説明

1100℃で高い比表面積を有する酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び、任意で他の希土類酸化物ベースの組成物、その製造方法並びに触媒としてのその使用

第一態様では、本発明の組成物は酸化セリウム及び酸化ジルコニウムを必須の構成要素とし原子割合Ce/Zrが少なくとも1である。第二態様では、上記組成物は原子割合Ce/Zrが少なくとも1である酸化セリウム及び酸化ジルコニウム並びに、セリウム以外の少なくとも1の希土類酸化物を含有する。1100℃で焼成後、上記組成物は比表面積が第一態様では9m2/g以上、第二態様では19m2/g以上である。本発明の組成物は、特に内燃機関の排出ガス処理用触媒として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1100℃で高い比表面積を有する、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び、任意で、他の希土類酸化物をベースとする組成物に関し、又その製造方法並びに触媒としてのその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、「多機能性」触媒と呼ばれる触媒が、内燃機関からの排出ガスの(自動車後燃焼触媒作用による)処理に使用されている。多機能性触媒とは、特に排出ガス中に存在する一酸化炭素及び炭化水素の酸化だけでなく、特にこれらガス中に同様に存在する窒素酸化物の還元も実施可能であるもの(3元触媒)を意味する。今日、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムが、この種の触媒用の、特に重要で長所を有する2種の構成要素であることが判明している。これら触媒は、これらの効果を得るために高温でも高い比表面積を有する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
更に高温で使用することが可能で、その場合でも比表面積が非常に安定している触媒が求められている。
従って本発明の目標は、この要求に答えることの出来る触媒的組成物の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のため、本発明の第一の態様では、本発明の組成物は、本質的に酸化セリウム及び酸化ジルコニウムから構成され、少なくとも1のCe/Zr原子比であり、4時間1100℃で焼成後に9m2/g以上の比表面積を有する。
第二の態様では、本発明の組成物は、少なくとも1のCe/Zr原子比の酸化セリウム及び酸化ジルコニウム並びに、少なくとも1のセリウム以外の希土類酸化物ベースであり、4時間1100℃で焼成後に19m2/g以上の比表面積を有する。
【0005】
本発明は又、下記ステップを含む、これら組成物の製造方法に関する:
(a)セリウム化合物、ジルコニウム化合物、並びに適切であれば上記希土類化合物を含有する混合物を形成するステップ;
(b)上記混合物を塩基性化合物と接触させて、沈殿物を得るステップ;
(c)上記沈殿物を水性媒体中で加熱するステップ;
(d)陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートタイプの界面活性剤から選ばれる添加剤を、前記ステップから得られた沈殿物へ加えるステップ;並びに
(e)上記のように得られた沈殿物を焼成するステップ。
上記により、本発明の組成物は、1100℃の高温での焼成後でも高い比表面積を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の他の態様、詳細及び利点は、下記記載及び特定のものであるが本発明を限定するものではなく本発明の例示のための実施例で更に充分に明らかに示される。
本発明の記載において、用語「比表面積」は、雑誌The Journal of the American Chemical Society、60、309(1938)に記載されているBrunauer-Emmett-Teller法を基礎に確立されたASTM D3663-78標準に従った窒素吸着により決定されるBET比表面積を意味する。
更に、その後に所定の表面積が定まる焼成は、空気中で焼成される。
用語「希土類」は、イットリウム及び周期律表で57〜71の範囲の原子番号を有する元素により形成されるグループの元素を意味する。
特記しない限り、含有量は酸化物として表される。酸化セリウムは酸化第二セリウム(IV)の形である。
本発明の記載において特記しない限り、数値範囲内にはその限定値が含まれる。
【0007】
本発明の組成物にはその構成要素の性質により異なる2種の態様がある。第一の態様では、本発明の組成物は、本質的に酸化セリウム及び酸化ジルコニウムからなる。即ち、この組成物は、セリウム以外の希土類の形で上記組成物の表面積の安定化剤となりうる他の元素の酸化物を含まない。
