説明

2剤式毛髪脱色剤、および2剤式染毛剤

【課題】 第1剤と第2剤の混合時、および混合後の塗布時の刺激臭を低減でき、経時的な安定性に優れた2剤式毛髪脱色剤、および2剤式染毛剤を提供する。
【解決の手段】 第1剤に揮発性アルカリ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、高級アルコールを含有し、第2剤に酸化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、高級アルコールを含有する2剤式毛髪脱色剤において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中にポリオキシエチレンアルキルエーテルが1.0〜6.0重量%含有され、かつ高級アルコールは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中に高級アルコールが2.0〜15.0重量%含有されている。2剤式染毛剤は、上記2剤式毛髪脱色剤の第1剤に、さらに酸化染料が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2剤式毛髪脱色剤、および2剤式染毛剤、特に、揮発性アルカリを含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤からなる2剤式毛髪脱色剤、および2剤式染毛剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化染毛剤は、染毛剤の中で最も広く使用されているものであり、第1剤に揮発性アルカリと酸化染料、第2剤に過酸化水素を含有する2剤式酸化染毛剤が一般的である。2剤式酸化染毛剤の使用方法は、第1剤および第2剤を均一に混合した後、毛髪に塗布して用いられる。第1剤中の揮発性アルカリとして一般的にアンモニアが用いられている。第1剤中の揮発性アルカリは、毛髪を膨潤させ、染料分子の毛髪内部への浸透を容易にし、かつ第2剤との混合時において、過酸化水素の分解を促進させ、酸素の発生を促す作用を有す。これにより毛髪がブリーチされると共に、酸化染料は、酸化重合を受け毛髪を染毛する。
【0003】
近年、毛髪の明度を明るく染毛することが望まれるようになってきている。
毛髪の明度を明るくするためには、第1剤中のアンモニアの量を多くする必要があり、アンモニアによる刺激臭がさらに強くなり、消費者に不快感を増大させるという問題を生じている。アンモニアによる刺激臭の問題は毛髪脱色剤においても同様に生じている。このように毛髪脱色剤および染毛剤において、消費者に不快感を与えるアンモニアの刺激臭を低減することは、重要な課題になっている。
【0004】
この刺激臭を低減するためにアンモニアの代わりに不揮発性アルカリ(モノエタノールアミン等)であるアルカノールアミンを使用することにより、アンモニアの使用量を減らし刺激臭を低減する試みがなされている。
しかしながら、不揮発性アルカリは、毛髪を十分に明るい色合いに染色できず、しかも多量に用いた場合には、毛髪や頭皮への残留性が高く、毛髪の損傷や皮膚刺激の原因となる恐れがある。
このため、第1剤に着目し、毛髪や頭皮への残留性が低い揮発性アルカリであるアンモニアを用い、かつ第1剤のアンモニアによる刺激臭を抑制し、刺激臭を低減する試みがなされている。
しかしながら、第1剤中のアンモニアによる刺激臭を低減することができたとしても、実際に使用する場合は、第1剤と第2剤を混合して使用するため、混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭の低減において十分な効果を得ることができないものと推測される。また、第1剤を製造した直後において、アンモニアによる刺激臭が低減されていたとしても、第1剤の状態が安定せず、経時的に徐々にアンモニアによる刺激臭が増加するという問題があった。
【0005】
また従来、毛髪脱色剤および染毛剤については、つぎのような先行特許文献がある。
【特許文献1】特開2005−22998号公報
【0006】
上記特許文献1は、染毛剤の第1剤、毛髪脱色・脱染剤の第1剤からの刺激臭の低減を目的とする毛髪化粧料に関するもので、(A)HLBが8以下である非イオン性界面活性剤
、(B)HLBが10以上である非イオン性界面活性剤、(C)カチオン性界面活性剤、(D)高級アルコ−ル、(E)水及び(F)揮発性アルカリ剤の各成分を含有し、下記
×=d/(a+b+c)・・・1
3≦×≦12・・・2
(式中、aは(A)成分のモル数、bは(B)成分のモル数、cは(C)成分のモル数、 及びdは(D)成分のモル数を示す。)
の式を満たすことを特徴とする、毛髪化粧料が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1は、染毛剤第1剤、毛髪脱色・脱染剤の第1剤からの刺激臭の低減を目的とするにすぎないものであるから、実際に使用する場合には第1剤と第2剤とを混合して使用するため、混合時及び塗付時のアンモニアによる刺激集の低減において十分な効果を期待しずらいものである。
【0008】
