説明

1,3−アゾール縮合多環化合物および有機電界発光素子

【課題】有機電界発光素子用材料として有用な1,3−アゾール縮合多環化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式[V]で示される1,3−オキサゾール縮合多環化合物。


(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基等を表わす。Y1、Y2は、それぞれ独立に、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基等を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な有機化合物およびそれを用いた有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子における最近の進歩は著しく、低印加電圧で高輝度であり、発光波長の多様性、高速応答性を有し、薄型、軽量の発光デバイス化が可能であることから、広汎な用途への可能性を示唆している。
【0003】
しかしながら、現状では発光効率などの初期特性や長時間の発光による輝度劣化などの耐久特性の更なる向上が必要である。これらの初期特性や耐久特性の向上には、素子を構成するホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホールブロック層、電子輸送層や電子注入層等のすべての層について、総合的なデザインと最適化が必要となる。
【0004】
従来公知のホールブロック層、電子輸送層や電子注入層に用いる材料としては、フェナントロリン化合物、アルミニウムキノリノール錯体、オキサジアゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアゾール化合物、アゾール化合物等が挙げられる。これらの中で、アゾール化合物については、発光層または電子輸送層に用いた報告例がある(特許文献1乃至3)。しかし、これらの有機発光素子の初期特性および耐久特性は十分ではない。
【0005】
【特許文献1】特開2005−82703号公報
【特許文献2】特開平10−340786号公報
【特許文献3】特開平5−214335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機電界発光素子用材料として有用な1,3−アゾール縮合多環化合物を提供することを目的とする。
【0007】
また、高発光輝度で高発光効率な有機発光素子、または高耐久性で長時間の発光による輝度劣化が小さい有機発光素子を提供することを目的とする。
【0008】
さらには、製造が容易でかつ比較的安価に作成可能な有機発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物は、下記一般式[I]で示されることを特徴とする。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Arは、1,3−アゾール環と縮合している、単環もしくは縮合多環の炭化水素芳香環または複素芳香環を表し、該芳香環は置換基を有していても良い。
【0012】
mは2乃至5の正の整数であって、同一分子中の複数の1,3−アゾール環のうち少なくとも2つは、一方のアゾール環内非炭素原子が他方のアゾール環内非炭素原子と共に、2座型キレート配位部位を形成するように縮合している。
【0013】
Xは各1,3−アゾール環で独立に、O、S、N−R’を表す。
【0014】
YおよびR’は、それぞれ独立に、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基から選ばれる基を表わす。)
【発明の効果】
【0015】
本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物を用いた有機発光素子、特に本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物を電子輸送層に用いた有機発光素子は、低い印加電圧で高輝度な発光が得られ、耐久性にも優れている。
【0016】
さらに、素子の作成も真空蒸着あるいはキャステイング法等を用いて作成可能であり、比較的安価で大面積の素子を容易に作成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。はじめに、本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物について説明する。
【0018】
本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物は上記一般式[I]で示される。該化合物は、2つの1,3−アゾール環内非炭素原子によって2座型キレート配位能を有しており、該キレート配位部位が陰極または電子注入層を形成するアルカリ金属等に配位して、発光素子の電子注入性が著しく改善され、素子の駆動が低電圧化することを特徴としている。
【0019】
また、本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物の好ましい例としては、下記一般式[II]乃至[IV]で示される化合物が挙げられ、より好ましい化合物としては、下記一般式[V]で示される化合物が挙げられる。
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、X1およびX2は、それぞれ独立に、O、S、N−R’を表す。
【0022】
R’、R1、R2、Y1、およびY2は、それぞれ独立に、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基から選ばれる基を表わす。)
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、Y1およびY2は、それぞれ独立に、置換あるいは無置換のアリール基、または置換あるいは無置換の複素環基を表す。)
【0025】
また、本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物の好ましい例としては、下記一般式[VI][VII]で示される化合物が挙げられる。
【0026】
【化4】

