説明

17−オキシマクベシン誘導体並びに癌及び/又はB−細胞性悪性疾患の治療におけるそれらの使用

本発明は、例えば、癌、B-細胞性悪性疾患、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置において有用である、下記式(IA)又は(IB)の17-オキシマクベシン類似体(式中、R1は、H、OH又はOCH3を表し;R2は、H又はCH3を表し;R3は、H又はCONH2を表し;R4及びR5は、両方ともHを表すか、又はこれらは一緒に結合(すなわち、C4-C5は二重結合である)を表すかのいずれかであり;並びに、R6は、H又はOHを表し;並びに、R7は、H又はCH3を表す。)に関する。本発明は、これらの化合物の生成法、並びにそれらの医薬品における使用、特に癌又はB-細胞性悪性疾患の治療及び/又は予防における使用も提供する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
90kDa熱ショックタンパク質(Hsp90)は、タンパク質の折り畳み及び集合に関連した豊富な分子シャペロンであり、その多くはシグナル伝達経路に関与している(総説については、Neckersの論文、2002;Sreedharらの論文、2004a;Wegeleらの論文、2004、及びそれらの中の参考文献を参照されたい)。これまでに、これらのいわゆるクライアントタンパク質のほぼ50種が同定されており、かつこれらは、ステロイド受容体、例えばsrcファミリーのような非受容体型チロシンキナーゼ、例えばcdk4及びcdk6のようなサイクリン依存性キナーゼ、膿疱性膜貫通型制御因子、一酸化窒素合成酵素などを含む(Donze及びPicardの論文、1999;McLaughlinらの論文、2002;Chiosisらの論文、2004;Wegeleらの論文、2004;http://www.picard.ch/downloads/Hsp90interactors.pdf)。更にHsp90は、ストレス反応及び変異の影響に対する細胞の保護において重要な役割を果たす(Bagatell及びWhitesellの論文、2004;Chiosisらの論文、2004)。Hsp90の機能は複雑であり、かつこれは動的多酵素複合体(dynamic multi-enzyme complex)の形成に関与している(Bohenの論文、1998;Liuらの論文、1999;Youngらの論文、2001;Takahashiらの論文、2003;Sreedharらの論文、2004;Wegeleらの論文、2004)。Hsp90は、阻害剤の標的であり(Fangらの論文、1998;Liuらの論文、1999;Blagosklonnyの論文、2002;Neckersの論文、2003;Takahashiらの論文、2003;Beliakoff及びWhitesellの論文、2004;Wegeleらの論文、2004)、結果クライアントタンパク質の分解、細胞周期の異常調節及びアポトーシスを生じる。より最近になって、Hsp90は、腫瘍浸潤の重要な細胞外メディエーターとして同定された(Eustaceらの論文、2004)。Hsp90は癌療法の新たな主要な治療標的として同定され、このことは、Hsp90機能に関する活発で詳細な研究(Blagosklonnyらの論文、1996;Neckersの論文、2002;Workman及びKayeの論文、2002;Beliakoff及びWhitesellの論文、2004;Harrisらの論文、2004;Jezらの論文、2003;Leeらの論文、2004)、及びハイスループットスクリーニングアッセイの開発(Carrerasらの論文、2003;Rowlandsらの論文、2004)において反映されている。Hsp90阻害剤は、アンサマイシン、マクロライド、プリン、ピラゾール、クマリン抗生物質などのような、化合物クラスを含む(総説については、Bagatell及びWhitesellの論文、2004;Chiosisらの論文、2004、及びそれらの中の参考文献を参照されたい)。
【0002】
ベンゼノイドアンサマイシンは、芳香族環構造のいずれかの側に連結された長さが変動する脂肪族環を特徴とする化学構造の広範なクラスである。天然のアンサマイシンは、マクベシン及び18,21-ジヒドロマクベシン(各々、マクベシンI及びマクベシンIIとしても公知)(1及び2;Tanidaらの論文、1980)、ゲルダナマイシン(3;DeBoerらの論文、1970;DeBoer及びDietzの論文、1976;WO 03/106653及びそれらの中の参考文献)、並びにハービマイシンファミリー(4;5、6、Omuraらの論文、1979;Iwaiらの論文、1980;及び、Shibataらの論文、1986a、WO 03/106653、及びそれらの中の参考文献)を含む。
【化1】

【0003】
アンサマイシンは、当初それらの抗菌活性及び抗ウイルス活性について同定されたが、最近抗癌剤としてのこれらの利用の可能性に関心が高まってきている(Beliakoff及びWhitesellの論文、2004)。現在多くのHsp90阻害剤が、臨床試験において評価中である(Csermely及びSotiの論文、2003;Workmanの論文、2003)。特にゲルダナマイシンは、ナノモルでの効能及び異常なプロテインキナーゼ依存型腫瘍細胞に対する明白な特異性を有する(Chiosisらの論文、2003;Workmanの論文、2003)。
【0004】
Hsp90阻害剤による治療は、放射線による腫瘍細胞死滅の誘導を増強することが示されており、並びにHsp90阻害剤の細胞傷害性薬物との組合せによる増大した細胞殺傷能(例えば、乳癌、慢性骨髄性白血病及び非-小細胞肺癌)も明らかにされている(Neckersの論文、2002;Beliakoff及びWhitesellの論文、2004)。抗-血管新生活性の可能性も、関心があり:Hsp90クライアントタンパク質HIF-1αは、固形腫瘍の進行において重要な役割を果たす(Hurらの論文、2002;Workman及びKayeの論文、2002;Kaurらの論文、2004)。
【0005】
Hsp90阻害剤は、免疫抑制薬としても機能し、かつHsp90阻害後のいくつかの腫瘍細胞型の補体が誘導した溶解に関与している(Sreedharらの論文、2004)。Hsp90阻害剤による治療は、免疫細胞が媒介した溶解(Sreedharらの論文、2004)に関連したスーパーオキシド生成の誘導も生じることができる(Sreedharらの論文、2004a)。Hsp90阻害剤の抗-マラリア薬としての使用の可能性が議論されている(Kumarらの論文、2003)。更にゲルダナマイシンは、複合糖鎖形成された哺乳類のプリオンタンパク質PrPcの形成を妨げることが示されている(Winklhoferらの論文、2003)。
【0006】
前述のように、アンサマイシンは、可能性のある抗癌剤及び抗-B-細胞性悪性疾患化合物として関心があるが、しかし現在入手可能なアンサマイシンの薬理学的特性又は医薬特性は不良であり、例えばこれらは、水溶解度が低く、代謝安定性が不良であり、生物学的利用能が悪く、又は製剤能が不良である(Goetzらの論文、2003;Workmanの論文、2003;Chiosisの論文、2004)。ハービマイシンA及びゲルダナマイシンは両方共、それらの強力な肝毒性のために、臨床試験の候補として不良であることが確定され(総説Workmanの論文、2003)、並びにゲルダナマイシンは、肝毒性のために臨床試験第I相から取り下げられた(Supkoらの論文、1995;WO 03/106653)。
【0007】
ゲルダナマイシンは、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)の培養濾液から単離され、インビトロにおいて原虫に対し強力な活性を示し、並びに細菌及び真菌に対し弱い活性を示す。1994年に、ゲルダナマイシンのHsp90との関連が示された(Whitesellらの論文、1994)。ゲルダナマイシン生合成遺伝子クラスターが、クローン化され、かつ配列決定された(Allen及びRitchieの論文、1994;Rascherらの論文、2003;WO 03/106653)。そのDNA配列は、NCBI寄託番号AY179507で入手可能である。遺伝子操作されたゲルダナマイシン産生株の単離は、S.ハイグロスコピカス亜種デュアマイセチカスJCM4427に由来し、並びに4,5-ジヒドロ-7-O-デスカルバモイル-7-ヒドロキシゲルダナマイシン及び4,5-ジヒドロ-7-O-デスカルバモイル-7-ヒドロキシ-17-O-デメチルゲルダナマイシンの単離は、最近説明された(Hongらの論文、2004)。ゲルダナマイシンを、ハービマイシン産生株ストレプトマイセス・ハイグロスコピカスAM-3672へ供給することにより、化合物15-ヒドロキシゲルダナマイシン、三環系ゲルダナマイシン類似体KOSN-1633及びメチル-ゲルダナマイシネートが単離された(Huらの論文、2004)。2種の化合物17-ホルミル-17-デメトキシ-18-O-21-O-ジヒドロゲルダナマイシン及び17-ヒドロキシメチル-17-デメトキシゲルダナマイシンは、S.ハイグロスコピカスK279-78から単離された。S.ハイグロスコピカスK279-78は、ハービマイシン産生株ストレプトマイセス・ハイグロスコピカスAM-3672由来の様々な遺伝子を含む44kbp挿入断片を有する、コスミドpKOS279-78を含む、S.ハイグロスコピカスNRRL 3602である(Huらの論文、2004)。アシル基転移酵素ドメインの置換が、ゲルダナマイシン生合成クラスターのポリケチド合成酵素の4種のモジュールにおいて作出されている(Patelらの論文、2004)。AT置換は、モジュール1、4及び5において実行され、完全にプロセシングされた類似体14-デスメチル-ゲルダナマイシン、8-デスメチル-ゲルダナマイシン及び6-デスメトキシ-ゲルダナマイシン並びに完全にプロセシングされない4,5-ジヒドロ-6-デスメトキシ-ゲルダナマイシンを導いている。モジュール7アシル基転移酵素(AT)ドメインの置換は、3種の2-デスメチル化合物KOSN1619、KOSN1558及びKOSN1559の生成につながり、そのひとつ(KOSN1559)であるゲルダナマイシンの2-デメチル-4,5-ジヒドロ-17-デメトキシ-21-デオキシ誘導体は、ゲルダナマイシンよりも4-倍大きい結合親和性で、及び17-AAGよりも8-倍大きい結合親和性で、Hsp90へ結合する。しかしこのことは、SKBr3を用いるIC50測定値の改善には反映されない。別の類似体である新規非ベンゾキノイドゲルダナマイシンは、KOS-1806と称され、これはモノフェノール構造を有する(Rascherらの論文、2005)。KOS-1806に関する活性データは、示されていない。
【0008】
1979年に、アンサマイシン抗生物質ハービマイシンAが、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス株AM-3672の発酵ブロスから単離され、その強力な除草活性に従い命名された。その抗腫瘍活性は、細胞の形質転換された形態に復帰する薬物のスクリーニングのためにラウス肉腫ウイルス(RSV)の温感性変異体に感染されたラット腎臓系細胞を使用することにより確立された(総説はUeharaの論文、2003を参照されたい)。ハービマイシンAは、保存されたシステイン残基への直接結合ではなく、Hsp90シャペロンタンパク質への結合を介して主に作用するとして仮定され、及び後続のキナーゼ失活も考察された(Ueharaの論文、2003)。
【0009】
化学誘導体が単離され、並びにベンゾキノン核のC19に変更された置換基を持つ化合物及びアンサ鎖がハロゲン化された化合物は、ハービマイシンAよりもより低い毒性及びより高い抗腫瘍活性を示した(Omuraらの論文、1984;Shibataらの論文、1986b)。ハービマイシン生合成遺伝子クラスターの配列は、WO 03/106653及び最新の論文(Rascherらの論文、2005)において確定された。
【0010】
アンサマイシン化合物マクベシン(1)及び18,21-ジヒドロマクベシン(2)(C-14919E-1及びC-14919E-1)は、それらの抗真菌活性及び抗原虫活性について同定されたが、これらは、ノカルジア種C-14919(アクチノシンネマ・プレチオスム(Actinosynnema pretiosum)亜種プレチオスムATCC 31280)の培養物上清から単離された(Tanidaらの論文、1980;Muroiらの論文、1980;Muroiらの論文、1981;US 4,315,989及びUS 4,187,292)。18,21-ジヒドロマクベシンは、ジヒドロキノン形の核を含むことを特徴としている。マクベシン及び18,21-ジヒドロマクベシンの両方とも、同様の抗菌活性、及びマウス白血病P388細胞株のような癌細胞株に対する抗腫瘍活性を有することが示された(Onoらの論文、1982)。逆転写酵素及びターミナルデオキシヌクレオチジル転移酵素の活性は、マクベシンにより阻害されなかった(Onoらの論文、1982)。マクベシンのHsp90阻害機能が、文献において報告されている(Bohenの論文、1998;Liuらの論文、1999)。微生物培養ブロスへの添加後の、マクベシン及び18,21-ジヒドロマクベシンの、ある位置又は複数の位置でメトキシ基の代わりにヒドロキシ基を伴う化合物への変換は、特許US 4,421,687及びUS 4,512,975に開示されている。
【0011】
多種多様な土壌微生物のスクリーニング時に、化合物TAN-420AからEが、ストレプトマイセス属に属する産生株から同定された(7-11, EP 0 110 710)。
【化2】

