説明

2剤式酸化染毛剤

【課題】毛髪を濃く染色するに十分な量の染料を含有しても良好な乳化安定性を確保でき、かつ、ラメラ液晶構造を形成し、アンモニアによる刺激臭が低減された2剤式酸化染毛剤の提供。
【解決手段】染料およびアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とからなり、(A)ポリオキシエチレン鎖長が50以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、(B)高級アルコール、(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)のポリオキシエチレン鎖長より短いポリオキシエチレン鎖長を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル、および、(D)グリセリン脂肪酸エステルを第1剤に含有し、前記染料の含有量が、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.5重量%以上である2剤式酸化染毛剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアによる刺激臭が低減された2剤式酸化染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
2剤式酸化染毛剤は、染料およびエタノールアミン、炭酸塩、アンモニアなどのアルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素などの酸化剤を含有する第2剤とからなる。使用直前に、両剤を混合して施術し、毛髪を染色するものである。
【0003】
第1剤に含有されるアルカリ剤のうち、エタノールアミンは毛髪への残留性が強く、毛髪損傷や皮膚刺激などの欠点を有する。また、炭酸塩は過酸化水素による脱色力や染毛力を強める効果が弱いために毛髪の色調をあまり明るくすることができないなどの欠点を有する。これに対し、アンモニアは毛髪に残留することがなく、毛髪損傷や頭皮の炎症などを引き起こす恐れがないなど安全性に優れており、さらに、過酸化水素による脱色力や染毛力を十分に強める効果を有するため、最も一般的に使用されている。しかしながら、アンモニアは施術時に使用者に不快感を与える特有の刺激臭を発する。特に、毛髪の色を明るくする等、より強い脱色力や染毛力が必要な場合においては、アンモニアを多量に含有する必要があるため、強烈な刺激臭を発し不快感を与えるという大きな欠点を有する。
【0004】
これらの問題を解決すべく、従来、液晶構造を含有し、アルカリ剤を液晶構造内に組み込むことによって、アンモニアによる刺激臭を低減する組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−40750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の液晶構造を利用した組成物には、安定な乳化状態を達成し、アンモニアによる刺激臭を低減するためには、処方の自由度が制限されるという課題があった。特に、毛髪を濃く染色するに十分な量の染料を含有すると、乳化状態が不安定となり、アンモニアによる刺激臭も十分に低減することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決し、アンモニアによる刺激臭が低減された2剤式酸化染毛剤を提供することを目的とする。本発明の別の目的は、毛髪を濃く染色するに十分な量の染料を含有しても、乳化状態が安定で、アンモニアによる刺激臭が低減された2剤式酸化染毛剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、染料およびアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とからなり、
(A)ポリオキシエチレン鎖長が50以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、
(B)高級アルコール、
(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)のポリオキシエチレン鎖長より短いポリオキシエチレン鎖長を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル、および、
(D)グリセリン脂肪酸エステル
の各成分を第1剤に含有し、前記染料の含有量が、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.5重量%以上である、本発明の2剤式酸化染毛剤が上記課題を達成することを見出した。
【0009】
本発明の2剤式酸化染毛剤は、ラメラ液晶構造を形成し、アルカリ剤を親水性部分に保持し、そのまわりを親油性部分で内包することにより、アンモニアによる刺激臭を低減することができる。
【0010】
さらに、本発明の染毛剤は、処方の自由度が高く、通常、乳化を不安定にする多量の染料、アルカリ剤、油剤や塩類を配合しても十分な乳化安定性を有し、アンモニアによる刺激臭を低減できる。特に、塩である染料、例えば、塩酸パラフェニレンジアミン、硫酸トルエン−2,5−ジアミンなどや、塩であるアルカリ剤、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどの、通常、特に乳化を不安定にする成分を含有しても、十分な乳化安定性や操作性を確保でき、アンモニアによる刺激臭を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を説明する。本発明の2剤式酸化染毛剤は、上記のように染料およびアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とからなる。
【0012】
〔染料〕
本発明の2剤式酸化染毛剤において、第1剤は、2剤式酸化染毛剤の分野において用いられている公知の酸化染料および直接染料を含有する。
【0013】