第一の態様の場合、組成物中の酸化セリウムの量は、Ce/Zr原子比が少なくとも1であり、それは全組成物に対する酸化セリウムの重量%で少なくとも58%の割合に対応する。この割合は、好ましくは58%〜約80%であり、更に好ましくは58%〜約70%である。
【0008】
上記のように、この第一の態様の組成物は、4時間1100℃で焼成後に表面積が少なくとも9m2/gである。この表面積は、好ましくは少なくとも10m2/g、更に好ましくは少なくとも15m2/gである。更に、4時間1200℃で焼成後、これら同じ組成物は又、比表面積が通常2m2/g以上、好ましくは3m2/g以上、更に好ましくは4m2/g以上である。
これら同じ組成物は又、4時間900℃で焼成後に比表面積が通常45m2/g以上である。最後に、それらは4時間1000℃で焼成後に比表面積が通常20m2/g以上、好ましくは25m2/g以上である。
【0009】
本発明の第二の態様の場合、組成物は酸化セリウム、酸化ジルコニウム及びセリウム以外の少なくとも1の希土類酸化物をベースとする。従ってこの場合、組成物は少なくとも3種、更に好ましくは4種の酸化物を含有する。セリウム以外の希土類は、好ましくはイットリウム、ランタン、ネオジム及びプラセオジム並びにそれらの組み合わせから選ばれる。更に好ましいこの第二態様組成物として、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化ランタンをベースとするもの、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン及び酸化ネオジムをベースとするもの、並びに酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン及び酸化プラセオジムをベースとするものが挙げられる。
【0010】
又この第二態様の場合、セリウム以外の希土類酸化物の含有量は、全組成物に対し一般的に最大35%、好ましくは最大20重量%である。この含有量は、更に好ましくは最大15%、特に好ましくは最大10%である。又通常少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%である。
この第二種の組成物中のセリウム及びジルコニウムそれぞれの含有量は、Ce/Zr原子比が少なくとも1であり、それは上記のとおり、全組成物に対する酸化セリウムの重量%で少なくとも58%に対応する。この割合はここでは、更に好ましくは58%〜約90%、特に好ましくは58%〜約70%である。
【0011】
第二の態様の組成物の比表面積は、4時間1100℃で焼成後、通常19m2/g以上である。この表面積は、好ましくは21m2/g以上である。
更に、4時間1200℃で焼成後、これら同一の組成物は又、比表面積が通常3m2/g以上、好ましくは4m2/g以上、更に好ましくは最大6m2/gである。
これら同一の組成物は又、4時間900℃で焼成後に比表面積が通常60m2/g以上、好ましくは65m2/g以上である。最後に、それらは4時間1000℃で焼成後に比表面積が通常35m2/g以上、好ましくは40m2/g以上である。
【0012】
本発明の別の態様では、組成物は好ましくは固溶体の形状でもよい。これら組成物のX線回折スペクトルはこの場合、特に後者中で、純粋又は均一な単相の存在を明らかにする。この相は、実際蛍石タイプの結晶性構造に対応し、それは結晶化した酸化セリウム(IV)CeO2に類似し、その格子パラメーターは、純粋酸化第二セリウムに比べいくらかシフトして、ジルコニウム及び、可能であれば他の希土類の酸化セリウムの結晶格子への組み込みを反映し、その結果完全固溶体の形成を反映する。第一の態様の組成物の場合、この純粋相は1000℃の温度まで維持される。第二の態様の組成物の場合、それは1100℃の温度まで維持される。
【0013】
本発明の組成物の製造方法を下記に記載する。
この方法は下記ステップを含有する:
(a)セリウム化合物、ジルコニウム化合物、並びに適切であれば上記希土類化合物を含有する混合物を形成するステップ;
(b)上記混合物を塩基性化合物と接触させて、沈殿物を得るステップ;
(c)上記沈殿物を水性媒体中で加熱するステップ;
(d)陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートタイプの界面活性剤から選ばれる添加剤を、前記ステップから得られた沈殿物へ加えるステップ;並びに
(e)上記のように得られた沈殿物を焼成するステップ。
【0014】
本発明の方法の第一のステップ(a)は、液体媒体中で、ジルコニウム化合物、セリウム化合物及び任意で追加的な上記希土類の少なくとも1の化合物の混合物を製造するステップから構成される。
混合は、好ましくは水である液体媒体中で一般的に行われる。
【0015】
化合物は、好ましくは可溶性化合物である。それらは、好ましくはジルコニウム塩、セリウム塩及びランタニド塩である。これらの化合物は、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物及び硝酸セリウムアンモニウムから選ばれてもよい。