【0012】
2000年に、ストレプトマイセス種S6699の細胞培養物からのゲルダナマイシンに関連した、非-ベンゾキノンアンサマイシン代謝産物レブラスタチンの単離、及び関節リウマチの治療におけるその潜在的治療的価値が、説明された(Steadらの論文、2000)。
【0013】
更に化学的に無関係のベンゾキノンアンサマイシンとは異なるHsp90阻害剤は、ラディシコール(モノルデン)であり、これは真菌モノポリウム・ボノルデン(Monosporium bonorden)からその抗真菌活性について当初発見され(総説については、Ueharaの論文、2003を参照されたい)、並びにその構造は、ネクトリア・ラディシコール(Nectria radicicola)から単離された14-員マクロライドと同じであることがわかった。これはその抗真菌活性、抗菌活性、抗原虫活性及び細胞傷害活性に加え、Hsp90シャペロンタンパク質の阻害剤として引き続き同定された(総説については、Ueharaの論文、2003;Schulteらの論文、1999を参照されたい)。ラディシコールの抗-血管新生活性(Hurらの論文、2002)及びそれらの半-合成誘導体(Kurebayashiらの論文、2001)も、説明されている。
【0014】
最近の関心は、新規生成アンサマイシン抗癌化合物としてのゲルダナマイシンの17-アミノ誘導体(Bagatell及びWhitesellの論文、2004)、例えば、17-(アリルアミノ)-17-デスメトキシゲルダナマイシン(17-AAG, 12)(Hosteinらの論文、2001;Neckersの論文、2002;Nimmanapalliらの論文、2003;Vasilevskayaらの論文、2003;Smith-Jonesらの論文、2004)及び17-デスメトキシ-17-N,N-ジメチルアミノエチルアミノ-ゲルダナマイシン(17-DMAG, 13)(Egorinらの論文、2002;Jezらの論文、2003)に集まっている。より最近になってゲルダナマイシンは、17-位で誘導体化され、17-ゲルダナマイシンのアミド、カルバメート、尿素及び17-アリールゲルダナマイシンを作出している(Le Brazidecらの論文、2003)。60種を超える17-アルキルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン類似体のライブラリーが報告されており、かつそれらのHsp90への親和性及び水溶解度について試験された(Tianらの論文、2004)。ゲルダナマイシンの毒性を低下する更なるアプローチは、腫瘍-標的化モノクローナル抗体との複合による、活性ゲルダナマイシン化合物の悪性細胞への選択的標的化及び送達である(Mandlerらの論文、2000)。
【0015】
【化3】

【0016】
これらの誘導体の多くは低下した肝毒性を示すが、これらは依然限定された水溶解度を有する。例えば17-AAGは、それら自身一部の患者において副作用を起こし得る可溶化担体(例えば、Cremophore(登録商標)、DMSO-卵レシチン)の使用を必要とする(Huらの論文、2004)。
【0017】
Hsp90阻害剤のアンサマイシンクラスのほとんどは、タンパク質、グルタチオンなどの求核物質と容易に共有結合を形成することができるマイケル受容体である、ベンゾキノンである、共通の構造部分を有する。ベンゾキノン部分は、酸素ラジカルが形成される間に、ジヒドロキノンとのレドックス平衡も受け、このことは更なる非特異的毒性を生じる(Dikalovらの論文、2002)。例えばゲルダナマイシンによる治療は、スーパーオキシド生成の誘導を生じ得る(Sreedharらの論文、2004a)。
【0018】
従って癌及び/又はB-細胞性悪性疾患の治療に利用性がある新規アンサマイシン誘導体を同定する必要性が依然存在しており、そのようなアンサマイシンは、改善された水溶解度、投与に関して改善された薬理学的プロファイル及び/又は軽減された副作用プロファイルを有することが好ましい。本発明は、親産生株の遺伝子操作により作出される新規アンサマイシン類似体を開示している。特に本発明は、新規17-オキシマクベシン類似体を開示しており、これは一般に、現在利用可能なアンサマイシンに比べ改善された医薬特性を有し;特にこれらは、下記の特性の1つ以上に関して改善を示すことが期待される:様々な癌亜型に対する活性、毒性、水溶解度、代謝安定性、生物学的利用能及び製剤能。17-オキシマクベシン類似体は、改善された水溶解度及び/又は生物学的利用能を示すことが好ましい。
【発明の開示】
【0019】
(発明の要旨)
本発明は、C17位にヒドロキシ基又はメトキシ基のいずれかを有する新規17-オキシマクベシン類似体、これらの化合物の製造方法、及び医薬品中での又は更なる化合物生成の中間体としてのこれらの化合物の使用方法を提供する。
従って第一の態様において、本発明は、C17位にヒドロキシ基又はメトキシ基を有するマクベシンの類似体を提供し、このマクベシン類似体は、ベンゾキノンを有する(すなわちこれらはマクベシンI類似体である)か、又はジヒドロキノン部分を有する(すなわちこれらは18,21-ジヒドロマクベシン又はマクベシンII類似体である)のいずれかであってよい。
【0020】
より詳細な態様において、本発明は、下記式(IA)又は(IB)の17-オキシマクベシン類似体、又はそれらの医薬として許容し得る塩を提供する:
【化4】