【0027】
(式中、X3、X4、およびX5は、それぞれ独立に、O、S、N−R’を表す。
【0028】
R’、Y3、Y4、およびY5は、それぞれ独立に、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基から選ばれる基を表わす。)
【0029】
上記一般式[I]におけるArとしては、以下に示すものが挙げられる。
ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環、トリフェニレン環、ピレン環、テトラセン環、ペリレン環、フルオレン環、ピリジン環、ピリダジン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、フェナントロリン環、フェナジン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環など
【0030】
これらの芳香環は、以下に挙げるような置換基を有していても良い。
【0031】
上記一般式[I]乃至[VII]における置換基の具体例を以下に示す。
【0032】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などが挙げられる。
【0033】
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ペリレニル基、トリフェニレニル基等が挙げられる。
【0034】
複素環基としては、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ビピリジル基、ターピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、キノリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジル基、フェナントロリル基などが挙げられる。
【0035】
上記置換基が有してもよい置換基としては、以下に示すものが挙げられる。
メチル基、エチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、フェナンスリル基、ピレニル基などのアリール基、ピリジル基、ビピリジル基、ターピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、キノリル基、カルバゾリル基、フェナントロリル基などの複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、フルオレニルフェニルアミノ基、ジフルオレニルアミノ基、ナフチルフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などの置換アミノ基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、シアノ基など
【0036】
次に、本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物の代表例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物は、一般的に知られている方法で合成できる。例えば、J.Med.Chem.,16,134(1973)などに記載の方法で2,3−ジアミノ−1,4−ヒドロキシベンゼン中間体を得る。そして、Chem.Lett.,1225(1982)、Heterocycles,55,1329(2001)などに記載の方法で、芳香族あるいは脂肪族カルボン酸と反応させて得ることができる。また必要であれば、パラジウム触媒を用いたSuzukiカップリング法(例えばChem.Rev.,95,2457(1995))などの合成法で、さらに修飾することも可能である。
【0042】
本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物は、従来の化合物に比べ電子輸送性の優れた化合物であり、有機発光素子の有機化合物を含む層、特に、電子輸送層用材料として有用である。また、真空蒸着法や溶液塗布法などによって形成した層は結晶化などが起こりにくく経時安定性に優れている。
【0043】
さらに、本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物は、少なくとも2つの1,3−アゾール環内非炭素原子が2座型キレート配位部位を有し、アルカリ金属等に配位することができる。従って、本発明の化合物を電子輸送層に用い、隣接する陰極としてAl−Li電極に代表されるアルカリ金属を含有する陰極、またはアルカリ金属を含有する電子注入層を設けた場合、発光素子の電子注入性が著しく改善され、発光素子の駆動電圧が低電圧化することが可能である。
【0044】
次に、本発明の有機電界発光素子について詳細に説明する。
【0045】
本発明の有機発光素子は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された有機化合物を含む一または複数の層を少なくとも有する有機電界発光素子である。そして、有機化合物を含む層の少なくとも一層が、上記本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物の少なくとも一種を含有する。
【0046】
また、本発明の有機発光素子は、有機化合物を含む層のうち少なくともホールブロック層、電子輸送層、電子注入層または発光層が、本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物の少なくとも一種を含有することが好ましい。さらに、本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物の中で、HOMOエネルギーレベルが比較的深い化合物はホールブロック性が高く、ホールブロック層や電子輸送層として特に好ましい。
【0047】
本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物を含む層は、真空蒸着法や溶液塗布法により陽極及び陰極の間に形成される。その有機層の厚みは10μmより薄く、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.01乃至0.5μmの厚みに薄膜化することが好ましい。
【0048】
図1乃至図6に本発明の有機発光素子の好ましい例を示す。
【0049】
図1は本発明の有機発光素子の一例を示す断面図である。図1は基板1上に陽極2、発光層3及び陰極4を順次設けた構成のものである。発光層3に使用する発光物質が、発光性能と共にホール輸送能および電子輸送能も有している場合、またはそれぞれの特性を有する化合物を複数種混合して使用する場合に、該素子構成は有用となる。
【0050】
図2は本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図2は基板1上に陽極2、ホール輸送層5、電子輸送層6及び陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、ホール輸送能と電子輸送能のどちらか一方あるいは両方の機能を有している発光材料を、性能に応じてホール輸送層5または電子輸送層6に用い、無発光性のホール輸送物質あるいは電子輸送物質と組み合わせる場合に有用である。また、この場合、発光層はホール輸送層5あるいは電子輸送層6のいずれかから成る。
【0051】
図3は本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図3は基板1上に陽極2、ホール輸送層5、発光層3、電子輸送層6及び陰極4を順次設けた構成のものである。該素子構成は、キャリヤ輸送と発光の機能を分離したものであり、ホール輸送性、電子輸送性、発光性の各特性を有する化合物と適時組み合わせて用いられる。よって該素子構成では、材料選択の自由度が極めて大きいと共に、発光波長を異にする種々の化合物が使用できるため、発光色相の多様化が可能になる。さらに、中央の発光層3に各キャリヤあるいは励起子を有効に閉じこめて、発光効率の向上を図ることも可能になる。
【0052】
図4は本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図4は図3に対してホール注入層7を陽極2側に挿入した構成であり、陽極2とホール輸送層5の密着性改善、あるいはホールの注入性改善に効果があり、発光素子の低電圧駆動化に寄与する。
【0053】
図5および図6は、本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図5および図6は、図3および図4に対して、ホールあるいは励起子(エキシトン)の陰極4側への抜けを抑制する層(ホールブロッキング層8)を、発光層3と電子輸送層6の間に挿入した構成である。イオン化ポテンシャルの非常に高い(HOMOエネルギーレベルの深い)化合物をホールブロッキング層8として用いると、発光効率の向上に効果的である。
【0054】
前記図1乃至図6は、あくまでごく基本的な素子構成であり、本発明の有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機層界面に絶縁性層を設ける、接着層あるいは干渉層を設ける、あるいはホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる2層から構成される等、多様な層構成にすることが可能である。
【0055】
本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物は、従来の化合物に比べ電子輸送性、発光性および耐久性の優れた化合物であり、図1乃至図6のいずれの形態でも使用することができる。
【0056】
本発明の有機発光素子は、本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物を用いるものであるが、従来公知のホール輸送性化合物、発光性化合物あるいは電子輸送性化合物などを、必要に応じて併用することも可能である。
【0057】
以下にこれらの化合物例を挙げるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0058】
【化9】

