説明

2次元タッチパネル

複数の同時接触を検出することができる容量タッチパネルを提供する。タッチパネルは、タッチパネル上の1つ又は複数の接触位置の座標を計算するプロセッサにキャパシタンス信号値の組を送出する。各組の処理は、(i)最大キャパシタンス信号値を有する感知要素を識別する段階と、(ii)この感知要素の周囲の領域を定義する段階と、(iii)この処理を反復的に繰り返す段階とによって実施することができ、各続く識別段階は、以前に定義した領域にある信号を除外する。すなわち、信号処理がタッチパネル内の領域又はサブブロックの連続定義に基づく多重タッチセンサが提供される。各領域における接触位置は、次に、隣接する信号値の間で内挿を適用することによってより正確に判断することができる。これは、タッチパネルの電極パターン化によって定義されるものよりも微細なスケールでの位置分解能を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元(2D)タッチパネルに関し、より具体的には、容量接触感知によって作動するタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
容量感知に基づく2Dタッチパネルは、様々な用途において幅広く用いられている。典型的には、2Dタッチパネルは、指により、直接接触又は接近を通じて(すなわち、接触せずに)作動される。例えば、2Dタッチパネルは、ラップトップコンピュータのタッチパッド、マイクロ波オーブン及び流し台上面のような家庭用電気機器の制御パネル、及び移動電話のような手持ち式デバイス上のディスプレイに対する上張りとして用いられている。多くの他の用途が当業技術で公知である。
【0003】
2Dタッチパネルの最も従来的な設計は、タッチパネルがいずれか一時点に1つの接触しか検出することができないことを意味する方法で設計される。これは、幅広い用途において十分である。しかし、一部の用途では、2Dタッチパネルが2つ又はそれよりも多くの接触を同時に感知することができることが望ましい。
例えば、公知のように、従来コンピュータは、2つ又は3つのセンサ、すなわち、カーソルの動きのためのトラックボールと、カーソル位置におけるアイコンの選択のための2つのボタンとを組み合わせるマウスによって制御される。従って、マウスは、マウスデバイスの移動を通じたカーソルの動きと、左右のマウスボタンを作動させるための2つの指操作とを組み合わせる。ラップトップでは、マウス機能は、隣接するボタンを有するタッチパッドによって与えられる。ユーザは、1つの指をタッチパッドエリア上で滑らせることによってカーソルを移動し、親指又は1つ又は2つの他の指を用いて2つの「マウス」ボタンを作動させることによってアイコンなどを選択する。
【0004】
複数の同時の指入力を必要とするデバイスの別の例は、デバイスが有する異なる機能を制御するか又は同じ機能を合同で制御するために、一般的に、左右の親指が用いられる手持ち式ゲーム専用機である。機内娯楽システムにおけるコントローラは、多くの場合に類似の作動モードを有する。
複数の同時接触を感知することができる2D容量タッチパネルは、従来技術で公知であり、次に、これに対して説明する。
【0005】
図1は、複数の接触を同時に検出することができるUS5、825、352[特許文献1]の従来技術のタッチパネルの概要である。x及びy方向の各々に延びてセンサ線の行及び列をそれぞれ形成する複数のワイヤを有するタッチパッドマトリックス101によってアレイセンサが形成される。アレイセンサは、アレイセンサ101に接続され、マイクロコントローラ105によって制御されるマルチプレクサ102を用いて走査される。次に、サンプリングされたx及びyワイヤの各々の容量が、キャパシタンス測定回路103を用いて測定される。較正の目的で、センサは、いかなる指作動も存在しない期間中にセンサ自体を走査し、背景信号レベルを判断する。背景容量レベルが測定及び記憶され、次に、センサアレイの各走査から減算され、指によってトリガされた容量が判断される。センサアレイ内の各センサ行及びセンサ列からの走査出力は、A/Dコンバータ(ADC)を用いてデジタル表現へと変換され、この変換器は、デジタル化された信号をマイクロコントローラ105に供給する。走査データは、アレイのx方向とy方向とにおいて、逐次又は同時のいずれかで解析される。図には、アレイセンサ101上に例示している2つの指の同時接触に対してxプロフィール107とyプロフィール106とを概示している。xプロフィール107を参照すると、各指接触に対して1つ毎に2つの最大値108及び110が明らかである。2つの最大値は、最小値109によって分離されている。yプロフィール106を参照すると、1つの最大値のみが明らかであり、これは2つの指接触がy方向に密接した結果である。
【0006】
この従来技術のデバイスでは、x線からの信号は、y線からの信号とは別々に解析される。x及びyの各々において最大値及び最小値が識別され、最大値が指接触として示される。第2の最大値は、第1の最大値に続いて最小値が識別されることを必要とする。最大値は、信号における最大局所変化として識別される。最小値は、ピークに近い局小値として識別される。x方向及びy方向の各々において最大値が識別された後に、各ピークの値が閾値と比較される。ピーク値が閾値よりも小さい場合には、このピークは、ピークであるとは見なされなくなる。最小値に対して類似の機能を適用することができ、この場合、値は、所定の閾値よりも小さくなければならない。次に、x及びy方向のピーク及び谷のデータが内挿されて、センサアレイ上の1つ又はそれよりも多くの指の位置が識別される。この技術は、カーソルを制御するのに第1の指を用いることができ(ラップトップコンピュータ上の従来のタッチパッドと同様に)、かつ作動を与える上で第2の指を用いることができる(タッチパッドの近くに設けられた従来の機械的ボタンと同様に)ように、センサアレイ上の複数の同時接触を検出及び処理するのに用いられる。
【0007】
この従来技術の設計は、同時多重接触処理に対する技術的に良く工夫された解決法を提供するが、十分な空間分解能を達成するためには、この解決法は、x及びyの両方に多数のセンサ線を必要とする。2つの同時接触を分解するには最低でも約10×10本の線が必要になる。より一般的には、十分な信頼性と精度を得て、2つよりも多くの同時接触を適切に処理するためには、恐らく少なくとも20×20本の線が必要になる。しかし、大量生産デバイスでは、経費は、必要とされる信号処理線数、すなわち、キャパシタンス測定回路、ADC、及びデジタル信号プロセッサ内の線数と共に増減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US5、825、352
【特許文献2】US6、993、607
【特許文献3】US5、730、165
【特許文献4】US6、466、036
【特許文献5】US6、452、514
【特許文献6】US5、463、388
【特許文献7】EP1335318A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、センサ線の数を低減して構成することができる多重接触アレイセンサを提供することが望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により、(a)パネルのエリアの上に配分された複数の感知要素を有するタッチパネルと、(b)感知要素に接続され、かつ各組が感知要素の各々からのキャパシタンス信号値から成るキャパシタンス信号値の組を取得するように繰返し作動可能なキャパシタンス測定回路と、(c)キャパシタンス信号値の組を受信するように接続され、かつ各組を処理してタッチパネル上の1つ又は複数の接触位置の座標を計算かつ出力するように作動可能なプロセッサとを含み、各組の処理が、(i)最大キャパシタンス信号値を有する感知要素を識別する段階と、(ii)最大キャパシタンス信号値を有する感知要素とその隣接要素のうちで選択されたものとを含むタッチパネルの領域を定義する段階と、(iii)1つ又はそれよりも多くの更に別の感知要素及び領域をそれぞれ識別かつ定義し、各反復が、キャパシタンス信号値をそれらがタッチパネルの以前に定義した領域に位置する場合に考察から除外する段階と、(iv)識別された各領域内の接触位置の座標を示すデータを出力する段階とによって実施される2D接触感応容量位置センサを提供する。
【0011】
すなわち、信号処理が、タッチパネル内の領域又はサブブロックの連続定義に基づいており、その後の接触識別段階で信号が除外される、簡易で信頼性の高い多重タッチセンサが提供される。この手法は、US6、993、607[特許文献4]の近接キー抑制(AKS)法の改造バージョンと考えることができる。元来AKSは、各データ取得サイクルにおいてタッチパネル表面全体を走査するために開発されたものである。この方法は、AKSが、全体のキーアレイに対して一度ではなく、タッチパネルのサブブロックに反復的に適用され、それによって各処理段において一部のキー、すなわち、識別された接触位置に近いものがフィルタリング除去される点で従来のAKSとは異なる。この局所化された形式のAKSの目的は、既に識別されたタッチに近いキーを更に別の有効接触の探索から除外することである。この方法のAKSは、両方の寸法方向、すなわち、x及びyを互いに処理する信頼性が高く簡易的な処理手法である。特に、本発明による処理は、最大値及び最小値の両方を識別するのに曲線当て嵌め解析を適用するのに事実上等しいUS5、825、352の複雑な信号処理法を実施するのを回避する。特に、US5、825、352では、複数の接触を分解するのに最小値の識別が必須の前提条件下であるのに対して、この識別は、本発明の特徴ではない。更に、本発明による処理は、2つの寸法方向の各々からのデータを別々に処理する必要性を回避する。
【0012】
