説明

1,2−ジクロロエタンの、および1,2−ジクロロエタンとは異なる少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の製造方法

炭化水素源から出発する1,2−ジクロロエタンの、および1,2−ジクロロエタンとは異なる少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の製造方法であって、a)炭化水素源が、エチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物を生成する簡略化分解にかけられ;b)前記生成物の混合物が少なくとも、エチレンの一部を含有する、エチレンより軽質である化合物に富む画分(画分A)へ、エチレンに富む画分(画分B)へ、および重質画分(画分C)へ分離され;c)画分Aおよび画分Bのうちの一方の画分が、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、1,2−ジクロロエタンの、および任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送され、そして一方では、他方の画分が、1,2−ジクロロエタンとは異なるエチレンから出発して直接製造される少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の、および任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送される方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2−ジクロロエタン(DCE)のおよびDCEとは異なる少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日まで、99.8%純度を超えるエチレンが、エチレン誘導体化合物の製造のために通常使用されている。非常に高い純度のこのエチレンは、様々な石油製品の分解、引き続く分解の他の生成物からエチレンを単離し、そして非常に高い純度の製品を得るための多数の複雑な、費用のかかる分離操作によって得られる。
【0003】
かかる高純度のエチレンの生産に関連した高いコストを鑑みて、99.8%未満の純度を有するエチレンを使用する、エチレン誘導体化合物、特にDCEの様々な製造方法が開発されてきた。これらの方法は、分解から生じた生成物を分離する過程を簡略化することによって、このようにしてエチレン誘導体化合物、特にDCEの製造にとって何の利益もない複雑な分離を放棄することによってコストを削減するという利点を有する。
【0004】
例えば、国際公開第00/26164号パンフレットは、エチレンの塩素化と結び付いたエタンの簡略化分解によるDCEの製造方法を記載している。この趣旨で、エチレン塩素化工程は、エタンの分解中に得られた不純物の存在下に行われる。
【0005】
国際公開第03/048088号パンフレットは、エタンの脱水素を用いた塩素との化学反応用の低濃度エチレンの製造を記載している。エタン負荷ガス流れは、水素およびメタンのみならず、多量の未転化エタンをも含有する。この方法の経済的デザインのためには、未転化エタンは、複雑な清浄化工程の後にエタン脱水素にフィードバックしなければならない。この方法は、供給原料としてエタンを使用できるにすぎない。重大な不利点は、水素、プロピレン、ブタジエンなどのガス流れのさらなる成分が非常に特別なプロセスでエチレンを使用するのを可能にするにすぎないという事実だけでなく、エチレンの非常に低い濃度−60%未満−である。
【0006】
さらに、国際公開第2006/067188号パンフレット、同第2006/067190号パンフレット、同第2006/067191号パンフレット、同第2006/067192号パンフレット、同第2006/067193号パンフレットおよび同第2007/147870号パンフレットは、先ず簡略化分解にかけられる、炭化水素源、特にナフサ、ガスオイル、天然ガス液、エタン、プロパン、ブタン、イソブタンまたはそれらの混合物から出発するDCEの製造方法を記載している。
【0007】
国際公開第2008/000705号パンフレット、同第2008/000702号パンフレットおよび同第2008/000693号パンフレットは、一方で、先ず接触オキシ脱水素にかけられるエタンの流れから出発するDCEの製造方法を記載している。その目標が99.8%未満の純度を有するエチレンを製造し、使用することである、上述の特許出願に記載されている方法は、しかしながら、生産コストの増大をもたらす重大な投資を必要とする接触オキシ脱水素の第1工程を必要とするという不利点を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上に記載された方法は全て、それらが全て、唯一のエチレン誘導体化合物としてのDCEの製造をもたらすという事実でさらに特徴づけられる。それ故、DCEの、および少なくとも別のエチレン誘導体化合物の両方の製造をもたらす99.8%未満の純度を有するエチレンを使用する統合された方法が依然として必要とされている。
【0009】
本発明の目標はそれ故、99.8%未満の純度のエチレンを使用する、DCEとは異なる少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の製造と組み合わせられる、かつ、上述の方法の不利点を示さないDCEの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この趣旨で、本発明は、炭化水素源から出発するDCEの、およびDCEとは異なる少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の製造方法であって、
a)炭化水素源が、エチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物を生成する簡略化分解にかけられ;
b)前記生成物の混合物が少なくとも、エチレンの一部を含有する、エチレンより軽質である化合物に富む画分(画分A)へ、エチレンに富む画分(画分B)へ、および重質画分(画分C)へ分離され;
c)画分Aおよび画分Bのうちの一方の画分が、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、1,2−ジクロロエタンの、および任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送され、そして一方では、他方の画分が、1,2−ジクロロエタンとは異なるエチレンから出発して直接製造される少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の、および任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送される
方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
表現「少なくとも1つのエチレン誘導体化合物」は、本発明の目的のためには、1つ以上のエチレン誘導体化合物が本発明による方法によって製造され得ることを意味すると理解される。
【0012】
単数形でまたは複数形で本明細書で以下用いられる、表現「エチレン誘導体化合物」は、本発明の目的のためには、エチレンから出発して直接製造される任意のエチレン誘導体化合物ならびにそれから誘導される任意の化合物を意味すると理解される。
【0013】
単数形でまたは複数形で本明細書で以下用いられる、表現「エチレンから出発して直接製造されるエチレン誘導体化合物」は、本発明の目的のためには、エチレンから直接製造される任意の化合物を意味すると理解される。
【0014】
単数形でまたは複数形で本明細書で以下用いられる、表現「それから誘導される化合物」は、本発明の目的のためには、エチレンから製造される1つの化合物そのものから製造される任意の化合物ならびにそれから誘導される任意の化合物を意味すると理解される。
【0015】
エチレンから出発して直接製造されるかかるエチレン誘導体化合物の例として、とりわけ、エチレンオキシド、線状アルファ−オレフィン、線状第一級アルコール、エチレンのホモポリマーおよびコポリマー、エチルベンゼン、酢酸ビニル、アセトアルデヒド、エチルアルコール、プロピオンアルデヒドおよびDCEが挙げられてもよい。
【0016】
それから誘導されるかかる化合物の例として、とりわけ、
− エチレンオキシドから製造されるグリコールおよびエーテル、
− エチルベンゼンから製造されるスチレンおよびスチレンから誘導されるスチレンのポリマー、
− DCEから製造される塩化ビニル(VC)、
− VCから誘導される塩化ビニリデン、フッ素化炭化水素およびポリ塩化ビニル(PVC)ならびにフッ素化炭化水素から誘導されるフッ素化ポリマー、ならびに
− 塩化ビニリデンから誘導されるポリ塩化ビニリデンおよびフッ素化炭化水素(およびフッ素化ポリマー)
が挙げられてもよい。
【0017】
本発明による方法は、炭化水素源から出発する方法である。
【0018】
考えられる炭化水素源は、任意の公知の炭化水素源であってもよい。好ましくは、分解(工程a))にかけられる炭化水素源は、ナフサ、ガスオイル、天然ガス液、エタン、プロパン、ブタン、イソブタンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましいやり方では、炭化水素源は、エタン、プロパン、ブタンおよびプロパン/ブタン混合物からなる群から選択される。より特に好ましいやり方では、炭化水素源は、プロパン、ブタンおよびプロパン/ブタン混合物からなる群から選択される。プロパン/ブタン混合物は、そのようなものとして存在してもよいし、またはプロパンとブタンとの混合物からなってもよい。
【0019】
表現エタン、プロパン、ブタンおよびプロパン/ブタン混合物は、本発明の目的のためには、商業的に入手可能である、すなわち主として純製品(エタン、プロパン、ブタンまたは混合物としてのプロパン/ブタン)と、二次的に純製品そのものより軽質または重質である、他の飽和または不飽和炭化水素とからなる製品を意味すると理解される。
【0020】
本発明によるDCEの、およびDCEとは異なる少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の製造方法では、炭化水素源は、エチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物を生成する簡略化分解(工程a))にかけられる。
【0021】
表現簡略化分解(工程a))は、本発明の目的のためには、本発明による方法の工程b)で少なくとも画分A、BおよびCへ分離されるエチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物の形成をもたらす炭化水素源を処理するための工程全てを意味すると理解される。
【0022】
かかる分解は、それがエチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物の生成を可能にする限り、任意の公知の技法に従って実施されてもよい。有利には、分解は、水、酸素、硫黄誘導体および/または触媒などの第3化合物の存在下または不存在下での炭化水素源の熱分解(すなわち熱の作用下の転化)の第1分解工程を含む。熱分解のこの第1分解工程は有利には、分解生成物の混合物の形成を引き起こすために少なくとも1つの分解炉で実施される。
【0023】
分解生成物のこの混合物は有利には、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素、硫化水素、少なくとも1個の炭素原子を含む有機化合物、および水を含む。
【0024】
熱分解の第1分解工程は好ましくは、少なくとも2つの分解炉で、特に好ましくは少なくとも3つの分解炉で実施される。熱分解の第1分解工程は好ましくは、多くとも5つの分解炉で、特に好ましくは多くとも4つの分解炉で実施される。より特に有利には、使用中の炉の1つがデコーキング操作を受けなければならないときに当該炉と交換するために追加の分解炉が利用可能である。
【0025】
より特に好ましいやり方では、熱分解の第1分解工程は3つの分解炉で実施される。最も特に好ましいやり方では、熱分解の第1分解工程は3つの異なる分解炉で実施され、それらのそれぞれに由来する分解生成物の混合物は一緒に集められる。より特に有利には、使用中の3つの炉の1つがデコーキング操作を受けなければならないときに当該炉と交換するために第4の分解炉が利用可能である。
【0026】
3つの異なる分解炉で熱分解の第1分解工程を実施し、それらのそれぞれに由来する分解生成物の混合物が後で一緒に集められ、そして使用中の3つの炉の1つと交換するために第4の分解炉を利用可能にすることがそれ故特に有利である。
【0027】
熱分解のこの第1分解工程の後に、前記分解生成物の混合物は、エチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物を得ることを可能にする、有利には以下の工程からなる一連の処理工程にかけられる:分解ガスの熱の熱回収、任意選択的にガスの有機急冷(任意選択的に中間液体での交換器のネットワークにわたる熱の回収を含む)、水性急冷、ガスの圧縮および乾燥、ならびにまた(例えば、アルカリ性洗浄による)二酸化炭素の大部分と、存在するかまたは加えられる硫黄化合物の大部分との除去、任意選択的に、例えば、アセチレンなどの望ましくない誘導体の水素化および任意選択的に、例えばPSA(圧力スイング吸着)法によるかまたは膜処理による、水素および/またはメタンの幾らかの除去。
【0028】
有利には、本発明による方法では、工程a)に由来するエチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物は、水素、メタン、2〜7個の炭素原子を含む化合物、一酸化炭素、窒素および酸素を含む。水素、メタンおよびアセチレン以外の2〜7個の炭素原子を含む化合物は好ましくは、前記生成物の混合物の総体積に対して少なくとも200体積ppmの量で存在する。一酸化炭素、窒素、酸素およびアセチレンは、前記生成物の混合物の総体積に対して200体積ppm未満の量でまたは少なくとも200体積ppmの量で存在してもよい。7個超の炭素原子を含有する化合物、二酸化炭素、硫化水素および他の硫黄化合物ならびにまた水はまた、前記生成物の混合物の総体積に対して200体積ppm未満の量で上述の生成物の混合物中に存在してもよい。
【0029】
ガスの圧縮および乾燥は有利には、少なくとも6個の炭素原子を含む化合物の通過を最小限にするように、特定の条件下で行われてもよい。使用されてもよい冷却流体は有利には、大気冷却塔からの水の温度より低い温度でのものである。冷却流体は好ましくは少なくとも−5℃の、より好ましくは少なくとも0℃の温度でのものである。冷却流体は最も好ましくは氷水である。