本発明は、上記のような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。最も多く使用されている2剤式毛髪脱色剤および染毛剤は、第1剤、第2剤混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭により消費者に不快感を与えてきた。この刺激臭を抑制するため、揮発性アルカリを含有する第1剤からアンモニアによる刺激臭を低減する試みがなされてきた。しかしながら、第1剤中のアンモニアによる刺激臭を低減することができたとしても、実際に使用する場合は、第1剤と第2剤を混合して使用するため、混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭の低減には十分な効果を得ることができないものと推測される。
本発明では、揮発性アルカリを含有する第1剤からアンモニアによる刺激臭を低減することに注目するのではなく、実際に使用され不快とされる第1剤と第2剤混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭を低減する毛髪脱色剤および染毛剤を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の目的は、実際に使用され不快とされる第1剤と第2剤混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭を低減することのできる毛髪脱色剤および染毛剤を提供し、さらに経時的に安定して刺激臭を低減することのできる毛髪脱色剤および染毛剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、第1剤に揮発性アルカリ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および高級アルコールを含有し、第2剤に、酸化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および高級アルコールを含有する2剤式毛髪脱色剤において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中にポリオキシエチレンアルキルエーテルが1.0〜6.0重量%含有され、かつ高級アルコールは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中に高級アルコールが2.0〜15.0重量%含有されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の2剤式毛髪脱色剤であって、第1剤と第2剤混合時の混合液中に、一種もしくは二種以上のカチオン界面活性剤0.1〜3.0重量%、および/または一種もしくは二種以上のアニオン界面活性剤0.01〜1.5重量%を含有し、上記カチオン界面活性剤が炭素数16以上のアルキル鎖長を有するものであり、アニオン界面
活性剤が炭素数16以上のアルキル鎖長を有するものであることを特徴としている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1及び2のうちのいずれか一項に記載の2剤式毛髪脱色剤であって、第1剤と第2剤混合時の混合液中に、リン酸塩類0.05重量%〜2.0重量%を含有することを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明は、第1剤に揮発性アルカリ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、高級アルコール、および酸化染料を含有し、第2剤に酸化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および高級アルコールを含有する2剤式染毛剤において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中にポリオキシエチレンアルキルエーテルが1.0〜6.0重量%含有され、かつ高級アルコールは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中に高級アルコールが2.0〜15.0重量%含有されていることを特徴としている。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4に記載の2剤式染毛剤であって、第1剤と第2剤混合時の混合液中に、一種もしくは二種以上のカチオン界面活性剤0.1〜3.0重量%、および/または一種もしくは二種以上のアニオン界面活性剤0.01〜1.5重量%を含有し、上記カチオン界面活性剤が炭素数16以上のアルキル鎖長を有するものであり、アニオン界面活性剤が炭素数16以上のアルキル鎖長を有するものであることを特徴としている。
【0015】
請求項6の発明は、請求項4及び5のうちのいずれか一項に記載の2剤式染毛剤であって、第1剤と第2剤混合時の混合液中に、リン酸塩類0.05重量%〜2.0重量%を含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明による毛髪脱色剤は、第1剤に揮発性アルカリ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および高級アルコールを含有し、第2剤に、酸化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および高級アルコールを含有する2剤式毛髪脱色剤において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中にポリオキシエチレンアルキルエーテルが1.0〜6.0重量%含有され、かつ高級アルコールは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中に高級アルコールが2.0〜15.0重量%含有されているもので、本発明の毛髪脱色剤によれば、実際に使用され消費者に不快とされる第1剤と第2剤の混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭を低減することができるという効果を奏する。