好ましくは、識別段階は、閾値を超えないキャパシタンス信号値を有するあらゆる感知要素を考察から除外する。従って、1つ又はそれよりも多くの接触位置の反復的な識別は、高いキャパシタンス信号値に限られる。閾値は、固定又は可変のものとすることができる。適切な閾値は、例えば、一連の測定の間に又はタッチパネルセンサを有するデバイスの起動時に再度計算することができる。
【0013】
一部の実施では、各領域内で最大キャパシタンス値を有する感知要素は、この領域の主作動感知要素であると見なされる。他の実施では、各領域内の閾値を超えるキャパシタンス信号値を有する感知要素の中で、タッチパネル上で最も上の位置にある感知要素が、この領域の主作動感知要素と見なされる。感知要素のうちのどれが主なものであると見なされるかを判断するのに、他のアルゴリズムを適用することができる。更に、一部の実施形態では、本方法は、主感知要素の識別を必要としない。
本発明の簡易形式のものでは、各領域内の接触位置は、主作動感知要素にあると見なされる。
【0014】
本発明の最良のモードでは、各領域内の接触位置は、この領域内の感知要素のうちの少なくとも一部のキャパシタンス信号値の間に内挿を適用することによって判断される。それは、出力において感知要素のみから可能であるものよりも良好な位置分解能を考慮するものである。その結果、感知要素から成る比較的粗な格子が、格子のスケールよりも微細なスケールの位置分解能を発生させることができる。従って、比較的少数の感知要素で実施することができる簡易で信頼性の高い多重タッチセンサが達成される。その結果、キャパシタンス測定回路は、比較的少数の感知チャンネルを含むだけでよい。
様々な形式の内挿が可能である。例えば、内挿は、領域の主作動感知要素であると識別された感知要素及びその隣接要素に限定することができる。別の代替形式は、内挿が各領域内の感知要素の全てを含むことである。
【0015】
本発明はまた、(a)パネルのエリアの上に配分された複数の感知要素を有するタッチパネルと、(b)感知要素に接続され、かつ各組が感知要素の各々からのキャパシタンス信号値から成るキャパシタンス信号値の組を取得するように繰返し作動可能なキャパシタンス測定回路と、(c)キャパシタンス信号値の組を受信するように接続され、かつ各組を処理してタッチパネル上の1つ又は複数の接触位置の座標を計算かつ出力するように作動可能なプロセッサとを含む2D接触感応容量位置センサからの信号を処理する方法を考えており、各組を処理する方法は、(i)最大キャパシタンス信号値を有する感知要素を識別する段階と、(ii)最大キャパシタンス信号値を有する感知要素とその隣接要素のうちで選択されたものとを含むタッチパネルの領域を定義する段階と、(iii)1つ又はそれよりも多くの更に別の感知要素及び領域をそれぞれ識別かつ定義し、各反復が、キャパシタンス信号値をそれらがタッチパネルの以前に定義した領域に位置する場合に考察から除外する段階と、(iv)識別された各領域内の接触位置の座標を示すデータを出力する段階とを含む。
【0016】
本発明は、受動又は能動のいずれかの容量感知技術を用いて実施することができる。
受動容量感知デバイスは、システム基準電位(接地)に対する感知電極のキャパシタンスを測定する段階を拠り所とする。この技術の基礎を成す原理は、例えば、US5、730、165[特許文献6]及びUS6、466、036[特許文献7]に説明されている。US5、730、165及びUS6、466、036の内容は、本発明に対する背景資料を説明するのに、その全部が引用によって本明細書に組み込まれている。概略すると、受動容量センサは、キャパシタンス測定回路に結合された感知電極を用いる。各キャパシタンス測定回路は、それに関わる感知電極のシステム接地に対するキャパシタンス(容量結合)を測定する。ポインティング物体が感知電極の近くに存在しない時には、測定キャパシタンスは、背景又は静止時の値を有する。この値は、感知電極及びそれをもたらす接続のような幾何学形状及びレイアウト、並びに隣接する物体、例えば、隣接の接地平面の近くの感知電極の性質及び位置に依存する。ポインティング物体、例えば、ユーザの指が感知電極に接近すると、ポインティング物体は、仮想接地として出現する。この仮想接地は、接地に対する感知電極の測定キャパシタンスを増大させるように機能する。従って、測定キャパシタンスの増大は、ポインティング物体の存在を示すと見なされる。
【0017】
US5、730、165及びUS6、466、036は、主に個別の(単一ボタン)測定に向けられており、2D位置センサ用途のためのものではない。しかし、US5、730、165及びUS6、466、036に説明されている原理は、例えば、個別感知エリアの2Dアレイか又はマトリックス構成での電極の行及び列かのいずれかを形成する電極を設けることによって2D容量タッチセンサ(2DCT)に直ちに適用可能である。
【0018】
能動2DCTセンサは、2つの電極の間(単一の感知電極とシステム接地の間ではなく)の容量結合を測定する段階に基づいている。能動容量感知技術の基礎を成す原理は、US6、452、514に説明されている[特許文献5]。US6、452、514の内容は、本発明に対する背景資料を説明するのに、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている。能動型のセンサでは、1つの電極、いわゆる駆動電極に振動駆動信号が供給される。駆動信号の感知電極への容量結合の程度は、振動駆動信号によって感知電極に移送される電荷量を測定することによって判断される。移送される電荷量、すなわち、感知電極において観測される信号強度は、電極間の容量結合の基準値である。電極の近くにいかなるポインティング物体も存在しない時には、感知電極上の測定信号は、背景又は静止時の値を有する。しかし、ポインティング物体、例えば、ユーザの指が電極に接近すると(又は、より具体的には電極を分離する領域の近くに接近すると)、ポインティング物体は仮想接地として機能し、駆動電極からの駆動信号(電荷)の一部を降下させる。この駆動信号の低下は、感知電極に結合された駆動信号成分の強度を低減するように機能する。従って、感知電極上の測定信号の低下は、ポインティング物体の存在を示すと見なされる。
ここで、本発明のより明快な理解のために、かつ本発明を達成することができる方法を示すために一例として添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来技術の容量位置センサアレイの概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による容量位置センサアレイ及びそれに関わる回路図である。
【図3】第1の実施形態の信号処理法の流れ図である。
【図4A】図3の信号処理法の特定の例を説明するのに用いるセンサアレイの一連の概略図である。
【図4B】図3の信号処理法の特定の例を説明するのに用いるセンサアレイの一連の概略図である。
【図4C】図3の信号処理法の特定の例を説明するのに用いるセンサアレイの一連の概略図である。
【図4D】図3の信号処理法の特定の例を説明するのに用いるセンサアレイの一連の概略図である。
【図4E】図3の信号処理法の特定の例を説明するのに用いるセンサアレイの一連の概略図である。
【図4F】図3の信号処理法の特定の例を説明するのに用いるセンサアレイの一連の概略図である。
【図4G】図3の信号処理法の特定の例を説明するのに用いるセンサアレイの一連の概略図である。
【図4H】図3の信号処理法の特定の例を説明するのに用いるセンサアレイの一連の概略図である。
【図5】第1の実施形態のセンサアレイに近い複数の物体の追跡を示す概略図である。
【図6A】本発明の第2の実施形態による容量位置センサアレイ及びそれに関わる回路の概略平面図である。
【図6B】図6Aのセンサアレイにおけるx線を形成する電極パターン層の略図である。
【図6C】図6AのセンサアレイにおけるY線を形成する電極パターン層の略図である。
【図7】第2の実施形態の信号処理法の流れ図である。
【図8A】図7の信号処理法の特定の例を説明するのに用いるセンサアレイの一連の概略図である。
【図8B】図7の信号処理法の特定の例を説明するのに用いるセンサアレイの一連の概略図である。
【図8C】図7の信号処理法の特定の例を説明するのに用いるセンサアレイの一連の概略図である。
【図8D】図7の信号処理法の特定の例を説明するのに用いるセンサアレイの一連の概略図である。
【図9A】表示モニタ、及び本発明によるセンサを含む入力デバイスの概略図である。
【図9B】本発明によるセンサを組み込むセルラー電話の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2は、本発明の第1の実施形態による2D接触感応容量位置センサ210を平面図で示している。位置センサに近い複数の物体の位置を計算するのに図3に示しているアルゴリズムが如何に用いられるかを説明するために、この2D接触感応容量位置センサを用いることにする。
2D接触感応容量位置センサ201は、図面の左上に向けて示している向きを有する第1(x)及び第2(y)の方向に沿って物体の位置を判断するように作動可能である。センサ201は、上部に感知電極が配置された基板202を含む。感知電極203は、感知エリアを定義し、その内側でセンサに対する物体(例えば、指又はスタイラス)の位置を判断することができる。基板202は、透明な可塑材料から成り、電極は、従来技術を用いて基板202上に堆積させた酸化インジウム錫(ITO)の透明膜から形成される。従って、センサの感知エリアは透明であり、感知エリアの背後に表示されるものを不明瞭にすることなく表示スクリーン上に配置することができる。他の例では、位置センサは、ディスプレイ上に設置することを意図せず、透明ではないものとすることができ、これらの事例では、ITO層は、例えば、銅張りプリント回路基板(PCB)のようなより経済的な材料で置換することができる。
