説明

2−メチレンラクタムの製造法

【解決手段】 アルキニルアミン(I)をRSnH(II) およびCOと反応させて、2−スタニルメチレンラクタム(III)を得、次いで同ラクタム(III)を RSiX(IV)と反応させて、2−メチレンラクタム(V)を得る。 式(I)(II)(III) 中、R は低級脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を、R は水素原子、低級脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を、R 、R 、R 、R 、R 、R は、低級脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を、R は水素原子、低級脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を、nは1、2、3を、Xはハロゲン原子を意味する。低級脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【効果】 医薬、農薬の合成中間体として有用な含窒素複素環化合物が得られ、医薬、農薬の薬理活性発現に重要である光学活性な複素環化合物が得られる。


【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬等の合成中間体として有用な2−メチレンラクタムの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬、農薬の合成中間体として有用な複素環構造の製造法については古くから様々な合成法が開発されている。そのうち、一酸化炭素導入を利用したアシルラジカル種を経由する方法に着目すると、以下の報告がなされている。
【0003】
(1) ハロゲン化アルキルチオールまたはハロゲン化アルキルチオエーテルからの一酸化炭素による加圧条件下でのチオラクトンの合成法(非特許文献1参照)、および
(2) ハロゲン化アルキルケイ素からの一酸化炭素による加圧条件下でのシラシクロペンタノンの合成法(非特許文献2参照)。
【非特許文献1】ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J. Org. Chem.)、62巻、7550〜7551頁(1997年)
【非特許文献2】ケミカル・コミュニケーション(Chem. commun.)、1190〜1191頁(2003年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記合成法は、医薬、農薬の合成中間体として有用な含窒素複素環化合物の製造法は含まず、また医薬、農薬の薬理活性発現に重要である光学活性な複素環化合物の製造には至っていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、アルキニル基を有するアミンと水素化スズ化合物を一酸化炭素の加圧条件下にて好ましくはラジカル種の存在下に反応させたところ、2−スタニルメチレンラクタムを得、それをプロトン性溶媒中、ハロゲン化ケイ素化合物で処理することにより2−メチレンラクタムを得ることを見出し、さらに出発物質として光学活性体アルキニルアミンを用いると光学活性体2−メチレンラクタムを得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の第1のものは、下記一般式(I)
【化1】

【0007】
(R は直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味し、R は水素原子、または直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味し、nは1、2または3を意味する。)
で示されるアルキニルアミンを下記一般式(II)
【化2】

(R 、R およびR は、同じでも異なっていてもよく、直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味する。)
で示される水素化スズ化合物および一酸化炭素と反応させて、
下記一般式(III)
【化3】

【0008】
(R 、R 、R 、R およびnは上記定義と同じであり、R は水素原子、または直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味する。)
で示される2−スタニルメチレンラクタムを得る2−スタニルメチレンラクタムの製造法である。
【0009】
第1発明の反応はラジカル種の存在下に行うことが好ましく、また、一酸化炭素ガスの加圧下に行うことが好ましい。
【0010】
第1発明の反応生成物2−スタニルメチレンラクタム(III)のうち、R が水素原子である化合物は、副反応により基R がラクタムの窒素原子から脱離したものである。
【0011】
第1発明の方法により、アルキニルアミン(I)として光学活性体(すなわちR が水素原子以外のものであるアルキニルアミン(I))を用いて、対応する光学活性2−スタニルメチレンラクタム(III) を得ることができる。
【0012】
本発明の第2のものは、下記一般式(III)
【化4】

【0013】
(R 、R 、R 、R 、R およびnは上記定義と同じである。)
で示される2−スタニルメチレンラクタムを下記式(IV)
【化5】

(R 、R およびR は、同じでも異なってもよく、直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味し、Xはハロゲン原子を意味する。)
で示されるハロゲン化ケイ素化合物と反応させて、下記式(V)
【化6】

