2次元コード,2次元コードの形成装置及び形成方法並びに2次元コードの読取装置及び読取方法
【課題】 データの秘匿性を高めると共に、読み取り操作等の運用が容易な2次元コード,2次元コードの形成装置及び形成方法並びに2次元コードの読取装置及び読取方法を提供する。
【解決手段】 暗色及び明色の単位セルがマトリクス状に配列された2次元コード1であって、2次元コード1は、暗色の単位セル3,及び明色の単位セル2の配列によって、元データを暗号化した暗号化データを表わし、暗色の単位セル3には、基準となる形状と異なる形状を有する変形セル3aが含まれ、変形セル3aは、暗号化データから元データを復号化するための復号鍵を表わす。
【解決手段】 暗色及び明色の単位セルがマトリクス状に配列された2次元コード1であって、2次元コード1は、暗色の単位セル3,及び明色の単位セル2の配列によって、元データを暗号化した暗号化データを表わし、暗色の単位セル3には、基準となる形状と異なる形状を有する変形セル3aが含まれ、変形セル3aは、暗号化データから元データを復号化するための復号鍵を表わす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元コード,2次元コードの形成装置及び形成方法並びに2次元コードの読取装置及び読取方法に係り、特にデータの秘匿性を有する2次元コード、該2次元コードの形成装置及び形成方法、並びに前記2次元コードの読取装置及び読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、白黒の明暗模様のマトリクスで表わされる2次元コードに情報を変換する技術が知られている。そして、機密保持に有効な2次元コードを利用した暗号化情報格納方法および装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の技術は、暗号化対象であるデータ,パスワードをそれぞれ2次元コード化し、これら2つの2次元コードをもとに所定の処理を行うことにより、暗号化データの2次元コード,復号鍵となる2次元コードの2つの2次元コードを生成するものである。
【0004】
これら暗号化データの2次元コード,復号鍵となる2次元コードは、同じ印刷物に印刷される。これらの2次元コードは、2次元コードリーダーで読み取っても、第三者には意味不明のデータである。
もとのデータを復号化するときには、これら2つの2次元コードを読み取って、生成時と逆の処理を行う必要がある。
【0005】
また、数十μmオーダーの微細なセルからなる2次元コードを物品表面に形成する技術として、ドットマーキング方式の2次元コード形成方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2の2次元コード形成方法によれば、レーザビームを間欠的に制御して、被マーキング体表面に焼付けることにより直径が数十μmのドットが形成される。セルは、このドットの焼付け位置を精度良く制御してn×m(n,mは自然数)の矩形状に整列させることにより形成される。
【0007】
そして、このセルをマトリクス状に配列することにより、全体としても高い位置精度を有する2次元コードが形成される。特許文献2の技術では、レーザビームを照射することによって2次元コードを形成することができるので、種々の素材からなる物品に対して2次元コードを付することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−188469号公報(第2−4頁、第1−5図)
【特許文献2】特許第2913475号公報(第1−4頁、第1−7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1の技術では、暗号化により、2次元コードの有するデータの秘匿性を高めることはできるが、対象となるデータを有する2次元コードと、復号鍵となる2次元コードを一対のものとして扱わなくてはならない。したがって、書込み時には、復号鍵を表わす2次元コード用の余分のスペースが必要になるという不都合があり、読込み時には、2つの2次元コードをそれぞれ読み取る操作が必要になるので処理に手間が掛かるという不都合があった。
【0010】
また、特許文献2の技術では、種々の素材からなる物品に対して2次元コードを付することができるものの、その2次元コードの有するデータを秘匿することはできなかった。
【0011】
本発明の目的は、上記問題点を解決することにあり、データの秘匿性を高めると共に、読み取り操作等の運用が容易な2次元コード,2次元コードの形成装置及び形成方法並びに2次元コードの読取装置及び読取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、本発明によれば、暗色及び明色の単位セルがマトリクス状に配列された2次元コードであって、該2次元コードは、前記暗色及び明色の単位セルの配列によって、元データを暗号化した暗号化データを表わし、前記暗色の単位セルには、基準となる形状又は基準となる濃度と異なる形状又は濃度を有する変形セルが含まれ、該変形セルは、前記暗号化データから前記元データを復号化するための復号鍵を表わすことにより解決される。
【0013】
本発明の2次元コードは、通常の2次元コードと同様に暗色及び明色の単位セルがマトリクス状に配列されたものであるが、通常の2次元コードと異なり、本発明の2次元コードを構成する暗色の単位セルには、基準となる形状又は基準となる濃度と異なる形状又は濃度を有する変形セルが含まれる。
【0014】
本発明の2次元コードは、暗号化データを単位セルの配列により表わしており、暗号化データは、復号鍵を用いることによって元データに復号化することができる。そして、変形セルは、この復号鍵を表わしている。
【0015】
したがって、本発明の2次元コードは、通常の2次元コードリーダーで読み取ると、第三者には意味不明な暗号化データが出力されるだけであり、元データの秘匿性が確保される。
【0016】
そして、暗号化データを復号化するための復号鍵は、2次元コード内に埋め込まれた変形セルで表わされる。このように、本来のデータ部分と復号鍵を表わす部分とが、一箇所に集中しているので、取扱いやマーキングする上で、運用が煩雑とならない。また、一箇所に集中しているので、これらを別々に読み取る動作が不要となり、読み取り操作が簡単となる。
【0017】
また、前記基準となる形状を有する暗色の単位セルは、レーザビームの照射により形成されるドットをn×m(但しn、mは自然数)に縦横に配置して形成され、前記変形セルは、前記n×m(但しn、mは自然数)に縦横に配置されるドットのうち、1又は2以上のドットが欠落した状態に形成されてなるように構成することが可能である。
【0018】
このように、レーザビームによるドットマーキング方式によって2次元コードを形成することにより、セルを構成する各ドットを精度良く配置することが可能であり、変形セルによって形成される埋込情報の読み取り誤差を極めて低減することができる。
【0019】
また、前記基準となる濃度を有する暗色の単位セルは、レーザビームの照射により形成されるドットをn×m(但しn、mは自然数)に縦横に配置して形成され、前記変形セルは、形成される前記ドットの大きさ又は数が、前記基準となる濃度を有する暗色の単位セルと異なるように構成することが可能である。
【0020】
このように、レーザビームによるドットマーキング方式によって2次元コードを形成することにより、セルを構成するドットの大きさやステップサイズを変更することにより、暗色セルの濃度を変更することが可能である。このように、暗色セルの濃度を変更することにより、濃度が異なる変形セルを構成することができる。
【0021】
上記2次元コードは、前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルを記憶する記憶部と、前記暗号化データを2次元コード化する処理,前記鍵変換テーブルに基づいて記号からなる前記復号鍵を前記変形セルに変換する処理,前記暗号化データが変換された2次元コードを構成する暗色の単位セルと前記復号鍵が変換された変形セルとを置き換える処理,を行う制御部と、を備える2次元コードの形成装置によって形成することができる。
【0022】
また、上記2次元コードは、前記暗号化データを取得する工程と、前記暗号化データを2次元コード化する工程と、前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルに基づいて、記号からなる前記復号鍵を前記変形セルに変換する工程と、前記暗号化データが変換された2次元コードを構成する暗色の単位セルと前記復号鍵が変換された変形セルとを置き換える工程と、を備える2次元コードの形成方法によって形成することができる。
【0023】
また、上記2次元コードは、この2次元コードを取り込む取込部と、前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルを記憶する記憶部と、前記取込部から取り込まれた2次元コードから前記変形セルを抽出して前記鍵変換テーブルに基づいて記号からなる前記復号鍵を算出する処理,前記取込部から取り込まれた2次元コードを逆変換して前記暗号化データを算出する処理,該復号鍵を用いて前記暗号化データを復号化する処理,を行う制御部と、を備える2次元コードの読取装置によって読み取ることができる。
【0024】
また、上記2次元コードは、この2次元コードを取り込む工程と、取り込まれた2次元コードから前記変形セルを抽出して、前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルに基づいて記号からなる前記復号鍵を算出する工程と、取り込まれた2次元コードを逆変換して前記暗号化データを算出する工程と、前記復号鍵を用いて前記暗号化データを復号化する工程と、を備える2次元コードの読取方法によって読み取ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の2次元コードによれば、元データが暗号化された暗号化データを、2次元コード化して、暗色及び明色の単位セルの配列によって暗号化データを表わすと共に、この2次元コードを構成する変形セルによって暗号化データを復号するための復号鍵を表わすことができる。
【0026】
これにより、2次元コードの秘匿性を向上させることができる。また、復号鍵が2次元コード内に埋め込まれているので、取扱いやマーキングする上で、運用が煩雑とならない。さらに、復号鍵が2次元コード内に埋め込まれているので、復号鍵を別途読み取る動作が不要となり、読み取り操作が簡単となる。
【0027】
このように本発明では、データの秘匿性を高めると共に、読み取り操作等の運用が容易な2次元コード,2次元コードの形成装置及び形成方法並びに2次元コードの読取装置及び読取方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材、配置、構成等は、本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0029】
図1〜図15は、本発明の一実施形態に係るものであり、図1はレーザマーキング装置の全体構成を示す説明図、図2はレーザマーカーの構成を示す説明図、図3は読取装置の構成を示す説明図、図4は2次元コードの説明図、図5は2次元コードの変形セルの説明図、図6は変形セルの説明図、図7は暗号鍵を埋め込む処理の説明図、図8はレーザマーキング工程の流れ図、図9は暗号化処理の流れ図、図10は暗号鍵埋込処理の流れ図、図11は2次元コードの読取工程の流れ図、図12はトリミング処理の説明図、図13,図14は2次元コード化処理の流れ図,説明図、図15は埋込情報復号化処理の流れ図である。
【0030】
本発明の2次元コードは、元データを暗号鍵によって暗号化し、暗号化されたデータ(以下、「暗号化データ」という)を2次元コード化したものである。そして、本発明の2次元コードには、復号鍵が透かし情報として埋め込まれている。以下に示す実施の形態では、暗号鍵が、復号鍵を兼用する構成である。
【0031】
本発明の2次元コードは、一般の2次元コードリーダーで読み取ると、意味不明の暗号化データが表示されるだけであり、その2次元コードが有するデータを解読することはできない。
したがって、本発明の2次元コードでは、第三者にデータの内容を知られることなく、秘匿した状態に保持することができる。
【0032】
