説明

13−オキソトリシクロ[8.2.1.03,8]トリデカ−3(8),4,6−トリエン−5−カルボン酸エステルのエナンチオ選択的な合成

式Iの化合物を得る、エナンチオ選択的な経路が開示される。式Iの化合物は、アルツハイマー病を治療するのに有用な化合物の合成において重要な中間体である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成有機化学の分野に関する。特に、13−オキソトリシクロ[8.2.1.03,8]トリデカ−3(8),4,6−トリエン−5−カルボン酸エステルのエナンチオ選択的な合成を提供する。このような化合物は、γセクレターゼによるアミロイド前駆体タンパク質の処理を阻害し、したがって、アルツハイマー病の治療または予防に有用である可能性を有する、さらなる化合物の合成において重要な中間体である。
【背景技術】
【0002】
WO01/70677、WO02/36555、WO03/093252、WO03/093264、WO03/093251、WO2004/039800、WO2004/039370およびWO2005/030731は、γセクレターゼ阻害剤として、種々のスルホンアミドおよびスルファミド誘導体を開示している。好ましい例は、式(1):
【0003】
【化10】

に従っており、
式中、Rは種々の官能基を表し、Rは種々のスルホンアミドおよび(例えば、WO02/36555、WO03/093252、WO03/093264およびWO03/093251において開示されている)スピロ結合された1,1−ジオキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−チアジアゾール環の形態のスルファミド部分を含む、スルファミド部分を完成する。式(2a):
【0004】
【化11】

[式中、Rはメチル、エチルなどを表す。]の(1R,10S)−13−オキソトリシクロ[8.2.1.03,8]トリデカ−3(8),4,6−トリエン−5−カルボン酸アルキルエステルは、このような化合物の合成における有用な中間体を表す。しかし、前述のPCT公報において開示されたものなどの、エステル(2a)を得る従来の経路は、必然的に、エステル(2a)とこれらのエナンチオマー(2b):
【0005】
【化12】

とのラセミ混合物を生じさせる。これらのラセミ混合物はうまく分割できるが、出発物質の50%が不要な異性体の製造に消費され、したがって、この方法の全体的な効率は低い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、式(2a)の化合物などの、(1R,10S)−13−オキソトリシクロ[8.2.1.03,8]トリデカ−3(8),4,6−トリエン−5−カルボン酸アルキルエステルのエナンチオ選択的な合成が必要である。
【0007】
Evansらは、キラルなビス(オキサゾリン)銅(II)錯体(J.Am.Chem.Soc.、1999、121、7559〜73)およびキラルなビス(イミン)銅(II)錯体(Tetrahedron Lett.、1993、34、2027〜2030)をエナンチオ選択的なディールス−アルダー反応における触媒として使用することを記載しているが、トリシクロ[8.2.1.03,8]トリデカ−3(8),4,6−トリエン系を構成する際に使用することを開示または示唆したものはない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、式Iの化合物を調製するための、
【0009】
【化13】