【0030】
上に定義された工程a)の後に、エチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物は、工程b)によって少なくとも、エチレンの一部を含有する、エチレンより軽質である化合物に富む画分(画分A)へ、エチレンに富む画分(画分B)へ、および重質画分(画分C)へ分離される。
【0031】
表現「少なくとも画分Aへ、画分Bへおよび画分Cへ分離される」は、本発明の目的のためには、少なくともそれらの3つの画分A、BおよびCが工程b)後に得られること、しかし例えばエタンの個々の画分などの他の画分もまた得ることができることを意味すると理解される。
【0032】
エチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物は好ましくは、工程b)によって、エチレンの一部を含有する、エチレンより軽質である化合物に富む画分(画分A)へ、エチレンに富む画分(画分B)へ、任意選択的にエタンの個々の画分へおよび重質画分(画分C)へ分離される。
【0033】
より好ましくは、工程b)によって、エチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物は、画分Aへ、画分Bへおよび画分Cへ分離される。
【0034】
工程b)は有利には、エチレンを含有する少なくとも2つの画分、すなわち、画分Aおよび画分B、ならびに重質画分、すなわち、画分Cを得るために最大4つの、好ましくは最大3つの分離工程を含む。
【0035】
本発明による方法の工程b)の第1実施形態によれば、工程a)に由来する生成物の混合物は有利には、画分A、画分Bおよび画分Cを得るために工程S1と呼ばれる第1分離工程に、および工程S1’と呼ばれる第2分離工程にかけられる。
【0036】
工程S1は有利には、主塔(塔C1と呼ばれる)内部での3つの異なる画分、すなわち、塔C1のトップで出る画分A、塔C1のボトムで出る画分Cおよび塔C1の側面から抜き取られる画分(画分F1と呼ばれる)への工程a)に由来する生成物の混合物の分離にある。
【0037】
工程S1’は有利には、画分F1を2つの異なる画分、すなわち、塔C1に搬送される画分F1’と画分Bとへ分離することにある。
【0038】
本発明による方法の工程b)の第1実施形態によれば、工程b)はそれ故好ましくは:
− 主塔C1内部での塔C1のトップでの画分Aへの、塔C1のボトムでの画分Cへのおよび塔C1の側面から抜き取られる画分F1への前記生成物の混合物の分離にある第1分離工程S1と、
− 塔C1に搬送される画分F1’へのおよび画分Bへの画分F1の分離にある第2分離工程S1’と
を含む。
【0039】
特に好ましいやり方では、工程b)は上述の2つの工程を含むにすぎない。
【0040】
塔C1へのその導入の前に、工程a)に由来する生成物の混合物は、熱調節工程にかけられてもよい。表現熱調節工程は、エネルギーの使用を最適化する一連の熱交換、例えば、先ず冷却水で、次に氷冷水で、次に段々と冷えた流体で冷却される一連の交換器と、生成する流れの顕熱を回収するクロス交換器とでの生成物の混合物の漸次冷却を意味すると理解される。
【0041】
前記生成物の混合物は、単一画分としてかまたは幾つかのサブ画分として工程S1中に塔C1へ導入されてもよい。それは好ましくは幾つかのサブ画分として導入される。
【0042】
主塔C1は有利には、ストリッピング部および/または精留部を含む塔である。これらの2つの部分が存在する場合、精留部が好ましくはストリッピング部の上にある。
【0043】
塔C1は有利には、上述の2つの部分を含む蒸留塔およびこれら2つの部分の1つだけを含有する塔から選択される。好ましくは塔C1は蒸留塔である。
【0044】
工程S1はそれ故好ましくは蒸留工程である。
【0045】
塔C1は有利には、例えば少なくとも1つのリボイラーおよび少なくとも1つの凝縮器などの関連補助装置を備えつけられる。中間抜き取りおよび中間熱交換を可能にする装置が主塔に追加されてもよい。
【0046】
最も揮発性の化合物に富む画分Aは有利には塔C1のトップで出るが、揮発性が最も少ない化合物に富む画分Cは有利には塔C1のボトムで出る。
【0047】
画分F1に関しては、それは有利には、塔中を循環する液体またはスチームを集めることによって塔C1の側面から抜き取られる。この抜き取りは好ましくは液体に関して行われる。
【0048】
この抜き取りは、塔のストリッピング部でまたは精留部で行われてもよい。それは好ましくは精留部で行われる。精留部の中央第3番目での抜き取りが特に好ましい。精留部の中央第3番目での液体の抜き取りが最も特に好ましい。
【0049】
上述の工程S1は有利には、少なくとも8バール、好ましくは少なくとも10バール、特に好ましいやり方では少なくとも12バールの圧力で行われる。工程S1は有利には、高くても45バール、好ましくは高くても40バール、特に好ましいやり方では高くても38バールの圧力で行われる。
【0050】
工程S1が行われる温度は、塔C1のトップで、有利には少なくとも−100℃、好ましくは少なくとも−90℃、特に好ましいやり方では少なくとも−80℃である。それは、塔C1のトップで、有利には高くても−30℃、好ましくは高くても−40℃、特に好ましいやり方では高くても−50℃である。
【0051】
塔C1の側面から抜き取られる画分F1は有利には、2つの異なる画分、すなわち、塔C1に搬送される画分F1’と画分Bとへ分離されるように分離工程S1’にかけられる。
【0052】
画分F1は、液体状態でまたはガス状態で塔C1から抜き取られてもよい。
【0053】
画分F1が液体状態で抜き取られる場合、それは、エバポレーターにまたは補助塔C1’に搬送されてもよい。
【0054】
画分F1がエバポレーターに搬送される場合には、画分F1の一部は、画分F1’の形態で、有利には蒸発され、主塔C1にリサイクルされるが、他の部分は有利にはエバポレーターから抜き出され、こうして画分Bを構成する。変形として、画分F1はまた、画分Bを生成するために部分的に気化されてもよく、残りは、画分F1’の形態で、塔C1にリサイクルされる。
【0055】
画分F1が補助塔C1’に搬送される場合には、補助塔C1’は好ましくはストリッピング塔、すなわち、たった1つのストリッピング部を含む塔である。補助塔C1’は有利には、関連補助装置、好ましくはリボイラーを備えつけられる。画分Bは有利にはそれから抜き出され、画分F1の残りは、そのときエチレンより揮発性である不純物(H、CO、N、OおよびCH)が濃縮した流れである画分F1’の形態で、有利には塔C1に搬送される。
【0056】
画分F1が液体状態で抜き取られる場合、それは、好ましくはストリッピング塔である補助塔C1’に好ましくは搬送される。工程S1’はその結果この場合には好ましくはストリッピング工程である。
【0057】
画分F1がガス状態で抜き取られる場合、それは、凝縮器にかまたは補助塔C1’に搬送されてもよい。
【0058】
画分F1が凝縮器に搬送される場合には、画分F1の一部は、画分F1’の形態で、有利には凝縮され、主塔C1にリサイクルされるが、他の部分は有利には凝縮器から抜き出され、こうして画分Bを構成する。変形として、画分F1はまた、画分Bを生成するために部分的に凝縮されてもよく、残りは、画分F1’の形態で、塔C1にリサイクルされる。
【0059】
画分F1が補助塔C1’に搬送される場合には、補助塔C1’は好ましくは精留塔、すなわち、精留部のみを含む塔である。補助塔C1’は有利には、関連補助装置、好ましくは凝縮器を備えつけられる。画分Bは有利にはそれから抜き出され、画分F1の残りは、そのときエチレンより揮発性が少ない不純物(エタン、少なくとも3個の炭素原子を含有する化合物)が濃縮した流れである画分F1’の形態で、有利には塔C1に搬送される。
【0060】
画分F1がガス状態で抜き取られる場合、それは、好ましくは精留塔である補助塔C1’に好ましくは搬送される。工程S1’はその結果この場合には好ましくは精製工程である。
【0061】
本発明による方法の工程b)の第1実施形態によれば、画分F1が補助塔C1’に搬送される場合が最も特に好ましい。
【0062】
この最も特に好ましいものによれば、工程b)はそれ故特に好ましいやり方では:
− 主塔C1内部での塔C1のトップでの画分Aへの、塔C1のボトムでの画分Cへの、および塔C1の側面から抜き取られる画分F1への前記生成物の混合物の分離からなる第1分離工程S1と、
− 塔C1’内部での塔C1’のトップでの塔C1に搬送される画分F1’への、および塔C1’のボトムでの画分Bへの画分F1の分離からなる第2分離工程S1’と
を含む。
【0063】
本発明による方法の工程b)の第1実施形態によれば、画分F1が液体状態で塔C1から抜き取られ、そしてストリッピング塔である補助塔C1’に搬送される場合が真に最も特に好ましい。
【0064】
上述の工程S1’はそのとき有利には、少なくとも8バール、好ましくは少なくとも10バール、特に好ましいやり方では少なくとも12バールの圧力で行われる。工程S1’は有利には、高くても45バール、好ましくは高くても40バール、特に好ましいやり方では高くても38バールの圧力で行われる。
【0065】
工程S1’が行われる温度は、ストリッピング塔C1’のトップで、有利には少なくとも−70℃、好ましくは少なくとも−65℃、特に好ましいやり方では少なくとも−60℃である。それは、塔C1’のトップで、有利には高くても0℃、好ましくは高くても−10℃、特に好ましいやり方では高くても−15℃である。
【0066】
ストリッピング塔C1’のボトムでの温度は、少なくとも−30℃、好ましくは少なくとも−20℃、特に好ましいやり方では少なくとも−15℃である。それは、有利には高くても20℃、好ましくは高くても15℃、特に好ましいやり方では高くても10℃である。
【0067】
本発明による方法の工程b)の第1実施形態によれば、画分Bは有利には、画分F1が液体状態で抜き取られる場合には蒸発および膨張後に、または画分F1がガス状態で抜き取られる場合には膨張後に、両場合とも有利にはエネルギーを回収して、1,2−ジクロロエタンの製造に、または1,2−ジクロロエタンとは異なる少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の製造に搬送される。特に好ましいやり方では、画分Bは、画分F1が液体状態で抜き取られる場合には蒸発および膨張後に、有利にはエネルギーを回収して、1,2−ジクロロエタンの製造に、または1,2−ジクロロエタンとは異なる少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の製造に搬送される。
【0068】
本発明による方法の工程b)の第1実施形態の好ましい亜変形は、両塔が任意選択的に熱的に統合され、異なる圧力で動作し;1方の凝縮器が他方へのリボイラーとして働く、主塔C1と同一の補助塔C1’を用いて分離工程S1’を実施することである。
【0069】
本発明による方法の工程b)の第2実施形態によれば、工程a)に由来する生成物の混合物は有利には、画分A、画分Bおよび画分Cを得るために画分工程S2と呼ばれる第1分離工程に、工程S2’と呼ばれる第2分離工程に、および工程S2”と呼ばれる第3分離工程にかけられる。
【0070】
工程S2は有利には、塔(塔C2と呼ばれる)における2つの異なる画分、すなわち、塔C2のトップで出る画分F2と塔C2のボトムで出る画分Cとへの工程a)に由来する生成物の混合物の分離にある。
【0071】
工程S2’は有利には、2つの異なる画分、すなわち、画分Aと画分F2’とへの画分F2の分離にある。
【0072】
工程S2”は有利には、2つの異なる画分、すなわち、画分Bと画分F2”とへの画分F2’の分離にある。
【0073】
本発明による方法の工程b)の第2実施形態によれば、工程b)はそれ故好ましくは:
− 主塔C2における塔C2のトップでの画分F2へのおよび塔C2のボトムでの画分Cへの前記生成物の混合物の分離にある第1分離工程S2と、
− 画分Aへのおよび画分F2’への画分F2の分離にある第2分離工程S2’と、
− 画分Bへのおよび画分F2”への画分F2’の分離にある第3分離工程S2”と
を含む。
【0074】
特に好ましいやり方では、工程b)は上述の3つの工程を含むにすぎない。
【0075】
塔C2へのその導入の前に、工程a)に由来する生成物の混合物は、その定義が塔C1の説明において見いだされ得る、熱調節工程にかけられてもよい。
【0076】
前記生成物の混合物は、単一画分としてかまたは幾つかのサブ画分として工程S2中に塔C2へ導入されてもよい。それは好ましくは幾つかのサブ画分として導入される。
【0077】
主塔C2は有利には、ストリッピング部および/または精留部を含む塔である。これらの2つの部分が存在する場合、精留部が好ましくはストリッピング部の上にある。
【0078】
塔C2は有利には、上述の2つの部分を含む蒸留塔およびこれら2つの部分の1つだけを含む塔から選択される。好ましくは、塔C2は蒸留塔である。
【0079】
工程S2はそれ故好ましくは蒸留工程である。
【0080】
塔C2は有利には、例えば少なくとも1つのリボイラーおよび少なくとも1つの凝縮器などの関連補助装置を備えつけられる。
【0081】
最も揮発性の化合物に富む画分F2は有利には塔C2のトップで出るが、揮発性が最も少ない化合物に富む画分Cは有利には塔C2のボトムで出る。
【0082】
上述の工程S2は有利には、少なくとも15バール、好ましくは少なくとも20バール、特に好ましいやり方では少なくとも25バールの圧力で行われる。工程S2は有利には、高くても45バール、好ましくは高くても40バール、特に好ましいやり方では高くても38バールの圧力で行われる。
【0083】
工程S2が行われる温度は、塔C2のトップで、有利には少なくとも−70℃、好ましくは少なくとも−65℃、特に好ましいやり方では少なくとも−60℃である。それは、塔C2のトップで、有利には高くても−20℃、好ましくは高くても−30℃、特に好ましいやり方では高くても−40℃である。
【0084】
塔C2のトップで出る画分F2は有利には、2つの異なる画分、すなわち、画分Aと画分F2’とへ分離されるように分離工程S2’にかけられる。
【0085】
分離工程S2’は有利には、画分F2が溶媒を含有する洗浄剤と接触させられる吸収工程である。
【0086】
本説明では、用語「溶媒を含有する洗浄剤」またはより簡単に「洗浄剤」は、溶媒が液体状態で存在する組成物を意味すると理解される。
【0087】
