説明

1,3−ジオール誘導体の製造方法

【課題】 本発明は、1,3-ジオール誘導体の新規な製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、次式(化1)よりなる1,3-ジオール誘導体の製造方法である。
【化1】


ここで、R1は、R0C0基(Rは、エチル基またはイソプロピル基)、RHNCO基(Rは、フェニル基または1-フェニルエチル基)、またはRCONH基(Rは、フェニル基)であり、R2は、メチル基またはエチル基である。R3,R3はともにフェニル基であり、R4,R4はともにメチル基であり、X1は0Tfである。R5はフェニル基である。反応温度は、-30〜60℃の範囲内にあることが好ましい。本発明によれば、光学活性の1,3-ジオール誘導体を合成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不斉カルバモイル化法または不斉エステル化法に基づく1,3-ジオール誘導体の製造方法に関するものであり、光学活性の1,3-ジオール誘導体を合成することができる。
【背景技術】
【0002】
化5に示すラセミ1,3-ジオール誘導体(5)は不斉医薬品の合成素子として重要であるが、その不斉合成は容易ではない(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【化5】

【0004】
従来、化6に示すラセミ1,3-ジオール誘導体(6)の酵素による光学分割(例えば、非特許文献2参照。)、あるいは化7,化8に示すプロキラル1,3-ジオール誘導体(9,11)を出発物とする酵素法(例えば非特許文献2,3参照。)が報告されている。
【0005】
【化6】

【化7】

【化8】

【0006】
一方、化9,10に示すプロキラル1,3-ジオール誘導体(14,16)を出発物とする化学法(例えば、非特許文献4,5参照。)が報告されている。
【0007】
【化9】

【化10】

【0008】
なお、発明者は、本発明に関連する技術内容を開示している(例えば、特許文献1および非特許文献6参照。)。
【0009】
【特許文献1】特開2003-313153
【非特許文献1】S. Akai, Yakugaku Zasshi, 2003, 123, 919-931.
【非特許文献2】N. Arai, N. Chikaraishi, M. Ikawa, S. Omura, I. Kuwajima, Tetrahedron: Asymmetry, 2004, 15, 733-741.
【非特許文献3】R. Chenevert, M. Simard, J. Bergeron, M. Dasser, Tetrahedron: Asymmetry, 2004, 15, 1889-1892.
【非特許文献4】B. M. Trost, T. Mino, J.Am.Chem.Soc., 2003, 125, 2410-2411.
【非特許文献5】T. Oriyama, H. Taguchi, D. Terakado, T. Sano, Chem. Lett., 2002, 26-27.
【非特許文献6】Y. Matsumura, T. Maki, S. Murakami, O. Onomura, J.Am.Chem.Soc., 2003, 125, 2052-2053
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の1,3-ジオール誘導体の製造方法では、以下のような問題点がある。
すなわち、酵素法は、基質濃度が低く、生産性が高くなく、また適用できる基質に制限があるという問題点がある。
一方、化学法に関してはわずかに2つが報告されているのみであり、使用できる方法に制限があるという問題点がある。
そこで、1,3-ジオール誘導体の製造に関して、新たな方法の開発が望まれている。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、1,3-ジオール誘導体の新規な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の1,3-ジオール誘導体の製造方法は、反応式(化11)よりなる方法である。
ここで、
R1,R2は、互いに異なり、炭素数2から18のアルコキシカルボニル基、炭素数1から18のアシルオキシ基、炭素数1から18のアミノカルボニル基、炭素数1から18のアシルアミノ基、炭素数6から18のアリール基、炭素数7から18のアラルキル基、炭素数1から18のアルキル基または水素原子である。
R3,R3はともに、炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から12のアリール基である。
R4,R4はともに、水素原子、または炭素数1から8のアルキル基であり、または、R4,R4は一体となって、炭素数3から6の環状アルカンを形成している。
R5は、炭素数1から18のアルキル基、炭素数6から18のアリール基、炭素数7から18のアラルキル基である。
Xは、OTf、Cl、Br、I、PF6、またはSbF6である。
【0013】
本発明の1,3-ジオール誘導体の製造方法によれば、光学活性の1,3-ジオール誘導体を合成することができる。
【0014】
本発明の1,3-ジオール誘導体の製造方法は、反応式(化12)よりなる方法である。
ここで、
R1,R2は、互いに異なり、炭素数2から18のアルコキシカルボニル基、炭素数1から18のアシルオキシ基、炭素数1から18のアミノカルボニル基、炭素数1から18のアシルアミノ基、炭素数6から18のアリール基、炭素数7から18のアラルキル基、炭素数1から18のアルキル基または水素原子である。
R3,R3はともに、炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から12のアリール基である。
R4,R4はともに、水素原子、または炭素数1から8のアルキル基であり、または、R4,R4は一体となって、炭素数3から6の環状アルカンを形成している。
R6は、炭素数1から18のアルキル基、炭素数6から18のアリール基、炭素数7から18のアラルキル基である。
Xは、OTf、Cl、Br、I、PF6、またはSbF6である。
Xは、ハロゲン原子である。
【0015】
本発明の1,3-ジオール誘導体の製造方法によれば、光学活性の1,3-ジオール誘導体を合成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明は、反応式(化11)よりなる方法であるので、1,3-ジオール誘導体の新規な製造方法を提供することができる。
【0017】
本発明は、反応式(化12)よりなる方法であるので、1,3-ジオール誘導体の新規な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、1,3-ジオール誘導体の製造方法にかかる第1の発明を実施するための最良の形態について説明する。ここでは、不斉カルバモイル化法による、1,3-ジオール誘導体の製造方法について説明し、その効果について言及する。
【0019】
本発明の1,3-ジオール誘導体の製造方法は、次式(化11)よりなる。すなわち、1,3-ジオール(1)とイソシアネートを、光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒の存在下で反応させることにより、光学活性の1,3-ジオール誘導体(2)を合成することができる。
【0020】
【化11】