そして、本発明において、アンモニアによる刺激臭を低減する方法として、炭素数が16以上のアルキル鎖長の高級アルコールやポリオキシエチレンアルキルエーテル等の界面活性剤を多く使用した場合、毛髪への浸透性が極端に低下し脱色力や染着力が悪くなることが推測されるが、本発明の毛髪脱色剤では、アンモニアによる刺激臭の低減を妨げることなく、脱色力を向上させることができるという効果を奏する。
さらに、本発明の毛髪脱色剤によれば、脱色力に優れ、経時的な安定性に優れているという効果を奏する。
【0017】
つぎに、本発明による染毛剤は、第1剤に揮発性アルカリ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、高級アルコール、および酸化染料を含有し、第2剤に酸化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および高級アルコールを含有する2剤式染毛剤において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中にポリオキシエチレンアルキルエーテルが1.0〜6
.0重量%含有され、かつ高級アルコールは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中に高級アルコールが2.0〜15.0重量%含有されているもので、本発明の染毛剤によれば、実際に使用され消費者に不快とされる第1剤と第2剤の混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭を低減することができるという効果を奏する。
そして、本発明において、アンモニアによる刺激臭を低減する方法として、炭素数が16以上のアルキル鎖長の高級アルコールやポリオキシエチレンアルキルエーテル等の界面活性剤を多く使用した場合、毛髪への浸透性が極端に低下し脱色力や染着力が悪くなることが推測されるが、本発明の染毛剤では、アンモニアによる刺激臭の低減を妨げることなく、染着力を向上させることができるという効果を奏する。
さらに、本発明の染毛剤によれば、染毛力に優れ、経時的な安定性に優れているという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明による毛髪脱色剤は、第1剤に揮発性アルカリ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および高級アルコールを含有し、第2剤に、酸化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および高級アルコールを含有する2剤式毛髪脱色剤であって、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中にポリオキシエチレンアルキルエーテルが1.0〜6.0重量%含有され、かつ高級アルコールは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中に高級アルコールが2.0〜15.0重量%含有されているものである。
また、本発明による染毛剤は、第1剤に揮発性アルカリ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、高級アルコール、および酸化染料を含有し、第2剤に酸化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および高級アルコールを含有する2剤式染毛剤において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中にポリオキシエチレンアルキルエーテルが1.0〜6.0重量%含有され、かつ高級アルコールは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中に高級アルコールが2.0〜15.0重量%含有されているものである。
上記の本発明の2剤式毛髪脱色剤、および染毛剤においては、第1剤、第2剤混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭の低減を図るものである。
【0020】
本発明において、揮発性アルカリとしては、アンモニア等が挙げられる。第1剤、第2剤混合時の混合液中に揮発性アルカリの含有量は、0.05〜3.0重量%であり、特に0.5〜2.0重量%がより好ましい。揮発性アルカリの含有量が0.1重量%未満では
、十分な毛髪の膨潤、ブリーチ力、染料の酸化重合を得ることができず、また4.0重量%を超えると、毛髪や皮膚へのダメージが強くなるだけであり、脱色力や染着力にほとんど影響を与えない。特にアルカリ剤としてアンモニアと炭酸水素アンモニウムおよびその塩類を組み合わせて用いることは、刺激臭の低減および皮膚への一次刺激抑制効果の点においてより好ましい。さらにその他のアルカリ剤として毛髪のダメージを考慮しながらモノエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モノイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カリウム、塩化アンモニウムなど一種または二種以上を少量組み合わせて用いても構わない。