【0059】
【化10】

【0060】
【化11】

【0061】
【化12】

【0062】
【化13】

【0063】
【化14】

【0064】
本発明の有機発光素子において、本発明の1,3−アゾール縮合多環化合物を含有する層、および他の有機化合物を含有する層は、一般には真空蒸着法あるいは、適当な溶媒に溶解させて塗布法により薄膜を形成する。特に塗布法で成膜する場合は、適当な結着樹脂と組み合わせて膜を形成することも可能である。
【0065】
上記結着樹脂としては、広範囲な結着性樹脂より選択でき、例えば以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、尿素樹脂等
【0066】
また、上記の各樹脂を2種以上混合した樹脂や、複数種のモノマーから成る共重合体を、前記結着樹脂として使用してもよい。
【0067】
陽極材料としては、仕事関数の大きい材料が好ましい。例えば、金、銀、白金、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム等の金属単体、あるいはこれらの合金、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化スズインジウム(ITO),酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物を使用することができる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は単独で用いてもよく、複数併用することもできる。
【0068】
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、銀、鉛、スズ、クロム等の金属単体、あるいはこれらの合金、またはこれらの塩等を使用することができる。また、酸化スズインジウム(ITO)等の金属酸化の使用も可能である。さらに、陰極は一層構成でもよく、多層構成とすることも可能である。
【0069】
本発明で用いる基板としては、特に限定されないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜等を用いて、発色光をコントロールすることも可能である。
【0070】
なお、作製した発光素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層あるいは封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッソ樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂等の高分子膜、光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属などで被覆し、適当な封止樹脂により発光素子自体をパッケージングすることも可能である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
<合成例1[例示化合物A5の合成]>
【0073】
【化15】