酸化染料としては、特に限定されないが、例えば、5−アミノオルトクレゾール、硫酸5−アミノオルトクレゾール、塩酸2,4−ジアミノフェノール、塩酸トルエン−2,5−ジアミン、塩酸パラフェニレンジアミン、塩酸N−フェニルパラフェニレンジアミン、塩酸メタフェニレンジアミン、オルトアミノフェノール、酢酸N−フェニルパラフェニレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、硫酸2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ジフェニルアミン、トルエン−2,5−ジアミン、トルエン−3,4−ジアミン、α−ナフトール、パラアミノフェノール、パラフェニレンジアミン、パラメチルアミノフェノール、ヒドロキノン、ピロガロール、N−フェニルパラフェニレンジアミン、フロログルシン、メタアミノフェノール、メタフェニレンジアミン、没食子酸、硫酸オルトアミノフェノール、硫酸オルトクロルパラフェニレンジアミン、 硫酸4,4’−ジアミノジフェニルアミン、硫酸トルエン−2,5−ジアミン、硫酸パラアミノフェノール、硫酸パラフェニレンジアミン、硫酸パラメチルアミノフェノール、硫酸1−ヒドロキシエチル−4,5−ジアミノピラゾール、硫酸2−(2−ヒドロキシエチル)−1,4−フェニレンジアンモニウム、2−メチルレゾルシノール、硫酸メタアミノフェノール、硫酸メタフェニレンジアミン、レゾルシンなどが挙げられる。これらの染料を単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0014】
直接染料としては、特に限定されないが、例えば、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、塩酸ニトロパラフェニレンジアミン、ニトロパラフェニレンジアミン、パラニトロオルトフェニレンジアミン、硫酸2−アミノ−5−ニトロフェノール、硫酸ニトロパラフェニレンジアミン、硫酸パラニトロオルトフェニレンジアミン、硫酸パラニトロメタフェニレンジアミン、1−アミノ−4−メチルアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、ピクラミン酸、ピクラミン酸ナトリウム、2−((2−ニトロフェニル)アミノ)エタノールなどが挙げられる。これらの染料を単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0015】
なお、酸化染料は直接染料に比べて洗髪の堅牢度が高いため、染料として、酸化染料のみを使用するか、または、酸化染料と直接染料を併用するのが好ましい。
【0016】
染料は、毛髪を濃く染色するために、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.5重量%以上である。より高い染毛力が得られるため、1.0重量%以上の含有量が好ましく、1.5重量%以上がより好ましい。また、第1剤と第2剤との合計重量に対して15重量%を超えて含有しても、それ以上の染毛力は得にくいため、15重量%以下の含有量が好ましく、10重量%以下の含有量がより好ましい。
【0017】
さらに、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.5重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上の染料を含有し、十分な染毛力を有する本発明の染毛剤は、毛髪を濃く染色することができるため、特に白髪染めや、明るく脱色された髪色を暗い色に戻すための染毛剤等に適している。
【0018】
〔アルカリ剤〕
本発明の2剤式酸化染毛剤において、第1剤は、毛髪を膨潤させ、染料を毛髪へ浸透させ、毛髪の脱色力を向上するために、アルカリ剤を含有する。
【0019】
本発明の2剤式酸化染毛剤において、通常、アルカリ剤としてアンモニアを使用する。第1剤にアンモニアを単独で含有してもよいが、さらに、公知のアルカリ剤を、特に限定することなく広く併用することができる。アルカリ剤としては、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)、テトラキス(2−ヒドロキシイソプロピル)エチレンジアミン(TE)、モノイソプロパノールアミン(MIPA)等のアルカノールアミン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムは、毛髪の膨潤、染毛剤の浸透、毛髪の脱色がより得られるため、特に好ましい。これらのアルカリ剤の1種をアンモニアと併用してもよいし、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0020】
アルカリ剤の含有量は、求める明るさなどに応じて適宜設定される。特に限定されるものではないが、より高い染毛力を得るために、毛髪を十分に膨潤させ、染毛剤を毛髪へ浸透させ、毛髪を十分に脱色するには、アルカリ剤を、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.01重量%以上の量で含有するのが好ましく、0.1重量%以上の含有量がより好ましい。また、頭皮への刺激や毛髪の損傷などが軽減されるため、第1剤と第2剤との合計重量に対して15重量%以下の含有量が好ましく、10重量%以下の含有量がより好ましい。アンモニアと他のアルカリ剤を併用する場合、アンモニアと他のアルカリ剤との含有量の合計重量に対して、アンモニアが10重量%以上となる量で使用するのが、毛髪の膨潤、染毛剤の浸透、毛髪の脱色がより得られる点において好ましい。
【0021】
〔酸化剤〕
本発明の2剤式酸化染毛剤において、第2剤は、2剤式酸化染毛剤の分野において用いられている公知の酸化剤を含有する。
【0022】
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過炭酸ナトリウム、臭素酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に過酸化水素が、十分な染毛力および脱色力が得られるため好ましい。これらの酸化剤を単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0023】