本発明に従って使用されてもよい洗浄剤はそれ故有利には、液体状態で溶媒を含有する。前記洗浄剤中の、他の化合物の存在は、本発明の範囲から決して排除されない。しかしながら、洗浄剤が少なくとも50体積%、より特に少なくとも65体積%、特に好ましいやり方では少なくとも70体積%の溶媒を含有することが好ましい。
【0088】
溶媒は有利には、アルコール、グリコール、ポリオール、エーテル、グリコールとエーテルとの混合物、炭化水素、炭化水素の混合物、鉱油ならびにDCEの中から選択される。炭化水素混合物の例は、C4、C5およびC6カットである。溶媒は好ましくは、アルコール、炭化水素、炭化水素の混合物、鉱油およびDCEの中から、より好ましくは共沸エタノール(有利には少なくとも70体積%、好ましくは少なくとも80体積%、より好ましくは少なくとも85体積%のエタノールの水性エタノール)およびDCEの中から選択される。溶媒は最も好ましくはDCEである。
【0089】
工程S2’のために使用される洗浄剤は、任意の起源の新鮮洗浄剤からなり、例えば粗共沸エタノールまたはオキシ塩素化装置を出たDCEであり、そしてそれらは精製されておらず、前記洗浄剤は、前もって精製されるか、洗浄剤は、下に詳述される工程S2”中に回収され、任意選択的に新鮮洗浄剤で補足される。
【0090】
好ましくは、工程S2’のために使用される洗浄剤は、任意選択的に新鮮洗浄剤で補足された、画分F2”からなる。特に好ましいやり方では、工程S2’のために使用される洗浄剤は、(工程S2’およびS2”中の洗浄剤の損失を補うために)新鮮洗浄剤で補足された画分F2”からなる。
【0091】
DCEが溶媒として使用されるときの本発明による方法の主な利点は、DCEがオキシ塩素化または塩素化中に主として形成される化合物であるので、このDCEの存在が全く厄介ではないという事実にある。
【0092】
洗浄剤および画分F2から抜き出されるべきエチレンのそれぞれのスループット間の比は、決定的に重要であるわけではなく、大幅に変わることができる。それは実際に、洗浄剤の再生のコストによって制限されるにすぎない。一般に、洗浄剤のスループットは、画分F2から抜き出されるべきエチレンの1トン当たり少なくとも1トン、好ましくは少なくとも5トン、特に好ましいやり方では少なくとも10トンである。一般に、洗浄剤のスループットは、画分F2から抜き出されるべきエチレンの1トン当たり多くとも100トン、好ましくは多くとも50トン、特に好ましいやり方では多くとも25トンである。
【0093】
工程S2’は有利には、例えば流下膜もしくは上昇膜吸収装置またはプレート塔、充填塔、構造化充填剤の塔、上述のインターナルの1つ以上を組み合わせた塔およびスプレー塔から選択される吸収塔C2’のような吸収装置を用いて行われる。工程S2’は好ましくは、吸収塔C2’を用いて、特に好ましいやり方ではプレート吸収塔C2’を用いて行われる。
【0094】
塔C2’は有利には、例えば、少なくとも1つの凝縮器または塔の内部もしくは外部の1つの冷却器などの関連補助装置を備えつけられる。
【0095】
上述の工程S2’は有利には、少なくとも15バール、好ましくは少なくとも20バール、特に好ましいやり方では少なくとも25バールの圧力で行われる。工程S2’は有利には、高くても40バール、好ましくは高くても35バール、特に好ましいやり方では高くても30バールの圧力で行われる。
【0096】
工程S2’が行われる温度は、吸収装置のまたは塔C2’のトップで、有利には少なくとも−10℃、好ましくは少なくとも0℃、特に好ましくは少なくとも10℃である。それは、吸収装置のまたは塔C2’のトップで、有利には高くても60℃、好ましくは高くても50℃、特に好ましくは高くても40℃である。
【0097】
吸収装置または塔C2’のボトムでの温度は、少なくとも0℃、好ましくは少なくとも10℃、特に好ましいやり方では少なくとも20℃である。それは有利には高くても70℃、好ましくは高くても60℃、特に好ましいやり方では高くても50℃である。
【0098】
画分F2’は有利には、2つの異なる画分、すなわち、画分Bと画分F2”とへ分離されるように分離工程S2”にかけられる。
【0099】
分離工程S2”は有利には、画分Bが洗浄剤から抜き出される脱着工程である。
【0100】
画分F2”を構成する工程S2”後に回収される洗浄剤は取り除かれ、任意選択的に、必要な場合中間のさらなる処理ありで、存在するとき完全にまたは部分的にオキシ塩素化セクションにまたは塩素化セクションに搬送されても、または新鮮洗浄剤を任意選択的に添加して工程S2’に搬送されてもよい。好ましくは、画分F2”は、新鮮洗浄剤を任意選択的に添加して工程S2’に搬送される。特に好ましいやり方では、画分F2”は、新鮮洗浄剤を任意選択的に添加して工程S2’に搬送される。
【0101】
工程S2”は有利には、例えば流下膜もしくは上昇膜脱着装置、リボイラーまたはプレート塔、充填塔、構造化充填剤の塔、上述のインターナルの1つ以上を組み合わせた塔およびスプレー塔から選択される脱着塔C2”のような脱着装置を用いて行われる。工程S2”は好ましくは、脱着塔C2”を用いて、特に好ましいやり方ではプレート脱着塔C2”を用いて行われる。
【0102】
塔C2”は有利には、例えば、少なくとも1つの凝縮器または塔の内部もしくは外部の1つの冷却器および少なくとも1つのリボイラーなどの関連補助装置を備えつけられる。
【0103】
上述の工程S2”は有利には、少なくとも1バール、好ましくは少なくとも2バール、特に好ましいやり方では少なくとも3バールの圧力で行われる。工程S2”は有利には、高くても20バール、好ましくは高くても15バール、特に好ましいやり方では高くても10バールの圧力で行われる。
【0104】
工程S2”が行われる温度は有利には、画分F2’中に含有されるエチレンの90%超、好ましくは95%超が画分B中に見いだされるように選択される。工程S2”が行われる温度は、脱着装置のまたは塔C2”のトップで、有利には少なくとも−10℃、好ましくは少なくとも0℃、特に好ましいやり方では少なくとも10℃である。それは、脱着装置または塔C2”のトップで、有利には高くても60℃、好ましくは高くても50℃、特に好ましいやり方では高くても40℃である。
【0105】
脱着装置または塔C2”のボトムでの温度は、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも80℃、特に好ましいやり方では少なくとも100℃である。それは、有利には高くても200℃、好ましくは高くても160℃、特に好ましいやり方では高くても150℃である。
【0106】
本発明による方法の工程b)の第2実施形態によれば、画分F2が吸収塔C2’に搬送され、そして画分F2’が脱着塔C2”に搬送される場合が最も特に好ましい。
【0107】
この最も特に好ましいものによれば、工程b)はそれ故特に好ましいやり方では:
− 主塔C2における塔C2のトップでの画分F2へのおよび塔C2のボトムでの画分Cへの前記生成物の混合物の分離にある第1分離工程S2と、
− 吸収塔C2’における塔C2’のトップでの画分Aへのおよび塔C2’のボトムでの画分F2’への画分F2の分離にある第2分離工程S2’と、
− 脱着塔C2”における塔C2”のトップでの画分Bへのおよび塔C2”のボトムでの画分F2”への画分F2’の分離にある第3分離工程S2”と
を含む。
【0108】
本発明による方法の工程b)の第3実施形態によれば、工程a)に由来する生成物の混合物は有利には、画分A、画分Bおよび画分Cを得るために工程S3と呼ばれる第1分離工程に、および工程S3’と呼ばれる第2分離工程にかけられる。
【0109】
工程S3は有利には、主塔(塔C3と呼ばれる)における2つの異なる画分、すなわち、塔C3のトップで出る画分F3と塔C3のボトムで出る画分Cとへの工程a)に由来する生成物の混合物の分離にある。
【0110】
工程S3’は有利には、塔C3’における2つの異なる画分、すなわち、塔C3’のトップで出る画分Aと塔C3’のボトムで出る画分Bとへの画分F3の分離にある。
【0111】
本発明による方法の工程b)の第3実施形態によれば、工程b)はそれ故好ましくは:
− 主塔3における塔C3のトップでの画分F3へのおよび塔C3のボトムでの画分Cへの前記生成物の混合物の分離にある第1分離工程S3と、
− 塔C3’における塔C3’のトップでの画分Aへのおよび塔C3’のボトムでの画分Bへの画分F3の分離にある第2分離工程S3’と
を含む。
【0112】
特に好ましいやり方では、工程b)は上述の2つの工程を含むにすぎない。
【0113】
塔C3へのその導入の前に、工程a)に由来する生成物の混合物は、その定義が塔C1の説明において見いだされ得る、熱調節工程にかけられてもよい。
【0114】
前記生成物の混合物は、単一画分としてかまたは幾つかのサブ画分として工程S3中に塔C3へ導入されてもよい。それは好ましくは幾つかのサブ画分として導入される。
【0115】
主塔C3は有利には、ストリッピング部および/または精留部を含む塔である。これらの2つの部分が存在する場合、精留部が好ましくはストリッピング部の上にある。
【0116】
塔C3は有利には、上述の2つの部分を含む蒸留塔およびこれら2つの部分の1つだけを含有する塔から選択される。好ましくは、塔C3は蒸留塔である。
【0117】
工程S3はそれ故好ましくは蒸留工程である。
【0118】
塔C3は有利には、例えば、少なくとも1つのリボイラーおよび少なくとも1つの凝縮器などの関連補助装置を備えつけられる。
【0119】
最も揮発性の化合物に富む画分F3は有利には塔C3のトップで出るが、揮発性が最も少ない化合物に富む画分Cは有利には塔C3のボトムで出る。
【0120】
上述の工程S3は有利には、少なくとも8バール、好ましくは少なくとも10バール、特に好ましいやり方では少なくとも12バールの圧力で行われる。工程S3は有利には、高くても45バール、好ましくは高くても40バール、特に好ましいやり方では高くても38バールの圧力で行われる。
【0121】
工程S3が行われる温度は、塔C3のトップで、有利には少なくとも−100℃、好ましくは少なくとも−90℃、特に好ましいやり方では少なくとも−80℃である。それは、塔C3のトップで、有利には高くても−20℃、好ましくは高くても−30℃、特に好ましいやり方では高くても−40℃である。
【0122】
塔C3のトップで出る画分F3は次に有利には、2つの異なる画分、すなわち、塔C3’のトップでの画分Aと塔C3’のボトムでの画分Bとへ分離されるように塔C3’で分離工程S3’にかけられる。
【0123】
塔C3’は有利には、ストリッピング部および/または精留部を含む塔である。これらの2つの部分が存在する場合、精留部が好ましくはストリッピング部の上にある。
【0124】
塔C3’は有利には、上述の2つの部分を含む蒸留塔およびこれら2つの部分の1つだけを含む塔から選択される。好ましくは、塔C3’は蒸留塔である。
【0125】
工程S3’はそれ故好ましくは蒸留工程である。
【0126】
塔C3’は有利には、例えば、少なくとも1つのリボイラーおよび少なくとも1つの凝縮器などの関連補助装置を備えつけられる。
【0127】
上述の工程S3’は有利には、少なくとも8バール、好ましくは少なくとも10バール、特に好ましいやり方では少なくとも12バールの圧力で行われる。工程S3’は有利には、高くても40バール、好ましくは高くても37バール、特に好ましいやり方では高くても35バールの圧力で行われる。
【0128】
工程S3’が行われる温度は、塔C3’のトップで、有利には少なくとも−90℃、好ましくは少なくとも−85℃、特に好ましくは少なくとも−80℃である。それは、塔C3’のトップで、有利には高くても−40℃、好ましくは高くても−45℃、特に好ましくは高くても−50℃である。
【0129】
塔C3’のボトムでの温度は、少なくとも−30℃、好ましくは少なくとも−25℃、特に好ましいやり方では少なくとも−20℃である。それは、有利には高くても20℃、好ましくは高くても15℃、特に好ましいやり方では高くても10℃である。
【0130】
本発明による方法の工程b)の第4実施形態によれば、工程a)に由来する生成物の混合物は有利には、画分A、画分Bおよび画分Cを得るために工程S4と呼ばれる第1分離工程に、および工程S4’と呼ばれる第2分離工程にかけられる。
【0131】
工程S4は有利には、主塔(塔C4と呼ばれる)における2つの異なる画分、すなわち、塔C4のトップで出る画分Aと塔C4のボトムで出る画分F4とへの工程a)に由来する生成物の混合物の分離にある。
【0132】
工程S4’は有利には、塔C4’における2つの異なる画分、すなわち、塔C4’のトップで出る画分Bと塔C4’のボトムで出る画分Cとへの画分F4の分離にある。
【0133】
本発明による方法の工程b)の第4実施形態によれば、工程b)はそれ故好ましくは:
− 主塔C4における塔C4のトップでの画分Aへのおよび塔C4のボトムでの画分F4への前記生成物の混合物の分離にある第1分離工程S4と、
− 塔C4’における塔C4’のトップでの画分Bへのおよび塔C4’のボトムでの画分Cへの画分F4の分離にある第2分離工程S4’と
を含む。
【0134】
特に好ましいやり方では、工程b)は上述の2つの工程を含むにすぎない。
【0135】
塔C4へのその導入の前に、工程a)に由来する生成物の混合物は、その定義が塔C1の説明において見いだされ得る、熱調節工程にかけられてもよい。
【0136】
前記生成物の混合物は、単一画分としてかまたは幾つかのサブ画分として工程S4中に塔C4へ導入されてもよい。それは好ましくは幾つかのサブ画分として導入される。
【0137】
主塔C4は有利には、ストリッピング部および/または精留部を含む塔である。これらの2つの部分が存在する場合、精留部が好ましくはストリッピング部の上にある。
【0138】
塔C4は有利には、上述の2つの部分を含む蒸留塔およびこれら2つの部分の1つだけを含む塔から選択される。好ましくは、塔C4は蒸留塔である。
【0139】
工程S4はそれ故好ましくは蒸留工程である。
【0140】
塔C4は有利には、例えば、少なくとも1つのリボイラーおよび少なくとも1つの凝縮器などの関連補助装置を備えつけられる。
【0141】
最も揮発性の化合物に富む画分Aは有利には塔C4のトップで出るが、揮発性が最も少ない化合物に富む画分F4は有利には塔C4のボトムで出る。
【0142】
上述の工程S4は有利には、少なくとも8バール、好ましくは少なくとも10バール、特に好ましいやり方では少なくとも12バールの圧力で行われる。工程S4は有利には、高くても45バール、好ましくは高くても40バール、特に好ましいやり方では高くても38バールの圧力で行われる。
【0143】
工程S4が行われる温度は、塔C4のトップで、有利には少なくとも−100℃、好ましくは少なくとも−90℃、特に好ましいやり方では少なくとも−80℃である。それは、塔C4のトップで、有利には高くても−20℃、好ましくは高くても−30℃、特に好ましいやり方では高くても−40℃である。