また、本発明の2次元コードには、透かし情報として、暗号鍵が埋め込まれているので、他の箇所に印字等された暗号鍵を別途取得する必要が無い。したがって、本発明の2次元コードは、2次元コードのみでデータを復号化することができるので、取扱いが容易である。
【0033】
本発明の2次元コードの形成装置は、上記2次元コードを生成するものであり、元データを取得して、取得した元データを暗号鍵を用いて暗号化して暗号化データを算出し、この暗号化データを2次元コードに変換すると共に、その2次元コードに暗号鍵を埋め込むことができるものである。
【0034】
また、本発明の2次元コードの読取装置は、暗号鍵が埋め込まれた2次元コードから、透かし情報としての暗号鍵を抽出すると共に、2次元コードを読み取って暗号化データを取得し、暗号化データを暗号鍵によって復号化することができるものである。
【0035】
上記2次元コードは、暗色及び明色の単位セルがマトリクス状に配列されてなるものである。2次元コードの種別としては、例えば、QRコード,Data Matrix等である。
そして、暗号鍵は、基準となる単位セルとは異なる形状の変形セルの組合せによって表現される。暗号鍵は、基準となる単位セルの代わりに変形セルを配置することにより、2次元コードに埋め込み情報(透かし情報)として埋め込まれる。
【0036】
本実施形態に係る2次元コードは、ドットマーキング方式により形成されたものである。ドットマーキング方式とは、被マーキング体に複数のドットを形成することにより2次元コードを作成する方式を指し、本明細書においては、レーザマーキング方式及び印刷方式の双方を含むものとする。また、印刷方式によれば、矩形状のセル又は変形セルを、ドットマーキングによらずに印刷表示してもよい。
【0037】
なお、レーザマーキングによるドットマーキング方式とは、被マーキング体の表面に平面視で略円形のマーキング痕であるドットを複数形成することによりマーキングを行う方式である。
【0038】
図1は、本実施形態に係るレーザマーキング装置S1の全体構成を示す説明図である。
このレーザマーキング装置S1は、2次元コード、文字、図形、記号、画像などのマーキングパターンをワーク(被マーキング体)Wにマーキングするのに好適に使用されるものであり、主に制御装置Aと、レーザマーカーBとから構成されている。レーザマーキング装置S1は、2次元コードの形成装置に相当する。
【0039】
制御装置Aは、マーキングすべき元データの取得、暗号鍵の指定、取得した元データの暗号化、暗号化データのマーキングパターンへの変換、マーキングパターンへの暗号鍵の埋め込み、マーキングパターンの出力等を行う。
【0040】
制御装置Aは、元データ等を入力するための入力部10と、CRT,LCD等の表示部11と、プリンタ等から構成される出力部12と、通信回線Iとの入出力インターフェースである入出力部13と、各種データ等を記憶する記憶部16と、これらを制御する制御部としてのCPU14等から構成されている。本実施形態における制御装置Aは、パーソナルコンピュータで構成することができる。
【0041】
本例の制御装置Aでは、入力部10や入出力部13からマーキング用の元データを取り込むことができ、取り込まれた元データは記憶部16内に格納される。マーキング用の元データは、テキストデータ,画像データ等の電子データである。入力部10は、マウス,キーボード,スキャナ,タブレット,CCDカメラ,デジタルカメラ等から構成することが可能である。
【0042】
記憶部16は、全体の制御を行うための制御プログラム等を記憶する主記憶部と、一時的にデータを記憶する作業領域として使用されるRAMと、取り込んだデータや変換されたマーキングパターン等を格納するための記憶領域であるデータメモリ18等から構成されている。
【0043】
制御プログラムには、暗号鍵を用いて取り込まれた元データを暗号化する暗号化プログラム、暗号化データを2次元コード形式のマーキングパターンに変換するための変換プログラム、マーキングパターンに暗号鍵を埋め込む鍵埋込プログラム等が含まれる。
【0044】
主記憶部には、さらに、鍵変換テーブル17が記憶されている。鍵変換テーブル17には、復号鍵を兼用する暗号鍵の記号列を変形セルの組合せ列(配列)に変換するための変換データが記憶されている。
【0045】
また、記憶部16には、パラメータ情報が記憶されている。パラメータ情報は、レーザマーキングを行う際の条件を設定したものである。この条件としては、レーザ周波数、出力、印字回数、ビーム径、照射時間等がある。これらの条件は、レーザマーキングを行う際に設定され、CPU14により読み込まれる。
【0046】
また、2次元コードのサイズ、単位セルのサイズ、ドットの間隔であるステップサイズ、ドットの大きさ等の設定が、入力部10から行われる。CPU14は、これらの設定に基づいて、マーキングパターンを決定する。
【0047】
制御装置Aは、マーキングパターンをレーザマーカーBへ出力して、被マーキング体Wにマーキングパターンをレーザマーキングさせる。このとき、制御装置Aは、マーキングパターンを表わすデータと共に、マーキング条件を含む制御信号を送出する。
【0048】
制御装置AとレーザマーカーBは、ケーブルによって直接、接続する構成としてもよいし、無線LANやインターネット等の情報通信網を介して接続するように構成してもよい。
このように構成されていると、別の場所や遠隔地より指示及びデータを送信してレーザマーカーBを制御することが可能となる。例えば、制御室等に制御装置Aを設置し、作業室にレーザマーカーBを設置するような構成、本社に制御装置Aを設置し、各地の工場にレーザマーカーBを設置するような構成、が可能となる。
【0049】
レーザマーカーBは、従来公知のものであり、例えばYAGレーザ、CO2レーザ、YVO4レーザ、UVレーザ、グリーンレーザ等がある。
本実施形態では、制御装置AとレーザマーカーBとが1対1で設置されている構成を示しているが、制御装置Aに対して複数のレーザマーカーBを接続し、被マーキング材に応じて、適切なレーザ光を出射するレーザマーカーBが選択される構成としても良い。
【0050】
レーザマーカーBの一例として、本実施形態において使用されるYAGレーザ装置の構成を図2に示す。
レーザマーカーBにおいて、YAGレーザ発振機50から出力されたレーザ光は、レベリングミラー56により光路を変更され、アパーチャ55によりビーム径を絞られた後、ガリレオ式エキスパンダ57によりビーム径を広げられる。
更に、アパーチャ58によりビーム径を調整された後、アッテネータ46により減衰されてから、ガルバノミラー47により光路を変更及び調整され、fθレンズ59で集光されて、被マーキング体Wに照射される。
【0051】
YAGレーザ発振機50には、ピーク出力(尖頭値)の極めて高いパルスレーザ光を得るための超音波Qスイッチ素子43が設けられている。本例のレーザマーカーBでは、所定回数のQスイッチパルスで1個のドット4がマーキングされるように構成されている。
【0052】
YAGレーザ発振機50は、更に全面反射鏡51、内部アパーチャ52、ランプハウス53、内部シャッタ44、出力鏡54を備えており、YAGレーザ発振機50の出力側には外部シャッタ45が設けられている。
コントローラ42は、上記Qスイッチ素子43、内部シャッタ44、外部シャッタ45、アッテネータ46、ガルバノミラー47を、制御装置Aから送信されたデータ及び制御信号に基づいて制御する。
【0053】
次に、図3に本実施形態の読取装置S2の構成を示す。読取装置S2は、本体部Cとイメージ取込部Dとを備えて構成されている。
本体部Cは、操作信号や電子データ等を入力するための入力部30と、イメージ取込部Dによって読み取ったイメージデータやこれを復号化したデータを表示する表示部31と、イメージデータ及び復号化データの印字や電子媒体への出力等を行う出力部32と、記憶部36と、これらを制御する制御部としてのCPU34等から構成されている。
【0054】
イメージ取込部Dは、CCDカメラ等から構成され、本体部Cからの操作信号に基づいて2次元コードをデジタル画像として取り込んで、本体部Cへ出力するものである。入力部30から電子データとして2次元コードデータを取り込んでもよく、入力部30とイメージ取込部Dによって取込部を構成する。
【0055】
記憶部36は、制御プログラム等を記憶する主記憶部と、作業領域等として用いられるRAMと、イメージ取込部Dから取り込んだイメージデータやイメージデータを復号化したデータを記憶する記憶領域であるデータメモリ38等を備えている。
【0056】
制御プログラムには、2次元コードを符号データに逆変換する逆変換プログラム、2次元コードに含まれている埋め込み情報を読み取る鍵抽出プログラム、2次元コードから復号化されたデータを暗号鍵を用いて元データに復号化する復号化プログラム等が含まれる。
【0057】
主記憶部には、さらに、鍵変換テーブル37が記憶されている。
鍵変換テーブル37には、2次元コードに埋め込まれた変形セルの配列を記号の配列に変換するための変換データが記憶されている。
【0058】
次に、本実施形態の埋込情報(透かし情報)を備えた2次元コード1について説明する。
本実施形態の2次元コード1は、車両,電気・機械製品,建築物,カード等の物品全般に付すことができるラベルに表示されるものである。ラベルは、金属製,合成樹脂製,ガラス製のプレート等に付されていても良い。
【0059】
本例の2次元コード1は、例えば、車両に関する情報を暗号鍵を用いて暗号化し、その暗号化データを2次元コード化してマーキングしたものである。車両に関する情報には、機密情報を含んでいても良い。さらに、本例の2次元コード1には、上述のように復号鍵を兼用する暗号鍵が埋め込まれている。
【0060】
図4(A)は、2次元コード1の一例である。2次元コード1は、矩形状の単位セルである白色のセル2及び黒色のセル3が縦横にマトリクス状に配列されたものである。図4(A)では理解の容易のため10セル×10セルのマトリクス形状で表わしている。
【0061】
なお、本実施形態の2次元コード1は、ドットマーキング方式にてレーザマーキングにより形成されたものである。そして、図中、白色のセル2は被マーキング体Wの表面が直接露出しているものであり、黒色のセル3はレーザマーキングにより変色して形成されたものである。つまり、セル3は、マーキング(印刷含む)されたセルである。
【0062】
図4(B)は、黒色のセル3の拡大図である。セル3は、レーザマーカーBからのレーザビームによって形成された平面視略円形のドット4が、縦横にn×m(n,mは自然数)に配列され全体として矩形状に形成されている。本例のセル3の場合は、ドット4が10×10の配列となっている。
また、ドット4は直径が数十μm〜数百μm程度である。本例のセル3のドット4は、中心が直径に等しいステップサイズだけ水平及び垂直方向に離間して配列されており、セル3は略正方形に形成されている。
【0063】
このように所定のステップサイズごとに規則正しくドット4が配列されるよう、制御装置Aは、レーザマーカーBに形成すべき全てのドット4について位置情報,レーザ照射時間,ドット径等の制御情報を含んだ制御信号を送出している。これを受けてレーザマーカーBのコントローラ42は、上述のようにQスイッチ素子43、内部シャッタ44、外部シャッタ45、アッテネータ46、ガルバノミラー47を制御する。
【0064】
次に、本例の2次元コード1に埋め込まれた埋込情報(透かし情報)について説明する。
本例の2次元コード1には、図5に示すような変形セル3aが一部に含まれている。この変形セル3aは、基準となる黒色のセル3の一部が、欠落したように形成されたものである。すなわち、変形セル3aには、10ドット×10ドットのレーザ照射位置の一部に、ドット4が形成されていない領域がある。
【0065】
図5(A)の変形セル3aでは、下側端に2箇所のドット4の欠落領域がある。それぞれの欠落領域は、2ドット×2ドット分である。
つまり、本実施形態の2次元コード1は、白色のセル2及び黒色のセル3の矩形状の単位セルからなり、黒色の単位セル3には、基準となる矩形状の単位セルとは形状が異なる変形セル3aが含まれている。
【0066】
このような変形セル3aは、後述するように読取装置S2によって、図5(B)のように認識される。なお、本例では、2次元コード1をレーザビームによるドットマーキング方式にて形成しており、各ドット4の位置精度が高く、2次元コード1に含まれる変形セル3aの読み取り誤差が極めて低減されている。
【0067】