【0014】
(R およびR は上記定義と同じである。)
で示される2−メチレンラクタムを得る2−メチレンラクタムの製造法である。
【0015】
2−スタニルメチレンラクタム(III) は第1発明により得られたものであってよい。
【0016】
第2発明の反応はプロトン性溶媒中で反応を行うことが好ましい。
【0017】
第2発明の方法により、2−スタニルメチレンラクタム(III) として光学活性体(すなわちR が水素原子以外のものである2−スタニルメチレンラクタム(III) )を用いて、対応する光学活性2−メチレンラクタム(V)を得ることができる。
【0018】
本発明の第2のものは、第1発明の反応生成物である新規2−スタニルメチレンラクタム(III) である。好ましい2−スタニルメチレンラクタム(III) は光学活性体である。
【0019】
本発明による2−メチレンラクタムの製造法は、下記のスキームで示される。
【0020】
第1発明の方法
【化7】

【0021】
第2発明の方法
【化8】

【発明の効果】
【0022】
本発明により、医薬、農薬の合成中間体として有用な含窒素複素環化合物を得ることができる。また医薬、農薬の薬理活性発現に重要である光学活性な複素環化合物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
アルキニルアミン(I) から2−スタニルメチレンラクタム(III) を得る第1発明の反応において、出発原料アルキニルアミン(I)は、どのような方法によって得たものでもよいが、例えば、(1) アルデヒドとアミンによりイミンを合成し(コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis)、6巻、703〜732頁(1991年))、次いでこれをグリニヤール反応によりアルキニルアミン(I)に誘導する方法(ジャーナル・オブ・オルガノメタリック・ケミストリー(J.Organomet. Chem.)、155〜161頁(1991年)、(2) p−トルエンスルホニル基などの脱離基を有するアルキンとアミンよりアルキニルアミン(I)を誘導する方法(コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis)、6巻、65−101頁 (1991年))によって合成できる。
【0024】
一般式(I)(II)(III) におけるR 、R 、R、R、R およびR の定義において、直鎖状もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和の低級脂肪族炭化水素基は、低級飽和脂肪族炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル基、n−ペンチル等の炭素数1〜6のアルキル基、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間三重結合のような炭素−炭素間不飽和基を有する低級脂肪族炭化水素基、例えばビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等の炭素数1〜6のアルケニル基、またはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル等の炭素数1〜6のアルキニル基であってよい。
【0025】
低級脂肪族炭化水素基の置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボニル、アシル(アルカノイル、アリールカルボニル)アルコキシ、エステル(アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ)、ホスホリル、ホスフィン、ホスホネート、アミン、アミド、イミン、チオール、チオエーテル、チオエステル、スルホニル、スルフェート、スルホネート、ニトリル、ニトロ、アゾ、アジド、ヒドラジド、シリルまたは有機金属など、有機化学で一般に知られている基または原子が例示される。
【0026】
低級脂肪族炭化水素基は、置換基として芳香族炭化水素基を有するもの、例えばアラルキル(ベンジル、フェネチル、ビフェニルメチル等)、アラルケニル、アラルキニルであってもよく、置換基として複素環基を有するもの(例えばピリジルメチル基)であってもよい。
【0027】
低級脂肪族炭化水素基は、さらにシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の飽和脂環式炭化水素基、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等の不飽和脂環式炭化水素基であってもよい。
【0028】
芳香族炭化水素基(アラルキル、アラルケニル、アラルキニルの芳香族炭化水素基も含む)は、例えば3〜8の員数からなる単環式芳香族炭化水素基またはそれらが2以上縮環した多環式芳香族炭化水素基であり、フェニル、ナフチル、フェナンシル、アントラニルなどが例示される。芳香族炭化水素基の置換基の例としては、低級脂肪族炭化水素基の置換基として先に例示したものが挙げられる。置換芳香族炭化水素基は、アルキル基を有するフェニル基、例えばトリル基であってもよい。
【0029】
第1発明の反応において、水素化スズ化合物(II) の使用量はアルキニルアミン(I) に対して好ましくは1.0〜3.0当量、より好ましくは1.05〜1.5当量である。
【0030】