例えば、ジルコニウム硫酸塩、硝酸ジルコニル又は塩化ジルコニルが挙げられる。最も一般的に、硝酸ジルコニルが使用される。又特に例えば、硝酸塩又は硝酸セリウムアンモニウム等のセリウム(IV)塩が挙げられ、それらは本発明で特に適切である。硝酸セリウムも好ましく使用できる。少なくとも99.5%、更に好ましくは少なくとも99.9%の純度の塩を使用することが有利である。硝酸セリウム水溶液は、例えば硝酸と水酸化セリウム(IV)との反応により得られ、その水酸化セリウムは、セリウム(III)塩、例えばセリウム(III)の硝酸塩溶液を過酸化水素の存在下でアンモニア溶液と反応させて、従来法により調製できる。又特に、フランス国特許FR−A−2570087号公報記載のセリウム(III)硝酸塩溶液の電解酸化法により得られた硝酸セリウム溶液を使用することも出来、これは本発明では便利な原料を構成する溶液である。
【0016】
セリウム塩及びジルコニル塩の水溶液は、初期にある程度遊離酸性の場合があるが、それは塩基又は酸の添加により調節できる。しかし、上記のように実際にある程度の遊離酸性を有するセリウム塩及びジルコニウム塩初期溶液を使用することも、予めより大きい又は小さい範囲まで中和された溶液を使用することも同様に可能である。この中和は、この酸性を抑えるために上記混合物へ塩基性化合物を添加することにより行われてもよい。この塩基性化合物は、例えばアンモニア溶液又はアルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)水酸化物の溶液でもよいが、好ましくはアンモニア溶液である。
【0017】
最後に、出発混合物にセリウムがCe(III)型で含有される場合、本発明の方法において、過酸化水素等の酸化剤を使用することが好ましい。この酸化剤は、ステップ(a)中又はステップ(b)中、特に後者のステップの最後に、反応混合物へ添加して使用されることができる。
【0018】
又ジルコニウム又はセリウムの出発化合物として、ゾルも使用できる。用語「ゾル」は、ジルコニウム化合物又はセリウム化合物ベースのコロイド状サイズ、即ち約1nm〜約500nmのサイズの固体微粒子から構成される系を示し、この化合物は一般的にジルコニウムの酸化物及び/若しくは水酸化物、又はセリウムの酸化物及び/若しくは水酸化物であり、水性液体相中の懸濁液である。上記粒子は更に任意で、硝酸塩、酢酸塩、塩化物又はアンモニウムイオン等の、結合又は吸着した残留量のイオンを含有することができる。このゾル中で、ジルコニウム又はセリウムは、完全にコロイド形でもよく、又は同時にイオン形若しくはコロイド形でもよい。
【0019】
混合物は最初に化合物から固体状態で得て、次にそれを例えば水性ストック中へ導入して得てもよく、これら化合物の溶液から直接に出発して次にその溶液をいずれの順番で混合してもよい。
【0020】
本発明の方法の第二ステップ(b)で、上記混合物は塩基性化合物と接触させる。塩基又は塩基性化合物として、水酸化物タイプの製品を使用することができる。アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。2級、3級又は4級アミンを使用することもできる。しかし、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンによる汚染の危険性を減少させるために、アミン及びアンモニア水溶液が好ましい。又尿素も、挙げられる。
【0021】
混合物及び溶液を互いに接触する方法、即ちそれらの導入順序は重要ではない。しかし、この接触は塩基性化合物の溶液への混合物の導入により行われてもよい。この変形方法は、固溶体形の組成物を得るため好ましい。
混合物及び溶液間の接触又は反応、特に塩基性化合物溶液への混合物の添加は、単一ステップで、徐々に又は連続的に行われてもよく、好ましくは攪拌して行われる。又、好ましくは室温で行われる。
【0022】
本発明の次のステップ(c)は、水性媒体中の沈殿物の加熱ステップである。
この加熱は、塩基性化合物との反応後得られた反応混合物に対して直接、又は反応混合物から沈殿物を分離後に任意で洗浄して再度水へ戻して得られた懸濁液に対して、行うことが出来る。媒体が加熱される温度は、好ましくは少なくとも100℃、更に好ましくは少なくとも130℃である。加熱操作は、液体媒体を密封容器(オートクレーブタイプの密封反応器)中へ導入することにより行われてもよい。上記温度条件下で水性媒体中では、例示として挙げられる密封反応器中の圧力は、例えば1bar(105Pa)を超え165bar(1.65×107Pa)までの値の間、好ましくは5bar(5×105Pa)〜165bar(1.65×107Pa)で変化してもよい。加熱は又、100℃近くの温度用開放系反応器中で行われてもよい。
加熱は、空気中又は不活性ガス雰囲気中のいずれかで行われてもよく、好ましくは窒素中である。
