設けられ、第1カラムサブ領域からの気相流を第2のカラムサブ領域の底部に運び、第2のカラムサブ領域からの気相流を第3のカラムサブ領域の底部に運び、第3のカラムサブ領域からの底部流を第2のカラムサブ領域の頂部に運び、第2のカラムサブ領域からの底部流を第1カラムサブ領域の頂部に運び、そして、第2の留分を第3のカラムの頂部から取り出す。
【0023】
1つ以上の分割壁を、正確にカラムの長手方向に沿って配置することが可能である。すなわち、1つ以上の分割壁は、直立したカラム内において相互に直交して、又は平行に配置することが可能である。
【0024】
しかしながら、カラムの長手方向に分割壁が配置される本発明の形態では、若干の傾きも許容される。特に、製造により生じるカラム長手方向に対する傾きは許容される。
【0025】
1つの実施の形態において、1つ以上の分割壁は、カラムの高さ方向に亘る部分でオフセット配置されても良い。これにより、それぞれのカラムの部分で、分割壁により相互に分離されたカラム内部のサブ領域の断面が得られる。このように、カラムの長手方向に沿ったカラムサブ領域を、各々、気相及び液相の搬送路とすることができ、例えば、包装材やトレイ等の内部物を選択することで、それぞれ適切な負荷条件が確保される。
【0026】
特に、流入口、側部開口(side offtake)、中間気化器、又は中間圧縮機の上方又は下方におけるカラムサブ領域の断面は、それぞれ、異なる面積を有する。それぞれの成分ごとに異なる蒸発エンタルピーを有する物質の分離において、その蒸発エンタルピーはカラム長手方向における気相の搬送時に大きく変化することから、1つ以上の分割壁をオフセット配置することが適切な水圧荷重のために好適である。
【0027】
上述のように、断面がオフセットされるように配置された1つ以上の分割壁は、分割壁を持たない従来のカラムの場合において、高さに応じて径が異なるカラム、例えば、除去された部分及び改良された部分における異なる径を有するカラムに適合する。
【0028】
カラム長手方向に配置され、該カラムの一端から他端まで連続する2つ以上の分割壁の場合、これら分割壁は相互に相対的に異なる位置に配置される。1つの実施の形態として、それら分割壁は、互いに平行に配置される。他の実施の形態では、分割壁を集中して、又はチェスボードのように配置しても良い。例えば、分割壁を、カラムの断面が円形又は円形の一部分に分割されるように配置しても良い。
【0029】
また、本発明は、蒸留により、C留分を、少なくとも70質量%のプロペン、特に少なくとも90質量%のプロペンを含む留分と、99質量%のプロペン、特に99質量%のプロペンを含むポリマーグレードプロペンを含む留分と、に分離する上記方法の使用法を提供する。
【0030】
更に、本発明は、蒸留により、C留分を、ブタン、ブテン、及び2000ppm以下の質量の1,3−ブタジエンを含むラフィネート1の留分と、少なくとも98質量%の1,3−ブタジエンを含む粗製1,3−ブタジエン流と、に分離する上記方法の使用法を提供する。
【0031】
留分の分離、すなわち、主として1分子あたりに3個の炭素原子を有する炭化水素類を含む炭化水素流の分離は、プロペンと比較してプロパンの相対揮発度が極めて低いため、Cの分裂において極めて複雑となる。高い純度のプロペンを与える蒸留による純粋分離に対しては、工業的な慣例の30以下のアスペクト比では単一のカラム内に収容することができないおよそ230程度の多数の段が要求される。このようなカラムは、たとえ比較的小さい段であっても、その高さが90mを越えるであろう。このため、上述の蒸留による分離は、今日まで2つの蒸留カラムで行う必要があった。
【0032】
また、この場合、揮発度を増大させる溶媒を添加して蒸留による分離を実行することは同様に難しい。その理由は、極性のある沸点の高い公知の抽出物が、不飽和成分を底部に搬送するからである。一方で、プロペン、すなわち、不飽和成分は、プロパン/プロペンの分離において低沸点である。従って、極性のある沸点の高い公知の抽出剤が、抽出剤を用いない場合におけるプロパンとプロペンの通常の沸点の順序を逆転させる。そして、抽出剤を用いない純粋な蒸留と比較して抽出剤の存在下における蒸留では、相対揮発度が初期に減少するであろう。