ここで、
R1,R2は、互いに異なり、炭素数2から18のアルコキシカルボニル基、炭素数1から18のアシルオキシ基、炭素数1から18のアミノカルボニル基、炭素数1から18のアシルアミノ基、炭素数6から18のアリール基、炭素数7から18のアラルキル基、炭素数1から18のアルキル基または水素原子である。
R3,R3はともに、炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から12のアリール基である。
R4,R4はともに、水素原子、または炭素数1から8のアルキル基であり、または、R4,R4は一体となって、炭素数3から6の環状アルカンを形成している。
R5は、炭素数1から18のアルキル基、炭素数6から18のアリール基、炭素数7から18のアラルキル基である。
Xは、OTf、Cl、Br、I、PF6、またはSbF6である。
例えば、
R1は、R0C0基(Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、またはベンジル基)、
RC0O基(Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、またはベンジル基)、
RHNCO基(Rは、フェニル基、1-フェニルエチル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基)、
RCONH基(Rは、フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-クロルフェニル基、4-ジフェニル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基)、または
アリール基(フェニル基、2-チエニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-フリル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、または4-メチルフェニル基)である。
R2は、水素原子、メチル基、エチル基、アリール基(フェニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-フリル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、または4-メチルフェニル基)である。
R3,R3はともに、メチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、アリール基(フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-クロルフェニル基、4-ジフェニル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基)である。
R4,R4はともに、水素原子、メチル基、またはエチル基であり、または、R4,R4は一体となって、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、またはペンタメチレン基である。
R5は、エチル基、t-ブチル基、アリール基(フェニル基、2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-クロルフェニル基、4-クロルフェニル基、2-ジフェニル基、4-ジフェニル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基である。
Xは、OTf、Cl、Br、I、PF6、またはSbF6である。
【0021】
本発明に用いる溶媒としては、テトラハイドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルカーボネート等のカーボネート類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、へキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類等を採用することができる。
【0022】
反応温度は-30〜60℃の範囲内にあることが好ましい。また、反応温度は-10〜30℃の範囲内にあることがさらに好ましい。
反応温度が-30℃以上であると、反応が速やかに進行するという利点がある。反応温度が-10℃以上であると、この効果がより顕著になる。反応温度が60℃以下であると、反応のエナンチオ選択性が向上するという利点がある。反応温度が30℃以下であると、この効果がより顕著になる。
【0023】
出発原料である1,3-ジオール(1)の濃度は0.05〜2 Mの範囲内にあることが好ましい。また、1,3-ジオール(1)の濃度は0.1〜1 Mの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0024】
1,3-ジオール(1)の濃度が0.05 M以上であると、単位容積当たりの生産性が高くなるという利点がある。1,3-ジオール(1)の濃度が0.1 M以上であると、この効果がより顕著になる。
【0025】
1,3-ジオール(1)の濃度が2 M以下であると、反応液の均一性が高まるという利点がある。1,3-ジオール(1)の濃度が1 M以下であると、この効果がより顕著になる。
【0026】
イソシアネートの濃度は0.05〜2 Mの範囲内にあることが好ましい。また、イソシアネートの濃度は0.1〜1 Mの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0027】
イソシアネートの濃度が0.05 M以上であると、単位容積当たりの生産性が高くなるという利点がある。イソシアネートの濃度が0.1 M以上であると、この効果がより顕著になる。
【0028】
イソシアネートの濃度が2 M以下であると、反応液の均一性が高まるという利点がある。イソシアネートの濃度が1 M以下であると、この効果がより顕著になる。
【0029】
光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒の濃度は0.0001〜0.1 Mの範囲内にあることが好ましい。また、オキサゾリン−銅錯体触媒の濃度は0.0005〜0.05 Mの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0030】
光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒の濃度が0.0001 M以上であると、反応が速やかに進行するという利点がある。光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒の濃度が0.0005 M以上であると、この効果がより顕著になる。
【0031】
光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒の濃度が0.1 M以下であると、触媒当たりの生産性が高くなるという利点がある。光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒の濃度が 0.05 M以下であると、この効果がより顕著になる。
【0032】
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、本発明が反応式(化11)よりなる方法であるので、光学活性の1,3-ジオール誘導体を合成することができる。その結果、1,3-ジオール誘導体の新規な製造方法を提供することができる。
【0033】
つぎに、1,3-ジオール誘導体の製造方法にかかる第2の発明を実施するための最良の形態について説明する。ここでは、不斉エステル化法による、1,3-ジオール誘導体の製造方法について説明し、その効果について言及する。
【0034】
本発明の1,3-ジオール誘導体の製造方法は、次式(化12)よりなる。すなわち、1,3-ジオール(3)とカルボン酸ハライド化合物を、光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒と塩基の存在下で反応させることにより、光学活性の1,3-ジオール誘導体(4)を合成することができる。
【0035】
【化12】