本例の変形セル3aは、2ドット×2ドット分の欠落領域を有するものである。そして、変形セル3aは、この欠落領域の配置によって記号を表わしている。図6に、各記号に対応付けられた変形セル3aを例示する。
【0068】
図6(A)〜(J)は、「0」〜「9」の10の記号に対応付けた形状を表わしている。同図(A)では、下端左寄りの白抜き部分を基準として、この部分のみが欠落している形状を「0」に対応付けている。そして、同図(B)〜(J)では、この欠落部分に加えてさらに別の欠落部分との組合せにより、「1」〜「9」の記号を表わしている。「1」〜「9」にかけて、別の欠落部分は反時計方向に移動するようになっている。
【0069】
本例では、上述のように、図6(A)〜(J)に示す変形セル3aによって0〜9の数字(記号)を表わしている。
このような変形セル3aと記号とを対応付けた対照データが、鍵変換テーブル17、37に記憶されている。
【0070】
本例では、1つの変形セル3aにつき、1つの記号を対応付けていたが、これに限らず、複数の変形セル3aの組合せによって多くの記号(数字、アルファベット、ひらがな、カタカナ、漢字等)を表わすようにしてもよい。
例えば、3つの変形セル3aの組合せによって1000(=10×10×10)通りの記号を表わすことができ、これらに数字、アルファベット等を対応付けることができる。
【0071】
2次元コード1は、上述のように白色のセル2と黒色のセル3(及び変形セル3a)とで構成されているが、セル3のうちの一部に変形セル3aを含ませることにより情報(暗号鍵)を埋め込んでいる。
【0072】
レーザマーキング装置S1では、読み込んだデータを指定された暗号鍵によって暗号化し、暗号化データを2次元コード形式のマーキングパターンに変換している。
そして、レーザマーキング装置S1では、暗号鍵が、鍵変換テーブル17によって、変形セル3aの配列に変換され、さらに、この変形セル3aの配列が、マーキングパターンの黒色のセル3に置き換えられる。
【0073】
図7は、暗号鍵を埋め込む処理の概要の説明図である。同図(A)に示すように、暗号鍵に「1234」が指定されたとする。そして、この暗号鍵は、レーザマーキング装置S1によって、鍵変換テーブル17に基づいて、同図(B)に示すような変形セル3aの配列に変換される。
【0074】
そして、この変形セル3aの配列は、同図(C)に示すように、黒色のセル3と置換されることにより、2次元コード1に埋め込まれる。
【0075】
なお、図7の例では、変形セル3aは、黒色のセル3が配列されるべき位置に、連続して配置されているが、これに限らず、変形セル3aは任意に配置してもよい。例えば、変形セル3aの間に黒色のセル3が複数配置されていてもよい。
【0076】
図7(C)に示された2次元コード1を読み取るときには、読取装置S2によって、2次元コードの一般的な読み取り手法にしたがって、2次元コード1を符号の配列に逆変換する。ただし、逆変換されたデータ(符号列)は、暗号化データであるから、一般に意味をなさない記号の羅列となる。
【0077】
一方、読取装置S2によって、変形セル3aは選択的に読み取られ、仮想的に図7(B)のように配列される。そして、読取装置S2は、鍵変換テーブル37に基づいて、変形セル3aの仮想的な配列を記号に変換する。図7(B)の場合は、「1234」に変換される。このようにして、埋め込まれていた暗号鍵を抽出することができる。
【0078】
また、例えば、2の変形セル3aの組合せによって記号を表わす場合には、変形セル3aの配列の頭から2つずつをペアにし、各ペアを記号に変換していけば、暗号鍵を抽出することができる。
そして、読取装置S2では、この暗号鍵に基づいて、上記意味をなさない記号の羅列である暗号化データが復号化される。
【0079】
次に、図8〜図10により、上記構成からなるレーザマーキング装置S1を用いて、ユーザーにより設定入力された情報を有する2次元コード1を被マーキング体Wにマーキングする方法について説明する。
【0080】
図8にレーザマーキング方法の工程の流れを示す。
はじめに、情報取得工程(ステップS10)において、被マーキング体Wにマーキングする元データを取得する。
すなわち、ユーザーが入力部10から元データを入力すると、この元データはデータメモリ18に一時的に記憶される。
【0081】
次に、暗号化工程(ステップS20)では、図9に示すように、まず、暗号鍵取得処理(ステップS21)が行われる。この暗号鍵取得処理では、ユーザーによって入力部10から暗号鍵の記号列(例えば、「1234」)が入力され、入力された暗号鍵の記号列が読み込まれてデータメモリ18に一時的に記憶される。
【0082】
ステップS21で暗号鍵が指定されると、続いて情報暗号化処理(ステップS22)が行われる。この処理では、ステップS10でデータメモリ18に記憶されたデータを、暗号鍵を用いて、所定の暗号化方法により暗号化する。本例のレーザマーキング装置S1では、暗号化プログラムによって暗号化が行われる。このとき、暗号化データは、データメモリ18に一時的に記憶される。
【0083】
暗号化工程が終了すると、2次元コード変換工程(ステップS30)が行われる。この工程では、ステップS22でデータメモリ18に記憶された暗号化データを、単位セルからなる2次元コードに変換する。この場合の単位セルは、変形セル3aを含まないセル2,3である。この2次元コード化は、変換プログラムに基づいて、公知の手法で行われる。
【0084】
このとき、データ量及びセル2,3の大きさから2次元コード1のサイズが設定される。そして、セル2,3の大きさ、ドット4の大きさ、ステップサイズ等が決定される。セル3は、ドットマーキング方式によりn×m(n,mは自然数)に配列されたドット4で形成されるので、n,mを適宜な値に設定してセルの大きさを選択することができる。
したがって、2次元コード1に含めるデータ量の大小にかかわらず、2次元コード1の大きさを一定とすることもできる。
【0085】
ステップサイズ等を決定することにより、2次元コード1にマーキングすべきドット4の位置情報が算出される。これら2次元コード1を決定する設定データは、データメモリ18に記憶される。
【0086】
次いで、暗号鍵埋込工程(ステップS40)が行われる。この工程では、図10に示すように、まず、暗号鍵コード変換処理が行われる(ステップS41)。この処理では、データメモリ18に記憶された暗号鍵の記号列を、鍵変換テーブル17に基づいて、変形セル3aの配列に変換する。
【0087】
そして、この変形セル3aの配列は、ステップS30で生成されたセル3の配置位置に、適宜にセル毎に分離され組み込まれる(ステップS42)。
【0088】
すなわち、本例では、あるセル3を変形セル3aに入れ替える場合、入れ替えることによって生じるドット4の欠落領域の位置情報が算出され、ステップ30で算出されたドット4の位置情報が書き換えられる。このように、2次元コード1に暗号鍵を埋め込む処理は、鍵埋込プログラムによって行われる。
【0089】
そして、ステップS50で2次元コード1は被マーキング体Wにレーザマーキングされる。制御装置AからレーザマーカーBへ、上記設定データと共に、制御信号が送出され、レーザマーカーBは、これらのデータに基づいて被マーキング体W上にレーザマーキングを行う。
【0090】
なお、本例では、暗号鍵コード変換処理(ステップS41)が、情報暗号化処理(ステップS22)の後に行われるようになっているが、暗号鍵コード変換処理(ステップS41)を情報暗号化処理(ステップS22)の前に行うようにしてもよい。
【0091】
次に、図11〜図15に基づいて、読取装置S2による2次元コード1の読取工程を示す。
先ず、2次元コード読取・記憶工程(ステップS100)において、製品等にマーキングされた2次元コードを読み取り、記憶する。本実施形態では、イメージ取込部Dにより2次元コード1を撮影することにより2次元コード1を取込み、このデータをビットマップデータ等の所定のデータ形式の画像データに変換してデータメモリ38に格納する。
【0092】
2次元コード1は、イメージ取込部Dのレンズと2次元コード1とが平行になるような状態で撮影されるのが望ましい。
例えば、2次元コード1が一部画面から欠如した状態で撮影された場合、撮影角度により2次元コード1が歪んだ状態で撮影された場合、ピントが合っていない状態で撮影された場合等、正確に2次元コード1を解析できないおそれがある場合には、エラー表示及び再撮影指示を表示部31に表示する。
【0093】
次いで、トリミング処理工程(ステップ110)が行われ、取り込んだ画像データの画像領域を確定する。
まず、2次元コード1を含む画像は、図12(A)のように取り込まれる。取り込まれた2次元コード1を含む画像は、図12(B)に示すように、画像領域確定線5が作成されると共に、X軸方向及びY軸方向に沿うように時計方向又は反時計方向に回転調整される。
【0094】
そして、最終的に図12(C)に示すように、画像領域確定線5に沿ってトリミングが施され、2次元コード1のみの画像が切り出される。この画像領域確定線5は、最小X座標が共通のセルの共通接線、最大X座標が共通のセルの共通接線、最大Y座標が共通のセルの共通接線、最小Y座標が共通のセルの共通接線、で構成される矩形状の図形を描く。
【0095】
次いで、2次元コード化処理(ステップS120)によって、取り込まれた画像を2次元コード1として認識する。
この処理では、まず、図13に示すようにドット分解処理(ステップS121)が行われる。ドット分解処理では、2次元コード1を構成する各ドット4が1個毎に分離される。図14には、分離されたドット4の拡大図が示されている。
ビットマップ形式で記憶されている2次元コード1の各ドット4の形状は、図14(A)に示すように境界線が階段状となる菱形に近い形状となる。
【0096】
セル変換処理工程(ステップS122)では、記憶されたビットマップデータの各セル(境界線が階段状の菱形形状)の重心の座標を抽出する。これは、セルを構成するピクセルの座標及び面積から演算される。
重心の座標が抽出した後、その重心から一番遠い頂点座標を抽出する。次いで、重心座標とその重心から一番遠い頂点座標までの距離を算出し、ドット4の半径とする。
【0097】
そして、図14(B)に示すように、算出された重心を中心として、算出された半径によって円を作成する。このようにして、図14(A)の菱形形状の図形は、図14(B)の円形状の図形に変換される。
さらに、図14(B)の円形状の図形を図14(C)の正方形に変換する。この正方形は、作成された図14(B)に示す円形状の図形と重心が同じで、各辺の長さは図14(B)に示す円形状の図形の半径の2倍(直径)である。すなわち、図14(B)に示す円形状の図形に外接する正方形である。この正方形を構成する2対辺はX軸と平行であるように形成され、他の2対辺はY軸と平行になるように形成される。
【0098】
このように、算出された重心座標と半径情報から、図14(A)に示す図形を、図14(B)に示す図形を介して図14(C)に示す正方形に変換する。この操作をマーキングされた全てのドット4に対して行なう。
なお、本実施形態においては、図14(A)に示す図形を、図14(B)に変換した後、図14(C)に示す正方形に変換したが、この変換方法に限られるものではない。すなわち、図14(A)に示す図形に対し輪郭抽出処理を行い、輪郭抽出処理によって得られた図形が内接する正方形を形成することにより変換を行ってもよい。
【0099】
そして、正方形に変換されたドット4の画像を結合して黒色のセル3,変形セル3aを形成する。このとき、セル3は、矩形状に認識される。また、図5(A)で示される変形セル3aは、図5(B)で示すような矩形の組合せからなる形状として認識される。
【0100】
そして、2次元コード生成処理(ステップS123)では、これら黒色のセル3,変形セル3aからなる2次元コード1を仮想的に形成する。変換過程で発生する座標のズレ等はこの段階で補正される。このとき、変形セル3aをセル3と同様に扱って、矩形セルで構成された完全な2次元コードを別途記憶するように構成してもよい。この場合は、不完全な形状の変形セル3aを有する2次元コード1と完全な形状のセル3のみを有する2次元コードの双方を記憶する。
【0101】
なお、本実施形態のセル3は、ドット4を10×10に配列した例であるが、欠落領域を有する変形セル3aと完全なセル3とを明確に区別できれば、ドット4の配列は10×10に限らない。
【0102】
