説明

2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の連続製造方法

【課題】不純物含有量が少なく、高分子量のポリマーを与える2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の高収率な製造方法を提供する。
【解決手段】第1反応槽でアクリロニトリルと発煙硫酸とを混合してこれらの混合液を得、次いで前記第1反応槽で混合した混合液を第2反応槽に供給して第2反応槽で前記混合液とイソブチレンとを反応させて生成するスラリー液を第2反応槽から取出す2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の連続製造方法であって、前記第2反応槽から取出すスラリー液中の2−メチル−2−プロペニル−1−スルホン酸の濃度が12000質量ppm又はtert−ブチルアクリルアミドの濃度が10000質量ppmを超える場合に、第1反応槽におけるアクリロニトリルと発煙硫酸との混合液の滞留時間を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下、ATBSと略記する場合がある。)の連続製造方法に関する。更に詳述すれば、本発明は収率の高いATBSの連続製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ATBSは、下記式(3)で示される化合物である。
【0003】
【化1】

【0004】
ATBSは、アクリル繊維の改質剤として、分散剤や凝集剤のモノマー原料として、又は化粧品の増粘剤用のモノマー原料として、更には原油の掘削用の薬剤や原油の高次回収用に使用される薬剤製造用のモノマー原料等として広い分野で使用されている。
【0005】
これらの用途に用いられる、上記ATBSを原料モノマーとして製造されるポリマーは特に高分子量であることが要求される。即ち、上記用途のポリマー製造に使用されるATBSは、重合を阻害する物質の含有量を極力低下させることが求められると共に、安定した品質であることが求められる。更に、前記原油の掘削用の薬剤や原油の高次回収用に使用される薬剤は、多量に使用されるものであるため、原油の製造原価に影響を及さないように、ポリマー原料になるATBSは安価に供給されることが望まれている。
【0006】
ATBSは、通常アクリロニトリル、硫酸、イソブチレンを付加反応させることにより製造され、その性状は常態においては白色針状結晶であって、融点は185℃である(例えば特許文献1)。
【0007】
上記付加反応においては、アクリロニトリル、硫酸、イソブチレンの3成分はそれぞれ等モルで反応するが、アクリロニトリルは反応媒体の役割も担うため、硫酸及びイソブチレンと比較して大過剰に用いられる。
【0008】
ATBSは、アクリロニトリルに難溶性であるので、反応後得られる反応生成物はアクリロニトリル中にATBSが析出したスラリー状である。通常ATBSの製造においては、このスラリーからATBSを分離して、これを次の精製工程で精製することが行われている。精製方法としては、アクリロニトリルで洗浄する方法がある。(例えば特許文献1)。
【0009】
上記ATBSの製造方法による場合は、tert−ブチルアクリルアミド(t−BAMと略記する場合がある。)や、アクリルアミドが多量に副生され、高価な原料のイソブチレンやアクリロニトリルがその分無駄に消費される問題がある。
【特許文献1】特公昭50-30059号 (例1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、ATBSの収率を向上させるために種々検討した。その結果、アクリロニトリル、硫酸、イソブチレンを反応させてATBSを連続的に製造する方法においては、以下に記載する、考慮すべき重要な点があることを認識した。
【0011】
(1)この反応は、硫酸、イソブチレン、アクリロニトリルの3成分の等モル反応で、これらが反応してATBSが生成する。
【0012】
(2)ところが、硫酸、アクリロニトリル等の各原料は水分を含んでおり、この水分量が変動するため、反応状態が変動し、その結果定量的にATBSが得られず、tert−ブチルアクリルアミドやアクリルアミドが多く副生することがある。
【0013】
(3)この水分の問題を解決するために、硫酸の代りに発煙硫酸を使用し、発煙硫酸によってアクリロニトリル等の原料中にある水分を三酸化硫黄と反応させて除去すると共に、水分のない硫酸を生成させている。
【0014】
(4)しかし、発煙硫酸が水分除去に必要な量以上に反応系に加えられる場合には、反応系に三酸化硫黄が残存する。この場合は、イソブチレンのスルホン化反応が副反応として起き、その結果下記式(1)
【0015】
【化2】