【0010】
(a)式IIの化合物と
【0011】
【化14】

式IIIの化合物を
【0012】
【化15】

【0013】
【化16】

から選択された触媒の存在下において反応させて、式IVの化合物を形成させるステップと、
【0014】
【化17】

【0015】
(b)前記式IVの化合物をRによって処理して、式Vの化合物を形成させるステップと、
【0016】
【化18】

【0017】
(c)前記式Vの化合物を脱水して、式Iの化合物を形成させるステップと
[式中、RはHまたはC1〜4アルキルであり;
はH、C1〜4アルキル、フェニルまたはClであり;
はC1〜4アルキルまたはベンジルであり;
ZはOまたはSであり;
Mはアルカリ金属であり;
XはSbF、BF、PFまたはCFSOであり;
各Yは、t−ブチル、i−プロピル、フェニルまたは1−ナフチルであり;
各Yは、t−ブチル、フェニル、4−シアノフェニル、2−クロロフェニル、2,6−ジクロロフェニルまたは2,6−ジフルオロフェニルであり;
Tfはトリフルオロメチルスルホニルを表す。]
を含むエナンチオ選択的な方法が提案される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、記述[Cu((S,S)−Y−box)]Xを用いて、構造Aの触媒を表す。
【0019】
式I〜Vにおいて、Rは、Hまたはメチル、エチルもしくはプロピルなどのC1〜4アルキルである。通常、RはHまたはメチルであり、好ましくはRはHである。
【0020】
は、H、C1〜4アルキル、フェニルまたはClを表す。通常、RはHまたはメチルを表すが、好ましくはHを表す。
【0021】
は、ベンジルまたはC1〜4アルキル、特にメチルまたはエチル、および最も好ましくは、メチルを表す。
【0022】
Zは、OまたはSを表す。好ましい実施形態において、ZはOを表す。
【0023】
Mは、NaまたはKなどのアルカリ金属、好ましくはNaを表す。
【0024】
Xは、SbF、BF、PFまたはCFSOを表す。好ましい実施形態において、XはSbFを表す。
【0025】
2つのY基は、同一であり、t−ブチル、i−プロピル、フェニルおよび1−ナフチルから選択され、この中ではt−ブチルが好ましい。
【0026】
同様に、2つのY基は、同一であり、t−ブチル、フェニル、4−シアノフェニル、2−クロロフェニル、2,6−ジクロロフェニルおよび2,6−ジフルオロフェニルから選択され、この中ではt−ブチルが好ましい。
【0027】
本発明の方法のステップ(a)において、式IIの化合物と式IIIの化合物との反応は、通常、非プロトン性溶媒中で、低温で、不活性雰囲気(例えば窒素)下において実行される。反応は、好ましくは−50℃より低い温度で、最も好ましくは約−78℃において実行される。溶媒は、好ましくは塩素化炭化水素、最も好ましくはジクロロメタンである。しかし、触媒が式Bである場合は、より高い温度(例えば、0℃まで)および別の溶媒(例えば、アセトニトリル)が使用できる。好ましくは、式IIIの化合物は、式IIの化合物よりも過剰に(例えば、2倍のモル過剰量で)存在する。典型的な手順において、式IIおよびIIIの化合物は、ジクロロメタンに溶解させ、窒素雰囲気下に置き、−78℃まで冷却し、次いで、ジクロロメタンに溶解された触媒溶液によって処理する。触媒の適切な充填は、式IIの化合物を基準にして約10mol%である。
【0028】
触媒Aの溶液は、AgXの.過剰量(例えば2倍)をジクロロメタン溶液中で[Cu((S,S)−Y−box)]Cl.CHClと混合し、得られた混合物を濾過することによって調製できる(Evansら、前掲、を参照されたい。)。
【0029】
ビス(イミン)触媒溶液は、Cu(OTf)を適切なシクロヘキサンジイミン、例えば(1S,2S)−N,N’−ビス(2,2−ジメチルプロピリデン)シクロヘキサン−1,2−ジアミン、の若干の過剰量(例えば1.1倍)と、選択した反応溶媒(好ましくはジクロロメタンまたはアセトニトリル)中で、周囲温度で混合することによって調製できる。
【0030】
触媒を添加した後、混合物は、反応が完了するまで撹拌される。反応の完了は、式IIの化合物が消失することによって証明され、この化合物の消失は通常の技法、例えばHPLCによって監視できる。一般的に言えば、この反応は、−78℃で20時間、または0℃で3時間撹拌した後に完了する。
【0031】
得られた式IVのディールス−アンダー付加物は、任意の適切な方法によって単離できるが、好ましい方法は、水性アルカリ(例えば、濃NHOH)により反応をクエンチすること、周囲温度に加温すること、水(約1体積)による希釈、次いで、ジクロロメタンによる従来の抽出後処理を含む。合わせた抽出物を蒸発させ、酢酸エチル/ヘプタン1:2からの残渣を晶出することにより、次のステップにおいて使用するのに十分な純度を有する、式IVの化合物を得る。
【0032】
本発明の方法のステップ(b)において、式IVの付加物をRによって処理して、エステルVを形成する。これは、非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタンなど)中に付加物が溶解した溶液に、ROII中にアルコキシドRが溶解した溶液(例えば、メタノール中にナトリウムメトキシドが溶解した0.5M溶液)を添加することによって、実行できる。通常、アルコキシドの2倍のモル過剰量を使用する。添加は、好ましくは、低温、例えば、約−60℃で実行し、続いて、数時間かけて0℃に加温する。その後、反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液のほぼ等しい体積でクエンチし、続いて、ジクロロメタンを使用して従来の抽出後処理を行うことにより、エステルVを単離できる。乾燥した有機抽出物を蒸発させることにより、次のステップにおいて使用するのに十分な純度を有するエステルを得る。
【0033】
本発明の方法のステップ(c)において、式Vの化合物を脱水(したがって、芳香族化)するために種々の試薬を使用できる。適切な試薬には、三ハロゲン化ホウ素、無水酢酸中に溶解した塩化第2鉄および無水スルホン酸トリフルオロメタンがあり、このうち、三ハロゲン化ホウ素(特に、BCl)またはFeCl/AcOが好ましい。典型的な手順において、式Vの化合物をジクロロメタン溶液中の過剰な(例えば、2倍のモル過剰量)BClと、低温(例えば、約−40℃)で反応させる。周囲温度に加温し、水によりクエンチし、有機層を分離および蒸発させた後、残渣をアセトニトリル中で約18時間還流して、式Iの化合物への変換を完了する。生成物は、晶出またはクロマトグラフィーなどの常套手段により精製できる。
【0034】
本発明の方法の3ステップすべては、高収量を示す。さらに、ステップ(a)は、高度の立体選択性をもって進行し、99%を超えるジアステレオマーおよびエナンチオマー過剰の、所望のディールス−アルダー付加物をもたらす。したがって、望ましくない(1S,10R)異性体を本質的に含まない式Iの化合物が、最終的に得られる。
【0035】
上記で定義される、式II、式IVおよび式Vの化合物は、新規であり、本発明のさらなる態様を別々に構成すると考えられる。
【0036】
式IIの化合物は、ビシクロ[4.2.1]ノナ−3−エン−9−オン環系を構成するための、公表された手段(例えば、Iddonら、J.Chem.Soc.Perkins Trans.I、1990、1083〜90;Belangerら、J.Org.Chem.、1982、47、4329〜34)と類似の手段によって得られる。したがって、ビス(ハロメチル)フラン(VI)は、塩基の存在下でエナミンVII:
【0037】
【化19】