【0023】
加熱時間は非常に広く変化でき、例えば1〜48時間、好ましくは2〜24時間である。同様に、温度上昇速度は重要ではなく、従って媒体の加熱により設定した反応温度へ達するまでに、例えば30分間〜4時間(これらの値は例示のためだけに示される)である。
加熱される媒体のpHは一般的に少なくとも5である。好ましくは、このpHは塩基性、即ち7を超え、更に好ましくは8以上である。
本発明では、数種の加熱操作を行うことができる。従って、加熱ステップ及び任意の洗浄操作ステップ後に得られた沈殿物は、水中に再懸濁され、次に別の加熱操作がこのように得られた媒体に対して行われてもよい。この別の加熱操作は、第一の方法で記載されたのと同一条件で行われる。
【0024】
本発明の次のステップ(d)は、上記ステップ後に得られた沈殿物へ、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、並びにカルボン酸及びその塩から選ばれる添加剤を添加することからなる。
この添加剤に関しては、国際公開WO98/45212号の記載を資料として使用し、その書類に記載された界面活性剤が使用できる。
【0025】
陰イオンタイプの界面活性剤として例えば、エトキシカルボキシレート、脂肪酸エトキシレート、サルコシネート、リン酸エステル、アルコール硫酸エステル、アルコールエーテル硫酸エステル及びアルカノールアミドエトキシレート硫酸エステル等の硫酸エステル、スルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホン酸塩又はアルキルナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸塩が挙げられる。
【0026】
非イオン界面活性剤として、アセチレン性界面活性剤、アルコールエトキシレート、アルカノールアミド、アミンオキシド、エトキシル化アルカノールアミド、長鎖エトキシル化アミン、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ソルビタン誘導体、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセリルエステル及びそれらのエトキシル化誘導体、アルキルアミン、アルキルイミダゾリン、エトキシル化油及びエトキシル化アルキルフェノールが挙げられる。好ましくは、商品名IGEPAL(商標)、DOWANOL(商標)、RHODAMOX(商標)及びALKAMIDE(商標)の製品が挙げられる。
【0027】
カルボン酸として、特に脂肪族モノカルボン酸又はジカルボン酸が使用でき、中でも、飽和酸が更に好ましく使用できる。又脂肪酸、好ましくは飽和脂肪酸が使用できる。従って、特に好ましくはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酢酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸が挙げられる。ジカルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸が挙げられる。
カルボン酸塩、特にそのアンモニウム塩も使用できる。
例として、更に好ましくはラウリン酸及びラウリン酸アンモニウムが挙げられる。
【0028】
最後に、カルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートタイプのものから選ばれる界面活性剤を使用することができる。
用語「カルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートタイプの製品」は、鎖末端にCH2−COOH基を有するエトキシル化又はプロポキシル化脂肪族アルコールからなる製品を意味する。
これらの製品は、下式で表される:
1−O−(CR23−CR45−O)n−CH2−COOH、
但し、R1は飽和又は不飽和炭素鎖を示し、その長さは一般的に最大22炭素原子、好ましくは少なくとも12炭素原子であり;R2、R3、R4及びR5は同一でもよく水素を表してもよく、R2がCH3基を表す場合にR3、R4及びR5は水素を表し;nは50までの0ではない整数であり、好ましくは5〜15で、上限下限の数字を含む。界面活性剤は、R1はそれぞれ飽和でも不飽和でもよい上式の製品、又はCH2−CH2−O−及びC(CH3)−CH2−O−基の両方を含有する製品の混合物からなるものでもよい。
【0029】
界面活性剤の添加は2つの方法で行われることができる。それは上記加熱ステップ(c)から得られた沈殿物の懸濁液へ直接に添加されても良い。それは又、これが加熱が行われる媒体から公知の手段により分離された後、固体沈殿物へ添加することもできる。
界面活性剤の使用量は、酸化物として計算される組成物重量に対する添加剤の重量%として表すと、一般的に5%〜100%、好ましくは15%〜60%である。
【0030】