【0074】
50mL三つ口フラスコに、以下の化合物を入れ、攪拌下170℃で6時間加熱した。
J.Med.Chem.,16,134(1973)に記載の方法により得られた2,3−ジアミノ−1,4−ジヒドロキシベンゼン[1]1.0g(7.13mmol)
3−ブロモ安息香酸[2]2.6g(12.9mmol)
ポリ(トリメチルシリルリン酸)10.0g
【0075】
反応後、水に続いて20wt%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系を中和した後、生じた沈殿を濾別して精製し、中間体化合物[3]2.15g(収率71%)を得た。
【0076】
続いて、100mL三つ口フラスコに、以下の化合物をを入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら70℃で2時間加熱還流させた。
中間体化合物[3]0.50g(1.06mmol)
9,9−ジメチルフルオレン−2−ボロン酸ピナコール[4]0.75g(2.34mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)61mg(0.053mmol)
トルエン25mLおよびエタノール12.5mL
10wt%炭酸ナトリウム水溶液12mL
【0077】
反応後、有機層をクロロホルムで抽出して濃縮した後、シリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール=30/1展開溶媒)で精製し、例示化合物A5を0.55g(収率75%)得た。
【0078】
<合成例2[例示化合物A23の合成]>
【0079】
【化16】

【0080】
200mL三つ口フラスコに、以下の化合物を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら145℃で30分加熱還流させた。
合成例1と同様の合成方法で得られた中間体化合物[5]0.70g(1.49mmol)
ジフェニルアミン[6]0.50g(2.98mmol)
酢酸パラジウム(II)10.2mg(0.030mmol)
トリ(o−トリル)ホスフィン18.1mg(0.060mmol)
ナトリウムtert−ブトキシド0.43g(4.50mmol)
o−キシレン70mL
【0081】
反応後、有機層をクロロホルムで抽出して濃縮した後、シリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール=20/1展開溶媒)で精製し、例示化合物A23を0.79g(収率82%)得た。
【0082】
<合成例3[例示化合物A30の合成]>
【0083】
【化17】

【0084】
50mL三つ口フラスコに、以下の化合物を入れ、攪拌下170℃で6時間加熱した。
J.Chem.Soc.,127,442(1925)に記載の方法により得られた2,3−ジアミノベンゼン−1,4−ジチオール[7]1.0g(5.80mmol)
3−ブロモ安息香酸[2]2.1g(10.4mmol)
ポリ(トリメチルシリルリン酸)10.0g
【0085】
反応後、水に続いて20wt%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系を中和した後、生じた沈殿を濾別して精製し、中間体化合物[8]1.80g(収率65%)を得た。
【0086】
続いて、合成例1に記載の方法と同様にして、Suzukiカップリング反応により例示化合物A30を得た。
【0087】
<合成例4[例示化合物A32の合成]>
【0088】
【化18】

【0089】
1,4−ジアミノベンゼンを原料として、ニトロ化と還元により1,2,3,4−テトラアミノベンゼン[9]を得た。
【0090】
続いて、50mL三つ口フラスコに、以下の化合物を入れ、攪拌下170℃で7時間加熱した。
1,2,3,4−テトラアミノベンゼン[9]1.0g(7.24mmol)
フェナントレン−9−カルボン酸[10]2.9g(13.0mmol)
ポリ(トリメチルシリルリン酸)10.0g
【0091】
反応後、水に続いて20wt%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系を中和した後、生じた沈殿を濾別してからシリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール=15/1展開溶媒)で精製し、例示化合物A32を2.49g得た(収率75%)。
【0092】
<合成例5[例示化合物A42の合成]>
【0093】
【化19】