と共に、アセトニトリル中で還流させ、式中、HalはBrまたはClを表し、R基は複素環を完成させ、Rは前と同じ意味を有する。HalがClである場合、ヨウ化ナトリウムを触媒作用を発揮する分量で添加することには利点がある。得られたイミニウム塩を加水分解すると、所望の三環式のフランIIが提供される。塩基は、適切には、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンなどのトリアルキルアミンであり、R基は、通常、ピロリジン、ピペリジンまたはモルホリンなどの、5または6員環を完成させる。
【0038】
詳細な手順は、本明細書における実施例の項において提供される。
【0039】
式Iの化合物は、開示が参照により本明細書に組み込まれる、WO01/70677、WO02/36555、WO03/093252、WO03/093264、WO03/093251、WO2004/039800、WO2004/039370およびWO2005/030731に記載されている通り、γセクレターゼの阻害剤としての活性を有するスルホンアミドおよびスルファミドを合成するための、汎用性のある中間体である。式Iの化合物におけるケトン基は、上に掲げた公表された出願において記載されているように、WO02/36555、WO03/093252、WO03/093264、WO03/093251、WO2004/039800およびWO2005/030731に記載されたようなスピロ結合された環式スルファミド部分を含む、種々のスルホンアミドおよびスルファミド官能基へ変換してもよい。同様に、式Iの化合物におけるエステル基−COは、上に掲げた公表された出願において開示されているように、種々の異なる官能基に変換できる。特にエステル基は、WO03/093252において開示されているように、種々の5員ヘテロアリール置換基、とりわけ5−アリール−1−アルキルピラゾール−3−イル置換基の前駆体の役割を果たす。
【0040】
最も好ましくは、ケトン基は、さらに、3,3−スピロ結合された5−置換−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−チアジアゾール−1,1−ジオキシド環[ここで5−置換基は、3個までハロゲン原子により場合により置換された、C1〜6アルキルまたはC2〜6アルケニル、特に2,2,2−トリフルオロエチルである。]に合成する。最も好ましくは、エステル基COは、さらに、5−アリール−1−メチルピラゾール−3−イル置換基に合成する[ここで、「アリール」は、モノ−、ジ−、またはトリハロフェニル、特に4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、3,4−ジフルオロフェニルまたは3,4−ジクロロフェニル、好ましくは4−フルオロフェニルを指す。]。これらの変換のための適切な手順は、開示が参照により本明細書に組み込まれる、WO03/093252において開示されている。
【0041】
本発明を以下の実施例により説明する。
【0042】
実施例
【実施例1】
【0043】
5−オキサトリシクロ[7.2.1.03,7]ドデカ−3,6−ジエン−12−オン(II,R=II)
アセトニトリル(120mL)中の4−(1−シクロペンテン−1−イル)モルホリン(10.5g、68.8mmol)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(12.0mL、69.0mmol)の撹拌溶液に、固体の3,4−ビス(ブロモメチル)フラン(17.3g、68.1mmol)を添加した。得られた溶液を黄色のスラリーが形成される時点まで、室温で15時間撹拌した。スラリーを濾過し、湿ったケーキをアセトニトリル(2×5mL)で洗浄し、次いで、得られた固形物をアセトニトリル(100mL)中に懸濁させ、加熱して還流させ、反応混合物をこの温度で31時間撹拌した。周囲温度まで冷却した後、得られたスラリーを濾過し、イミニウム塩:
【0044】
【化20】