なお、上述の2次元コード化処理(ステップS120)では、各ドット4を個々に切り出し、セル3又は変形セル3aを再構築して認識するため、変形セル3aの形状を確実に特定することができる。
ただし、セル3aの形状を特定できれば、上述のようにドット分解処理やセル変換処理を行わず、2次元コード1をセル毎に分離して認識し、さらにセル毎に輪郭を直接認識するように簡易に処理してもよい。
【0103】
次いで、2次元コード1に埋め込まれた暗号鍵の抽出が行われる(ステップS130)。この処理では、図15に示すように、2次元コード1のすべてのセルについて、配列順に変形セル3aであるか否かが判別される(ステップS131)。
【0104】
すなわち、鍵変換テーブル37には、変形セル3aの形状,変形セル3aと記号(又は文字)との対応及び記号列と文字との対応を表わす変換データが記憶されており、ステップS131では、対象のセルの形状が、鍵変換テーブル37に記憶された変形セル3aの形状の内、いずれかの形状と同一又は相似形若しくは同一又は相似形と評価できるか否かについて判別する。
【0105】
対象のセルの形状が、鍵変換テーブル37に記憶された変形セル3aの形状と同一又は相似形と評価できないときは(ステップS131;NO)、ステップS131を繰り返して次の順番のセルの判別が行われる。
【0106】
一方、対象のセルの形状が、鍵変換テーブル37に記憶された変形セル3aの形状と同一又は相似形と評価できると判別された場合(ステップS131;YES)、鍵変換テーブル37に基づいて、対象のセルの形状に対応する記号が選択され、データメモリ38に記憶される(ステップS132)。
【0107】
次にステップS133では、その対象のセルが2次元コード1のうち最後の順番に相当するセルであるか否かが判別される。そのセルが最後のセルでない場合は(ステップS133;NO)、次のセルに進むべくステップS131に戻る。
【0108】
一方、そのセルが最後のセルである場合は(ステップS133;YES)、2次元コード1に含まれる全ての変形セル3aに対応する記号が順に記憶されていることになるので、ステップS134に進む。
ステップS134では、この記憶された記号列について、鍵変換テーブル37に基づいて、文字列に変換する処理が行われる。なお、変形セル3aが直接、文字を表わしている場合は、ステップS134の処理を行う前に文字列が記憶されていることになる。
【0109】
このようにして抽出された埋込情報(復号鍵としての暗号鍵)は、データメモリ38に記憶される(ステップS134)。そして、データメモリ38に記憶された暗号鍵を表示部31に表示させたり、出力部32に出力したりすることができる。このように2次元コード1に埋め込まれた暗号鍵を符号化する処理は、鍵抽出プログラムによって行われる。
【0110】
次に、2次元コードの逆変換処理が行われる(ステップ140)。この処理は、ステップS123で生成された2次元コード1を、公知の方法で符号列に変換するものであり、本例では、逆変換プログラムに基づいて、文字列に変換される。ただし、この処理で得られる文字列は、暗号化データである。なお、この処理では、変形セル3aはセル3と同等に扱われる。
【0111】
そして、ステップS134で抽出された暗号鍵を用いて、復号化プログラムによって、暗号化データの復号化が行われる。これにより、元データが復元される。復号化されたデータは、データメモリ38に記憶される。
以上のようにして、読取装置S2によって、2次元コード1を読み取り、2次元コード1の有する情報を復号化して、表示及び出力させることができる。
【0112】
なお、上記実施の形態では、2次元コード1の読取工程において、ステップS130で暗号鍵を抽出してから、ステップS140で2次元コード1を文字列に変換し、得られた暗号化データを暗号鍵を用いて復号化しているが、これに限らず、ステップS120で2次元コード1を暗号化データに変換してから、ステップS130で暗号鍵を抽出し、続いて、ステップS140で暗号化データを暗号鍵を用いて復号化してもよい。
【0113】
なお、上記実施形態では、変形セル3aが複数種類設定されていたが、これに限らず、変形セル3aの種類は1種類であって、セル3との組合せのみによって文字情報を表わすようにしてもよい。例えば、セル3aと変形セル3aの間に位置するセル3の数に特定の意味を持たせるようにすることができる。また、変形セル3aが連続して形成された場合の変形セル3aの連続数に特定の意味を持たせるようにすることができる。
【0114】
なお、上記実施形態では、2次元コード1をドットマーキング方式で形成していることにより、微小な各セルを構成するドット4が位置精度良く配置される。これにより、変形セル3aを精度良く形成することができ、変形セル3aの読み取り精度が向上される。したがって、この方式にて2次元コードを形成することが望ましい。
【0115】
しかし、これに限らず、変形セル3aの精度を確保できれば、ベクトルマーキング方式で形成してもよい。また、上記実施形態では、レーザマーキング方式で2次元コードを形成しているが、印刷方式にて形成してもよい。
【0116】
また、上記実施の形態では、セル3に欠落領域を設けることにより、変形セル3aを形成していたが、これに限られるものではない。例えば、セル3を構成するドット4のステップサイズや直径を異ならせたものを、変形セル3aとすることもできる。この場合、変形セル3aは、基準となる濃度を有するセル3と濃度が異なることにより区別される。そして、濃度に応じて、鍵変換テーブル17,37に変形セル3aを登録しておくことができる。
【0117】
また、上記実施の形態では、データを暗号化するために用いる暗号鍵が、暗号化データを復号化するために用いる復号鍵を兼用する構成であった。しかし、これに限らず、暗号鍵と復号鍵とが別々であってもよい。
この場合、2次元コード1に埋め込まれるのは、暗号鍵ではなく、復号鍵となる。
【0118】
また、上記実施の形態では、2次元コードの形成装置に相当するレーザマーキング装置S1は、2次元コード1をワークWにマーキングするために、レーザマーカーBを備える構成であったが、これに限らず、プリンタ等によって2次元コード1を印字する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザマーキング装置の全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るレーザマーカーの構成を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る読取装置の構成を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る2次元コードの説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る2次元コードの変形セルの説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る変形セルの説明図である。
【図7】暗号鍵を埋め込む処理の説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るレーザマーキング工程の流れ図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る暗号化処理の流れ図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る暗号鍵埋込処理の流れ図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る2次元コードの読取工程の流れ図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るトリミング処理の説明図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る2次元コード化処理の流れ図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る2次元コード化処理の説明図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る埋込情報復号化処理の流れ図である。
【符号の説明】
【0120】
1 2次元コード
2,3 セル
3a 変形セル
4 ドット
5 画像領域確定線
10 入力部
11 表示部
12 出力部
13 入出力部
16 記憶部
17 鍵変換テーブル
18 データメモリ
30 入力部
31 表示部
32 出力部
36 記憶部
37 鍵変換テーブル
38 データメモリ
42 コントローラ
A 制御装置
B レーザマーカー
C 本体部
D イメージ取込部
I 通信回線
S1 レーザマーキング装置
S2 読取装置
W 被マーキング体
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元コード,2次元コードの形成装置及び形成方法並びに2次元コードの読取装置及び読取方法に係り、特にデータの秘匿性を有する2次元コード、該2次元コードの形成装置及び形成方法、並びに前記2次元コードの読取装置及び読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、白黒の明暗模様のマトリクスで表わされる2次元コードに情報を変換する技術が知られている。そして、機密保持に有効な2次元コードを利用した暗号化情報格納方法および装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の技術は、暗号化対象であるデータ,パスワードをそれぞれ2次元コード化し、これら2つの2次元コードをもとに所定の処理を行うことにより、暗号化データの2次元コード,復号鍵となる2次元コードの2つの2次元コードを生成するものである。
【0004】
これら暗号化データの2次元コード,復号鍵となる2次元コードは、同じ印刷物に印刷される。これらの2次元コードは、2次元コードリーダーで読み取っても、第三者には意味不明のデータである。
もとのデータを復号化するときには、これら2つの2次元コードを読み取って、生成時と逆の処理を行う必要がある。
【0005】
また、数十μmオーダーの微細なセルからなる2次元コードを物品表面に形成する技術として、ドットマーキング方式の2次元コード形成方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2の2次元コード形成方法によれば、レーザビームを間欠的に制御して、被マーキング体表面に焼付けることにより直径が数十μmのドットが形成される。セルは、このドットの焼付け位置を精度良く制御してn×m(n,mは自然数)の矩形状に整列させることにより形成される。
【0007】
そして、このセルをマトリクス状に配列することにより、全体としても高い位置精度を有する2次元コードが形成される。特許文献2の技術では、レーザビームを照射することによって2次元コードを形成することができるので、種々の素材からなる物品に対して2次元コードを付することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−188469号公報(第2−4頁、第1−5図)
【特許文献2】特許第2913475号公報(第1−4頁、第1−7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1の技術では、暗号化により、2次元コードの有するデータの秘匿性を高めることはできるが、対象となるデータを有する2次元コードと、復号鍵となる2次元コードを一対のものとして扱わなくてはならない。したがって、書込み時には、復号鍵を表わす2次元コード用の余分のスペースが必要になるという不都合があり、読込み時には、2つの2次元コードをそれぞれ読み取る操作が必要になるので処理に手間が掛かるという不都合があった。
【0010】
また、特許文献2の技術では、種々の素材からなる物品に対して2次元コードを付することができるものの、その2次元コードの有するデータを秘匿することはできなかった。
【0011】