(式中、R1は、H、OH又はOCH3を表し;
R2は、H又はCH3を表し;
R3は、H又はCONH2を表し;
R4及びR5は、両方ともHを表すか、又はこれらは一緒に結合(すなわち、C4-C5は二重結合である)を表すかのいずれかであり;並びに
R6は、H又はOHを表し;並びに
R7は、H又はCH3を表す。)。
【0021】
前述の式(IA)又は(IB)のマクベシン類似体は、本明細書において「本発明の化合物」とも称され、これらの用語は本明細書において互換的に使用される。式(IA)及び(IB)の化合物は、先に式(I)の化合物と集合的に称されている。
【0022】
前記構造は、代表的互変異性体を示し、本発明は、例えばエノール化合物が図示された場合のケト化合物、又はその逆のような、式(I)の化合物の互変異性体の全てを包含している。
本発明は、先に示された構造(I)により定義された化合物の立体異性体の全てを包含している。
更なる態様において、本発明は、医薬として使用するために、式(I)の化合物のようなマクベシン類似体又はそれらの医薬として許容し得る塩を提供する。
【0023】
(定義)
冠詞「ある(a, an)」は、冠詞の文法上の対象の1つ又は2つ以上(すなわち少なくとも1つ)を意味するように、本明細書において使用される。例として、「ある類似体」は、1つの類似体又は2つ以上類似体を意味する。
本明細書において使用される用語「類似体(類)」は、別のものに構造的に類似しているが、組成がわずかに異なる(1個の原子の別の原子との交換又は特定の官能基の存在もしくは非存在として)化合物を意味する。
【0024】
本明細書において使用される用語「相同体(類)」は、異なるマクベシン産生株由来の代替のマクベシン生合成クラスターのいずれか由来の本明細書に開示された遺伝子もしくは遺伝子によりコードされたタンパク質の相同体、又は代替のアンサマイシン生合成遺伝子クラスター由来の、例えばゲルダナマイシン、ハービマイシンもしくはレブラスタチン由来の相同体を意味する。同じ機能を発揮するタンパク質をコードしているこのような相同体(類)はそれ自身、マクベシン又は関連したアンサマイシンポリケチドの合成において該遺伝子又はタンパク質と同じ機能を発揮する。好ましくはそのような相同体(類)は、本明細書に開示された特定の遺伝子の配列と、少なくとも40%の配列同一性、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有する(特に表3、配列番号:11(これはマクベシン生合成遺伝子クラスター遺伝子の全ての配列であり、これから特定の遺伝子の配列を推定することができる)、並びに、図6A及び6B、配列番号:20及び21(これはgdmLの核酸配列及びコードされたアミノ酸配列を示す)を参照のされたい)。%同一性は、NCBIウェブサイトから入手可能なBLASTn又はBLASTpのような、当業者に公知の任意のプログラムを使用し計算することができる。
【0025】
本明細書において使用される用語「癌」は、皮膚内の細胞、又は例えば非限定的に乳房、前立腺、肺、腎臓、膵臓、脳、胃もしくは腸などの体内臓器内の細胞の良性又は悪性の新たな増殖を意味する。癌は、隣接組織へ浸潤し、かつ例えば骨、肝臓、肺又は脳などの遠位臓器に広がる(転移する)傾向がある。本明細書において使用される用語癌は、非限定的にメラノーマ、リンパ腫、白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫及び肥満細胞腫のような転移性腫瘍細胞型、並びに非限定的に結腸直腸癌、前立腺癌、小細胞肺癌及び非-小細胞肺癌、乳癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、胃癌、グリア芽細胞腫、原発性肝癌及び卵巣癌などの組織癌型の両方を含む。
【0026】
本明細書において使用される用語「B-細胞性悪性疾患」は、慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫、及び非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む障害群を含む。これらは、血液及び造血臓器の新生物疾患である。これらは、骨髄及び免疫系の機能障害を引き起こし、このことは宿主を感染症に罹り易く、出血し易くする。
【0027】
本明細書において使用される用語「生物学的利用能」は、薬物又は他の物質が、投与後生物学的に活性のある部位で、吸収されるか、又は利用可能となり始める程度又は割合を意味する。この特性は、化合物の溶解度、消化管の吸収速度、タンパク質結合の程度及び代謝など多くの要因により左右される。当業者にはよく知られている生物学的利用能に関する様々な試験は、例えばEgorinらの論文(2002)に説明されている。
【0028】
本出願において使用される用語「水溶解度」は、例えばpH7.3のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような、水性媒体への溶解度を意味する。水溶解度アッセイの例は、下記実施例において記されている。
本明細書において使用される用語「ポスト-PKS遺伝子(類)」は、例えば非限定的にモノオキシゲナーゼ、O-メチル基転移酵素及びカルバモイル基転移酵素などの、ポリケチドのポスト-ポリケチド合成酵素修飾に必要とされる遺伝子を意味する。この用語は具体的には、C17位への酸素の付加に必要とされる遺伝子、例えばgdmL及びそれらの相同体も包含している。特に用語「マクベシンポスト-PKS遺伝子(類)」は、マクベシンPKS遺伝子クラスターにおけるそれらの修飾遺伝子、すなわちmbcM、mbcN、mbcP、mbcMT1、mbcMT2及びmbcP450を意味する。
【0029】
式(I)の化合物のような、本発明の化合物の医薬として許容し得る塩は、医薬として許容し得る無機又は有機の酸又は塩基から形成される通常の塩、更には第4級アンモニウム塩、酸付加塩を含む。好適な酸性塩のより詳細な例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ギ酸、乳酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、パルモン酸(palmoic)、マロン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヨウ化水素酸、リンゴ酸、ステロイック酸(steroic)、タンニン酸などの塩を含む。シュウ酸などの他の酸は、それら自身医薬として許容し得るものではないが、本発明の化合物及びそれらの医薬として許容し得る塩を得るための中間体として有用な塩の調製において有用なことがある。好適な塩基性塩のより詳細な例は、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン及びプロカインの塩を含む。以後本発明の化合物の言及は、式(I)の化合物及びそれらの医薬として許容し得る塩の両方を含む。
本明細書において使用される用語「18,21-ジヒドロマクベシン」及び「マクベシンII」(マクベシンのジヒドロキノン型)は、互換的に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(発明の説明)
本発明は、前述のような17-オキシマクベシン類似体、これらの化合物の製造方法、医薬品中のこれらの化合物の使用方法、更なる半-合成誘導体化もしくは生体内変換法による誘導体化のための中間体又は鋳型としてのこれらの化合物の使用を提供する。
好適には、17-オキシマクベシン類似体は、式IAの構造を有する。
好適には、17-オキシマクベシン類似体は、式IBの構造を有する。
【0031】
好適には、R3は、CONH2を表す。
好適には、R6は、OHを表す。あるいは、R6は、Hを表す。
好適には、R7は、Hを表す。
具体的実施態様において、17-オキシマクベシン類似体は、R1がHを表し、R2がHを表し、R3がCONH2を表し、R4及びR5が各々Hを表し、R6がOHを表し、並びにR7がHを表す、式(IA)の構造を有する。
具体的実施態様において、17-オキシマクベシン類似体は、R1がHを表し、R2がHを表し、R3がCONH2を表し、R4及びR5が各々Hを表し、並びにR7がHを表す、式(IB)の構造を有する。
【0032】
具体的実施態様において、17-オキシマクベシン類似体は、R1がHを表し、R2がHを表し、R3がCONH2を表し、R4及びR5が各々Hを表し、R6がOHを表し、並びにR7がCH3を表す、式(IA)の構造を有する。
具体的実施態様において、17-オキシマクベシン類似体は、R1がHを表し、R2がHを表し、R3がCONH2を表し、R4及びR5が各々Hを表し、並びにR7がCH3を表す、式(IB)の構造を有する。
【0033】
具体的実施態様において、17-オキシマクベシン類似体は、R1がHを表し、R2がHを表し、R3がCONH2を表し、R4及びR5が各々Hを表し、R6がHを表し、並びにR7がHを表す、式(IA)の構造を有する。
具体的実施態様において、17-オキシマクベシン類似体は、R1がHを表し、R2がHを表し、R3がCONH2を表し、R4及びR5が各々Hを表し、R6がHを表し、並びにR7がCH3を表す、式(IA)の構造を有する。
アンサ環への非-水素側鎖の好ましい立体化学を、下記図1及び2にマクベシンに関して示す(すなわち、好ましい立体化学は、マクベシンのそれに従う)。
【0034】
R6はOHを表す本発明の化合物は、それらのベンゾキノン型又はそれらのジヒドロキノン型において発酵ブロスから単離することができる。ベンゾキノンは、ジヒドロキノンへ化学的に転換され(還元)、かつその逆に転換される(酸化)ことは当該技術分野において周知であり、従ってこれらの型は、当業者に周知の方法を用い容易に相互転換されてよい。例えば限定されるものではないが、ベンゾキノン型が単離される場合、これは対応するジヒドロキノンへ転換されてよい。例として(しかし限定されるものではない)、これは非限定的にLiAlH4又はSnCl2-HClなどの、水素化物の給源により、有機媒体において達成されてよい。あるいはこの転換は、本発明の化合物のベンゾキノン型の有機媒体への溶解、その後の非限定的にヒドロ亜硫酸ナトリウム(Na2S2O4又は亜ジチオン酸ナトリウム)などの、還元剤の水溶液による洗浄により、媒介されてよい。好ましくはこの転換は、本発明の化合物の酢酸エチルへの溶解、及びこの溶液のハイドロサルファイトナトリウム水溶液との激しい混合により、実行される(Muroiらの論文、1980)。その後得られた有機溶液を水で洗浄し、乾燥し、減圧下で溶媒を除去し、本発明の化合物の18,21-ジヒドロ型をほぼ定量的量で得ることができる。
【0035】
ジヒドロキノンをキノンへ酸化するために、いくつかの経路が利用可能であり、これは:本発明の化合物のジヒドロキノン型を、酢酸エチルのような有機溶媒に溶解し、次にこの溶液を、塩化鉄(III)(FeCl3)の水溶液と共に激しく混合することを含むが、これらに限定されるものではない。その後この有機溶液を水で洗浄し、乾燥し、有機溶媒を減圧下で除去し、マクベシン化合物のベンゾキノン型をほぼ定量的量で得ることができる。
【0036】
本発明は、17-オキシマクベシン類似体又はそれらの医薬として許容し得る塩を、医薬として許容し得る担体と共に含有する、医薬組成物も提供する。
本発明は、生体内変換か又は合成化学のいずれかによる更なる修飾のための基質としての17-オキシマクベシン類似体の使用も提供する。
【0037】
ひとつの態様において、本発明は、医薬品の製造における17-オキシマクベシン類似体の使用を提供する。更なる実施態様において、本発明は、癌及び/又はB-細胞性悪性疾患の治療のための医薬品の製造における、17-オキシマクベシン類似体の使用を提供する。更なる実施態様において、本発明は、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置のための医薬品の製造における17-オキシマクベシン類似体の使用を提供する。
【0038】
別の態様において、本発明は、薬剤における17-オキシマクベシン類似体の使用を提供する。更なる実施態様において、本発明は、癌及び/又はB-細胞性悪性疾患の治療における17-オキシマクベシン類似体の使用を提供する。更なる実施態様において、本発明は、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置のための医薬品の製造における17-オキシマクベシン類似体の使用を提供する。
【0039】
更なる実施態様において、本発明は、癌及び/又はB-細胞性悪性疾患の治療の方法を提供し、該方法は、17-オキシマクベシン類似体の治療的有効量をそれを必要とする患者へ投与することを含む。更なる実施態様において、本発明は、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置の方法を提供し、該方法は、17-オキシマクベシン類似体の治療的有効量をそれを必要とする患者へ投与することを含む。
【0040】
前述のように、本発明の化合物は、癌及び/又はB-細胞性悪性疾患の治療に有用であると予想することができる。本発明の化合物は、例えば、マラリア、真菌感染症、中枢神経系疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、関節リウマチのような自己免疫疾患などであるが、これらに限定されるものではない他の適応症の治療において、並びに/又は癌の予防的前処置としても有効であることができる。
【0041】
中枢神経系疾患及び神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含むが、これらに限定されるものではない。
血管新生依存性疾患は、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症及び様々な他の眼科疾患、アテローム硬化症及び関節リウマチを含むが、これらに限定されるものではない。
自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、1型糖尿病、全身性紅斑性狼瘡及び乾癬を含むが、これらに限定されるものではない。
【0042】
「患者」は、ヒト対象及び他の動物(特に哺乳類)対象を、好ましくはヒト対象を包含している。従って、本発明の17-オキシマクベシン類似体の方法及び使用は、ヒト用医薬品及び獣医学用医薬品、好ましくはヒト用医薬品で使用される。
前述の本発明の化合物又はそれらの製剤は、いずれかの通常の方法により投与することができ、例えばこれらは、非経口的(静脈内投与を含む)、経口、局所的(口腔内、舌下又は経皮を含む)、医療用具を介して(例えばステント)、吸入によるか、又は注射により(皮下又は筋肉内)投与されるが、これらに限定されるものではない。本治療は、単回投与又はある期間に渡った反復投与によりなることができる。
【0043】
本発明の化合物は単独で投与することが可能であるが、これは、1種以上の許容し得る担体と一緒に医薬製剤として存在することが好ましい。従って、本発明の化合物を、1種以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と一緒に含有する医薬組成物が提供される。希釈剤(類)又は担体(類)は、本発明の化合物と相溶性がありかつそれらのレシピエントに有害でないという意味で、「許容でき」なければならない。好適な担体の例は、以下により詳細に説明される。
【0044】
本発明の化合物は、単独で又は他の治療薬と組合せて投与されてよい。2種(又はそれよりも多い)薬剤の同時投与は、使用される各々の投与量を著しく低くすることができ、これにより認められる副作用を軽減する。癌のような疾患が抵抗性となり始めている先行する療法の作用に対するその疾患の再感作も可能である。1種以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と一緒に、本発明の化合物及び更なる治療薬を含有する医薬組成物も提供される。
更なる態様において、本発明は、細胞傷害性薬物又は細胞増殖抑制薬のような、癌又はB-細胞性悪性疾患の治療のための第二の薬剤のような、第二の薬剤との併用療法における本発明の化合物の使用を提供する。
【0045】
ひとつの実施態様において、本発明の化合物は、別の治療薬、例えば、癌又はB-細胞性悪性疾患の治療のための細胞傷害性薬物又は細胞増殖抑制薬のような治療薬と同時投与される。更なる薬剤の例は、細胞傷害性薬物、例えばアルキル化剤及び有糸分裂阻害剤(トポイソメラーゼII阻害剤及びチューブリン阻害剤を含む)である。更なる薬剤のその他の例は、DNA結合剤、代謝拮抗薬及び細胞増殖抑制薬、例えばプロテインキナーゼ阻害剤及びチロシンキナーゼ受容体遮断薬がある。好適な薬剤は、メトトレキセート、ロイコボリン、プレニゾン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、アナストロゾール、ゴセレリン、抗-HER2モノクローナル抗体(例えば、トラスツズマブ、商品名ハーセプチン(Herceptin)(商標))、カペシタビン、塩酸ラロキシフェン、EGFR阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、商品名イレッサ(Iressa)(登録商標)、エルロチニブ、商品名Tarceva(商標)、セツキシマブ、商品名エルビタックス(Erbitax)(商標))、VEGF阻害剤(例えば、ベバシズマブ、商品名アバスチン(Avastin)(商標))、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、商品名ベルケード(Velcade)(商標))を含むが、これらに限定されるものではない。更に好適な薬剤は、通常の化学療法薬、例えば、シスプラチン、シタラビン、シクロヘキシルクロロエチルニトロス尿素、ゲムシタビン、イホスファミド、ロイコボリン、マイトマイシン、ミトキサントン、オキサリプラチン、タキソールを含むタキサン、及びビンデシンなど;ホルモン療法;モノクローナル抗体療法、例えばセツキシマブ(抗-EGFR)など;プロテインキナーゼ阻害剤、例えばダサチニブ、ラパチニブなど;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばボリノスタットなど;血管新生阻害剤、例えばスニチニブ、ソラフェニブ、レナリドマイドなど;並びに、mTOR阻害剤、例えばテムシロリムスなどを含むが、これらに限定されるものではない。更に好適な薬剤は、商品名Glivec(登録商標)のイマチニブである。加えて本発明の化合物は、非限定的に放射線治療又は手術を含む、他の療法と組合せて投与されてよい。
【0046】
本製剤は好都合なことに、単位剤形で示され、及び調剤技術分野において周知の任意の方法により調製されてよい。このような方法は、活性成分(本発明の化合物)の、1種以上の補助成分を構成する担体との会合をもたらす工程を含む。一般に本製剤は、活性成分の液体担体又は微細化された固形担体又は両方との会合を均質かつ密接にし、その後必要ならば生成物を造形することで、調製される。
【0047】
本発明の化合物は、任意に医薬として許容し得る剤形中の無毒の有機もしくは無機の酸もしくは塩基、付加塩の形で、活性成分を含有する医薬製剤の形で通常経口又は任意に非経口経路により投与される。治療される障害及び患者に加え、投与経路に応じて、本組成物は変動する投与量で投与することができる。
【0048】
例えば、本発明の化合物は、即時-、遅延-又は制御された放出の適用のために、矯味矯臭剤又は着色剤を含有してよい、錠剤、カプセル剤、卵形剤(ovule)、エリキシル剤、液剤又は懸濁剤の形で、経口、口腔内、又は舌下へ投与することができる。
このような錠剤は、微晶質セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム及びグリシンのような賦形剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム及びある種の複合シリカのような崩壊剤、並びにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシ-プロピルセルロース(HPC)、ショ糖、ゼラチン及びアカシアゴムのような造粒結合剤を含んでよい。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル及びタルクのような滑沢剤を含んでよい。
【0049】
同様の型の固形組成物も、ゼラチンカプセル剤中の充填剤として利用することができる。これに関する好ましい賦形剤は、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖又は高分子量ポリエチレングリコールを含む。水性懸濁剤及び/又はエリキシル剤に関して、本発明の化合物は、様々な甘味剤又は矯味矯臭剤、着色物質又は染料と一緒に、乳化剤及び/又は懸濁化剤と一緒に、並びに水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンのような希釈剤と一緒に、並びにそれらの組合せと一緒にすることができる。