ここで、
R1,R2は、互いに異なり、炭素数2から18のアルコキシカルボニル基、炭素数1から18のアシルオキシ基、炭素数1から18のアミノカルボニル基、炭素数1から18のアシルアミノ基、炭素数6から18のアリール基、炭素数7から18のアラルキル基、炭素数1から18のアルキル基または水素原子である。
R3,R3はともに、炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から12のアリール基である。
R4,R4はともに、水素原子、または炭素数1から8のアルキル基であり、または、R4,R4は一体となって、炭素数3から6の環状アルカンを形成している。
R6は、炭素数1から18のアルキル基、炭素数6から18のアリール基、炭素数7から18のアラルキル基である。
Xは、OTf、Cl、Br、I、PF6、またはSbF6である。
Xは、ハロゲン原子である。
例えば、
R1は、R0C0基(Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、またはベンジル基)、
RC0O基(Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、またはベンジル基)、
RHNCO基(Rは、フェニル基、1-フェニルエチル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基)、
RCONH基(Rは、フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-クロルフェニル基、4-ジフェニル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基)、または
アリール基(フェニル基、2-チエニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-フリル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、または4-メチルフェニル基)である。
R2は、水素原子、メチル基、エチル基、アリール基(フェニル基、2-チエニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-フリル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、または4-メチルフェニル基)である。
R3,R3はともに、イソプロピル基、t-ブチル基、アリール基(フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-クロルフェニル基、4-ジフェニル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基)である。
R4,R4はともに、水素原子、メチル基、またはエチル基であり、または、R4,R4は一体となって、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、またはペンタメチレン基である。
R6は、メチル基、エチル基、t-ブチル基、イソプロピル基、アリール基(フェニル基、2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-クロルフェニル基、4-クロルフェニル基、2-ジフェニル基、4-ジフェニル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基である。
Xは、OTf、Cl、Br、I、PF6、またはSbF6である。
Xは、Cl、Brである。
【0036】
本発明に用いる塩基としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルプロパンジアミン等の脂肪族3級アミン化合物、ピリジン、N,N−ジメチルベンジルアミン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−メチルイミダゾール、N−エチルイミダゾール等の芳香族三級アミン化合物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等の無機炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物を挙げることができる。
【0037】
本発明に用いる溶媒としては、テトラハイドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルカーボネート等のカーボネート類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、へキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類等を採用することができる。
【0038】
反応温度は-30〜60℃の範囲内にあることが好ましい。また、反応温度は-10〜30℃の範囲内にあることがさらに好ましい。
反応温度が-30℃以上であると、反応が速やかに進行するという利点がある。反応温度が-10℃以上であると、この効果がより顕著になる。反応温度が60℃以下であると、反応のエナンチオ選択性が向上するという利点がある。反応温度が30℃以下であると、この効果がより顕著になる。
【0039】
出発原料である1,3-ジオール(3)の濃度は0.05〜2 Mの範囲内にあることが好ましい。また、1,3-ジオール(3)の濃度は0.1〜1 Mの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0040】
1,3-ジオール(3)の濃度が0.05 M以上であると、単位容積当たりの生産性が高くなるという利点がある。1,3-ジオール(3)の濃度が0.1 M以上であると、この効果がより顕著になる。
【0041】
1,3-ジオール(3)の濃度が2 M以下であると、反応液の均一性が高まるという利点がある。1,3-ジオール(3)の濃度が1 M以下であると、この効果がより顕著になる。
【0042】
カルボン酸ハライド化合物の濃度は0.05〜2 Mの範囲内にあることが好ましい。また、カルボン酸ハライド化合物の濃度は0.1〜1 Mの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0043】
カルボン酸ハライド化合物の濃度が0.05 M以上であると、単位容積当たりの生産性が高くなるという利点がある。カルボン酸ハライド化合物の濃度が0.1 M以上であると、この効果がより顕著になる。
【0044】
カルボン酸ハライド化合物の濃度が2 M以下であると、反応液の均一性が高まるという利点がある。カルボン酸ハライド化合物の濃度が1 M以下であると、この効果がより顕著になる。
【0045】
塩基の濃度は0.05〜2 Mの範囲内にあることが好ましい。また、塩基の濃度は0.1〜1 Mの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0046】
塩基の濃度が0.05 M以上であると、単位容積当たりの生産性が高くなるという利点がある。塩基の濃度が0.1 M以上であると、この効果がより顕著になる。
【0047】
塩基の濃度が2 M以下であると、反応液の撹拌効率が高まるという利点がある。塩基の濃度が1 M以下であると、この効果がより顕著になる。
【0048】
光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒の濃度は0.0001〜0.1 Mの範囲内にあることが好ましい。また、光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒の濃度は0.0005〜0.05 Mの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0049】
光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒の濃度が0.0001 M以上であると、反応が速やかに進行するという利点がある。光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒の濃度が0.0005 M以上であると、この効果がより顕著になる。
【0050】
光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒の濃度が0.1 M以下であると、触媒当たりの生産性が高くなるという利点がある。光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒の濃度が 0.05 M以下であると、この効果がより顕著になる。
【0051】
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、本発明が反応式(化12)よりなる方法であるので、光学活性の1,3-ジオール誘導体を合成することができる。その結果、1,3-ジオール誘導体の新規な製造方法を提供することができる。
【0052】
なお、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【実施例】
【0053】
つぎに、本発明にかかる第1の実施例について具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことはもちろんである。
ここでは、不斉カルバモイル化法による、1,3-ジオール誘導体の製造方法にかかる実施例を説明する。
【0054】
実施例1
Ethyl (-)-2-hydroxymethyl-2-(phenylcarbamoyloxy)methylbutyrate(19)の合成
【0055】
【化13】