をベージュ色の固体(9.21g、41%)として得た。
【0045】
この塩(6.00g、18.4mmol)を水(30mL)中で部分的に溶解し、得られた混合物を周囲温度で25時間撹拌した。このスラリーを濾過し、湿ったケーキを水(2×5mL)で洗浄し、得られた固形物を真空下で乾燥し、表題の化合物(2.97g、92%)をベージュ色の固体として得た。必要な場合は、この物質をメタノール−水(それぞれ、6および12mL/g)から再晶出させることにより、86%の回収率で精製できる:H NMR(250MHz,CDCl)δ7.31〜7.28(m,2H)、2.75(dd,J=14.8,5.7Hz,2H)、2.61〜2.48(m,2H)、2.47(d,J=15.1Hz,2H)、2.10〜1.85(m,2H)、1.55〜1.41(m,2H);13C NMR(63MHz,CDCl)δ225.0、141.8、121.8、45.9、27.8、23.6。
【実施例2】
【0046】
5−オキサトリシクロ[7.2.1.03,7]ドデカ−3,6−ジエン−12−オンのディールス−アルダー反応
[Cu((S,S)−tert−Bu−box)]Cl・CHCl(0.43g、0.83mmol)、ヘキサフルオロアンチモン酸銀(0.56g、1.63mmol)およびジクロロメタン(DCM)(15mL)を窒素雰囲気下で混合し、暗闇で4時間撹拌した。
【0047】
固体の5−オキサトリシクロ[7.2.1.03,7]ドデカ−3,6−ジエン−12−オン(実施例1)(2.91g、16.5mmol)と3−アクリロイルオキサゾリジン−2−オン(4.66g、33.0mmol)をオーブンで乾燥したフラスコへ投入した。フラスコを脱ガスし、窒素雰囲気下に置き、次いで、DCM(25mL)を添加し、撹拌した反応混合物を−78℃まで冷却した。次いで、上記で調製した緑色の触媒溶液を0.45μmのフィルターを通して約15分かけて反応混合物中に入れ、DCM(5mL)をフィルターに通してフィルターを洗浄した。次いで、得られたバッチを−78℃で20時間撹拌した。濃NHOH(5mL)を添加して反応をクエンチし、周囲温度まで加温した。得られた2相混合物を水(50mL)で希釈し、次いで、DCM(3×50mL)により抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水(50mL)で洗浄、乾燥(NaSO)し、次いで、真空濃縮した。得られた半固形残渣をEtOAc(50mL)に溶解させ、得られた撹拌したスラリーにヘプタン(100mL)をゆっくりと添加した。室温で2時間放置した後、固体を濾過して収集し、3:1のヘプタン−EtOAc(20mL)により洗浄した。真空下で乾燥した後、ディールス−アルダー付加物IV(R=R=H、Z=O)を灰色がかった白色の固体として単離した(4.74g、90%、>99%ee)。H NMR(250MHz,CDCl)δ4.99(d,J=4.5Hz,1H)、4.73(d,J=4.5Hz,1H)、4.39(t,J=8.0Hz,2H)、4.05(ほぼdt,J=8.7,4.3Hz,1H)、3.99〜3.82(m,2H)、2.60〜2.39(m,2H)、2.37〜2.02(m,5H)、1.95(dddd,J=11.1,8.8,4.5,1.0Hz,1H)、1.83〜1.60(m,4H);13C NMR(63MHz,CDCl)δ222.4、171.3、154.0、141.7、135.7、85.1、84.9、62.9、45.6、45.5、45.4、43.3、31.8、30.2、29.2、26.9、26.3。
【0048】
代替手順
CHCl(20mL)に溶解した(+)−1,2−trans−ジアミノシクロヘキサン(250mg、2.18mmol)をNaSO(923mg、6.50mmol)およびトリメチルアセトアルデヒド(473μL、4.35mmol)により処理した。混合物を周囲温度、N雰囲気下で0.5時間撹拌し、次いで濾過した。フィルターをCHCl(5mL)で洗浄し、合わせた有機物を蒸発させ、N,N’−ビス−(2,2−ジメチルプロピリデン)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン(610mg、98%)を灰色がかった白色の半固体として得た。
【0049】
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.45(s,2H)、3.07(m,2H)、1.74(m,2H)、1.59(m,4H)、1.37(m,2H)、1.00(s,18H):13C NMR(100MHz,CDCl)δ170.5、73.7、35.7、33.2、26.9、24.5。