【0016】
で示される2−メチル−2−プロペニル−1−スルホン酸(IBSAと略記する場合がある。)や、下記式(4)
【0017】
【化3】

【0018】
で示される2−メチリデン−1,3−プロピレンジスルホン酸(IBDSAと略記する場合がある。)が生成する。これら化合物はラジカル重合反応において連鎖移動能を有することから分子量調整剤として作用し、製品であるATBSにこれらを含有する場合は、重合性を低下させる。
【0019】
(5)これらの問題を解決するためには、水分除去後に反応系に残存する三酸化硫黄の濃度を極力小さくすることが重要である。
【0020】
これらの点に注意しながら、後述する合成装置を用いて、実際にATBSを製造すると、下記式(2)
【0021】
【化4】

【0022】
で示されるt−BAMや、アクリルアミド、IBSA、IBDSAは副生するが、それらの総量は低く抑制できた。この場合、ATBSの反応収率は、イソブチレンを基準として88%程度であった。
【0023】
しかし、上記反応においては、高価なイソブチレンやアクリロニトリルが、上記副生物の生成によって消費されている。ATBSを安価に提供するためには、副反応を抑制することにより製品の収率を向上させることが更に必要である。
【0024】
従って、本発明の目的とするところは、反応収率の高いATBSの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者は、上記課題を解決するために種々検討しているうちに、アクリロニトリルと発煙硫酸との混合時間を長くすると、副生物のt−BAMや、IBSAの副生量が低下することに気がついた。更に検討を続けた結果、アクリロニトリル中の水分を低濃度の発煙硫酸で除去する場合、ある程度の混合時間を要することを見出した。更に、反応生成するスラリー液(後述する)中のIBSA又はt−BAMの濃度を測定し、これらの副生物の含有量が所定濃度を超える場合、アクリロニトリルと発煙硫酸との混合時間を増加させることにより、前記副生物の生成量を低減する方向に反応を制御できることに想到した。本発明は、上記発見、及び上記発見に基づく考察の結果、完成するに至ったものである。
【0026】
従って、上記目的を達成する本発明は下記のものである。
【0027】
〔1〕 第1反応槽でアクリロニトリルと発煙硫酸とを混合してこれらの混合液を得、次いで前記第1反応槽で混合した混合液を第2反応槽に供給して第2反応槽で前記混合液とイソブチレンとを反応させて生成するスラリー液を第2反応槽から取出す下記式(3)
【0028】
【化5】

【0029】
で示される2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の連続製造方法であって、前記第2反応槽から取出すスラリー液中の下記式(1)
【0030】
【化6】

【0031】
で示される2−メチル−2−プロペニル−1−スルホン酸の濃度が12000質量ppm又は下記式(2)
【0032】
【化7】

【0033】
で示されるtert−ブチルアクリルアミドの濃度が10000質量ppmを超える場合に、第1反応槽におけるアクリロニトリルと発煙硫酸との混合液の滞留時間を増加させることを特徴とする2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の連続製造方法。
【0034】
〔2〕 〔1〕に記載の製造方法で製造して得られるスラリー液中の2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の粗体を濾別してケーキを得、次いでアクリロニトリル、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸からなる群から選ばれる1の溶媒又はこれらの混合溶媒を用いて前記ケーキを洗浄する2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の製造方法。
【発明の効果】
【0035】
本発明のATBSの製造方法によれば、収率良くATBSを製造できる。本製造方法で製造するATBSはt−BAM、IBSA及びIBDSA等の副生物の含有量が低い。従って、このATBSを共重合して得られるポリマーは分子量が高い。
【0036】
本発明のATBSの製造方法においては、高純度のATBSを簡単に製造できる。従って、後工程の精製工程が簡略化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
最初に、アクリロニトリルと、硫酸と、イソブチレンとの反応を詳細に検討し、以下の表に記載する事実を確認した。
【0038】
【表1】