【0050】
錠剤は、任意に1種以上の補助成分と共に、圧縮又は成形により作製することができる。圧縮錠は、任意に結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋したポビドン、架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性化剤又は分散剤と混合された、粉末又は顆粒のような自在流動形の活性成分を、好適な装置において圧縮することにより調製することができる。成形錠は、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末化された化合物の混合物を好適な装置において成形することにより作製することができる。これらの錠剤は、任意にコートされるか又は刻み目を入れることができ、かつ所望の放出プロファイルを提供するために例えば変動する割合でヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、活性成分の遅延放出又は制御放出を提供するために製剤することができる。
【0051】
経口投与に適した本発明の製剤は、各々予め決定された量の活性成分を含有する、カプセル剤、カシェ剤又は錠剤のような個別の単位として;散剤又は顆粒剤として;水性液体又は非水性液体中の液剤又は懸濁剤として;もしくは、水中油型液体乳剤又は油中水型液体乳剤として、提供されてよい。本活性成分は、ボーラス、舐剤又はペースト剤としても提供されてよい。
【0052】
口内の局所投与に好適な製剤は、通常ショ糖及びアカシアゴム又はトラガカントガムの香料基剤中に活性成分を含有する、トローチ剤;ゼラチン及びグリセリン、又はショ糖及びアカシアゴムのような不活性基剤中に活性成分を含有する、香錠;並びに、好適な液体担体中に活性成分を含有する、含嗽剤を含む。
本発明の製剤は、前述の特定の構成成分に加え、問題の剤型に関する当該技術分野において通常の他の作用物質を含有することができることは理解されなければならず、例えば、経口投与に適したものは、矯味矯臭剤を含有してよい。
【0053】
局所投与に適合された医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、液剤、ペースト剤、ゲル剤、含浸包帯、スプレー剤、エアロゾル剤又は油剤、経皮デバイス、粉剤などとして製剤されてよい。これらの組成物は、活性物質を含む通常の方法により調製されてよい。従ってこれらは、相溶性のある通常の担体及び添加剤、例えばクリーム剤又は軟膏剤中の保存剤、薬物の透過を補助する溶媒、緩和剤など、並びにローション剤中のエタノール又はオレイルアルコールなどを含有することもできる。このような担体は、組成物の約1%から最大約98%で存在してよい。より一般的には、これらは組成物の最大約80%を形成する。単なる例証として、クリーム剤又は軟膏剤は、所望の稠度を有するクリーム剤又は軟膏剤を作製するのに十分な量で、化合物を約5〜10重量%含有する、親水性物質及び水の十分な量を混合することにより調製される。
【0054】
経皮投与に適合された医薬組成物は、長時間、レシピエントの表皮と密接に接触し続けることが意図された個別の貼付剤として提供されてよい。例えば、活性物質は、イオン導入法により貼付剤から送達されてよい。
例えば口及び皮膚のような外部組織への適用に関して、本組成物は、局所用軟膏剤又はクリーム剤として適用されることが好ましい。軟膏剤として製剤される場合、活性物質は、パラフィン系又は水混和性のいずれかの軟膏基剤と共に使用することができる。
あるいは、この活性物質は、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤と共に、クリーム剤に製剤されてもよい。
【0055】
非経口的投与に関して、活性成分、並びに無菌ビヒクル、例えば水、アルコール、ポリオール、グリセリン及び植物油など(水が好ましい)であるが、これらに限定されないものを用いて、流体単位剤形が調製される。この活性成分は、使用されるビヒクル及び濃度に応じて、ビヒクル中に懸濁されるか又は溶解されるかのいずれかであることができる。溶液の調製において、活性成分は、注射用水に溶解され、濾過滅菌され、その後好適なバイアル又はアンプルに充填され、密封される。
【0056】
有利なことに、局所麻酔薬、保存剤及び緩衝剤などの作用物質を、このビヒクルに溶解することができる。安定性を増強するために、本組成物は、バイアルへの充填後に凍結し、かつ真空下で水を除去することができる。次に無水の凍結乾燥された粉末は、バイアル中で密封され、使用前に液体を再構成するように、注射用水のバイアルを伴って供給されてよい。
【0057】
非経口懸濁剤は、活性成分が、溶解される代わりにビヒクル中に懸濁されること及び滅菌を濾過により実現できないこと以外は、液剤と実質的に同じ様式で調製される。本活性成分は、無菌ビヒクル中へ懸濁される前に、エチレンオキシドへ曝露することにより滅菌することができる。有利なことに、活性成分の均質な分布を促進するために、本組成物中に界面活性剤又は湿潤剤が含まれる。
【0058】
本発明の化合物は、当該技術分野において公知の医療用具を用いて投与されてもよい。例えばひとつの実施態様において、本発明の医薬組成物は、US 5,399,163;US 5,383,851;US 5,312,335;US 5,064,413;US 4,941,880;US 4,790,824;又は、US 4,596,556に開示された装置のような、無針皮下注射装置により投与することができる。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例は、以下のものを含む:US 4,487,603は、投薬を制御された速度で分配するための、植え込み可能な微量注入ポンプを開示している;US 4,486,194は、皮膚を通る医薬品の投与のための治療的装置を開示している;US 4,447,233は、正確な注入速度で投薬を送達するための投薬用注入ポンプを開示している;US 4,447,224は、連続薬物送達のための可変流量の植え込み可能な注入器具を開示している;US 4,439,196は、マルチ-チャンバーコンパートメントを備える浸透圧式薬物送達システムを開示している;並びに、US 4,475,196は、浸透圧式薬物送達システムを開示している。多くの他のインプラント、送達システム、及びモジュールが、当業者に公知である。
【0059】
本発明の化合物の投与される用量は、特定の化合物、関連する疾患、対象、並びに疾患の性質及び重症度、並びに対象の生理的状態、並びに選択された投与経路に従い変動する。適量は、当業者により容易に決定され得る。
本組成物は、投与方法に応じて、本発明の化合物を0.1重量%以上、好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜30重量%含有する。
【0060】
当業者により、本発明の化合物の最適量及び個々の投薬の間隔は、治療される状態の性質及び程度、剤型、投与経路及び部位、並びに治療される特定の対象の年齢及び状態により決定されること、並びに医師が使用されるべき適量を最終的に決定することは認められるであろう。この投薬は、適当なだけ繰り返すことができる。副作用が出現した場合には、通常の臨床の実践に従い、投薬の量及び/又は頻度を変更又は減少することができる。
【0061】
更なる態様において、本発明は、17-オキシマクベシン類似体の製造方法を提供する。
マクベシンは、2段階で生合成されると考えることができる。第一段階において、コア-PKS遺伝子は、2-炭素ユニットの反復集成により、マクロライドコアを集成し、これを次に環化し、第一の酵素-フリー中間体「プレ-マクベシン」を形成する(図1参照)。第二段階において、一連の「ポスト-PKS」を仕立てる酵素(例えば、P450モノオキシゲナーゼ、メチル基転移酵素、FAD-依存型オキシゲナーゼ及びカルバモイル基転移酵素)は、様々な追加の基をプレ-マクベシン鋳型に付加するように作用し、最終の親化合物構造を生じる(図2参照)。本発明の17-オキシマクベシン類似体は、同様の様式で生合成することができる。
【0062】
この生合成的生成は、新規化合物の生成を生じるのに適した産生株の遺伝子操作により活用されてよい。特に本発明は、17-オキシマクベシン類似体を生成する方法を提供し、該方法は以下の工程を含む:
a)好適な条件下で培養した場合に、マクベシン又はそれらの類似体を生成する第一の宿主菌株を提供する工程;
b)マクベシンのC17位で酸化することが可能である1種以上のポスト-PKS遺伝子を挿入する工程;
c)該修飾された宿主菌株を、新規化合物の生成に適した条件下で培養する工程;並びに
d)任意に、生成された化合物を単離する工程。
【0063】
工程(a)において、「マクベシン又はそれらの類似体」は、R1の定義により包含されるマクベシン又はマクベシンのそれらの類似体を意味する。
工程(b)において、挿入されたポスト-PKS遺伝子(複数)は、好ましくはgdmL、又はそれらの相同体である。
本方法は追加的に下記工程を含む:
e)1種以上のマクベシンポスト-PKS遺伝子、又はそれらの相同体を欠失又は失活する工程であって、該工程は通常、工程c)の前に行われ、並びに工程b)の前に行われてもよい。
工程e)において、1種以上のポスト-PKS遺伝子の欠失又は失活は、選択的に行われることが適している。
【0064】
別の方法は追加的に下記工程を含む:
f)1種以上の欠失されたポスト-PKS遺伝子を再導入する工程であって、該工程が通常、工程c)の前に行われる工程;及び/又は
g)別のPKSクラスター由来のポスト-PKS遺伝子を導入する工程であって、該工程が通常、工程c)の前に行われる工程。
【0065】
更なる実施態様において、工程e)は、機能タンパク質が生成されないようにDNAをその遺伝子(類)に組込むことにより、1種以上のポスト-PKS遺伝子、又はそれらの相同体を失活することを含む。別の実施態様において、工程e)は、1種以上のポスト-PKS遺伝子又はそれらの相同体の標的化された欠失を作製することを含む。更なる実施態様において、1種以上のポスト-PKS遺伝子又はそれらの相同体は、部位特異的変異誘発により失活される。更なる実施態様において、工程a)の宿主菌株は、変異誘発に供され、かつ1種以上のポスト-PKS酵素又はそれらの相同体が機能しない修飾された菌株が選択される。本発明は、1種以上のポスト-PKS遺伝子又はそれらの相同体の発現を制御する制御因子の変異も包含し、当業者は、制御因子の欠失又は失活は、遺伝子の欠失又は失活と同じ結果を生じ得ることを理解するであろう。
【0066】
更なる実施態様において、工程e)の菌株は、1種以上の欠失又は失活されている遺伝子又はそれらの相同体により補完される。
更なる実施態様において、工程e)の菌株は、例えば非限定的に、C17のヒドロキシ上にメチル基を転移することが可能であるタンパク質を発現している遺伝子などの、異なるPKSクラスター由来の1種以上のポスト-PKS遺伝子により補完される。
【0067】
本発明の特定の実施態様において、ポストPKS遺伝子を選択的に挿入する方法は、下記工程を含む:
(i)鋳型としてゲノムDNAを使用するPCR増幅によりC17-ヒドロキシル化の原因である遺伝子を単離する工程であり、ここでゲノムDNAは、関連した好適なヒドロキシル化された分子をそれ自身産生する菌株のものであり、例えば、鋳型が、gdmL遺伝子又はその配列が入手不可能であるgdmLの相同体である場合、gdmLの公開された配列を基にした特異的プライマー、又はgdmLの公開された配列を基にした縮重プライマーのいずれかの使用による、ゲルダナマイシン産生株からgdmL遺伝子を単離する工程;
(ii)この遺伝子を、宿主細胞への移入のために、好適なベクターへクローニングする工程であり、これは、細胞において維持され、かつgdmL遺伝子又はそれらの相同体の発現を可能とし、機能性C17-水酸化酵素を生成する。例えば、gdmLの発現を促進するためのactII-ORF4アクチベーターも含む、ベクター内のactIプロモーター下にこれを配置するためのストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus) NRRL 3602 gdmL遺伝子のクローニングなどであるが、これらに限定されるものではない。実施例2において使用されるベクターは、接合伝達のためのoriT、phiBT1付着部位、及びアプラマイシン耐性マーカーも含む;
(iii)宿主細胞のこのベクターによる、例えば、接合による、形質転換。
【0068】
当業者は、宿主細胞のDNA片の維持は、多くの標準方法により実現することができることを容易に受け入れるであろう。好ましい実施態様において、プロモーター及びgdmL又はそれらの相同体は、実施例2に説明されたように、ストレプトマイセスファージphiBT1の染色体ファージ付着部位へ導入されてよい(Gregoryらの論文、2003)。当業者は、標的遺伝子の発現は、このファージ付着部位でのベクターの導入、又は実際付着部位の使用に限定されないことを理解するであろう。従って、例えばpSET152の誘導体の使用により、この発現ベクターは、ストレプトマイセスファージphiC31の付着部位のような、他のファージ付着部位へ導入することができる(Biermanらの論文、1992)。このような組込みは、以下を含むが、これらに限定されるものではない他の利用可能な組込み機能を用い、同様に行われてよい:pSAM2インテグラーゼをベースにしたベクター(例えば、pPM927(Smovkinaらの論文、1990))、R4インテグラーゼ(例えば、pAT98(Matsuuraらの論文、1996))、VWBインテグラーゼ(例えば、pKT02(Van Mellaertらの論文、1998))、及びL5インテグラーゼ(例えば、Leeらの論文、1991)。当業者は、遺伝子をA.プレチオスムへ導入するために使用することができる更なるシステムを作出するために、好適なプロモーターと一緒に送達ベクターへ移入され得る組込み機能を含むことが予想される多くの放線菌ファージが存在することを認めるであろう。実際多くのファージが、放線菌から同定されており、並びに組込み機能は、それらから得ることができ、かつ同様の様式で利用することができる。より多くのファージが特徴決定されているので、同様に使用することができる入手可能なインテグラーゼが更に存在することが予想されるであろう。場合によっては、高度に効率的な組込みを可能にするために、インテグラーゼに特異的attB部位の追加による、宿主菌株の変更が必要なことがある。好適なプロモーター下でのgdmL又はそれらの相同体の導入は、染色体内の中立位置(neutral position)への相同組換え、染色体内の非中立位置への相同組換え(例えば、選択された遺伝子の破壊のため)により実行されるが、これらに限定されるものではない。自己複製するベクターも、例えば、pSG5からのストレプトマイセス複製起源を含むベクター(例えば、pKC1139、Biermanらの論文、1992)、pIJ101からのもの(例えば、pIJ487、Kieserらの論文、2000)、及びSCP2*からのもの(例えば、pIJ698、Kieserらの論文、2000)を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
当業者は、GdmL又はそれらの相同体の生成に使用することができる多くのプロモーターが存在することを容易に受け入れ、例えば、gdmLプロモーター、実施例2のように一般にそれらのコグネイトアクチベーターactII-ORF4と共に使用されるactI又はactIIIプロモーター(Roweらの論文、1998)、プリスチナマイシンに対する耐性のプロモーターのような、ストレスに対応するプロモーター(Blancらの論文、1995)並びにエリスロマイシン耐性遺伝子ermEプロモーター、PermE (Bibbらの論文、1985)及び変異型PermE*のような、二次代謝産物生合成クラスター由来のプロモーターを使用することができる。
【0070】
本発明の特定の実施態様において、ポストPKS遺伝子を選択的に欠失又は失活する方法は:
(i)関心対象の遺伝子(例えば、ゲルダナマイシンPKS生合成クラスター由来及び/又はハービマイシン生合成クラスター由来)の相同体(類)を基にした縮重オリゴをデザインし、並びに例えば、PCR反応においてこれらのプライマーを使用することにより、好適なマクベシン産生株からの関心対象の遺伝子(又はそれらの相同体)の内部断片を単離する工程;
(ii)この断片を含むプラスミドを、同じ又は異なるのいずれかのマクベシン産生株へ組込み、引き続き相同組換えし、これが標的化された遺伝子(又はそれらの相同体)の破壊を生じる工程;
(iii)こうして作出された菌株を、マクベシン類似体の生成に適した条件下で培養する工程:を含む。
【0071】
具体的な実施態様において、工程(i)のマクベシン産生菌株は、アクチノシンネマ・ミルム(A. mirum)である、更に具体的な実施態様において、工程(ii)のマクベシン産生菌株は、アクチノシンネマ・プレチオスム(A. pretiosum)である。
【0072】
当業者は、同等の菌株は、例えば以下のような、先に説明された方法の代替方法を用い実現され得ることを理解するであろう:
・縮重オリゴは、例えばA.プレチオスム又はA.ミルムなどであるか、これらに限定されない多くのマクベシン産生株のひとつから関心対象の遺伝子を増幅するために使用することができる、
・マクベシン産生株の標的標的遺伝子又はそれらの相同体の適当な領域をうまく増幅する様々な縮重オリゴを、デザインすることができる
・A.プレチオスム株の標的遺伝子の配列を使用し、A.プレチオスムの標的遺伝子に特異的であるオリゴを作出し、その後この内部断片を、任意のマクベシン産生株、例えばA.プレチオスム又はA.ミルムから増幅することができる、
・A.プレチオスム株の標的遺伝子の配列を、相同遺伝子の配列と共に使用し、縮重オリゴを作出し、その後その内部断片を、任意のマクベシン産生株、例えばA.プレチオスム又はA.ミルムから増幅することができる。
【0073】
図2は、マクベシン生合成クラスターにおけるポスト-PKS遺伝子の活性を示す。従って当業者は、関心対象の化合物(類)を生成する菌株に達するために、どの追加のポスト-PKS遺伝子が欠失又は失活されることが必要かを、確定することができるであろう。
【0074】
これらのシステムにおいて、追加のポスト-PKS遺伝子が挿入され、並びに任意に失活又は欠失を含む説明された方法の一つの結果として、1種以上のポスト-PKS遺伝子又はそれらの相同体が機能しない菌株が作出され、並びに任意に更にポスト-PKS遺伝子が再挿入される場合に、2種以上のマクベシン類似体が産生され得ることが観察される。これに関して、当業者に理解される可能性のある理由が数多く存在する。例えば、ポスト-PKS工程の好ましい順番があり、並びにひとつの活性の除去は、全ての後続の工程が関連した酵素にとって天然でない基質上で実行されることにつながる。これは、ポスト-PKS酵素に提示された新規基質に対する効率が低下したために、中間体が培養ブロス中で構築されること、又は恐らく工程の順番が変更されたために、残りの酵素にとってもはや基質でない生成物へ短絡することにつながり得る。あるいは、生合成経路の一部の遺伝子の発現に対する作用が存在することがある。
【0075】
当業者は、混合物中に観察された化合物の比は、増殖条件の変化量を使用することにより操作することができることを理解するであろう。
化合物の混合物が認められる場合に、これらは、その一部は下記実施例において説明されているような標準技術を用い、容易に分離することができる。
17-オキシマクベシン類似体は、本明細書に説明された、多くの方法によりスクリーニングされてよく、並びに単独の化合物が良好なプロファイルを示す状況において、菌株は、好ましくはこの化合物を生成するように操作することができる。これが不可能である通常でない状況においては中間体が生成され、これは次に所望の化合物を生成するように生体内変換される。
【0076】