【0144】
塔C4のボトムで出る画分F4は次に有利には、2つの異なる画分、すなわち、塔C4’のトップでの画分Bと塔C4’のボトムでの画分Cとへ分離されるように塔C4’での分離工程S4’にかけられる。
【0145】
塔C4’は有利には、ストリッピング部および/または精留部を含む塔である。これらの2つの部分が存在する場合、精留部が好ましくはストリッピング部の上にある。
【0146】
塔C4’は有利には、上述の2つの部分を含む蒸留塔およびこれら2つの部分の1つだけを含む塔から選択される。好ましくは、塔C4’は蒸留塔である。
【0147】
工程S4’はそれ故好ましくは蒸留工程である。
【0148】
塔C4’は有利には、例えば、少なくとも1つのリボイラーおよび少なくとも1つの凝縮器などの関連補助装置を備えつけられる。
【0149】
上述の工程S4’は有利には、少なくとも8バール、好ましくは少なくとも10バール、特に好ましいやり方では少なくとも12バールの圧力で行われる。工程S4’は有利には、高くても40バール、好ましくは高くても37バール、特に好ましいやり方では高くても35バールの圧力で行われる。
【0150】
工程S4’が行われる温度は、塔C4’のトップで、有利には少なくとも−70℃、好ましくは少なくとも−65℃、特に好ましいやり方では少なくとも−60℃である。それは、塔C4’のトップで、有利には高くても0℃、好ましくは高くても−5℃、特に好ましいやり方では高くても−10℃である。
【0151】
塔C4’のボトムでの温度は、少なくとも−20℃、好ましくは少なくとも−15℃、特に好ましいやり方では少なくとも−10℃である。それは、有利には高くても20℃、好ましくは高くても15℃、特に好ましいやり方では高くても10℃である。
【0152】
本発明による方法の工程b)の第5実施形態によれば、工程a)に由来する生成物の混合物は有利には、画分A、画分Bおよび画分Cを得るために工程S5と呼ばれる第1分離工程に、工程S5’と呼ばれる第2分離工程に、および工程S5”と呼ばれる第3分離工程にかけられる。
【0153】
工程S5は有利には、2つの異なる画分、すなわち、塔C5のトップで出る画分Aと塔C5のボトムで出る画分F5とへの主塔(塔C5と呼ばれる)での工程a)に由来する生成物の混合物の分離にある。
【0154】
工程S5’は有利には、2つの異なる画分、すなわち、塔C5’のトップで出る画分F5’と塔C5’のボトムで出る画分Cとへの塔C5’での画分F5の分離にある。
【0155】
工程S5”は有利には、2つの異なる画分、すなわち、塔C5”のトップで出る画分Bと塔C5”のボトムで出る画分F5”とへの塔C5”での画分F5’の分離にある。
【0156】
本発明による方法の工程b)の第5実施形態によれば、工程b)はそれ故好ましくは:
− 主塔C5における塔C5のトップでの画分Aへのおよび塔C5のボトムでの画分F5への前記生成物の混合物の分離にある第1分離工程S5と、
− 塔C5’における塔C5’のトップでの画分F5’へのおよび塔C5’のボトムでの画分Cへの画分F5の分離にある第2分離工程S5’と、
− 塔C5”における塔C5”のトップでの画分Bへのおよび塔C5”のボトムでの画分F5”への画分F5’の分離にある第3分離工程S5”と
を含む。
【0157】
特に好ましいやり方では、工程b)は上述の3つの分離工程を含むにすぎない。
【0158】
塔C5へのその導入の前に、工程a)に由来する生成物の混合物は、その定義が塔C1の説明において見いだされ得る、熱調節工程にかけられてもよい。
【0159】
前記生成物の混合物は、単一画分としてかまたは幾つかのサブ画分として工程S5中に塔C5へ導入されてもよい。それは好ましくは幾つかのサブ画分として導入される。
【0160】
主塔C5は有利には、ストリッピング部および/または精留部を含む塔である。これらの2つの部分が存在する場合、精留部が好ましくはストリッピング部の上にある
【0161】
塔C5は有利には、上述の2つの部分を含む蒸留塔およびこれら2つの部分の1つだけを含む塔から選択される。好ましくは、塔C5は蒸留塔である。
【0162】
工程S5はそれ故好ましくは蒸留工程である。
【0163】
塔C5は有利には、例えば、少なくとも1つのリボイラーおよび少なくとも1つの凝縮器などの関連補助装置を備えつけられる。
【0164】
画分Aは有利には塔C5のトップから出るが、有利には少なくとも揮発性の化合物に富む、画分F5は有利には塔C5のボトムから出る。
【0165】
上述の工程S5は有利には、少なくとも5バール絶対、好ましくは少なくとも10バール絶対、特に好ましくは少なくとも12バール絶対の圧力で実施される。工程S5は有利には、高くても40バール絶対、好ましくは高くても38バール絶対、特に好ましくは高くても36バール絶対の圧力で実施される。
【0166】
工程S5が実施される温度は、塔C5のボトムで有利には少なくとも0℃、好ましくは少なくとも5℃、特に好ましくは少なくとも10℃である。それは、塔C5のボトムで有利には高くても80℃、好ましくは高くても60℃、特に好ましくは高くても40℃である。
【0167】
工程S5が実施される温度は、塔C5のトップで有利には少なくとも−70℃、好ましくは少なくとも−60℃、特に好ましくは少なくとも−55℃である。それは、塔C5のトップで有利には高くても0℃、好ましくは高くても−15℃、特に好ましくは高くても−25℃である。
【0168】
塔C5のボトムで出る画分F5は次に有利には、画分F5を塔C5’内部で画分F5’へおよび重質画分(画分C)へ分離することからなる第2分離工程S5’にかけられる。
【0169】
塔C5’へのその導入の前に、生成物の混合物は、例えば、アセチレン水素化などの、熱および/または化学的調節工程にかけられてもよい。用語「熱調節工程」は、エネルギーの使用を最適化する一連の熱交換、例えば、先ず冷却水で、次に氷冷水で、次に段々と冷えた液体で冷却される一連の交換器と、生成する流れの顕熱を回収するクロス交換器とでの生成物の混合物の漸次冷却を意味すると理解される。
【0170】
前記生成物の混合物は、単一画分としてかまたは幾つかのサブ画分として工程S5’中に塔C5’へ導入されてもよい。それは好ましくは幾つかのサブ画分として導入される。
【0171】
塔C5’は有利には、ストリッピング部および/または精留部を含む塔である。両部分が存在する場合、精留部が好ましくはストリッピング部の上にある。
【0172】
塔C5’は有利には、上述の2つの部分を含む蒸留塔およびこれら2つの部分の1つを含むにすぎない塔から選択される。好ましくは、塔C5’は蒸留塔である。
【0173】
工程S5’はそれ故好ましくは蒸留工程である。
【0174】
塔C5’は有利には、例えば、少なくとも1つのリボイラーおよび少なくとも1つの凝縮器などの関連補助装置を備えつけられる。
【0175】
有利には最も揮発性の化合物に富む、画分F5’は、有利には塔C5’のトップから出るが、有利には揮発性が最も少ない化合物に富む、重質画分Cは、有利には塔C5’のボトムから出る。
【0176】
上述の工程S5’は有利には、少なくとも5バール絶対、好ましくは少なくとも8バール絶対、特に好ましくは少なくとも10バール絶対の圧力で実施される。工程S5’は有利には、高くても40バール絶対、好ましくは高くても37バール絶対、特に好ましくは高くても35バール絶対の圧力で実施される。
【0177】
工程S5’が実施される温度は、塔C5’のボトムで、有利には少なくとも0℃、好ましくは少なくとも10℃、特に好ましくは少なくとも15℃である。それは、塔C5’のボトムで、有利には高くても90℃、好ましくは高くても86℃、特に好ましくは高くても83℃である。
【0178】
工程S5’が実施される温度は、塔C5’のトップで、有利には少なくとも−65℃、好ましくは少なくとも−55℃、特に好ましくは少なくとも−50℃である。それは、塔C5’のトップで、有利には高くても5℃、好ましくは高くても0℃、特に好ましくは高くても−2℃である。
【0179】
画分F5’は、画分F5’を塔C5”内部でエチレンに富む画分(画分B)へおよびエタンから主としてなる画分F5”へ分離することからなる第3分離工程S5”にかけられる。
【0180】
塔C5”へのその導入の前に、生成物の混合物は、例えば、アセチレン水素化などの、熱および/または化学的調節工程にかけられてもよい。用語「熱調節工程」は、エネルギーの使用を最適化する一連の熱交換、例えば、先ず冷却水で、次に氷冷水で、次に段々と冷えた液体で冷却される一連の交換器と、生成する流れの顕熱を回収するクロス交換器とでの生成物の混合物の漸次冷却を意味すると理解される。
【0181】
前記生成物の混合物は、単一画分としてかまたは幾つかのサブ画分として工程S5”中に塔C5”へ導入されてもよい。それは好ましくは幾つかのサブ画分として導入される。
【0182】
主塔C5”は有利には、ストリッピング部および/または精留部を含む塔である。両部分が存在する場合、精留部が好ましくはストリッピング部の上にある。
【0183】
塔C5”は有利には、上述の2つの部分を含む蒸留塔およびこれら2つの部分の1つを含むにすぎない塔から選択される。好ましくは、塔C5”は蒸留塔である。
【0184】
工程S5”はそれ故好ましくは蒸留工程である。
【0185】
画分Bは有利には塔のトップから出るが、エタンから主としてなる、画分F5”は有利には塔のボトムから出る。
【0186】
上述の工程S5”は有利には、少なくとも5バール絶対、好ましくは少なくとも6バール絶対、特に好ましくは少なくとも7バール絶対の圧力で実施される。工程S5”は有利には、高くても30バール絶対、好ましくは高くても25バール絶対、特に好ましくは高くても22バール絶対の圧力で実施される。
【0187】
工程S5”が実施される温度は、塔C5のボトムで有利には少なくとも−50℃、好ましくは少なくとも−45℃、特に好ましくは少なくとも−40℃である。それは、塔C5”のボトムで有利には高くても10℃、好ましくは高くても0℃、特に好ましくは高くても−5℃である。
【0188】
工程S5”が実施される温度は、塔C5”のトップで有利には少なくとも−70℃、好ましくは少なくとも−65℃、特に好ましくは少なくとも−60℃である。それは、塔C5”のトップで有利には高くても−15℃、好ましくは高くても−20℃、特に好ましくは高くても−25℃である。
【0189】
本発明による方法では、蒸留塔の使用が述べられるたびに、それは、プレート蒸留塔、充填蒸留塔、構造化充填剤の蒸留塔および上述のインターナルの2つ以上を組み合わせた蒸留塔から選択されてもよい。
【0190】
本発明による方法の異なる実施形態による分離工程は有利には熱的に統合される。熱的統合は好ましくは、直接にか、多かれ少なかれ冷たい温度レベルの1つ以上の冷凍サイクル、好ましくは低温での1つと中温での他方との2つの冷凍サイクルによってか、それらの組み合わせによってかのどれかで、より好ましくはそれらの組み合わせによって行われる。
【0191】
冷凍サイクルは有利には、2個の炭素原子を含有する化合物、3個の炭素原子を含有する化合物またはそれらの混合物をベースとしている。2個の炭素原子を含有する化合物の中には、エチレン、エタンおよびそれらの混合物が挙げられてもよい。エチレンが好ましい。3個の炭素原子を含有する化合物の中には、プロピレン、プロパンおよびそれらの混合物が挙げられてもよい。プロピレンが好ましい。
【0192】
低温サイクルおよび中温サイクルは好ましくは相互連結され、それは、低温サイクルの高熱源が中温サイクルの冷熱源であり、そして一方中温サイクルの高熱源が大気冷却塔からの水であることを意味する。低温サイクルは好ましくは2個の炭素原子の化合物を使用し、より好ましくは少なくとも95モル%のエチレンンを含有する。中温サイクルは好ましくは3個の炭素原子の化合物を使用し、より好ましくは少なくとも95モル%のプロパンまたは少なくとも95モル%のプロピレンを含有する。より好ましくは、中温サイクルは少なくとも95モル%のプロピレンを含有する。
【0193】
本発明による方法の工程b)の第6実施形態によれば、工程a)に由来する生成物の混合物は有利には、画分A、画分Bおよび画分Cを得るために工程S6と呼ばれる一分離工程にかけられる。
【0194】
工程S6は有利には、主塔(塔C6と呼ばれる)内部での3つの異なる画分、すなわち、塔C6のトップで出る画分A、塔C6のボトムで出る画分Cおよび塔C6の側面から抜き取られる画分Bへの工程a)に由来する生成物の混合物の分離にある。
【0195】
本発明による方法の工程b)の第6実施形態によれば、工程b)はそれ故好ましくは、主塔C6内部での塔C6のトップでの画分Aへの、塔C6のボトムでの画分Cへの、塔C6の側面から抜き取られる画分Bへの前記生成物の混合物の分離にある一分離工程S6を含む。
【0196】
塔C6へのその導入の前に、工程a)に由来する生成物の混合物は、熱調節工程にかけられてもよい。表現熱調節工程は、エネルギーの使用を最適化する一連の熱交換、例えば、先ず冷却水で、次に氷冷水で、次に段々と冷えた流体で冷却される一連の交換器と、生成する流れの顕熱を回収するクロス交換器とでの生成物の混合物の漸次冷却を意味すると理解される。
【0197】
前記生成物の混合物は、単一画分としてかまたは幾つかのサブ画分として工程S6中に塔C6へ導入されてもよい。それは好ましくは幾つかのサブ画分として導入される。
【0198】
主塔C6は有利には、ストリッピング部および/または精留部を含む塔である。これらの2つの部分が存在する場合、精留部が好ましくはストリッピング部の上にある。
【0199】
塔C6は有利には、上述の2つの部分を含む蒸留塔およびこれら2つの部分の1つだけを含む塔から選択される。好ましくは、塔C6は蒸留塔である。
【0200】
蒸留塔C6は、従来の蒸留塔および分割壁塔から選択することができる。
【0201】
蒸留塔が分割壁塔である場合には、供給物は有利には分割壁部分に導入され、側流は、供給物が導入されるゾーン以外のゾーンで分割壁部分から抜き取られる。
【0202】
より好ましくは、塔C6は従来の蒸留塔である。
【0203】
工程S6はそれ故好ましくは蒸留工程である。
【0204】
塔C6は有利には、例えば少なくとも1つのリボイラーおよび少なくとも1つの凝縮器などの関連補助装置を備えつけられる。中間抜き取りおよび中間熱交換を可能にする装置が主塔に追加されてもよい。
【0205】
最も揮発性の化合物に富む画分Aは有利には塔C6のトップで出るが、揮発性が最も少ない化合物に富む画分Cは有利には塔C6のボトムで出る。
【0206】
画分Bに関しては、それは有利には、塔中を循環する液体またはスチームを集めることによって塔C6の側面から抜き取られる。この抜き取りは好ましくは液体に関して行われる。