【0021】
基板202上の感知電極のパターンは、感知エリアを行と列に配置された感知セル204のアレイ(格子)に分割するようなものである(本明細書では、「行」及び「列」という用語を2つの方向の間で便宜的に区別を付けるために用い、垂直又は水平のあらゆる向きを意味すると解釈すべきではないことに注意されたい)。この位置センサには、x方向に整列した3つの感知セル列とy方向に整列した5つの感知セル行とが存在する(合計で15個の感知セル)。図2に示している向きで最も上の感知セル行を行Y1、下にある次のものを行Y2と呼び、以降同様に行Y5まで続く。同様に、感知セル列を左から右へ列X1からX3と呼ぶ。
【0022】
各感知セルは、行感知電極205及び列感知電極206を含む。行感知電極205及び列感知電極206は、各感知セル204内で互いに交互配置されるように配置されるが(この場合は、互いの周囲に四角い渦巻きを形成することにより)、通電するようには接続されない。行及び列感知電極は、交互配置(交錯配置)されるので、所定の感知セルに近い物体は、感知セル内のどこに物体が位置決めされるかに関係なく両方の感知電極への有意な容量結合を与えることができる。最良の結果をもたらすために、交互配置の固有のスケールは、指、スタイラス、又は他の作動物体の容量フットプリントの程度又はそれよりも小さいものとすることができる。感知セル204のサイズ及び形状は、検出される物体と同様又はそれよりも大きいとすることができる(実用的な限度内で)。
【0023】
同じ行内の全ての感知セルの行感知電極205は、行感知電極の5つの別々の行を形成するように互いに電気的に接続される。同様に、同じ列内の全ての感知セルの列感知電極206は、列感知電極の3つの別々の列を形成するように互いに電気的に接続される。
更に、位置センサ201は、行感知電極の行及び列感知電極の列のうちのそれぞれの1つに結合された一連のキャパシタンス測定チャンネル207を含む。各測定チャンネルは、それに関わる感知電極の列又は行とシステム接地との間のキャパシタンス値を示す信号を発生させるように作動可能である。図2には、キャパシタンス測定チャンネル207を1つのバンクが行感知電極の行に結合され(Y1からY5とラベル付けしている測定チャンネル)、1つのバンクが列感知電極の列に結合された(X1からX3とラベル付けしている測定チャンネル)2つの別々のバンクとして示している。しかし、実際には、測定チャンネル回路は、プログラマブル集積回路又は特定用途向け集積回路のような単一のユニットで設けられることになる可能性が最も高いことが認められるであろう。更に、図2には、8つの別々の測定チャンネルを示しているが、キャパシタンス測定チャンネルは、好ましい作動モードではないが、適切な多重化を有する単一のキャパシタンス測定チャンネルによって代替的に設けることができる。更に、上に重なる基板を通じて層状の組の感知場を伝播させるために、全ての行及び列を単一の発振器で同時に駆動するUS5、463、388[特許文献2]に説明されている種類の回路などを用いることができる。
【0024】
測定チャンネル207によって測定されるキャパシタンス値を示す信号は、処理回路を含むプロセッサ208に供給される。位置センサは、一連の個別キーとして取り扱われることになる。各個別キーの位置は、x導線とy導線との交差点である。処理回路は、個別キーのうちのどれがそれに関するキャパシタンスを示す信号を有するかを判断するように構成される。ホストコントローラ209は、プロセッサ208から出力される信号、すなわち、個別キーの各々からの印加容量負荷を示す信号を受信するように接続される。ホストコントローラ209は、位置センサ201の1つ又はそれよりも多くの同時接触のx及びyの位置を計算し、これらを出力接続部210上に出力するように作動可能である。
【0025】
ホストコントローラ209は、マイクロコントローラのような単一の論理デバイスとすることができる。好ましくは、マイクロコントローラは、プッシュプル型CMOSピン構造、及び電圧比較器として機能するように作ることができる入力部を有することができる。最も一般的なマイクロコントローラI/Oポートは、比較的固定された入力閾値電圧、並びにほぼ理想的なMOSFETスイッチを有するので以上のことが可能である。必要な機能は、単一の汎用プログラマブルマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又は他の集積チップ、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は特定用途向け集積チップ(ASIC)によって供給することができる。
【0026】
図2の2D接触感応容量位置センサ201のレイアウト及び機能を上述のように説明した。ここで、図3及び図4Aから図4Hを用いて、2D接触感応容量位置センサ201上の接触位置を判断するためにプロセッサ209が適用する方法を説明する。
図3は、ホストコントローラ209内のハードウエア、ファームウエア、又はソフトウエア内に実施される信号処理法の段階を示す流れ図である。図4Aから図4Hは、タッチ入力の組の例に対する処理の様々な時点における第1の実施形態のタッチパネル内の3×5のタッチボタンアレイを順次示している。
【0027】
図4Aは、図3の段階S301において1回の取得で得られた信号の生データ値を有する3×5の格子を示している。格子正方形の各々は、容量位置センサ201の個別キーのうちの1つを表している。2つの同時指接触が、破線によって示している位置に存在する。生データ値は、任意単位で説明したものである。パネルの左上の近くに1つの指接触が存在し、パネルの右下の近くに別の指接触が存在する。
【0028】
図4Bは、生信号値から背景信号値VBを減算する前処理段階の後の信号値を示している。この例では、背景信号は、値VB=3を有する。この例では、背景信号レベル減算の後の閾値信号値には、Vt=12が採用されている。
図4Cは、閾値を超える信号を戻した5つのキー、すなわち、検出状態のキーの位置を陰付きパネルとして示している。「a」が格子の左にある「1」から始まる列位置であり、「b」が格子の上にある「1」から始まる行位置である時に、個別キーの各々をK(a、b)によって表す(すなわち、図4Aの陰付き要素402はK(3、4)である)。検出状態のキーの位置は、K(1、1)、K(2、2)、K(2、5)、K(3、4)、及びK(3、5)である。
取得時間は、固定又は可変のものとすることができることが認められるであろう。固定取得時間は、ホストコントローラ又はプロセッサによって設定されることになる。可変取得時間の例は、感知チャンネルのうちの1つが、検出状態閾値の倍数、例えば、検出状態閾値の2倍とすることができるある一定の閾値まで蓄電された時に全パネルにおいて蓄電が停止される時であろう。
【0029】
段階S301では、位置センサ201への印加容量負荷を示す個別キーの各々の信号値が、処理回路208から得られる。
段階S302では、閾値を超えるいずれかの信号が存在するか否かが判断される。処理回路208から得られた信号のいずれもが検出状態にない場合には、アルゴリズムは、S301に戻り、新しい個別キー信号値の組を取得する。以上のことは、個別キー信号値のうちの少なくとも1つがVtよりも大きく、又はそれに等しいか、又は適切な制御信号によってループが停止されるかのいずれかになるまで続くことになる。電力節約のために、信号取得の間の時間間隔は、いかなる閾値超過信号も受信されない場合は、時間を延長することができることが認められるであろう。別の選択肢は、信号が受信されないある一定の期間が閾値を上回った後にタッチパネルデバイスを完全に停止し、再作動させるのに別々の制御入力を必要とし、すなわち、休止モードに入れることである。
【0030】
段階303では、得られた信号の組において背景レベル又はそれ未満にある少なくとも1つの信号が存在するか否かが試験される。この基準に達するには、個別キー信号値のうちで、所定の背景レベル信号又は「ゼロ」信号よりも小さいか又はそれに等しいものが少なくとも1つ存在すべきである。ゼロ信号値は、いかなる物体も位置センサ201に近くない時の背景信号レベルを表している。段階S303では、位置センサ201の個別キー信号値の各々が、所定のゼロ信号値と比較される。この試験の結果は、処理フローの後期で判断を行う上で用いられる。
【0031】
段階S304では、検出状態信号値の全てが互いに比較され、最も高い信号値を有するキーが見出される。最も高い検出状態信号値は、位置K(1、1)403にある個別キーのものである。位置K(1、1)403(すなわち、最も高い検出状態個別キー信号値)の個別キーにあるか、又はその近くの物体の位置を得るために、修正「近接キー抑制(AKS)」の実施が用いられる。従来のAKSは、US6、993、607に説明されている。修正を加えたAKS法は、以下で局所化AKS(LAKS)と呼ぶ。従来のAKSでは、全てのキーが解析に含まれる。しかし、本形式のAKSでは、センサアレイに対して反復手法が用いられ、AKSは、センサアレイの連続するサブブロック又は領域に局所的に適用される。各サブブロックの位置は、選択された検出状態要素に関連して定義され、最も近い隣接要素及び次に最も近い隣接要素、すなわち、選択された検出状態位置に直近の個別キー位置、及び直近のものに近い個別キー位置を含む。境界の範囲内でこの例におけるLAKSアルゴリズムが実行される境界線を図4Dに破線境界線404によって例示している。この例におけるサブブロックのサイズは、センサアレイのサイズによって限定される。しかし、センサアレイがより多くの個別キーを含む場合には、サブブロックは、上述の定義に従ってサイズが大きくなる。
【0032】