本発明の目的は、上記問題点を解決することにあり、データの秘匿性を高めると共に、読み取り操作等の運用が容易な2次元コード,2次元コードの形成装置及び形成方法並びに2次元コードの読取装置及び読取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、本発明によれば、暗色及び明色の単位セルがマトリクス状に配列された2次元コードであって、該2次元コードは、前記暗色及び明色の単位セルの配列によって、元データを暗号化した暗号化データを表わし、前記暗色の単位セルには、基準となる形状又は基準となる濃度と異なる形状又は濃度を有する変形セルが含まれ、該変形セルは、前記暗号化データから前記元データを復号化するための復号鍵を表わすことにより解決される。
【0013】
本発明の2次元コードは、通常の2次元コードと同様に暗色及び明色の単位セルがマトリクス状に配列されたものであるが、通常の2次元コードと異なり、本発明の2次元コードを構成する暗色の単位セルには、基準となる形状又は基準となる濃度と異なる形状又は濃度を有する変形セルが含まれる。
【0014】
本発明の2次元コードは、暗号化データを単位セルの配列により表わしており、暗号化データは、復号鍵を用いることによって元データに復号化することができる。そして、変形セルは、この復号鍵を表わしている。
【0015】
したがって、本発明の2次元コードは、通常の2次元コードリーダーで読み取ると、第三者には意味不明な暗号化データが出力されるだけであり、元データの秘匿性が確保される。
【0016】
そして、暗号化データを復号化するための復号鍵は、2次元コード内に埋め込まれた変形セルで表わされる。このように、本来のデータ部分と復号鍵を表わす部分とが、一箇所に集中しているので、取扱いやマーキングする上で、運用が煩雑とならない。また、一箇所に集中しているので、これらを別々に読み取る動作が不要となり、読み取り操作が簡単となる。
【0017】
また、前記基準となる形状を有する暗色の単位セルは、レーザビームの照射により形成されるドットをn×m(但しn、mは自然数)に縦横に配置して形成され、前記変形セルは、前記n×m(但しn、mは自然数)に縦横に配置されるドットのうち、1又は2以上のドットが欠落した状態に形成されてなるように構成することが可能である。
【0018】
このように、レーザビームによるドットマーキング方式によって2次元コードを形成することにより、セルを構成する各ドットを精度良く配置することが可能であり、変形セルによって形成される埋込情報の読み取り誤差を極めて低減することができる。
【0019】
また、前記基準となる濃度を有する暗色の単位セルは、レーザビームの照射により形成されるドットをn×m(但しn、mは自然数)に縦横に配置して形成され、前記変形セルは、形成される前記ドットの大きさ又は数が、前記基準となる濃度を有する暗色の単位セルと異なるように構成することが可能である。
【0020】
このように、レーザビームによるドットマーキング方式によって2次元コードを形成することにより、セルを構成するドットの大きさやステップサイズを変更することにより、暗色セルの濃度を変更することが可能である。このように、暗色セルの濃度を変更することにより、濃度が異なる変形セルを構成することができる。
【0021】
上記2次元コードは、前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルを記憶する記憶部と、前記暗号化データを2次元コード化する処理,前記鍵変換テーブルに基づいて記号からなる前記復号鍵を前記変形セルに変換する処理,前記暗号化データが変換された2次元コードを構成する暗色の単位セルと前記復号鍵が変換された変形セルとを置き換える処理,を行う制御部と、を備える2次元コードの形成装置によって形成することができる。
【0022】
また、上記2次元コードは、前記暗号化データを取得する工程と、前記暗号化データを2次元コード化する工程と、前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルに基づいて、記号からなる前記復号鍵を前記変形セルに変換する工程と、前記暗号化データが変換された2次元コードを構成する暗色の単位セルと前記復号鍵が変換された変形セルとを置き換える工程と、を備える2次元コードの形成方法によって形成することができる。
【0023】
また、上記2次元コードは、この2次元コードを取り込む取込部と、前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルを記憶する記憶部と、前記取込部から取り込まれた2次元コードから前記変形セルを抽出して前記鍵変換テーブルに基づいて記号からなる前記復号鍵を算出する処理,前記取込部から取り込まれた2次元コードを逆変換して前記暗号化データを算出する処理,該復号鍵を用いて前記暗号化データを復号化する処理,を行う制御部と、を備える2次元コードの読取装置によって読み取ることができる。
【0024】
また、上記2次元コードは、この2次元コードを取り込む工程と、取り込まれた2次元コードから前記変形セルを抽出して、前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルに基づいて記号からなる前記復号鍵を算出する工程と、取り込まれた2次元コードを逆変換して前記暗号化データを算出する工程と、前記復号鍵を用いて前記暗号化データを復号化する工程と、を備える2次元コードの読取方法によって読み取ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の2次元コードによれば、元データが暗号化された暗号化データを、2次元コード化して、暗色及び明色の単位セルの配列によって暗号化データを表わすと共に、この2次元コードを構成する変形セルによって暗号化データを復号するための復号鍵を表わすことができる。
【0026】
これにより、2次元コードの秘匿性を向上させることができる。また、復号鍵が2次元コード内に埋め込まれているので、取扱いやマーキングする上で、運用が煩雑とならない。さらに、復号鍵が2次元コード内に埋め込まれているので、復号鍵を別途読み取る動作が不要となり、読み取り操作が簡単となる。
【0027】
このように本発明では、データの秘匿性を高めると共に、読み取り操作等の運用が容易な2次元コード,2次元コードの形成装置及び形成方法並びに2次元コードの読取装置及び読取方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材、配置、構成等は、本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0029】
図1〜図15は、本発明の一実施形態に係るものであり、図1はレーザマーキング装置の全体構成を示す説明図、図2はレーザマーカーの構成を示す説明図、図3は読取装置の構成を示す説明図、図4は2次元コードの説明図、図5は2次元コードの変形セルの説明図、図6は変形セルの説明図、図7は暗号鍵を埋め込む処理の説明図、図8はレーザマーキング工程の流れ図、図9は暗号化処理の流れ図、図10は暗号鍵埋込処理の流れ図、図11は2次元コードの読取工程の流れ図、図12はトリミング処理の説明図、図13,図14は2次元コード化処理の流れ図,説明図、図15は埋込情報復号化処理の流れ図である。
【0030】
本発明の2次元コードは、元データを暗号鍵によって暗号化し、暗号化されたデータ(以下、「暗号化データ」という)を2次元コード化したものである。そして、本発明の2次元コードには、復号鍵が透かし情報として埋め込まれている。以下に示す実施の形態では、暗号鍵が、復号鍵を兼用する構成である。
【0031】
本発明の2次元コードは、一般の2次元コードリーダーで読み取ると、意味不明の暗号化データが表示されるだけであり、その2次元コードが有するデータを解読することはできない。
したがって、本発明の2次元コードでは、第三者にデータの内容を知られることなく、秘匿した状態に保持することができる。
【0032】
また、本発明の2次元コードには、透かし情報として、暗号鍵が埋め込まれているので、他の箇所に印字等された暗号鍵を別途取得する必要が無い。したがって、本発明の2次元コードは、2次元コードのみでデータを復号化することができるので、取扱いが容易である。
【0033】
本発明の2次元コードの形成装置は、上記2次元コードを生成するものであり、元データを取得して、取得した元データを暗号鍵を用いて暗号化して暗号化データを算出し、この暗号化データを2次元コードに変換すると共に、その2次元コードに暗号鍵を埋め込むことができるものである。
【0034】
また、本発明の2次元コードの読取装置は、暗号鍵が埋め込まれた2次元コードから、透かし情報としての暗号鍵を抽出すると共に、2次元コードを読み取って暗号化データを取得し、暗号化データを暗号鍵によって復号化することができるものである。
【0035】
上記2次元コードは、暗色及び明色の単位セルがマトリクス状に配列されてなるものである。2次元コードの種別としては、例えば、QRコード,Data Matrix等である。
そして、暗号鍵は、基準となる単位セルとは異なる形状の変形セルの組合せによって表現される。暗号鍵は、基準となる単位セルの代わりに変形セルを配置することにより、2次元コードに埋め込み情報(透かし情報)として埋め込まれる。
【0036】
本実施形態に係る2次元コードは、ドットマーキング方式により形成されたものである。ドットマーキング方式とは、被マーキング体に複数のドットを形成することにより2次元コードを作成する方式を指し、本明細書においては、レーザマーキング方式及び印刷方式の双方を含むものとする。また、印刷方式によれば、矩形状のセル又は変形セルを、ドットマーキングによらずに印刷表示してもよい。
【0037】
なお、レーザマーキングによるドットマーキング方式とは、被マーキング体の表面に平面視で略円形のマーキング痕であるドットを複数形成することによりマーキングを行う方式である。
【0038】
図1は、本実施形態に係るレーザマーキング装置S1の全体構成を示す説明図である。
このレーザマーキング装置S1は、2次元コード、文字、図形、記号、画像などのマーキングパターンをワーク(被マーキング体)Wにマーキングするのに好適に使用されるものであり、主に制御装置Aと、レーザマーカーBとから構成されている。レーザマーキング装置S1は、2次元コードの形成装置に相当する。
【0039】
制御装置Aは、マーキングすべき元データの取得、暗号鍵の指定、取得した元データの暗号化、暗号化データのマーキングパターンへの変換、マーキングパターンへの暗号鍵の埋め込み、マーキングパターンの出力等を行う。
【0040】
制御装置Aは、元データ等を入力するための入力部10と、CRT,LCD等の表示部11と、プリンタ等から構成される出力部12と、通信回線Iとの入出力インターフェースである入出力部13と、各種データ等を記憶する記憶部16と、これらを制御する制御部としてのCPU14等から構成されている。本実施形態における制御装置Aは、パーソナルコンピュータで構成することができる。
【0041】
本例の制御装置Aでは、入力部10や入出力部13からマーキング用の元データを取り込むことができ、取り込まれた元データは記憶部16内に格納される。マーキング用の元データは、テキストデータ,画像データ等の電子データである。入力部10は、マウス,キーボード,スキャナ,タブレット,CCDカメラ,デジタルカメラ等から構成することが可能である。
【0042】
記憶部16は、全体の制御を行うための制御プログラム等を記憶する主記憶部と、一時的にデータを記憶する作業領域として使用されるRAMと、取り込んだデータや変換されたマーキングパターン等を格納するための記憶領域であるデータメモリ18等から構成されている。
【0043】
制御プログラムには、暗号鍵を用いて取り込まれた元データを暗号化する暗号化プログラム、暗号化データを2次元コード形式のマーキングパターンに変換するための変換プログラム、マーキングパターンに暗号鍵を埋め込む鍵埋込プログラム等が含まれる。
【0044】
主記憶部には、さらに、鍵変換テーブル17が記憶されている。鍵変換テーブル17には、復号鍵を兼用する暗号鍵の記号列を変形セルの組合せ列(配列)に変換するための変換データが記憶されている。
【0045】
また、記憶部16には、パラメータ情報が記憶されている。パラメータ情報は、レーザマーキングを行う際の条件を設定したものである。この条件としては、レーザ周波数、出力、印字回数、ビーム径、照射時間等がある。これらの条件は、レーザマーキングを行う際に設定され、CPU14により読み込まれる。
【0046】
また、2次元コードのサイズ、単位セルのサイズ、ドットの間隔であるステップサイズ、ドットの大きさ等の設定が、入力部10から行われる。CPU14は、これらの設定に基づいて、マーキングパターンを決定する。