【0039】
反応条件の設定の基本思想は、前述のように、反応系から水分を除くこと、及びSOの濃度を極力低下させることである。
【0040】
次に、図1に示す連続製造装置を用いて、ATBSの製造試験を行った。図中、100はATBSの連続製造装置である。2は不図示の攪拌装置を有する第1反応槽で、その外面はジャケット4が形成されている。前記ジャケット4には、第1温度調整機6から調温流体が供給され、これにより第1反応槽2内の温度が調整される。この第1反応槽2には、アクリロニトリル8と、発煙硫酸10とが連続的に供給され、不図示の攪拌装置により攪拌されてこれらの混合液が連続的に製造される。この混合により、アクリロニトリル中の水分が発煙硫酸中の三酸化硫黄と反応して硫酸になり、水分は除去される。
【0041】
第1反応槽2で製造された混合液は、第2反応槽12に送られる。第2反応槽12の外面にはジャケット14が形成され、第2温度調整機16から供給される調温流体により、第2反応槽12内の温度が調整される。
【0042】
前記第2反応槽に送られた混合液には、イソブチレン18が供給される。第2反応槽12内では、前記第1反応槽2から送られた混合液と、イソブチレンとが反応し、ATBSが生成するが、このATBSは過剰に供給されて溶媒として作用させているアクリロニトリルに懸濁してスラリー液を形成する。このスラリー液は、第2反応槽12に取付けられている取出し管20を通して外部に連続的に取出され、不図示の精製工程に送られ、ここで精製される。
【0043】
上記連続製造装置を用いて、ATBSを製造した。先ず、第1反応槽2にアクリロニトリルと発煙硫酸とを連続的に供給し、−10〜−15℃の温度で滞留時間を20分に設定して混合し、混合液を製造した。三酸化硫黄(SO)の濃度は発煙硫酸と濃硫酸とを混合して調整した。
【0044】
次いで、第2反応槽12に混合液を送り、混合液とイソブチレンとを反応させた。反応温度は45℃で、第2反応槽12の滞留時間は60分間であった。
【0045】
生成したATBSを含有するアクリロニトリルのスラリー液を取出し管20を通して外部に取出した。取出したスラリー液を精製行程において固液分離し、固体と液体とをそれぞれ分析し、副生物の濃度を測定した。
【0046】
第1反応槽2中でアクリロニトリルと発煙硫酸とが混合され、アクリロニトリルの水分が除去した後に残存する三酸化硫黄量と、第2反応槽12から取出したスラリー液中のtBAM、IBSA、IBDSAの量との関係を図2に示す。
【0047】
IBSA、IBDSAは、前述のように連鎖移動剤の作用を有する。従って、これら化合物の含有量が多いATBSと他のモノマーとを共重合する場合、得られるポリマーの分子量は、大きくならない。図2から、実用上連鎖移動剤としての作用を無視できるIBSA、IBDSAの生成濃度を10000質量ppmとする場合、に対応する三酸化硫黄の過剰量は0.3質量%になる。この三酸化硫黄の過剰量を0.3質量%に固定して、第1反応槽2中の混合液の滞留時間を変化させた。この場合の滞留時間と副生物濃度との関係を図3に示す。
【0048】
図3から明らかなように、アクリロニトリルと発煙硫酸との混合時間(第1反応槽中の滞留時間)を長くすると副生物のtBAM、IBSA濃度が低下している。即ち、アクリロニトリル中の水分を低濃度の三酸化硫黄で除去する場合には、ある程度の接触混合時間が必要であり、この混合時間を長くすることにより、混合液中の水分量が減少すると共に、三酸化硫黄の過剰量も減少し、その結果前記基本思想を実現できることになる。本発明の製造方法は、上述した検討結果に基づいて完成したものである。
【0049】
ATBSの製造方法
以下、上記検討結果を反映するATBSの製造方法について説明する。
【0050】
下記化学式(3)で示される2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(ATBS)は、下記反応式(A)に示されるように、原料であるアクリロニトリル(5)と、硫酸(6)と、イソブチレン(7)とを反応させて製造する。
【0051】
【化8】