【0056】
Trifluoromethanesulfonic acid copper(II) salt Cu(CF3SO3)20.0181g(Mw 361.69, 0.05mmol)と(S)-(-)-2,2’-Isopropylidenebis(4-phenyl-2-oxazoline) 0.0167g(Mw334.42, 0.05mmol)を少量のCH2Cl2中 (4 mL)で混合し、Copper saltが溶けた後(30 min以内) , CH2Cl2を減圧留去すると青緑色の固体が残った。このフラスコ内にEthyl 2,2-bis (hydroxymethyl)butyrate 0.088g(Mw 176.21, 0.5mmol)を加えてTetrahydrofuran 2mlに溶解し、その溶液を氷水中で冷却した。 約10分冷却した後Phenyl isocyanate 0.054ml(Mw 119.12, d=1.10, 0.5mmol)を加えて撹拌した。一時間攪拌後、反応液に水(10 mL)を加え、Ethyl acetate(10 mL)で三回抽出した。有機層を集めて無水硫酸マグネシウムで乾燥させて濾過した後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒n-Hexane : Ethyl acetate = 4 : 1)で精製してEthyl (-)-2-hydroxymethyl-2- (phenylcarbamoyloxy)methylbutyrate(19)0.129g(Mw = 295.33, 88%)を得た。光学純度はHPLCにより決定した。
【0057】
生成物の分析結果は以下のとおりである。
Colorless oil. IR νmax; 3341, 2975, 1736, 1603, 1545, 1447, 1318, 1235, 1144, 1068, 862, 756, 693cm-1. 1HNMR(300MHz, CDCl3)δ; 0.91(t, J=7.5Hz, 3H), 1.28 (t, J=6.9Hz, 3H), 1.56-1.72(m, 2H), 2.94 (t, J=6.9Hz, 1H), 3.68(dd, J=6.9, 12.0Hz, 1H), 3.79(dd, J=6.9, 12.0Hz, 1H), 4.21 (q, J=7.2Hz, 2H), 4.40(d, J=11.4Hz, 1H), 4.49 (d, J=11.7Hz, 1H), 6.38(s, 1H), 7.09(t, J=6.6Hz, 1H), 7.29-7.36(m, 4H). 88%yield HPLC: chiralpack AD column(4.6mmφ, 25cm), n-Hexane : Isopropanol = 10 : 1, wavelength: 220nm, flow rate: 1.0ml/min. retention time: 16.4min([-], enriched), 18.2min([+]), 55%ee. [α]23.8D -6.71 (c 0.50, CHCl3).
【0058】
実施例2
Isopropyl (-)-2-hydroxymethyl-2-(phenylcarbamoyloxy)methylbutyrate(21)の合成
【0059】
【化14】