段階S305では、境界線404によって定義されるキーのサブブロック内でAKSが適用され、サブブロック内のキーのうちのどれがタッチに関連付けるべきもの、すなわち、物体に近いものであるかが判断される。このキーは、多くの場合に最も高い信号値を有するキーであるが、この場合は必ずしもそうではないことに注意されたい。異なるキーが選択される可能性がある状況の例は、AKS法が、EP1335318A1[特許文献3]に説明されている手の影の効果を考慮する状況である。例えば、垂直線上のキーが検出状態にある場合には、このAKS法によるキー出力は、最も上にあるキーが、最も高い信号値を有するキーではなかった場合であっても、この最も上にあるキーである。図示の例では、AKSは、K(1、1)にある個別キーがタッチに近いキーであるように判断し、また、このキーは、最も高い信号を有するキーでもある。この選択されたキー405をT1とラベル付けする。
【0033】
段階S306では、LAKSサブブロックの境界線(すなわち、破線)の範囲に位置する別の「検出状態」キーK(2、2)が、ここで、LAKS特定の方法のその後の段階で無視され、すなわち、このキーの信号がその後のLAKS段階から抑制される。従って、このキーは、検出から「排除された」と考えることができる。これを図4Eに格子正方形406の「陰消し」によって例示している。LAKSによる検出から排除されたあらゆる検出状態キーは、検出アルゴリズムのこの部分には含まれないことになるが、下記で更に理解されるように、方法の後期の部分に含めることができる。
【0034】
段階S307では、段階S303でゼロ信号を有するいかなるキーも存在しないと判断されていた場合に、処理フローは、段階S313へとジャンプする。このジャンプは、ゼロ信号を有するいかなるキーも存在しない場合に、信頼性の高いいかなる最小値も存在せず、従って、複数の接触を大きいエリアにわたって、場合によってはパネルにわたって単一の接触しか存在しない状況と確実に区別することができないということに基づいて、更に別の接触を検出する可能性を排除する。一方、段階S303で背景レベルを超える少なくとも1つのキーが存在と判断された場合には、複数の接触を確実に分解することができる可能性が残っているので、処理フローは、段階S308へと進む。
【0035】
段階S308では、残りの個別キーの信号値が閾値Vtと比較される。残りのキー信号のいずれもが閾値Vtよりも大きくないか又はそれに等しくない場合には、処理フローは、段階S313へとジャンプする。一方、閾値Vtよりも大きく又はそれに等しい信号値を有する検出状態アレイキーが存在した場合には、次に、最も高い信号値を有するキーに基づいてLAKS処理が繰り返される。図4に示している入力例では、残りの検出状態個別キー信号値は、位置K(2、5)、K(3、4)、及びK(3、5)に位置する。
【0036】
段階309では、残りの検出状態キーからの信号値が互いに比較され、最も高いものが見出される。この例では、最も高い信号値は、個別キーの位置K(3、5)407に存在する。
段階S310では、キーK(3、5)の周囲に形成されたLAKSサブブロック内に位置する個別キー、すなわち、図4Fに示している境界線である破線境界線408の範囲に含まれるキーに対してLAKSが実施される。LAKS領域は、破線境界線408の範囲に位置するキーの全てを含む。LAKS処理は、サブブロック内のキーのうちのどれが、接触に最近接のものである可能性が最も高いかを判断する。以下では、位置K(3、5)にある個別キーが、AKSによって選択されたものであると仮定する。このキーは、LAKS処理の2回目の反復で選択されたキーであることからT2とラベル付けする。
【0037】
段階S311では、LAKSによって定義した境界線(すなわち、破線408)の範囲の他の検出状態キーが、ここでは陰なしの個別の位置K(2、5)及びK(3、4)410によって図4Gに示しているように排除される。
段階S312では、あらゆる残りの個別キー信号値が閾値Vtと比較される。残りのキー信号のいずれもが閾値Vtよりも大きくないか又はそれに等しくない場合は(示している例のように)、アルゴリズムの段階S313が実行される。しかし、閾値超過信号値を有するあらゆるキーが残っている場合には、S309からS312までのアルゴリズムが繰り返され、更に別の個別キーT3が割り当てられる。この処理は、段階S312がヌル値を戻すまで繰り返される。
処理のこの時点でLAKS処理は完了し、処理は、更に別の段、すなわち、段階S313へと移動する。
【0038】
段階S313では、接触T1、T2、...TNの各々の座標が判断され、ここで、Nは1(単一の接触)又は1つより大きいもの(複数の接触)とすることができる。各接触の座標は、内挿法を用いて判断される。内挿は、閾値を超えるか又は下回るかに関わらず、全ての信号値へのアクセスを有する。言い換えれば、LAKS処理中に抑制されたキーのあらゆるものからの信号値が、必要に応じて用いられる。この例では、内挿に向けて利用可能な信号値は、図4Bに示している信号値、すなわち、背景減算の後の生信号値である。各接触Tnでは、本方法は、キーTn及びその近接キーからの信号値を用いて内挿を行う。用いることができる様々な可能な内挿法が存在するが、以下では1つのみを説明する。
【0039】
割り当てられた接触のx及びy座標を計算するのに、2つの異なる式が用いられる。これらの式は、下記に示す式1及び式2である。これらの式の両方にある項は、以下の定義を有する。「Max」は、T1...Tnとして定義される個別キーの信号値である。「Mid」は、「Max」に近い最も高い信号値を有する個別キーの信号値である。「Min」は、前に定義した「ゼロ」信号である。P0は、最も近いx又はy導線に対応するオフセットである。x座標では、X1においてP0=0であり、X2においてP0=1である。y座標では、Y1においてP0=0、Y2においてP0=1、Y3においてP0=2、更にY4においてP0=3である。Qは、各々の個別キーの範囲の所定の個別位置の個数を表す数である。
【0040】
式1は、「Mid」信号値が「Max」信号値の左又は下にある時に用いられる。式2は、「Mid」信号値が「Max」信号値の右又は上にある時に用いられる。
【0041】
【数1】

【0042】
【数2】

【0043】
第1の割り当てられた接触T1の位置を内挿するのに用いられる手順は、以下の通りである。x座標の場合は、「Mid」信号値は、「Max」信号値の右にあり、y座標の場合は、「Mid」信号値は、「Max」信号値の上にあるから、T1のx及びy座標を内挿するためには式2が用いられることになる。
【0044】
図4Bは、背景信号レベルVB(VB=3)が減算された後の個別キーからの信号値を示している。図4Bの信号値は、T1(個別キーの位置K(1、1))のx及びy座標を得るのに用いられることになる。位置センサ201に近い接触のx座標を得る上で以下の個別キー信号値が用いられる。「Max」値は、位置K(1、1)にある個別キーの信号値に等しく、Max=22である。「Mid」値は、位置K(2、1)にある個別キーの信号値に等しく、Mid=8である。「Min」値は、位置K(3、3)にある個別キーの信号値に等しく、Min=0である。T1の例では、個別キーの各々は、10個(Q=10)の個別位置に分割される。T1の例では、検出された接触が第1のx導線X1の右にあることから、P0=0である。T1に対して計算されたx座標は、「2.6」であり、次に、以上のことが、位置センサ201の近くに検出された接触のy座標を得るために繰り返される。
【0045】
位置センサ201に近い接触のy座標を得る上で、個別キーの以下の信号値が用いられる。「Max」値は、位置K(1、1)にある個別キーの信号値に等しく、Max=22である。「Mid」値は、位置K(1、2)にある個別キーの信号値に等しく、Mid=6である。「Min」値は、位置K(3、3)にある個別キーの信号値に等しく、Min=0である。T1の例では、個別キーの各々は、10個(Q=10)の個別の位置に分割される。T1の例では、検出された接触が第1のy導線Y1よりも下にあるから、P0=0である。T1に対して計算されたy座標は「2.1」である。従って、割り当てられた接触T1の座標は、(2.6、2.1)、又は最も近い整数値Qに丸めた場合は(3、2)である。
【0046】
図4Gに示している残りの接触位置T2は、上述の内挿法を用いて計算される。しかし、x座標における「Mid」信号値は、「Max」信号値の左にあり、y座標における多次元信号値は「Max」信号値の上にあるから、式1が用いられる。割り当てられた接触T2に対して計算された座標は、(16、35)である。
図4Hは、位置センサ上の2つの接触T1及びT2の内挿された位置を示している。この例では、位置センサは、80個の可能な位置に分割されている。
【0047】
代替の内挿法は、重み係数を組み込むことができ、例えば、近接キーは、キーTnよりも低い重みを有する。別の例は、予想される手の影の効果に従って重み付けを行うものとすることができる。内挿は、上述のように行毎及び列毎の方式で行う必要はない。例えば、内挿は、全ての最も近い隣接キー、又はキーTnに対して前に定義したLAKSサブブロック領域内の全てのキーの間でのものとすることができるであろう。内挿法の多くの他の変形が考えられるであろう。
【0048】
すなわち、以上により、第1の実施形態では、2D容量タッチセンサから取り込まれた単一の信号の組を処理することにより、同時の複数接触を確実に検出することができる方法が認められるであろう。特に、局所化形式のAKS処理と内挿との組合せ使用は、同時の複数接触の座標を判断することを可能にする。更に、これは、感知要素の比較的粗な格子を用いて行われ、内挿は、感知要素によって定義されるものよりも微細なスケールの分解能をもたらす。このようにして、比較的少数の感知チャンネルのみを用いて比較的正確な多接触感知が実施される。図示の例では、8個の感知チャンネルしか用いられていない。
【0049】