本発明は、任意にマクベシンPKS遺伝子クラスターからの1種以上のポスト-PKS遺伝子の欠失又は失活と組合せて、マクベシンの17位を酸化することが可能である1種以上のポスト-PKS遺伝子の選択的挿入により作出された新規マクベシン類似体を提供する。特に本発明は、マクベシンPKS遺伝子クラスターからの、1種以上のポスト-PKS遺伝子又はそれらの相同体の選択された欠失又は失活と任意に組合せた、gdmL又はそれらの相同体の挿入により作出された新規17-オキシマクベシン類似体に関する。具体的実施態様において、mbcP、mbcM、mbcN、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2からなる群から選択される1種以上のポスト-PKS遺伝子が、宿主菌株において追加的に欠失又は失活される。更なる実施態様において、mbcP、mbcM、mbcN、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2からなる群から選択される2種以上のポスト-PKS遺伝子が、追加的に欠失又は失活される。更なる実施態様において、mbcP、mbcM、mbcN、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2からなる群から選択される3種以上のポスト-PKS遺伝子が、追加的に欠失又は失活される。更なる実施態様において、mbcP、mbcM、mbcN、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2からなる群から選択される4種以上のポスト-PKS遺伝子が、追加的に欠失又は失活される。更なる実施態様において、mbcP、mbcM、mbcN、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2からなる群から選択される5種以上のポスト-PKS遺伝子が、追加的に欠失又は失活される。
【0077】
具体的な実施態様において、mbcP、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2が欠失され、かつgdmLが導入され(例えば、ファージ付着部位に)、並びにプロモーターから発現され、4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-17-ヒドロキシマクベシンを生じる。
具体的な実施態様において、mbcMが欠失され、かつgdmLが導入され(例えば、ファージ付着部位に)、並びにプロモーターから発現され、4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-17-ヒドロキシ-21-デスオキシマクベシンを生じる。
具体的な実施態様において、mbcMが欠失され、かつgdmLが導入され(例えば、ファージ付着部位に)、並びにプロモーターから発現され、4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-O-デスメチル-17-ヒドロキシ-21-デスオキシマクベシンを生じる。
【0078】
具体的な実施態様において、mbcM、mbcP、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2が欠失され、かつgdmLが導入され(例えば、ファージ付着部位に)、並びにプロモーターから発現され、4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-17-メトキシ-21-デスオキシマクベシンを生じる。
具体的な実施態様において、mbcM、mbcP、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2が欠失され、かつgdmLが導入され(例えば、ファージ付着部位に)、並びにプロモーターから発現され、4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-O-デスメチル-17-メトキシ-21-デスオキシマクベシンを生じる。
【0079】
当業者は、遺伝子はそれが非-機能性とされるために完全に欠失されることは必要ではないこと、結果的に本明細書において使用される用語「欠失又は失活された」は、以下を含むが、これらに限定されるものではない、それにより遺伝子が非-機能性とされる任意の方法を包含することを理解するであろう:遺伝子のその全体の欠失、遺伝子の一部の欠失、標的遺伝子への挿入による失活、発現されないか又は不活性型で発現されるかのいずれかの遺伝子を生じる部位特異的変異誘発、発現されないか又は不活性型で発現されるかのいずれかの遺伝子を生じる宿主菌株の変異誘発(例えば、放射線又は変異誘発性化学物質への曝露、プロトプラスト融合又はトランスポゾン変異誘発による)。あるいは活性遺伝子産物の機能は、阻害剤により化学的に損なうことができ、例えばメタピロン(metapyrone)(2-メチル-1,2-ジ(3-ピリジル-1-プロパノン)の別名、EP 0 627 009)及びアンシミドールは、オキシゲナーゼの阻害剤であり、並びにこれらの化合物は、類似体を生成するために生産培地に添加することができる。加えてシネフンギンは、同様にしかしメチル基転移酵素活性の阻害のためにはインビボで使用することができる、メチル基転移酵素阻害剤である(McCammon及びParksの論文, 1981)。
【0080】
別の実施態様において、17位を酸化することが可能である1種以上のポスト-PKS遺伝子が挿入された菌株において、全てのポスト-PKS遺伝子が欠失又は失活されてよく、その後1種以上のこれらの遺伝子は、補完により(例えば、付着部位で、自己-複製プラスミド上の結合部位で、又は染色体の相同領域への挿入により)再度導入されてよい。従って特定の実施態様において、本発明は、17-オキシヒドロマクベシン類似体の製造方法に関し、該方法は:
a)好適な条件下で培養した場合に、マクベシンを生成する第一の宿主菌株を提供する工程;
b)マクベシンのC17位を酸化することが可能である1種以上のポスト-PKS遺伝子を選択的に挿入する工程;
c)全てのポスト-PKS遺伝子を選択的に欠失又は失活する工程;
d)該修飾された宿主菌株を、新規化合物の生成に適した条件下で培養する工程;及び
e)任意に、生成された化合物を単離する工程:を含む。
好ましくは、工程b)において、ポスト-PKS遺伝子は、gdmL又はそれらの相同体である。
【0081】
別の実施態様において、工程c)において欠失又は失活されるマクベシンポスト-PKS遺伝子の1種以上が再導入される。更なる実施態様において、mbcP、mbcM、mbcN、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2からなる群から選択される1種以上のポスト-PKS遺伝子が、再導入される。更なる実施態様において、mbcP、mbcM、mbcN、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2からなる群から選択される2種以上のポスト-PKS遺伝子が、再導入される。更なる実施態様において、mbcP、mbcM、mbcN、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2からなる群から選択される3種以上のポスト-PKS遺伝子が、再導入される。更なる実施態様において、mbcP、mbcM、mbcN、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2からなる群から選択される4種以上のポスト-PKS遺伝子が、再導入される。更なる実施態様において、mbcP、mbcM、mbcN、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2からなる群から選択される5種以上のポスト-PKS遺伝子が、再導入される。更なる別の実施態様において、mbcP、mbcM、mbcN、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2が、再導入される。
【0082】
加えて、少なくとも1種のポスト-PKS遺伝子がgdmL又はそれらの相同体であるような、C17位を酸化することが可能である1種以上の該ポスト-PKS遺伝子が挿入された菌株において、マクベシンポスト-PKS遺伝子の部分集合は、欠失又は失活されてよく、並びに該ポスト-PKS遺伝子のより小さい部分集合は、17-オキシマクベシン類似体を生成する菌株に達するように再導入されてよいことは当業者に明らかである。
【0083】
当業者は、C17位を酸化することが可能である1種以上のポスト-PKS遺伝子を追加的に発現するマクベシンの生合成遺伝子クラスターを含む菌株を作出する多くの方法が存在し、ここで該ポスト-PKS遺伝子の少なくとも1種は、gdmL又はそれらの相同体であることを理解する。
【0084】
ポリケチド遺伝子クラスターは、異種宿主において発現され得ることは当業者に周知である(Pfeifer及びKhoslaの論文, 2001)。従って本発明は、異種宿主への、それ以外は完全な又は追加の欠失を含むかのいずれかの、耐性遺伝子及び制御遺伝子を伴う又は伴わない、gdmL又はそれらの相同体を伴う、マクベシン生合成遺伝子クラスターの移入を含む。あるいはマクベシン生合成クラスターは、gdmL又はそれらの相同体を天然に含む菌株へ移入することができる。そのようなDNAの大きい断片の先に定義されたような移入のための方法及びベクターは、当該技術分野において周知であるか(Rawlingsの論文, 2001;Staunton及びWeissmanの論文, 2001)、又は開示された方法で本明細書において提示される。この状況において、好ましい宿主細胞株は、原核細胞であり、より好ましくは放線菌又は大腸菌であり、更により好ましくは、アクチノシンネマ・ミルム(A. mirum)、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスム(A. pretiosum)、S.ハイグロスコピカス、S.ハイグロスコピカス種、S.ハイグロスコピカス変種(var.)アスコマイセチカス、ストレプトマイセス・ツクバエンシス、ストレプトマイセス・コエリカラー、ストレプトマイセス・リビダンス、サッカロポリスポラ・エリスラエラ、ストレプトマイセス・フラディアエ、ストレプトマイセス・アベルミチリス、ストレプトマイセス・シンナモネンシス、ストレプトマイセス・リモーサス、ストレプトマイセス・アルブス、ストレプトマイセス・グリセオフュスカス、ストレプトマイセス・ロンギスポロフラバス、ストレプトマイセス・ベネズエラエ、ストレプトマイセス・アルブス、ミクロモノスポラ(Micromonospora)種、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ、アミコラトプシス・メディテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)、又はアクチノプラネス種N902-109を含むが、これらに限定されるものではない。更なる例は、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス亜種ゲルダナス及びストレプトマイセス・ビオラセウスニガー(streptomyces violaceusniger)である。
【0085】
ひとつの実施態様において、gdmL又はそれらの相同体を伴う、生合成クラスター全体が移入される。別の実施態様において、PKS全体が、会合したマクベシンポスト-PKS遺伝子を伴わずに、しかしgdmL又はそれらの相同体を伴い移入される。任意にこれは、段階的に実行され得る。任意にポスト-PKS遺伝子の一部は、適切に移入することができる。任意にゲルダナマイシン又はハービマイシン経路のような他のクラスター由来の追加の遺伝子を、適切に移入することができる。
更なる実施態様において、gdmL又はそれらの相同体を伴う、マクベシン生合成クラスターの全体が、移入され、その後本明細書の説明に従い操作される。
【0086】
別の本発明の態様において、本発明の17-オキシマクベシン類似体は、更に好適な菌株との生体内変換によりプロセシングされる。好適な菌株は、例えばアクチノシンネマ・ミルム、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスム、S.ハイグロスコピカス、S.ハイグロスコピカス種などであるが、これらに限定されるものではない利用可能な野生型菌株のいずれかである。あるいは好適な菌株は、特定のポスト-PKS酵素、例えば非限定的に、mbcM、mbcN、mbcP、mbcMT2、mbcP450(本明細書で定義される)、gdmN、gdmM、gdmL、gdmPによりコードされた酵素(Rascherらの論文、2003)、ゲルダナマイシンO-メチル基転移酵素、hbmN、hbmL、hbmPによりコードされた酵素(Rascherらの論文、2005)、ハービマイシンO-メチル基転移酵素及び更にハービマイシンモノ-オキシゲナーゼ、asm7、asm10、asm11、asm12、asm19及びasm21によりコードされた酵素(Cassadyらの論文、2004;Spitellerらの論文、2003)などにより、生体内変換が可能なように操作されてよい。遺伝子が依然同定されていないか又は配列がパブリックドメインにない場合は、そのような配列を常法により獲得することは当業者にとって慣習である。例えば、ゲルダナマイシンO-メチル基転移酵素をコードしている遺伝子の配列は、パブリックドメインにはないが、当業者は、同様のO-メチル基転移酵素を使用する異種プローブ、又は入手可能な相同遺伝子から縮重プライマーをデザインすることによる相同プローブのいずれかのプローブを作出し、DNA断片を産生生物から増幅し、これを使用しゲルダナマイシン産生株においてサザンブロットを実行し、その結果生体内変換システムを生じるためにこの遺伝子を獲得することができる。同様に、ハービマイシンクラスターの公開された配列は、最終構造に必要であるP450モノオキシゲナーゼの一つを有さないように見える。当業者は、同様のP450を使用し異種プローブ、又は利用可能な相同遺伝子の配列を使用し縮重プライマーをデザインすることにより単離することができる相同プローブのいずれかのプローブを作出し、かつ産生生物からDNA断片を増幅し、次にこれを使用しハービマイシン産生株においてサザンブロットを実行し、その結果生体内変換システムを生じるためにこの遺伝子を獲得することができる。
【0087】
別の実施態様において、C17-O-メチル基転移酵素は、gdmL又はそれらの相同体と同時発現され、C17メトキシマクベシン類似体を生成する。O-メチル基転移酵素は、ゲルダナマイシン産生株から、前述の縮重プライマーを用いて単離されてよい。
【0088】
特定の実施態様において、本菌株は、その未変性のポリケチドクラスターにより産生されたポリケチド産生を妨害するために、全体的もしくは一部のいずれかが欠失された、又はそうでなければ失活された、該未変性のポリケチドクラスターを1種以上有することができる。該操作された菌株は、例えば、アクチノシンネマ・ミルム、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスム、S.ハイグロスコピカス、S.ハイグロスコピカス種、S.ハイグロスコピカス変異種アスコマイセチカス、ストレプトマイセス・ツクバエンシス、ストレプトマイセス・コエリカラー、ストレプトマイセス・リビダンス、サッカロポリスポラ・エリスラエラ、ストレプトマイセス・フラディアエ、ストレプトマイセス・アベルミチリス、ストレプトマイセス・シンナモネンシス、ストレプトマイセス・リモーサス、ストレプトマイセス・アルブス、ストレプトマイセス・グリセオフュスカス、ストレプトマイセス・ロンギスポロフラバス、ストレプトマイセス・ベネズエラエ、ミクロモノスポラ種、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ、アミコラトプシス・メディテラネイ、又はアクチノプラネス種N902-109を含むが、これらに限定されるものではない群から選択されてよい。更に可能性のある菌株は、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス亜種ゲルダナス及びストレプトマイセス・ビオラセウスニガーである。
【0089】
更なる態様において、本発明は、17-オキシマクベシン又はそれらの類似体(例えば、式(I)の化合物により定義された17-オキシマクベシン類似体)を生成するように、gdmL遺伝子又はそれらの相同体が挿入されている、マクベシン又はそれらの類似体を天然に生成する宿主菌株、並びに17-オキシマクベシン又はそれらの類似体の生成におけるそれらの使用を提供する。
【0090】
従ってひとつの実施態様において、本発明は、その未変更の状態でマクベシンを天然に生成する遺伝子操作された菌株を提供し、該菌株は、挿入されたC17位を酸化することが可能である1種以上のポスト-PKS遺伝子を有し、ここで該ポスト-PKS遺伝子の少なくとも1種は、gdmL又はそれらの相同体、及び任意に欠失されたマクベシンPKS遺伝子クラスター由来の1種以上のポスト-PKS遺伝子である。
【0091】
本発明は、本明細書に説明された発明的プロセスの全ての生成物を包含している。
先に説明されたような本発明の17-オキシマクベシン類似体の調製プロセスは、実質的に又は本質的に生合成であるが、標準合成化学法を含むプロセスにより本発明の17-オキシマクベシン類似体を生成又は相互転換することを排除するものではない。
【0092】
マクベシンPKS遺伝子クラスターの遺伝子操作を可能にするために、最初に遺伝子クラスターが、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムから配列決定されるが、当業者は、例えば非限定的にアクチノシンネマ・ミルムのような、マクベシンを生成する代替の菌株が存在することを理解するであろう。これらの菌株由来のマクベシン生合成遺伝子クラスターは、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムについて本明細書において説明されたように配列決定されてよく、その情報を使用し、同等の菌株を作出する。
【0093】
本発明の更なる態様は、以下を含む:
−17-位でマクベシンを酸化することが可能である活性をコードしている遺伝子、例えばgdmLが導入されるマクベシン産生株を基にした操作された菌株。任意に更にポスト-PKS遺伝子、例えば、mbcP、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2が、欠失又は失活されてよく、並びに任意にこれらの一部又は全てが再導入されてよく、及び/又は任意に異種クラスター由来の1種以上のポスト-PKS遺伝子が導入されてよい。これらの工程は、いずれかの順番で実行されてよい。好適には、マクベシン産生株は、A.プレチオスム又はA.ミルムである。
−前述の菌株を培養することを含む、17-オキシマクベシン類似体の生成プロセス。これらの菌株は、当業者に公知で、かつ例えば適当なスターター酸のような、好適な供給材料が提供された、好適な培地において培養される。
−17-オキシマクベシン又はそれらの類似体を単離する工程を更に含む、そのようなプロセス。単離は、例えばクロマトグラフィー(例えば、HPLC)などの通常の手段により行ってよい。
−17-オキシマクベシン類似体の調製における、そのような操作された菌株の使用。
【0094】
本発明の化合物は、下記の特性の1種以上を有することを期待することができる点が利点である:親化合物と比べ1種以上の異なる癌亜型に対する良好な活性;良好な毒性プロファイル、例えば良好な肝毒性プロファイル、良好な腎毒性、良好な心臓安全性;良好な水溶解度;良好な代謝安定性;良好な製剤能;良好な生物学的利用能;良好な薬物動態特性又は薬力学特性、例えばHsp90への堅い結合、Hsp90への結合の迅速なオンレイト(on-rate)、及び/又は良好な脳内薬物動態;良好な細胞取り込み;並びに、赤血球への低い結合。
【実施例】
【0095】
(実施例)
(全般的方法)
(培養物の発酵)
細菌株アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムATCC 31280 (US 4,315,989)及びアクチノシンネマ・ミルムDSM 43827(KCC A-0225, Watanabeらの論文、1982)の増殖に使用される条件は、特許US 4,315,989及びUS 4,187,292に開示されている。本明細書において使用した方法は、これらの特許から応用し、かつ振盪インキュベーター内のチューブ又はフラスコ内のブロスの培養に関して次のようであり、公開されたプロトコールに対する変更は実施例に示している。菌株は、ISP2寒天(培地3, Shirling, E.B.及びGottlieb, D.の論文、1966)上で、28℃で2〜3日間増殖し、種培地(培地1、下記及びUS 4,315,989及びUS 4,187,292を参照のこと)へ接種するために使用した。その後接種された種培地を、5又は2.5cmの振り(throw)で200〜300rpmの間で振盪しながら、28℃で48時間インキュベーションした。マクベシン、18,21-ジヒドロマクベシン及び17-オキシマクベシンのようなマクベシン類似体の生成に関しては、発酵培地(培地2、下記及びUS 4,315,989及びUS 4,187,292を参照のこと)を、種培養物の2.5%〜10%で接種し、5又は2.5cmの振りで200〜300rpmの間で振盪しながら、最初に28℃で24時間、引き続き26℃で6日間インキュベーションした。その後培養物を、抽出のために収集した。
【0096】
(培地)
(培地1−種培地)
蒸留水1L中:
【表1】