【0060】
合成方法については、Ethyl 2,2-bis(hydroxymethyl)butyrateに代えて、Iso-propyl 2,2-bis(hydroxymethyl)butyrate 0.095g(Mw 190.24, 0.5mmol)を用いた以外、実施例1と同様である。
【0061】
生成物の分析結果は以下のとおりである。
Colorless oil. IR νmax; 3334, 2979, 1709, 1601, 1545, 1503, 1447, 1375, 1316, 1225, 1146, 1107, 1067, 754, 693cm-1. 1HNMR(300MHz, CDCl3) δ; 0.91 (t, J=7.5Hz, 3H), 1.26 (m, 6H), 1.54-1.71 (m, 2H), 2.87 (t, J=7.2Hz, 1H), 3.65-3.81(m, 2H), 4.38(d, J=11.7Hz, 1H), 4.48 (d, J=11.1Hz, 1H), 5.10(sep, J=6.6Hz, 1H), 6.68 (s, 1H), 7.09(t, J=6.6Hz, 1H), 7.29-7.36(m, 4H). 52% yield, 60%ee HPLC: chiralpack AD column(4.6mmφ, 25cm), n-Hexane : Isopropanol = 10 : 1, wavelength: 220nm, flow rate: 1.0ml/min. retention time: 13.0min([-], enriched), 15.7min([+]). [α]22.3D-6.78(c 1.50, CHCl3).
【0062】
実施例3
(+)-2-Hydroxymethyl-2-(phenylcarbamoyloxy)methyl-N-phenylbutyramide(23)の合成
【0063】
【化15】

【0064】
合成方法については、Ethyl 2,2-bis(hydroxymethyl)butyrateに代えて、2-Ethyl-2- phenylcarbamoyl-1,3-propanediol 0.112g(Mw 223.27, 0.5mmol)を用いた以外、実施例1と同様である。
【0065】
生成物の分析結果は以下のとおりである。
White solid M.p. 47-50℃. IR νmax; 3300, 3061, 2970, 1713, 1663, 1601, 1501, 1445, 1316, 1231, 1069, 899, 754, 693, 507cm-1. 1HNMR(300MHz, CDCl3) δ; 0.97(t, J=7.5Hz, 3H), 1.62-1.69 (m, 1H), 1,86-1.95 (m, 1H), 3.78 (d, J=8.7Hz, 2H), 3.79-3.95 (m, 1H), 4.19(d, J=11.7Hz, 1H), 4.74 (d, J=11.7Hz, 1H), 6.86(s, 1H), 7.11(t, J=7.2Hz, 2H), 7.27-7.35(m, 6H), 7.55(d, J=8.1Hz, 2H), 9.13(s, 1H). 75% yield, 61%ee HPLC: chiralcel OJ column(4.6mmφ, 25cm), n-Hexane : Isopropanol = 10 : 1, wavelength: 254nm, flow rate: 1.0ml/min. retention time: 21.1min([+], enriched), 15.7min([-]).[α]22.0D 33.68(c 1.00, CHCl3). Calcd for C19H22N2O4: C, 66.65; H, 6.48; N, 8.18, Found: C, 66.47; H, 6.56; N, 8.08.
【0066】
実施例4
(+)-2-Hydroxymethyl-2-(phenylcarbamoyloxy)methyl-N-(1R-phenylethyl)butyramide(25)の合成
【0067】
【化16】

【0068】
合成方法については、Ethyl 2,2-bis(hydroxymethyl)butyrateに代えて、2-Ethyl-2- (1R-phenylethyl)carbamoyl-1,3-propanediol 0.126g(Mw 251.32, 0.5mmol)を用いた以外、実施例1と同様である。
【0069】
生成物の分析結果は以下のとおりである。
Colorless oil. IR νmax; 3330, 3063, 2973, 2882, 1713, 1640, 1601, 1541, 1450, 1377, 1316, 1225, 1117, 1067, 901, 756, 698, 509cm-1. 1HNMR(300MHz, CDCl3) δ; 0.90(t, J=7.5Hz, 3H), 1.46 (d, J=6.9Hz, 3H), 1.54-1.63 (m, 1H), 1.74-1.81 (m, 1H), 3.53 (s, 1H), 3.68-3.87(m, 2H), 4.15 (d, J=11.4Hz, 1H), 4.57(d, J=11.7Hz, 1H), 5.14(t, J=7.2Hz, 1H), 6.76(s, 1H), 7.10-7.13(m, 2H), 7.25-7.34(m, 9H). 91%yield, 81%ee, HPLC: chiralpack AD column(4.6mmφ, 25cm), n-Hexane : Isopropanol = 10 : 1, wavelength: 254nm, flow rate: 0.3ml/min. retention time: 39.4min([+], enriched), 42.5min([-]).[α]25.1D33.32 (c 0.52, CHCl3).
【0070】
実施例5
(+)-2-Benzoylamino-3-hydroxy-2-methyl-1-phenylcarbamoyloxypropane(27)の合成
【0071】
【化17】