第1の実施形態の方法は、移動する接触を追跡するように信号の時間変化を考慮することによって拡張することができる。
図5は、2つの接触が追跡される例を示している。2つよりも多くの追跡される物体が存在してもよい。本明細書に説明する処理は、あらゆる個数の物体に適用することができる。
時間t1では、位置501及び502において接触が感知される。時間t1におけるこれらの接触位置は、上述の手順を用いて求めたものである。所定の時点間隔の後に、センサは再度時間t2においてポーリングされる。再度2つの接触が感知される。これらの接触は、位置503及び504にある。時間t1におけるどの接触(すなわち、501及び502)が時間t2におけるどの接触(503又は504)へと進むのかを判断するために、接触位置の間の可能な経路の全てが有する経路長が計算される。図5の例では、4つの可能な経路が存在し、図5では、これらをP(1、1)、P(1、2)、P(2、l)、及びP(2、2)とラベル付けしている。しかし、この例では、位置501及び502を位置503及び504へと追跡するのに2つの可能な組合せしか存在しない。すなわち、これらは以下の組合せである:
501が503へと進み、502が504へと進む組合せ(組合せ1)
501が504へと行き、502が503へと進む組合せ(組合せ2)
組合せの各々における合計距離は、4つの接触位置のx及びy座標を用いることによって見出される。最小距離値を有する組合せは、2つの物体における最短進行距離、及び従って2つの物体における追跡の最も可能性が高い組合せを表している。例えば、組合せ1が最小距離値を有する場合には、接触501は、接触503へと進み、接触502は、接触504へと進む。
【0050】
ホストコントローラ209は、個別の時間t1、t2、...において物体T1からTnの一連の位置座標を出力線210上に出力することになる。ホストコントローラ209は、固定又は可変の期間で位置センサをポーリングすることになる。位置センサをポーリングした後に、ホストコントローラは、検出された物体が、新しい物体又は位置センサ上の別の位置へと移動した同じ物体のいずれであるかを計算することになる。これらの2つの変化のうちのいずれが正しいか(すなわち、新しい物体か又は位置を変更した古い物体か)を判断するために、ホストコントローラは、連続するポーリングサイクルからのデータを用いることができる。例えば、2つの連続するポーリングサイクル内に1つの物体が存在する場合には、ホストコントローラは、この物体が、別の位置へと移動する同じ物体であると見なすことになる。それによってこの物体の追跡が始動されることになる。しかし、次のポーリングサイクルにおいて物体が検出されたかった場合には、接触は無視されることになる。更に、更に別の2回の連続するポーリングサイクルの後に、新しい物体が位置センサ上で検出された場合には、この物体は、上述の方式で追跡されることになる。
【0051】
下記の表には、10回の期間から成るある一定の期間にわたる物体の追跡を示すために、線210上に出力された一連の検出接触座標を示している。図4Hの2つの検出接触は、開始点として用いられている。この例では、あらゆる一時点において2つの接触のみを位置センサ上で検出することができる。この表は、不連続接触(すなわち、追跡されない)及び追跡接触の両方を示している。
【0052】
(表)

【0053】
代替的に、物体の進行を計算するために、ホストコントローラは、1つの物体が1つの位置から別の位置に進むことができる最大許容進行距離を用いることができる。例えば、1つの期間において位置センサ上に単一の接触が検出され、次に、次の期間において第2の接触が検出されるが、2つの接触の間の距離が所定の最大距離を上回った場合には、この物体は、別の位置に移動する同じ物体ではなく、新しい物体として取り扱われることになる。更に、追跡処理は、上記に詳しく説明した方法とここで説明している方法との組合せとすることができる。
第1の実施形態に従って複数の接触を感知する方法を以上のように説明した。次に、本発明の別の実施形態を以下に説明する。
【0054】
図6Aは、本発明の別の実施形態による2D接触感応容量位置センサ601を平面図に略示している。位置センサに近い複数の物体の位置を計算するのに図7に示しているアルゴリズムが如何に用いられるかを説明するために、この2D接触感応容量位置センサを用いる。
2D接触感応容量位置センサ601は、第1(x)及び第2(y)の方向に沿って物体の位置を判断するように作動可能である。センサ601は、センサの感知エリアを定義する電極パターン603を保持する基板602、及びコントローラ604を含む。この実施形態では、電極パターンは基板の両側に存在する。他の例では、電極パターン603は、基板の片側に配置することができる。
【0055】
基板602上の電極パターン603は、従来技術(例えば、リソグラフィ、堆積、又はエッチング技術)を用いて設けることができる。この例における基板603は、透明な可塑材料、この事例ではポリエチレンテレフタレート(PET)から成る。電極パターンを含む電極は、透明な導電材料、この事例では酸化インジウム錫(ITO)から成る。従って、センサの感知エリアは、全体として透明である。これは、このセンサを不明瞭化なしに下に重なるディスプレイの上に用いることができることを意味する。しかし、他の実施形態では、センサは、例えば、従来のプリント回路基板、又は例えば移動電話キーパッドにおける使用のための銅電極パターンを有する他の基板を含む不透明のものとすることができる。
【0056】
コントローラ604は、電極パターン603の一部分に駆動信号を供給するための駆動ユニット605、電極パターン603の他の部分からの信号を感知するための感知ユニット606、及び電極パターンが有する異なる部分に印加された駆動信号に対して観測される異なる感知信号に基づいて位置センサに近いあらゆる物体の位置を計算するための処理ユニット607の機能を提供する。従って、コントローラ604は、位置センサ601に近い物体、例えば、指又はスタイラスの位置を判断するために、駆動及び感知ユニットの作動、並びに感知ユニット606からの応答の処理ユニット607内での処理を制御する。図6Aには、駆動ユニット605、感知ユニット606、及び処理ユニット607をコントローラ内の別々の要素として略示している。しかし、一般的に、全てのこれらの要素の機能は、単一の集積回路チップ、例えば、適切にプログラムされた汎用マイクロプロセッサ、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ、又は特定用途向け集積回路によって提供されることになる。
【0057】
図6B及び図6Cは、2D容量位置センサ601の基板の前面及び後面上の電極パターンのそれぞれの図を略示している。
図6Bを正面図と呼び、図6Cを後面図と呼ぶことに注意されたい。しかし、「前面」及び「後面」という用語は、センサ基板の対向する側(面)を指すために便宜上用いるものであることは認められるであろう。これらの用語は、センサ又はその基板においていずれかの特定の空間的な向きを意味するように考えられているものではない。一般的に、前面という用語は、センサが通常使用状態にある時に、センサの感知される物体に一般的に向く側を識別するのに用いることになる。一般的に、後面という用語は、対向する面(すなわち、通常使用状態にある時に、感知される物体に対して一般的に反対に向く面)を識別するのに用いることになる。以上のことに関わらず、全部ではないにしても多くの場合に、ポインティング物体がいずれの側から接近するかに関わらずセンサが作動することになるという点で、センサ基板は、完全に反転可能になることは認められるであろう(すなわち、いずれの側が前面側であり、いずれの側が後面側であるかに関わらず)。
【0058】
基板の前面側にある電極パターン(図6B)は、複数の相互接続感知要素609(黒色で示している)、及び複数の駆動要素610(中灰色で示している)を含む。
感知要素609は、形状がほぼ円形であり、センサ基板にわたって規則的な5×7のアレイで配置される。感知要素609は、感知要素接続トレース611(図6Bに同様に黒色で示している)の適切な配列によって相互接続される。この相互接続は、この例では、各感知要素を水平行にある隣接要素と直接接続することによって達成される。更に、直接接続した感知要素の水平行は、図6Bに示している電極パターンの左手側で下に延びる接続トレースによって互いに接続される。従って、感知要素の全てが互いに接続され、センサの2D感知エリアにわたって両方の寸法方向に配置された相互接続感知要素を含む単一の感知電極が設けられる。感知電極は、感知電極ワイヤを通じて、センサのコントローラ(例えば、図6Aに示しているもののようなコントローラ)内の感知ユニット内の感知チャンネルSに結合される。感知チャンネルSは、コントローラによって制御され、相互接続した感知要素群内に結合された電荷量を判断する。
【0059】
基板の図6Bに示している側にある駆動要素610は、センサ基板にわたって規則的な5×6のアレイで配置される。駆動要素のそれぞれのものは、感知要素609のそれぞれのものの近くにそれぞれの感知要素609の間に位置する。従って、この配列は、感知要素と駆動要素が交互する列を生じる。駆動要素と感知要素は、互いに密に離間される。駆動要素610は、ほぼ六角形であるが(この例では正六角形ではない)、感知要素の円形形状に適合するように感知要素609に近い辺では内向きに湾曲した縁部を有する。各行にある駆動要素は、駆動要素接続トレース612(図6Bにはまた、中灰色で示している)の適切な配列によって互いに接続される。
【0060】