反応溶媒としては、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロプロピルメチルエーテルなど)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、炭化水素系溶媒(ヘキサン、ペンタンなど)、芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、アニソール、N,N−ジメチルアニリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、安息香酸メチルなど)、エステル系溶媒(酢酸エチルなど)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトンなど)および非プロトン性極性溶媒(アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイドなど)を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、好ましくは炭化水素系溶媒、より好ましくはベンゼンが用いられる。
【0031】
ラジカル種はジ−t−ブチルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物、2,2−アゾイソブチロニトリル、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などのアゾ化合物等のラジカル発生剤によって発生させられる。好ましいラジカル発生剤はアゾ化合物である。ラジカル発生剤の使用量はアルキニルアミン(I) に対して好ましくは0.05〜1.2当量、より好ましくは0.1〜0.4当量である。
【0032】
一酸化炭素の圧力は好ましくは20〜150気圧、より好ましくは50〜100気圧である。
【0033】
反応温度は好ましくは0〜180℃、より好ましくは60〜140℃である。
【0034】
反応時間は、一酸化炭素の圧力、反応温度等の条件にもよるが、0.5〜12時間、好ましくは1〜6時間、より好ましくは2〜4時間である。
【0035】
第1発明の反応終了後、生成物2−スタニルメチレンラクタム(III) は常法に従って採取できる。例えば、2−スタニルメチレンラクタム(III) 、アルキニルアミン(I) の未反応物、水素化スズ化合物(II)の未反応物および副生物等からなる反応混合物から、2−スタニルメチレンラクタム(III) を抽出、クロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の精製手段により単離することができる。
【0036】
得られた2−スタニルメチレンラクタム(III) がラセミ体である場合には適当な光学活性な酸を使用し、分別結晶化によりこれを光学分割することができる。
【0037】
第1発明の反応において、出発物質として光学活性アルキニルアミン(I)を用いて、光学活性2−スタニルメチレンラクタム(III) を得ることができる。この場合、得られた光学活性体は顕著なラセミ化を起こさない。
【0038】
2−スタニルメチレンラクタム(III) から2−メチレンラクタム(V)を得る第2発明の反応において、ハロゲン化ケイ素化合物(IV)の、R 、R およびR の定義、すなわち直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基は、一般式(I)(II)(III) におけるR 、R 、R、R、R およびR の定義と同じであってよい。
【0039】
ハロゲン化ケイ素化合物(IV)におけるハロゲン原子Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のいずれであってもよいが、好ましくは塩素である。
【0040】
第2発明の反応において、ハロゲン化ケイ素化合物(IV)の使用量は2−スタニルメチレンラクタム(III) に対して好ましくは3〜35当量、より好ましくは7〜25当量である。
【0041】
反応溶媒としては、プロトン性溶媒が好ましく用いられる。プロトン性溶媒はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒等であってよく、より好ましくはメタノールである。
【0042】
第2発明の反応終了後、目的物質2−メチレンラクタム(V)は常法に従って採取できる。例えば、目的物質2−メチレンラクタム(V)、2−スタニルメチレンラクタム(III) の未反応物、ハロゲン化ケイ素化合物(IV)の未反応物および副生物等からなる反応混合物から、抽出、クロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の精製手段により目的物質(V)を単離することができる。
【0043】
得られた2−メチレンラクタム(V)がラセミ体である場合には適当な光学活性な酸を使用し、分別結晶化によりこれを光学分割することができる。
【0044】
反応温度は好ましくは−30〜60℃、より好ましくは10〜30℃である。
【0045】
反応時間は、反応温度等の条件にもよるが、例えば1〜120分、好ましくは5〜60分、より好ましくは10〜30分である。
【0046】
第2発明の反応において、出発物質として光学活性2−スタニルメチレンラクタム(III) を用いて、光学活性2−メチレンラクタム(V)を得ることができる。この場合、得られた光学活性体は顕著なラセミ化を起こさない。
【実施例】
【0047】
以下に実施例により本発明を具体的に述べる。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
実施例1
(i)(S)−5−フェニル−3−トリブチルスタニルメチレン−2−ピロリドンの製造
ステンレス製の100mLのオートクレーブに2,2−アゾイソブチロニトリル16.4mg(0.100mmol)、ベンゼン50mL、N−(R)−1−フェニルエチル−N−(S)−1−フェニル−3−ブチニルアミン127.1mg(0.510mmol)および水素化トリブチルスズ203.2mg(0.698mmol)を仕込み、オートクレーブ内を一酸化炭素で3回置換した後、一酸化炭素で90気圧まで加圧し、90℃で4時間、混合物を攪拌した。反応終了後、オートクレーブを冷却し、一酸化炭素を除去した。反応混合物を濃縮し、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製を行い、(S)−5−フェニル−3−トリブチルスタニルメチレン−2−ピロリドン137.4mgを得た。収率58%。