【0207】
この抜き取りは、塔のストリッピング部でまたは精留部で行われてもよい。それは好ましくは精留部で行われる。精留部の中央第3番目での抜き取りが特に好ましい。精留部の中央第3番目での液体の抜き取りが最も特に好ましい。
【0208】
上述の工程S6は有利には、少なくとも8バール、好ましくは少なくとも10バール、特に好ましいやり方では少なくとも12バールの圧力で行われる。工程S6は有利には、高くても45バール、好ましくは高くても40バール、特に好ましいやり方では高くても38バールの圧力で行われる。
【0209】
工程S6が行われる温度は、塔C6のトップで、有利には少なくとも−100℃、好ましくは少なくとも−90℃、特に好ましいやり方では少なくとも−80℃である。それは、塔C6のトップで、有利には高くても−30℃、好ましくは高くても−40℃、特に好ましいやり方では高くても−50℃である。
【0210】
本発明による方法の工程b)の第6実施形態によれば、画分Bは有利には、画分Bが液体状態で抜き取られる場合には蒸発および膨張後に、または画分Bがガス状態で抜き取られる場合には膨張後に、両場合とも有利にはエネルギーを回収して、1,2−ジクロロエタンの製造に、または1,2−ジクロロエタンとは異なる少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の製造に搬送される。特に好ましいやり方では、画分Bは、画分Bが液体状態で抜き取られる場合には蒸発および膨張後に、有利にはエネルギーを回収して、1,2−ジクロロエタンの製造に、または1,2−ジクロロエタンとは異なるエチレン誘導体化合物の製造に搬送される。
【0211】
本発明による方法では、工程b)の第4および第5実施形態が好ましい。
【0212】
画分Aおよび画分Bを特徴づけるために下に明示される量は、エチレン誘導体化合物のそれぞれの製造に入る前のものである。
【0213】
画分Bは有利には、画分Bの総体積に対して2%体積以下の、好ましくは0.5%体積以下の、特に好ましいやり方では0.1体積%以下の水素含有率で特徴づけられる。
【0214】
画分Bは、画分Bの総体積に対して有利には0.01体積%以下、好ましくは0.005体積%以下、特に好ましいやり方では0.001体積%以下の少なくとも3個の炭素原子を含有する化合物の含有率で特徴づけられる。
【0215】
画分Bは有利には、画分Bの総体積に対して40体積%〜99.5体積%のエチレンを含有する。画分Bは有利には、画分Bの総体積に対して少なくとも40体積%、好ましくは少なくとも50体積%、特に好ましいやり方では少なくとも60体積%のエチレンを含有する。画分Bは有利には、画分Bの総体積に対して多くとも99.5体積%、好ましくは多くとも99.2体積%、特に好ましいやり方では多くとも99体積%のエチレンを含有する。
【0216】
画分Aは、エチレンより軽質である化合物に富む。これらの化合物は一般に、メタン、窒素、酸素、水素および一酸化炭素である。有利には、画分Aは、工程b)にかけられる生成物の混合物中に含有されるエチレンより軽質の化合物の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましいやり方では少なくとも85%を含有する。有利には、画分Aは、工程b)にかけられる生成物の混合物中に含有されるエチレンより軽質の化合物の多くとも99.99%、好ましくは多くとも99.97%、特に好ましいやり方では多くとも99.95%を含有する。
【0217】
画分Aは、画分Aの総体積に対して有利には0.01体積%以下、好ましくは0.005体積%以下、特に好ましいやり方では0.001体積%以下の少なくとも3個の炭素原子を含有する化合物の含有率で特徴づけられる。
【0218】
画分Aは有利には、それが画分Bのエチレンの体積含有率の10%〜90%を表すようなものである体積含有率のエチレンを含有する。画分Aは有利には、それが画分Bのエチレンの体積含有率の90%以下、好ましくは85%以下、特に好ましいやり方では80%以下であるようなものである体積含有率のエチレンを含有する。画分Aは有利には、それが画分Bのエチレンの体積含有率の少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、特に好ましいやり方では少なくとも20%であるようなものである体積含有率のエチレンを含有する。
【0219】
画分Cは有利には、少なくとも3個の炭素原子を含む化合物を含有する。有利には、少なくとも3個の炭素原子を含むこれらの化合物は、工程a)に由来するエチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物に由来するか、または工程b)中の副反応によって発生する。少なくとも3個の炭素原子を含む化合物の中には、プロパン、プロピレン、ブタンおよびそれらの不飽和誘導体ならびに飽和または不飽和のより重質の化合物全てが挙げられてもよい。
【0220】
画分Cは有利には、工程b)にかけられる生成物の混合物中に含有される少なくとも3個の炭素原子を含む化合物の少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%および特に好ましくは少なくとも99%を含有する。
【0221】
画分Cは有利には、画分Cの総重量に対して多くとも1重量%、好ましくは多くとも0.8重量%、特に好ましくは多くとも0.5重量%のエチレンを含有する。
【0222】
画分Cは有利にはエチレンより重質の成分に富む。好ましくは、画分Cは燃料として燃やされるかまたは化学的に付加価値化(valorized)される。より好ましくは、画分Cは化学的に付加価値化される。画分Cは、最も好ましくは、例えば蒸留により、それぞれ5個未満の炭素原子を備える化合物を含む一方の画分(画分C1)と、少なくとも5個の炭素原子を備える化合物を含むもう一方の画分(画分C2)という2つの異なる画分にそれぞれ分離されることからなる分離工程にかけられる。特にベンゼンに富む、画分C2は特に好ましくは、エチルベンゼンの製造に搬送される。ベンゼンがその回収率を最大にするために画分Cに導かれるように工程b)を適合させることはそれ故興味深いことであり得る。
【0223】
幾つかの場合には、それを付加価値化するためにエタンを単離することは興味深いことであり得る。これらの状況では、本発明による方法は、エタンが画分Cに導かれるかまたは個別の画分として単離されるように適合させることができる。
【0224】
エタンが画分Cに導かれる場合には、エタンは、さらなる蒸留塔を用いて画分C中に存在する重質炭化水素から分離することができる。エタンはまた、他の画分から(ボトムで抜き取られる)画分Cを単離するために使用される蒸留塔の側面からそれを抜き取ることによってか、または画分Cを単離するときに従来の蒸留塔の代わりに分割壁塔を使用することによって回収することができる。
【0225】
エタンが個別の画分として単離される場合には、それは、工程b)中に他の画分から分離することができる。
【0226】
回収された後に、エタンは、燃料として燃やすかまたは化学的に付加価値化することができる。エタンは好ましくは化学的に付加価値化される。エタンはそれ故より好ましくは、工程a)にリサイクルされるか、後でオキシ塩素化にかけられるエチレンを生成するために国際公開第2008/000705号パンフレット、同第2008/000702号パンフレットおよび同第2008/000693号パンフレットに記載されているようにオキシ脱水素化(ODH)にかけられるかのどちらかである。エタンは最も好ましくは工程a)にリサイクルされる。
【0227】
本発明による方法の工程c)によれば、画分Aおよび画分Bのうちの一方の画分は、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、DCEのおよび任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送され、そして一方では、他方の画分は、1,2−ジクロロエタンとは異なるエチレンから出発して直接製造される少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の、および任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送される。
【0228】
第1実施形態によれば、本発明による方法は有利には、工程a)およびb)の後に、c)画分Aが、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、DCEのおよび任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送され、そして画分BがDCEとは異なるエチレンから出発して直接製造される少なくとも1つのエチレン誘導体化合物のおよび任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送されるようなものである。
【0229】
この第1実施形態によれば、DCEは有利にはさらに、VCを生成するためにDCE分解工程にかけられ、VCは好ましくは後で、PVCを生成するために重合される。
【0230】
第1実施形態の第1変形によれば、本方法は有利には、工程a)およびb)の後に、
c)画分Aが、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、画分A中に存在するエチレンのほとんどが分子塩素との反応によってDCEに転化される塩素化反応器でのDCEの製造に搬送され、そして画分BがDCEとは異なるエチレンから出発して直接製造される少なくとも1つのエチレン誘導体化合物のおよび任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送される;
d)得られたDCEが塩素化反応器に由来する生成物の流れから分離される;
e)分離されたDCEがDCE分解工程にかけられ、こうしてVCおよび塩化水素を生成する;ならびに
f)得られたVCおよび塩化水素がDCE分解工程に由来する生成物の流れから分離されるようなものである。
【0231】
塩素化反応(普通は直接塩素化と呼ばれる)は有利には、FeClまたは別のルイス(Lewis)酸などの溶解触媒を含有する液相(好ましくは主にDCE)で実施される。この触媒をアルカリ金属塩化物などの共触媒と有利に組み合わせることが可能である。良好な結果を与えたペアは、FeClとLiClとの錯体(リチウムテトラクロロフェラート−オランダ国特許出願第6901398号明細書に記載されている)である。
【0232】
有利に使用されるFeClの量は、液体ストックの1kg当たり約1〜30gのFeClである。FeCl対LiClのモル比は有利にはおよそ0.5〜2である。
【0233】
加えて、塩素化反応は好ましくは塩素化有機液体媒体中で行われる。より好ましくは、液体ストックとも呼ばれる、この塩素化有機液体媒体は主にDCEからなる。
【0234】
本発明による塩素化反応は有利には、30〜150℃の温度で行われる。良好な結果は、沸点より下の温度(サブクールされた条件下での塩素化法)でおよび沸点そのもの(沸点での塩素法)での両方で圧力にかかわらず得られた。
【0235】
本発明による塩素化プロセスがサブクール条件下の塩素化プロセスであるとき、それは、有利には50℃以上、好ましくは60℃以上、しかし有利には80℃以下、好ましくは70℃以下の温度で、そして有利には1バール絶対以上、好ましくは1.1バール絶対以上、しかし有利には20バール絶対以下、好ましくは10バール絶対以下、特に好ましくは6バール絶対以下の気相での圧力で操作することによって良好な結果を与えた。
【0236】
沸点での塩素化方法が反応熱を役立つように回収するために好ましいかもしれない。この場合、反応は有利には、60℃以上、好ましくは70℃以上、特に好ましくは85℃以上、しかし有利には150℃以下、好ましくは135℃以下の温度で、そして有利には0.2バール絶対以上、好ましくは0.5バール絶対以上、特に好ましくは1.1バール絶対以上、より特に好ましくは1.3バール絶対以上、しかし有利には1.3バール絶対以下、好ましくは6バール絶対以下の気相での圧力で行われる。
【0237】
塩素化プロセスはまた、沸点での塩素化のためのハイブリッド・ループ冷却プロセスであってもよい。表現「沸点での塩素化のためのハイブリッド・ループ冷却プロセス」は、形成されたDCEの少なくともその量を気相に生成しながら、反応媒体の冷却が、例えば反応媒体中に浸漬された交換器を用いてか、または交換器中を循環するループによって実施されるプロセスを意味すると理解される。有利には、反応温度および圧力は、生成したDCEが気相にあるままにし、かつ、反応媒体からの熱の残りが交換表面積によって除去されるように調整される。
【0238】
塩素化を受ける画分およびまた分子塩素(それ自体純粋なまたは希釈された)は、一緒にかまたは別々に、任意の公知の装置によって反応媒体へ導入されてもよい。塩素化を受ける画分の別個の導入が、その分圧を高め、そしてプロセスの律速段階を多くの場合に構成するその溶解を容易にするために有利である可能性がある。
【0239】
分子塩素がエチレンのほとんどを転化するのに十分な量で、かつ、過剰の未転化塩素の添加を必要とせずに加えられる。用いられる塩素/エチレン比は、好ましくは1.2〜0.8モル/モル、特に好ましくは1.05〜0.95モル/モルである。
【0240】
得られた塩素化生成物は主にDCE、そしてまた1,1,2−トリクロロエタンなどの少量の副生物または少量のエタンもしくはメタン塩素化生成物を含有する。
【0241】
塩素化反応器に由来する生成物の流れから得られるDCEの分離は、公知のモードに従って実施され、一般に塩素化反応の熱を利用することを可能にする。それは次に好ましくは、凝縮および気/液分離によって実施される。
【0242】
未転化生成物(メタン、エタン、一酸化炭素、窒素、酸素および水素)は次に有利には、最初の混合物から出発して純エチレンを分離するために必要であったであろうものより容易な分離にかけられる。
【0243】
特に水素は未転化生成物から抜き出し、例えば過酸化水素製造における作業溶液の水素化のためかまたは過酸化水素の直接合成のためのように付加価値化することができる。
【0244】
DCE分解工程が実施されてもよい条件は、当業者に公知である。DCE分解は、その中に触媒を挙げることができる第3化合物の存在下にまたは不存在下に行うことができ;DCE分解はこの場合には接触DCE分解である。しかしながら、DCE分解は好ましくは、第3化合物の不存在下に、熱のみの作用下に行われ;DCE分解はこの場合にはしばしば熱分解と呼ばれる。
【0245】