【0021】
本発明において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとして有効なものを具体的に挙げると、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベへニルエーテル等が挙げられ、少なくとも一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。第1剤、第2剤混合時の混合液中にポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量は、1.0〜6.0重量%であり、特に2.0〜4.0重量%がより好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量が1.0重量%未満では十分にアンモニアによる刺激臭を低減することができず、また含有量が6.0重量%を超えると、それ以上のアンモニアによる刺激臭の低減効果は得られず、好ましくない。なお
、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルにおいて
、例えばアルケニル鎖をもつポリオキシエチレンオレイルエーテルは、刺激臭の低減には適さず、また側鎖をもつものよりも直鎖をもつアルキル鎖長を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルの方が好ましい。
【0022】
本発明において、高級アルコールとして有効なものを具体的に挙げると、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられ、少なくとも一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。第1剤、第2剤混合時の混合液中に高級アルコールの含有量は、2.0〜15.0重量%であり、特に4.0〜10.0重量%がより好ましい。高級アルコールの含有量が2.0重量%未満ではアンモニアによる刺激臭を低減することが難しく、また15.0重量%を超えると、それ以上のアンモニアによる刺激臭を低減する効果は得られず、粘度が高くなり、第1剤、第2剤の混合時に取り扱いが困難であり、塗布時の伸びが悪く使用に不都合を生じる。なお、炭素数16以上の高級アルコールの中でも、アルケニル基を持つオレイルアルコールや側鎖を持つイソステアリルアルコールよりも、直鎖を持つセチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が好ましい。
【0023】
本発明において、酸化染料として有効なものを具体的に挙げると、5−アミノオルトクレゾール、1−アミノ−4−メチルアミノアントラキノン、3,3’−イミノジフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、2,4−ジアミノフェノール、トルエン−2,5−ジアミン、トルエン−3,4−ジアミン、ニトロパラフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、N−フェニルパラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、オルトアミノフェノール、1,4ジアミノアントラキノン、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ヒドロキシナフタレン、パラアミノフェノール、パラニトロオルトフェニレンジアミン、パラメチルアミノフェノール、ピクラミン酸、ピクラミン酸ナトリウム、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−2,5−ジアミノ−1,4−キノンジイミン、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、メタアミノフェノール、メタフェニレンジアミン、オルトクロルパラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、カテコール、ジフェニルアミン、α−ナフトール、ヒドロキノン、ピロガロール
、フロログルシン、没食子酸、レゾルシンおよびそれらの塩類として塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等、直接染料等が挙げられ、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる
。第1剤、第2剤混合時の混合液中における酸化染料の含有量は好ましくは0.005〜8.0重量%であり、特に0.05〜5.0重量%がより好ましい。酸化染料の含有量が0.005%未満では十分な染毛力は得られにくく、また8.0重量%を超えて配合してもそれ以上の染毛力は得られにくく経済的ではない。
【0024】
本発明において、カチオン界面活性剤として有効なものを具体的に挙げると、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。第1剤、第2剤混合時の混合液中にカチオン界面活性剤の含有量は、0.1〜3.0重量%であり、特に0.2〜2.0重量%がより好ましい