【0047】
制御装置Aは、マーキングパターンをレーザマーカーBへ出力して、被マーキング体Wにマーキングパターンをレーザマーキングさせる。このとき、制御装置Aは、マーキングパターンを表わすデータと共に、マーキング条件を含む制御信号を送出する。
【0048】
制御装置AとレーザマーカーBは、ケーブルによって直接、接続する構成としてもよいし、無線LANやインターネット等の情報通信網を介して接続するように構成してもよい。
このように構成されていると、別の場所や遠隔地より指示及びデータを送信してレーザマーカーBを制御することが可能となる。例えば、制御室等に制御装置Aを設置し、作業室にレーザマーカーBを設置するような構成、本社に制御装置Aを設置し、各地の工場にレーザマーカーBを設置するような構成、が可能となる。
【0049】
レーザマーカーBは、従来公知のものであり、例えばYAGレーザ、CO2レーザ、YVO4レーザ、UVレーザ、グリーンレーザ等がある。
本実施形態では、制御装置AとレーザマーカーBとが1対1で設置されている構成を示しているが、制御装置Aに対して複数のレーザマーカーBを接続し、被マーキング材に応じて、適切なレーザ光を出射するレーザマーカーBが選択される構成としても良い。
【0050】
レーザマーカーBの一例として、本実施形態において使用されるYAGレーザ装置の構成を図2に示す。
レーザマーカーBにおいて、YAGレーザ発振機50から出力されたレーザ光は、レベリングミラー56により光路を変更され、アパーチャ55によりビーム径を絞られた後、ガリレオ式エキスパンダ57によりビーム径を広げられる。
更に、アパーチャ58によりビーム径を調整された後、アッテネータ46により減衰されてから、ガルバノミラー47により光路を変更及び調整され、fθレンズ59で集光されて、被マーキング体Wに照射される。
【0051】
YAGレーザ発振機50には、ピーク出力(尖頭値)の極めて高いパルスレーザ光を得るための超音波Qスイッチ素子43が設けられている。本例のレーザマーカーBでは、所定回数のQスイッチパルスで1個のドット4がマーキングされるように構成されている。
【0052】
YAGレーザ発振機50は、更に全面反射鏡51、内部アパーチャ52、ランプハウス53、内部シャッタ44、出力鏡54を備えており、YAGレーザ発振機50の出力側には外部シャッタ45が設けられている。
コントローラ42は、上記Qスイッチ素子43、内部シャッタ44、外部シャッタ45、アッテネータ46、ガルバノミラー47を、制御装置Aから送信されたデータ及び制御信号に基づいて制御する。
【0053】
次に、図3に本実施形態の読取装置S2の構成を示す。読取装置S2は、本体部Cとイメージ取込部Dとを備えて構成されている。
本体部Cは、操作信号や電子データ等を入力するための入力部30と、イメージ取込部Dによって読み取ったイメージデータやこれを復号化したデータを表示する表示部31と、イメージデータ及び復号化データの印字や電子媒体への出力等を行う出力部32と、記憶部36と、これらを制御する制御部としてのCPU34等から構成されている。
【0054】
イメージ取込部Dは、CCDカメラ等から構成され、本体部Cからの操作信号に基づいて2次元コードをデジタル画像として取り込んで、本体部Cへ出力するものである。入力部30から電子データとして2次元コードデータを取り込んでもよく、入力部30とイメージ取込部Dによって取込部を構成する。
【0055】
記憶部36は、制御プログラム等を記憶する主記憶部と、作業領域等として用いられるRAMと、イメージ取込部Dから取り込んだイメージデータやイメージデータを復号化したデータを記憶する記憶領域であるデータメモリ38等を備えている。
【0056】
制御プログラムには、2次元コードを符号データに逆変換する逆変換プログラム、2次元コードに含まれている埋め込み情報を読み取る鍵抽出プログラム、2次元コードから復号化されたデータを暗号鍵を用いて元データに復号化する復号化プログラム等が含まれる。
【0057】
主記憶部には、さらに、鍵変換テーブル37が記憶されている。
鍵変換テーブル37には、2次元コードに埋め込まれた変形セルの配列を記号の配列に変換するための変換データが記憶されている。
【0058】
次に、本実施形態の埋込情報(透かし情報)を備えた2次元コード1について説明する。
本実施形態の2次元コード1は、車両,電気・機械製品,建築物,カード等の物品全般に付すことができるラベルに表示されるものである。ラベルは、金属製,合成樹脂製,ガラス製のプレート等に付されていても良い。
【0059】
本例の2次元コード1は、例えば、車両に関する情報を暗号鍵を用いて暗号化し、その暗号化データを2次元コード化してマーキングしたものである。車両に関する情報には、機密情報を含んでいても良い。さらに、本例の2次元コード1には、上述のように復号鍵を兼用する暗号鍵が埋め込まれている。
【0060】
図4(A)は、2次元コード1の一例である。2次元コード1は、矩形状の単位セルである白色のセル2及び黒色のセル3が縦横にマトリクス状に配列されたものである。図4(A)では理解の容易のため10セル×10セルのマトリクス形状で表わしている。
【0061】
なお、本実施形態の2次元コード1は、ドットマーキング方式にてレーザマーキングにより形成されたものである。そして、図中、白色のセル2は被マーキング体Wの表面が直接露出しているものであり、黒色のセル3はレーザマーキングにより変色して形成されたものである。つまり、セル3は、マーキング(印刷含む)されたセルである。
【0062】
図4(B)は、黒色のセル3の拡大図である。セル3は、レーザマーカーBからのレーザビームによって形成された平面視略円形のドット4が、縦横にn×m(n,mは自然数)に配列され全体として矩形状に形成されている。本例のセル3の場合は、ドット4が10×10の配列となっている。
また、ドット4は直径が数十μm〜数百μm程度である。本例のセル3のドット4は、中心が直径に等しいステップサイズだけ水平及び垂直方向に離間して配列されており、セル3は略正方形に形成されている。
【0063】
このように所定のステップサイズごとに規則正しくドット4が配列されるよう、制御装置Aは、レーザマーカーBに形成すべき全てのドット4について位置情報,レーザ照射時間,ドット径等の制御情報を含んだ制御信号を送出している。これを受けてレーザマーカーBのコントローラ42は、上述のようにQスイッチ素子43、内部シャッタ44、外部シャッタ45、アッテネータ46、ガルバノミラー47を制御する。
【0064】
次に、本例の2次元コード1に埋め込まれた埋込情報(透かし情報)について説明する。
本例の2次元コード1には、図5に示すような変形セル3aが一部に含まれている。この変形セル3aは、基準となる黒色のセル3の一部が、欠落したように形成されたものである。すなわち、変形セル3aには、10ドット×10ドットのレーザ照射位置の一部に、ドット4が形成されていない領域がある。
【0065】
図5(A)の変形セル3aでは、下側端に2箇所のドット4の欠落領域がある。それぞれの欠落領域は、2ドット×2ドット分である。
つまり、本実施形態の2次元コード1は、白色のセル2及び黒色のセル3の矩形状の単位セルからなり、黒色の単位セル3には、基準となる矩形状の単位セルとは形状が異なる変形セル3aが含まれている。
【0066】
このような変形セル3aは、後述するように読取装置S2によって、図5(B)のように認識される。なお、本例では、2次元コード1をレーザビームによるドットマーキング方式にて形成しており、各ドット4の位置精度が高く、2次元コード1に含まれる変形セル3aの読み取り誤差が極めて低減されている。
【0067】
本例の変形セル3aは、2ドット×2ドット分の欠落領域を有するものである。そして、変形セル3aは、この欠落領域の配置によって記号を表わしている。図6に、各記号に対応付けられた変形セル3aを例示する。
【0068】
図6(A)〜(J)は、「0」〜「9」の10の記号に対応付けた形状を表わしている。同図(A)では、下端左寄りの白抜き部分を基準として、この部分のみが欠落している形状を「0」に対応付けている。そして、同図(B)〜(J)では、この欠落部分に加えてさらに別の欠落部分との組合せにより、「1」〜「9」の記号を表わしている。「1」〜「9」にかけて、別の欠落部分は反時計方向に移動するようになっている。
【0069】
本例では、上述のように、図6(A)〜(J)に示す変形セル3aによって0〜9の数字(記号)を表わしている。
このような変形セル3aと記号とを対応付けた対照データが、鍵変換テーブル17、37に記憶されている。
【0070】
本例では、1つの変形セル3aにつき、1つの記号を対応付けていたが、これに限らず、複数の変形セル3aの組合せによって多くの記号(数字、アルファベット、ひらがな、カタカナ、漢字等)を表わすようにしてもよい。
例えば、3つの変形セル3aの組合せによって1000(=10×10×10)通りの記号を表わすことができ、これらに数字、アルファベット等を対応付けることができる。
【0071】
2次元コード1は、上述のように白色のセル2と黒色のセル3(及び変形セル3a)とで構成されているが、セル3のうちの一部に変形セル3aを含ませることにより情報(暗号鍵)を埋め込んでいる。
【0072】
レーザマーキング装置S1では、読み込んだデータを指定された暗号鍵によって暗号化し、暗号化データを2次元コード形式のマーキングパターンに変換している。
そして、レーザマーキング装置S1では、暗号鍵が、鍵変換テーブル17によって、変形セル3aの配列に変換され、さらに、この変形セル3aの配列が、マーキングパターンの黒色のセル3に置き換えられる。
【0073】
図7は、暗号鍵を埋め込む処理の概要の説明図である。同図(A)に示すように、暗号鍵に「1234」が指定されたとする。そして、この暗号鍵は、レーザマーキング装置S1によって、鍵変換テーブル17に基づいて、同図(B)に示すような変形セル3aの配列に変換される。
【0074】
そして、この変形セル3aの配列は、同図(C)に示すように、黒色のセル3と置換されることにより、2次元コード1に埋め込まれる。
【0075】
なお、図7の例では、変形セル3aは、黒色のセル3が配列されるべき位置に、連続して配置されているが、これに限らず、変形セル3aは任意に配置してもよい。例えば、変形セル3aの間に黒色のセル3が複数配置されていてもよい。
【0076】
図7(C)に示された2次元コード1を読み取るときには、読取装置S2によって、2次元コードの一般的な読み取り手法にしたがって、2次元コード1を符号の配列に逆変換する。ただし、逆変換されたデータ(符号列)は、暗号化データであるから、一般に意味をなさない記号の羅列となる。
【0077】
一方、読取装置S2によって、変形セル3aは選択的に読み取られ、仮想的に図7(B)のように配列される。そして、読取装置S2は、鍵変換テーブル37に基づいて、変形セル3aの仮想的な配列を記号に変換する。図7(B)の場合は、「1234」に変換される。このようにして、埋め込まれていた暗号鍵を抽出することができる。
【0078】
また、例えば、2の変形セル3aの組合せによって記号を表わす場合には、変形セル3aの配列の頭から2つずつをペアにし、各ペアを記号に変換していけば、暗号鍵を抽出することができる。
そして、読取装置S2では、この暗号鍵に基づいて、上記意味をなさない記号の羅列である暗号化データが復号化される。
【0079】
次に、図8〜図10により、上記構成からなるレーザマーキング装置S1を用いて、ユーザーにより設定入力された情報を有する2次元コード1を被マーキング体Wにマーキングする方法について説明する。
【0080】
図8にレーザマーキング方法の工程の流れを示す。
はじめに、情報取得工程(ステップS10)において、被マーキング体Wにマーキングする元データを取得する。
すなわち、ユーザーが入力部10から元データを入力すると、この元データはデータメモリ18に一時的に記憶される。
【0081】
次に、暗号化工程(ステップS20)では、図9に示すように、まず、暗号鍵取得処理(ステップS21)が行われる。この暗号鍵取得処理では、ユーザーによって入力部10から暗号鍵の記号列(例えば、「1234」)が入力され、入力された暗号鍵の記号列が読み込まれてデータメモリ18に一時的に記憶される。
【0082】