この熱分解は有利には、管型炉での気相反応によって得られる。通常の熱分解温度は400〜600℃であり、480℃〜540℃の範囲が好ましい。滞留時間は有利には1〜60秒であり、5〜25秒の範囲が好ましい。DCEの転化率は有利には、副生物の形成および管型炉の管の汚れを制限するために45〜75%に制限される。
【0246】
熱分解に由来する生成物の流れから得られるVCと塩化水素との分離は、精製されたVCおよび塩化水素を集めるために、任意の公知の装置を使用して、公知のモードに従って実施される。精製後に、未転化DCEは有利には熱分解炉に搬送される。
【0247】
第1実施形態の第1変形のこの第1亜変形によれば、VCは好ましくは後で、PVCを生成するために重合される。
【0248】
PVCの製造は、塊状、溶液または水性分散重合法であってもよく、好ましくはそれは水性分散重合法である。
【0249】
表現水性分散重合は、水性エマルジョンでのフリーラジカル重合および水性マイクロサスペンジョンでの重合だけでなく水性懸濁液でのフリーラジカル重合を意味すると理解される。
【0250】
表現水性懸濁液でのフリーラジカル重合は、分散剤および油溶性フリーラジカル開始剤の存在下に水性媒体中で行われる任意のフリーラジカル重合法を意味すると理解される。
【0251】
表現水性エマルジョンでのフリーラジカル重合は、乳化剤および水溶性フリーラジカル開始剤の存在下に水性媒体中で行われる任意のフリーラジカル重合法を意味すると理解される。
【0252】
均質化水性分散系での重合とも呼ばれる、表現水性マイクロサスペンジョン重合は、油溶性開始剤が使用され、そしてモノマー小滴のエマルジョンが強力な機械撹拌および乳化剤の存在によって調製される任意のフリーラジカル重合法を意味すると理解される。
【0253】
分離後に、塩化水素は任意の目的のために使用されてもよい。それは、例えば、塩化カルシウム、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールまたは1,2,3−プロパントリオール(エピクロロヒドリンの合成につながるグリセリンまたはグリセロール)との反応によるクロロプロパノールなどのクロロアルコール、メタノールとの反応によるクロロメタンなどのクロロアルカン、水性塩酸、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、クロロシラン、塩化チタン、塩化亜鉛、塩化アンモニウムのような他の無機塩化物のような化合物の合成に、しかしまた例えば芳香族化合物のオキシ塩素化法、アルキンの塩化水素化(例えばVCへのアセチレンの塩化水素化)もしくはアルケンの塩化水素化に搬送するかまたは分子塩素へ酸化することができる。
【0254】
工程f)による分離の後に、g)塩化水素は好ましくは、後でより好ましくは塩素化反応器にリサイクルされる分子塩素への酸化にかけられる。
【0255】
分離された塩化水素の分子塩素への酸化は、任意の公知の方法に従って行うことができる。
【0256】
それらの公知の方法の中に、塩酸の電解、Kelloggと呼ばれるKEL塩素法(触媒として濃硫酸およびニトロシル硫酸を使用する)、Shell−Deacon法(触媒としてシリケート担体上の塩化銅(II)と他の金属塩化物との混合物を使用する)および三井東圧(MT−塩素)法(触媒としてシリケート担体上の酸化クロム(III)を使用する)のような修正Deacon法のような酸素による塩化水素の接触酸化法ならびに硝酸による塩化水素の酸化が挙げられてもよい。
【0257】
酸素による塩化水素の接触酸化が本発明による方法にとって好ましい。この酸化は有利には、酸素を含有するガスで行われる。
【0258】
酸素を含有するガスとして、分子酸素または空気を使用することができる。酸素は、空気の圧力スイング法または空気の深冷分離などの、通常の工業的方法によって製造されてもよい。
【0259】
1モルの塩化水素を酸化するために必要な酸素の理論的モル量は0.25モルであるが、理論量を超える量の酸素を使用することが好ましく、より好ましくは、塩化水素の1モル当たり0.25〜2モルの酸素が使用される。
【0260】
本発明による酸化反応に使用される触媒は、塩化水素の酸化による塩素の製造に使用される任意の公知の触媒であってもよい。
【0261】
触媒の例は、Deacon法におけるような銅ベースの触媒、酸化クロム、酸化ルテニウムまたは酸化ルテニウムと酸化チタンとの混合物である。Deacon触媒は、有利には塩化銅、塩化カリウムおよび様々な種類の化合物を第3成分として含む。
【0262】
触媒の形状は、球形粒子、円筒形ペレット、押出形態、リング形態、ハニカム形態、または成形材料のミリング引き続く篩い分けによって製造される好適なサイズを有する顆粒などの通常使用される形状のいずれであってもよい。触媒のサイズは好ましくは10mm以下である。触媒のサイズの下限は限定されなくてもよいが、触媒のサイズは有利には少なくとも0.1mmである。本明細書では、触媒のサイズは、球形粒子の場合には球の直径、円筒形ペレットの場合には横断面の直径または他の形態の場合には横断面の最大サイズを意味する。
【0263】
酸素を含有するガスを部分に分割し、そしてそれを少なくとも2つの反応ゾーンに導入することは興味深いことであり得る。
【0264】
酸化反応は有利には、それぞれが、好ましくは直列に配置された、触媒充填層を含む、少なくとも2つの反応ゾーンで実施される。
【0265】
反応圧力は有利には0.1〜5MPaである。反応温度は有利には200〜650℃、より好ましくは200〜500℃である。
【0266】
反応器は有利には管型反応器であり、それらの内径は好ましくは10〜50mm、より好ましくは10〜40mmである。
【0267】
分子塩素はより好ましくは塩素化反応器にリサイクルされる。このリサイクリングは、任意の公知の方法に従って行うことができる。分子塩素は有利には先ず乾燥され、次に塩素化に入るための必要な圧力にされる。乾燥は有利には、圧縮による出口での凝縮でまたは硫酸のもしくは塩素と相性がよい吸着剤の塔を使ってのどれか、好ましくは硫酸の塔を使って行われる。
【0268】
第1実施形態によれば、画分Bは、DCEとは異なるエチレンから出発して直接製造される少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の、および任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送される。
【0269】
DCEとは異なる、画分Bから製造することができるエチレンから出発して直接製造されるエチレン誘導体化合物の例として、とりわけ、エチレンオキシド、線状アルファ−オレフィン、線状第一級アルコール、エチレンのホモポリマーおよびコポリマー、エチルベンゼン、酢酸ビニル、アセトアルデヒド、エチルアルコールおよびプロピオンアルデヒドが挙げられてもよい。
【0270】
それから誘導される任意選択的な化合物の例として、とりわけ、エチレンオキシドから製造されるグリコール、エチルベンゼンから製造されるスチレンおよびスチレンから誘導されるスチレンのポリマーが挙げられてもよい。
【0271】
画分Bはそれ故、DCEとは異なるエチレンから出発して直接製造される1つのまたは幾つかのエチレン誘導体化合物の製造に搬送することができる。
【0272】
DCEとは異なるエチレンから出発して直接製造される幾つかのエチレン誘導体化合物の製造に送られるために、画分Bは有利には、必要に応じて同じ組成の多くの画分として分けられる。
【0273】
好ましくは、画分Bは、DCEとは異なるエチレンから出発して直接製造される1つのエチレン誘導体化合物の製造に搬送される。
【0274】
画分Bはより好ましくはエチルベンゼンの製造に、最も好ましくはスチレンのポリマーを得るために後で重合されるスチレンの製造に搬送されるエチルベンゼンそのものの製造に搬送される。
【0275】
第1実施形態の第2変形によれば、本方法は、工程a)およびb)の後に、
c)画分Aが、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、画分A中に存在するエチレンの多くとも90%が分子塩素との反応によってDCEに転化される塩素化反応器でのDCEの製造に搬送され、そして画分BがDCEとは異なるエチレンから出発して直接製造される少なくとも1つのエチレン誘導体化合物のおよび任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送される;
d)塩素化反応器で形成されたDCEが塩素化反応器に由来する生成物の流れから任意選択的に単離される;
e)DCEが任意選択的にそれから抜き出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れが、塩素化反応器で形成されたDCEが前に抜き出されなかった場合に任意選択的に抜き出される、吸収/脱着工程e’)に後者を任意選択的にかけた後に、エチレンの残りの大部分がDCEに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される;ならびに
f)オキシ塩素化反応器で形成されたDCEがオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、塩素化反応器で形成されたDCEに任意選択的に加えられる
ようなものである。
【0276】
第1実施形態のこの第2変形によれば、DCEは有利にはさらに、VCを生成するためにDCE分解工程にかけられ、VCは好ましくは後で、PVCを生成するために重合される。
【0277】
本明細書で以下に詳述される塩素のフローを除いて第1実施形態の第2変形の特定の場合には、塩素化反応に関する詳細については第1実施形態の第1変形について言及される。
【0278】
塩素の流量は、エチレンの有利には少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも30%がDCEに転化されるようなものである。塩素の流量は、エチレンの有利には多くとも90%、好ましくは多くとも80%、特に好ましくは多くとも70%がDCEに転化されるようなものである。
【0279】
本発明による方法の第1実施形態の第2変形の工程d)によれば、塩素化反応器で形成されたDCEは任意選択的に、塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される。場合によっては、塩素化反応器に由来する生成物の流れから塩素化反応器で形成されたDCEを単離しないことが有利であるかもしれない。しかしながら好ましくは、塩素化反応器で形成されたDCEは塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される。
【0280】
それが行われる場合、塩素化反応器に由来する生成物の流れからの得られたDCEの分離は公知方法に従って実施され、塩素化反応の熱を利用することを一般に可能にする。それはそのとき好ましくは凝縮および気/液分離によって実施される。
【0281】
本発明による方法の第1実施形態の第2変形の工程e)によれば、DCEが任意選択的にそれから抜き出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れは、塩素化反応器で形成されたDCEが前に抜き出されなかった場合に任意選択的に抜き出される、吸収/脱着工程e’)に後者を任意選択的にかけた後に、エチレンの残りの大部分がDCEに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される。
【0282】
オキシ塩素化反応は有利には、不活性担体上に沈着された銅をはじめとする、活性元素を含む触媒の存在下に実施される。不活性担体は有利には、アルミナ、シリカゲル、混合酸化物、粘土および天然起源の他の担体から選択される。アルミナが好ましい不活性担体である。
【0283】
数が有利には少なくとも2つであり、その1つが銅である活性元素を含む触媒が好ましい。銅以外の活性元素のうち、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属ならびにルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金および金からなる群からの金属が挙げられてもよい。以下の活性元素を含有する触媒が特に有利である:銅/マグネシウム/カリウム、銅/マグネシウム/ナトリウム;銅/マグネシウム/リチウム、銅/マグネシウム/セシウム、銅/マグネシウム/ナトリウム/リチウム、銅/マグネシウム/カリウム/リチウムおよび銅/マグネシウム/セシウム/リチウム、銅/マグネシウム/ナトリウム/カリウム、銅/マグネシウム/ナトリウム/セシウムおよび銅/マグネシウム/カリウム/セシウム。参照により援用される、欧州特許出願公開第255 156A号明細書、欧州特許出願公開第494 474A号明細書、欧州特許出願公開第657 212A号明細書および欧州特許出願公開第657 213A号明細書に記載されている触媒が最も特に好ましい。
【0284】
金属形態で計算される、銅含有率は有利には、触媒1kg当たり30〜90g、好ましくは触媒1kg当たり40〜80g、特に好ましくは触媒1kg当たり50〜70gの触媒である。
【0285】
金属形態で計算される、マグネシウム含有率は有利には、触媒1kg当たり10〜30g、好ましくは触媒1kg当たり12〜25g、特に好ましくは触媒1kg当たり15〜20gである。
【0286】
金属形態で計算される、アルカリ金属含有率は有利には、触媒1kg当たり0.1〜30g、好ましくは触媒1kg当たり0.5〜20g、特に好ましくは触媒1kg当たり1〜15gの触媒である。
【0287】
Cu:Mg:アルカリ金属原子比は、有利には1:0.1〜2:0.05〜2、好ましくは1:0.2〜1.5:0.1〜1.5、特に好ましくは1:0.5〜1:0.15〜1である。
【0288】
窒素でBET法に従って測定される、有利には25m/g〜300m/g、好ましくは50〜200m/g、特に好ましくは75〜175m/gの比表面積を有する触媒が特に有利である。
【0289】
触媒は固定床でまたは流動床で使用されてもよい。この第2選択肢が好ましい。オキシ塩素化プロセスは、この反応向けに通常推奨される範囲の条件下に操作される。温度は有利には150〜300℃、好ましくは200〜275℃、最も好ましくは215〜255℃である。圧力は有利には大気圧より上である。2〜10バール絶対の値が良好な結果を与えた。4〜7バール絶対の範囲が好ましい。この圧力は、反応器での最適滞留時間を達成するためにおよび様々な運転速度に対して一定の通過速度を維持するために役立つように調整されてもよい。通常の滞留時間は、1〜60秒、好ましくは10〜40秒の範囲である。
【0290】