【0049】
[α]=−37.57(C=1.25,CHCl)。
【0050】
H NMR(500MHz,CDCl);δ0.78−0.96(m,15H,SnCCHCH),1.18−1.34(m,6H,SnCHCHCH),1.34−1.54(m,6H,SnCHCHCH),2.70(ddd,J=17.0,4.6,2.3Hz,1H,CHC),3.32(ddd,J=17.0,8.2,2.3Hz,1H,CHC),4.74(qut,J=3.7Hz,1H,NHC),6.56(S,JH−Sn=60.5Hz,1H,CH=C),7.22−7.40(m,5H,Ar),8.00(bs,1H,NH)
13C NMR(125 MHz,CDCl);δ11.65(J13C−Sn=354.1Hz,SnCHCHCH),13.91(SnCHCHCH),27.46(J13C−Sn=56.6Hz,SnCHCHCH),29.36(J13C−Sn=20.2Hz,SnCHCHCH),39.68(CH=C),54.68(NH),125.79(Ar or H=C),127.78(Ar or H=C),128.91(Ar or H=C),138.70(Ar or H=C),143.32(Ar or H=C),144.47(Ar or H=C),172.12(CO)。
【0051】
(ii)(S)−5−フェニル−3−メチレン−2−ピロリドンの製造
30mLナスフラスコに(S)−5−フェニル−3−トリブチルスタニルメチレン−2−ピロリドン137.4mg(0.297mmol)、メタノール3.5mL、トリメチルシリルクロリド0.75mL(5.909mmol)を入れ、この混合物を室温で10分間撹拌した。反応終了後、溶媒を留去しフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製を行い、(S)−5−フェニル−3−メチレン−2−ピロリドンを得た。収量46.4mg、収率90%。この化合物の立体化学は既報告(ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J. Org. Chem. )、69巻、3562〜3564頁)を元に決定した。
【0052】
[α] =7.00(C=1.21,CHCl
H NMR(500 MHz,CDCl);δ2.60−2.69(m,1H,CHC
),3.22−3.34(m,1H,CHC),4.74(qut,J=3.7Hz,1H,NHC),5.34(S,1H,C=C),6.00(S,1H,C=C),7.22−7.38(m,5H,Ar),7.49(bs,1H,NH)。
【0053】
実施例2
(i)5−メチル−3−トリブチルスタニルメチレン−2−ピロリドンの製造
ステンレス製の100mLのオートクレーブに2,2−アゾイソブチロニトリル17.5mg(0.107mmol)、ベンゼン50mL、N−1−フェニルエチル−N−メチル−3−ブチニルアミン100.3mg(0.536mmol)および水素化トリブチルスズ205.5mg(0.706mmol)を仕込み、オートクレーブ内を一酸化炭素で3回置換した後、一酸化炭素で87気圧まで加圧し、90℃で4時間、撹拌を行った。反応終了後、オートクレーブを冷却し、一酸化炭素を除去した。反応混合物を濃縮し、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製を行い、5−メチル−3−トリブチルスタニルメチレン−2−ピロリドン117.4mgを得た。収率54%。
【0054】
H NMR(500 MHz,CDCl) ;δ0.82−0.99(m,15H,SnCCHCH),1.23(d,J=6.4Hz,3H,CHC),1.24−1.34(m,6H,SnCHCHCH),1.40−1.56(m,6H,SnCHCHCH),2.35(ddd,J=17.0,4.6,2.8Hz,1H,CHC),2.99(ddd,J=17.0,10.0,2.3Hz,1H,CHC),3.68−3.80(m,1H,NHC),6.47(S,J1H−Sn=61.9Hz,1H,C=C),7.64(bs,1H,NH)
13C NMR(125MHz,CDCl);δ11.62(J13C−Sn=361.8Hz,SnCHCHCH),13.86(SnCHCHCH),23.13(CH3),27.49(J13C−Sn=56.6Hz,SnCHCHCH),29.38(J13C−Sn=20.2Hz,SnCHCHCH),37.76(CH),46.59(NCH),137.33(H=C),145.57(CH=),171.54(CO)。
【0055】
(ii)5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドンの製造
30mLナスフラスコに5−メチル−3−トリブチルスタニルメチレン−2−ピロリドン117.4mg(0.293mmol)、メタノール3.5mLおよびトリメチルシリルクロリド0.35mL(2.758mmol)を入れ、この混合物を室温で10分間撹拌した。反応終了後、溶媒を留去しフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製を行い、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドンを得た。収量18.2mg、収率56%。
【0056】
H NMR(500MHz,CDCl);δ1.24(d,J=6.4Hz,3H,CHC),2.36−2.44(m,1H,CHC),2.97−3.05(m,1H,CHC),3.75−3.83(m,1H,NHC),5.34(S,1H,C=C),5.99(S,1H,C=C)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】