ステップS21で暗号鍵が指定されると、続いて情報暗号化処理(ステップS22)が行われる。この処理では、ステップS10でデータメモリ18に記憶されたデータを、暗号鍵を用いて、所定の暗号化方法により暗号化する。本例のレーザマーキング装置S1では、暗号化プログラムによって暗号化が行われる。このとき、暗号化データは、データメモリ18に一時的に記憶される。
【0083】
暗号化工程が終了すると、2次元コード変換工程(ステップS30)が行われる。この工程では、ステップS22でデータメモリ18に記憶された暗号化データを、単位セルからなる2次元コードに変換する。この場合の単位セルは、変形セル3aを含まないセル2,3である。この2次元コード化は、変換プログラムに基づいて、公知の手法で行われる。
【0084】
このとき、データ量及びセル2,3の大きさから2次元コード1のサイズが設定される。そして、セル2,3の大きさ、ドット4の大きさ、ステップサイズ等が決定される。セル3は、ドットマーキング方式によりn×m(n,mは自然数)に配列されたドット4で形成されるので、n,mを適宜な値に設定してセルの大きさを選択することができる。
したがって、2次元コード1に含めるデータ量の大小にかかわらず、2次元コード1の大きさを一定とすることもできる。
【0085】
ステップサイズ等を決定することにより、2次元コード1にマーキングすべきドット4の位置情報が算出される。これら2次元コード1を決定する設定データは、データメモリ18に記憶される。
【0086】
次いで、暗号鍵埋込工程(ステップS40)が行われる。この工程では、図10に示すように、まず、暗号鍵コード変換処理が行われる(ステップS41)。この処理では、データメモリ18に記憶された暗号鍵の記号列を、鍵変換テーブル17に基づいて、変形セル3aの配列に変換する。
【0087】
そして、この変形セル3aの配列は、ステップS30で生成されたセル3の配置位置に、適宜にセル毎に分離され組み込まれる(ステップS42)。
【0088】
すなわち、本例では、あるセル3を変形セル3aに入れ替える場合、入れ替えることによって生じるドット4の欠落領域の位置情報が算出され、ステップ30で算出されたドット4の位置情報が書き換えられる。このように、2次元コード1に暗号鍵を埋め込む処理は、鍵埋込プログラムによって行われる。
【0089】
そして、ステップS50で2次元コード1は被マーキング体Wにレーザマーキングされる。制御装置AからレーザマーカーBへ、上記設定データと共に、制御信号が送出され、レーザマーカーBは、これらのデータに基づいて被マーキング体W上にレーザマーキングを行う。
【0090】
なお、本例では、暗号鍵コード変換処理(ステップS41)が、情報暗号化処理(ステップS22)の後に行われるようになっているが、暗号鍵コード変換処理(ステップS41)を情報暗号化処理(ステップS22)の前に行うようにしてもよい。
【0091】
次に、図11〜図15に基づいて、読取装置S2による2次元コード1の読取工程を示す。
先ず、2次元コード読取・記憶工程(ステップS100)において、製品等にマーキングされた2次元コードを読み取り、記憶する。本実施形態では、イメージ取込部Dにより2次元コード1を撮影することにより2次元コード1を取込み、このデータをビットマップデータ等の所定のデータ形式の画像データに変換してデータメモリ38に格納する。
【0092】
2次元コード1は、イメージ取込部Dのレンズと2次元コード1とが平行になるような状態で撮影されるのが望ましい。
例えば、2次元コード1が一部画面から欠如した状態で撮影された場合、撮影角度により2次元コード1が歪んだ状態で撮影された場合、ピントが合っていない状態で撮影された場合等、正確に2次元コード1を解析できないおそれがある場合には、エラー表示及び再撮影指示を表示部31に表示する。
【0093】
次いで、トリミング処理工程(ステップ110)が行われ、取り込んだ画像データの画像領域を確定する。
まず、2次元コード1を含む画像は、図12(A)のように取り込まれる。取り込まれた2次元コード1を含む画像は、図12(B)に示すように、画像領域確定線5が作成されると共に、X軸方向及びY軸方向に沿うように時計方向又は反時計方向に回転調整される。
【0094】
そして、最終的に図12(C)に示すように、画像領域確定線5に沿ってトリミングが施され、2次元コード1のみの画像が切り出される。この画像領域確定線5は、最小X座標が共通のセルの共通接線、最大X座標が共通のセルの共通接線、最大Y座標が共通のセルの共通接線、最小Y座標が共通のセルの共通接線、で構成される矩形状の図形を描く。
【0095】
次いで、2次元コード化処理(ステップS120)によって、取り込まれた画像を2次元コード1として認識する。
この処理では、まず、図13に示すようにドット分解処理(ステップS121)が行われる。ドット分解処理では、2次元コード1を構成する各ドット4が1個毎に分離される。図14には、分離されたドット4の拡大図が示されている。
ビットマップ形式で記憶されている2次元コード1の各ドット4の形状は、図14(A)に示すように境界線が階段状となる菱形に近い形状となる。
【0096】
セル変換処理工程(ステップS122)では、記憶されたビットマップデータの各セル(境界線が階段状の菱形形状)の重心の座標を抽出する。これは、セルを構成するピクセルの座標及び面積から演算される。
重心の座標が抽出した後、その重心から一番遠い頂点座標を抽出する。次いで、重心座標とその重心から一番遠い頂点座標までの距離を算出し、ドット4の半径とする。
【0097】
そして、図14(B)に示すように、算出された重心を中心として、算出された半径によって円を作成する。このようにして、図14(A)の菱形形状の図形は、図14(B)の円形状の図形に変換される。
さらに、図14(B)の円形状の図形を図14(C)の正方形に変換する。この正方形は、作成された図14(B)に示す円形状の図形と重心が同じで、各辺の長さは図14(B)に示す円形状の図形の半径の2倍(直径)である。すなわち、図14(B)に示す円形状の図形に外接する正方形である。この正方形を構成する2対辺はX軸と平行であるように形成され、他の2対辺はY軸と平行になるように形成される。
【0098】
このように、算出された重心座標と半径情報から、図14(A)に示す図形を、図14(B)に示す図形を介して図14(C)に示す正方形に変換する。この操作をマーキングされた全てのドット4に対して行なう。
なお、本実施形態においては、図14(A)に示す図形を、図14(B)に変換した後、図14(C)に示す正方形に変換したが、この変換方法に限られるものではない。すなわち、図14(A)に示す図形に対し輪郭抽出処理を行い、輪郭抽出処理によって得られた図形が内接する正方形を形成することにより変換を行ってもよい。
【0099】
そして、正方形に変換されたドット4の画像を結合して黒色のセル3,変形セル3aを形成する。このとき、セル3は、矩形状に認識される。また、図5(A)で示される変形セル3aは、図5(B)で示すような矩形の組合せからなる形状として認識される。
【0100】
そして、2次元コード生成処理(ステップS123)では、これら黒色のセル3,変形セル3aからなる2次元コード1を仮想的に形成する。変換過程で発生する座標のズレ等はこの段階で補正される。このとき、変形セル3aをセル3と同様に扱って、矩形セルで構成された完全な2次元コードを別途記憶するように構成してもよい。この場合は、不完全な形状の変形セル3aを有する2次元コード1と完全な形状のセル3のみを有する2次元コードの双方を記憶する。
【0101】
なお、本実施形態のセル3は、ドット4を10×10に配列した例であるが、欠落領域を有する変形セル3aと完全なセル3とを明確に区別できれば、ドット4の配列は10×10に限らない。
【0102】
なお、上述の2次元コード化処理(ステップS120)では、各ドット4を個々に切り出し、セル3又は変形セル3aを再構築して認識するため、変形セル3aの形状を確実に特定することができる。
ただし、セル3aの形状を特定できれば、上述のようにドット分解処理やセル変換処理を行わず、2次元コード1をセル毎に分離して認識し、さらにセル毎に輪郭を直接認識するように簡易に処理してもよい。
【0103】
次いで、2次元コード1に埋め込まれた暗号鍵の抽出が行われる(ステップS130)。この処理では、図15に示すように、2次元コード1のすべてのセルについて、配列順に変形セル3aであるか否かが判別される(ステップS131)。
【0104】
すなわち、鍵変換テーブル37には、変形セル3aの形状,変形セル3aと記号(又は文字)との対応及び記号列と文字との対応を表わす変換データが記憶されており、ステップS131では、対象のセルの形状が、鍵変換テーブル37に記憶された変形セル3aの形状の内、いずれかの形状と同一又は相似形若しくは同一又は相似形と評価できるか否かについて判別する。
【0105】
対象のセルの形状が、鍵変換テーブル37に記憶された変形セル3aの形状と同一又は相似形と評価できないときは(ステップS131;NO)、ステップS131を繰り返して次の順番のセルの判別が行われる。
【0106】
一方、対象のセルの形状が、鍵変換テーブル37に記憶された変形セル3aの形状と同一又は相似形と評価できると判別された場合(ステップS131;YES)、鍵変換テーブル37に基づいて、対象のセルの形状に対応する記号が選択され、データメモリ38に記憶される(ステップS132)。
【0107】
次にステップS133では、その対象のセルが2次元コード1のうち最後の順番に相当するセルであるか否かが判別される。そのセルが最後のセルでない場合は(ステップS133;NO)、次のセルに進むべくステップS131に戻る。
【0108】
一方、そのセルが最後のセルである場合は(ステップS133;YES)、2次元コード1に含まれる全ての変形セル3aに対応する記号が順に記憶されていることになるので、ステップS134に進む。
ステップS134では、この記憶された記号列について、鍵変換テーブル37に基づいて、文字列に変換する処理が行われる。なお、変形セル3aが直接、文字を表わしている場合は、ステップS134の処理を行う前に文字列が記憶されていることになる。
【0109】
このようにして抽出された埋込情報(復号鍵としての暗号鍵)は、データメモリ38に記憶される(ステップS134)。そして、データメモリ38に記憶された暗号鍵を表示部31に表示させたり、出力部32に出力したりすることができる。このように2次元コード1に埋め込まれた暗号鍵を符号化する処理は、鍵抽出プログラムによって行われる。
【0110】
次に、2次元コードの逆変換処理が行われる(ステップ140)。この処理は、ステップS123で生成された2次元コード1を、公知の方法で符号列に変換するものであり、本例では、逆変換プログラムに基づいて、文字列に変換される。ただし、この処理で得られる文字列は、暗号化データである。なお、この処理では、変形セル3aはセル3と同等に扱われる。
【0111】
そして、ステップS134で抽出された暗号鍵を用いて、復号化プログラムによって、暗号化データの復号化が行われる。これにより、元データが復元される。復号化されたデータは、データメモリ38に記憶される。
以上のようにして、読取装置S2によって、2次元コード1を読み取り、2次元コード1の有する情報を復号化して、表示及び出力させることができる。
【0112】
なお、上記実施の形態では、2次元コード1の読取工程において、ステップS130で暗号鍵を抽出してから、ステップS140で2次元コード1を文字列に変換し、得られた暗号化データを暗号鍵を用いて復号化しているが、これに限らず、ステップS120で2次元コード1を暗号化データに変換してから、ステップS130で暗号鍵を抽出し、続いて、ステップS140で暗号化データを暗号鍵を用いて復号化してもよい。
【0113】
なお、上記実施形態では、変形セル3aが複数種類設定されていたが、これに限らず、変形セル3aの種類は1種類であって、セル3との組合せのみによって文字情報を表わすようにしてもよい。例えば、セル3aと変形セル3aの間に位置するセル3の数に特定の意味を持たせるようにすることができる。また、変形セル3aが連続して形成された場合の変形セル3aの連続数に特定の意味を持たせるようにすることができる。
【0114】
なお、上記実施形態では、2次元コード1をドットマーキング方式で形成していることにより、微小な各セルを構成するドット4が位置精度良く配置される。これにより、変形セル3aを精度良く形成することができ、変形セル3aの読み取り精度が向上される。したがって、この方式にて2次元コードを形成することが望ましい。