【0072】
合成方法については、Ethyl 2,2-bis(hydroxymethyl)butyrateに代えて、2-Benzoylamino -2-methyl-1,3-propanediol 0.105g(Mw 209.24, 0.5mmol)を用いた以外、実施例1と同様である。
【0073】
生成物の分析結果は以下のとおりである。
White solid. m.p. 128-131℃. IR νmax; 3300, 3140, 2979, 1717, 1647, 1603, 1549, 1447, 1318, 1235, 1069, 911, 756, 731, 693, 648, 507cm-1. 1HNMR(300MHz, CDCl3) δ; 1.50(s, 1H), 3.67-3.73(m, 1H), 3.86(d, J=12.6Hz, 1H), 4.41(d, J=11.4Hz, 1H), 4.53(d, J=11.7Hz, 2H), 7.01(s, 1H), 7.102(t, J=7.5Hz, 1H), 7.29-7.54(m, 6H), 7.78(d, J=6.9Hz, 2H). 87%yield, 77%ee, HPLC: chiralcel OJ column(4.6mmφ, 25cm), n-Hexane : Isopropanol = 10 : 1, wavelength: 254nm, flow rate: 1.0ml/min. retention time: 26.7min, 28.4min(enriched). [α]21.1D 6.84 (c 1.00, MeOH).
【0074】
以上のことから、本実施例1〜5よれば、55〜81%eeの光学活性1,3-ジオール誘導体を合成することができる。このように、光学活性1,3-ジオール誘導体を合成することができるのは、光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒と1,3-ジオールが反応液中で新たな光学活性な錯体を形成し、この錯体中の2つの水酸基へのイソシアネートの近づきやすさに差が生じ、イソシアネートが一方の水酸基のみとエナンチオ選択的に反応するためであると考えられる。
【0075】
つぎに、本発明にかかる第2の実施例について具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことはもちろんである。
ここでは、不斉エステル化法による、1,3-ジオール誘導体の製造方法にかかる実施例を説明する。
【0076】
実施例6
(+)-2-Benzoyloxymethyl-2-hydroxymethyl-N-phenylbutyramide(29)の合成
【0077】
【化18】

【0078】
初めにTrifluoromethanesulfonic acid copper(II) salt Cu(CF3SO3)20.0181g(Mw 361.69, 0.05mmol)と(S)-(-)-2,2’-Isopropylidenebis(4-phenyl-2-oxazoline) 0.0167g(Mw334.42, 0.05mmol)を少量のCH2Cl2中(4 mL)で混合し、Copper saltが溶けた後(30 min以内) , CH2Cl2を減圧留去すると青緑色の固体が残った。このフラスコ内に2,2-Bis-hydroxymethyl-N- phenylbutyramide 0.112g(Mw 223.27, 0.5mmol)、Diisopropylethyl amine 0.131ml(Mw 129.25, d=0.742, 0.75mmol)を加えてTetrahydrofuran 2mlに溶解させた後Benzoyl chloride 0.058ml(Mw 140.57, d=1.211, 0.5mmol)を加えて一時間撹拌した。反応液に水(10 mL)を加え、Ethyl acetate(10 mL)で三回抽出した。有機層を集めて無水硫酸マグネシウムで乾燥させて濾過した後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒n-Hexane : Ethyl acetate = 5 : 1)で精製して(+)-2-Benzoyloxymethyl-2- hydroxymethyl-N-phenylbutyramide(29)0.077g(Mw = 327.37, 47%)を得た。光学純度はHPLCにより決定した。
【0079】
生成物の分析結果は以下のとおりである。
White solid. M.p. 85-95℃ IR νmax; 3311, 3063, 2971, 2882, 1722, 1655, 1601, 1541, 1501, 1447, 1316, 1279, 1177, 1115, 1071, 1028, 970, 911, 756, 712, 693, 509cm-1. 1HNMR(300MHz, CDCl3) δ; 1.00(t, J=7.5Hz, 3H), 1.71-1.83(m, 1H), 1.93-2.05(m, 1H), 3.392(s, 1H), 3.79(d, J=12.0Hz, 1H), 4.00(d, J=12.0Hz, 1H), 4.39(d, J=12Hz, 1H), 4.88(d, J=11.7Hz, 1H), 7.11(t, J=7.5Hz, 1H), 7.33(t, J=7.8Hz, 2H), 7.47(t, J=7.5Hz, 2H), 7.53-7.63(m, 2H), 8.05(t, J=7.2Hz, 2H), 9.00(s, 1H). 47%yield, 23%ee, HPLC: chiralcel OD column(4.6mmφ, 25cm), n-Hexane : Isopropanol = 30 : 1, wavelength: 254nm, flow rate: 1.0ml/min. retention time: 58.6min([+], enriched), 64.8min([-]).[α]22.0D 3.9 (c 0.78, CHCl3).
【0080】
実施例7
(+)-2-Benzoylamino-1-benzoyloxy-3-hydroxy-2-methylpropane(31)の合成
【0081】
【化19】