【0033】
対照的に、本発明は、従来の簡易な蒸留と比較して有利であり、溶媒を用いることなく実行可能なC留分の分離方法を提供する。
【0034】
蒸留による従来の方法と比較して、本発明の方法は、従来の個々のカラムが同じ高さである場合に、1つのカラムの径がより大きくなり、例えば風による負荷及び地震に起因する負荷による影響等に対する機械的安定性が得られるという利点がある。従って、強化にかかる費用が高くない。更に、資本コストがより安くなる。特に、建設及び鋼鉄の骨組みの費用が、カラムを一つ削減することができることにより削減される。
【0035】
連続分割する壁部を有するカラムの場合、その高さは、同一の分離タスクを行う分割壁を有さないカラムと比較して半分となり、その直径は√2倍に増加する。
【0036】
特に、装置の骨組みにかかる費用も安くなる。特に、これは、閉塞された建物内でプラントが建設され、個々の高いカラムのために建物のフロア数の増加が要求される場合に当てはまる。
【0037】
経済的な利点とは別に、特に装置の削減やスペースの削減等の他の利点がある。更に、風の影響や地震に対する感度を、本発明の方法において使用される分割壁を有するカラムの径を増加させることで減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1Aは、本発明の方法を実行するための分割壁を有するカラムの第1の実施の形態を示し、図1Bは、図1Aにおける記述に対応して、従来技術の2つの蒸留カラムの配置を示している。
【図2】本発明の方法を実行するための他の好ましいカラムの実施の形態を示している。
【図3】3つの分離されているカラムIからIIIを用いてC留分から粗製1,3−ブタジエンを分離するための、従来のプラントを概略的に示している。
【図4】本発明の方法を実行するためのカラムの好ましい実施の形態を示している。このカラムは、抽出蒸留によりC炭化水素留分から粗製1,3−ブタジエンを分離するものである。
【図5】本発明の方法を実行するためのカラムの好ましい他の実施の形態を示している。なお、このカラムは、抽出蒸留によりC炭化水素留分から粗製1,3−ブタジエンを分離するものである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、以下の実施例及び図面により説明される。
【0040】
(実施例1) C炭化水素混合物の蒸留
93モル%のプロペン及び7モル%のプロパンを含むC炭化水素混合物を精製し、99.9モル%のプロペン(約10モル%のプロペンの底流が認められた)を含むポリマーグレードプロペンを得る分離作業を行った。
【0041】
(実施例1)従来技術
分離を最高18バールの圧力下で230の段を有するカラム内で行い、図1Bに示されるように2つに分割した。
供給流を第1のカラムのほぼ中間位置に導入した。
【0042】
約10モル%のプロペンを含むプロパンを、第1のカラムの底部から取り除いた。第1のカラムからの蒸気流を第2のカラムの底部に運び、第2のカラムからの底流を第1のカラム頂部に運んだ。99.9モル%の純度を有するプロペンを第2のカラムの頂部から取り除いた。2つのカラムは、それぞれ、約50mの高さを有していた。
【0043】
(実施例1)本発明
連続分割壁を有する単一のカラムを使用した。このカラムは50mの高さを有し、径は、従来の対応するカラムの1,4倍程度であった。
【0044】
(実施例1)比較用
10モル%のプロペンを含むプロパン(流2)を、第1のカラムのサブ領域Iの底部から取り除いた。第1のカラムのサブ領域1からの蒸気流(流3)を、第2のカラムのサブ領域IIに搬送した。サブ領域II、及び第2のカラムのサブ領域IIからの底流4を、第1のカラムのサブ領域Iの頂部に搬送した。
【0045】
(実施例2)C炭化水素留分から粗製ブタジエンを分離する抽出蒸留