【0052】
アクリロニトリルと、硫酸と、イソブチレンとの反応に際しては、先ず低温(−15〜−10℃程度)下にアクリロニトリルと硫酸とを第1反応槽で混合する。この際、アクリロニトリル中の水分を除去するには時間を要する。混合時間の調整は、第1反応槽中のアクリロニトリルと硫酸との混合液の滞留時間を増減することにより行える。滞留時間は、通常30分以上が好ましく、40〜360分がより好ましい。この混合物を第2反応槽に移し、撹拌しながら、これにイソブチレンを吹込むことを連続的に行う。反応が開始すると、反応熱により混合物の温度が上昇するので、混合物を冷却して温度を40〜50℃に維持することが好ましい。
【0053】
ATBSは、上記3原料成分の等モル付加反応により生成し、反応液は反応の経過と共に固体結晶のATBSを分散させたスラリーになる。このスラリーの分散媒の大部分は硫酸及びイソブチレンに比べて大過剰に混合したアクリロニトリルである。
【0054】
上記3原料成分の混合割合に関しては、硫酸に対するイソブチレンの割合については、ほぼ等モルにすることが好ましく、またそれらに対するアクリロニトリルの割合は10〜20倍モルが好ましい。このような割合の混合液を用いて反応させることにより、反応生成液として固形分濃度が15〜25質量%のスラリーが得られる。
【0055】
なお、上記反応において、前述のように反応系内に存在する水分は副反応を引き起す原因になり、好ましくない。上記原料成分はいずれも水分を含まないものを使用することが好ましい。特に硫酸については、濃硫酸と発煙硫酸との混合物を使用することが好ましい。
【0056】
上記のようにして製造したスラリーを、次いで遠心分離操作等によって固液分離して、ATBSの結晶を取出し、これに更に洗浄、乾燥等の後処理を施すことにより、製品(ATBS)を得る。
【0057】
本発明においては、上記のATBSを製造する反応において、取出し管20を通して第2反応槽から外部に取出されるスラリー液中の副生物IBSA、またはtBAMの濃度を測定し、IBSAの濃度が12000質量ppm、又はtBAMの濃度が10000質量ppmを超える場合、第1反応槽2中のアクリロニトリルと発煙硫酸との混合液の滞留時間を増加させるものである。
【0058】
IBSA、tBAMの濃度の測定は、何れの測定方法によっても良い。しかし、高速液体クロマトグラフ(HPLCと略記する。)を用いて測定する方法が、測定の簡便さ、測定値の正確さの点で好ましい。
【0059】
上記の様に反応条件を制御することにより、通常ATBS中のIBSAの濃度が12000ppm(質量基準)以下、IBDSAの濃度が6000ppm(質量基準)以下の反応スラリーが得られる。
【0060】
次に、アクリロニトリル、発煙硫酸、イソブチレンを反応させて上記制御下に反応させて得られるATBSを含む反応スラリーから、ATBSを単離する。単離方法は、得られる反応スラリーからATBS粗体を固液分離し、ATBSを含有するケーキを得、その後ケーキを乾燥する方法がある。得られるATBSは、tBAM、IBSA、IBDSA等の不純物を多く含んでいるので、このままでは高分子量のポリマーの製造用には利用できない。従って、ケーキは精製工程で精製する必要がある。
【0061】
精製工程の一例として、反応スラリーを固液分離して得られるケーキをさらにアクリロニトリルで洗浄する方法がある。洗浄溶剤のアクリロニトリル量を増やすとATBS中のIBSA、IBDSAが洗浄除去される。アクリロニトリル以外の溶剤を使用しても、同様に精製できる。
【0062】
反応スラリーを固液分離して得られるケーキをアクリロニトリル等の溶剤で洗浄し、得られる洗浄ケーキを乾燥して溶剤を除去するとATBS製品が得られる。洗浄溶剤の使用量は、洗浄されるケーキの固形分質量の0.5〜10倍量が好ましく、1〜3倍量がより好ましい。洗浄溶剤としては、アクリロニトリル、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸等、又はこれらの混合溶剤が好ましい。特にアクリロニトリルが好ましい。
【0063】
上記反応スラリーから分離されたケーキを、洗浄溶剤で洗浄することにより、ケーキは精製され、IBSA、IBDSA濃度は、通常100ppm(質量基準)以下になる。
【0064】
以上の製造方法によれば、不純物の副生が抑制され、ATBSの収率は通常90%を超える。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。各実施例で示す濃度はHPLCにより定量した濃度である。
HPLC条件;Waters社製 高速液体クロマトグラフ
カラム;Waters社製 X-bridge Shield RP18 (カラムサイズ: 4.6mm(内径)x150mm(長さ))
溶離液;0.03質量%トリフルオロ酢酸水/アセトニトリル(90/10(容量基準))
溶離液流量;0.8ml/min
検出波長;200nm
【0066】
比較例1
攪拌機及び入口管と出口管とを備えたガラス反応槽を2個連結し、第1反応槽、第2反応槽を構成した。下記条件でアクリロニトリルおよび発煙硫酸を第1反応槽に仕込み、アクリロニトリルと発煙硫酸とを混合した後、この混合液を第2反応槽に供給した。第2反応槽において、前記混合物中にイソブチレンガスを吹き込み、ATBSを合成した。上記反応は連続的に行った。
【0067】
発煙硫酸1モルに対し、アクリロニトリルの供給量を11モル、イソブチレンの供給量を0.9モルの割合でそれぞれ供給した。
【0068】
なお、発煙硫酸における三酸化硫黄の濃度は0.3%であり、市販の20%発煙硫酸に対して、アクリロニトリル等の原料から持ち込まれる水分を加味した上で、濃硫酸を混合して濃度調整をした。第1反応槽は−15℃に維持し、滞留時間は10分とした。第2反応槽は45℃に維持し、滞留時間は60分とした。
【0069】
取出し管から取出したスラリー液をHPLCにより分析したところ、tBAMは11000ppmであった。
【0070】
上記製造で得られたATBSのスラリーをグラスフィルターで吸引ろ過して、グラスフィルター上にケーキを得た。ケーキの固形分質量に対して2倍質量のアクリロニトリルをケーキに注いで再度吸引ろ過して、ケーキを洗浄した。
【0071】
ケーキをトレイに移し、80℃の乾燥温度で90分乾燥した。
【0072】
得られたATBSパウダーの質量を測定し、イソブチレンに対する収率を算出した。純度分析はHPLCを用いて行った。結果を表2に示した。
【0073】
比較例2
表2に示す条件以外は、比較例1と同様に操作した。結果を表2に記載した。
【0074】
実施例1〜3
表2に示す条件以外は、比較例1と同様に操作した。結果を表2に記載した。
【0075】
【表2】