【0082】
合成方法については、2,2-Bis(hydroxymethyl)-N-phenylbutyramideに代えて、2- benzoylamino-2-methyl-1,3-propanediol 0.105g(Mw 209.24, 0.5mmol)を用いた以外、実施例6と同様である。
【0083】
生成物の分析結果は以下のとおりである。
White solid. m.p. 102-105℃. IR νmax; 3381, 3065, 2942, 2882, 1725, 1649, 1603, 1580, 1541, 1489, 1453, 1370, 1316, 1283, 1177, 1117, 1071, 1028, 990, 911, 880, 804, 716cm-1. 1HNMR(300MHz, CDCl3) δ; 1.54(s, 3H), 3.75-3.82(m, 1H), 3.88(dd, J=5.1, 11.7Hz, 1H), 4.403(s, 1H), 4.61(d, J=11.1Hz, 1H), 4.68(d, J=11.7Hz, 1H),6.79(s, 1H), 7.41-7.55(m, 5H), 7.61(t, J=7.5Hz, 1H), 7.77(d, J=6.6Hz, 2H), 8.06(d, J=7.2Hz, 2H). 68%yield, 43%ee, HPLC: chiralcel OJ column(4.6mmφ, 25cm), n-Hexane : Isopropanol = 10 : 1, wavelength: 254nm, flow rate: 1.0ml/min. retention time: 18.7min([-],), 64.8min([+], enriched). [α]23.1D17.29(c 0.70, CHCl3).
【0084】
以上のことから、本実施例6,7よれば、23〜43%eeの光学活性1,3-ジオール誘導体を合成することができる。このように、光学活性1,3-ジオール誘導体を合成することができるのは、光学活性ビスオキサゾリン−銅錯体触媒と1,3-ジオールが反応液中で新たな光学活性な錯体を形成し、この錯体中の2つの水酸基へのカルボン酸ハライド化合物の近づきやすさに差が生じ、カルボン酸ハライド化合物が一方の水酸基のみとエナンチオ選択的に反応するためであると考えられる。
【0085】
つぎに、不斉エステル化法と不斉カルバモイル化法を比較する。実施例6(不斉エステル化法)と実施例3(不斉カルバモイル化法)を比較すると、実施例6が23%eeであるのに対して実施例3は61%eeであり、不斉エステル化法よりも不斉カルバモイル化法の方が光学活性の高い1,3-ジオール誘導体を合成することができる。また、実施例7(不斉エステル化法)と実施例5(不斉カルバモイル化法)を比較すると、実施例7が43%eeであるのに対して実施例5は77%eeであり、不斉エステル化法よりも不斉カルバモイル化法の方が光学活性の高い1,3-ジオール誘導体を合成することができる。このように、不斉エステル化法よりも不斉カルバモイル化法の方が光学活性の高い1,3-ジオール誘導体を合成することができるのは、不斉エステル化された生成物は不斉エステル化の反応条件で一部エステル基の転位が生じ部分的にラセミ化し光学純度が低下するが、不斉カルバモイル化された生成物は不斉カルバモイル化の反応条件でカルバモイル基の転位が全く起こらないことが、理由のひとつであると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(化1)よりなる1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【化1】

ここで、
R1、R2は、互いに異なり、炭素数2から18のアルコキシカルボニル基、炭素数1から18のアシルオキシ基、炭素数1から18のアミノカルボニル基、炭素数1から18のアシルアミノ基、炭素数6から18のアリール基、炭素数7から18のアラルキル基、炭素数1から18のアルキル基または水素原子である。
R3,R3はともに、炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から12のアリール基である。
R4,R4はともに、水素原子、または炭素数1から8のアルキル基であり、または、R4,R4は一体となって、炭素数3から6の環状アルカンを形成している。
R5は、炭素数1から18のアルキル基、炭素数6から18のアリール基、炭素数7から18のアラルキル基である。
Xは、OTf、Cl、Br、I、PF6、またはSbF6である。
【請求項2】
次式(化2)よりなる請求項1記載の1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【化2】