。カチオン界面活性剤の含有量が0.1重量%未満ではそれ以上の効果は得られず、また3重量%を超えると、アンモニアによる刺激臭を低減することが難しい。
【0025】
本発明において、アニオン界面活性剤として有効なものを具体的に挙げると、N−ステアロイルメチルタウリンナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム
、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウムおよびその他の塩類等が挙げられ、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。第1剤、第2剤混合時の混合液中にアニオン界面活性剤の含有量は、0.01〜1.5重量%であり、特に0.03〜0.75重量%がより好ましい。アニオン界面活性剤の含有量が0.01重量%未満ではそれ以上の効果は得られず、また1.5重量%を超えると、アンモニアによる刺激臭を低減することが難しい。
【0026】
アンモニアによる刺激臭を低減する方法として、炭素数が16以上のアルキル鎖長を持つ高級アルコールやポリオキシエチレンアルキルエーテル等の界面活性剤を多く使用した場合、毛髪への浸透性が極端に低下し、脱色力や染毛力が劣ることが考えられる。本発明では、アンモニアによる刺激臭の低減を妨げることなく脱色力や染毛力を向上させる方法として、リン酸塩類を含有する。
本発明において、リン酸塩類として有効なものを具体的に挙げると、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等が挙げられ、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。第1剤、第2剤混合時の混合液中にリン酸塩類の含有量は、0.05重量%〜2.0重量%であり、特に0.2〜1.0重量%がより好ましい。リン酸塩類が0.05重量%未満では十分な染毛効果が得られず
、2.0重量%を超えると、それ以上の効果が得られない。
【0027】
本発明において、酸化剤として有効なものを具体的に挙げると、過酸化水素等が挙げられる。第1剤、第2剤混合時の混合液中に酸化剤の含有量は、好ましくは0.25重量%〜5.0重量%であり、特に1.5〜4.0重量%がより好ましい。酸化剤が0.25重量%未満では十分なブリーチ力および染毛効果が得られず、また5.0重量%を超えると
、毛髪のダメージが強くなり好ましくない。
本発明において、毛髪脱色剤および染毛剤は、第1剤、第2剤を任意の比率で混合でき
、特に混合比率は第1剤:第2剤=2:1〜1:3がより好ましい。
【0028】
その他として、本発明の効果を損なわない程度に、添加剤としてキレート剤、酸化防止剤、油剤、アミノ酸類、ポリペプチド類、タンパク質、保湿剤、有機溶媒、高分子化合物
、シリコーン類、PH調整剤、植物抽出物類、紫外線吸収剤、HC染料、塩基性染料、タール色素、香料など、一般的にヘアカラーに用いられているものを適宜配合しても良い。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0030】
実施例1〜7
本発明の2剤式毛髪脱色剤として、下記の表1に示す組成を有する毛髪脱色剤を調製した。
【0031】
比較例1〜10
また比較のために、下記の表2に示す組成を有する毛髪脱色剤を調製した。
【0032】
実施例8〜14
本発明の2剤式染毛剤として、下記の表3に示す組成を有する染毛剤を調製した。
【0033】
比較例11〜20
また比較のために、下記の表4に示す組成を有する染毛剤を調製した。
なお、下記表中の数値は、重量%を表わす。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
[評価試験]
上記の実施例1〜7による本発明の2剤式毛髪脱色剤、比較例1〜10の比較のための毛髪脱色剤、実施例8〜14による本発明の2剤式染毛剤、比較例11〜20の比較のための染毛剤について、それぞれ下記の評価試験を行い、得られた評価結果を、表5、表6
、表7、および表8に示した。
【0039】
〔混合時のアンモニア臭〕
各例に示された第1剤と第2剤をカップに各20g(第1剤:第2剤=1:1)を量り取り、混合時におけるアンモニアの刺激臭を10名のパネラーで評価し、下記の4つの段階に区分した。
混合時のアンモニア臭
◎ :アンモニア臭がしない。
〇 :アンモニア臭がほとんどしない。
△ :若干アンモニア臭がする。
× :著しくアンモニア臭がする。
【0040】
〔塗布時のアンモニア臭〕
各例に示された第1剤と第2剤をカップに各20g(第1剤:第2剤=1:1)を量り取り混合した後、毛束に塗布している時のアンモニアの刺激臭を10名のパネラーで評価し、下記の4つの段階に区分した。
塗布時のアンモニア臭
◎ :アンモニア臭がしない。
〇 :アンモニア臭がほとんどしない。
△ :若干アンモニア臭がする。
× :著しくアンモニア臭がする。
【0041】
〔経時による混合時および塗布時のアンモニア臭〕
各例に示された第1剤と第2剤を40℃の恒温槽に入れ、6ヶ月保存することにより、経時による混合時および塗布時のアンモニア臭の変化を調べるために加速試験を行った。6ヶ月後、40℃の恒温槽より取り出し、室温にて一昼夜放置後、第1剤と第2剤をカップに各20g(第1剤:第2剤=1:1)量り取り、混合時および毛束に塗布している時のアンモニアの刺激臭を10名のパネラーで評価し、下記の4つの段階に区分した。