121℃のオートクレーブで20分間滅菌。
オートクレーブ処理後適宜、アプラマイシンを添加し、最終濃度50mg/Lとした。
【0097】
(培地2−発酵培地)
蒸留水1L中:
【表2】

121℃のオートクレーブで20分間滅菌。
【0098】
(培地3−ISP2培地)
蒸留水1L中:
【表3】

121℃のオートクレーブで20分間滅菌。
【0099】
(培地4−MAM)
蒸留水1L中:
【表4】

121℃のオートクレーブで20分間滅菌。
【0100】
(LCMS分析のための培養ブロスの抽出)
培養ブロス(1mL)及び酢酸エチル(1mL)を添加し、15〜30分間混合し、引き続き10分間遠心分離した。有機層0.5mLを収集し、蒸発乾固させ、その後メタノール0.25mL、又はメタノール0.23mL+1%FeCl3溶液0.02mLに再溶解した。
【0101】
(LCMS分析手順)
LCMSを、陽イオン及び/又は陰イオンモードで操作するBruker Daltonics Esquire 3000+エレクトロスプレー式質量分析計と組み合わせたAgilent HP1100 HPLCシステムを用い行った。クロマトグラフィーは、Phenomenex Hypercloneカラム(C18 BDS、3μm、150×4.6mm)上で、下記勾配溶出プロセスを使用し、流量1mL/分で溶出し、実行した:T=0、10%B;T=2、10%B;T=20、100%B;T=22、100%B;T=22.05、10%B;T=25、10%B。移動相A=水+0.1%ギ酸;移動相B=アセトニトリル+0.1%ギ酸。UVスペクトルは、190と400nmの間で記録し、抽出されたクロマトグラムは、210、254及び276nmで採取した。質量スペクトルは、100及び1500amuの間で記録した。
【0102】
(NMR構造解析法)
NMRスペクトルは、Bruker Advance 500分光計において、1H及び13Cについて各々、500MHz及び125MHzで操作し、298Kで記録した。標準Brukerパルス配列を用い、1H-1H COSY、APT、HMBC及びHMQCスペクトルを獲得した。NMRスペクトルを、その中にそれらが溶かされた(run)溶媒の残存プロトン又は標準カーボンシグナルに対し参照した。
【0103】
(化合物純度の評価)
精製した化合物を、前述のLCMS法を用いて分析した。純度は、MSにより、複数の波長(210、254及び276nm)で評価した。全ての化合物は、全ての波長で純度>95%であった。純度は、1H及び13C NMRスペクトルの検証により最終的に確認した。
【0104】
(水溶解度の評価)
水溶解度は、以下のように試験した:17-オキシマクベシン類似体の10mMストック液を、室温で、100%DMSO中に調製した。3つ組の0.01mLアリコートを、琥珀色バイアル内で、0.1M PBS(pH7.3)溶液又は100%DMSOのいずれかで、0.5mLとした。得られた0.2mM溶液を、暗所、室温において、IKA(登録商標)vibrax VXR振盪機上で6時間振盪し、その後得られた溶液又は懸濁液を、2mLエッペンドルフチューブへ移し、13200rpmで30分間遠心分離した。その後上清液のアリコートを、前述のLCMS法により分析した。
化合物は、258nmでのピーク面積測定により定量した。分析は全て、3つ組で行い、17-オキシマクベシン化合物の溶解度は、DMSO中0.2mMのPBS溶液と比較することにより算出した(推定溶解度DMSO中100%)。
【0105】
(抗癌活性のインビトロバイオアッセイ)
単層増殖アッセイでのヒト腫瘍細胞株のパネルにおける抗癌活性について、化合物のインビトロ評価を、Oncotest社のInstitute for Experimental OncologyのOncotest Testing Facility(Freiburg)において行った。選択された細胞株の特徴を、表1にまとめた。
【0106】
【表5】