従って、センサ基板の図6Bに示している側にある複数の駆動要素610は、6つの行要素X1、X2、X3、X4、X5、及びX6へと配置されると考えることができる。図6Bに示している配向では、これらの行電極は、水平に延び、垂直に互いから離間される。本明細書では、垂直及び水平、上及び下などの用語は、状況によって別途必要とされない限り、図面内に示しているセンサの向きを指す上で一般的に用いることになる。これらの用語が、センサが通常使用状態にある時のセンサにおけるいずれかを特定の向きを指すように考えられているものではないことは認められるであろう。更に、列及び行という用語は、2つの異なる任意の方向の間の容易な区別を可能にするためのラベル付けとしてのみ用いるものであり、この事例では垂直と水平の間の区別を可能にするためのラベル付けとして用いるが、一般的にはこれらの行と列は直交する必要はないことが認められるであろう。
【0061】
駆動要素の各行(すなわち、各行電極)は、行駆動配線を通じて、センサのコントローラの駆動ユニット内のそれぞれの駆動チャンネルXD1、XD2、XD3、XD4、XD5、及びXD6に結合される。この例では、各行電極に対して別々の駆動チャンネルが設けられる。しかし、適切な多重化を有する単一の駆動チャンネルを用いることができる。駆動チャンネルは、コントローラによって制御され、下記により詳しく説明するように、駆動信号を駆動要素の行のうちのそれぞれのもの(行電極)に印加する。
【0062】
基板の後面側の電極パターン(図6C)は、更に別の複数の駆動要素613(この図でも前と同様に中灰色として示している)を含む。これらの駆動要素613は、センサ基板にわたって規則的な4×7のアレイで配置される。図6Cでは、図6Bに示している基板面上の電極パターンに対する基板のこの側にある駆動要素613の位置は、図6Bに示している電極パターンの明灰色表現から分る。従って、基板の後面上の駆動要素613は、感知要素と駆動要素が交互する行を形成するように感知要素609の間に位置する(投影平面図において)。駆動要素613と感知要素は(投影状態で)重ならない。駆動要素613は、ほぼ六角形であるが、感知要素の円形形状に重ね合わせなしに適合するように、基板の後面側への感知要素609の投影物に隣接するコーナに内向きに湾曲した切削部を有する。各列内の駆動要素613は、駆動要素列接続トレース614(図6Bにも中灰色で示している)の適切な配列によって互いに接続される。
従って、図6Cに示しているセンサ基板の後面側にある複数の駆動要素613は、4つの列電極Y1、Y2、Y3、及びY4へと配置されると考えることができる。これらの列電極は、垂直に延び、図6Cに示している向きに互いに水平に離間される。
【0063】
駆動要素613の各列は、列駆動配線を通じてセンサコントローラ内のそれぞれの駆動チャンネルYD1、YD2、YD3、及びYD4に結合される。これらの駆動チャンネルは、行電極に結合された駆動チャンネルXD1、XD2、XD3、XD4、XD5、及びXD6に等しいものとすることができる。この例では、各列電極に対して別々の駆動チャンネルが設けられる。しかし、適切な多重化を有する単一の駆動チャンネルを用いることもできる。駆動チャンネルは、コントローラによって制御されて、下記により詳しく説明するように、駆動要素613の列のそれぞれのものに駆動信号を印加する。(適切な多重化を有する単一の駆動チャンネルは、全ての駆動チャンネルXD1、XD2、XD3、XD4、XD5、XD6、YD1、YD2、YD3、及びYD4の機能を提供することができる。)
【0064】
図6Aは、図6B及び図6Cに示しているセンサ608の前面平面図を略示しており、この図では、前面側(図6B)及び後面側(図6C)の両方の上の電極パターンを互いに示している。
従って、センサ608は、複数の駆動行電極、複数の駆動列電極、並びに位置センサの感知エリアにわたって駆動行電極と駆動列電極の間に点在する相互接続感知要素網を含む単一の感知電極を含む。駆動要素610、613の各隣接対及び感知要素609は(投影状態で見て、すなわち、駆動要素と感知要素が基板の同じ側にあるか否かに関わらず)、個別の位置センサエリアに対応すると考えることができる。使用時には、物体の位置は、列及び行電極がこれらの電極のそれぞれの駆動チャンネルによって順番に駆動され、US6、452、514に説明されているように、各々駆動される行電極及び列電極から感知電極に移送される電荷量が感知チャンネルによって判断される測定値取得サイクルにおいて判断される。
【0065】
感知ユニット606によって測定される印加容量負荷を示す信号値が、処理回路607に供給される。位置センサは、一連の個別キーとして取り扱われることになる。個別キーの位置は、x駆動要素とy駆動要素の交差点に存在する。処理回路607は、個別キーの各々に対して、これらの各々の個別キーに関わる印加容量負荷を示す信号値を判断するように構成される。個別キーの位置及びそれに関する印加容量負荷を示す信号値は、ホストコントローラ615に報告される。ホストコントローラ615は、位置センサ上にいくつの接触が存在するのかを計算することになり、複数の接触位置を内挿することになる。ホストコントローラは、マイクロコントローラのような単一の論理デバイスとすることができる。好ましくは、マイクロコントローラは、プッシュプル型CMOSピン構造、及び電圧比較器として機能するように作ることができる入力部を有することができる。最も一般的なマイクロコントローラI/Oポートは、比較的固定された入力閾値電圧、並びにほぼ理想的なMOSFETスイッチを有するので、以上のことが可能である。必要な機能は、単一の汎用プログラマブルマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又は他の集積チップ、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は特定用途向け集積チップ(ASIC)によって提供することができる。
【0066】
図6Aの2D接触感応容量位置センサ601のレイアウト及び機能を以上のように説明した。ここで、位置センサの1つ又は複数の接触位置を得る上で図6Aの2D接触感応容量位置センサ601が用いられる方法の説明の補助として、図7及び図8を参照する。
図7は、ホストコントローラ209内のハードウエア、ファームウエア、又はソフトウエア内に実施される信号処理法の段階を示す流れ図である。図8Aから図8Eは、タッチ入力の組の例に対する処理の様々な時点における第2の実施形態のタッチパネル内の4×6のタッチボタンアレイを順次示している。
【0067】
図8Aは、4×6の格子を図7の段階S701での単一の取得において得られた信号の生データ値と共に示している。格子正方形の各々は、容量位置センサ601の個別キーのうちの1つを表している。2つの同時指接触が、破線によって示している位置に存在する。生データ値は、任意単位で表したものである。パネルの左上の近くに1つの指接触が存在し、パネルの右下の近くに別の指接触が存在する。
【0068】
図8Bは、閾値を超える信号を戻した5つのキー、すなわち、検出状態キーの位置を陰付きパネルとして示している。「a」が、格子の左にある「1」から始まる列位置であり、「b」が、格子の上にある「1」から始まる行位置である時に、個別キーの各々は、K(a、b)によって表される(すなわち、図8Bの陰付き要素802はK(1、1)である)。検出状態キーの位置は、K(1、1)、K(2、2)、K(3、3)、K(3、5)、及びK(4、5)である。
【0069】
段階S701では、位置センサ601への印加容量負荷を示す個別キーの各々の信号値が、処理回路607から得られる。
段階S702では、閾値を超えるいずれかの信号が存在するか否かが判断される。処理回路607から得られた信号のいずれもが検出状態にない場合には、アルゴリズムはS701に戻り、新しい個別キー信号値の組を取得する。以上のことは、個別キー信号値のうちの少なくとも1つがVtよりも大きく又はそれに等しいか、又は適切な制御信号によってループが停止されるかのいずれかになるまで続くことになる。電力節約のために、信号取得の間の時間間隔は、いかなる閾値超過信号も受信されない場合は、時間を延長することができることが認められるであろう。別の選択肢は、信号が受信されないある一定の期間が閾値を上回った後にタッチパネルデバイスを完全に停止し、再作動させるのに別々の制御入力を必要とすること、すなわち、休止モードに入れることである。
【0070】
段階S703では、検出状態信号値の全てが互いに比較され、最も高い信号値を有するキーが見出される。最も高い検出状態信号値は、位置K(2、2)803にある個別キーのものである。検出状態個別キーのうちで最も高い信号値を有するキーをT1(803)とラベル付けしている。
段階704では、キーのうちで、割り当てられたキーT1(803)に近い全てのものが、これらのキーが更に別の処理段階で無視されることになるように抑制される。位置センサの割り当てられた接触T1(803)に近い領域を図8Cの破線境界線804によって示している。
図8Cは、段階S704において抑制された2つのキーの位置をここでは陰なしの格子正方形805によって示している。抑制されたキーは、格子の位置K(1、1)及びK(3、3)にある。
【0071】
段階S705では、残りの個別キーの信号値が、閾値Vtと比較される。残りのキー信号のいずれもが、閾値Vtよりも大きくないか又はそれに等しくない場合には、処理フローは、段階S709へとジャンプする。一方、閾値Vtよりも大きく又はそれに等しい信号値を有する検出状態アレイキーが存在した場合には、次に、最も高い信号値を有するキーに基づいて接触位置の割り当てが繰り返される。図8Cに示している入力例では、残りの検出状態個別キー信号値は、位置K(3、5)及びK(4、5)に位置する。
【0072】
段階S706では、残りの検出状態キーからの信号値が互いに比較され、最も高いものが見出される。この例では、最も高い信号値は、個別キーの位置K(4、5)806に存在し、これをT2とラベル付けする。