(R は直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味し、R は水素原子、または直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味し、nは1、2または3を意味する。)
で示されるアルキニルアミンを下記一般式(II)
【化2】

(R 、R およびR は、同じでも異なっていてもよく、直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味する。)
で示される水素化スズ化合物および一酸化炭素と反応させて、
下記一般式(III)
【化3】

(R 、R 、R 、R およびnは上記定義と同じであり、R は水素原子、または直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味する。)
で示される2−スタニルメチレンラクタムを得ることを特徴とする2−スタニルメチレンラクタムの製造法。
【請求項2】
ラジカル種の存在下に反応を行う請求項1記載の2−スタニルメチレンラクタムの製造法。
【請求項3】
アルキニルアミン(I)が光学活性体であり、2−スタニルメチレンラクタム(III)が光学活性体である請求項 1記載の2−スタニルメチレンラクタムの製造法。
【請求項4】
下記一般式(III)
【化4】

(R 、R 、R 、R およびnは上記定義と同じであり、R は水素原子、または直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味する。)
で示される2−スタニルメチレンラクタムを下記式(IV)
【化5】

(R 、R およびR は、同じでも異なってもよく、直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味し、Xはハロゲン原子を意味する。)
で示されるハロゲン化ケイ素化合物と反応させて、下記式(V)
【化6】

(R およびR は上記定義と同じである。)
で示される2−メチレンラクタムを得ることを特徴とする2−メチレンラクタムの製造法。
【請求項5】
2−スタニルメチレンラクタム(III) が請求項1記載の方法により得られたものである請求項4記載の2−メチレンラクタムの製造法。
【請求項6】
プロトン性溶媒中で反応を行う請求項4記載の2−メチレンラクタムの製造法。
【請求項7】
2−スタニルメチレンラクタム(III)が光学活性体であり、2−メチレンラクタム(V)が光学活性体である請求項4記載の2−メチレンラクタムの製造法。
【請求項8】
下記一般式(III)
【化7】

(R は水素原子、または直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味し、R 、R およびR は、同じでも異なっていてもよく、直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味し、R は水素原子、または直鎖状、分枝状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の無置換もしくは置換の低級脂肪族炭化水素基、または無置換もしくは置換の芳香族炭化水素基を意味し、nは1、2または3を意味する。)
で示される2−スタニルメチレンラクタム。
【請求項9】
光学活性体である請求項8記載の2−スタニルメチレンラクタム。


【公開番号】特開2006−76892(P2006−76892A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259707(P2004−259707)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年3月11日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第84春季年会 講演予稿集2」に発表
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】