【0115】
しかし、これに限らず、変形セル3aの精度を確保できれば、ベクトルマーキング方式で形成してもよい。また、上記実施形態では、レーザマーキング方式で2次元コードを形成しているが、印刷方式にて形成してもよい。
【0116】
また、上記実施の形態では、セル3に欠落領域を設けることにより、変形セル3aを形成していたが、これに限られるものではない。例えば、セル3を構成するドット4のステップサイズや直径を異ならせたものを、変形セル3aとすることもできる。この場合、変形セル3aは、基準となる濃度を有するセル3と濃度が異なることにより区別される。そして、濃度に応じて、鍵変換テーブル17,37に変形セル3aを登録しておくことができる。
【0117】
また、上記実施の形態では、データを暗号化するために用いる暗号鍵が、暗号化データを復号化するために用いる復号鍵を兼用する構成であった。しかし、これに限らず、暗号鍵と復号鍵とが別々であってもよい。
この場合、2次元コード1に埋め込まれるのは、暗号鍵ではなく、復号鍵となる。
【0118】
また、上記実施の形態では、2次元コードの形成装置に相当するレーザマーキング装置S1は、2次元コード1をワークWにマーキングするために、レーザマーカーBを備える構成であったが、これに限らず、プリンタ等によって2次元コード1を印字する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザマーキング装置の全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るレーザマーカーの構成を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る読取装置の構成を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る2次元コードの説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る2次元コードの変形セルの説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る変形セルの説明図である。
【図7】暗号鍵を埋め込む処理の説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るレーザマーキング工程の流れ図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る暗号化処理の流れ図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る暗号鍵埋込処理の流れ図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る2次元コードの読取工程の流れ図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るトリミング処理の説明図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る2次元コード化処理の流れ図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る2次元コード化処理の説明図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る埋込情報復号化処理の流れ図である。
【符号の説明】
【0120】
1 2次元コード
2,3 セル
3a 変形セル
4 ドット
5 画像領域確定線
10 入力部
11 表示部
12 出力部
13 入出力部
16 記憶部
17 鍵変換テーブル
18 データメモリ
30 入力部
31 表示部
32 出力部
36 記憶部
37 鍵変換テーブル
38 データメモリ
42 コントローラ
A 制御装置
B レーザマーカー
C 本体部
D イメージ取込部
I 通信回線
S1 レーザマーキング装置
S2 読取装置
W 被マーキング体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗色及び明色の単位セルがマトリクス状に配列された2次元コードであって、
該2次元コードは、前記暗色及び明色の単位セルの配列によって、元データを暗号化した暗号化データを表わし、
前記暗色の単位セルには、基準となる形状又は基準となる濃度と異なる形状又は濃度を有する変形セルが含まれ、
該変形セルは、前記暗号化データから前記元データを復号化するための復号鍵を表わすことを特徴とする2次元コード。
【請求項2】
前記基準となる形状を有する暗色の単位セルは、レーザビームの照射により形成されるドットをn×m(但しn、mは自然数)に縦横に配置して形成され、
前記変形セルは、前記n×m(但しn、mは自然数)に縦横に配置されるドットのうち、1又は2以上のドットが欠落した状態に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の2次元コード。
【請求項3】
前記基準となる濃度を有する暗色の単位セルは、レーザビームの照射により形成されるドットをn×m(但しn、mは自然数)に縦横に配置して形成され、
前記変形セルは、形成される前記ドットの大きさ又は数が、前記基準となる濃度を有する暗色の単位セルと異なることを特徴とする請求項1に記載の2次元コード。
【請求項4】
請求項1に記載の2次元コードを形成するための形成装置であって、
前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルを記憶する記憶部と、
前記暗号化データを2次元コード化する処理,前記鍵変換テーブルに基づいて記号からなる前記復号鍵を前記変形セルに変換する処理,前記暗号化データが変換された2次元コードを構成する暗色の単位セルと前記復号鍵が変換された変形セルとを置き換える処理,を行う制御部と、を備えたことを特徴とする2次元コードの形成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の2次元コードを形成する形成方法であって、
前記暗号化データを取得する工程と、
前記暗号化データを2次元コード化する工程と、
前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルに基づいて、記号からなる前記復号鍵を前記変形セルに変換する工程と、
前記暗号化データが変換された2次元コードを構成する暗色の単位セルと前記復号鍵が変換された変形セルとを置き換える工程と、を備えたことを特徴とする2次元コードの形成方法。
【請求項6】
請求項1に記載の2次元コードを読取るための読取装置であって、
請求項1に記載の2次元コードを取り込む取込部と、
前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルを記憶する記憶部と、
前記取込部から取り込まれた2次元コードから前記変形セルを抽出して前記鍵変換テーブルに基づいて記号からなる前記復号鍵を算出する処理,前記取込部から取り込まれた2次元コードを逆変換して前記暗号化データを算出する処理,該復号鍵を用いて前記暗号化データを復号化する処理,を行う制御部と、を備えたことを特徴とする2次元コードの読取装置。
【請求項7】
請求項1に記載の2次元コードを読取るための読取方法であって、
請求項1に記載の2次元コードを取り込む工程と、
取り込まれた2次元コードから前記変形セルを抽出して、前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルに基づいて記号からなる前記復号鍵を算出する工程と、
取り込まれた2次元コードを逆変換して前記暗号化データを算出する工程と、
前記復号鍵を用いて前記暗号化データを復号化する工程と、を備えたことを特徴とする2次元コードの読取方法。
【請求項1】
暗色及び明色の単位セルがマトリクス状に配列された2次元コードであって、
該2次元コードは、前記暗色及び明色の単位セルの配列によって、元データを暗号化した暗号化データを表わし、
前記暗色の単位セルには、基準となる形状又は基準となる濃度と異なる形状又は濃度を有する変形セルが含まれ、
該変形セルは、前記暗号化データから前記元データを復号化するための復号鍵を表わすことを特徴とする2次元コード。
【請求項2】
前記基準となる形状を有する暗色の単位セルは、レーザビームの照射により形成されるドットをn×m(但しn、mは自然数)に縦横に配置して形成され、
前記変形セルは、前記n×m(但しn、mは自然数)に縦横に配置されるドットのうち、1又は2以上のドットが欠落した状態に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の2次元コード。
【請求項3】
前記基準となる濃度を有する暗色の単位セルは、レーザビームの照射により形成されるドットをn×m(但しn、mは自然数)に縦横に配置して形成され、
前記変形セルは、形成される前記ドットの大きさ又は数が、前記基準となる濃度を有する暗色の単位セルと異なることを特徴とする請求項1に記載の2次元コード。
【請求項4】
請求項1に記載の2次元コードを形成するための形成装置であって、
前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルを記憶する記憶部と、
前記暗号化データを2次元コード化する処理,前記鍵変換テーブルに基づいて記号からなる前記復号鍵を前記変形セルに変換する処理,前記暗号化データが変換された2次元コードを構成する暗色の単位セルと前記復号鍵が変換された変形セルとを置き換える処理,を行う制御部と、を備えたことを特徴とする2次元コードの形成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の2次元コードを形成する形成方法であって、
前記暗号化データを取得する工程と、
前記暗号化データを2次元コード化する工程と、
前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルに基づいて、記号からなる前記復号鍵を前記変形セルに変換する工程と、
前記暗号化データが変換された2次元コードを構成する暗色の単位セルと前記復号鍵が変換された変形セルとを置き換える工程と、を備えたことを特徴とする2次元コードの形成方法。
【請求項6】
請求項1に記載の2次元コードを読取るための読取装置であって、
請求項1に記載の2次元コードを取り込む取込部と、
前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルを記憶する記憶部と、
前記取込部から取り込まれた2次元コードから前記変形セルを抽出して前記鍵変換テーブルに基づいて記号からなる前記復号鍵を算出する処理,前記取込部から取り込まれた2次元コードを逆変換して前記暗号化データを算出する処理,該復号鍵を用いて前記暗号化データを復号化する処理,を行う制御部と、を備えたことを特徴とする2次元コードの読取装置。
【請求項7】
請求項1に記載の2次元コードを読取るための読取方法であって、
請求項1に記載の2次元コードを取り込む工程と、
取り込まれた2次元コードから前記変形セルを抽出して、前記変形セルと記号とを対応付ける鍵変換テーブルに基づいて記号からなる前記復号鍵を算出する工程と、
取り込まれた2次元コードを逆変換して前記暗号化データを算出する工程と、
前記復号鍵を用いて前記暗号化データを復号化する工程と、を備えたことを特徴とする2次元コードの読取方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−4378(P2006−4378A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182987(P2004−182987)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(593153934)株式会社技術トランスファーサービス (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(593153934)株式会社技術トランスファーサービス (2)
【Fターム(参考)】
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