ここで、
R1は、R0C0基(Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、またはベンジル基)、
RC0O基(Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、またはベンジル基)、
RHNCO基(Rは、フェニル基、1-フェニルエチル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基)、
RCONH基(Rは、フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-クロルフェニル基、4-ジフェニル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基)、または
アリール基(フェニル基、2-チエニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-フリル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、または4-メチルフェニル基)である。
R2は、水素原子、メチル基、エチル基、アリール基(フェニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-フリル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、または4-メチルフェニル基)である。
R3,R3はともに、メチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、アリール基(フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-クロルフェニル基、4-ジフェニル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基)である。
R4,R4はともに、水素原子、メチル基、またはエチル基であり、または、R4,R4は一体となって、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、またはペンタメチレン基である。
R5は、エチル基、t-ブチル基、アリール基(フェニル基、2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-クロルフェニル基、4-クロルフェニル基、2-ジフェニル基、4-ジフェニル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基である。
Xは、OTf、Cl、Br、I、PF6、またはSbF6である。
【請求項3】
R3,R3は、ともにフェニル基であり、
R4,R4は、ともにメチル基であり、
Xは、OTfである
請求項2記載の1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【請求項4】
R1は、R0C0基(Rは、エチル基またはイソプロピル基)、RHNCO基(Rは、フェニル基または1-フェニルエチル基)、またはRCONH基(Rは、フェニル基)であり、
R2は、メチル基またはエチル基である
請求項2記載の1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【請求項5】
R5は、フェニル基である
請求項2記載の1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【請求項6】
反応温度は、-30〜60℃の範囲内にある
請求項2記載の1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【請求項7】
出発原料である1,3-ジオール(1)の濃度は0.05〜2 Mの範囲内にある
請求項2記載の1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【請求項8】
次式(化3)よりなる1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【化3】

ここで、
R1.R2は、互いに異なり、炭素数2から18のアルコキシカルボニル基、炭素数1から18のアシルオキシ基、炭素数1から18のアミノカルボニル基、炭素数1から18のアシルアミノ基、炭素数6から18のアリール基、炭素数7から18のアラルキル基、炭素数1から18のアルキル基または水素原子である。
R3,R3はともに、炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から12のアリール基である。
R4,R4はともに、水素原子、または炭素数1から8のアルキル基であり、または、R4,R4は一体となって、炭素数3から6の環状アルカンを形成している。
R6は、炭素数1から18のアルキル基、炭素数6から18のアリール基、炭素数7から18のアラルキル基である。
Xは、OTf、Cl、Br、I、PF6、またはSbF6である。
Xは、ハロゲン原子である。
【請求項9】
次式(化4)よりなる請求項8記載の1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【化4】

ここで、
R1は、R0C0基(Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、またはベンジル基)、
RC0O基(Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、またはベンジル基)、
RHNCO基(Rは、フェニル基、1-フェニルエチル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基)、
RCONH基(Rは、フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-クロルフェニル基、4-ジフェニル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基)、または
アリール基(フェニル基、2-チエニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-フリル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、または4-メチルフェニル基)である。
R2は、水素原子、メチル基、エチル基、アリール基(フェニル基、2-チエニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-フリル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、または4-メチルフェニル基)である。
R3,R3はともに、イソプロピル基、t-ブチル基、アリール基(フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-クロルフェニル基、4-ジフェニル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基)である。
R4,R4はともに、水素原子、メチル基、またはエチル基であり、または、R4,R4は一体となって、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、またはペンタメチレン基である。
R6は、メチル基、エチル基、t-ブチル基、イソプロピル基、アリール基(フェニル基、2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-クロルフェニル基、4-クロルフェニル基、2-ジフェニル基、4-ジフェニル基、1-ナフチル基、または2-ナフチル基である。
Xは、OTf、Cl、Br、I、PF6、またはSbF6である。
Xは、Cl、Brである。
【請求項10】
R3,R3は、ともにフェニル基であり、
R4,R4は、ともにメチル基であり、
Xは、OTfである
請求項9記載の1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【請求項11】
R1は、RHNCO基(Rは、フェニル基)、またはRCONH基(Rは、フェニル基)であり、
R2は、メチル基またはエチル基である
請求項9記載の1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【請求項12】
R6は、フェニル基である
請求項9記載の1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【請求項13】
反応温度は、-30〜60℃の範囲内にある
請求項9記載の1,3-ジオール誘導体の製造方法。
【請求項14】
出発原料である1,3-ジオール(3)の濃度は0.05〜2 Mの範囲内にある
請求項9記載の1,3-ジオール誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2006−219464(P2006−219464A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36982(P2005−36982)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【Fターム(参考)】