本発明の方法を完成する別の方法によると、例えばコロイドミル又はタービン攪拌機を使用してこの懸濁液へせん断作用をかけることにより行われる懸濁液中の沈殿物に対する中程度のエネルギー粉砕操作を行うことが可能である、
【0031】
本発明の方法の最後のステップでは、回収された沈殿物が次に焼成される。この焼成は、得られた生成物の結晶性を増加させるが、それは又、本発明の組成物用に保持される次に続く使用温度に応じて、採用される焼成温度が高いと生成物の比表面積は低くなる事実を考慮して調節され及び/又は選択される。これら焼成は一般的に、空気中で行われるが、例えば不活性ガス中、又はコントロールされた(酸化性又は還元性)雰囲気下での焼成もちろん除外されない。
【0032】
実際に、焼成温度は一般的に300〜1000℃の値の範囲に限定される。
上記又は上記方法により得られた本発明の組成物は、粉状であるが、それらは任意で様々な寸法の粒状、ビーズ、円柱状又はハチの巣状へ形成できる。
本発明の組成物は、触媒又は触媒サポートとして使用される。従って、本発明は又本発明の組成物を含有する触媒系に関する。これらの系用に、これらの組成物は、触媒分野で通常使用される任意のサポート、特に、熱的に不活性のサポートと共に使用できる。このサポートは、アルミナ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ、スピネル、ゼオライト、シリケート、結晶性シリコンリン酸アルミニウム及び結晶性リン酸アルミニウムから選ばれてもよい。
【0033】
組成物は又、触媒系中で使用できる。これら触媒系として、例えば金属又はセラミックモノリスタイプの基材上の、触媒的性質を有しこれら組成物をベースとするウォッシュコートが挙げられる。ウォッシュコートは、それ自体上記種類のサポートを含んでよい。このウォッシュコートは、組成物とサポートを混合して懸濁液を形成し、次に基材上に配置して得られる。
【0034】
これら触媒系、好ましくは本発明の組成物は、種々の数多くの適用に採用できる。それらは好ましくは種々の反応の触媒作用に良く適合して使用できる。それらの反応として例えば、脱水反応、hydrosulfurization、水素化脱窒素、脱硫化反応、水素化脱硫、脱水素ハロゲン化、改質、水蒸気変成、クラッキング、水素化分解、水素化、脱水素化、異性体化、不均化、炭化水素又は他の有機的化合物のオキシ塩素化及び脱水素環化、酸化及び/又は還元反応、クラウス反応、内燃排出ガスの処理、脱金属化反応、メタン生成反応、転化反応、低燃費モードで運転されるジーゼル又はガソリン機関等の内燃機関により排出されるすすの触媒的酸化が挙げられる。最後に、本発明の触媒系及び組成物はNOxトラップとして使用できる。
【0035】
触媒作用へこれらを使用する場合、本発明の組成物は、貴金属と組み合わせて使用できる。その場合上記組成物はこれら金属のサポートとして働く。これら金属の性質及びそれらをこれらサポート組成物へ組み込む技術は、当業者に公知である。例えば、金属は、白金、ロジウム、パラジウム又はイリジウムでもよく、それらは好ましくは組成物へ含浸法により導入できる。
【0036】
上記使用法中、内燃機関排出ガスの(自動車後燃焼触媒作用による)処理は、特に好ましい適用の一つである。従って、本発明は又、内燃機関排出ガスの処理方法にも関し、それは上記触媒系又は上記本発明の組成物を触媒として使用する。
【実施例】
【0037】
実施例を下記に記載する。
実施例1;
この実施例は、それぞれの重量割合58/42の酸化セリウム及び酸化ジルコニウムベースの組成物の調製に関する。
攪拌中のビーカー中へ525mlの硝酸ジルコニウム(80g/l)及び230mlの硝酸セリウム(Ce4+=236.5g/l;Ce3+=15.5g/l;並びに遊離酸=0.7N)を導入した。次に蒸留水を添加し、1リットルの硝酸塩溶液とした。
攪拌中の丸底反応器中へ253mlのアンモニア水溶液を導入し、次に蒸留水を添加して合計体積1リットルとした。
硝酸塩溶液を1時間かけて反応器中へ一定の攪拌をしながら導入した。
得られた溶液を、攪拌器を備えたステンレススチールオートクレーブ中に配置した。媒体の温度を2時間かけて攪拌しながら150℃まで上昇させた。
得られた懸濁液を次にブフナー漏斗上でろ過した。23.4重量%酸化物を含有する沈殿物が回収された。
目的とする沈殿物を100g収集した。
【0038】
平行して、ラウリン酸アンモニウムゲルを下記条件下で調製した:250gのラウリン酸を135mlのアンモニア水溶液(12mol/l)及び500mlの蒸留水へ導入し、次に混合物をスパチュラを使用して均一化した。
28gのこのゲルを100gの沈殿物へ添加し、次にこの組み合わせを均一なペーストが得られるまで混合した。
得られた生成物を次に650℃まで2時間安定して加熱した。
下記は種々の温度で焼成後に得られた表面積である:
900℃で4時間:49m2/g;
1000℃で4時間:31m2/g;
1100℃で4時間:15m2/g;
1200℃で10時間:4m2/g。