段階707では、キーのうちで、割り当てられたキーT2(806)に近い全てのものが、これらのキーが更に別の処理段階で無視されることになるように抑制される。位置センサの割り当てられた接触T2(806)に近い領域を図8Cの破線境界線807によって示している。
図8Dは、キーが抑制された位置をここでは陰なしの個別の位置K(4、5)808によって示している。
【0073】
段階S708では、あらゆる残りの個別キー信号値が閾値Vtと比較される。残りのキー信号のいずれもが閾値Vtよりも大きくないか又はそれに等しくない場合は(示している例のように)、アルゴリズムの段階S709が実行される。しかし、閾値超過信号値を有するあらゆるキーが残っている場合には、S706からS708までのアルゴリズムが繰り返され、更に別の個別キーT3が割り当てられる。この処理は、段階S708がヌル値を戻すまで繰り返される。
処理のこの時点で位置センサ上の接触位置の割り当ては完了し、処理は、更に別の段、すなわち、内挿段階へと移動する。
【0074】
段階S709では、内挿が実施される。内挿手順は、第1の実施形態において上記に既に説明したものと同じである。
更に、照合された出力をプロセッサから供給するために、接触の追跡を実施することができ、連続するデータサンプルからの座標が、タッチパネルの上を移動する同じ物体からのものであると考えられる場合にストリームで出力される。追跡は、第1の実施形態に関連して既に説明したものと同じ方式で実施することができる。
ホストコントローラ615は、個別の時間t1、t2...において物体T1からTnの一連の位置座標を出力線616上に出力することになる。ホストコントローラ616は、固定期間で位置センサ601をポーリングすることになる。
【0075】
第2の実施形態では、位置センサ上で、個別キー1つのみの分離しか持たない複数の接触を検出することができることに注意されたい。個別キーからの信号値は、位置センサ上の接触座標の計算中に共有される。好ましくは、この状況において、内挿アルゴリズムは、共有されるキーに低い重み、例えば、半分の重みが与えられるように重み付けされる。原則としては、互いに近い複数の接触を検出することができることが望ましいが、第2の実施形態では、これは、第2の実施形態においてプロセッサによって出力される2つの近接接触が実際には2つの別々の作動ではなく、大きい物体による単一の作動である可能性があり、これらの2つの可能性が区別不能であるから、信頼性の損失という潜在的な代償を払って達成されることに注意されたい。
【0076】
従って、第2の実施形態は、第1の実施形態の簡易形式のものと考えることができる。2つの主な簡易化が存在する。第1に、キャパシタンス信号値のうちの1つが最小値よりも小さいという要件が存在しない(すなわち、第1の実施形態の段階S303とは異なる)。第2に、第2の実施形態において実施される局所化AKSの形式は、領域内で最も高い信号値を有するキーが選択されるものであるということにおいて基本的である。2つの実施形態からの特徴を入れ替えることができることが認められるであろう。例えば、第1の実施形態は、キャパシタンス信号値のうちの1つが最小値よりも小さいという要件の削除によって簡易化することができる。
【0077】
上述の実施形態に対する多くの変形が可能であることが認められるであろう。
例えば、LAKS領域のサイズは、上下の4つの直近の隣接キーのみ、全ての8つの直近の隣接キー(示している例における)、又は最も近い隣接キー、並びにその次に最も近い隣接キーを含むように変更することができる。
別の変形は、タッチパネル上の全ての感知要素が少なくとも1つのLAKS領域によって対象範囲に含まれるまで、選択されるキーT1、T2、...TNの識別を反復し、その後に初めて閾値試験を適用するものである。
別の変形は、内挿に関し、接触位置は、LAKS領域内の全ての信号値の間で内挿を行うことによって判断される。それによってLAKS領域の範囲の特定の要素をその後の内挿が基準とする大元として選択する処理段階を実施する必要性が回避される。
【0078】
また、第1及び第2の実施形態の方法は、内挿段階を省略することができ、その場合、各領域内の接触位置は、LAKSアルゴリズムからの基本的な出力であることを観察されたい。例えば、ソフトキーがキーパッドをエミュレートする場合のタッチパネルの「ソフト」キーと、感知要素、すなわち、電極パターンによって定義されるセンサ位置との間に1対1のマッピングが存在する場合には、内挿段階の省略は好ましい選択肢になる。
【0079】
また、本発明の第1の実施形態を説明するのに位置センサ201を用い、本発明の第2の実施形態を説明するのに位置センサ601を用いたが、これらのセンサは交換可能であることも認められるであろう。位置センサ201は、キャパシタンス値が、感知電極と電気接地のような基準電位との間に確立される値であるいわゆる受動センサの例であり、それに対して位置センサ601は、キャパシタンス値が、ポーリング線と感知線の間の容量結合の基準値であり、結合量が、作動物体によって影響を受け、従って、その基準値であるいわゆる能動センサの例である。上述の2つの特定の例のみならず、タッチパネルにおいてあらゆる形態の受動又は能動センサを用いることができることが認められるであろう。更に、矩形又は正方形の感知要素アレイが最も一般的であり、利点をもたらすが、他の配列の感知要素を設けることは技術的に実現可能である。更に、感知要素は、x及びyにおける格子線のアレイの形態のものである必要はない。感知要素は、個別キーで形成することができる。更に、感知要素は、均等又は不均等な間隔で配置することができる。
【0080】
本発明は、マウス型用途、すなわち、本明細書に引用によって組み込まれているUS5、825、352に説明されている使用モード、すなわち、そこに定義されている「ポインティングしてクリック」、「ポインティングしてダブルクリック」、「ドラッグ」、「ドラッグしてクリック」、「ドラッグロック」、「インク」などを含むモードを含むマウス挙動をエミュレートするタッチパッドを用いるものに適用することができることが認められるであろう。
【0081】
図9Aは、パーソナルコンピュータの表示モニタ901及び入力デバイス902を略示している。この例では、入力デバイス902は、ユーザが文字をパーソナルコンピュータ内に入力するための英数字キーボード903、及び本発明において説明した容量センサのうちのいずれかとすることができるタッチパッド904を含む。タッチパッド904は、キーボード903とは別々のデバイスとすることができることが認められるであろう。従来のコンピュータのタッチパッドは、いくつかの「マウスボタン」を含むことができ、それによってユーザは、カーソルを操作し、これらのマウスボタンのうちの1つをクリックすることによって項目を選択することができる。従来のタッチパッドは、指をタッチパッドの表面上で移動することによって表示モニタ上でカーソルを移動する可能性、又はタッチパッドの表面を指で軽打することによってマウスボタンとしての可能性をもたらすが、これらの機能の両方を同時に実行するためには、従来のタッチパッドを用いることができない。パーソナルコンピュータは、表示モニタ901内に含めることができ、又はタッチパッド904は、ラップトップコンピュータの入力デバイスのうちの1つとすることができることが認められるであろう。
【0082】
本発明で説明するタッチパッド904は、ユーザが、2つの別々の指を用いてパーソナルコンピュータが有する異なる機能を操作することを可能にする。例えば、ユーザは、表示モニタ901上に表示されたカーソルをタッチパッドの表面上の1つの指を用いてで移動することができ、それと同時に別々の指を用いてマウスボタンのようにタッチパッド904の表面を軽打して項目を選択する。これは、最初に表示モニタ901上に表示されたカーソルをタッチパッドの表面上の第1の指を用いて、必要なデータファイルの上に位置決めされるまでタッチパッドの表面上で移動することにより、データファイルを編集するのに用いることができる。データファイルは、第2の指をタッチパッドの表面上に置くことによって選択される。次に、第2の指をタッチパッドの表面との接触状態に保ちながら、第1の指をタッチパッドの表面にわたって移動することにより、データファイルは、異なる位置に移動される。データファイルが新しい望ましい位置にある時に、第2の指はタッチパッドの表面から除去され、データファイルは選択解除される。以上の説明において、第2の指を第1の指と同時に移動することができ、それによってユーザがこの機能を片手で実施することが可能になることが認められるであろう。
【0083】
本発明によって実施することができる更に別の機能は、パーソナルコンピュータを用いて「ペイント」を行う機能であり、第1の指を絵筆として用い、第2の指をスクリーン上のパレットから必要な色を選択するのに用いる。第1の指は、表示モニタ901上に表示される従来の主カーソルがコンピュータ上に画像を示すのを制御するために、タッチパッド904の表面上に用いられる。ソフトウエアに実施され、表示モニタ901上に表示されるのは、容易に選択することができる色のパレットになる。ユーザは、パレットの必要な色の上で補助カーソルを移動することになり、これらの色を第2の指を用いたタッチパッド904上の「軽打」を用いて選択することができる。また、ユーザは、色に加えて絵筆の種類又は絵筆のサイズを変更するために、上述の方法で補助カーソルを用いることができる。それによってユーザは、いかなる時も画像上に主カーソル(絵筆)を保つことができることになるので、ユーザが画像を示す時により大きな自由度が与えられることになる。
【0084】