【0050】
N,N’−ビス−(2,2−ジメチルプロピリデン)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン(78mg、0.312mmol)およびCu(OTf)(103mg、0.284mmol)を周囲温度で、窒素雰囲気下において無水アセトニトリル(1.5mL)中で0.5時間混合した。得られた濃い緑色の溶液を0℃まで冷却し、アセトニトリル(3mL)中の5−オキサトリシクロ[7.2.1.03,7]ドデカ−3,6−ジエン−12−オン(500mg、2.84mmol)と3−アクリロイルオキサゾリジン−2−オン(801mg、5.68mmol)との混合物を3分間にわたって滴下して処理した。得られた濃い青色の溶液を0℃で2.5時間放置し、次いで、濃水酸化アンモニウムにより処理し、0℃で10分間放置した。混合物をCHCl(10mL)およびHO(10mL)によって希釈し、層を分離した。水相をCHCl(2×10mL)により抽出し、合わせた有機物を乾燥し(NaSO)、蒸発させて乾燥した。残渣のLC分析によれば、試金収量は85%、エンド:エキソ比率は20:1、およびエンドeeは86%であった。次いで、ディールス−アルダー付加物の単離を前述の通りに実行した。
【実施例3】
【0051】
(1R,10S)−13−オキソトリシクロ[8.2.1.03,8]トリデカ−3(8),4,6−トリエン−5−カルボン酸メチルエステル(I、R=R=H、R=Me)
DCM(200mL)中の実施例2の生成物(4.15g、13.1mmol)の撹拌溶液を、窒素雰囲気下で−60℃まで冷却した。メタノール(52mL、26mmol)中にナトリウムメトキシドを溶解した0.5M溶液を30分間にわたってゆっくりと添加し、次いで、反応混合物を4時間にわたって0℃まで加温した。この時点で、HPLC分析は反応が完了した(<1%の出発物質が残っていた。)ことを示した。冷却浴を除去し、得られた溶液が周囲温度まで温まるようにした。反応をNHClの飽和水溶液(200mL)を添加することによりクエンチし、2つの層を分離した。水相をDCM(150mL)によって抽出し、合わせた有機層を半飽和食塩水(2×100mL)により洗浄し、次いで乾燥した(NaSO)。真空濃縮することにより、メチルエステルV(R=R=H、R=Me)をベージュ色の固体(3.15g、92%)として得た:H NMR(250MHz,CDCl)δ4.81(d,J=4.7Hz,1H)、4.68(d,J=4.6Hz,1H)、3.59(s,3H)、3.07(ほぼdt,J=9.0,4.5Hz,1H)、2.59〜2.44(m,2H)、2.41〜1.84(m,7H)、1.73〜1.63(m,2H)、1.56(dd,J=11.4,4.0Hz,1H)。
【0052】
DCM(10mL)中のこの中間体(94mg、0.36mmol)の撹拌溶液を−40℃まで冷却し、DCM(0.72mL、0.72mmol)中の三塩化ホウ素の1M溶液を滴下した。得られた混合物を4時間かけて周囲温度まで加温させ、次いでさらに1時間放置した。HPLC分析によれば、出発物質は、この時点までに完全に消費されていた。したがって、反応を水(10mL)を添加することによってクエンチし、2つの層を分離した。有機層を乾燥(NaSO)し、次いで真空濃縮した。得られた残渣をアセトニトリル(10mL)に溶解させ、得られた溶液を80℃に加熱した。この温度で18時間撹拌した後、溶液を周囲温度まで冷却し、次いで、濃縮して乾燥させた。この粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(3:1ヘキサン/MTBE)により精製し、表題の化合物を白色の固体(68mg、78%、99%ee)として得た。H NMR(250MHz,CDCl)δ7.88(s,1H)、7.84(dd,J=8.1,1.5Hz,1H)、7.30(d,J=7.6Hz,1H)、3.88(s,3H)、3.06(ddd,J=15.5,7.9,2.1Hz,2H)、2.87(d,J=15.4Hz,2H)、2.62〜2.52(m,2H)、1.93〜1.82(m,2H)、1.32〜1.15(m,2H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物を調製するためのエナンチオ選択的方法であって、
【化1】