【0039】
実施例2;
この実施例は、それぞれの重量割合が60%、30%、3%及び7%の、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン及び酸化プラセオジムをベースとする組成物の調製に関する。
攪拌中のビーカー内へ、375mlの硝酸ジルコニウム(80g/l)、121mlの硝酸セリウム(セリウムの酸化状態はIII価)(496g/l)、6.6mlの硝酸ランタン(454g/l)及び14mlのプラセオジム硝酸塩(500g/l)を添加した。次に蒸留水を添加し、1リットルのこれら硝酸塩溶液とした。
攪拌中の丸底反応器内へ、200mlのアンモニア水溶液(12mol/l)、302mlの過酸化水素(110体積)を添加し、次に蒸留水を添加し、合計体積1リットルとした。
実施例1と同様の手順を行い、オートクレーブ処理後に得られた懸濁液を次にブフナー漏斗上でろ過した。30.5重量%酸化物を含有する沈殿物が回収された。
100gのこの沈殿物を収集し、36.5gのラウリン酸アンモニウムゲルをそれらに添加した。上記ゲルを実施例1と同様に、均一なペーストが得られるまで製造した。
得られた生成物は、次に650℃まで2時間安定して加熱した。
【0040】
下記は種々の温度で焼成後に得られた表面積である:
900℃で4時間:65m2/g;
1000℃で4時間:42m2/g;
1100℃で4時間:23m2/g;
1200℃で10時間:4m2/g。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に酸化セリウム及び酸化ジルコニウムから構成され、少なくとも1のCe/Zr原子比である組成物であり、4時間1100℃で焼成後に9m2/g以上の比表面積を有する組成物。
【請求項2】
4時間1100℃で焼成後に15m2/g以上の比表面積を有する請求項1の組成物。
【請求項3】
4時間1200℃で焼成後に2m2/g以上、好ましくは4m2/g以上の比表面積を有する請求項1又は2の組成物。
【請求項4】
少なくとも1のCe/Zr原子比の酸化セリウム及び酸化ジルコニウム並びに、少なくとも1のセリウム以外の希土類酸化物から構成される組成物であり、4時間1100℃で焼成後に19m2/g以上の比表面積を有する組成物。
【請求項5】
4時間1200℃で焼成後に3m2/g以上、好ましくは6m2/g以上の比表面積を有する請求項3の組成物。
【請求項6】
少なくとも1の、ランタン、ネオジム及びプラセオジムから選ばれるセリウム以外の希土類酸化物を含む請求項4又は5の組成物。
【請求項7】
セリウム以外の希土類酸化物の含有量は少なくとも20重量%である請求項4〜6いずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項記載の組成物の製造方法であり、下記ステップを含む製造方法:
(a)セリウム化合物、ジルコニウム化合物、並びに適切であれば上記希土類化合物を含有する混合物を形成するステップ;
(b)上記混合物を塩基性化合物と接触させて、沈殿物を得るステップ;
(c)上記沈殿物を水性媒体中で加熱するステップ;
(d)陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートタイプの界面活性剤から選ばれる添加剤を、前記ステップから得られた沈殿物へ加えるステップ;並びに
(e)上記のように得られた沈殿物を焼成するステップ。
【請求項9】
ジルコニウム化合物、セリウム化合物及び上記希土類化合物として、硝酸塩、酢酸塩、塩化物及び硝酸セリウムアンモニウムから選ばれる化合物が使用される請求項8の方法。
【請求項10】
ステップ(a)の混合では、セリウムがCe(III)型であるセリウム化合物を使用し、酸化剤をステップ(a)中又はステップ(b)中、特に後者のステップの最後に添加する請求項8または9の方法。
【請求項11】
上記沈殿物は、ステップ(c)中で少なくとも100℃の温度まで加熱する請求項8〜10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜7いずれか1項記載の組成物を含有する触媒系。
【請求項13】
請求項12の触媒系又は請求項1〜7いずれか1項記載の組成物が触媒として使用される内燃機関の排出ガス処理方法。

【公表番号】特表2006−520732(P2006−520732A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518716(P2005−518716)
【出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000648
【国際公開番号】WO2004/085039
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(503124252)ロディア エレクトロニクス アンド カタリシス (13)
【Fターム(参考)】