【0107】
Oncotest細胞株は、Rothらの論文(1999)に説明されたように、ヒト腫瘍異種移植片から確立した。ドナー異種移植片の起源は、Fiebigらの論文(1999)に説明されている。他の細胞株は、NCI(DU145、MCF-7)から入手したか、又はDSMZ(Braunschweig, 独国)から購入したかのいずれかであった。
別に指定しない限りは、全ての細胞株は、RPMI 1640培地、10%ウシ胎仔血清、及び0.1mg/mLゲンタマイシン(PAA, Clbe, 独国)を含有する「ready-mix」培地において、加湿した大気(95%空気、5%CO2)中で、37℃で増殖した。
【0108】
改変ヨウ化プロピジウムアッセイを用い、被験化合物(類)のヒト腫瘍細胞株の増殖に対する作用を評価した(Denglerらの論文、(1995))。
簡単に述べると、細胞を、トリプシン処理により対数期培養物から収穫し、カウントし、96ウェル平底マイクロタイタープレートに細胞株に応じた細胞密度(5〜10,000個生存細胞/ウェル)で播種した。24時間後、細胞を対数増殖を再開するために回収し、培養培地(6対照ウェル/プレート)又はマクベシン含有する培養培地の0.010mLを、これらのウェルに添加した。各濃度は、3つ組で播種した。化合物を、2種の濃度(1μg/mL及び10μg/mL)で適用した。4日間連続曝露後、被験化合物を伴う又は伴わない、細胞培養培地を、ヨウ化プロピジウム(PI)水溶液(7mg/L)0.2mLにより交換した。生存細胞の割合を測定するために、これらのプレートを凍結することにより、細胞を透過性とすることができる。これらのプレートを解凍後、Cytofluor 4000マイクロプレートリーダー(励起530nm、発光620nm)を用い蛍光を測定し、生存細胞の総数に対する直接相関を得た。
増殖阻害は、処置/対照×100(%T/C)として表した。
【0109】
(実施例1 マクベシンPKS遺伝子クラスターの配列決定)
ゲノムDNAを、Kieserらの論文(2000)に説明された標準プロトコールを用い、アクチノシンネマ・プレチオスム(ATCC 31280)及びアクチノシンネマ・ミルム(DSM 43827, ATCC 29888)から単離した。DNA配列決定を、標準手順を用い、ケンブリッジ大学の生化学部門(Tennis Court Road, Cambridge CB2 1QW)のシークエンシング施設により行った。
【0110】
プライマーBIOSG104 5'-GGTCTAGAGGTCAGTGCCCCCGCGTACCGTCGT-3' (配列番号:1)、及びBIOSG105 5'-GGCATATGCTTGTGCTCGGGCTCAAC-3' (配列番号:2)を利用し、標準技術を用い、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカスNRRL 3602 (配列の寄託番号:AY179507)のゲルダナマイシン生合成遺伝子クラスターからのカルバモイル基転移酵素をコードしている遺伝子gdmNを増幅した。サザンブロット実験を、DIG試薬及び「非放射性核酸標識及び検出キット」を製造業者(Roche)の指示に従って用いて行った。DIG-標識したgdmN DNA断片を、異種プローブとして使用した。gdmN作出されたプローブ及びA.プレチオスム2112から単離されたゲノムDNAを用い、サザンブロット分析において、およそ8kb EcoRI断片を同定した。この断片を、標準手順を適用し、Litmus 28へクローニングし、並びに形質転換体を、コロニーハイブリダイゼーションにより同定した。クローンp3を単離し、およそ7.7kb挿入断片を、配列決定した。クローンp3から単離されたDNAは、EcoRI及びEcoRI/SacIで消化し、各々およそ7.7kb及び約1.2kbのバンドを単離した。標識反応を、製造業者のプロトコールに従い行った。先に名前を挙げた2種の菌株のコスミドライブラリーを、ベクターSuperCos 1及びGigapack III XLパッケージングキット(Stratagene)を製造業者の指示に従い用いて作製した。これら2種のライブラリーは、標準プロトコールを用いてスクリーニングし、及びプローブとして、クローンp3由来の7.7kb EcoRI断片のDIG-標識断片を使用した。コスミド52は、A.プレチオスムのコスミドライブラリーから同定し、配列決定のためにケンブリッジ大学の生化学部門のシークエンシング施設へ送付した。同様に、コスミド43及びコスミド46を、A.ミルムのコスミドライブラリーから同定した。サザンブロット分析により示されるように、3種のコスミド全てが、7.7kb EcoRI断片を含んだ。
【0111】
標準プロトコールを適用し、コスミド43のPKS領域のおよそ0.7kbp断片を、プライマーBIOSG124 5'-CCCGCCCGCGCGAGCGGCGCGTGGCCGCCCGAGGGC-3' (配列番号:3)及びBIOSG125 5'-GCGTCCTCGCGCAGCCACGCCACCAGCAGCTCCAGC-3' (配列番号:4)を用いて増幅し、クローニングし、重複クローンに関するA.プレチオスムコスミドライブラリーのスクリーニングのためのプローブとして使用した。コスミド52の配列情報も、プライマーBIOSG130 5'-CCAACCCCGCCGCGTCCCCGGCCGCGCCGAACACG-3' (配列番号:5)及びBIOSG131 5'-GTCGTCGGCTACGGGCCGGTGGGGCAGCTGCTGT-5' (配列番号:6)、それに加えてBIOSG132 5'-GTCGGTGGACTGCCCTGCGCCTGATCGCCCTGCGC-3' (配列番号:7)及びBIOSG133 5'-GGCCGGTGGTGCTGCCCGAGGACGGGGAGCTGCGG-3' (配列番号:8)により増幅されたDNA断片由来のプローブの作製のために使用し、これをA.プレチオスムのコスミドライブラリーのスクリーニングのために使用した。コスミド311及び352は単離し、並びにコスミド352は、配列決定のために送付した。コスミド352は、コスミド52とのほぼ2.7kbの重複を含む。更なるコスミドのスクリーニングのために、ほぼ0.6kb PCR断片を、標準プロトコールを適用し、プライマーBIOSG136 5'-CACCGCTCGCGGGGGTGGCGCGGCGCACGACGTGGCTGC-3' (配列番号:9)及びBIOSG 137 5'-CCTCCTCGGACAGCGCGATCAGCGCCGCGCACAGCGAG-3' (配列番号:10)及び鋳型としてコスミド311を用いて増幅した。A.プレチオスムのコスミドライブラリーをスクリーニングし、かつコスミド410を単離した。これは、コスミド352とほぼ17kb重複し、配列決定のために送付した。これら3種の重複コスミド(コスミド52、コスミド352及びコスミド410)の配列をまとめた。配列決定された領域は、約100kbpに広がり、マクベシン生合成遺伝子クラスター(配列番号:11)を構築する可能性のある23個のオープンリーディングフレームが同定された。配列番号:11における各オープンリーディングフレームの位置は、表3に示している。
【0112】
【表6】

【0113】
【表7】

【0114】
[注記1:cは、遺伝子がDNA相補鎖によりコードされていることを示す;注記2:時々、2種以上の可能性のある開始コドンの候補が同定される場合がある。当業者は、これを認め、かつ別の可能性のある開始コドンを同定することができるであろう。本発明者らは、2種以上の可能性のある開始コドンを有する遺伝子を同定し、印「*」を付けた。本発明者らが開始コドンであると考えるものを全て示したが、当業者は、別の開始コドンを用い、活性タンパク質を作出することが可能であることを理解するであろう。]
【0115】
(実施例2 4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-17-ヒドロキシ-マクベシンの生成)
mbcP、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2遺伝子が、インフレームで欠失されているアクチノシンネマ・プレチオスム株を作出し、この菌株においては、gdmLが追加的に発現され、4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-17-ヒドロキシ-マクベシンを生成した。
【0116】
(2.1 mbcMT2の下流フランキング領域に相同なDNAのクローニング)
オリゴls4del1 (配列番号:12)及びls4del2a (配列番号:13)を用い、標準PCR反応において、鋳型としてコスミド52(実施例1由来)及びPfu DNAポリメラーゼを使用し、アクチノシンネマ・プレチオスム(ATCC 31280)由来のDNAの1595bp領域を増幅した。5'伸長を、オリゴls4del2aにおいてデザインし、増幅断片のクローニングを補助するためにAvrII部位を導入した(図3)。増幅されたPCR産物(1+2a、図4、配列番号:14)は、mbcMT2の3'末端の196bp及び更に下流相同領域(downstream homology)の1393bpをコードしていた。この1595bp断片を、SmaIで直線化したpUC19へクローニングし、プラスミドpLSS1+2aを生じた。
【化5】

【0117】
(2.2 mbcMの上流フランキング領域に相同なDNAのクローニング)
オリゴls4del3b(配列番号:15)及びls4del4(配列番号:16)を用い、標準PCR反応において、鋳型としてコスミド52(実施例1由来)及びPfu DNAポリメラーゼを使用し、アクチノシンネマ・プレチオスム(ATCC 31280)由来のDNAの1541bp領域を増幅した。5'伸長を、オリゴls4del3bにおいてデザインし、増幅断片のクローニングを補助するためにAvrII部位を導入した(図3)。増幅されたPCR産物(3b+4、図5、配列番号:17)は、mbcPの5'末端の95bp及び更に上流相同領域の1440bpをコードしていた。この1541bp断片を、SmaIで直線化したpUC19へクローニングし、プラスミドpLSS3b+4を生じた。
【化6】

【0118】
生成物1+2a及び3b+4を、pUC19へクローニングし、次のクローニング工程でpUC19ポリリンカーにおけるHindIII及びBamHI部位を利用した。
pLSS1+2a由来の1621bp AvrII/HindIII断片及びpLSS3b+4由来の1543bp AvrII/BamHI断片を、pKC1132の3556bp HindIII/BamHI断片へクローニングし、pLSS315を作出した。その結果pLSS315は、AvrII部位に融合された所望の4種のORF欠失領域のフランキング領域に相同なDNAをコードしているHindIII/BamHI断片を含んだ(図3)。
【0119】
(2.3 アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムの形質転換)
プラスミドpUZ8002を抱えている大腸菌ET12567を、電気穿孔法により、pLSS315で形質転換し、接合のための大腸菌ドナー株を作出した。この菌株を使用し、栄養接合により、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムを形質転換した(Matsushimaらの論文、1994)。接合完了体を、MAM培地(1%コムギデンプン、0.25%トウモロコシ浸漬固形物、0.3%酵母エキス、0.3%炭酸カルシウム、0.03%硫酸鉄、2%寒天)上に播種し、28℃でインキュベーションした。24時間後プレートに、50mg/Lアプラマイシン及び25mg/Lナリジクス酸を積層した。pLSS315は、アクチノシンネマ・プレチオスム亜種プレチオスムにおいて複製することができないので、アプラマイシン抵抗性コロニーは、プラスミド媒介性相同領域を介した相同組換えにより、染色体に組込まれたプラスミドを含んだ形質転換体であると予想された。
【0120】
(2.4 二次交雑のスクリーニング)
6種のマクベシン産生接合完了体を、更なる分析のために選択した。ゲノムDNAを、6種の接合完了体から単離し、消化し、かつサザンブロットで分析した。このブロットは、6種の単離体組込みのうちの5種は、RHS相同領域で生じ、6種の単離体相同組込みのうちの1種は、LHS領域で生じたことを示した。LHS領域の相同組込みから生じる1種の菌株(BIOT-3829;アクチノシンネマ・プレチオスム:pLSS315#9)、並びにRHS領域の相同組込みから生じる2種の菌株(BIOT-3826;アクチノシンネマ・プレチオスム:pLSS315#3及びBIOT-3830;アクチノシンネマ・プレチオスム:pLSS315#12)を、二次交雑のスクリーニングのための継代に選択した。
【0121】
菌株を、MAM培地(50mg/Lアプラマイシンを補充)の上にパッチし、28℃で4日間増殖した。各パッチの1cm2切片を使用し、50mLファルコンチューブ内で、ISP2(0.4%酵母エキス、1%麦芽エキス、0.4%デキストロース、抗生物質非補充) 7mLへ接種した。培養物を2〜3日間増殖し、その後50mLファルコンチューブ中で、ISP2 7mLへ(5%接種菌液)継代培養した。4〜5世代継代培養した後、培養物を音波処理し、連続希釈し、MAM培地上に播種し、28℃で4日間培養した。その後1個のコロニーを、アプラマイシンを含有するMAM培地上及び抗生物質を含有しないMAM培地上に2つ組でパッチし、これらのプレートを、28℃で4日間インキュベーションした。抗生物質非含有プレート上で増殖したがアプラマイシン含有プレート上では増殖しなかったパッチを、+/−アプラマイシンプレート上に再度パッチし、これらが抗生物質マーカーを喪失していたことを確認した。所望の変異株は、遺伝子mbcP、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2を含むマクベシンクラスターの3892bpの欠失を有している。正確な欠失を含むアクチノシンネマ・プレチオスム:pLSS315#12を起源とする1つのコロニーは、BIOT-3852と命名した。
【0122】
この菌株由来の発酵ブロスを、抽出し、かつ「全般的方法」に説明されたように分析した。LCMS分析は、マクベシンは生成されなかったことを示したが、しかし保持時間15.0分及びm/z=515.5 [M-H]-, 539.5 [M+Na]+である、単独のより極性のある大量成分14が、認められた。これは、LCMS及びNMR(単離後)により、他で生成された化合物4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシマクベシンと識別不能であった。
【化7】