(a)式IIの化合物と
【化2】

式IIIの化合物を
【化3】

【化4】

から選択された触媒の存在下において反応させて、式IVの化合物を形成させるステップと、
【化5】

(b)前記式IVの化合物をRによって処理して、式Vの化合物を形成させるステップと、
【化6】

および
(c)前記式Vの化合物を脱水して、式Iの化合物を形成させるステップと
[式中、RはHまたはC1〜4アルキルであり;
はH、C1〜4アルキル、フェニルまたはClであり;
はC1〜4アルキルまたはベンジルであり;
ZはOまたはSであり;
Mはアルカリ金属であり;
XはSbF、BF、PFまたはCFSOであり;
各Yは、t−ブチル、i−プロピル、フェニルまたは1−ナフチルであり;
各Yは、t−ブチル、フェニル、4−シアノフェニル、2−クロロフェニル、2,6−ジクロロフェニルまたは2,6−ジフルオロフェニルであり;および
Tfはトリフルオロメチルスルホニルを表す。]
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(a)における触媒が式Aを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がt−ブチルを表し、およびXがSbFを表す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)における触媒が式Bを有し、およびYがt−ブチルを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)が、アセトニトリル中において0℃またはそれ以下で実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
およびRが、両方ともHである、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ZがOである、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)における脱水が、BClを使用するか塩化第2鉄および無水酢酸を使用して実行される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
式IIの化合物
【化7】

[式中、Rは請求項1において定義された通りである。]。
【請求項10】
式IVの化合物
【化8】

[式中、Z、RおよびRは請求項1において定義された通りである。]。
【請求項11】
式Vの化合物
【化9】

[式中、R、RおよびRは請求項1において定義された通りである。]。

【公表番号】特表2008−510694(P2008−510694A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526579(P2007−526579)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【国際出願番号】PCT/GB2005/050132
【国際公開番号】WO2006/018663
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【Fターム(参考)】