刺激臭低減の安定性
◎ :混合時および塗布時において、アンモニア臭がしない。
〇 :混合時および塗布時において、アンモニア臭がほとんどしない。
△ :混合時および塗布時において、若干アンモニア臭がする。
× :混合時および塗布時において、著しくアンモニア臭がする。
【0042】
〔脱色力〕
各例に示された第1剤と第2剤を各20g(第1剤:第2剤=1:1)を量り取り混合した後、未処理黒髪毛束に塗布し、30℃で、30分放置後、水洗し、シャンプー、トリートメント処理をして脱色処理をした。10名のパネラーで、目視にて毛束の明度を評価し、下記の4つの段階に区分した。
脱色力
(人毛未処理毛を脱色後の脱色力の評価)
◎ :非常に脱色が良い。
〇 :脱色が良い。
△ :若干脱色が悪い。
× :脱色が悪い。
【0043】
〔染毛力〕
各例に示された第1剤と第2剤を各20g(第1剤:第2剤=1:1)を量り取り混合した後、白髪毛束に塗布し、30℃で、30分放置後、水洗し、シャンプー、トリートメント処理をして染毛処理を完了した。10名のパネラーが毛束の染毛の程度を目視にて評価し、下記の4つの段階に区分した
染毛性
(人毛白髪へ染毛後の染毛力の評価)
◎ :非常に染まりが良い。
〇 :染まりが良い。
△ :若干染まりが悪い。
× :染まりが悪い。
【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【0047】
【表8】

【0048】
上記表5の評価結果から明らかなように、本発明の実施例1〜7の毛髪脱色剤によれば
、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中にポリオキシエチレンアルキルエーテルが1.0〜6.0重量%の範囲で含有され、かつ高級アルコールは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中に高級アルコールが2.0〜15.0重量%の範囲で含有されているため、本発明の毛髪脱色剤によれば、実際に使用され消費者に不快とされる第1剤と第2剤の混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭が十分に低減されていることがわかる。
また、本発明の実施例1〜7の毛髪脱色剤によれば、カチオン界面活性剤が、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するものであり、アニオン界面活性剤が、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するものであり、第1剤と第2剤混合時の混合液中に、一種もしくは二種以上のカチオン界面活性剤が0.1〜3.0重量%、および/または一種もしくは二種以上のアニオン界面活性剤が0.01〜1.5重量%の範囲で含有されているため、本発明の毛髪脱色剤によれば、第1剤、第2剤の混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭の低減効果がさらに向上され、経時による混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭の低減効果も向上していることがわかる。
さらに、本発明の実施例1〜7の毛髪脱色剤によれば、第1剤と第2剤混合時の混合液中に、リン酸塩類が0.05重量%〜2.0重量%の範囲で含有されているため、本発明の毛髪脱色剤によれば、脱色力が向上していることがわかる。
【0049】
一方、上記表6の評価結果から明らかなように、比較例1〜10の毛髪脱色剤によれば
、第1剤、第2剤の混合液中に炭素数16より小さいアルキル鎖長をもつポリオキシエチレンアルキルエーテル、炭素数16より小さいアルキル鎖長をもつ高級アルコール、炭素数16より小さいアルキル鎖長をもつカチオン界面活性剤および/またはアニオン界面活性剤がそれぞれ含有されている時、第1剤、第2剤の混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭の低減が十分に成されてないことがわかる。さらに、これらの配合剤の配合割合が、本発明の範囲外である時、第1剤、第2剤の混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭の低減効果が十分でないことがわかる。
【0050】
また、上記表7の評価結果から明らかなように、本発明の実施例8〜14の染毛剤によれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中にポリオキシエチレンアルキルエーテルが1.0〜6.0重量%の範囲で含有され、かつ高級アルコールは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中に高級アルコールが2.0〜15.0重量%の範囲で含有されているため、本発明の染毛剤によれば、実際に使用され消費者に不快とされる第1剤と第2剤の混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭が十分に低減されていることがわかる。