酸化剤の含有量は、酸化染料をすべて酸化できる量や、求める脱色力などに応じて適宜設定される。特に限定されるものではないが、十分な染毛力、脱色力を得るために、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.01重量%以上の含有量が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また、第1剤と第2剤との合計重量に対して15重量%を超えて含有しても、それ以上の染毛力は得られないため、15重量%以下の含有量が好ましく、10重量%以下の含有量がより好ましい。
【0024】
本発明の2剤式酸化染毛剤は、上記成分に加えて、さらに、
(A)ポリオキシエチレン鎖長が50以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、
(B)高級アルコール、
(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)のポリオキシエチレン鎖長より短いポリオキシエチレン鎖長を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル、および、
(D)グリセリン脂肪酸エステル
を第1剤に含有してなる。
【0025】
上記成分(A)ポリオキシエチレン鎖長が50以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン(50)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(150)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(50)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(80)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(50)セチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(50)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(55)セチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(60)セチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(80)セチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(82)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(106)オレイルエーテルなどが挙げられる。
【0026】
成分(A)のポリオキシエチレン鎖長は、アンモニアによる刺激臭を低減し、良好な乳化安定性を確保するため、55以上が好ましく、80以上がより好ましい。また、ポリオキシエチレン鎖長は、150以下が好ましい。特に、アンモニアによる刺激臭を十分に低減する効果があり、高い処方の自由度で乳化安定性が確保できるため、ポリオキシエチレン鎖長が100のポリオキシエチレンアルキルエーテルがさらに好ましい。これらの中でも、アンモニアによる刺激臭の低減効果がより高く、処方の自由度が高く、例えば、毛髪を濃く染色するに十分な量の染料を含有しても、良好な乳化安定性が確保できることから、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテルが特に好ましい。
【0027】
これらのポリオキシエチレン鎖長が50以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルを単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0028】
成分(A)の含有量は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定される。特に限定されるものではないが、アンモニアによる刺激臭の低減効果がより高く、より良好な乳化安定性や操作性を確保するためには、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.1重量%以上の含有量が好ましく、0.5重量%以上の含有量がより好ましい。また、アンモニアによる刺激臭の低減効果がより高く、より良好な乳化安定性や操作性を確保するためには、第1剤と第2剤との合計重量に対して10重量%以下の含有量が好ましく、8重量%以下の含有量がより好ましい。
【0029】
上記成分(B)高級アルコールとしては、炭素数12以上の高級アルコールが、より良好な液晶構造を形成するため好ましい。また、炭素数22以下の高級アルコールが、より良好な液晶構造を形成するため好ましい。成分(B)としては、特に限定されないが、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノールなどの高級アルコールが挙げられる。これらの中でも、特にアンモニアによる刺激臭の低減効果がより高いため、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましい。これらの高級アルコールを単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。また、第1剤と第2剤の両方に高級アルコールを含有する場合、それぞれに同一の高級アルコールを含有してもよいし、異なる高級アルコールを含有してもよい。
【0030】
成分(B)の含有量は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定される。特に限定されるものではないが、アンモニアによる刺激臭の低減効果がより高く、より良好な乳化安定性や操作性を確保するためには、第1剤と第2剤との合計重量に対して1.0重量%以上の含有量が好ましく、2.0重量%以上の含有量がより好ましい。また、アンモニアによる刺激臭の低減効果がより高く、より良好な乳化安定性や操作性を確保するためには、20重量%以下の含有量が好ましく、15重量%以下の含有量がより好ましい。
【0031】