このオキシ塩素化のための酸素源は、空気、純酸素またはそれらの混合物、好ましくは純酸素であってもよい。未転化反応体の容易なリサイクリングを可能にする後者の解決策が好ましい。
【0291】
反応体は、任意の公知デバイスによって床へ導入されてもよい。安全上の理由から酸素を他の反応体とは別々に導入することが一般に有利である。これらの安全性理由はまた、反応器を出るまたはそれにリサイクルされるガス混合物が当該圧力および温度で可燃限界外に保たれることを要求する。いわゆる濃混合気を維持すること、すなわち、燃料に対して余りにも少ない酸素を含有するので点火しないことが好ましい。この関連で、水素の豊富な存在(>2vol%、好ましくは>5vol%)は、この化合物の広範囲の可燃性を考えると不利点を構成するであろう。
【0292】
用いられる塩化水素/酸素比は有利には3〜6モル/モルである。エチレン/塩化水素比は有利には0.4〜0.6モル/モルである。
【0293】
得られた塩素化生成物は、主としてDCEおよびまた1,1,2−トリクロロエタンなどの少量の副生物を含有する。
【0294】
場合によっては、オキシ塩素化反応器に入る前に、DCEが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れを、塩素化反応器で形成されたDCEが予め抽出されなかった場合には場合により抽出される吸収/脱着工程e’)にかけることが有利であるかもしれない。
【0295】
表現「塩素化反応器で形成されたDCEが予め抽出されなかった場合には場合により抽出される工程e’)」は、塩素化反応器で形成されたDCEが、工程e’)が行われる場合およびそれが予め抽出されなかった場合にはこの工程中に抽出されてもよいことを意味すると理解される。好ましくは、塩素化反応器で形成されたDCEは、工程e’)が行われる場合およびそれが予め抽出されなかった場合にはこの工程中に抽出される。
【0296】
こうして、DCEが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れ(本明細書では以下塩素化流れとして知られる)は有利には、吸収工程におよび脱着工程にかけられ、そこで前記流れは溶媒を含有する洗浄剤と好ましくは接触させられる。
【0297】
表現「溶媒を含有する洗浄剤」またはより簡単に「洗浄剤」は、溶媒が液体状態で存在する組成物を意味すると理解される。
【0298】
本発明に従って使用することができる洗浄剤はそれ故有利には、液体状態での溶媒を含有する。前記洗浄剤中の、他の化合物の存在は、本発明の範囲から決して排除されない。しかしながら、洗浄剤は少なくとも50体積%、より特に少なくとも65体積%、最も特に好ましくは少なくとも70体積%の溶媒を含有することが好ましい。
【0299】
溶媒は有利には、アルコール、グリコール、ポリオール、エーテル、グリコールとエーテルとの混合物、鉱油ならびにDCEの中から選択される。溶媒は好ましくは、アルコール、鉱油およびDCEの中から、より好ましくは共沸エタノール(有利には少なくとも70体積%、好ましくは少なくとも80体積%、より好ましくは少なくとも85体積%のエタノールの水性エタノール)およびDCEの中から選択される。溶媒は最も好ましくはDCEである。
【0300】
吸収工程のために使用される洗浄剤は、任意の起源の新しい洗浄剤、例えば粗共沸エタノールまたは塩素化装置を出る粗DCE、オキシ塩素化装置を出る粗DCEまたは精製されなかったこれら2つの混合物からなってもよい。それはまた、予め精製された前記DCEから、場合により新しい洗浄剤を添加した、下に説明されるような、エタンより重質な化合物の、DCE中の濃度を下げることを可能にする任意の処理後の、塩素化反応器で形成された、そして脱着工程で抽出されるDCEを場合により含有する下に説明される脱着工程中に回収された洗浄剤の全てかもしくは一部からなってもよい。
【0301】
好ましくは、吸収工程のために使用される洗浄剤は、場合により新しい洗浄剤を添加した、上述の任意の処理後の、塩素化反応器で形成された、そして脱着工程で抽出されるDCEを場合により含有する脱着工程中に回収された洗浄剤の全てかもしくは一部からなる。塩素化反応で形成されたDCEが塩素化出口で塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される場合、特に好ましい方法では、吸収工程のために使用される洗浄剤は、新しい洗浄剤(吸収および脱着工程中の洗浄剤の損失を補填するための)を添加した、前述の任意の処理後の、脱着工程中に回収された洗浄剤の全てかもしくは一部からなる。
【0302】
エタンより重質な化合物の、好ましくは少なくとも3個の炭素原子を含む化合物の洗浄剤中の濃度を下げることを可能にする上述の任意の処理は、エタンより重質で、そして洗浄剤より軽質な化合物を脱着する工程かまたは洗浄剤を蒸留する工程であってもよい。好ましくは、それは、エタンより重質で、そして洗浄剤より軽質な化合物を脱着する工程からなる。好ましくは、洗浄剤のこの処理が行われる。
【0303】
DCEが洗浄剤であるときの最も好ましい場合の本質的な利点は、それがオキシ塩素化または塩素化中に主として形成される化合物であるので、このDCEの存在が全く面倒ではないという事実にある。
【0304】
洗浄剤および塩素化流れのそれぞれのスループット間の比は決定的に重要であるわけではなく、大幅に変わることができる。それは実際には、洗浄剤の再生コストによって制限されるにすぎない。一般に、洗浄剤のスループットは、塩素化流れの1トン当たり少なくとも1、好ましくは少なくとも5、特に好ましくは少なくとも10トンである。一般に、洗浄剤のスループットは、塩素化流れから抽出されるべきエチレンおよびエタン混合物の1トン当たり100トン以下、好ましくは50トン以下、特に好ましくは25トン以下である。
【0305】
吸収工程は有利には、例えば、クライミングフィルムもしくは流下薄膜吸収器などの吸収器またはプレート塔、ランダム充填材の塔、構造化充填材の塔、前述のインターナルおよびスプレー塔の1つ以上を組み合わせた塔から選択された吸収塔を用いて実施される。吸収工程は好ましくは吸収塔を用いて、特に好ましくはプレート吸収塔を用いて実施される。
【0306】
吸収塔は有利には、塔の内部または外部にある、例えば、少なくとも1つの凝縮器または冷却装置などの関連付属品を備えている。
【0307】
上述の吸収工程は有利には、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、特に好ましくは少なくとも25バール絶対の圧力で実施される。吸収工程は有利には、40バール絶対以下、好ましくは35バール絶対以下、特に好ましくは30バール絶対以下の圧力で実施される。
【0308】
吸収工程が実施される温度は有利には、吸収器または吸収塔の頂部で少なくとも−10、好ましくは少なくとも0、特に好ましくは少なくとも10℃である。それは有利には、吸収器または吸収塔の頂部で60℃以下、好ましくは50以下℃、特に好ましくは40℃以下である。
【0309】
吸収器または吸収塔の底部での温度は、少なくとも0、好ましくは少なくとも10、特に好ましくは少なくとも20℃である。それは有利には、70℃以下、好ましくは60℃以下、特に好ましくは50℃以下である。
【0310】
エチレンより軽質で洗浄剤に富む化合物から精製された塩素化流れである、吸収工程から生じた流れは、有利には脱着工程にかけられる。
【0311】
塩素化反応器で形成された、その後抽出されるDCEを場合により含有する、脱着工程後に回収された洗浄剤は取り出され、このDCEがオキシ塩素化反応器で形成されたDCEと一緒になるオキシ塩素化部に完全にもしくは部分的に搬送されても、または場合により上述の処理後に、場合により新しい洗浄剤を添加して、吸収工程に完全にもしくは部分的に搬送されてもよい。好ましくは、脱着工程後に回収された洗浄剤は、上述の任意の処理後に、場合により新しい洗浄剤を添加して、吸収工程に、またはオキシ塩素化部に再搬送される。塩素化反応器で形成されたDCEが塩素化出口で塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される場合、特に好ましい方法では、脱着工程後に回収された洗浄剤は、上述の任意の処理後に、新しい洗浄剤を添加して、吸収工程に完全にまたは部分的に再搬送される。
【0312】
脱着工程は有利には、例えば、クライミングフィルムもしくは流下薄膜脱着器などの脱着器、リボイラーまたはプレート塔、ランダム充填材の塔、構造化充填材の塔、前述のインターナルおよびスプレー塔の1つ以上を組み合わせた塔から選択された脱着塔を用いて実施される。脱着はまた、DCEを集めるために蒸気の直接注入によって行うことができる。脱着工程は好ましくは、脱着塔を用いて、特に好ましくはプレート脱着塔を用いて実施される。
【0313】
脱着塔は有利には、塔の内部または外部にある、例えば、少なくとも1つの凝縮器または冷却装置および少なくとも1つのリボイラーなどの関連付属品を備えている。
【0314】
脱着圧力は有利には、脱着ガス中の少なくとも3個の炭素原子を有する化合物の含有率が100体積ppm未満、好ましくは50体積ppm以下、特に好ましくは20体積ppmm以下であるように選択される。
【0315】
上述の脱着工程は有利には、少なくとも1、好ましくは少なくとも2、特に好ましくは少なくとも3バール絶対の圧力で実施される。脱着工程は有利には、20バール絶対以下、好ましくは15バール絶対以下、特に好ましくは10バール絶対以下の圧力で実施される。
【0316】
脱着工程が実施される温度は有利には、脱着器または脱着塔の頂部で少なくとも−10、好ましくは少なくとも0、特に好ましくは少なくとも10℃である。それは有利には、脱着器または脱着塔の頂部で60℃以下、好ましくは50℃以下、特に好ましくは45℃以下である。
【0317】
脱着器または脱着塔の底部での温度は、少なくとも60、好ましくは少なくとも80、特に好ましくは少なくとも100℃である。それは有利には、200℃以下、好ましくは160℃以下、特に好ましくは150℃以下である。
【0318】
吸収工程が吸収塔で、そして脱着工程が脱着塔で実施される場合が最も特に好ましい。
【0319】
吸収工程の後に回収される水素は有利には、燃料としてまたは、場合により精製工程後に反応体として展開される。このように、水素は、DCE分解工程における燃料として開発されてもよい。それはまた、例えば水素化反応器用の反応剤として開発されてもよい。
【0320】
本発明による方法の第1実施形態の第2変形の工程f)によれば、オキシ塩素化反応器で形成されたDCEは、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、塩素化反応器で形成されたDCEに任意選択的に加えられる。
【0321】
オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れからの得られたDCEの分離は、公知方法に従って実施される。それは好ましくは先ず凝縮によって実施される。オキシ塩素化反応器の熱は蒸気状態で一般に回収され、それは分離のために、または任意の他の使用のために使用されてもよい。
【0322】
オキシ塩素化反応器から出た後、この反応器に由来する生成物の流れはまた有利には、未転化HClを回収するために洗浄される。この洗浄操作は有利にはアルカリ性洗浄工程である。それに好ましくは気/液分離工程が続き、それは液体形態で形成されたDCEを回収し、そして最終的にDCEを乾燥させることを可能にする。
【0323】
表現「塩素化反応器で形成されたDCEに場合により加えられる」は、塩素化反応器で形成されたDCEがこの反応器に由来する生成物の流れから単離される場合、塩素化反応器を出るとすぐに、または工程e’)の後に、オキシ塩素化反応器で形成されたDCEがそれに加えられても加えられなくてもよいことを意味すると理解される。好ましくは、DCEはそれに加えられる。一方、この第1DCEが単離されない場合、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離されたDCEは有利には、回収されたDCEの唯一の流れである。別の代替策は有利には、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離されたDCEを塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離されたDCEの一部と混合することおよびこの後者の他の部分をDCE分解工程に直接送ることである。
【0324】
DCE分解工程に関するおよびDCE分解工程に由来する生成物の流れから得られるVCの分離に関するより詳細については第1実施形態の第1変形の方法について言及される。
【0325】
第1実施形態のこの第2変形によれば、VCは好ましくは後で、PVCを生成するために重合される。PVCの製造に関するより詳細については第1実施形態の第1変形について言及される。
【0326】
画分Bから製造することができるエチレン誘導体化合物とは何を意味するかについては、およびそれに関連する特徴および好ましさについては第1実施形態の第1変形について言及される。
【0327】
第1実施形態の第3変形によれば、本方法は有利には、工程a)およびb)の後に、
c)画分Aが、同じ組成のまたは異なる組成の画分A1と画分A2とへ分離された後に、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、DCEの製造に搬送され、そして画分BがDCEとは異なるエチレンから出発して直接製造されるエチレン誘導体化合物のおよび任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送される
d)画分A1が塩素化反応器に、そして画分A2がオキシ塩素化反応器に搬送され、それらの反応器で画分A1およびA2中に存在するエチレンのほとんどがDCEに転化される;ならびに
e)得られたDCEが塩素化およびオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから分離される
ようなものである。
【0328】
画分A1と画分A2とへの画分Aの分離は有利には、画分Aを、任意の公知の手段を用いて同じ組成のまたは異なる組成の2つの別個の画分へ分割することによって操作される。
【0329】
画分Aが同じ組成の画分A1と画分A2とへ分割される場合は、工程a)を出るエチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物が簡単に分割できるときに、好ましくは工程a)を出る生成物の混合物が水素に乏しいおよび/または水素化工程中に水素と反応するときに、第1実施形態の第3変形との関連で特に興味深い。
【0330】