図9Bは、本発明によりタッチパッドセンサ907を組み込むセルラー電話905を略示している。タッチパッドセンサは、ユーザが表示スクリーンを依然として見ることができ、同時にユーザの指又はスタイラスとタッチパッドセンサ907との間の容量結合を依然として可能にするように、表示スクリーン906の前面に組み込まれる。本発明のこの例では、ユーザは、指又はスタイラスをタッチパッド上に用いることにより、表示スクリーン上に表示された項目を選択し、移動することができる。タッチパッドは、表示スクリーンと共に組み込まれ、従って、「カーソル」は、ユーザの指又はスタイラスの移動を追従することになる。上述の図9Aに対して説明したものと同じ機能を図9Bに示している本発明のこの例に適用することができる。
代替的に、タッチパッド907のエリアは、センサのあるエリアが表示スクリーン906を見るためだけに用いられ、センサのあるエリアが従来のタッチパッドセンサとしてのみ用いられ、それによってユーザが上述のものと同じ方式でカーソルを移動して項目を選択することができるように分割することができる。
【0085】
本発明によって実施することができる更に別の機能は、セルラー電話905上のゲーム制御である。タッチパッド907は、表示スクリーン906と同じエリアを覆うが、このエリアは、ユーザ制御器が、中央表示エリアの左右に存在するように分割することができる。ユーザは、ゲームの2つの異なる機能を制御することができるように、タッチパッド907の左側及び右側の各々の上に1つずつ、2つの指又は親指を用いることができることになる。例えば、タッチパッド907の左部分は、上下左右を含む移動の制御器とすることができ、タッチパッド907の右の制御部分を一連のボタンとすることができる。例えば、以上のことは、運転ゲームにおいて用いることができ、ゲームにおいて車を操舵するのにタッチパッド907の左にある左右の移動制御器が用いられ、加速及び減速するのにタッチパッド907の右にあるボタンが用いられる。
【0086】
要約すると、以上により、複数の同時接触を検出することができる容量タッチパネルを提供することができることが理解されるであろう。このタッチパネルは、タッチパネル上の1つ又は複数の接触位置の座標を計算するプロセッサにキャパシタンス信号値の組を供給する。各組の処理は、(i)最大キャパシタンス信号値を有する感知要素を識別する段階と、(ii)この感知要素の周囲の領域を定義する段階と、(iii)この処理を反復的に繰り返す段階とによって実施することができ、各続く識別段階は、以前に定義した領域内に位置する信号を除外する。従って、信号処理がタッチパネル内の領域又はサブブロックの連続定義に基づく多重タッチセンサが提供される。更に、各領域内での接触位置は、隣接する信号値の間で内挿を適用することによってより正確に判断することができる。それによってタッチパネルの電極パターン化によって定義されるものよりも微細なスケールの位置分解能が与えられる。
【0087】
文献
[1]US5、825、352
[2]US5、463、388
[3]EP1335318A1
[4]US6、993、607
[5]US6、452、514
[6]US5、730、165
[7]US6、466、036
【符号の説明】
【0088】
S301 個別キーの各々の信号値を処理回路から得る段階
S302 閾値を超えるいずれかの信号が存在するか否かを判断する段階
LAKS 局所化近接キー抑制

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)パネルのエリアの上に配分された複数の感知要素を有するタッチパネル、
(b)前記感知要素に接続され、かつ各組が該感知要素の各々からのキャパシタンス信号値から成るキャパシタンス信号値の組を取得するように繰返し作動可能であるキャパシタンス測定回路、及び
(c)前記キャパシタンス信号値の組を受信するように接続され、かつ各組を処理して前記タッチパネル上の1つ又は複数の接触位置の座標を計算かつ出力するように作動可能であるプロセッサ、
を含み、
前記各組の処理は、
(i)最大キャパシタンス信号値を有する前記感知要素を識別する段階、
(ii)前記最大キャパシタンス信号値を有する前記感知要素とその隣接要素のうちの選択されたものとを含む前記タッチパネルの領域を定義する段階、
(iii)1つ又はそれよりも多くの更に別の感知要素及び領域をそれぞれ識別かつ定義し、各反復が、キャパシタンス信号値をそれらが前記タッチパネルの以前に定義した領域にある場合に考察から除外する段階、及び
(iv)識別された各領域における前記接触位置の前記座標を示すデータを出力する段階、
によって実施される、
ことを特徴とする2D接触感応容量位置センサ。
【請求項2】
前記識別する段階は、閾値を超えないキャパシタンス信号値を有するあらゆる感知要素を考察から除外することを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
各領域において前記最大キャパシタンス値を有する前記感知要素が、その領域の主作動感知要素であると見なされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
各領域において、閾値を超えるキャパシタンス信号値を有する前記感知要素の中で前記タッチパネル上で最も上の位置にある前記感知要素が、その領域の主作動感知要素であると見なされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサ。
【請求項5】
各領域における前記接触位置は、前記主作動感知要素の位置であると見なされることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
各領域における前記接触位置は、その領域における前記感知要素の少なくとも一部の前記キャパシタンス信号値の間で内挿を適用することによって判断されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記内挿は、前記領域の前記主作動感知要素であるとして識別された前記感知要素及びその隣接要素に限定されることを特徴とする請求項3又は請求項4に従属する時の請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記内挿は、各領域における前記感知要素の全てを含むことを特徴とする請求項6に記載のセンサ。
【請求項9】
(a)パネルのエリアの上に配分された複数の感知要素を有するタッチパネル、(b)該感知要素に接続され、かつ各組が該感知要素の各々からのキャパシタンス信号値から成るキャパシタンス信号値の組を取得するように繰返し作動可能であるキャパシタンス測定回路、及び(c)該キャパシタンス信号値の組を受信するように接続され、かつ各組を処理して該タッチパネル上の1つ又は複数の接触位置の座標を計算かつ出力するように作動可能であるプロセッサを含む2D接触感応容量位置センサからの信号を処理する方法であって、
各組を処理する方法が、
(i)最大キャパシタンス信号値を有する感知要素を識別する段階、
(ii)前記最大キャパシタンス信号値を有する前記感知要素とその隣接要素のうちの選択されたものとを含むタッチパネルの領域を定義する段階、
(iii)1つ又はそれよりも多くの更に別の感知要素及び領域をそれぞれ識別かつ定義し、各反復が、キャパシタンス信号値をそれらが前記タッチパネルの以前に定義した領域にある場合に考察から除外する段階、及び
(iv)識別された各領域における接触位置の座標を示すデータを出力する段階、
を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記識別する段階は、閾値を超えないキャパシタンス信号値を有するあらゆる感知要素を考察から除外することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各領域において前記最大キャパシタンス値を有する前記感知要素が、その領域の主作動感知要素であると見なされることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各領域において、閾値を超えるキャパシタンス信号値を有する前記感知要素の中で前記タッチパネル上で最も上の位置にある前記感知要素が、その領域の主作動感知要素であると見なされることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項13】
各領域における前記接触位置は、前記主作動感知要素の位置であると見なされることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各領域における前記接触位置は、その領域における前記感知要素の少なくとも一部の前記キャパシタンス信号値の間で内挿を適用することによって判断されることを特徴とする請求項9から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記内挿は、前記領域の前記主作動感知要素であるとして識別された前記感知要素及びその隣接要素に限定されることを特徴とする請求項11又は請求項12に従属する時の請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記内挿は、各領域における前記感知要素の全てを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2010−533329(P2010−533329A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515593(P2010−515593)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002328
【国際公開番号】WO2009/007704
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(591225523)アトメル・コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】ATMEL CORPORATION
【Fターム(参考)】