【0094】
合成例1で得られた2,3−ジアミノ−1,4−ジヒドロキシベンゼン[1]を原料として、ニトロ化と還元反応により2,3,5,6−テトラアミノ−1,4−ジヒドロキシベンゼン[11]を得た。
【0095】
続いて、50mL三つ口フラスコに、[11]を0.8g(4.70mmol)、9,9−ジメチルフルオレン−2−カルボン酸[12]3.47g(14.6mmol)、ポリ(トリメチルシリルリン酸)8.0gを入れ、攪拌下170℃で7時間加熱した。反応後、水に続いて20wt%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系を中和した後、生じた沈殿を濾別してからシリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール=20/1展開溶媒)で精製し、例示化合物A42を1.10g得た(収率30%)。
【0096】
<実施例1>
図3に示す構造の素子を作成した。
【0097】
基板1としてのガラス基板上に、陽極2としての酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて120nmの膜厚で成膜したものを透明導電性支持基板として用いた。これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いでIPAで煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄したものを透明導電性支持基板として使用した。
【0098】
透明導電性支持基板上に、下記構造式で示される化合物Bのクロロホルム溶液をスピンコート法により15nmの膜厚で成膜しホール輸送層5を形成した。
【0099】
【化20】

【0100】
さらに下記構造式で示されるIr錯体およびCBP(重量比5:95)を真空蒸着法により30nmの膜厚で成膜し発光層3を形成した。蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は0.1乃至0.2nm/secの条件で成膜した。
【0101】
【化21】

【0102】
さらに、例示化合物A5を真空蒸着法により40nmの膜厚で成膜し電子輸送層6を形成した。蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は0.1乃至0.2nm/secの条件で成膜した。
【0103】
次に、陰極4として、アルミニウムとリチウム(リチウム濃度1原子%)からなる蒸着材料を用いて、上記有機層の上に真空蒸着法により厚さ50nmの金属層膜を形成し、さらに真空蒸着法により厚さ150nmのアルミニウム層を形成した。蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は1.0乃至1.2nm/secの条件で成膜した。さらに、窒素雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせ、アクリル樹脂系接着材で封止した。
【0104】
この様にして得られた素子に、ITO電極(陽極2)を正極、Al−Li電極(陰極4)を負極にして、10Vの直流電圧を印加すると15mA/cm2の電流密度で電流が素子に流れ、4220cd/m2の輝度で緑色の発光が観測された。
【0105】
さらに、電流密度を5.0mA/cm2に保ち100時間電圧を印加したところ、初期輝度1410cd/m2から100時間後1340cd/m2と輝度劣化は小さかった。
【0106】
<実施例2乃至12>
例示化合物A5に代えて、表1に示す化合物を用いた他は実施例1と同様に素子を作成し、同様な評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
<比較例1、2>
例示化合物A5に代えて、下記構造式で示される比較化合物C1、C2を用いた他は実施例1と同様に素子を作成し、同様な評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
【化22】

【0109】
【表1】

【0110】
<実施例13>
図3に示す構造の素子を作成した。
【0111】
実施例1と同様に、透明導電性支持基板上にホール輸送層5を形成した。
【0112】
さらに下記構造式で示されるフルオレン化合物Fを真空蒸着法により30nmの膜厚で成膜し発光層3を形成した。蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は0.1乃至0.2nm/secの条件で成膜した。
【0113】
【化23】

【0114】
さらに例示化合物A5を真空蒸着法により40nmの膜厚で成膜し電子輸送層6を形成した。蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は0.1乃至0.2nm/secの条件で成膜した。
【0115】
次に、実施例1と同様にして陰極4を形成し、封止した。
【0116】
この様にして得られた素子に、ITO電極(陽極2)を正極、Al−Li電極(陰極4)を負極にして、6Vの直流電圧を印加すると75mA/cm2の電流密度で電流が素子に流れ、2920cd/m2の輝度で青色の発光が観測された。
【0117】
さらに、電流密度を20mA/cm2に保ち100時間電圧を印加したところ、初期輝度780cd/m2から100時間後650cd/m2と輝度劣化は小さかった。
【0118】
<実施例14乃至20>
例示化合物A5に代えて、表2に示す化合物を用いた他は実施例13と同様に素子を作成し、同様な評価を行った。結果を表2に示す。
【0119】
<比較例3、4>
例示化合物A5に代えて、比較化合物C1、C2を用いた他は実施例13と同様に素子を作成し、同様な評価を行った。結果を表2に示す。
【0120】
【表2】