上記成分(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)のポリオキシエチレン鎖長より短いポリオキシエチレン鎖長を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられる。特に、乳化安定性がより良好で、アンモニアによる刺激臭の低減効果がより高いため、HLB15以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。HLB15以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリル(20)エーテル、ポリオキシエチレン(30)セトステアリルエーテルなどが挙げられる。これらのポリオキシエチレンアルキルエーテルを単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。また、第1剤と第2剤の両方に成分(C)のポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する場合、それぞれに同一のポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有してもよいし、異なるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有してもよい。
【0032】
成分(C)の含有量は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定される。特に限定されるものではないが、アンモニアによる刺激臭の低減効果がより高く、より良好な乳化安定性を確保できるため、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.1重量%以上の含有量が好ましく、0.5重量%以上の含有量がより好ましい。また、アンモニアによる刺激臭の低減効果がより高く、より良好な乳化安定性を確保できるため、10重量%以下の含有量が好ましく、8重量%以下の含有量がより好ましい。
【0033】
上記成分(D)グリセリン脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、モノウンデシレン酸グリセリン、ミリスチン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、モノイソステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、ヤシ油脂肪酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、モノヒドロキシステアリン酸グリセリル、リノール酸グリセリル、リシノレイン酸グリセリル、エルカ酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、サフラワー油脂肪酸グリセリル、水素添加大豆脂肪酸グリセリル、綿実油脂肪酸グリセリル、モノラノリン脂肪酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリルなどが挙げられる。これらの中でも、特にアンモニアによる刺激臭の低減効果が高いことから、親油型モノステアリン酸グリセリンが好ましい。これらのグリセリン脂肪酸エステルを単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。また、第1剤と第2剤の両方にグリセリン脂肪酸エステルを含有する場合、それぞれに同一のグリセリン脂肪酸エステルを含有してもよいし、異なるグリセリン脂肪酸エステルを含有してもよい。
【0034】
成分(D)の含有量は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定される。特に限定されるものではないが、アンモニアによる刺激臭の低減効果がより高く、より良好な乳化安定性を確保できるため、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.1重量%以上の含有量が好ましく、0.2重量%以上の含有量がより好ましい。また、アンモニアによる刺激臭の低減効果がより高く、より良好な乳化安定性が確保できるため、10重量%以下の含有量が好ましく、8重量%以下の含有量がより好ましい。
【0035】
本発明の2剤式酸化染毛剤において、(A)、(B)、(C)および(D)の各成分は第1剤に含まれる。
【0036】
本発明の2剤式酸化染毛剤において、上記に加えてさらに、成分(B)、(C)および(D)の各成分を第2剤に含有すると、アンモニアによる刺激臭の低減効果がより高くなるため好ましい。
【0037】
本発明の2剤式酸化染毛剤は、上記必須成分の他に、化粧品等に常用される成分や添加剤を含有してよい。このような成分や添加剤としては、例えば、界面活性剤、油剤、多価アルコール、安定剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、溶剤、緩衝剤などが挙げられる。これらの成分を、本発明の効果を損なわない範囲で自由に組み合わせて適宜含有することができる。
【0038】
〔界面活性剤〕
本発明の2剤式酸化染毛剤において、十分な安定性、操作性、染色性を得るために、第1剤および第2剤の少なくとも一方は、界面活性剤を含有してよい。界面活性剤として、例えば、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを含有することができる。
【0039】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ミリスチン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル、イソステアリン酸ポリグリセリル、オレイン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0040】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルアンモニウム、塩化オクチルジヒドロキシエチルメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(12〜15)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(14〜18)ジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジ(ポリオキシエチレン)オレイルメチルアンモニウム、塩化ステアリルジヒドロキシエチルベタインナトリウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ポリオキシエチレン(1)ポリオキシプロピレン(25)ジエチルメチルアンモニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウム、臭化アルキルイソキノリニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリンなどが挙げられる。