抽出蒸留により、粗製1,3−ブタジエンをC炭化水素留分から分離する分離作業を行った。ここでは、例えば、5から10質量%の水を含むジメチルホルムアルデヒド、又はN−メチルピロリドン等の選択溶媒の向流中において、C炭化水素留分を処理した。なお、この際、C炭化水素流を、実質的にブタン、及びブテンを含むラフィネート流と、約98質量%の1,3−ブタジエンを含む粗製1,3−ブタジエン流に分離した。
【0046】
(実施例2)比較用
抽出蒸留のためのカラムの高さを約60mに限定するために、C炭化水素留分を第1のカラムの底部に供給して、2つのカラム内で抽出蒸留をいった。選択溶媒を第1のカラムの頂部下方に若干、供給した。第1のカラムからの底流を第2のカラムの頂部に移送する一方で、第2のカラムからの蒸気流を第1のカラムの底部に運んだ。第2のカラムから側流を取り除き、第3のカラムに供給した。なお、第3のカラムでは、選択溶媒の向流における抽出蒸留により、頂部において粗製1,3−ブタジエンが得られる。
【0047】
(実施例2)本発明
図4に示すように、上記2つのカラムは、共通のカラム本体に結合され、連続的な分割壁により相互に分離されている。カラムサブ領域の外部接続は、変更されていない。結果として、同じ高さ及び同じ大きさの径を有する単一のカラムにより、図3に示す2つの分離したカラムI及びIIの機能を満たす。
【0048】
本発明の他の実施の形態において、実施例2の第3のカラムIIIは、他の連続分割壁を有していない同じカラム本体(DE−A10322655に記載されている)に統合することができる。これにより、比較のため実施例2に記載されている全てのカラムI、II、及びIII(図3)は、単一のカラム本体に統合される。
【0049】
図において、同一の符号を付した部分は、それぞれ、同一又は対応する要素を示す。
図1Aは、本発明の方法を実行するための分割壁を有するカラムの第1の実施の形態を示している。成分A及びBを含む供給混合物(流1)は、分割壁を有するカラムKの第1カラムサブ領域Iに供給される。カラムKは、その長手方向の一端から他端までに連続する分割壁TWを有する。分割壁TWは、カラムKの内部を第1カラムサブ領域Iと第2のカラムサブ領域IIに分割する。底部の気化器である第1熱交換器Wは、第1カラムサブ領域Iに割り当てられ、頂部における圧縮機である第2熱交換器Wは、第2サブカラム領域IIに割り当てられる。
【0050】
成分Bを含む第1留分(流2)は、第1カラムサブ領域Iから取り除かれ、成分Aを含む第2留分(流5)は、第2カラムサブ領域IIから取り除かれる。
【0051】
第1カラムサブ領域Iからの蒸気(流3)は、第2カラムサブ領域の底部に移送され、第2カラムサブ領域IIからの底部における液体(流4)は、第1カラムサブ領域Iの頂部に移送される。
【0052】
図1Bは、従来技術において対応する配置を示している。この配置では、2つの蒸留カラムI及びIIが隣同士に配置されることが要求される。カラムIは、本発明カラムKの第1カラムサブ領域Iに対応し、カラムIIは、本発明のカラムKの第2カラムサブ領域IIに対応する。
【0053】
図2は、本発明において使用されるカラムの他の好ましい実施の形態を示す。図1に示した形態に対し、図2の形態においては、2つの分割壁TWが設けられ、これによりカラムKの内部は3つのサブ領域I、II、及びIIIに分割される。また、他の底流(流7)が、第3カラムサブ領域IIIの底部において得られ、第2カラムサブ領域IIの頂部に供給される。
【0054】
図3は、選択溶媒(NMP/水)を用いた抽出蒸留により、粗製1,3−ブタジエンをC留分(粗製C)から分離するためのプラントの概略図である。このプラントでは、予め熱処理された供給混合物(流物1)が、第1のカラムIに導入される。また、第1のカラムIには、選択溶媒NMP/水が向流として供給され、熱交換器Wにおける圧縮の後、ラフィネートIとして取り出される蒸気流3が取り出される。第1のカラムIからの底流は、第2のカラムIIの頂部に供給され、第2のカラムIIからの蒸気流は、第1のカラムIの底部に供給される。第2のカラムIIからの側流は、第3のカラムIIIに供給される。なお、第3のカラムIIIからの粗製1,3−ブタジエンは、熱交換器Wにおいて圧縮された後に頂部から取り出される。