【0121】
<実施例21>
図2に示す構造の素子を作成した。
【0122】
実施例1と同様に、透明導電性支持基板上にホール輸送層5を形成した。
【0123】
さらに例示化合物A5を真空蒸着法により35nmの膜厚で成膜し発光層兼電子輸送層6を形成した。蒸着時の真空度は1.0×10-4Pa、成膜速度は0.1乃至0.2nm/secの条件で成膜した。
【0124】
次に、実施例1と同様にして陰極4を形成し、封止した。
【0125】
この様にして得られた素子に、ITO電極(陽極2)を正極、Al−Li電極(陰極4)を負極にして、8Vの直流電圧を印加すると100mA/cm2の電流密度で電流が素子に流れ、2190cd/m2の輝度で青色の発光が観測された。
【0126】
さらに、電流密度を30mA/cm2に保ち100時間電圧を印加したところ、初期輝度660cd/m2から100時間後510cd/m2と輝度劣化は比較的小さかった。
【0127】
<実施例22乃至28>
例示化合物A5に代えて、表3に示す化合物を用いた他は実施例21と同様に素子を作成し、同様な評価を行った。結果を表3に示す。
【0128】
<比較例5、6>
例示化合物A5に代えて、比較化合物C1、C2を用いた他は実施例21と同様に素子を作成し、同様な評価を行った。結果を表3に示す。
【0129】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明における有機発光素子の一例を示す断面図である。
【図2】本発明における有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明における有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明における有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明における有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【図6】本発明における有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0131】
1 基板
2 陽極
3 発光層
4 陰極
5 ホール輸送層
6 電子輸送層
7 ホール注入層
8 ホールブロッキング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[I]で示されることを特徴とする1,3−アゾール縮合多環化合物。
【化1】

(式中、Arは、1,3−アゾール環と縮合している、単環もしくは縮合多環の炭化水素芳香環または複素芳香環を表し、該芳香環は置換基を有していても良い。
mは2乃至5の正の整数であって、同一分子中の複数の1,3−アゾール環のうち少なくとも2つは、一方のアゾール環内非炭素原子が他方のアゾール環内非炭素原子と共に、2座型キレート配位部位を形成するように縮合している。
Xは各1,3−アゾール環で独立に、O、S、N−R’を表す。
YおよびR’は、それぞれ独立に、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基から選ばれる基を表わす。)
【請求項2】
下記一般式[II]乃至[IV]のいずれかで示されることを特徴とする請求項1に記載の1,3−アゾール縮合多環化合物。
【化2】

(式中、X1およびX2は、それぞれ独立に、O、S、N−R’を表す。
R’、R1、R2、Y1、およびY2は、それぞれ独立に、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基から選ばれる基を表わす。)
【請求項3】
下記一般式[V]で示されることを特徴とする請求項2に記載の1,3−オキサゾール縮合多環化合物。
【化3】

(式中、Y1およびY2は、それぞれ独立に、置換あるいは無置換のアリール基、または置換あるいは無置換の複素環基を表す。)
【請求項4】
下記一般式[VI]または[VII]で示されることを特徴とする請求項1に記載の1,3−アゾール縮合多環化合物。
【化4】

(式中、X3、X4、およびX5は、それぞれ独立に、O、S、N−R’を表す。
R’、Y3、Y4、およびY5は、それぞれ独立に、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基から選ばれる基を表わす。)
【請求項5】
陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された有機化合物を含む一または複数の層を少なくとも有する有機電界発光素子において、前記有機化合物を含む層の少なくとも一層が、請求項1乃至4のいずれかに記載の1,3−アゾール縮合多環化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項6】
前記1,3−アゾール縮合多環化合物の少なくとも一種を含有する層が、電子輸送層であることを特徴とする請求項5に記載の有機電界発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−127314(P2008−127314A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312823(P2006−312823)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】