【0041】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、N−アシル−L−グルタミン酸ジエタノールアミン、N−アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、イセチオン酸ナトリウム、ウンデシレノイルアミドエチルスルホコハク酸二ナトリウム、オクチルフェノキシジエトキシエチルスルホン酸ナトリウム、オレオイルザルコシン、オレオイルメチルタウリンナトリウム、カルボキシ化ポリオキシエチレントリデシルエーテル、L−グルタミン酸トリエタノールアミン硬化牛脂脂肪酸アミド、L−グルタミン酸ナトリウム硬化牛脂脂肪酸アミド、L−グルタミン酸ナトリウムヤシ油脂肪酸アミド、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸ナトリウム、ジウンデシレノイルアミドエチルスルホコハク酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、ステアロイル−L−グルタミン酸二ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミドエステル二ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、セチル硫酸ジエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、セトステアリル硫酸ナトリウム、デキストラン硫酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、トリデシル硫酸トリエタノールアミン、N−パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ジエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、ミリストイルメチルアミノ酢酸ナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム、ヤシ油脂肪酸・牛脂脂肪酸−L−グルタミン酸ナトリウムアミド、N−ヤシ油脂肪酸−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸−L−グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシン、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸トリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンカリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸エタノールアミン、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ジエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン、ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルβ−アラニンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。
【0042】
両性界面活性剤としては、例えば、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシノイル−カルボキシルメトキシエチルカルボキシメチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ウンデシル−N−ヒドロキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ステアリルジメチルベタインナトリウム、ステアリルベタイン、ビス(ステアリル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリン)クロル酢酸錯体、ヤシ油アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ヤシ油アルキルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸−N−カルボキシメトキシエチル−N−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸−N−カルボキシメトキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムジナトリウムラウリル硫酸、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸トリエタノールアミン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムなどが挙げられる。
【0043】
これらの界面活性剤を単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。その含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されるものではないが、より良好な安定性、操作性、染色性を得ることができるため、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.1重量%以上の含有量が好ましく、1重量%以上の含有量がより好ましい。また、より良好な安定性、操作性、染色性を得ることができるため、10重量%以下の含有量が好ましく、8重量%以下の含有量がより好ましい。