【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明のATBSの製造方法で使用する反応装置の1例を示す構成図である。
【図2】SO過剰量と副生物濃度との関係を示すグラフである。
【図3】第1反応槽中の発煙硫酸とアクリロニトリルとの滞留時間と、副生物濃度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0077】
2 第1反応槽
4、14 ジャケット
6、16 温度調整機
8 アクリロニトリル
10 発煙硫酸
12 第2反応槽
18 イソブチレン
20 取出し管
100 連続製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反応槽でアクリロニトリルと発煙硫酸とを混合してこれらの混合液を得、次いで前記第1反応槽で混合した混合液を第2反応槽に供給して第2反応槽で前記混合液とイソブチレンとを反応させて生成するスラリー液を第2反応槽から取出す下記式(3)
【化1】

で示される2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の連続製造方法であって、前記第2反応槽から取出すスラリー液中の下記式(1)
【化2】

で示される2−メチル−2−プロペニル−1−スルホン酸の濃度が12000質量ppm又は下記式(2)
【化3】

で示されるtert−ブチルアクリルアミドの濃度が10000質量ppmを超える場合に、第1反応槽におけるアクリロニトリルと発煙硫酸との混合液の滞留時間を増加させることを特徴とする2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の連続製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法で製造して得られるスラリー液中の2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の粗体を濾別してケーキを得、次いでアクリロニトリル、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸からなる群から選ばれる1の溶媒又はこれらの混合溶媒を用いて前記ケーキを洗浄する2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−149536(P2009−149536A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326810(P2007−326810)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】