また、本発明の実施例8〜14の染毛剤によれば、カチオン界面活性剤が、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するものであり、アニオン界面活性剤が、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するものであり、第1剤と第2剤混合時の混合液中に、一種もしくは二種以上のカチオン界面活性剤が0.1〜3.0重量%、および/または一種もしくは二種以上のアニオン界面活性剤が0.01〜1.5重量%の範囲で含有されているため、本発明の染毛剤によれば、第1剤、第2剤の混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭の低減効果がさらに向上され、経時による混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭の低減効果も向上していることがわかる。
さらに、本発明の実施例8〜14の染毛剤によれば、第1剤と第2剤混合時の混合液中に、リン酸塩類が0.05重量%〜2.0重量%の範囲で含有されているため、本発明の染毛剤によれば、染着力が向上していることがわかる。
【0051】
一方、上記表8の評価結果から明らかなように、比較例11〜20の染毛剤によれば、第1剤、第2剤の混合液中に炭素数16より小さいアルキル鎖長をもつポリオキシエチレンアルキルエーテル、炭素数16より小さいアルキル鎖長をもつ高級アルコール、炭素数16より小さいアルキル鎖長をもつカチオン界面活性剤および/またはアニオン界面活性剤がそれぞれ含有されている時、第1剤、第2剤の混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭の低減が十分に成されてないことがわかる。さらに、これらの配合剤の配合割合が、本発明の範囲外である時、第1剤、第2剤の混合時および塗布時のアンモニアによる刺激臭の低減効果が十分でないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剤に揮発性アルカリ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および高級アルコールを含有し、第2剤に、酸化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および高級アルコールを含有する2剤式毛髪脱色剤において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中にポリオキシエチレンアルキルエーテルが1.0〜6.0重量%含有され、かつ高級アルコールは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中に高級アルコールが2.0〜15.0重量%含有されていることを特徴とする、2剤式毛髪脱色剤。
【請求項2】
第1剤と第2剤混合時の混合液中に、一種もしくは二種以上のカチオン界面活性剤0.1〜3.0重量%、および/または一種もしくは二種以上のアニオン界面活性剤0.01〜1.5重量%を含有し、上記カチオン界面活性剤が炭素数16以上のアルキル鎖長を有するものであり、アニオン界面活性剤が炭素数16以上のアルキル鎖長を有するものであることを特徴とする、請求項1に記載の2剤式毛髪脱色剤。
【請求項3】
第1剤と第2剤混合時の混合液中に、リン酸塩類0.05重量%〜2.0重量%を含有することを特徴とする、請求項1及び2のうちのいずれか一項に記載の2剤式毛髪脱色剤

【請求項4】
第1剤に揮発性アルカリ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、高級アルコール、および酸化染料を含有し、第2剤に酸化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および高級アルコールを含有する2剤式染毛剤において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中にポリオキシエチレンアルキルエーテルが1.0〜6.0重量%含有され、かつ高級アルコールは、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するとともに、第1剤と第2剤の混合時の混合液中に高級アルコールが2.0〜15.0重量%含有されていることを特徴とする
、2剤式染毛剤。
【請求項5】
第1剤と第2剤混合時の混合液中に、一種もしくは二種以上のカチオン界面活性剤0.1〜3.0重量%、および/または一種もしくは二種以上のアニオン界面活性剤0.01〜1.5重量%を含有し、上記カチオン界面活性剤が、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するものであり、アニオン界面活性剤が、炭素数16以上のアルキル鎖長を有するものであることを特徴とする、請求項4に記載の2剤式染毛剤。
【請求項6】
第1剤と第2剤混合時の混合液中に、リン酸塩類0.05重量%〜2.0重量%を含有することを特徴とする、請求項4及び5のうちのいずれか一項に記載の2剤式染毛剤。

【公開番号】特開2008−19220(P2008−19220A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193647(P2006−193647)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(598176905)玉理化学株式会社 (9)
【Fターム(参考)】