【0123】
(2.5 プラスミドLit28gdmLの単離)
オリゴBioSG110(配列番号:18)及びBioSG111(配列番号:19)を用い、標準技術を利用し、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカスNRRL 3602 (配列の寄託番号:AY179507)のゲルダナマイシン生合成遺伝子クラスター由来のDNAの1512bp領域を増幅した(配列番号:20;図6A、gdmLのアミノ酸配列も示す、図6B、配列番号:21)。これらのプライマーの末端に導入されたXbaI及びNdeI制限部位には、下線を付けた。増幅されたPCR産物を、標準技術を利用し、先にEcoRVで線状とされたベクターLitmus28へクローニングした。プラスミドLit28gdmLを単離し、DNA配列解析により確認した。
【化8】

【0124】
(2.6 プラスミドpGP9gdmLの単離)
プラスミドLit28gdmLを、NdeI/XbaIで消化し、約1.5kbの挿入DNA断片を単離し、NdeI/XbaI処理したベクターpGP9へクローニングした。プラスミドpGP9gdmLを、標準技術を用い単離した。この構築物は、制限消化解析により確認された。
【0125】
(2.7 BIOT-3852のpGP9gdmLによる補完)
プラスミドpGP9gdmLを使用するBIOT-3852との接合実験を、以下のように行った。プラスミドpUZ8002を抱えている大腸菌ET12567を使用し、電気穿孔法により、pGP9gdmLを形質転換し、接合のための大腸菌ドナー株を作出した。この菌株を、BIOT-3852と組合せた接合実験に使用した(Matsushimaらの論文、1994)。接合完了体を、培地4(MAM培地)上に播種し、28℃でインキュベーションした。24時間後プレートに、50mg/Lアプラマイシン及び25mg/Lナリジクス酸を積層した。
【0126】
形質転換体を、50mg/Lアプラマイシン及び25mg/Lナリジクス酸を含有するMAMプレート(培地4)にパッチした。各パッチからの6mm円形プラグを使用し、50mg/L アプラマイシンを補充した、10mL種培地(培地1の応用−2%グルコース、3%可溶性デンプン、0.5%トウモロコシ浸漬固形物、1%大豆粉、0.5%ペプトン、0.3%塩化ナトリウム、0.5%炭酸カルシウム)を含む個別の50mLファルコンチューブを接種した。これらの種培養物を、振り2インチの200rpmで、28℃で2日間インキュベーションした。その後これらを使用し、生産培地(培地2−5%グリセロール、1%トウモロコシ浸漬固形物、2%酵母エキス、2%リン酸二水素カリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.1%炭酸カルシウム)へ接種し(10mLへ0.5mL)、28℃で24時間、その後26℃で更に6日間増殖した。
【0127】
発酵ブロスの抽出及び引き続きのLCMS分析を、「全般的方法」に説明したように行った。このような抽出物のひとつにおいて、化合物14の生成に加え、保持時間13.4分で溶出した、少量の新規化合物(15)の生成も認められた。これは、m/z=531.4 [M-H]- 及び555.4 [M+Na]+ で特徴的イオンを示し、これは本15が化合物4,5-ジヒドロ-11-O-デスメチル-15-デスメトキシ-17-ヒドロキシマクベシンであることと一致した。
【化9】

【0128】
本出願において言及された特許及び特許出願に含まれる参考文献は全て、可能な限り完全な程度で引用により本明細書に組み込まれている。
本明細書及び前記「特許請求の範囲」を通じて、状況がそうでないことを必要としない限りは、語句「を含む(comprise)」並びに「を含む(comprises)」及び「を含んでいる(comprising)」のような変形は、陳述された整数もしくはステップ又は整数の群の包含を暗示するが、任意の他の整数もしくはステップ又は整数もしくはステップの群を排除するものではないことが理解されるであろう。
【0129】
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【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】マクベシンへの最初の推定酵素フリー中間体、プレ-マクベシン及びポスト-PKSのプロセシングを示す、マクベシンの代表的生合成。図中のPKSプロセシング工程のリストは、事象の順番を表すことは意図されていない。クラスター内の特定の遺伝子について、下記略号を使用する:AL0−AHBA負荷ドメイン;ACP−アシルキャリヤタンパク質;KS−βケト合成酵素;AT−アシル基転移酵素;DH−脱水酵素;ER−エノイルレダクターゼ;KR−β-ケトレダクターゼ。
【図2】マクベシンを生成するための、プレ-マクベシンのポスト-PKSプロセシング部位の説明。
【図3】mbcP、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2遺伝子がインフレームで欠失されている、アクチノシンネマ・プレチオスム菌株の作出の図表示。
【図4】増幅されたPCR産物1+2aの配列(配列番号:14)。
【図5】増幅されたPCR産物3b+4の配列(配列番号:17)。
【図6】A−gdmLを含むPCR産物の核酸配列。B−GdmLのアミノ酸配列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(IA)又は(IB)の17-オキシマクベシン類似体、又はそれらの医薬として許容し得る塩:
【化1】

(式中、R1は、H、OH又はOCH3を表し;
R2は、H又はCH3を表し;
R3は、H又はCONH2を表し;
R4及びR5は、両方ともHを表すか、又はこれらは一緒に結合(すなわち、C4-C5は二重結合である)を表すかのいずれかであり;並びに
R6は、H又はOHを表し;並びに
R7は、H又はCH3を表す。)。
【請求項2】
前記17-オキシマクベシン類似体が、式(IA)に従う、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記17-オキシマクベシン類似体が、式(IB)に従う、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
前記R3が、CONH2を表す、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
前記R6が、OHを表す、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
前記R6が、Hを表す、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
前記R7が、Hを表す、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
前記17-オキシマクベシン類似体が、R1がHを表し、R2がHを表し、R3がCONH2を表し、R4及びR5が各々Hを表し、R6がOHを表し、並びにR7がHを表す、式(IA)の構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
前記17-オキシマクベシン類似体が、R1がHを表し、R2がHを表し、R3がCONH2を表し、R4及びR5が各々Hを表し、並びにR7がHを表す、式(IB)の構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
前記17-オキシマクベシン類似体が、R1がHを表し、R2がHを表し、R3がCONH2を表し、R4及びR5が各々Hを表し、R6がOHを表し、並びにR7がCH3を表す、式(IA)の構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
前記17-オキシマクベシン類似体が、R1がHを表し、R2がHを表し、R3がCONH2を表し、R4及びR5が各々Hを表し、並びにR7がCH3を表す、式(IB)の構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
前記17-オキシマクベシン類似体が、R1がHを表し、R2がHを表し、R3がCONH2を表し、R4及びR5が各々Hを表し、R6がHを表し、並びにR7がHを表す、式(IA)の構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
前記17-オキシマクベシン類似体が、R1がHを表し、R2がHを表し、R3がCONH2を表し、R4及びR5が各々Hを表し、R6がHを表し、並びにR7がCH3を表す、式(IA)の構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
下記式、又はそれらの医薬として許容し得る塩である、請求項1記載の化合物:
【化2】


【請求項15】
下記式、又はそれらの医薬として許容し得る塩である、請求項1記載の化合物:
【化3】


【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項記載の17-オキシマクベシン類似体を、1種以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と共に含有する、医薬組成物。
【請求項17】
医薬品として使用するための、請求項1〜15のいずれか1項記載の17-オキシマクベシン類似体。
【請求項18】
癌、B-細胞性悪性疾患、マラリア、真菌感染症、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置のための医薬品の製造における、請求項1〜15のいずれか1項記載の17-オキシマクベシン類似体の使用。
【請求項19】
癌、B-細胞性悪性疾患、マラリア、真菌感染症、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置のための医薬品として使用するための、請求項1〜15のいずれか1項記載の17-オキシマクベシン類似体。
【請求項20】
請求項1〜15のいずれか1項記載の17-オキシマクベシン類似体の有効量を、それを必要とする患者へ投与することを含む、癌、B-細胞性悪性疾患、マラリア、真菌感染症、中枢神経系の疾患及び神経変性疾患、血管新生依存性疾患、自己免疫疾患の治療、並びに/又は癌の予防的前処置の方法。
【請求項21】
17-オキシマクベシン類似体又はそれらの医薬として許容し得る塩が、他の治療と組合せて投与される、請求項1〜20のいずれか1項記載の17-オキシマクベシン類似体、組成物、使用又は方法。
【請求項22】
前記他の治療が、メトトレキセート、ロイコボリン、プレニゾン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドキソルビシン、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、アナストロゾール、ゴセレリン、抗-HER2モノクローナル抗体、カペシタビン、塩酸ラロキシフェン、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、プロテアソーム阻害剤、放射線治療及び手術からなる群から選択される、請求項21記載の17-オキシマクベシン類似体、組成物、使用又は方法。
【請求項23】
前記他の治療が、通常の化学療法薬、例えばシスプラチン、シタラビン、シクロヘキシルクロロエチルニトロス尿素、ゲムシタビン、イホスファミド、ロイコボリン、マイトマイシン、ミトキサントン、オキサリプラチンなど;タキソールを含むタキサン、及びビンデシン;ホルモン療法;モノクローナル抗体療法、例えばセツキシマブ(抗-EGFR)など;プロテインキナーゼ阻害剤、例えばダサチニブ及びラパチニブなど;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばボリノスタットなど;血管新生阻害剤、例えばスニチニブ、ソラフェニブ、レナリドマイドなど;mTOR阻害剤、例えばテムシロリムスなど;並びに、イマチニブからなる群から選択される、請求項21記載の17-オキシマクベシン類似体、組成物、使用又は方法。
【請求項24】
a)好適な条件下で培養した場合に、マクベシン又はそれらの類似体を生成する第一の宿主菌株を提供する工程;
b)マクベシンPKS遺伝子クラスターに通常は会合しない1種以上のポスト-PKS遺伝子を挿入する工程であり、ここで該ポスト-PKS遺伝子の少なくとも1種はgdmL又はそれらの相同体である工程;
c)該修飾された宿主菌株を、新規化合物の生成に適した条件下で培養する工程;並びに
d)任意に、生成された化合物を単離する工程:を含む、請求項1〜15のいずれか1項記載の17-オキシマクベシン類似体の製造方法。
【請求項25】
e)1種以上のマクベシンポスト-PKS遺伝子、又はそれらの相同体を欠失又は失活する工程を追加的に含み、該工程が通常、工程c)の前に行われる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
f)1種以上の欠失されたポスト-PKS遺伝子を再導入する工程を追加的に含み、該工程が通常、工程c)の前に行われる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
g)別のPKSクラスター由来のポスト-PKS遺伝子を導入する工程を追加的に含み、該工程が通常、工程c)の前に行われる、請求項24〜26記載の方法。
【請求項28】
その不変の状態でマクベシンを天然に生成する遺伝子操作された宿主菌株であって、該菌株が、マクベシンPKS遺伝子クラスターに天然には会合しない1種以上のポスト-PKS遺伝子を有し、ここで該ポスト-PKS遺伝子の少なくとも1種は挿入されたgdmL又はそれらの相同体である、前記菌株。
【請求項29】
マクベシンPKS遺伝子クラスター由来の1種以上のポスト-PKS遺伝子が、追加的に欠失されている、請求項28記載の宿主菌株。
【請求項30】
1種以上の欠失されたポスト-PKS遺伝子が、再導入されている、請求項29記載の宿主菌株。
【請求項31】
異種PKSクラスター由来の1種以上のポスト-PKS遺伝子が、再導入されている、請求項28〜30のいずれか1項記載の宿主菌株。
【請求項32】
mbcP、mbcP450、mbcMT1及びmbcMT2が、欠失され、かつgdmLが、導入されている、請求項29記載の宿主菌株。
【請求項33】
A.プレチオスム(A. pretiosum)又はA.ミルム(A. mirum)である、請求項28〜32のいずれか1項記載の宿主菌株。
【請求項34】
請求項28〜33のいずれか1項記載の菌株を培養することを含む、17-オキシマクベシン又はそれらの類似体の製造方法。
【請求項35】
17-オキシマクベシン又はそれらの類似体を単離する工程を更に含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
17-オキシマクベシン又はそれらの類似体の生成のための、請求項28〜33記載の宿主菌株の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2009−536934(P2009−536934A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508382(P2009−508382)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054473
【国際公開番号】WO2007/128827
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(505012977)バイオチカ テクノロジー リミテッド (14)
【Fターム(参考)】