【0055】
図4は、図3に示されているプラントと同じ分離作業を行うための本発明におけるプラントの概略図である。2つのカラムI及びIIは、完全にカラムの全長に亘って連続する分割壁を有する単一のカラムに結合される。
【0056】
図5は、本発明の方法におけるカラムの他の好ましい実施の形態を示している。このカラムでは、図4に記載した実施の形態と同様に、C炭化水素留分から粗製1,3−ブタジエンが分離される。この実施の形態では、更に、カラムIIIが、同一のカラム本体に統合されている。
【符号の説明】
【0057】
1 成分A及びBを含む供給混合物流
2 成分Bを含む第1の留分流
3 第1カラムサブ領域Iからの蒸気
4 第2カラムサブ領域IIからの底部液体
5 成分Aを含む第2の留分流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラムの長手方向において該カラムの一端から他端まで連続し、該カラム内部を2つ、3つ、又は4つのカラムサブ領域に完全に分離する1つ、2つ、又は3つの分割壁を有する当該カラム内において、第1カラムサブ領域から第2カラムサブ領域、任意に第3カラムサブ領域、任意に第4カラムサブ領域、及び蒸気流に対して逆流する液相流を用いて、蒸留することにより1種以上の供給混合物を分離する方法であって、
上記供給混合物を、カラム内において2つの留分に分離し、
該カラムは、単一の底部気化器、及びその頂部に単一の圧縮器を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
単一の供給混合物を、カラム内に供給し、
カラムが、その内部を2つの完全に分離されたカラムサブ領域に分割する単一の連続した分割壁を備えている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
中間気化器、及び/又は中間圧縮器が設けられた請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
気相又は液相の側流をカラムから取り出す請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
第1留分を第1カラムサブ領域から取り出し、第1カラムサブ領域からの蒸気流を第2カラムサブ領域の底部に搬送し、第2カラムサブ領域からの底流を第1カラムサブ領域の頂部に搬送し、更に、第2留分を第2カラムサブ領域の頂部から取り出す請求項2に記載の方法。
【請求項6】
カラムの長手方向において該カラムの一端から他端まで連続し、カラム内部を3つの完全に分離したカラムサブ領域に分割する2つの分割壁が設けられ、
第2留分を第3カラムサブ領域の頂部から取り出す請求項1、3、又は4の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の方法において、
留分を、70質量%のプロパンを含む第1留分と、少なくとも99質量%のプロペンを含む第2留分と、に蒸留により分離することを特徴とする方法。
【請求項8】
第1留分が、少なくとも90質量%のプロパンを含み、
第2留分が、少なくとも99.9質量%のプロペンを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜6の何れか1項に記載の方法において、
炭化水素留分を、ブタン、ブテン、及び質量で2000ppm以下の1,3−ブタジエンを含むラフィネートI流と、少なくとも98質量%の1,3−ブタジエンを含む粗製1,3−ブタジエン流と、に蒸留により分離する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−6411(P2011−6411A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−140108(P2010−140108)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】