画分Aが異なる組成の画分A1と画分A2とへ分割される場合は、異なる組成の画分が工程c)のために必要とされるときに第1実施形態の第3変形との関連で特に興味深い。画分Aはそれ故有利には、画分A1が後で塩素化反応器に、そして画分A2がオキシ塩素化反応器に搬送されるように異なる組成の画分A1と画分A2とへ分割される。
【0331】
画分A1と画分A2とへの画分Aの分割は、任意の公知の手段によって行うことができる。好ましくは、画分Aは熱交換器での間接冷却によって冷やされ、熱交換器で画分A2は好適な圧力への膨張後に気化し、冷却された熱交換器での好適な冷却媒体との間接接触によってその温度の規定の低下まで過冷却される。液体蒸気は好ましくは、蒸気画分A1と液体画分A2とを生成するために分割される。温度低下は有利には5℃より大きく、好ましくは7℃より大きく、より好ましくは8℃より大きい。温度低下は有利には30℃より少なく、好ましくは25℃より少なく、より好ましくは22℃より少ない。
【0332】
画分A1は有利には、画分A中に含有されるエチレン量の10%超、好ましくは20%超、より好ましくは25%超を含有する。画分A1は有利には、画分A中に含有されるエチレン量の90%未満、好ましくは80%未満、より好ましくは75%未満を含有する。
【0333】
画分A1は有利には、画分A中に含有される水素量の80%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超を含有する。
【0334】
画分A1は有利には、画分A中に含有されるメタン量の70%超、好ましくは75%超、より好ましくは80%超を含有する。
【0335】
画分A1は有利には、画分A中に含有されるエタン量の40%未満、好ましくは30%未満、より好ましくは25%未満を含有する。
【0336】
第1実施形態の第3変形によれば、DCEは有利にはさらに、VCを生成するためにDCE分解工程にかけられ、VCは後で、PVCを生成するために好ましくは重合される。
【0337】
塩素化反応器に由来する生成物の流れから分離されたDCEは、DCE分解工程の前にオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから分離されたDCEと混合することもしないこともできる。両DCEが混合されるとき、それらは全体的にまたは部分的に混合することができる。好ましい場合は、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離されたDCEが塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離されたDCEの一部と混合され、そしてこの後者の他の部分がDCE分解工程に直接送られるときである。
【0338】
塩素化反応および塩素化反応器に由来する生成物の流れから得られるDCEの分離に関する詳細については第1実施形態の第1変形について言及される。DCE分解工程およびDCE分解工程に由来する生成物の流れから得られるVCの分離に関する詳細については同じ第1変形についてまた言及される。オキシ塩素化反応およびオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから得られるDCEの分離に関する詳細については第1実施形態の第2変形について言及される。
【0339】
第1実施形態のこの第3変形によれば、VCは好ましくは後で、PVCを生成するために重合される。PVCの製造に関するより詳細については第1実施形態の第1変形について言及される。
【0340】
画分Bから製造することができるエチレン誘導体化合物とは何を意味するかについては、およびそれに関連する特徴および好ましさについては第1実施形態の第1変形について言及される。
【0341】
第2実施形態によれば、本発明による方法は有利には、工程a)およびb)の後に、c)画分Aが、DCEとは異なるエチレンから出発して直接製造されるエチレン誘導体化合物のおよび任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送され、そして画分Bが、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、DCEのおよび任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送されるようなものである。
【0342】
この第2実施形態によれば、DCEは有利にはさらに、VCを生成するためにDCE分解工程にかけられ、VCは好ましくは後で、PVCを生成するために重合される。
【0343】
第2実施形態の第1変形によれば、本方法は有利には、工程a)およびb)後に、
c)画分Aが、DCEとは異なるエチレンから出発して直接製造されるエチレン誘導体化合物のおよび任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送され、そして画分Bが、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、画分B中に存在するエチレンのほとんどが分子塩素との反応によってDCEに転化される塩素化反応器でのDCEの製造に搬送される;
d)得られたDCEが塩素化反応器に由来する生成物の流れから分離される;
e)分離されたDCEがDCE分解工程にかけられ、こうしてVCおよび塩化水素を生成する;ならびに
f)得られたVCおよび塩化水素がDCE分解工程に由来する生成物の流れから分離される
ようなものである。
【0344】
第2実施形態のこの第1変形の特徴および好ましさは、画分Aを画分Bでおよび逆に置き換えた、本発明による第1実施形態の第1変形について明示されるものと同じものである。
【0345】
第2実施形態の第2変形によれば、本方法は好ましくは、工程a)およびb)後に、
c)画分Aが、DCEとは異なるエチレンから出発して直接製造されるエチレン誘導体化合物のおよび任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送され、そして画分Bが、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、画分B中に存在するエチレンの多くとも90%が分子塩素との反応によってDCEに転化される塩素化反応器でのDCEの製造に搬送される;および
d)塩素化反応器で形成されたDCEが任意選択的に塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される;
e)DCEが任意選択的にそれから抜き出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れが、塩素化反応器で形成されたDCEが前に抜き出されなかった場合に任意選択的に抜き出される、吸収/脱着工程e’)に後者を任意選択的にかけた後に、エチレンの残りの大部分がDCEに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される;ならびに
f)オキシ塩素化反応器で形成されたDCEがオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、塩素化反応器で形成されたDCEに任意選択的に加えられる
ようなものである。
【0346】
第2実施形態の第2変形によれば、DCEは有利にはさらに、VCを生成するためにDCE分解工程にかけられ、VCは好ましくは後で、PVCを生成するために重合される。
【0347】
第2実施形態の第2変形の特徴および好ましさは、画分Aを画分Bでおよび逆に置き換えて、しかしながら、この特定の第2変形において、オキシ塩素化反応器へ入る前に、DCEが任意選択的にそれから抜き出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れを吸収/脱着工程e’)にかけないことが有利である可能性があるという特殊性つきで、本発明による第1実施形態の第2変形について明示されるものと同じものである。
【0348】
第2実施形態の第3変形によれば、本方法は有利には、工程a)およびb)の後に、
c)画分Aが、DCEとは異なるエチレンから出発して直接製造されるエチレン誘導体化合物のおよび任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送され、そして画分Bが、同じ組成のまたは異なる組成の画分B1と画分B2とへ分離された後に、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、DCEの製造に搬送される;
d)画分B1が塩素化反応器に搬送され、そして画分B2がオキシ塩素化反応器に搬送され、それらの反応器で画分B1およびB2中に存在するエチレンのほとんどがDCEに転化される;ならびに
e)得られたDCEが塩素化およびオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから分離される
ようなものである。
【0349】
第2実施形態のこの第3変形によれば、DCEは有利にはさらに、VCを生成するためにDCE分解工程にかけられ、VCは好ましくは後で、PVCを生成するために重合される。
【0350】
第2実施形態のこの第3変形の特徴および好ましさは、画分Aを画分Bでおよび逆にならびに画分A1およびA2を画分B1およびB2で置き換えて、本発明による第1実施形態の第3変形について明示されるものと同じものである。
【0351】
本発明による方法の利点は、それがDCE製造と、DCEとは異なる少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の製造との統合を可能にすることである。
【0352】
この統合は、共通工程に関連したコストの共有のおかげで総コストの低減を可能にする。
【0353】
DCE/VC/PVC製造とエチルベンゼン/スチレン/ポリスチレン製造との統合の特定の場合には、本方法は、ベンゼンに富む画分(本明細書では上での画分C2)の付加価値化をさらに可能にする。
【0354】
本発明による方法の別の利点は、それが、同じ工業用地で、完全に統合されたプロセスを有することを可能にすることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素源から出発する1,2−ジクロロエタンのおよび1,2−ジクロロエタンとは異なる少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の製造方法であって、
a)前記炭化水素源が、エチレンおよび他の成分を含有する生成物の混合物を生成する簡略化分解にかけられ;
b)前記生成物の混合物が少なくとも、エチレンの一部を含有する、エチレンより軽質である化合物に富む画分(画分A)へ、エチレンに富む画分(画分B)へおよび重質画分(画分C)へ分離され;
c)画分Aおよび画分Bのうちの一方の画分が、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、1,2−ジクロロエタンの、および任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送され、そして一方では、他方の画分が、1,2−ジクロロエタンとは異なるエチレンから出発して直接製造される少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の、および任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送される
製造方法。
【請求項2】
工程a)およびb)後に、
c)画分Aが、任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、1,2−ジクロロエタンの、および任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送され、そして画分Bが、1,2−ジクロロエタンとは異なるエチレンから出発して直接製造される少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の、および任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)およびb)後に、
c)任意選択的にアセチレン水素化にかけられた後に、画分Aが、1,2−ジクロロエタンとは異なるエチレンから出発して直接製造される少なくとも1つのエチレン誘導体化合物の、および任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送され、そして画分Bが、1,2−ジクロロエタンの、および任意選択的にそれから誘導される任意の化合物の製造に搬送される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1,2−ジクロロエタンが塩化ビニルを生成するために1,2−ジクロロエタン分解工程にかけられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
塩化ビニルがポリ塩化ビニルを生成するために重合されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素源が、ナフサ、ガスオイル、天然ガス液、エタン、プロパン、ブタン、イソブタンおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素源が、エタン、プロパン、ブタンおよびプロパン/ブタン混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
画分Bが、画分Bの全体積に対して40体積%〜99.5体積%のエチレンを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
画分Aが、画分Bのエチレンの体積含有率の10%〜90%を表わすようなものである体積含有率のエチレンを含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
画分Cが燃料として燃やされるかまたは化学的に付加価値化されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2011−521997(P2011−521997A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512088(P2011−512088)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056638
【国際公開番号】WO2009/147100
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】