【0044】
界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤を使用すると、染毛中および染毛後の感触が良くなる点において好ましい。また、非イオン性界面活性剤を使用すると、製剤の安定性がより向上する点において好ましい。
【0045】
〔油剤〕
本発明の2剤式酸化染毛剤において、毛髪に湿潤および保湿、柔軟作用を与えるために、第1剤および第2剤の少なくとも一方は、油剤を含有することができる。油剤としては、例えば、オリーブ油、ゴマ油、ヒマシ油、ヤシ油、アボガド油、マカデミアナッツ油、シア脂などの油脂、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、固形パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、スクワランなどの炭化水素、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸、ホホバ油、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、乳酸ミリスチルなどのエステルなどが挙げられる。また、高重合メチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0046】
これらの油剤を単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。その含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではないが、 毛髪に湿潤、保湿および柔軟作用を与えるため、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また、第1剤と第2剤との合計重量に対して10重量%を超えて含有しても、それ以上の湿潤、保湿および柔軟作用は得にくいため、10重量%以下の含有量が好ましく、8重量%以下の含有量がより好ましい。
【0047】
〔多価アルコール〕
本発明の2剤式酸化染毛剤において、低温安定性、染料の溶解性を向上させるために、第1剤および第2剤の少なくとも一方は、溶剤として多価アルコールを含有してよい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。
【0048】
これらの多価アルコールを単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。その含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではないが、より良い低温安定性、染料の溶解性を得るために、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、第1剤と第2剤との合計重量に対して30重量%を超えて含有しても、それ以上の低温安定性、染料の溶解性は得にくいため、30重量%以下の含有量が好ましく、20重量%以下の含有量がより好ましい。
【0049】
〔安定剤〕
本発明の2剤式酸化染毛剤において、過酸化水素の安定性を向上させるために、第2剤は安定剤を含有してよい。安定剤としては、例えば、リン酸、ピロリン酸、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、アセトアニリド、スズ酸ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸、フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0050】
これらの安定剤を単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。その含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではないが、過酸化水素の安定性をより向上させるためには、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.00005重量%以上が好ましく、0.0001重量%以上がより好ましい。また、第1剤と第2剤との合計重量に対して5重量%を超えて含有しても、それ以上の過酸化水素の安定性は得にくいため、5重量%以下の含有量が好ましく、2重量%以下の含有量がより好ましい。
【0051】
〔酸化防止剤・金属封鎖剤〕
本発明の2剤式酸化染毛剤は、混合して使用する前に酸化染料が酸化され、発色することを抑えるために、酸化防止剤を含有してよい。酸化防止剤としては、例えば、チオグリコール酸、チオグリコール酸カルシウム、チオグリコール酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸アンモニウム、没食子酸プロピル、トコフェロール、L−システイン、ホモシステイン、N−アセチル−L−システインなどが挙げられる。また、混合して使用する前に金属イオンにより酸化染料が発色することを防止するために、金属封鎖剤を含有してよい。金属封鎖剤としては、例えば、エデト酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0052】
〔溶剤・緩衝剤〕
本発明の2剤式酸化染毛剤は、染料の溶解性を向上させるために、溶剤や緩衝剤を含有してよい。溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低分子アルコールが挙げられる。緩衝剤としては、例えば、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩が挙げられる。
【0053】
〔その他の成分〕
本発明の2剤式酸化染毛剤は、上記成分の他に、例えば、毛髪保護剤、増粘剤、湿潤剤、浸透剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤、着香料、着色料、養毛剤などの化粧品等に常用される成分や添加剤を含有してよい。これらの成分や添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で自由に組み合わせて適宜含有することができる。
【0054】
〔調製方法〕
本発明の2剤式酸化染毛剤は、公知の方法により調製することができる。例えば、前述の成分を、水に溶解、混合するか、必要に応じて一部の成分を加温後攪拌混合し、その後冷却して残りの成分を加え攪拌混合することによって、第1剤および第2剤を調製することができる。水としては通常、精製水が用いられる。水の含有量は、各成分を所定量含有した場合の残部であり、好ましくは第1剤又は第2剤の全重量に対して、それぞれ10重量%以上、95重量%以下程度であるが、各成分の種類、含有量等により適宜調整される。
【0055】
〔使用方法〕
本発明における2剤式酸化染毛剤は、公知の方法、例えば、使用直前に第1剤と第2剤を混合し、これを毛髪に塗布するなどして、染毛に使用することができる。染毛時間は、酸化染料の種類や量、毛髪への塗布量、希望の染着度合によって、適宜調整されるが、5分以上、好ましくは5〜50分、より好ましくは10〜45分である。
【0056】
本発明の2剤式酸化染毛剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、クリ−ム状、液状、ゲル状、フォーム状等の剤型にすることができるが、これらの剤型に限定されるものではない。また、第1剤がクリーム状、第2剤が液状など、互いに異なる形態であってもよく、第1剤と第2剤の混合比も問わない。
【実施例】
【0057】
次に本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、含有量は重量%で示す。本発明の2剤式酸化染毛剤について、表1および2に示す組成を有する第1剤および第2剤を常法により調製した。
【0058】
調製した各組成物の乳化安定性、第1剤と第2剤とを混合して使用した際のアンモニアによる刺激臭を、以下の方法により評価した。
【0059】
〔乳化安定性の評価方法〕
調製した第1剤の組成物を室温で1ヶ月間静置した後、組成物の乳化状態を目視にて観察した。得られた結果を表1に示す。
なお、表1中、
◎:乳化状態が極めて良く、変化は認められない
○:乳化状態が良く、変化は認められない
△:乳化状態が粗く、水または油の分離が僅かに認められる
×:乳化状態が悪く、水または油の分離が認められる
を示す。
【0060】
〔アンモニアによる刺激臭の評価方法〕
得られた各組成物のうち、第1剤(1)〜(3)、(5)、(6)と、第2剤(I)〜(III)とを、表3に示す組み合わせで用いた。第1剤と第2剤とを1:1の重量比で、使用直前に、室温で、むらがなくなるまで刷毛で十分に混合し、試料とした。評価の際、各試料について、さらに数回刷毛で混合しながら、においを確認した。
【0061】
得られた結果を表3に併せて示す。
なお、表3中、
◎:刺激臭をほとんど感じない
○:刺激臭をわずかに感じる
△:刺激臭を感じる
×:刺激臭をかなり感じる
を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
表1の結果から明らかなように、第1剤(1)〜(3)は第1剤(4)〜(6)と比較して、良好な乳化安定性を確保できた。この結果より、第1剤(1)〜(3)は、上記の成分(A)〜(D)を含有することにより、毛髪を濃く染色するに十分な量の染料を含有しても、良好な乳化安定性を確保できることがわかる。中でも第1剤(1)は、極めて良好な乳化状態であった。また、第1剤(2)および(3)は、いずれも良好な乳化状態であり、(2)は(3)と比較して、より良好な乳化状態であった。一方、上記の成分(A)〜(D)のいずれかを含有しない第1剤(4)〜(6)では、十分な乳化安定性を確保できなかった。
【0066】
また、表3の結果から明らかなように、実施例1〜9の場合、比較例1〜6よりもアンモニアによる刺激臭の低減効果が高かった。この結果より、第1剤に上記の成分(A)〜(D)を含有することで、アンモニアによる刺激臭を低減できることが明らかである。特に、実施例1、実施例4、実施例7の場合に、アンモニアによる刺激臭の特に優れた低減効果が得られた。この結果より、第1剤に上記の成分(A)〜(D)、第2剤に上記の成分(B)〜(D)を含有することにより、刺激臭をより低減できることがわかる。
【0067】
一方、成分(A)〜(D)のいずれかを第1剤に含有しない比較例1〜6の場合は、アンモニアによる刺激臭を低減する効果が低く、従来の市販品レベルではあるものの、上記の組み合せと比較して劣っていた。
【0068】
本発明による2剤式酸化染毛剤は、上記のように、アンモニアによる刺激臭が低減された染毛剤である。さらに、処方の自由度が高く、毛髪を濃く染色するに十分な量の染料を含有しても、良好な乳化安定性を確保できるという効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料およびアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とからなり、
(A)ポリオキシエチレン鎖長が50以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、
(B)高級アルコール、
(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)のポリオキシエチレン鎖長より短いポリオキシエチレン鎖長を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル、および、
(D)グリセリン脂肪酸エステル
の各成分を第1剤に含有し、該染料の含有量が、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.5重量%以上である2剤式酸化染毛剤。
【請求項2】
(B)、(C)および(D)の各成分を、さらに第2剤に含有する、請求項1に記載の染毛剤。

【公開番号】特開2012−240943(P2012−240943A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111173(P2011−111173)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】